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<幻想郷征服計画始動>
「かつての敗北から幾数年……とうとう私達に反逆の時が訪れた!」
スポットライトの光の中で、悪の帝王レミリア・スカーレットは、
拳を強く握り締め、声高らかに叫ぶ、そしてその後ろには、
パチュリーや咲夜といった紅魔館の顔が勢ぞろいしていた。
「我が同胞パチュリーよ、幻想郷征服の礎となる新事業の調子はどうかね?」
「えーと、紅魔湖の観光事業についてなら軒並み好調ね」
「あの敗北にて幻想郷の権益のほとんどを失ってしまったが、
無いのならば新しく作ってしまえばいいだけのこと……フッフッフッフ」
いまや紅魔湖は夏は避暑地、冬は巨大なアイスリンクとして大人気である、
それによって紅魔館にもたらされる金の流れは計り知れない。
「さて、そろそろ……私が動く頃合ね」
「お嬢様!? お待ちください! お嬢様が動くにはまだ――」
「お黙り! 椅子に座ってふんぞり返っているだけの愚か者に誰がついてくるというの!」
「ですが……」
「くどい!」
すがる咲夜を一喝し、レミリアは麦藁帽子を頭に被る、
それだけで悪のカリスマ度27%増しである。
「さあいくわよ我が部下達! 紅魔湖の……ゴミ拾いに!!」
一つ拾っては客のため、
二つ拾っては自らのため、
幻想郷征服のために、レミリアの辞書に妥協の文字はない。
「ククク……快適さと清らかさこそが観光の肝! その邪魔をするゴミなど私が駆逐してくれる!」
「あー! レミリアちゃんだ! レミリアちゃんだよ! お姉ちゃん写真撮ってー!!」
「はいはい、こいしったらあまりはしゃがないの、一枚お願いできる?」
「勿論いいわよ、希望のポーズはあるの?」
「(お嬢様、すっかりマスコット役が体に染み付いてますわ……)」
「ハイ、チーズ」
『にぱー!』
レミリアの幻想郷征服までの道程はまだ遠い。
<レミリアと咲夜>
「咲夜、あなた最近調子が悪いんじゃない?」
「えっ……」
レミリアから突然放たれた言葉に、咲夜は驚き戸惑った。
「い、いえ、別にそんなことはありませんわ!」
「そう? どう見ても今にも死にそうなんだけど……」
咲夜の目の下にはくっきりとしたクマ、
そしてくぼんだ頬に、かさかさの肌、
明らかに今にも過労死しますと言えるほどの状態である。
「大丈夫です! 何も問題ありませんわ!」
「それならいいんだけど……あ、紅茶が飲みたくなったわ」
「ご用意いたしました」
「ご苦労」
しかしその仕事のキレは落ちていない、咲夜はレミリアの要求に応え、
香ばしい匂いのする紅茶を瞬時に用意した。
「……むっ!!」
だがレミリアは紅茶を一口含んだ瞬間、その表情をしかめる。
「咲夜!! この紅茶は一体何!?」
「ど、どうかしましたか!」
「中にグングニルが入ってるじゃない!」
「お嬢様! いくらなんでもそれは無――」
「言い訳するなっ!!」
「あうっ!」
怒声と共にレミリアの投げたカップが咲夜の胸を直撃する、
幸いにもカップは割れず、紅茶もかかることはなかった。
「まったく、紅茶の一杯もまともに淹れられないなんてね」
「申し訳ございません……」
「役立たずは私の傍に必要ないわ、あなたは今からメイド補佐に格下げよ」
「そんなっ!」
理不尽、されど咲夜にそれを覆す権力などない、主の命令は絶対なのだから。
「とはいっても私も鬼ではない」
「(鬼です)」
「咲夜、あなたに汚名挽回のチャンスを与えてあげるわ」
「お嬢様、汚名は返上するも――」
「黙らっしゃい!!」
「あうっ!」
レミリアが咲夜に向けて投げつけた紙束が、
ばらばらに弾けて紅いカーペットの上に散乱する。
「お嬢様、この紙は一体?」
「人里の整体屋、マッサージ屋、針・ツボ師、温泉など、
我らが観光事業の妨げになりうるもの達の商売チラシよ」
「妨げですか? たいして競合しそうには……」
「シャラップ! あなたはこれから三日間かけてそれらの店の情報を集めてきなさい!
それが終わるまで私の前に姿を現すことは許さないわ! わかったらさっさと行きなさい!」
「……かしこまりました」
咲夜は散らばった紙を集め、一礼して部屋を出る、
そのまま自室に戻る最中、咲夜は窓に映った自分の顔を見てため息をついた。
「(お嬢様……不器用なお方)」
悪のカリスマたるもの、部下の顔色は、伺えず。
<レミリアと美鈴>
「ずいぶんと手酷くやられたわね、無様としか言いようが無いわ」
「申し訳ございませぇん……」
アフロであった、それは見事なアフロであった、
美鈴の頭はアフロであった、ついでに体のところどころを怪我していた。
「これで何度目の失態かしら?」
「うう、全部魔理沙が悪いんですよー」
「それに負けるあなたはもっと悪いわね」
「うぐっ!」
紅魔館で許される悪とは、正しき意味での悪のみ、
失態や駄目を意味する悪など許されるはずが無い。
「あなたにはそろそろお仕置きをする必要があるわね」
「ひっ!?」
「咲夜、私専用の仕置き道具を持ってきなさい!」
「かしこまりました」
「おおおお許しくださいお嬢様! もう二度とこんな失態はいたしません!」
「あら、本当に?」
「はい! 絶対です! 悪魔に誓ってでも!」
「でも駄目」
「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
悪のカリスマたるもの、その悪を発揮することに微塵もためらうことは無い。
「ひっ! ああっ! んっ……! やぁっ……!」
「ククク……どう? 私お手製の消毒液は……!」
「し、染みる、染みちゃいますぅぅぅ!」
「まだまだ、次は私が苦労して集めた薬草を煎じて作った塗り薬よ!」
「ひゃぁっ……そ、そんなとこ……ああっ……!」
「最後に包帯で拘束してあげるわ!!」
「わ、わたし巻かれちゃいましゅうううう!!」
それはまさに阿鼻叫喚の地獄絵図、
愚か者には徹底的なまでの罰を、それこそが悪。
「はぁ……はぁ……」
「ふふ、もはや喋る気力すら無いか……例の部屋に閉じ込めておきなさい!」
「医務室ですね、了解しました」
「そして徹底的に拷問を続け、傷が癒えたら門前に放り出しておくのよ!
死ぬまで我が紅魔館の門を守らなければいけない自らの運命を呪うがいいわ!」
美鈴に自由は休日以外は無い、運命を塗り替えられた彼女は、
永遠に紅魔館の門の前に立たされ続けるのだ。
「(お嬢様……必ず、必ずやこの紅魔館に、そしてお嬢様にふさわしい門番に……!)」
どれだけ不遇な扱いであろうと、部下を引き寄せる魅力がある、
ゆえにレミリア・スカーレットは悪のカリスマとして恐れられているのかもしれない。
<レミリアと霊夢>
「やばい、死にそう、食料が尽きた……お金も……無い……」
博麗霊夢は死に掛けていた、
彼女の敵は主に妖怪、そして空腹、最後に金策である、
後者になるほど敵は強く、より対処が難しくなっている。
「こんなことなら真面目に妖怪退治してればよかった……」
とうとう霊夢はひざから崩れ落ち、上半身だけは倒さぬよう賽銭箱に寄りかかる、
視界に向こうから勝手に飛び込んでくる賽銭箱の中は、いうまでもなく虚無。
「さようなら幻想郷、さようなら私……」
「情けないわね、それでも我が今生のライバルなの?」
「こ、この声は……最近紅魔湖で大人気のレミィちゃん!!」
霊夢が上を向けばそこには悪のカリスマが、
勿論トレードマークの麦藁帽子は忘れていない。
「Exactly、でも写真は撮らせてあげないわ」
「何の用? 弱って動けない私を殺しにきたの?」
「さて、どうかしらね?」
レミリアは霊夢の傍に降り立つと、人差し指と親指で霊夢の顎を持ち上げて顔を寄せる。
「今ここで殺すのは簡単だけど、それじゃなんにも面白くないでしょう?」
「じゃあ何しにきたのよ」
「ちょっと見てもらいたい物があるのよ」
そういうとレミリアは自らの懐からごそごそとピンク色の物体を取り出した。
「……豚?」
「ええ、豚の貯金箱よ」
「それがどうかしたの?」
「気に食わないのよ」
「気に食わない?」
レミリアは豚の貯金箱を右手でもつと、それを見つめて何やら怒りに震え始める。
「この! 悪のカリスマたる私が! 何故こんなかわいら……汚らわしい物体で
貯金しなければいけないのか! 豚の中に金を入れる! それはすなわち金を
臓器扱いするも同然! ならば私は臓器を集めて悦に浸っていたのか!」
「わけがわかんないわ」
「気に食わない、気に食わないわ豚の貯金箱! こんなものは賽銭箱に叩きつけて破壊してくれる!」
「(あ、ああー! レミリアの! レミリア・スカーレットの右手に握られた貯金箱が!
アリスの投擲した人形の進む速度をもさらに上回る速度で賽銭箱に向かって振り下ろされる!
あと15センチ! 10センチ! 5センチ! そして今直撃したぁー! 豚の貯金箱のピンクの体が
四方八方に霧散してゆくー! そして中から現れるのは大量の銀色の硬貨だー!!
あれは50円玉? もしかして100円玉? いいえ違う! あれは500円玉よ!
硬貨の中の硬貨! 硬貨の王! 500円玉が決壊した川から溢れる濁流のごとく現れたー!
当然500円玉も飛び散る! が地球の重力からは逃れられない! 一枚! また一枚と
賽銭箱の中に吸い込まれていく! まるで妹紅に飛び込んでは焼かれていくリグルのように!
貯金箱の破片も一緒に落ちてるがそんなのは関係ねぇ! フィーバー! この光景を言い表す
ならばまさにフィーバー! ヒャッハー!! 今日の晩御飯はサンマの塩焼きだー!)」
この間、実に三秒。
「あら、私が幻想郷に来てから毎日こつこつためていたお金が賽銭箱に入っちゃったわね、
まあいいわ、お金には困ってないし、塩を送るという言葉もあるし……勝手に使いなさい」
レミリアは豚の貯金箱を壊したことで気がすんだのか、
さっと身を翻して紅魔館の方へと飛び去っていった。
「(レミリア……一瞬だけ、泣いてた……)」
悪のカリスマたるもの、善を好敵手となるまで育て、
それを叩き潰してこそその偉大さを知らしめるもの也。
<レミリアと魔理沙>
「やった! やりましたよ! とうとう魔理沙を捕まえました!!」
「ちくしょう! 離せぇー!!」
それは奇跡ともいえる光景であった、満面の笑みを浮かべる美鈴の前には、
ロープでぐるぐる巻きにされた魔理沙の姿があったのだ。
「奇跡ね」
「奇跡ですわ」
「そんなこといわないでくださいよー!!」
パチュリーと咲夜が認定すれば奇跡である、門番に異論の余地はない。
「まあおかしいのは確かね」
「と、いいますと?」
「普段の魔理沙なら遠距離から門ごと焼き払うか、見つからないように忍び込んでくるはず」
「確かに……今日みたいに真っ向から弾幕も展開せずに美鈴に突っ込むなんてありえませんわ」
「それはあれですか? 私は普通にやったら絶対に魔理沙さんに負けるってことですか?」
『当たり前じゃない』
「ですよねー」
そんな折、どこからともなく現れた蝙蝠の群れが四人の前に集まり、
悪のカリスマたるあのお方が現れた。
「フッフッフ……理由などこの私が知っているわ!」
『お嬢様!』
「霧雨魔理沙、あなたが探しにきたのはこれね?」
「っ!!」
レミリアがその手に持っていたものは三冊の本、
それを魔理沙の前に放り投げると、その表題を読み上げる。
「風邪をひいたときの対処法、風邪によく効く薬膳料理、風邪はこうやって治すべし」
「うわぁぁぁぁ! やめろぉぉぉ!!」
「あなたの友人のアリスとかいう者が風邪で寝込んでいるようね」
「し、知らない、そんな名前の友人なんかいないぜ!」
「毎日通ってはご飯を作ってやったり、体を拭いてやったりしてるそうじゃない?」
「何でだ! 何で知ってるんだぁー!!」
悪に情けの文字はない、他人の恥ずかしがる姿は甘露にも等しいのだから。
「うう……アリスが熱でおかしくなったのか、大雨なのに外で踊ってたんだ……」
「それで風邪をこじらせたか、いつの世も恋は人を狂わせるものだわ」
「それであんなに必死な形相で突っ込んきてたんですかー」
「(パチュリー様、この場合狂ってるのはどちらに?)」
「(どっちもね)」
泣きながら語る魔理沙を見て、レミリアは何を思うかその背を向ける。
「美鈴、縄を解いてやれ」
「えっ?」
「縄を解けといっているのだ!」
「は、はい!」
「レミリア……?」
「ふん、悪の帝王たるもの小物に用はないわ、そして紅魔館の医療施設の充実度からすれば
そんな程度の低い本も必要ない、どことなりと持っていくがいい」
「いい……のか? 本当に……?」
「五月蝿いわ! 美鈴! そいつを外に放り出せ!」
正門から三冊の本と共に放り出される魔理沙、
彼女は本をすぐに拾い上げると、アリスの家に向けて全速力で飛び立つ。
「(この恩は……一生忘れないぜ……)」
悪のカリスマたるもの、道端の花など眼中になし、
例えどこで咲き誇ろうとも。
<レミリアと天子>
「やっほー霊夢、遊びにきてあげたわよー」
「はい、素敵な賽銭箱はそちら」
比那名居天子、友達居ない暦=年齢だった彼女は、
かつての異変を引き起こしたことによってようやく霊夢という友を得た。
「おーい霊夢、遊びに来たぜー」
「私もお邪魔するわね」
「あら魔理沙とアリスじゃない、お茶でいい?」
暇を見つければ神社に通う日々ではあるが、
そのたびに天子の心にはとある疑問が浮かび上がってくる。
「(もしかして、私って友達と思われてない?)」
明らかに違う態度、明らかに違う待遇、
魔理沙らと比べてひしひしと感じるそれに、天子は焦燥を隠せない。
「ああ、そういえばダイヤモンドゲームってのを香霖の店で見つけたんだ、やらないか?」
「ダイヤモンドゲーム? 面白そうね」
「あっ、私も――」
「すまない天子、このゲーム3人用なんだ」
ダイヤモンドゲームで盛り上がっている3人を天子は悲しく見つめていた、
そしてここに自分の居場所は無いと感じ、帰ろうとしたその時、悪のカリスマが降臨する。
「フッフッフ、たかだか3人用のお遊戯で盛り上がれるなんて、程度が知れるわね!」
「はっ、この声はレミリア!」
「私の持ってきた人生ゲームは6人用よ!」
『な、なんだってー!!』
6人用、それは圧倒的破壊力であった、ダイヤモンドゲームは過去の物となり、
巨大な盤面が神社を己の縄張りと主張しているかのように支配する。
「あ、あの……私も……いれて……」
「……ふん、あなたも参加したいの?」
「っ! したいわ! すっごくしたい!」
「ふっ、それならあなたには銀行役を押し付けてやるわ! 換金の手間に忙殺されなさい!」
神社に響き渡る乙女達の歓喜と悲哀の声、
もうそこに仲間はずれとなった天子の姿は無かった。
「(こんなに他人と触れ合える役目なんて……ありがとう、本当にありがとう!)」
悪のカリスマたるもの、面倒事は他人に押し付けるのが常である。
<レミリアと輝夜>
「姫、そろそろ働いてください」
「働いたら負けかなと思っている」
「あの紅魔館の吸血鬼なんか悪のカリスマを自称して事業に成功しているそうですよ?」
「ふーんだ、私だって本気を出せばそれぐらいできるもーんだ」
「でしたら本気を出してください」
「私が本気を出したら幻想郷が滅ぶわ」
「……そうですか」
永琳は悩んでいた、最近の輝夜といえば部屋でごろごろしているばかり、
あの月を隠していた頃の行動力はどこに消えたのかと。
「師匠、もう諦めましょうよ、とりあえず正座さえさせておけば姫っぽいじゃないですか」
「その正座もしてくれないから困ってるのよ」
輝夜のすることといえば三つ、寝ると寝転がると昼寝である。
「……某隙間妖怪より酷いですね」
「まったくね」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「――悲鳴!?」
「姫様の部屋からです!」
二人が141回目の駄目だこりゃをやろうとした時、
轟音と共に輝夜の悲鳴が永遠亭に響き渡った。
「姫!」
「姫様!!」
「ククク、随分とぬるい警備じゃない」
「あなたは……最近幻想郷で大人気のレミィちゃん!」
「如何にも!!」
輝夜をお姫様抱っこしながら不敵に微笑むレミリア、
対する永琳はどこからともなくカメラを取り出していた。
「姫を離しなさい!! あ、写真撮るわね、二人とも笑ってー」
「ふん、悪の魔王たるもの姫をさらうのは当然の事……にぱー」
「いやー、永琳助けてー!! ついでにもう二枚ぐらい撮ってー!」
「(この方達何やってんの!)」
月人の行動は同じ月人にもよく分からないものである。
「それで、一体姫をさらってどうする気?」
「大して使い道のない女なのだから、そんなのは決まっているでしょう?
週休3日! 月手取り30万! ボーナス年3回! 休暇およびその他手当て
一切合財付属という地獄のような労働環境で死ぬまで働かせるのよ!」
「し、仕事!? 嫌よ! 働くなんて絶対に嫌!! 助けて永琳!!」
「ううっ! 急に持病の心臓病が!!」
「師匠! あなた蓬莱うぐっ!!」
「では、姫はいただいていくわ……取り返したくなったらいつでもかかってきなさい」
「お、おのれ……レミリア・スカーレット……!!」
悪のカリスマが去った後は見るも無残な永遠亭だけが残された、
鈴仙は倒れ、永琳は己が脆弱さに涙し、ウサギ達の歓喜の声が竹林に響き渡る。
「姫……いつか必ず、救い出して見せます……」
「(嘘だ、絶対に嘘だ)」
悪たるもの、優秀な人材を得るためには手段を選ばない、
人材こそが宝であり、幻想郷征服のために必要不可欠なのだから。
<レミリアとフランドール>
「フランドール! フランドールはいないの!!」
「いないわ」
「ああ、そこにいたのね」
「いないわ」
「フランドール?」
「必要とされない者はいないと同然よ、お姉様」
「またすねているのね」
唯一の家族とのふれあいはレミリアにとって心が安らぐときである、
しかし当のフランドールは、部屋の片隅で膝を抱えたまま動かない。
「情けないわ、この悪の皇帝の妹がこんなだなんて」
「いいじゃない、どうでも」
「折角、ケーキを持ってきてあげたのに」
「ケーキ……?」
ケーキという単語にフランドールの顔が上がる、
しかしケーキの入っている箱を持ったレミリアの顔は笑みで歪んだ。
「ただし数百本の蝋燭が刺さっていてとても食べにくいけどね!」
悪のカリスマたるもの、たとえ血を分けた姉妹であっても容赦はしない。
「咲夜! 屋敷の人員を総動員してフランにケーキを食べさせてあげなさい!」
「かしこまりました」
「フラン、あなたには大して美味しくも無い私お手製のケーキがお似合いよ」
ケーキに刺さったたくさんの蝋燭の火が、まるで不夜城レッドのように燃え上がる、
フランは涙ながらにその火を少しずつ吹き消して、ケーキにフォークを刺した。
「(お姉様……誕生日覚えててくれたんだ……)」
家族にも甘い顔は見せられぬ、悪のカリスマ、それは崖に咲いた一輪の月見草。
<さらばレミリア>
「こふっこふっ……ふふ、私もとうとう天に帰る時がきたのね……」
レミリアの自室に咳の音が響く、天井を見上げながら、彼女は自らの死期を悟った、
幻想郷を征服しようと企んでから100年、その願いは叶わぬままに。
「だから無茶だったのよ……大結界が壊れそうだったからって、自分の体で引き留めようとするなんて」
「嫌だ! 死なないでよお姉さま!!」
「レミィ……あなたが先に逝ってしまうのね」
友が、メイド長とメイド達が、そして妹が心配そうに見つめる、
それでもなおレミリアはわずかな笑みを浮かべていた。
「幻想郷が幻想郷で無くなれば征服するものがなくなるわ……だから防いだ、それだけよ」
「お嬢様……」
「やだ、やだよぉ」
「パチュリー、ありがとう……ずっと友でいてくれて」
「……これからも友よ、レミィ」
「輝夜、メイド長としてフランを任せたわ……半人前でも二人一緒なら、なんとかなるでしょう?」
「……わかったわ、任せて」
「駄目っ! 行かないで! ずっと傍に居てよお姉様!」
「フラン、あなたはあなたの好きに生きなさい……それができるだけの遺産は残したわ……」
「やっ……ひぐっ……ふぇぇぇ……」
フランドールはレミリアの体にしがみついてぽろぽろと涙をこぼす、
輝夜はその頭を撫でて静かに慰めた。
「はぁ……ああ、咲夜、あなた……まだ三途の川に居たのね……」
「お姉様……もう目が……」
「幻想郷の征服は……私が生きてる間には叶わなかったわ……」
「戻って! 戻ってきてよお姉様!」
「さぁ……行くわよ、咲夜……今度は……閻魔……相手に……じご……くの…………」
「……お姉様? お姉様! 目を開けてよお姉様! お姉様ぁぁぁー!!」
悪のカリスマは友と、妹と、メイド達に見守られてこの世を去った、
その報が幻想郷を駆け巡った時、幻想郷中の者達が喪に服したという。
もしかしたら、彼女の幻想郷征服という夢は、とうに叶えられていたのかもしれない。
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流石レミリア様ですね!
とりあえず俺もそこで働かせてくれw
誤字報告を
>もしかしたら、彼女の幻想郷制服という夢は、とうに叶えられていたのかもしれない。
幻想郷征服かと
あまりの恐ろしさに思わず頭を撫でてあげたくなったよ
ニヤニヤしながら読んでたけど最後の幻想郷制服で吹いたよ
と思って読んでたら最後の誤字で盛大に吹いた。
確かみてみろ!
写真を撮るとき「にぱー」って笑顔を作るのとか良いですし、遠まわしな言動などで
色々と世話を焼く姿や死ぬまでの会話など、とても面白いお話でした。
誤字修正後に拝見しました。
自らの逃げを許さないその姿勢に乾杯。
でもその死に様をみると「無茶しやがって…」のAAが(ry
ただ<さらばレミリア>の場面で、門番どこいったかちょっと気になりました。きっとこういう時だからこそ、紅魔館を守るため門前に立つ美鈴を脳内補完。
カリスマはTPOを選ばないのですね。
素敵!
仮に、レミリアによって幻想郷が本当に征服されていたとしても、
そこは本当の理想郷になったのではないだろうか。
全てが上手い……。
1000点入れたい気分です。
良いお話をありがとうございました。
なんというカリスマ。
なんという野望。
なんという愛らしさ。
ぐっ、今度は俺の心を奪おうと言うのか…!
つーか、輝夜さま代わってくださぁぁぁぁい!
その労働条件に加え、レミリアさまのお側に仕える事が出来て、
あまつさえ、入社式にはレミリアさま直々のお姫さま抱っこですかっ!
‥美味し過ぎる(切歯扼腕し、血涙を流しつつ)
念を感じつつ高い高いしてあげざるを得ない
あまりのカリスマに思わず頭をなでなでしてしまいそうだ
非の打ち所のないカリスマ。
100点入れざるおえない!
姫様100年経っても迎え来ないのかww
えーき様の台詞まで完璧!楽しませてもらいました!
そうか、咲夜と似た能力だったから輝夜を…
享年600歳の偉大なる吸血鬼レミィちゃんここに眠る
小ネタが効いてる。
…そんなことよりも、レミリア万歳!!
こいつぁ平伏せざるを得ないっ
カリスマなレミリアをありがとう!
おぜうさま、素敵過ぎるぜww
そして後書きww
だがこのレミリア様には票を投じざるを得ない!
お嬢様、あんたって人は………
こんなカリスマがあれば幻想郷はきっと幸せになれたはず。
関係ないけどヒラコーの萌え暴君思い出した。
やばいこんなお嬢様なら絶対ついていく。毎日後ろからストーキング余裕ですよ。
どこか某ベガ氏を思い起こさせるようなお嬢様、ありがとうございました。
あと混ぜ人さんのあとがきは破壊力が大きすぎると思うんだ。
スラスラ読めて、テンポがいいですね~♪
冒頭の「私達に反逆の時」は「私達に反撃の時」の方がしっくりくるかも知れません
これが紅魔のカリスマ・・・最高すぎるぜ
このお嬢様こそ幻想郷史上最悪の悪魔であり、閻魔様の裁きは当然であると言えましょう。
そして、ただ純粋に面白かったですー!
「あなたほどの悪人には地獄すら生ぬるいですね。
転生するまでの間、冥界で茶でも啜りながら退屈極まりない日々を過ごしなさい。
それとあなたの為した悪行はもはやあなた一人で償えるものではありません。
先日こちらにやってきたメイドを拘束していますので、
彼女にも責任を負ってもらうとしましょう。一緒に冥界に行きなさい。
これからは紅魔館の住人が寿命で命を落としていく様を指を咥えて眺めているといいでしょう。
もれなくあなたと同じ場所に送ってやりますよ。
さあ行きなさい。せいぜい地獄以上の苦しみをゆっくりと味わうことです」
そして話のテンポがすばらしい。
話のテンポが良くてスラスラ読めました。最高。
最高だよれみりゃwwww
あ、いや泣きは微妙かな?とにかくグッジョブ!
それにしても後書きの山田、誤字だけで地獄行きたあ厳しくね?
もう俺なんて無限地獄じゃん...orz
本当にいいものを読ませて戴きました。
レミリア様こそ、真の支配者に相応しいっ!!
こんな素晴らしいカリスマ見たことないw
お嬢様に終身雇用されたい。
にしても輝夜、さりげなくメイド長まで登りつめてるとかw えーりんやもこたんなにやってたんだww
最高です!
その前に立ちはだかる正義のカリスマにして土着神すわちゃん!
紅魔湖の蛙たちのために立ち上がるすわちゃんをレミィちゃんは退けることができるのか!?
次回!マジカルスカーレット レミィちゃん!
第1341話 激突!紅魔湖の蛙神!
いや、すまなかったきっとレミィちゃんは幻想郷で一番人気なマスコットキャラクター
そして「悪」ということは「正義」がいるはずッ!
ということで勝手に妄想してみた
今は反省している
余りのレミィちゃんのカリスマっぷりに抱っこして
よしよししてあげたくなりました。
文句なしの最高点で!
それまで耐えたのに!
この展開は新ジャンル「萌え暴君」を思い出させてくれたわ。
キャーレミィチャンー!
実際、様々な作品の悪の組織がこういう系統ばっかりだと世界は平和になるね!w
ジーク、レミィ!!
レミリア=スカーレットマンセー
でもニート輝夜が個人的にダメだったのでこの点で。
そして輝夜はそんな嫌ならマジで代わってくれwwwwwwwww
とにかく面白かったです。
山田w
一つ気になったのが、レミリアはパチュリーの事を「パチェ」と呼ぶはずだったような・・・
このお嬢様なら俺は喜んで跪いて靴の裏舐めることもいとわんぜ
なんと恐ろしい悪よ
最高でした
カリスマとはこうやって出来るものなんだな
感動しました、実に。
スマッ!
いや、吹っ切れるな、きっと。
ゴミ拾いでいきなり撃沈して最後まで立ち直る隙がなかったよ
すばらしいカリスマ。間違いなく名作
感服致しました。納得の高評価ですね。
もう100点しか入れれないwww
レミリアマジカリスマ
個人的には1000点入れたい…!
一緒に写真撮りたいwww