これから始まるのは、私が本当に書きたいと思っていたお話です。
迷走する妄想と力不足で、ここまで繋ぐことが出来ませんでしたが・・・
以前の話のもうひとつの結末として、お読みいただけると重畳です。
”赤と青の夢境”
ゴウゥゥウウッ・・・・・・・!
ヒュゴッツツ・・・・・・・・・!
赤と青。
虚空より現れた二条の炎が物凄い勢いで、左右から僕たちの居る広場を囲いこむように地を走る。
真円を描くように広場を閉ざし、交じり合った炎は紫色の鬼炎と成る。
熱くも無く 冷たくも無い
だけどその紫炎は、余りにも禍々しい鬼気を周囲に放射している。おそらく・・・触れたら最後、生きてはいられないだろう。
真炎の結界を形成した炎は逆巻く瀑布のごとく上方に拡がり、瞬く間に――天地の境を塗りつぶす城壁へと成長した。
死炎の壁で囲まれた深淵のソラには
いつのまにか
おおきな おおきな まぁるい まぁるい
紫色の満月が在った
僕たちが固唾を呑んで見守る中、夜空より忽然と現れた 黒い蝶が はたはたと舞い降りる
黒蝶はひとしきり僕らの頭上を舞った後
何の前触れも無く現れた空間の裂け目に飲み込まれる
そして 彼女は現れた
~ 八雲 紫 ~
裂け目から優雅に現れた人影は ”よいしょ”とばかりにそのスキマに腰掛ける
ありえざる満月より降り注ぐ 紫光の波動にその全身を浮かび上がらせる少女。
そのひとは 見るものの心を奪う 至高のうつくしさを有していた
流れるような蜂蜜色の髪は 軽く波打ち、長いベールを象っている。
美しい顔立ちに映える 紫紺の瞳。 上品な笑みを浮かべる蠱惑的な唇。
身に纏うドレスは 鮮やかな紫。 アクセントに結ばれた青いリボンが彼女の美しさを引き立てる。
たおやかな両手には 豪奢な作りをした日傘と、素朴な作りをした桜色の扇。
見る者によっては、幼い美少女のようにも見え 妖しい貴婦人のようにも見える捉え所の無い雰囲気。
呆・・・・・・・・・。そのあまりのカリスマに打たれ、僕はしばらく放心していた。
そんな僕にかまわず、事態を見届けていた輝夜さんが、そのひとに声を掛ける。
「・・・・随分派手な登場ね、八雲 紫。一体これはどういうことかしら?」
「・・・・・・うふふふふ・・・・・」
「・・・・・ふん。真面目に答える気はなさそうね。まぁ、貴方らしいけど。でも、余り褒められたものではないわよ?いきなりこんな悪趣味な結界を張るなんて。」
「ふふふ・・・・そう?別に大したものでも無いんだけれど。これは単なる演出よ、貴方たちの最後を飾る・・・ね。」
「大した自信ね?まさか式も連れずに、この私とやり合おうってんの?」
挑発する輝夜を哀れむように、扇で口元を隠し・・・・ただ紫は微笑み続ける。
おかしい。紫に喰って掛る輝夜を見守りながら、永琳はどうしようもない違和感を感じていた。
たしかにこの前の月の騒動で、紫とは顔見知りになった。だが彼女は・・・ここまで凄絶な鬼気を放つ様な性質をしていただろうか?
面倒なことはすべて彼女の式”八雲 藍”に任せ、自分はいつものほほんと眠そうな顔をして微笑んでいた。
そんな彼女が式も連れずに一体何故?辺りを隔離するこの結界も、明らかに前回彼女が使用していたスペルとは異質なもの。
なにより彼女は・・・あんな冷たい微笑みを浮かべるようなひとだったか・・・?
考え込む永琳を他所に、輝夜と紫のやりとりは引き返しようのない所まで進行してしまっていた。
言い募る輝夜を冷たく一瞥した紫は、醒めた口調で
「・・・・・・お黙りなさいな、道化のお嬢さん?今回は貴方に用は無いの。私が逢いに来たのは・・・八意 永琳。本気を出した貴方よ。」
「なんですって・・・・わたしが道化・・・?永琳。どういうこと?この頭のおかしな女は、いったい何をほざいているのかしら?この私にも分かるように説明してくれる?」
考えに没頭していた私は、猛烈に悪い未来を直感し、輝夜に叫んだ
「姫!!危険です!すぐに紫から離れてください!!!!」
「え?なにいってるの?えいり・・・
だが刻は既に遅く、紫の言葉が紡がれる。
「ふふふ、そうね・・・やっぱり貴方を本気にさせるには、コレぐらいはやらないとだめかしら?―――いくわよ・・・お嬢さん。」
つい――――と手に持つ桜色の扇を輝夜に向ける紫。解き放たれる言霊
『 白夜 無尽結界 』
―――ポウッ
輝夜に向けた扇の先端に灯る 小さな白点。
その余りにか細い光は、吹けば飛ぶような程たよりなく
幻想郷で屈指の実力者である紫が使用するには、到底釣り合わぬ光弾であった。
その扇をそっと、愛おしげに口元に寄せ
紫がフッと息を吹きかけると――その小さな風圧に耐えかねたように、その白点は掻き消える。
次の瞬間
唐突に輝夜の頭上に現れた白点は―――音も無く、瞬時に巨大化する。
避けようもないほど膨れ上がり、輝夜を飲み込んだ白い巨弾は、緩やかに収束していき・・・
輝夜ごと――――――――――消滅した。
輝夜を救おうと無意識に伸ばしていた永琳の腕が、空しく固まる。
なんだ?
今のは。
空間転移?
質量圧縮?
姫は何処へ?
何処か遠くに飛ばされたのか?
あの術で瞬殺され、今はどこかで復活中なのか?
・・・・・・だが、これは どういうことだ? 姫の 輝夜との―――蓬莱の絆が まったく感じられなくなったのは・・・?
こんな事は 月に居た頃から 一度も・・・・・・
凍りつく永琳に投げかけられる非情な言葉
「・・・クスクス。うふふふふ・・・・どうかしら。お気に召して?永琳。月の頭脳とまで呼ばれる貴方なら、今のアレの意味が分かるのではなくて?」
何を言ってるんだ、この女は。あんなもの幻想郷はおろか、遥かな昔の月の記憶にも在りはしない・・・いや、まさか・・・・・・
「ふふふ・・・さすが“八意”の名を冠するだけあるわ。少しは推測できたみたいね。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「あらあら、だんまり?詰まらないわね。仕方ないわ・・・少し種明かししましょうか。
“白夜 無尽結界” 簡単にいうと・・・この世界から対象を完全に切り離し、永遠の昼と夜の境界――――“白夜”に放り込んじゃうってことよ。
もちろん、脱出は不可能。あそこは、なーんにもなくてつまらない世界。あの騒々しいお姫様には、ちょっとばかりキツイかもね?うふふふふ」
「なにが望みなの。紫・・・」
「大したことじゃないわ。本気の貴方と、お手合わせしてみたくなっただけ。貴方はなにか勘違いしているみたいね・・・・・・妖怪が、人間を襲うのになにか理由が必要かしら?」
その言葉を皮切りに、両者の間に緊迫した空気が満ちる
もはや言葉は不要とばかりに、間合いを取った永琳が先手を撃つ
『 薬符「壺中の大銀河」!! 』
宣言しつつ 懐より取り出した薬の小壺を地面に叩きつける
がしゃんと割れた壺より、無数の使い魔が溢れ出し―――紫の周りを高速で旋回する。
眼にも留まらぬ速度で回り続ける使い魔たち、中に居るものを――――まるで・・・出口の無い壺の中に閉じ込められたかのように錯覚させる。
やがて、紫めがけて 内壁から、予測不能なタイミングで無数の弾幕が射出される。
しかし、紫は慌てる様子も無く 永琳に向け、囁く
「・・・・・・私、もしかして舐められてるのかしら?」
紫めがけて殺到する弾幕
それを紫は最小限の動きで事も無くかわしてゆく。
『 罔両「禅寺に棲む妖蝶」 』
日傘を掲げ、紫のスペルが発動する
紫を中心に卍状の後光があふれだす。
眩いその姿は豊穣を司る地母神のよう。
手に掲げる日傘を、くるくると廻す紫。
次の瞬間 その後光は、長大な光翼へと展開した。
巨大な卍は、使い魔を上回る速度で回転し―――それらを悉くなぎ払う。
くっ・・・。やはりこの程度では彼女を牽制することも出来ないか・・・!
スペルをあっさり破られた永琳は、すぐさま次の布石を打つ。
『 蘇生「ライジングゲーム」 』
永琳の投げつけた丸薬は、紫に向かう途中で破裂し、その体積からはありえない程の弾幕をばら撒き、紫の移動を制限する。
二度、三度・・・。使い魔を憑依させた丸薬は不規則な軌道を描き、その度に弾幕を出し紫を追い詰める。
「あくびが出るわ。」
ばら撒かれる弾幕を的確にいなし、紫は怒ったように呟く。
『 式神「八雲藍」 』
虚空に現れたスキマから、彼女の式“八雲 藍”が召還される。
「およびですか?紫様」
「“八雲 紫”が式神“八雲 藍”に、主として命じるわ。あのこうるさく飛び回る下品な蝿を撃ち落しなさい。」
「承知。」
紫の言霊をうけた藍は、体を薄いオーラで包み込み 飛び回る使い魔に吶喊し、あっけなく相殺する。
紫の言霊に護られ、傷一つない藍は、次なる命令を受けるため紫のもとへ帰還する。
「紫様。次なるご命令を」
「ああ、もういいわ藍。この程度のスペルに私の手を煩わせるのも癪だから、呼んだだけ。帰っていいわよ、ご苦労様。」
と言いつつ、再びスキマを開く。ぺこりと一礼し、藍はスキマに飛び込む。それと同時に閉じるスキマ。
「さて、次の出し物はなにかしら?」
・・・・・・このぶんだと、“天人の系譜”も“オモイカネブレイン”も通じまい。“アポロ13”や“天文密葬法”も・・・いや、前回紫と対戦した時は“天文密葬法”は中々有効だったか。
駄目でもともと、こちらのスペルの大半が知られている以上・・・少しでも相手の手の内を探り、油断を誘うのがこちらの目的。
一通り試すだけの価値はある。そして、油断したところに“アレ”を・・・・・・・。
『まだまだよ!天呪「アポロ13」!!』
永琳がスカートの隠しより、棍のようなものを抜き放つ
彼女たちが使う“スペルカード”は必ずしも符の形状をしているとは限らない。
それは込められた力を一瞬で解放する手段。大抵は符で事足りるが、そのスペルの由来――元となる意味をもつ物品を触媒にすることで、
――――その効果は飛躍的に高まる。
多段階に重なり合う三角錐の集合体をかざしつつ、紫との間合いを詰め寄る。
「―――第一陣、点火!」
永琳の号令に従い、円筒の先端にある三角錐が シュバッと切り離され、永琳の頭上で炸裂する。
夜空に咲く 人類の夢の 散華
破裂した三角錐は爆心地の“穢き地上の民は、辿り着いてはならぬ月の化身”――永琳を傷つけることなく、周囲を巻き込む大爆発をおこす。
「第二陣、第三陣、連続点火!!」
次々と炸裂する地上人の夢の結晶。爆心地の永琳からは、爆発に巻き込まれている紫の姿は覗えない。
「第四陣から第十三陣まで・・・・・・全弾点火!!!!一気に押し込むわよ!!」
シュボボボボ・・・・総ての三角錐が発射される。連鎖爆発を起こしたアポロたちは、ひときわ凄まじい爆風をおこす。
完全に爆風に呑まれている紫。しかし永琳は油断せず更にスペルを繋ぐ
『 神符「天人の系譜」! 「天網蜘網捕蝶の法」!連結!!!!』
永琳の両手に、いつの間にやらそれぞれ“鏡”が顕現していた。
それぞれを持つ手を緩やかに振り上下に構え、天地陰陽の理を現す。
鏡に込められる裂帛の気合。
永琳の秘薬で鍛造されたその鏡は、刹那まばゆい裂光を放ち―――いまだ爆風の中に居る紫に、獲物を絡めとり、滅殺する“死の投網”を幾重にも投げかける。
次々に枝分かれし襲いかかる裂光。二本が四本、四本が十六本、十六本が・・・・合わせ鏡の悪魔のように増殖する。
もはや逃れる隙間もなく増え続けた光の網は、いまだ爆炎に翻弄される紫を襲う。
為す術もなくそれらを受け続けている筈の紫。
さらに永琳は、帽子より取り出した・・・標本の入った瓶――なにかしわくちゃな物体の浮かぶ 緑の液体に満ちた――それを
紫のいる予測位置付近に、思いっきりぶん投げる。
『これで止めよ!! 神脳「オモイカネブレイン」!!!』
飛び往く標本に向け、永琳はなにごとかのことばを詠唱する。
それは神々のたましいを揺さぶる、美しい旋律の祝詞。
祝詞をうけ、神代の記憶を呼び覚まされた“脳”は高速で回転し、愚かなるものどもを―――死へと導く道標を指し示す。
導かれしものにとっては・・・・・まさに災難以外の何者でもない。
そんな余人の思いを 知ってか知らずか、“脳”は悠々と廻り続ける。
まるで、“おまえたちにとって、善いことをしているのだぞ”と言わんばかりに。
永琳の一方的な連撃をうけ、所在のわからぬ紫。
もしや、これで運良く仕留められたのか・・・?
確定できぬまま、連撃をうけ煙り続ける・・・・紫のいた場所を睨みつづける永琳。
目を凝らしているその横で
「あらまあ、これじゃあ相手は消し炭ね?少しやりすぎなのではなくて?」
「・・・・・・・!!」
とっさに飛びすざる永琳。
見ると紫の体には・・・・・・傷ひとつ付いていない。
馬鹿な、あれだけの連撃をスペルで相殺することもなく凌ぐなど・・・・・。
そんな永琳を可笑しそうに見ながら、紫は言葉を続ける。
「ふふふ・・・数撃ちゃあたるとでも思った?可愛いわねぇ。でも、まぁ悪くはなかったわ。それに、こっそり私もスペルを使わせてもらったし。」
「・・・・!スキマに逃げ込んだわね!卑怯な!!」
「いえいえ、これはれっきとした私のスペル。罔両「八雲紫の神隠し」っていうんだけどね?でもこれ、自分の名前を大きな声で宣言するの・・・・ちょっと恥ずかしいじゃない?
ほんとはあんまり使いたくなかったんだけど、貴方があんまりにも必死だったんで、つい、ね?うふふふふ」
少し恥らうように口元に扇をやり、ころころと笑う紫。
ふざけてる。
永琳はぎっと歯噛みし、この妖怪に対する切り札を――使用する決意をした。
このスペルは使用可能になるまでの準備が困難で、連発はできない。
使うからには必ず仕留めなくば、後が無い。だが、もうこれしか・・・・!
決意を込め、永琳は宣言する。その名を―――
『 秘術「真・天文密葬法」 !!』
これは永琳のもつスペルの中で、もっとも高等な部類に属する。
シャアアァァア―――――
両袖より 無数の金剛索が全天へと奔り、地上と星界をつなぐ縁を象る。
索は役目を終えたのち、数珠へと変貌し、ばちんと弾け飛ぶ。
後に残されたのは、宙に浮かぶ1080個の小さな宝珠。
その一つ一つが永琳が秘薬を用いて永い時間をかけ、練成した――――純粋なちからの触媒。
その最大の特徴は、妖怪の使う“妖術”を完全に無効化するところにある。
人間相手には破られる可能性もあるが・・・・こと、妖怪に対しては―――絶大な効果を発揮する、退魔の秘法。
輝夜の手前、前回は符をもちいた不完全な招聘・・・47までしか顕現出来なかったが。・・・本来これは、対象の周囲すべてを隙無く囲うように配置した宝珠に
使い魔・・・いや、星辰の神々のちからを宿し 死を呼ぶ曼荼羅を形成するもの。
的確に配置され、共鳴しあう星辰の宝珠から一斉に放たれる“ちからの波動”は・・・到底避けられるものではなく、妖怪を完膚なきまでに引き裂き、すり潰し――――死に至らしめる。
もし、紫が「永夜 四重結界」で再び乗り切ろうとしても、この完全に同調した宝珠の前では・・・・結界は無効化され、一瞬たりとも防ぐことはできまい。
これは・・・弾幕ごっこでは、使用するのも憚れる邪法。前回乗り切ったことで、油断しているであろう彼女にとっては・・・まさに必殺の切り札となろう。
ヴヴヴヴヴ・・・・・
ヴヴヴヴヴヴヴ・・・・・・・・・・
ヴヴヴ・・・ヴヴヴヴヴ・・・・・・・・・・
不吉な唸りをあげ 輝きだす千八十の宝珠。
いま、まさに紫へと――――死の波動が放たれるその刹那
『 「深弾幕結界」 』
すべての位相がずれた。
全方位から紫を引き裂くはずだった波動は―――紫を空しく素通りし、互いに相殺しあう。
その無様なようすを微笑みながら見届け、彼女は歌うように続きの言葉を紡ぐ。
『 -夢幻泡影- 』
死の曼荼羅の外周に、優雅にまわる方陣がいくつも現れ
煌びやかな弾幕を 幾重にも 幾重にも 重ねてゆく
今にも内側へと雪崩れ込もうとする――――――――あまりにも無体な量の 弾幕の大軍列。
その様はまるで――幾千万もの 訓練の行き届いた精兵のよう。
今か今か、と待ちきれぬ様子で それでも整然とならぶ弾幕群に
“あわてないの。”
――――とでもいうように悪戯っぽく微笑む紫。
そして、彼女が指をパチンと鳴らす
堰を切ったように殺到する弾幕。その様は、在り得ざる光景を見る者に幻視させる。
獰猛な喊声を上げ 大蛇のようにうねり 鶴の翼のように包み込み 敵軍へと踊りこむ勇壮なる軍勢
敵兵も 村人も 獣も 家々も 聖戦の名のもとに 全てを殲滅する 狂気の軍勢
如何なる者も 有象無象の区別なく 一切合財―――――ただ滅ぼし尽くす。
泡沫の如く 夢幻の如く ――――幻影は過ぎ行く。
あらゆる妖術を無効化する筈の宝珠たちは・・・・まるでただのビー球に――そのあり方を変えられたかのように・・・無抵抗に、跡形も無く粉砕される。
心をもたぬ筈の宝珠たちの上げる、断末魔にも似た崩壊音。
あるいは、それは・・・・宝珠に宿った星宿の神々の放つ末期の悲鳴だったのか。
阿鼻叫喚の坩堝と化した戦場。
宝珠を喰らい尽くした弾幕群は紫のさしのべる
「ふふふ。しょうのない子たちね?お行儀のわるい・・・・少しはおなかが膨れた?もういいから、お帰りなさいな。」
ねぎらいの言葉をうけ、まるで最初からすべて夢だったかのように――消えうせた。
一方的な大饗宴のあとには・・・・呆然とただずむ永琳と
かわらぬ様子で、妖艶な笑みを浮かべる紫の姿があった。
永琳に向けて、紫は言う。
「なかなか面白かったけど、まだまだね。私は“本気の貴方”と遊びにきたのよ?
・・・・・・いつまで“八意”の仮面を被っているのかしら?――――“月読”」
「・・・・・・!」
「最初からおかしいと思ってたのよね、貴方の八意という苗字・・・“八意思兼神”から来ているにしては、貴方の在り方には――どこか違和感が付きまとうのよ」
「・・・・・・・・・。」
「まぁ、貴方のお姫様を差し置いて、月の象徴の様なちからを出すことは出来ない、というのも分かるけどね。
いい?私をどうにかしないと・・・貴方の大事なお姫さまは――――永遠に戻ってこないのよ?」
「その弓は飾りかしら?そろそろ古の狩猟神の血脈が騒いできたのではなくて?」
永琳のなかでなにかが切れた。
この女は本気で言っているのだ。
ただ、そんな・・・くだらない事のために――――輝夜を私から永遠に奪おうというのか
遥かな昔にただ一度用いたきり――――二度とは使うまいと、自ら封印したこの弓矢。
これは、私の象徴ゆえに、手放すことの叶わぬもの。
忌まわしい 忌まわしい 弓矢 私から愛する を一度は完全に奪った、忌むべき罪の証。
――いいだろう。
そんなに死が欲しいのならば、与えよう。
この忌むべき弓矢で・・・・・!!
別人のように厳しい顔つきで、弓矢を構える永琳。
それを黙して見守る紫。
その目に和らいだ様な光が灯ったのは
――――ありえざる月の光がみせた幻か。
紫に向けて、弓を引き絞りながら―――永琳は思考する。
あの大妖“八雲 紫”の弱点を。
月の頭脳とまで称された永琳。その分析力は相手が妖怪でも変わらない。
あらゆる面で、全く隙のない紫。
その体や持ち物に満ちるちからは、分析不能なまでに混沌としている。
だが、唯一。
いつも彼女が大事そうに持つ“桜色の扇”のみ、まったく違う質の―――こころの流れを感じる。
おそらく、あの扇こそが彼女の本体――――いや、それに近い働きをする要に違いない。
狙うは、あの扇の中心 ただ一点。
狙いを定め、最期に永琳は問う。
「・・・・・・言い残すことはあるか。この弓矢に貫かれればたとえ、相手が神であろうと同じこと。ありとあらゆる獲物を狩るこの弓矢に、例外は・・・・・・無い。」
「あら、そう?それは怖いわね・・・。うふふ・・・たのしみだわ」
だめだ。相手は完全なる妖怪。その思考は人間には到底理解できまい。
―――妖怪は人間を襲い
―――人間は妖怪を退治する。
それが世の理。それでいい。いまは、それで・・・・・・
この弓矢に名前など無い。
スペルのように宣誓することもない。
ただ、ひとたび放てば獲物を狩る。ただそれだけのもの・・・・・
―――凛と美しく、弓を引き絞る永琳。張力は・・・・・・・・限界まで達し・・・・・・
矢は放たれた。
目を閉じて動かない紫。矢はまっすぐ紫の手――――膝元に広げられた“扇”を目指す。
ぱすっ。
気の抜けた音をたて、矢は扇を貫き 紫の腰を掠めながら広場を囲む結界を破り飛び去った。
結界に触れた矢は その紫炎の壁を、まるで古の・・・海を割る預言者の杖のごとく 貫いた場所から――決壊させる。
刹那、目を見開き―――――愕然と扇を見つめる紫。
桜色の扇の真ん中には、ぽすっと不恰好な穴が開いていた。
無残に破れた扇を見つめたまま、固まり続ける紫。
その様は・・・・紅魔の僕に時を停められたかのよう
・・・紫はじっと顔を俯かせ、ひとこと・・・ただひとことを―――――かぼそく呟く
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゆゆこ・・・」
やったか?
永琳は紫の様子を伺う。
あきらかに先ほどまでとは様子がおかしい。
放った矢は、確かに紫のなにか――決定的なものに、致命的な損傷を与えたようだ。
・・・・・・・だが、一向に紫が倒れる気配は無い。
やがて、紫が俯いたまま、冥く言葉を発する。
「・・・・・・・・・・なんのまねかしら?これは・・・・・・・。」
問う紫に気圧され、永琳はなにも答えられない。
「・・・・・・・・・聞いてるのよ、答えなさい。なんのまねかしら・・・・・・・こ れ は 」
ふたたび呟く紫。いつのまにやら矢が掠めたときに破けたドレスは元に戻ってる。しかし、扇は・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・この扇は、ね。特別なちからなんて何もない、古ぼけた・・・ただの扇。でもね、これは・・・・あのこが、生前、私にくれた―――最期の想い。
もう、二度と戻らない・・・いえ、戻してはいけない、過去のおもいで。それを・・・・・・・・・・・・・・」
紫の様子がおかしい。呟くごとに彼女からとてつもない、怒気混じりの鬼気が立ち昇る。いままでの比ではない程の禍々しさが、世界に満ちる。
“ ”
なにかが終わった音がした。
世界の境界が・・・ありえざる音をたてて、崩れてゆく。
そらがひび割れ、現れた 無数の赤黒いスキマに蠢く――――グロテスクな肉槐の群れ。
生と死の境界も定かではない、不定形の“なにか”たちが うぞうぞと 手や 足のようなものを伸ばし、無念そうに空を掻くしぐさを続ける。
スキマから溢れた肉槐は ぼとぼと地べたに零れ落ち・・・その体のかしこから 聞く者の心を壊す 怨嗟の声をあげ、狂気の合唱を奏でる。
そして、空間すべてを切り裂いて ずらり、とあらわれたのは――
世界を覆いつくし 鮮血の涙を流す閉じられた“眼”
幾千、幾億もの――――“絶望”を宿した眼球が――――
一斉に 永琳を 睨みつける。
最後に紫は永琳に向けて囁く
「償いなさい・・・・貴方のすべてで。」
それからのことは、筆舌に尽くしがたい恐怖。
気づいた時、永琳は大地に倒れ伏していた。
もはや、口も利けぬほど精神を疲弊させ、倒れ伏す永琳に―――紫は冷たく言い捨てる。
「・・・・・・もしや、貴方なら・・・と思ったのだけれども、私の見込み違いだったようね。もう、いらないわ貴方――――お逝きなさい。」
破れた扇の先端に灯る白点。
紫の動作と共に、永琳は白球に飲み込まれ・・・・・・・・・消えた。
気だるげにスキマにもたれかかる紫。
破れた扇をそっと慈しみ
深いためいきと共に独り呟く
「・・・・・・・・また、失敗か・・・。やはり、私の望みをかなえるには・・・・・・博麗の巫女・・・・あのこしか・・・・・・・・・」
「・・・・藍。」
スキマから式が召還される。
「・・・・・・紫様。」
式に向かい、疲れたような口ぶりで命令する。
「・・・・・あそこに倒れてる少年・・・いやな所を見られたかもしれないわ。処分して。」
「・・・・・・・・はい、紫様。」
藍に命じると紫はスキマに姿を消した。
後には藍と、気を失った少年が残される。
聞く者とて無い広場で藍はひとり少年に囁く。
「・・・・・・すまんな、少年。紫様も以前はあんな自棄を起こすような方ではなかったのだが・・・いったいなにが不満なのか。あの方のなさることに意味などないのかも知れぬ。
狂気と理性の境界で、あの方はいつも一人・・・揺らいでおられる。あの方に必要なのは・・・・・・・むしろ・・・・・・いや、式である私がそこまで領分を侵すことは・・・不相応か」
「・・・・・・・・・少年。君のことは、村を出た頃から見させてもらっていたよ・・・非力な人の身でこの場まで生き延びるとは、たいしたものだ。私は君のことを尊敬するよ・・・
・・・・できることなら君の姉さんの所に、送り届けてあげたいのだが・・・・紫様の命令は絶対。本当に、すまんな・・・少年。」
「・・・・・・では、さらばだ。」
青白い狐火が少年の体を包み込む。
その高温の炎は痛みを与える間も無く、彼のからだを跡形もなく焼き尽くす。
立ち昇る白い煙が ふわり と風に吹かれ舞い散ってゆく。
それを物悲しそうに見届け、藍は天を仰ぐ
「紫様・・・・・・私は・・・・。」
永い夜が明け、曙光が山々を照らしだす。
残されたものは無残に荒らされた広場
・・・・・・・・主なき、竹林と家屋。
朝霞に濡れる竹葉から――――ひとしずくの水滴ががこぼれおちる。
まるで、喪われたものたちを 悼むかのように
迷走する妄想と力不足で、ここまで繋ぐことが出来ませんでしたが・・・
以前の話のもうひとつの結末として、お読みいただけると重畳です。
”赤と青の夢境”
ゴウゥゥウウッ・・・・・・・!
ヒュゴッツツ・・・・・・・・・!
赤と青。
虚空より現れた二条の炎が物凄い勢いで、左右から僕たちの居る広場を囲いこむように地を走る。
真円を描くように広場を閉ざし、交じり合った炎は紫色の鬼炎と成る。
熱くも無く 冷たくも無い
だけどその紫炎は、余りにも禍々しい鬼気を周囲に放射している。おそらく・・・触れたら最後、生きてはいられないだろう。
真炎の結界を形成した炎は逆巻く瀑布のごとく上方に拡がり、瞬く間に――天地の境を塗りつぶす城壁へと成長した。
死炎の壁で囲まれた深淵のソラには
いつのまにか
おおきな おおきな まぁるい まぁるい
紫色の満月が在った
僕たちが固唾を呑んで見守る中、夜空より忽然と現れた 黒い蝶が はたはたと舞い降りる
黒蝶はひとしきり僕らの頭上を舞った後
何の前触れも無く現れた空間の裂け目に飲み込まれる
そして 彼女は現れた
~ 八雲 紫 ~
裂け目から優雅に現れた人影は ”よいしょ”とばかりにそのスキマに腰掛ける
ありえざる満月より降り注ぐ 紫光の波動にその全身を浮かび上がらせる少女。
そのひとは 見るものの心を奪う 至高のうつくしさを有していた
流れるような蜂蜜色の髪は 軽く波打ち、長いベールを象っている。
美しい顔立ちに映える 紫紺の瞳。 上品な笑みを浮かべる蠱惑的な唇。
身に纏うドレスは 鮮やかな紫。 アクセントに結ばれた青いリボンが彼女の美しさを引き立てる。
たおやかな両手には 豪奢な作りをした日傘と、素朴な作りをした桜色の扇。
見る者によっては、幼い美少女のようにも見え 妖しい貴婦人のようにも見える捉え所の無い雰囲気。
呆・・・・・・・・・。そのあまりのカリスマに打たれ、僕はしばらく放心していた。
そんな僕にかまわず、事態を見届けていた輝夜さんが、そのひとに声を掛ける。
「・・・・随分派手な登場ね、八雲 紫。一体これはどういうことかしら?」
「・・・・・・うふふふふ・・・・・」
「・・・・・ふん。真面目に答える気はなさそうね。まぁ、貴方らしいけど。でも、余り褒められたものではないわよ?いきなりこんな悪趣味な結界を張るなんて。」
「ふふふ・・・・そう?別に大したものでも無いんだけれど。これは単なる演出よ、貴方たちの最後を飾る・・・ね。」
「大した自信ね?まさか式も連れずに、この私とやり合おうってんの?」
挑発する輝夜を哀れむように、扇で口元を隠し・・・・ただ紫は微笑み続ける。
おかしい。紫に喰って掛る輝夜を見守りながら、永琳はどうしようもない違和感を感じていた。
たしかにこの前の月の騒動で、紫とは顔見知りになった。だが彼女は・・・ここまで凄絶な鬼気を放つ様な性質をしていただろうか?
面倒なことはすべて彼女の式”八雲 藍”に任せ、自分はいつものほほんと眠そうな顔をして微笑んでいた。
そんな彼女が式も連れずに一体何故?辺りを隔離するこの結界も、明らかに前回彼女が使用していたスペルとは異質なもの。
なにより彼女は・・・あんな冷たい微笑みを浮かべるようなひとだったか・・・?
考え込む永琳を他所に、輝夜と紫のやりとりは引き返しようのない所まで進行してしまっていた。
言い募る輝夜を冷たく一瞥した紫は、醒めた口調で
「・・・・・・お黙りなさいな、道化のお嬢さん?今回は貴方に用は無いの。私が逢いに来たのは・・・八意 永琳。本気を出した貴方よ。」
「なんですって・・・・わたしが道化・・・?永琳。どういうこと?この頭のおかしな女は、いったい何をほざいているのかしら?この私にも分かるように説明してくれる?」
考えに没頭していた私は、猛烈に悪い未来を直感し、輝夜に叫んだ
「姫!!危険です!すぐに紫から離れてください!!!!」
「え?なにいってるの?えいり・・・
だが刻は既に遅く、紫の言葉が紡がれる。
「ふふふ、そうね・・・やっぱり貴方を本気にさせるには、コレぐらいはやらないとだめかしら?―――いくわよ・・・お嬢さん。」
つい――――と手に持つ桜色の扇を輝夜に向ける紫。解き放たれる言霊
『 白夜 無尽結界 』
―――ポウッ
輝夜に向けた扇の先端に灯る 小さな白点。
その余りにか細い光は、吹けば飛ぶような程たよりなく
幻想郷で屈指の実力者である紫が使用するには、到底釣り合わぬ光弾であった。
その扇をそっと、愛おしげに口元に寄せ
紫がフッと息を吹きかけると――その小さな風圧に耐えかねたように、その白点は掻き消える。
次の瞬間
唐突に輝夜の頭上に現れた白点は―――音も無く、瞬時に巨大化する。
避けようもないほど膨れ上がり、輝夜を飲み込んだ白い巨弾は、緩やかに収束していき・・・
輝夜ごと――――――――――消滅した。
輝夜を救おうと無意識に伸ばしていた永琳の腕が、空しく固まる。
なんだ?
今のは。
空間転移?
質量圧縮?
姫は何処へ?
何処か遠くに飛ばされたのか?
あの術で瞬殺され、今はどこかで復活中なのか?
・・・・・・だが、これは どういうことだ? 姫の 輝夜との―――蓬莱の絆が まったく感じられなくなったのは・・・?
こんな事は 月に居た頃から 一度も・・・・・・
凍りつく永琳に投げかけられる非情な言葉
「・・・クスクス。うふふふふ・・・・どうかしら。お気に召して?永琳。月の頭脳とまで呼ばれる貴方なら、今のアレの意味が分かるのではなくて?」
何を言ってるんだ、この女は。あんなもの幻想郷はおろか、遥かな昔の月の記憶にも在りはしない・・・いや、まさか・・・・・・
「ふふふ・・・さすが“八意”の名を冠するだけあるわ。少しは推測できたみたいね。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「あらあら、だんまり?詰まらないわね。仕方ないわ・・・少し種明かししましょうか。
“白夜 無尽結界” 簡単にいうと・・・この世界から対象を完全に切り離し、永遠の昼と夜の境界――――“白夜”に放り込んじゃうってことよ。
もちろん、脱出は不可能。あそこは、なーんにもなくてつまらない世界。あの騒々しいお姫様には、ちょっとばかりキツイかもね?うふふふふ」
「なにが望みなの。紫・・・」
「大したことじゃないわ。本気の貴方と、お手合わせしてみたくなっただけ。貴方はなにか勘違いしているみたいね・・・・・・妖怪が、人間を襲うのになにか理由が必要かしら?」
その言葉を皮切りに、両者の間に緊迫した空気が満ちる
もはや言葉は不要とばかりに、間合いを取った永琳が先手を撃つ
『 薬符「壺中の大銀河」!! 』
宣言しつつ 懐より取り出した薬の小壺を地面に叩きつける
がしゃんと割れた壺より、無数の使い魔が溢れ出し―――紫の周りを高速で旋回する。
眼にも留まらぬ速度で回り続ける使い魔たち、中に居るものを――――まるで・・・出口の無い壺の中に閉じ込められたかのように錯覚させる。
やがて、紫めがけて 内壁から、予測不能なタイミングで無数の弾幕が射出される。
しかし、紫は慌てる様子も無く 永琳に向け、囁く
「・・・・・・私、もしかして舐められてるのかしら?」
紫めがけて殺到する弾幕
それを紫は最小限の動きで事も無くかわしてゆく。
『 罔両「禅寺に棲む妖蝶」 』
日傘を掲げ、紫のスペルが発動する
紫を中心に卍状の後光があふれだす。
眩いその姿は豊穣を司る地母神のよう。
手に掲げる日傘を、くるくると廻す紫。
次の瞬間 その後光は、長大な光翼へと展開した。
巨大な卍は、使い魔を上回る速度で回転し―――それらを悉くなぎ払う。
くっ・・・。やはりこの程度では彼女を牽制することも出来ないか・・・!
スペルをあっさり破られた永琳は、すぐさま次の布石を打つ。
『 蘇生「ライジングゲーム」 』
永琳の投げつけた丸薬は、紫に向かう途中で破裂し、その体積からはありえない程の弾幕をばら撒き、紫の移動を制限する。
二度、三度・・・。使い魔を憑依させた丸薬は不規則な軌道を描き、その度に弾幕を出し紫を追い詰める。
「あくびが出るわ。」
ばら撒かれる弾幕を的確にいなし、紫は怒ったように呟く。
『 式神「八雲藍」 』
虚空に現れたスキマから、彼女の式“八雲 藍”が召還される。
「およびですか?紫様」
「“八雲 紫”が式神“八雲 藍”に、主として命じるわ。あのこうるさく飛び回る下品な蝿を撃ち落しなさい。」
「承知。」
紫の言霊をうけた藍は、体を薄いオーラで包み込み 飛び回る使い魔に吶喊し、あっけなく相殺する。
紫の言霊に護られ、傷一つない藍は、次なる命令を受けるため紫のもとへ帰還する。
「紫様。次なるご命令を」
「ああ、もういいわ藍。この程度のスペルに私の手を煩わせるのも癪だから、呼んだだけ。帰っていいわよ、ご苦労様。」
と言いつつ、再びスキマを開く。ぺこりと一礼し、藍はスキマに飛び込む。それと同時に閉じるスキマ。
「さて、次の出し物はなにかしら?」
・・・・・・このぶんだと、“天人の系譜”も“オモイカネブレイン”も通じまい。“アポロ13”や“天文密葬法”も・・・いや、前回紫と対戦した時は“天文密葬法”は中々有効だったか。
駄目でもともと、こちらのスペルの大半が知られている以上・・・少しでも相手の手の内を探り、油断を誘うのがこちらの目的。
一通り試すだけの価値はある。そして、油断したところに“アレ”を・・・・・・・。
『まだまだよ!天呪「アポロ13」!!』
永琳がスカートの隠しより、棍のようなものを抜き放つ
彼女たちが使う“スペルカード”は必ずしも符の形状をしているとは限らない。
それは込められた力を一瞬で解放する手段。大抵は符で事足りるが、そのスペルの由来――元となる意味をもつ物品を触媒にすることで、
――――その効果は飛躍的に高まる。
多段階に重なり合う三角錐の集合体をかざしつつ、紫との間合いを詰め寄る。
「―――第一陣、点火!」
永琳の号令に従い、円筒の先端にある三角錐が シュバッと切り離され、永琳の頭上で炸裂する。
夜空に咲く 人類の夢の 散華
破裂した三角錐は爆心地の“穢き地上の民は、辿り着いてはならぬ月の化身”――永琳を傷つけることなく、周囲を巻き込む大爆発をおこす。
「第二陣、第三陣、連続点火!!」
次々と炸裂する地上人の夢の結晶。爆心地の永琳からは、爆発に巻き込まれている紫の姿は覗えない。
「第四陣から第十三陣まで・・・・・・全弾点火!!!!一気に押し込むわよ!!」
シュボボボボ・・・・総ての三角錐が発射される。連鎖爆発を起こしたアポロたちは、ひときわ凄まじい爆風をおこす。
完全に爆風に呑まれている紫。しかし永琳は油断せず更にスペルを繋ぐ
『 神符「天人の系譜」! 「天網蜘網捕蝶の法」!連結!!!!』
永琳の両手に、いつの間にやらそれぞれ“鏡”が顕現していた。
それぞれを持つ手を緩やかに振り上下に構え、天地陰陽の理を現す。
鏡に込められる裂帛の気合。
永琳の秘薬で鍛造されたその鏡は、刹那まばゆい裂光を放ち―――いまだ爆風の中に居る紫に、獲物を絡めとり、滅殺する“死の投網”を幾重にも投げかける。
次々に枝分かれし襲いかかる裂光。二本が四本、四本が十六本、十六本が・・・・合わせ鏡の悪魔のように増殖する。
もはや逃れる隙間もなく増え続けた光の網は、いまだ爆炎に翻弄される紫を襲う。
為す術もなくそれらを受け続けている筈の紫。
さらに永琳は、帽子より取り出した・・・標本の入った瓶――なにかしわくちゃな物体の浮かぶ 緑の液体に満ちた――それを
紫のいる予測位置付近に、思いっきりぶん投げる。
『これで止めよ!! 神脳「オモイカネブレイン」!!!』
飛び往く標本に向け、永琳はなにごとかのことばを詠唱する。
それは神々のたましいを揺さぶる、美しい旋律の祝詞。
祝詞をうけ、神代の記憶を呼び覚まされた“脳”は高速で回転し、愚かなるものどもを―――死へと導く道標を指し示す。
導かれしものにとっては・・・・・まさに災難以外の何者でもない。
そんな余人の思いを 知ってか知らずか、“脳”は悠々と廻り続ける。
まるで、“おまえたちにとって、善いことをしているのだぞ”と言わんばかりに。
永琳の一方的な連撃をうけ、所在のわからぬ紫。
もしや、これで運良く仕留められたのか・・・?
確定できぬまま、連撃をうけ煙り続ける・・・・紫のいた場所を睨みつづける永琳。
目を凝らしているその横で
「あらまあ、これじゃあ相手は消し炭ね?少しやりすぎなのではなくて?」
「・・・・・・・!!」
とっさに飛びすざる永琳。
見ると紫の体には・・・・・・傷ひとつ付いていない。
馬鹿な、あれだけの連撃をスペルで相殺することもなく凌ぐなど・・・・・。
そんな永琳を可笑しそうに見ながら、紫は言葉を続ける。
「ふふふ・・・数撃ちゃあたるとでも思った?可愛いわねぇ。でも、まぁ悪くはなかったわ。それに、こっそり私もスペルを使わせてもらったし。」
「・・・・!スキマに逃げ込んだわね!卑怯な!!」
「いえいえ、これはれっきとした私のスペル。罔両「八雲紫の神隠し」っていうんだけどね?でもこれ、自分の名前を大きな声で宣言するの・・・・ちょっと恥ずかしいじゃない?
ほんとはあんまり使いたくなかったんだけど、貴方があんまりにも必死だったんで、つい、ね?うふふふふ」
少し恥らうように口元に扇をやり、ころころと笑う紫。
ふざけてる。
永琳はぎっと歯噛みし、この妖怪に対する切り札を――使用する決意をした。
このスペルは使用可能になるまでの準備が困難で、連発はできない。
使うからには必ず仕留めなくば、後が無い。だが、もうこれしか・・・・!
決意を込め、永琳は宣言する。その名を―――
『 秘術「真・天文密葬法」 !!』
これは永琳のもつスペルの中で、もっとも高等な部類に属する。
シャアアァァア―――――
両袖より 無数の金剛索が全天へと奔り、地上と星界をつなぐ縁を象る。
索は役目を終えたのち、数珠へと変貌し、ばちんと弾け飛ぶ。
後に残されたのは、宙に浮かぶ1080個の小さな宝珠。
その一つ一つが永琳が秘薬を用いて永い時間をかけ、練成した――――純粋なちからの触媒。
その最大の特徴は、妖怪の使う“妖術”を完全に無効化するところにある。
人間相手には破られる可能性もあるが・・・・こと、妖怪に対しては―――絶大な効果を発揮する、退魔の秘法。
輝夜の手前、前回は符をもちいた不完全な招聘・・・47までしか顕現出来なかったが。・・・本来これは、対象の周囲すべてを隙無く囲うように配置した宝珠に
使い魔・・・いや、星辰の神々のちからを宿し 死を呼ぶ曼荼羅を形成するもの。
的確に配置され、共鳴しあう星辰の宝珠から一斉に放たれる“ちからの波動”は・・・到底避けられるものではなく、妖怪を完膚なきまでに引き裂き、すり潰し――――死に至らしめる。
もし、紫が「永夜 四重結界」で再び乗り切ろうとしても、この完全に同調した宝珠の前では・・・・結界は無効化され、一瞬たりとも防ぐことはできまい。
これは・・・弾幕ごっこでは、使用するのも憚れる邪法。前回乗り切ったことで、油断しているであろう彼女にとっては・・・まさに必殺の切り札となろう。
ヴヴヴヴヴ・・・・・
ヴヴヴヴヴヴヴ・・・・・・・・・・
ヴヴヴ・・・ヴヴヴヴヴ・・・・・・・・・・
不吉な唸りをあげ 輝きだす千八十の宝珠。
いま、まさに紫へと――――死の波動が放たれるその刹那
『 「深弾幕結界」 』
すべての位相がずれた。
全方位から紫を引き裂くはずだった波動は―――紫を空しく素通りし、互いに相殺しあう。
その無様なようすを微笑みながら見届け、彼女は歌うように続きの言葉を紡ぐ。
『 -夢幻泡影- 』
死の曼荼羅の外周に、優雅にまわる方陣がいくつも現れ
煌びやかな弾幕を 幾重にも 幾重にも 重ねてゆく
今にも内側へと雪崩れ込もうとする――――――――あまりにも無体な量の 弾幕の大軍列。
その様はまるで――幾千万もの 訓練の行き届いた精兵のよう。
今か今か、と待ちきれぬ様子で それでも整然とならぶ弾幕群に
“あわてないの。”
――――とでもいうように悪戯っぽく微笑む紫。
そして、彼女が指をパチンと鳴らす
堰を切ったように殺到する弾幕。その様は、在り得ざる光景を見る者に幻視させる。
獰猛な喊声を上げ 大蛇のようにうねり 鶴の翼のように包み込み 敵軍へと踊りこむ勇壮なる軍勢
敵兵も 村人も 獣も 家々も 聖戦の名のもとに 全てを殲滅する 狂気の軍勢
如何なる者も 有象無象の区別なく 一切合財―――――ただ滅ぼし尽くす。
泡沫の如く 夢幻の如く ――――幻影は過ぎ行く。
あらゆる妖術を無効化する筈の宝珠たちは・・・・まるでただのビー球に――そのあり方を変えられたかのように・・・無抵抗に、跡形も無く粉砕される。
心をもたぬ筈の宝珠たちの上げる、断末魔にも似た崩壊音。
あるいは、それは・・・・宝珠に宿った星宿の神々の放つ末期の悲鳴だったのか。
阿鼻叫喚の坩堝と化した戦場。
宝珠を喰らい尽くした弾幕群は紫のさしのべる
「ふふふ。しょうのない子たちね?お行儀のわるい・・・・少しはおなかが膨れた?もういいから、お帰りなさいな。」
ねぎらいの言葉をうけ、まるで最初からすべて夢だったかのように――消えうせた。
一方的な大饗宴のあとには・・・・呆然とただずむ永琳と
かわらぬ様子で、妖艶な笑みを浮かべる紫の姿があった。
永琳に向けて、紫は言う。
「なかなか面白かったけど、まだまだね。私は“本気の貴方”と遊びにきたのよ?
・・・・・・いつまで“八意”の仮面を被っているのかしら?――――“月読”」
「・・・・・・!」
「最初からおかしいと思ってたのよね、貴方の八意という苗字・・・“八意思兼神”から来ているにしては、貴方の在り方には――どこか違和感が付きまとうのよ」
「・・・・・・・・・。」
「まぁ、貴方のお姫様を差し置いて、月の象徴の様なちからを出すことは出来ない、というのも分かるけどね。
いい?私をどうにかしないと・・・貴方の大事なお姫さまは――――永遠に戻ってこないのよ?」
「その弓は飾りかしら?そろそろ古の狩猟神の血脈が騒いできたのではなくて?」
永琳のなかでなにかが切れた。
この女は本気で言っているのだ。
ただ、そんな・・・くだらない事のために――――輝夜を私から永遠に奪おうというのか
遥かな昔にただ一度用いたきり――――二度とは使うまいと、自ら封印したこの弓矢。
これは、私の象徴ゆえに、手放すことの叶わぬもの。
忌まわしい 忌まわしい 弓矢 私から愛する を一度は完全に奪った、忌むべき罪の証。
――いいだろう。
そんなに死が欲しいのならば、与えよう。
この忌むべき弓矢で・・・・・!!
別人のように厳しい顔つきで、弓矢を構える永琳。
それを黙して見守る紫。
その目に和らいだ様な光が灯ったのは
――――ありえざる月の光がみせた幻か。
紫に向けて、弓を引き絞りながら―――永琳は思考する。
あの大妖“八雲 紫”の弱点を。
月の頭脳とまで称された永琳。その分析力は相手が妖怪でも変わらない。
あらゆる面で、全く隙のない紫。
その体や持ち物に満ちるちからは、分析不能なまでに混沌としている。
だが、唯一。
いつも彼女が大事そうに持つ“桜色の扇”のみ、まったく違う質の―――こころの流れを感じる。
おそらく、あの扇こそが彼女の本体――――いや、それに近い働きをする要に違いない。
狙うは、あの扇の中心 ただ一点。
狙いを定め、最期に永琳は問う。
「・・・・・・言い残すことはあるか。この弓矢に貫かれればたとえ、相手が神であろうと同じこと。ありとあらゆる獲物を狩るこの弓矢に、例外は・・・・・・無い。」
「あら、そう?それは怖いわね・・・。うふふ・・・たのしみだわ」
だめだ。相手は完全なる妖怪。その思考は人間には到底理解できまい。
―――妖怪は人間を襲い
―――人間は妖怪を退治する。
それが世の理。それでいい。いまは、それで・・・・・・
この弓矢に名前など無い。
スペルのように宣誓することもない。
ただ、ひとたび放てば獲物を狩る。ただそれだけのもの・・・・・
―――凛と美しく、弓を引き絞る永琳。張力は・・・・・・・・限界まで達し・・・・・・
矢は放たれた。
目を閉じて動かない紫。矢はまっすぐ紫の手――――膝元に広げられた“扇”を目指す。
ぱすっ。
気の抜けた音をたて、矢は扇を貫き 紫の腰を掠めながら広場を囲む結界を破り飛び去った。
結界に触れた矢は その紫炎の壁を、まるで古の・・・海を割る預言者の杖のごとく 貫いた場所から――決壊させる。
刹那、目を見開き―――――愕然と扇を見つめる紫。
桜色の扇の真ん中には、ぽすっと不恰好な穴が開いていた。
無残に破れた扇を見つめたまま、固まり続ける紫。
その様は・・・・紅魔の僕に時を停められたかのよう
・・・紫はじっと顔を俯かせ、ひとこと・・・ただひとことを―――――かぼそく呟く
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゆゆこ・・・」
やったか?
永琳は紫の様子を伺う。
あきらかに先ほどまでとは様子がおかしい。
放った矢は、確かに紫のなにか――決定的なものに、致命的な損傷を与えたようだ。
・・・・・・・だが、一向に紫が倒れる気配は無い。
やがて、紫が俯いたまま、冥く言葉を発する。
「・・・・・・・・・・なんのまねかしら?これは・・・・・・・。」
問う紫に気圧され、永琳はなにも答えられない。
「・・・・・・・・・聞いてるのよ、答えなさい。なんのまねかしら・・・・・・・こ れ は 」
ふたたび呟く紫。いつのまにやら矢が掠めたときに破けたドレスは元に戻ってる。しかし、扇は・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・この扇は、ね。特別なちからなんて何もない、古ぼけた・・・ただの扇。でもね、これは・・・・あのこが、生前、私にくれた―――最期の想い。
もう、二度と戻らない・・・いえ、戻してはいけない、過去のおもいで。それを・・・・・・・・・・・・・・」
紫の様子がおかしい。呟くごとに彼女からとてつもない、怒気混じりの鬼気が立ち昇る。いままでの比ではない程の禍々しさが、世界に満ちる。
“ ”
なにかが終わった音がした。
世界の境界が・・・ありえざる音をたてて、崩れてゆく。
そらがひび割れ、現れた 無数の赤黒いスキマに蠢く――――グロテスクな肉槐の群れ。
生と死の境界も定かではない、不定形の“なにか”たちが うぞうぞと 手や 足のようなものを伸ばし、無念そうに空を掻くしぐさを続ける。
スキマから溢れた肉槐は ぼとぼと地べたに零れ落ち・・・その体のかしこから 聞く者の心を壊す 怨嗟の声をあげ、狂気の合唱を奏でる。
そして、空間すべてを切り裂いて ずらり、とあらわれたのは――
世界を覆いつくし 鮮血の涙を流す閉じられた“眼”
幾千、幾億もの――――“絶望”を宿した眼球が――――
一斉に 永琳を 睨みつける。
最後に紫は永琳に向けて囁く
「償いなさい・・・・貴方のすべてで。」
それからのことは、筆舌に尽くしがたい恐怖。
気づいた時、永琳は大地に倒れ伏していた。
もはや、口も利けぬほど精神を疲弊させ、倒れ伏す永琳に―――紫は冷たく言い捨てる。
「・・・・・・もしや、貴方なら・・・と思ったのだけれども、私の見込み違いだったようね。もう、いらないわ貴方――――お逝きなさい。」
破れた扇の先端に灯る白点。
紫の動作と共に、永琳は白球に飲み込まれ・・・・・・・・・消えた。
気だるげにスキマにもたれかかる紫。
破れた扇をそっと慈しみ
深いためいきと共に独り呟く
「・・・・・・・・また、失敗か・・・。やはり、私の望みをかなえるには・・・・・・博麗の巫女・・・・あのこしか・・・・・・・・・」
「・・・・藍。」
スキマから式が召還される。
「・・・・・・紫様。」
式に向かい、疲れたような口ぶりで命令する。
「・・・・・あそこに倒れてる少年・・・いやな所を見られたかもしれないわ。処分して。」
「・・・・・・・・はい、紫様。」
藍に命じると紫はスキマに姿を消した。
後には藍と、気を失った少年が残される。
聞く者とて無い広場で藍はひとり少年に囁く。
「・・・・・・すまんな、少年。紫様も以前はあんな自棄を起こすような方ではなかったのだが・・・いったいなにが不満なのか。あの方のなさることに意味などないのかも知れぬ。
狂気と理性の境界で、あの方はいつも一人・・・揺らいでおられる。あの方に必要なのは・・・・・・・むしろ・・・・・・いや、式である私がそこまで領分を侵すことは・・・不相応か」
「・・・・・・・・・少年。君のことは、村を出た頃から見させてもらっていたよ・・・非力な人の身でこの場まで生き延びるとは、たいしたものだ。私は君のことを尊敬するよ・・・
・・・・できることなら君の姉さんの所に、送り届けてあげたいのだが・・・・紫様の命令は絶対。本当に、すまんな・・・少年。」
「・・・・・・では、さらばだ。」
青白い狐火が少年の体を包み込む。
その高温の炎は痛みを与える間も無く、彼のからだを跡形もなく焼き尽くす。
立ち昇る白い煙が ふわり と風に吹かれ舞い散ってゆく。
それを物悲しそうに見届け、藍は天を仰ぐ
「紫様・・・・・・私は・・・・。」
永い夜が明け、曙光が山々を照らしだす。
残されたものは無残に荒らされた広場
・・・・・・・・主なき、竹林と家屋。
朝霞に濡れる竹葉から――――ひとしずくの水滴ががこぼれおちる。
まるで、喪われたものたちを 悼むかのように
主人公の名前をもう少し考えるか、または完璧にださないかして何も知らずに非日常に引き込まれる第三者の視点として、読み手に捉えさせる。
疫病を、紫が永琳をひっぱり出すために藍にしかけさせた罠として、それを納得の行く理由(なぜ紫が永琳を、強者を求めていたか等)を持ってきっちり表現できていれば相当完成した作品になったと思います。
ギャグをもって始め、シリアスで落とす。 イソップ童話等にみられる起笑典結(笑いをもって始め、典として結ぶ)方式を採用したならば、ギャグとシリアスの境界を通すメッセージ性が必要なので、それを最初からチラつかせておいたほうが良かったでしょう。
ただこの形式を成立させるには、それなりに人を納得させる伏線とメッセージ性が必要なので、相当難しいですが。
文章は綺麗なので、頑張れば化けられると思います。
別の作品として読みたかったですね(^^
本当に、他の人の文章?と思いました
私なんかより数段上手な文字の使いかたです
私的、紫はちょっと軽い感じが好きなんですがそこは個人の好き好きで