注意、
この話は『せっかくの二次創作だし、一人くらいはこんなさとりがいてもいいのでは?』
をコンセプトに創作されているモノです。
それにより、古明地さとりのキャラが著しく崩壊している恐れがあります。
もしも、クールだったり、しっかりしていたり等の
主に『カリスマ』のあるさとりが好きな方、見たい方はご注意ください。
問題ない方はどぞ↓へ
夜、日付の変わった時間帯
さとりは自室でベットを眺めていた。
一人で寝るには少し大きなベット
二人で寝るには少し狭いベット
中途半端な大きさのこのベットに昔は四人で寄り添う様に寝ていた。
ずっと昔、こいしが心を閉じてしまう前、お燐やお空がようやく人型に変化できるようになった頃
皆で一緒に寝ていた。
あの頃は皆まだ幼くて、ちょっとした事が不安で怖かった。
暗闇の中に何かが潜んでいそうで
夜、灯りを消すと自然と四人は集まった。
皆一人でいる事が不安だった。
一人でいると漠然とした不安に押しつぶされそうで怖かった。
だから彼女達は、夜はこのベットに四人で集まって皆で一緒になって眠った。
でもいつの間にかソレは終ってしまった。
こいしが心を閉じて三人になり
お燐とお空が成長して一人になった。
その頃にはさとりも一人でいる事が苦痛ではなくなっていた。
いつの間にか一人で眠る事が当たり前になっていた。
そうする事が普通になっていた。
一体何時からそう思うようになって、そうして来たのだろう?
さとりは一人で寝るには少し大きなベットを見て考えていた。
一人で寝るの怖い。と……
――
数時間前、地霊殿に来客者が訪れた。
来客者は地上の賢者の一人である八雲紫、彼女はスキマを使う事なく
自分の脚で地霊殿を訪れた。
一体何の用で来たのだろうか?
さとりは警戒していた。
お空の起こした一件以来、地上と地下の交流が少しずつではあるが行われる様になってきた。
しかし、こんな大物が突然地霊殿まで来るとは思っておらず、さとりは一瞬警戒した。
警戒するさとりを意に介さず、紫は温和な表情で口を開き彼女は言った。
『せっかく地下との交流が行われる様になったのですから、古の契約は忘れ
これからは地下も地上も無く友好的により良い付き合いをしていきません?』
紫のこの言葉は、警戒していたさとりにとって衝撃的だった。
そもそも、
『地上の妖怪は地下に絶対に干渉はしない、代わりに地下の妖怪は怨霊を決して地上には出さない』
それが契約でソレを破ったのはこちら(燐)だ。
彼女程の大物が突然地霊殿訪れたのは、てっきりその事を咎めるためではないかと
さとりは思っていた。
結果として交流が始まるきっかけにはなった。
しかし、だからと言って契約を破った罪は消える事はない。
変わらず笑顔の表情からは今の発言の真意は解らない。
何かの罠かも知れないと思っていた、だから念のため彼女の心も覗いた。
しかし、彼女の言葉には嘘も悪意も無く、純粋に親交を深めようと思っていた。
八雲紫は純粋に親交を深めようと提案している。
こちらの不手際を彼女が咎めてもなんら不思議は無いと言うのにだ。
だからこそ、そんな彼女の好意と言葉を断る理由は無い。
そのためさとりはソレを了承した。
その様子を見た紫は満足そうな笑みを作り、友好の証だと言って外の世界の映像を映す
テレビジョンという式と付属のビデオデッキという式、そしてその式により再生される
映像を保存する媒体であるビデオテープなる物を幾つか置いていった。
彼女が帰った後で、さとりは早速お燐とお空の二人を呼ぶとテレビジョンなる物を
使ってみることにした。
それが間違いだった……
――
テレビジョン(以下面倒なのでテレビ)に映し出される映像に三人はただ驚いた。
お空はソレが映像だと気付かず、しきりに『小さい箱の中で小人が動いてる』
とハシャイだ。
お燐は無言であったが、目を輝かせて画面からは決して視線を外す事はなかった。
そして、さとりも目の前に映る光景に感動していた。
自分はその場にはいないというのにまるでその場にいる様に錯覚する臨場感にも感動した。
だが、何よりも彼女が驚いた事は、先の展開がまったく解らない事だった。
サトリである彼女にとって、本を読んでいても劇等を見ていても
本の内容を知っている者がいれば内容が解ってしまうし、出演者の思考から先の展開が解ってしまう。
そんな彼女にとって先の全く読めないテレビの映像は新鮮で衝撃的だった。
突然の爆発シーンにビクっと驚き、主人公がいきなり転んでしまうシーンなどで
思わず笑ってしまった。
いつもは先読み出来てしまうから表紙抜けしてしまう事が多い
そんな彼女にとって心の読めないテレビは面白かった。
それによりさとりはテレビにすぐにハマった。
――
夜になり、お燐とお空が寝に行ってもさとりは一人テレビの前にいた。
眠気など忘れて映し出される映像に見入っていた。
八雲紫はなんて良い物をくれたのだろう。
華やかな映像を映すテレビに感動しながらさとりは新たなテープをビデオデッキにセットした。
さとりはその時何のテープをセットしたのか見ていなかった。
内容で言えばソレはホラー映画であった。
今までコミカルな映像や綺麗な映像を映し出していた画面は一変した。
最初の方でホラーであるとさとりは気付いていたが、怨霊を頻繁に見ている自分にとって
作り物の話なんてどうと言う事はないと軽く考えていた。
しかし、率直に言って怖かった。
人の形を保ちながら、それでも一目で異界の者だと解る霊の見た目
突然主人公の目の前に現れたり、付かず離れずで後ろを追いかけてくる様子
突然の効果音や灯りの強弱等、ストーリー全てが恐ろしさを伝えてきた。
さとりは知らぬ間に近くにあったクッションを抱きしめていた。
――
やがて、画面にはスタッフロールが流れ始める。
時間を忘れて見入ってしまっていた。
それ程凄い作品だった。
外の世界にはもう幻想は殆ど残っておらず、霊を見る事が出来る人間は
僅かばかりしかいないと聞いている。
それなのにあんな作品を作れるとは
とそこまで思い、見えないからこそかと考え直した。
見えないからこそ、本当の姿を知らないからこそ想像力をフルに使い
あの様な作品を作り上げる事が出来るのだと思うと本当に『感心』の二文字しか思いつかなかった。
「さて、あとは明日にしますか……」
時刻はもうじき日付が変わりそうな時間になっている。
さっさと寝てしまわねば明日が辛い。
テープはまだ大量にある、楽しみは取って置くべきだ。
さとりは部屋の灯りを消す。
地霊殿は真下に燃え盛る灼熱地獄跡地があるので灯りを消してしまっても仄かに明るい。
そのため、灯りを消しても真っ暗にはならず、ある程度ならば何処に何があるのかは解る。
それをさとりは便利だなと思っている。
しかし、さとりはある事に気が付いた。
真っ暗ではなく、仄かに薄明るいくらいの洋館は不気味ではないだろうか?
今立っているのは間違いなく自分の知る地霊殿だ。
地霊殿なのだが、何となく先程見ていた映画と何かシチュエーションが似てはいないだろうか?
「……」
さとりは急に不安になり無意識に自分の身を抱いた。
頭の中では先程見た映画の場面が再生されていた。
たしかいきなり振り向くとそこには……
「……ま、まぁ、私の場合は霊の心も読む事ができるから、驚かそうとしても無駄よ!」
語尾を強めた、誰かに訴える様なさとりの声が薄暗い静寂の中に響く
しかし、どこからも返答は無く静寂が破られる事はない。
振り向いてもそこには何もいない。
当たり前だ、ここにはさとり以外誰もいないのだから誰もいない。
お燐とお空はもちろん霊の類だっていない、ゆえに誰の心の声も聞こえない。
その事を確認してさとりは安堵する。
まったく自分らしくもない。
そもそも、怨霊の多くいる地下の地霊殿の主たる自分が、たかだか作り物の映像を見ただけで
こんなに取り乱してしまうとは……
「はぁ、さっさと寝よう……」
どうかしていた。
先程の映画の完成度があまりにも優れていた事で過敏に反応してしまったのだろう。
『くだらない』と、そう思い自室に向かおうとした時
――ピチャーン
静寂を打ち破る様な水滴の音が響いた。
その音が余りにも突然だったため
「ふぇ!?」
変な奇声を発してしまった。
思わず音の方を見れば、台所の蛇口から水滴が滴っていた。
お燐かお空が水でも飲んで蛇口を閉めるのがあまかったのだろう。
水滴は再び
――ピチャーン
と静寂を破る音を薄暗い空間に響かせた。
さとりは足早に蛇口まで行き栓を力いっぱい閉めた。
「べ、別に怖かったからではないです、えーと、そうただ、水があのまま出続けては
勿体無いと思ったからだです」
さとりは誰もいない空間で弁明するかのように一人呟く。
そうでもしなければ不安を消せそうになかった。
正直に言えば先程みた映画の内容がもはや鮮明に思い出されていた。
「あんなの見るんじゃなかった……」
後の祭りである。
さとりはこれから自分の部屋に一人で向かわねばならない事を考えて頭を抱えた。
仄かに明るく、不気味さのあるこの長い廊下を進まねばならない。
嫌だ、怖い。
いっそ途中にあるお燐かお空の部屋で一緒に寝るのはどうだろう?
「……それもいいかもしれない」
しかし、突然二人の部屋に行ってもどちらも寝てしまっているだろう。
起こしてしまっては可哀想だし、主人としてのプライドもある。
あの二人のどちらかから『怖いから一緒に寝てください』とか言われたら
喜んで一緒に寝よう。
しかし、自分から行くのはいただけない。
何か格好悪い気がする。
「大丈夫、私、強い子、我慢、できる」
自己暗示をかける様にブツブツと呟きながらさとりは部屋向かった。
怖さを紛らわせるためにやっている事だが
正直、ブツブツ何か呟きながら俯いて歩く彼女の姿が一番不気味で怖かった。
――
とくに何事もなくさとりは部屋に着いた。
ここまでくると安心したものである。
周りにある者も部屋の広さも全て把握している。
此処ほど安心できる空間は他にはない。
「ふあ……」
安心したら欠伸が出た。
さぁ、明日も早いからさっさと寝よう、とベットに近づいた時一つ思い出した。
映画のワンシーン
ヒロインが自室寝ているとベットの下から変な音が聞こえてくる。
不審に思った彼女はベットの下を確認する。
するとそこには霊がいて、目があった瞬間霊は彼女の腕を掴むというシーンがあった。
もしも、このベットの下にもそんな『何か』がいたら……
さとりは口に溜まった唾液を飲み込んだ。
『ゴクリ』という音がやけに大きくかんじた。
「……っ」
いやいや大丈夫だ、ベットの下には何もいない。
だから下をわざわざ確認する必要はない。
でも、何かがいそうで怖い。
「……誰も、いませんよね?隠れていても無駄ですよ?いるならさっさと出てきなさい
……いや、やっぱり出てこなくてもいいです」
もはや彼女は見た目通りの霊を怖がる年齢の子供の様になっていた。
(とりあえず落ち着け、冷静になるんだ、まだ慌てる時間じゃない)
「……ふぅ」
不安を肺に溜まった空気と共に吐き出すと少し落ち着いて冷静さが戻ってきた。
何だ自分は何をやっているんだ?
さとりは頭を抱えた。
霊なんていたっていいじゃないか
ここは地上と切り離された世界、地獄だった場所だ。
霊(怨霊だが)はそこ等中どこにでもいるじゃないか。
しかもここはどこだ?
地霊殿だ。
自分は誰だ?
怨霊も恐れ怯える少女だぞ!?
たかだか人間が作っただけの話(出来はよかった)を見ただけだ。
なんて事はない唯の想像でしかない空想の話を見ただけじゃないか。
自分は本物の霊を知っているし、普段から怨霊に接している。
さっきみた映画何かよりも凄い外見した奴だって見た事がある。
何よりも霊からも同族である妖怪からも自分は恐れられている。
そんな自分が何を恐れると言うのだ。
「馬鹿馬鹿しい……」
冷静さを取り戻し、強がってみると何だか怖がっていた自分が馬鹿らしく思えてきた。
さぁ、今度こそさっさと寝てしまおう。
さとりはベットに近づき枕を手にするとそのまま部屋を後にした。
――
寝苦しさを感じてお燐は目を覚ました。
何だか腰の辺りに違和感を感じる。
「……またか」
寝ぼけた頭で大体を理解した。
きっとお空だろう。
彼女はトイレに起きた時などに寝ぼけて戻る部屋を間違える時がある。
その時お空は寝ぼけている事と鳥目のために、ベットで寝ているお燐を自分の部屋の抱き枕と
勘違いして、お燐に抱きつきそのまま寝てしまう事がある。
毎度毎度その度に注意しているのだが、すぐに忘れてしまうため未だに直らない。
「……お空、寝苦しいんだけど?」
お燐の少し不機嫌な言葉、しかしソレに対しての返答は
「うにゅ?」
何故かベットの横から聞こえてきた。
「……アレ?」
見ればお空はこれからお燐のベットに入ろうとしている所だった。
「ん~?お燐なんで私の部屋にいるの?」
「いや、部屋間違ってるのはアンタだよ……、ってじゃあ何がアタイのベットの中にいるの!?」
お燐は慌てて布団を捲る。
そこにはさとりがいた。
さとりはジッとお燐を見つめている。
「あら、どうしたのお燐?」
「……あの、さとり様何してるんですか?」
「ええ、地上の方達と親交を深める前に、まずはペット達と親交を深めようかと思いまして」
「それで?」
眠い事もありお燐の言葉は普段よりも不機嫌そうであった。
しかし、さとりはそんな事気にはしない。
「一緒に寝ましょう?」
「……正直寝苦しいんですけど」
「まぁ、いいじゃないですかたまには、さぁ、お空も一緒に寝ましょう」
「は~い」
さとりの言葉にノリノリでお空もベットに入ってくる。
それにより一人用のベットはギュウギュウになってしまった。
「さとり様、狭いです」
「いいじゃないですかたまには、昔はこうして一緒に寝ていたじゃないですか?ねぇお空?」
「はい、皆一緒で嬉しいです!」
「ほらお空もこう言ってますから、さぁ寝ましょう、皆で一緒に寝れば何も怖い事
ありませんからね」
「……?」
怖い?まぁ、いいか……?
もはや何を言っても聞かなそうなお空と、普段と何かがと違うさとり
その二人の扱いが面倒になってきたのでお燐もどうでもよくなってきた。
なによりぶっちゃけ早く寝たかった。
――
早朝
ベットからすやすやと穏やかな寝息が二人分聞こえてくる。
その寝息をお燐はベットの下で聞いていた。
どちらか知らないがあの後どちらかがお燐を蹴り落とした。
別にそこまでは気にしない。
昔からそうだった。
だからなんとなく予測していた。
でも、その後の事は予測していなかった。
昔は、皆で寝ていた頃は自分が戻る場所があった。
しかし、身体の大きくなった今は……
お空とさとりは気持ち良さそうに寝ていた。
起こしてしまうのが気の毒に感じるくらいに気持ち良さそうに寝ていた。
「いや、こうなる事は解ってたよアタイは……」
お燐は床に寝転がった状態で呟いた。
うん、こんなさとりんもいいと思う。
ただ、何か開業がへんだったりした気がしたんでこの点数。
夜に車を運転する際、まず後部座席を確認してた時期があったなぁ
……何かいそうな気がしてw
>変な奇声を発してしまった
この部分に激しく反応している自分がいる・・・・
俺が抱きしめてやるy(テリブルスーヴニール
>大丈夫、私、強い子、我慢、できる
俺が傍にいてやるから安心s(小悪霊復活せし
>もしも、このベットの下にもそんな『何か』がいたら……
やべ、ばれたk(サブタレイニアンサン
どこかの瀟洒なメイドさんが見たらヤバそうだ
素晴らしいさとり様をありがとう!
しかし、シリアスから入っていっても行動は少女なさとり様は流石地霊殿の主といったところですね。
さとり様可愛いです。
うまいアイディアだ。
そして恐怖したさとりにいとおしさを感じるのは、庇護欲ゆえか、それとも嗜虐欲ゆえか。
ともかく、クッションを抱っこするさとりがひたすらかわいい作品でした。
お見事。
可愛さとは主観だけでは巧く表現できないから、最後に燐の視点にしたのも良い手法だなーと思いました。
寝顔は自分じゃ見れませんしね。
物語的にはあとひとひねり欲しいかな。こいしと絡めれば何らかの意味を発生させることができそう。恐怖の克服とか。
そんな感じでこの点数に。
これからも頑張ってへたりを続けて下さい!
明るくたって一瞬ビビルと思うのですよ。燐の赤毛がもしゃもしゃはみ出てたら。