地底の熱で輝く床と、半透明のモザイク硝子。地霊殿のエントランスの、ありふれた姿だ。そこに今はひとつ、異物が加わっている。
竹と呼んだ方が良いような、逞しい大笹だ。節は巨人の腕ほどもある。笹の頂点は、屋敷の天井を擦らんばかり。おくうと仲間の地獄鴉達が、地上の竹林から持ってきたそうだ。
願い事を書いた短冊、色とりどりの紙片の輪つなぎ、折り紙の薬玉。様々な飾りで、笹はデコレーションされていた。元の笹の深緑色がわからないくらいに。
エントランスの異物に首を傾げた私に、お燐は言った。七夕の笹飾りです、地上の人間に教わりました、と。
七夕。職務怠慢で引き裂かれた織姫と彦星が、年に一度出会える日だ。いちゃつきついでに下の者の願いを叶えてくれるという。短冊に願いを書いて、笹に吊るして、星空にかざすだけで。昔々、地底に下りる前にやり方を教わったことがある。
地霊殿のエントランスには、臨時の円形テーブルが出されていた。五色の、否、百色はあろうかという短冊と、作りかけの飾りとが載っている。私のペット達は皆乗り気らしく、あれやこれや願いを並べていた。お祭りを楽しむかのような、活気ある思念が伝わってくる。
「さとり様もやりましょうよ。面白そうです」
お燐は私の胸元に、薄紫の短冊と使い古しの万年筆を押し付けた。「さとり様ならもっといい筆記具も持ってるだろうけど」と、心の声が付け足される。ペットの気遣いに、私は微笑んで見せた。
お燐の良き相方、おくうは円テーブルでペンを走らせていた。フォークを握るような間違った持ち方をしている。マントのかかった鴉の翼が、物をかき集めるように大きく動く。心を視れば、食欲物欲財欲光もの欲で一杯。甘い生クリームや、旧都で見かけたのだろう子供っぽいリボン型の首飾りが、弾んで渦を巻いている。
「地霊殿の仕事が楽になりますように、もっと凄い神様の力が手に入りますように」
「おくう、書くだけじゃなくて努力もなさい」
「してますよー」
顔を上げて、おくうは太いペンを回して見せた。私の第三の目に映ったのは、お気に入りの毛布を抱えて眠る姿。果報は寝て待て?
「昼寝は努力とは言わないわ」
冷ややかに反論すると、おくうは「ちぇ」と小さく鳴いた。
どうせ適当な行事だ、私も物欲レベルの願いで済ませようか。万年筆の蓋を外して、宙に二度三度波を描いた。欲しいものは、何かあったか。紅茶が切れかけていた、そういえば角砂糖も減り気味(おくうが摘み食いしている)、靴墨が足りなくなってきている、ええと……
「お燐、見られてると書きにくいわ」
ええと、そう、視線が気になる。お燐は私の背中にへばりつくようにして、万年筆の行方を追っていた。「さとり様は何をお願いするんだろう」「知りたい」。動物らしい純粋な好奇心が、まとわりついて離れない。
「笹に吊るしてから見ればいいでしょう」
「さとり様はあたい達のお願い事を視てるでしょう。おあいこです」
確かに、私は全てのペットの願いを把握している。能力上、把握できてしまう。あっちの火焔猫はミルクに浸したビスケットを欲しがっている。左手の地獄鴉は、笹が重かった、もう運びたくないと思っている。やや離れた場所にいるこいしのペットは、自分も短冊を書いていいものか、書きたいと願っている。仕方がない、視えてしまうのだから。
そうだ、こいしのペットと言えば。飼い主のこいしはどこに行ったのだろう。周囲の思念を探るも、行き先を知る者はいない。当然か、彼女は道端の小石と同じ。誰にも感知できない場所にいる。
「こいしに短冊を渡してきます」
私はテーブル上の短冊を数枚取ると、お燐を置いてエントランスを抜けた。
私の妹は、強い感情を持たない。悔しくても地団太を踏まない。悲しくても大声で喚かない。腹立たしくても物を壊さない。ただ笑っている。小道で紋白蝶を見つけたときのように、淡白に。
激しい気持ちは、遠い場所にある。置いてきてしまった。さとり妖怪の証である、第三の瞳を閉ざしたときに。
あの子にも、願い事はあるのだろうか。
「ここにいたの」
「あー、お姉ちゃん。こっそり作ってたのに」
私室、裏庭、厨房、暖炉の前、床下。あちこち探し回って、ようやくこいしを見つけた。屋根裏部屋の手前の小さな空間で、彼女は巨大な折り紙をしていた。座布団ほどもある黒い紙を、三角に折って、折り広げて、先端を細めて。嘴と尾と、翼を作っていた。周りには完成品の鳥が四羽、翼を広げて佇んでいる。内一羽は、こいしの帽子を被っていた。
「鴉?」
隣に座って訊ねると、
「カササギだよ。知らないの、七夕のお話」
こいしは自慢げにのたまった。どこか私を見下す風がある。地上の人間と関わるようになってから、こいしは私を少し小馬鹿にするようになった。お姉ちゃん地上のこれ知ってる、知らないでしょう。そう言いたいかのようだ。心が視えないから、正解はわからないけれど。
「そのくらい知ってます」
物知りぶりたいこいしには悪いが、カササギの伝説は知っている。織姫と彦星が出会う際、カササギが橋の役目を果たすのだ。簡単に説明してやると、こいしは「お姉ちゃん知っててずるい」と頬を膨らませた。本気で怒っている様子はない。形だけの感情表現だ。
丸い頬に、私は淡い水色の短冊を押し当てた。
「飾りの前にこれ。もう書いた?」
「んうー」
こいしは唇を尖らせては引っ込め、尖らせては引っ込めした。灰緑の瞳が、暗い空間を泳いでいる。
「星にお願いすること、思いつかない」
「そう」
やっぱりか、と私は目を閉じた。この子にだって、欲はある。たまに、新しい靴が欲しい、お姉ちゃんのアップルパイが食べたい、などとねだってくることはある。けれども、派手な願い、大いなるものへの祈りはない。
「小さな願いでもいいのよ」
「それじゃつまんない」
手にした短冊を、こいしは指に巻きつけた。端まで巻いて、放した。巻物のような痕が残った。横巻きに飽きると、縦長巻きを始めた。水色の長い爪が出来た。円らな瞳は夢を見ているようで、実際には何も見ていないのだろう。
「もやもやって、してる」
掠れや沈みのない、平板な甘い呟き。普通の人間なら、何の願いも持てない自分を無価値に感じたり、嘲ったりするのだろう。こいしは違う。何の願いも持てない自分に、何の興味も持っていない。巻紙の爪の先を舐めて、「舌切っちゃったかも」と朗らかに笑っている。
妹が覚りの瞳を閉ざしたことを、私は責めない。私にだって、何も視たくないときはあるから。それに、いつかまた、開く気になるかもしれないから。彼女がさとり妖怪でなくなったわけではないから。私が独りになったわけでは、ないから。
(でも)
平らで無感情な彼女を目にする度に、私は辛くなる。降り始めの雪のように、淋しさが積もっていく。融けて平気になるまでが、長い。
気付くと、こいしが私を見つめていた。眉間に彼女の紙爪が当たる。
「痛いわ、それ取って」
「ねえ、どうして悲しい顔するの?」
楽しそうに、彼女は私の額を突いた。針で心を突かれているようだった。いっそ目を突いてもらえたらと、一瞬思った。
「してないわ」
「してたもん」
そっぽを向いて、爪の攻撃から離れた。額には幾つも紅い痕が残っていることだろう。
私は立ち上がると、
「願い事が決まったら、書いて吊るしておきなさい。明日には笹を地上へ運ぶそうよ」
「はあい」
短冊の束を押し付けた。
「貴方のペットの分も忘れずにね」
「わかってるよ」
私を見送るように、こいしは片手を挙げた。数秒後には、私のことなど忘れているに違いない。私は眉間と額を揉んだ。
エントランスへの廊下の途中で、お燐が姿を見せた。二又の黒い尻尾が、様子を窺うように揺れている。心もまた、そわそわと動いていた。
「こいし様、いました?」
「ええ。飾り作ってたわ」
「それで、さとり様のお願い事は?」
この子並みの記憶力と執着心が、こいしにも欲しいものだ。私は空惚けて、「家内安全かしら」と答えた。
「神社の祈祷じゃあるまいし」
「似たようなものよ。星は何も叶えてくれないわ」
所詮、織姫と彦星の幸せのお裾分けだ。そう何人にも分けられるものではない。地霊殿でお菓子を作って、ペット間の争奪戦になるのと同じだ。
誰も、何も変えられない。
それなのに、
「信じてやってみましょうよ」
お燐の心は熱く、期待に溢れていた。彼女にとっては初めての七夕で、待ちきれないのだろう。星の見えない地底では、七夕などありえない。地上と関わりを持つようになったからこそ出来る、一大行事だ。星そのものも珍しいのかもしれない。たかが星なのに、お燐の胸中では目映い光を放っている。視て、私が目を痛くするほどに。
――さとり様も、一緒に地上に行きましょう。明日は星が特に綺麗だそうです。
はっきりとしたメッセージを、受け取った。紅い眼差しが、頭上遠くの星のように輝いている。エントランスのペット達の、心からの喜びも感じ取れた。「明日は星見会」「お酒も持っていこう」「酒盛りもしよう」。
一時沈んだ私の気持ちを、持ち上げているかのようだった。
「たまにはいいかもしれないわね、遠足も」
お燐が一度、大きく飛び跳ねた。
「絶対ですよ」
「ええ」
「出来ればさとり様のお菓子も食べたいなー」と視えたので、それにも頷いて見せた。星型に抜いたクッキー程度なら、今からでも用意できるだろう。後は、
「そうね、こいしも連れていきましょう」
あの子にも、星空を見せてやりたい。あの子のことだから、放浪の途中で何度も星を見ているだろうけれど。明日は一緒に見て、何か、願い事をしたい。
クッキーを焼いた。ココアパウダーを混ぜるのは、止めておいた。星は黒くない。輝くものだ。表面に卵の黄身を塗るのを、お燐とおくうが手伝ってくれた。おくうは沢山味見もした。甘くし過ぎたかもしれない。別にいいか、ペットは概ね甘党だから。味覚の渋いお燐のために、生姜風味のクッキーも用意した。バスケット二つ分、これだけあれば皆で食べられるだろう。明日まで氷室で冷やしておくことにして、私室に戻った。
まだ、やっていないことがあった。
お燐に渡されていた、薄紫の短冊。自分の願い事を書いていなかった。
(私の、願い事)
家内安全、そう一言書けば済むこと。でもお燐達の楽しそうな感情を視るに、それではいけない気がした。もっと、本心から願わないと。あの子達に申し訳ない。
真っ先に胸に浮かんだのは、妹のことだった。こいしに泣いてほしい、怒ってほしい、笑ってほしい、心から。あんな掴みどころのない、ぼやけた笑顔ではなくて。
机に向かって、頭を抱えた。どう書けばいいのか、わからない。ううん、わかっている。けれども、それはもう納得したことで、ああ、
「ぅ、ん」
机の上のメモ帳に、本心を書いた。
『妹の目が元に戻りますように』
『私を独りにしないでください』
これは、短冊には書けない。恥ずかしいし、私の我儘でしかない。いけない、駄目。
(でもね、本当は)
頭を揺すった。首を左右に振った。まとまりの悪い紫の髪と、赤い覚りの瞳がふらついた。
(本当はね)
水滴がひとつ、落ちた。黒の文字が滲んで、濃青や真紅や、数多の色が飛び出した。
妹のことを思うと、悲しくなる。淋しくなる。何か私に出来ることはなかったのかと、悔しくなる。心にまたひとつ、雪が積もる。今は夏なのに。
「あ……」
閉ざした扉が、かすかに開いた気がした。木目の擦れる、古びた音がした。
「だれ? こいし?」
返事はなかった。気配もなかった。気のせいかもしれない。考え過ぎで、気が立っているのだ。
頭を冷やそう、しっかりしないと。幸せになるための行事で、へこんでいてはどうしようもない。
(私の、願い事は)
誰が見ても恥ずかしくなくて、本心をほんの少しだけ溶かした願い事は。一番あの子のためになる、私からの願い事は。
考えて、やっと書き上げた頃には、笹は運び出されようとしていた。
「どいたどいた、大笹のお通りだよ」
旧都の鬼の領域を、笹が歩いていく。おくうを先頭に、地獄鴉の大群が運んでいく。鬼達は笹の進軍を、夏祭りの出し物のように眺めていた。「いい酒の肴」、そんな想いが瞳に届いた。
笹は大量に飾りを着せられて、一本の広葉樹のように見えた。柑子色の星やら、蓮色の蝶々やらが透明な糸で結び付けられていた。こいし手製のカササギの群れも、短冊を背負ってしっかり羽ばたいていた。
「さとり様、こいし様、はぐれないでくださいね」
笹の最後尾のお燐が、後ろの私達姉妹に声をかけた。
「はぐれるわけないでしょう」
「おっきな目印だものね」
こいしはこいしなりに楽しみらしく、機械的なスキップで歩を進めている。その横を私がやや早足で歩いた。泣いたからか、徹夜のせいか、両目が少し痛い。
「お姉ちゃん、短冊は吊るした? 吊るしてきてあげようか」
「後でちゃんと吊るすわ」
上着のポケットに、短冊は入っている。一応恥ずかしくない願いにしたつもりだが、それでも人目につくのは嫌だ。後で密かに吊るすつもりでいる。
地底の道中で、笹の短冊はさらに増えていった。私のペット達が、鬼や妖怪に短冊を配って回っていた。右から左から、驚くほど多くの願いが飛び込んでくる。
『次こそ力比べで勇儀に勝ってやる』
『旨い酒が飲みたい』
『もっと巣を広げたい』
『桶を新調したい』
『皆が賑やかなのが妬ましい、全部叶いませんように』
形こそ違え、皆幸せを望んでいる。欲しいものが、願っていることがある。祈る心が、笹の行列に集っていく。願えることがあるのは、それだけでとても幸せなことだ。
(結局、こいしは何を願ったのかしら)
いつの間にか、笹の行進に合わせて手拍子が始まっていた。鬼が、嫌われ者の妖怪達が、私の可愛いペットが、妹が、手を叩いている。金物を打ち鳴らしている者もいる。
「こいし、ねえ、貴方は何を願ったの」
「探してみて。あ、ほら、もうすぐ地上!」
地底の泥や苔の匂いが、次第に弱まって切れていく。待ち切れないのか、こいしは湿った土を蹴っていち早く外へ飛び出した。
彼女の願い事は、何なのだろう。知りたい。私は妹を追うように、地面から足を離した。笹の根元の方から、目に付いた短冊を読んでいった。
『必勝祈願』違う、『仕事のミスをなくしたい』違う、『地底最強になりたい』これも違う。
探している内に、星の海に出た。薄い短冊越しに、瑠璃の空と天の河が煌めく。地上は快晴、これ以上ないほどの星見日和だった。ペットや鬼の手で笹が地に突き立てられた。笹の下にござが広げられ、地底の妖怪達の宴が始まった。歌う者あり、飲み比べを始める者あり、私の焼いたクッキーを食べる者あり。あまりの賑やかさに、近所の神社の巫女も出てきた。
私は眼下の光景を眺めつつ、こいしの短冊を星の間に求めた。
(吊るしたなんて、嘘だったの?)
そんな疑いを抱きかけたとき、見つけた。夜空に溶ける水色の短冊と、見間違えようのない妹の丸文字を。急いで飛びついて、字面を追った。
私の大切な妹の、大切な願い事は、
『お姉ちゃんが幸せでありますように』
『あと、お姉ちゃんの泣き虫が治りますように』
「こいし……」
温かで、優しかった。
読んだ途端、胸の奥が綻びた。二度と解けないと思っていた固い結び目が、端から緩んでいった。
あの子の奥底は、変わってなんかいない。こいしは人の幸せを願える、素敵な子。思い切り笑えなくても、怒れなくても、大事な妹。
真夏の雪が、融けていく。また泣きそうになった。唇を噛んだ。泣き虫は治さないと、あの子の願いだもの。
「見つかっちゃったぁ」
間の抜けた声がした。真横に、こいしがいた。かくれんぼで見つかったときのような、残念そうな響きがあった。
「うふふ。お姉ちゃんは吊るしたの?」
「探せるものなら探してみなさい」
「うん、任せて」
嘘を吐いてもばれないのが、ちょっと有難かった。
私はペット達の輪に混ざると、上着のポケットから短冊を取り出した。折り畳んでいたそれを、ゆっくり開く。
『こいしの願い事が叶いますように』
一晩かけて考えた、私の願い。精一杯、叶えなくては。叶えてやらなくては。あの子が捻り出した、一番の願い事だから。
「まだだったんですか、さとり様」
クッキーの粉で唇を白くしたお燐が、呆れたように言った。私が反論しようとしたら、頭上の真っ赤な大薬玉を指差した。小声で耳打ちする。
「あそこがいいですよ、こいし様でも見つけにくいでしょう」
他の私のペット達も、揃って頷いた。確かに、薬玉の陰なら隠し易そうだ。周囲に似たような色の短冊も散らばっているし。それに私の短冊の色は、夜には目立たない。
「そうするわ、ありがとう」
ペットの親切を受け取って、私は再び七夕の夜空に舞い上がった。鮮やかな紅で折られた薬玉は近付けば近付くほど大きく、大鬼の拳のようだった。
適当な隠し場所を探そうとしたら、見慣れた文字に出くわした。茜色の短冊に黒い墨文字。意外と達筆なそれは、お燐の短冊だ。
『さとり様が幸せに過ごせますように』
織姫や彦星がいち早く見つけられそうな、大きな文字でそうあった。近くには、おくうの黄緑色の短冊も掛かっていた。食べたいものや着けたい装備に混ざって、
『さとりさまのしあわせください』
所々鏡文字で、そう書かれていた。他のペット達のものもあった。普段、あまり良くした覚えはないのに。皆、私の幸せを祈っていた。
『さとりさまが笑っていますように』
『さとり様が元気でいますように』
『くっきーおいしかったです』
七色の願い事が、夏風にはためく。
「これ……」
「自分の幸せも祈らないとだめですよー、さとり様」
お燐の言葉に、他のペット達の心が賛同した。感謝や、優しい心があった。中には媚びも混ざっていたけれど、それは気にしないことにする。
――泣いていたって、こいし様から聞きました。困ったことがあったら、教えてください。何か力になれるかもしれませんよ。
力強いお燐の想いに、覚りの瞳がめり込みそうだった。とてつもなく嬉しくて、私は久し振りに、心から笑った。ああそうか、私もまた、笑えていなかったのか。こいしと変わらない。変わらなければならない。私は笑って、笑って、頬も唇もくっしゃくしゃにした。
「お姉ちゃん、ないよー!」
「もっとよく探してごらんなさい!」
降ってくる声に、普段出さない大声で応じた。お腹が悲鳴を上げたけれど、それすら今は愉しかった。
私はポケットに差していた万年筆を取り出すと、自分の短冊に書き足した。
弾幕のように散らばる、星の欠片の下。ひとつやふたつ願いが増えても、天上の恋人は見逃さないでくれるだろう。妹やおくうだって、うんと沢山願っているのだし。私の筆は軽快に躍った。
『ここにいる、地底の皆が幸せになれますように』
こいしも、お燐も、おくうも、ペット達も、地底の皆も。
私も含めて。
心温まる作品ありがとうございます。
なんという地霊殿。悶える。
私の理想のこいしがここにいました。
誰かの幸せを祈るのはくるしいですが、祈る相手がいるのは幸せですよね。
いい話をありがとうございます。
素晴らしいです。本当に素晴らしい。
地底の嫌われものの、その優しさに涙しました。
泣いちまったじゃないか…。
心温まる、良いお話でした。
さとりが最後に書き足した願い事や彼女たちの優しさなど、とても良いお話でした。
めちゃくちゃファンです、応援してます
今回の作品も面白かったです、ペット達の願いもこいしもみんな同じっていうのが何とも…
地霊殿の魅力はアットホームさだということを再認識させられました
涙が止まらないけど、止めたくない。
地底の人たちのつながりの深さが良かったです。
今夜は一杯やりながら願事でも考えようかな……
優しい地霊殿、
ごちそうさまです。
凄くほんわかしました。心が温かくなりました。
良い作品をありがとうございます。
とってもいいお話ですね…。
最後まで心に温もりを感じつつ読ませていただきました。
しかし、パルスィ……。
目に来た。
故に多くは語りません。最高でした。
家族っていいねって感じ
地霊殿の方々に、のんびり、七夕らしく喋ってもらったら、このようなお話になりました。桃源郷であったり、温かさであったり、アットホーム感であったり……何かしら、皆様の心に残ったのならば幸いです。
>まずは僕と握手をしてください
>これで勝つる!
お恥ずかしゅうございます。そこまで仰ってくださり、ありがとうございます。寡作なのに覚えていただけて、幸せです。
>我が家の裏庭に生い茂る竹林から手頃なものを刈って来ました
妬ましゅうございます。羨ましいお話です。
一番好きだよ。
素敵な作品をありがとうございました。
これからも頑張って下さい。
地底のみんなの願い事にほのぼのしてたら、これですよ(´;ω;`)