七人の死神 ♪BGM~地上の星
あの世のとある一角にある小さな喫茶店に、六人の死神が集まっていた。
長髪な者、眼鏡をかけているもの、スニーカーを履いているもの…。
彼らの共通点は、鎌を背負っていることと、皆酷く真剣な顔をして机の上の灰皿を見つめていた。
やがて痺れを切らしたように、どうやらリーダー格である長髪の死神が言った。
「やっぱりさぁ…」
自信を含む、真っ直ぐな純粋な眼で仲間達を見据えて言った。
「映姫様はスパッツ履いてると思うわけよ、スパッツ」
最初に断っておくと、彼らは真剣だ。真剣と書いてマジだ。
これは、あの四季映姫ヤマザナドゥのスカートの中が知りたいという男たちの、涙の物語である。
死者が集まる最果ての地、彼岸。
紫色の桜が咲く異変が終わり、死神達の非日常も終わり、役一部を除いて死神達は通常業務に戻っていた。
その最果てにある女将さんが美人であると評判である喫茶店「コマチ」に、彼らは集まっていた。
よく言えば理想、悪く言えば妄想を熱く語り合っていた。…いや、妄想だ。
「いや、シンプルにドロワーズだろう」
屈強そうな、ガッシリとした死神が言った。彼の頬には小さな傷がある。
「俺は縞パンがいいなぁ…縞パンはいいよ、リリンの生み出した文化の極みだ」
金髪の死神が遠い目をしながら言った。
「ブルマもいいぞ、ブルマも…あれは太ももの形がよくわかる」
小太りな死神が、お茶をすすりながら言った。
「ふんどしだよふんどし、ふんどしも良いぞおふんどし」
特に特徴的な部分は無いが、下駄ではなくスニーカーを履いている死神が言った。
「ノーパン」
その時死神達に電流走る―――各々が動きを止め、発言者を仰ぎ見た。
「ノーパン、ナッシングパンティ」
一見すると女性のように見える死神が、なんでもないことのように言い切った。
それにしてもこいつらは喫茶店でなんて話をしているをしているんだろう。
たとえここがエヴァンゲリヲン新劇場版:破の入場待ちの列であってもこいつらは同じような話をするのだろう。
「でも、問題はどうやって確かめるかだな」
長髪の死神が、懐から取り出した紙巻煙草に火をつけながら言った。
「家に忍び込み、洗濯物を見る」
「馬鹿野郎がッッッ!!」
中性的な顔の死神の発言に対し、屈強な死神が机を粉砕する勢いで机を叩き、立ち上がった。
「履いてないおぱんちゅをみて、ドロワーズを見て、何が楽しいんだ!!ええ!おい!!
どこがいいんだ!あのおみ足の間に佇む履物、湿度やぬくもりを感じさせるあの神々しい
ものが見たいんじゃないのかお前は!!ええ!?」
「落ち着け!興奮するんじゃない、クールになれよ!」
金髪の死神が立ち上がり、屈強な死神を宥めた。
「フーッ、フーッ…すまん…取り乱した、落ち着こう」
「よし…話を戻そうか、何かいい案はないか?」
「失礼ですが、おぱんちゅを見せていただけませんか?と聞く」
「否、土下座しようとなんだろうと、口頭で頼んでも見せてはくれまい」
「弾幕を挑み、隙をついて足を掴んで逆さまにする」
「否、ただの死神が勝てるわけないでしょ?」
「いや、俺は花映塚に関してはLをミスティアでクリアする程度の腕前はある」
スニーカーの死神が言った。ゲームと現実(あの世だが、今上手いこと言った)の区別点について小一時間問い詰めたい。
「でもどうするんだ、一瞬で距離を詰める技術でもないと消し炭だぞ」
そう、四季映姫にはあれがある。
―ラストジャッジメントが。
威力はマスタースパークには一歩及ばないが、持続性、同時発射数、操作性から見るとまさに決戦兵器である。
及ばないと言っても、巧みに操作することで紅魔館くらいの建物なら30秒もかからず壊滅できるだろう。
因みに出力を極小に調整することによって庭手入れにも使える、便利だ。
その後も何個か案を出したがまとまらず、結局弾幕勝負でというのが最善策となった。
灰皿はいっぱいになっていた。
「ようするに…死人も出さず、一対一で弾幕戦で近づき、おぱんちゅを拝む、か…」
長髪が項垂れながら言った。
「まさに無理難題だな」
小太りが言った。周りの顔も暗く、いわゆるお葬式ムードだ、あの世なのに(上手い!)
「いや…この世に一つだけ、それを可能にする方法がある」
店のキッチンの方から楽しそうな女性の声が聞こえた。
「どうだい…その計画、あたいにも一枚噛ませてみないかい?」
六人の死神の机に、一人の女死神が座った。これで死神は七人になった。
その女死神は小野塚小町、彼岸で胸も揉みたい死神、挟みたい(何を?)死神、抱かれたい死神ナンバー1に選ばれている。
まあそのランクもこの六人が勝手に作ったものだが。
「んで…あんたらは何だ、映姫様の下着を拝むための算段を立ててたってのかい?」
小町はキセルに煙草の草を詰めながら言った。長髪がマッチをすって火を渡した。
「ん、サンキュ」
「小町姉さん…畏れ多いんですが…下着ではなくおぱんちゅと言ってくださいせんか?」
「は、なんて?」
「「「「「「おぱんちゅ」」」」」」
六人の死神の合唱。組曲「スカートの中の浪漫」の第一楽章でだ、嘘である。
「お、…おぱん…ちゅ?」
かなり恥ずかしそうに小町が言う、当たり前だ。普通なら殴るなりなんなりする所だが、彼らの目がマジなのでやめた。
挟まれそうだし(何を?)
彼らは計画を煮詰め、ようやく日程と方法が決まった。
彼らは涙し、喜び準備を進めた。各自がカメラを買い、ビデオカメラを買い、フィルムを買った。
小町は寝た。
決戦当日。
目の下に隈を作った映姫が、八意製薬の栄養ドリンクを片手に裁判しつから出てきた。
「お疲れ様です、四季様」
「ああ、お疲れ様です…あなたはまたそんな靴を履いて…」
映姫に声をかけたのはスニーカーを履いた死神だった。その後方には他の六人も居る。
「えー、下駄じゃないと駄目ですか?」
「いえ、そういうわけじゃないです。見たところ結構古そうなので…そろそろ新しいものを買ったほうがいいのでは?」
小首を傾げて映姫は言った。…どうしよう、とスニーカーは思った。
(こんな部下思いの、可愛いお方を公衆の面前で辱めるというのか…
きっと泣いてしまうだろうな……やっべ、すげえ興奮する)
所詮変態である。
スニーカーは前回の小町とのブリーフィングを思い出した。
『あの人に弾幕をさせるのは難しい、挑発しすぎてもブチ殺させるのがオチだ。だから弱味を握って言うことを聞かすんだ』
「そういえば映姫様…」
「はい?」
(言うのか、これを…しかし、やるべきことなのだ、俺にしかできないんだ)
スニーカーは息を飲み、心臓を破裂させん勢いで鼓動を早めながら、言った。
「三日ほどまえに、見事な地図をおかきになりましたね?」
落雷。
そうとしか言いようがない、まさに身体に電流が走ったように身体をビクンと跳ねさせ、一瞬硬直した。
「ぇ…あ…うぁ?うああ!?」
顔を真っ赤にしながら、映姫は呻いた。
その姿がスニーカーならずその場全員の嗜虐心を刺激した。
当然だろう、いつも気丈に振舞っているあの小さな上司が実際に子供だが、子供のような失態を晒されているのだ。
特に小町。自身の身体を抱きしめるようにしながら、背徳感のようなゾクゾクとした快感を楽しんだ。
目元に涙を浮かべた映姫を見て、調子に乗ったスニーカーは続けた。
「確か天狗が面白い記事欲しがってたんですよねー、閻魔様が幻想卿の地図を執筆!とかよくないですか?ん?」
一瞬のなんのことだかわからなかった映姫だが、花の異変の時の鬱陶しい烏天狗の事を思い出し、身体を凍らせた。
(それだけは阻止しなくちゃ…)
グッ、と奥歯を砕かん勢いで噛締め、これから起こりうる全てのことを覚悟し、映姫は言った。
「…なにが、望みなんですか?」
―身体を求めてくるならば、殺ってしまおう…こんなところで純潔を散らすくらいなら。
(懐の小刀を抜いて、撥ねる。すかさずスペルで、消す。大丈夫、私にならできる…できるのよ。そう、私はサソリの)
映姫が物騒なシミュレーションから自己暗示に切り替えている最中、スニーカーも脳内会議で忙しいようだった。
(正直、ここで一晩お願いしますって言っても大丈夫な気がしてきた…)
スニーカーはチラリと6人の仲間たちのほうを見やる。彼らはこっちを心配と期待の目で見ていた。
(いや、やめておこう…なんか人というか死神として間違ってる気がするし、やっぱりみんなを裏切れない)
スニーカーはこの先、彼の理性が仲間達全員を救ったことを知ることはないだろう、そういうことってよくあるよね。
両者の思考が混沌へと混ざり合う中、沈黙を破ったのはスニーカーだった。
「弾幕を…していただけませんか?」
「へっ!?………弾幕、ですか?それはどういった意味で?なんの隠語ですか?比喩ですか?」
一瞬呆気に取られた映姫だが、彼女は今疑心暗鬼ヤマザナドゥとなっているのでまくし立てるように言葉の裏を勘ぐっていた。
「いえいえ、普通のスペルとかを使う弾幕ごっこですよ?」
「ああ…分かりました。最近体も鈍ってますし、やりましょう。…外に行きましょうか」
七人の死神は気づかなかった。この小さな閻魔が、野獣のように歯を剥いて笑ったことを。
川原といえば友情を拳で語らう場所として創作物語では定番とされている。
まさか川原の神も弾幕の雨が降るとは思わなかっただろう。
「では、行きますよー」
小町が開始の合図を取っていた。何故かビデオカメラを片手に。
両者は50間ほど離れた場所におり、スニーカーは緊張した様子で、対照的に映姫は余裕の表情で立っていた。
可愛らしい花のような、しかしどことなく怪しい笑顔を浮かべ、50間離れたスニーカーを見据えていた。
―小町が左手を上げ
「両者、用意」
―拳を握り
「試合…」
―振り下ろした。
「開始(ダヴァイ)ッッ!!」
「豚のような悲鳴を上げろ」
小町が試合開始の合図をするが早いか、映姫の言葉とともに周りに四つの光球が展開し、十字に光ったその瞬間―
スニーカーの居た半径3間が消し飛んだ。地面に見事なクレーターが形成され、砂埃が舞った。
「りゅ…隆司ィィィィィィ!!」
屈強そうな死神が叫んだ、スニーカーは隆二というらしい。他のものは唖然としている。小町を除いては。
「こっ…」
舞い上がった砂煙の中から、スニーカー改め隆二に両足を捕まれ、逆さ吊りになっている映姫と、それをしている隆二の姿が浮かんだ。
顔を真っ赤に染め上げ、両手でスカートを押え、下着を見せまいとしている映姫は迫力も威厳も無い姿で叫んだ。
「小町ィィィィィィィ!!!」
「あーいいよいいよ映姫様!そうそうこっちにもっと目線頂戴ね!うーん堪らんッ!」
「あなたなにビデオ回してるんですか!?」
そう、粉々に消し飛んだと思われた隆二は、小町の「距離を操る程度の能力」によって一瞬で映姫との距離を詰めていたのだ。
確実に仕留めた。ただの死神があの技を耐えられるわけがない。
その慢心、が映姫を油断させた。
隆二は片腕で映姫の脚を掴み、空いた手でスカートのチャックに指をかけた。
「や…やめ…!」
(スパッツであってくれ…!)
リーダー格であったはずの長髪の死神が願った。
(ドロワーズであってくれ…頼むッ!)
屈強そうな死神が祈った。
(縞パンだ…縞パンなんだろ!?)
金髪の死神は信じた。
(ブルマだ!ブルマに決まっている!)
小太りな死神は確信した。
(あたいは正直どうでもいいけどね、カメラに収めて売っぱらうだけさ)
小町は汚かった。汚いな流石小町汚い。
(ノーパンにファインダーを合わせてシャッター、ノーパンにファインダーを合わせてシャッター)
中性的な顔の死神は一味違った。
(ふんどし…が良いと思っていた…しかし、違う)
「俺はッ…幸せだ!お前らとずっと作戦を練って、ただのくだらない話し合いからこんなことになって…
小町姉さんまで一緒になってくれて…」
思わず隆二は叫んだ。志を共にした素晴らしい仲間達へ向かって。
「いくぞお前ら!全てのおぱんちゅにぃぃぃぃぃぃぃぃ……」
スカートのチャックは全開だ、もうあと少し力を込めれば、念願のおぱんちゅだ。
隆二はボタンに手をかけた。
指でボタンを摘んだ。
「「「「「「「カンパァァァァァァァァァァァァァァァイイ!!」」」」」」」
はじけ飛ぶボタン、吹き飛ぶスカート。そして…隆二に電流走る。
「く…」
「どうした隆二!!」「スパッツか!?スパッツなのか!?」
隆二と映姫の間には完全な沈黙が流れていた。あれだけ暴れていた映姫も身じろぎ一つしていない。
やがて隆二は全身の毛穴から血が噴出したような表情になり、魂から叫んだ。
「く…クマさんのプリントおぱんちゅだァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!三枚で千円のやつだァァァァ!!」
「「「「「「な…」」」」」」
「「「「「「なんだってェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!?」」」」」」
六人は恐れ慄いた、なんと恐ろしいことだろう…普通のパンツとは!これには流石の死神も大泣き。
隆二は思わず手を離して両手で顔を覆った。映姫はゴキンと音を立てて頭から地面に落ちた。
辺りには重苦しい失望と絶望が漂っており、多くの者は涙を流し、嘆き悲しんだ。
さながら甲子園の決勝戦の試合終了後のようだ、ただ違うのは勝者が居ないことだろう。
…いや、勝者は居ないが、笑っている者は居る。
その白い棒のようなふとももを外界に晒し、口からは「ふふふ…」と笑いが漏れている。
据わった眼は空を見ていて、右手には小刀を持っている。
おぱんちゅにプリントされているクマさんが、獰猛に牙を剥いたような気がした。
そして、四本の光の柱が発生した。
この事件、「彼岸の屍喰熊事件」彼岸に遊びに来ていたメディスンによって解決された。
たまには鈴蘭畑から出てみようと思い立ち、花が綺麗だった彼岸に行ってみたところ、サーチライトのような
光が見えたので、お祭りだろうかと思い近づいたら暴れ狂っている映姫のラストジャッジメントだったという訳
である。
これは不味いと思いほぼ瞬間的にメディスンは神経性の毒を発生させ、映姫を気絶させた。
被害者達は見るも無残な状態になっていたので、永遠亭から医師を呼んできたというわえだ。
そして哀れ映姫は永遠てゐ、いや亭のウサギの一人によって事の真相を垂れ込められ、次の日の新聞の一面
を飾ってしまった。クマさんおぱんちゅを、特にクマさんのプリントを堂々と晒している姿が見開きの写真だった。
余談だが、この事件の後幻想卿ではプリントパンツが大々的に流行ったそうな。
~ おFin ~
あの世のとある一角にある小さな喫茶店に、六人の死神が集まっていた。
長髪な者、眼鏡をかけているもの、スニーカーを履いているもの…。
彼らの共通点は、鎌を背負っていることと、皆酷く真剣な顔をして机の上の灰皿を見つめていた。
やがて痺れを切らしたように、どうやらリーダー格である長髪の死神が言った。
「やっぱりさぁ…」
自信を含む、真っ直ぐな純粋な眼で仲間達を見据えて言った。
「映姫様はスパッツ履いてると思うわけよ、スパッツ」
最初に断っておくと、彼らは真剣だ。真剣と書いてマジだ。
これは、あの四季映姫ヤマザナドゥのスカートの中が知りたいという男たちの、涙の物語である。
死者が集まる最果ての地、彼岸。
紫色の桜が咲く異変が終わり、死神達の非日常も終わり、役一部を除いて死神達は通常業務に戻っていた。
その最果てにある女将さんが美人であると評判である喫茶店「コマチ」に、彼らは集まっていた。
よく言えば理想、悪く言えば妄想を熱く語り合っていた。…いや、妄想だ。
「いや、シンプルにドロワーズだろう」
屈強そうな、ガッシリとした死神が言った。彼の頬には小さな傷がある。
「俺は縞パンがいいなぁ…縞パンはいいよ、リリンの生み出した文化の極みだ」
金髪の死神が遠い目をしながら言った。
「ブルマもいいぞ、ブルマも…あれは太ももの形がよくわかる」
小太りな死神が、お茶をすすりながら言った。
「ふんどしだよふんどし、ふんどしも良いぞおふんどし」
特に特徴的な部分は無いが、下駄ではなくスニーカーを履いている死神が言った。
「ノーパン」
その時死神達に電流走る―――各々が動きを止め、発言者を仰ぎ見た。
「ノーパン、ナッシングパンティ」
一見すると女性のように見える死神が、なんでもないことのように言い切った。
それにしてもこいつらは喫茶店でなんて話をしているをしているんだろう。
たとえここがエヴァンゲリヲン新劇場版:破の入場待ちの列であってもこいつらは同じような話をするのだろう。
「でも、問題はどうやって確かめるかだな」
長髪の死神が、懐から取り出した紙巻煙草に火をつけながら言った。
「家に忍び込み、洗濯物を見る」
「馬鹿野郎がッッッ!!」
中性的な顔の死神の発言に対し、屈強な死神が机を粉砕する勢いで机を叩き、立ち上がった。
「履いてないおぱんちゅをみて、ドロワーズを見て、何が楽しいんだ!!ええ!おい!!
どこがいいんだ!あのおみ足の間に佇む履物、湿度やぬくもりを感じさせるあの神々しい
ものが見たいんじゃないのかお前は!!ええ!?」
「落ち着け!興奮するんじゃない、クールになれよ!」
金髪の死神が立ち上がり、屈強な死神を宥めた。
「フーッ、フーッ…すまん…取り乱した、落ち着こう」
「よし…話を戻そうか、何かいい案はないか?」
「失礼ですが、おぱんちゅを見せていただけませんか?と聞く」
「否、土下座しようとなんだろうと、口頭で頼んでも見せてはくれまい」
「弾幕を挑み、隙をついて足を掴んで逆さまにする」
「否、ただの死神が勝てるわけないでしょ?」
「いや、俺は花映塚に関してはLをミスティアでクリアする程度の腕前はある」
スニーカーの死神が言った。ゲームと現実(あの世だが、今上手いこと言った)の区別点について小一時間問い詰めたい。
「でもどうするんだ、一瞬で距離を詰める技術でもないと消し炭だぞ」
そう、四季映姫にはあれがある。
―ラストジャッジメントが。
威力はマスタースパークには一歩及ばないが、持続性、同時発射数、操作性から見るとまさに決戦兵器である。
及ばないと言っても、巧みに操作することで紅魔館くらいの建物なら30秒もかからず壊滅できるだろう。
因みに出力を極小に調整することによって庭手入れにも使える、便利だ。
その後も何個か案を出したがまとまらず、結局弾幕勝負でというのが最善策となった。
灰皿はいっぱいになっていた。
「ようするに…死人も出さず、一対一で弾幕戦で近づき、おぱんちゅを拝む、か…」
長髪が項垂れながら言った。
「まさに無理難題だな」
小太りが言った。周りの顔も暗く、いわゆるお葬式ムードだ、あの世なのに(上手い!)
「いや…この世に一つだけ、それを可能にする方法がある」
店のキッチンの方から楽しそうな女性の声が聞こえた。
「どうだい…その計画、あたいにも一枚噛ませてみないかい?」
六人の死神の机に、一人の女死神が座った。これで死神は七人になった。
その女死神は小野塚小町、彼岸で胸も揉みたい死神、挟みたい(何を?)死神、抱かれたい死神ナンバー1に選ばれている。
まあそのランクもこの六人が勝手に作ったものだが。
「んで…あんたらは何だ、映姫様の下着を拝むための算段を立ててたってのかい?」
小町はキセルに煙草の草を詰めながら言った。長髪がマッチをすって火を渡した。
「ん、サンキュ」
「小町姉さん…畏れ多いんですが…下着ではなくおぱんちゅと言ってくださいせんか?」
「は、なんて?」
「「「「「「おぱんちゅ」」」」」」
六人の死神の合唱。組曲「スカートの中の浪漫」の第一楽章でだ、嘘である。
「お、…おぱん…ちゅ?」
かなり恥ずかしそうに小町が言う、当たり前だ。普通なら殴るなりなんなりする所だが、彼らの目がマジなのでやめた。
挟まれそうだし(何を?)
彼らは計画を煮詰め、ようやく日程と方法が決まった。
彼らは涙し、喜び準備を進めた。各自がカメラを買い、ビデオカメラを買い、フィルムを買った。
小町は寝た。
決戦当日。
目の下に隈を作った映姫が、八意製薬の栄養ドリンクを片手に裁判しつから出てきた。
「お疲れ様です、四季様」
「ああ、お疲れ様です…あなたはまたそんな靴を履いて…」
映姫に声をかけたのはスニーカーを履いた死神だった。その後方には他の六人も居る。
「えー、下駄じゃないと駄目ですか?」
「いえ、そういうわけじゃないです。見たところ結構古そうなので…そろそろ新しいものを買ったほうがいいのでは?」
小首を傾げて映姫は言った。…どうしよう、とスニーカーは思った。
(こんな部下思いの、可愛いお方を公衆の面前で辱めるというのか…
きっと泣いてしまうだろうな……やっべ、すげえ興奮する)
所詮変態である。
スニーカーは前回の小町とのブリーフィングを思い出した。
『あの人に弾幕をさせるのは難しい、挑発しすぎてもブチ殺させるのがオチだ。だから弱味を握って言うことを聞かすんだ』
「そういえば映姫様…」
「はい?」
(言うのか、これを…しかし、やるべきことなのだ、俺にしかできないんだ)
スニーカーは息を飲み、心臓を破裂させん勢いで鼓動を早めながら、言った。
「三日ほどまえに、見事な地図をおかきになりましたね?」
落雷。
そうとしか言いようがない、まさに身体に電流が走ったように身体をビクンと跳ねさせ、一瞬硬直した。
「ぇ…あ…うぁ?うああ!?」
顔を真っ赤にしながら、映姫は呻いた。
その姿がスニーカーならずその場全員の嗜虐心を刺激した。
当然だろう、いつも気丈に振舞っているあの小さな上司が実際に子供だが、子供のような失態を晒されているのだ。
特に小町。自身の身体を抱きしめるようにしながら、背徳感のようなゾクゾクとした快感を楽しんだ。
目元に涙を浮かべた映姫を見て、調子に乗ったスニーカーは続けた。
「確か天狗が面白い記事欲しがってたんですよねー、閻魔様が幻想卿の地図を執筆!とかよくないですか?ん?」
一瞬のなんのことだかわからなかった映姫だが、花の異変の時の鬱陶しい烏天狗の事を思い出し、身体を凍らせた。
(それだけは阻止しなくちゃ…)
グッ、と奥歯を砕かん勢いで噛締め、これから起こりうる全てのことを覚悟し、映姫は言った。
「…なにが、望みなんですか?」
―身体を求めてくるならば、殺ってしまおう…こんなところで純潔を散らすくらいなら。
(懐の小刀を抜いて、撥ねる。すかさずスペルで、消す。大丈夫、私にならできる…できるのよ。そう、私はサソリの)
映姫が物騒なシミュレーションから自己暗示に切り替えている最中、スニーカーも脳内会議で忙しいようだった。
(正直、ここで一晩お願いしますって言っても大丈夫な気がしてきた…)
スニーカーはチラリと6人の仲間たちのほうを見やる。彼らはこっちを心配と期待の目で見ていた。
(いや、やめておこう…なんか人というか死神として間違ってる気がするし、やっぱりみんなを裏切れない)
スニーカーはこの先、彼の理性が仲間達全員を救ったことを知ることはないだろう、そういうことってよくあるよね。
両者の思考が混沌へと混ざり合う中、沈黙を破ったのはスニーカーだった。
「弾幕を…していただけませんか?」
「へっ!?………弾幕、ですか?それはどういった意味で?なんの隠語ですか?比喩ですか?」
一瞬呆気に取られた映姫だが、彼女は今疑心暗鬼ヤマザナドゥとなっているのでまくし立てるように言葉の裏を勘ぐっていた。
「いえいえ、普通のスペルとかを使う弾幕ごっこですよ?」
「ああ…分かりました。最近体も鈍ってますし、やりましょう。…外に行きましょうか」
七人の死神は気づかなかった。この小さな閻魔が、野獣のように歯を剥いて笑ったことを。
川原といえば友情を拳で語らう場所として創作物語では定番とされている。
まさか川原の神も弾幕の雨が降るとは思わなかっただろう。
「では、行きますよー」
小町が開始の合図を取っていた。何故かビデオカメラを片手に。
両者は50間ほど離れた場所におり、スニーカーは緊張した様子で、対照的に映姫は余裕の表情で立っていた。
可愛らしい花のような、しかしどことなく怪しい笑顔を浮かべ、50間離れたスニーカーを見据えていた。
―小町が左手を上げ
「両者、用意」
―拳を握り
「試合…」
―振り下ろした。
「開始(ダヴァイ)ッッ!!」
「豚のような悲鳴を上げろ」
小町が試合開始の合図をするが早いか、映姫の言葉とともに周りに四つの光球が展開し、十字に光ったその瞬間―
スニーカーの居た半径3間が消し飛んだ。地面に見事なクレーターが形成され、砂埃が舞った。
「りゅ…隆司ィィィィィィ!!」
屈強そうな死神が叫んだ、スニーカーは隆二というらしい。他のものは唖然としている。小町を除いては。
「こっ…」
舞い上がった砂煙の中から、スニーカー改め隆二に両足を捕まれ、逆さ吊りになっている映姫と、それをしている隆二の姿が浮かんだ。
顔を真っ赤に染め上げ、両手でスカートを押え、下着を見せまいとしている映姫は迫力も威厳も無い姿で叫んだ。
「小町ィィィィィィィ!!!」
「あーいいよいいよ映姫様!そうそうこっちにもっと目線頂戴ね!うーん堪らんッ!」
「あなたなにビデオ回してるんですか!?」
そう、粉々に消し飛んだと思われた隆二は、小町の「距離を操る程度の能力」によって一瞬で映姫との距離を詰めていたのだ。
確実に仕留めた。ただの死神があの技を耐えられるわけがない。
その慢心、が映姫を油断させた。
隆二は片腕で映姫の脚を掴み、空いた手でスカートのチャックに指をかけた。
「や…やめ…!」
(スパッツであってくれ…!)
リーダー格であったはずの長髪の死神が願った。
(ドロワーズであってくれ…頼むッ!)
屈強そうな死神が祈った。
(縞パンだ…縞パンなんだろ!?)
金髪の死神は信じた。
(ブルマだ!ブルマに決まっている!)
小太りな死神は確信した。
(あたいは正直どうでもいいけどね、カメラに収めて売っぱらうだけさ)
小町は汚かった。汚いな流石小町汚い。
(ノーパンにファインダーを合わせてシャッター、ノーパンにファインダーを合わせてシャッター)
中性的な顔の死神は一味違った。
(ふんどし…が良いと思っていた…しかし、違う)
「俺はッ…幸せだ!お前らとずっと作戦を練って、ただのくだらない話し合いからこんなことになって…
小町姉さんまで一緒になってくれて…」
思わず隆二は叫んだ。志を共にした素晴らしい仲間達へ向かって。
「いくぞお前ら!全てのおぱんちゅにぃぃぃぃぃぃぃぃ……」
スカートのチャックは全開だ、もうあと少し力を込めれば、念願のおぱんちゅだ。
隆二はボタンに手をかけた。
指でボタンを摘んだ。
「「「「「「「カンパァァァァァァァァァァァァァァァイイ!!」」」」」」」
はじけ飛ぶボタン、吹き飛ぶスカート。そして…隆二に電流走る。
「く…」
「どうした隆二!!」「スパッツか!?スパッツなのか!?」
隆二と映姫の間には完全な沈黙が流れていた。あれだけ暴れていた映姫も身じろぎ一つしていない。
やがて隆二は全身の毛穴から血が噴出したような表情になり、魂から叫んだ。
「く…クマさんのプリントおぱんちゅだァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!三枚で千円のやつだァァァァ!!」
「「「「「「な…」」」」」」
「「「「「「なんだってェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!?」」」」」」
六人は恐れ慄いた、なんと恐ろしいことだろう…普通のパンツとは!これには流石の死神も大泣き。
隆二は思わず手を離して両手で顔を覆った。映姫はゴキンと音を立てて頭から地面に落ちた。
辺りには重苦しい失望と絶望が漂っており、多くの者は涙を流し、嘆き悲しんだ。
さながら甲子園の決勝戦の試合終了後のようだ、ただ違うのは勝者が居ないことだろう。
…いや、勝者は居ないが、笑っている者は居る。
その白い棒のようなふとももを外界に晒し、口からは「ふふふ…」と笑いが漏れている。
据わった眼は空を見ていて、右手には小刀を持っている。
おぱんちゅにプリントされているクマさんが、獰猛に牙を剥いたような気がした。
そして、四本の光の柱が発生した。
この事件、「彼岸の屍喰熊事件」彼岸に遊びに来ていたメディスンによって解決された。
たまには鈴蘭畑から出てみようと思い立ち、花が綺麗だった彼岸に行ってみたところ、サーチライトのような
光が見えたので、お祭りだろうかと思い近づいたら暴れ狂っている映姫のラストジャッジメントだったという訳
である。
これは不味いと思いほぼ瞬間的にメディスンは神経性の毒を発生させ、映姫を気絶させた。
被害者達は見るも無残な状態になっていたので、永遠亭から医師を呼んできたというわえだ。
そして哀れ映姫は永遠てゐ、いや亭のウサギの一人によって事の真相を垂れ込められ、次の日の新聞の一面
を飾ってしまった。クマさんおぱんちゅを、特にクマさんのプリントを堂々と晒している姿が見開きの写真だった。
余談だが、この事件の後幻想卿ではプリントパンツが大々的に流行ったそうな。
~ おFin ~
一人残らず病気だし。
なんか崩壊してると言わざるを得ない。
あ、タグ通りだ!
ならよし!GJ!
なんですか。この表現は。
はっきり言って見苦しいです。
もっと別な表現方法あるんじゃないですか?
結局の所、キチガイ連中が痴漢行為に走ったってだけの話じゃねぇの。
多人数で罠に嵌めて強制猥褻に及び、それを利用した一儲けって、ヤクザがよく作る真面モンの強姦裏ビデオの内幕と変わんねぇでしょ。
気持ち悪いんだよ、正直に言って。
だったら最後まで読むなよ
あ、縞パンで御願いします。
自分は楽しく読ませていただきました。
自分は純白でお願いします。
真面目には あんまり・・・・ですがね。
自分はこういうの大好きですがね!