Coolier - 新生・東方創想話

人気がほしい

2004/11/25 17:41:01
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「カリスマが欲しいなぁ」
ため息混じりに呟いたのは亡者の姫君、西行寺幽々子・・・ではなく、紅白の巫女、博麗霊夢だった。
「なんだよ、幽々子みたいなこと言って」
そんな彼女のカップに茶色い液体を注ぐのは、普通の魔法使い、霧雨魔理沙。
珍しいことに、彼女らのお茶会の会場は、博麗神社でも紅魔館でもなく、霧雨邸であった。
魔理沙が霊夢を呼びつけたわけでもない。彼女からここを訪れたのだ。こんなシチュエーションは滅多にないことだった。張り切って茶も煎れるというものである。
実は煎れたのはお茶ではなく、魔法の森で採れるキノコをお湯に浸したものである。こうちゃきのこ、という名称らしい。
「んー・・・」
テーブルに顎を乗せた状態で、霊夢はちょっぴり不機嫌そうに、魔理沙を見上げた。
そんな彼女の様子に魔理沙は動揺する。何もやっていないはずなのだが・・・
・・・少なくとも今日はまだ。
「・・・まぁ魔理沙にはわかんないでしょうね」
ふっ、とやさぐれたように視線を下げる。
「・・・なんだよ」
煮え切らない彼女の言葉に口を尖らせる。心当たりがないだけに、その口調もやや不機嫌なものになった。
「あー、つまりね」
そんな魔理沙の気配を見て取ったのか、霊夢は姿勢を直して言い直す。
「あんた、人気あるじゃない」
「・・・・・・は?」
脈絡のない彼女の台詞に、魔理沙は間の抜けた声をあげる。
人気?
幻想郷の連中からの人気具合は、霊夢が他の追随を許していないと思うのだが・・・
「人気投票よ、人気投票」
彼女の言葉に、魔理沙はようやく合点がいったようだ。ああ、と手を打つ。
何処でやったのかは知らないが、そんなものが幻想郷に出回ったのだ。
それにて魔理沙は、見事に一位の座に着いていた。
この結果について、一部で血の雨が降ったとも言われているが、詳しいことはよく知らない。
「六位ってなんなのよ六位って?!」
ばんっ、とテーブルに手をつく。すんでの所で魔理沙は、二人分のカップを持ち上げた。
今更だなー、と魔理沙は内心呟く。あの結果が出回ったのは、ずいぶん前のことだ。それをなんでまた、今になって言い出すのか。
周りを見る・・・ていうか周りを見られるようになった、ってことなのかね。
そんなことを思う。
そう考えれば、良いことだと言えなくもないのだが。
「ぽっと出の鈴仙に負けたって言うのが納得いかないー!」
当の霊夢は憤懣やるかたないようだ。
「それをわたしに言われてもなぁ」
どうしろっていうんだ、と言いつつ改めてカップを彼女の前に置く。
「つまり、なんであんたが一位になったのかということよ」
ようやく核心に近づきつつあるようだ。霊夢はカップの中身をひとすすりし、
「あ、別に魔理沙に魅力無し、って言ってるわけじゃないのよ。ただ本人的に、何処がポイントだったのか訊きたいわけ」
そう付け加える。
「・・・と言われてもなぁ」
う~んと唸って腕を組む。
なんで魔法が使えるのか?という質問になら答えられる。
なんでこんな所に住んでいるのか?という質問にも答えられる。
どちらも自覚してやったことだからだ。
しかし・・・なんで人気があるの?と言われても困る。そもそもこんな人気投票なんて、やっていることすら知らなかったのだ。本人が何をアピールしたということもない。
「・・・やっぱり、何とも言えないぜ」
そんな魔理沙の返答に、霊夢はえー、と不満げな声をあげた。
「というかな、そもそも『これがわたしの人気の秘密だ!』とかはっきり言えるような奴に、投票する気にはならないと思うぜ」
客観的な意見を求めた方がいいんじゃないか、と彼女は言う。
「そういうもんかしらね」
「そういうもんだと思うぜ」
彼女の言葉に同意して、魔理沙もこうちゃきのこの出汁を啜る。
「・・・じゃ、そうしてみることにするわ。お茶、ありがとね」
「気にすることないぜ」
立ち上がる霊夢に、彼女はひらひらと手を振るう。霊夢も同じく、魔理沙に軽く手を振るうと、扉の外へと消えた。
「・・・ちぇ」
閉まった扉を見つつ、彼女は残念そうに舌をうつ。
思い立ったが吉日な彼女を引き留めることはできないと知りつつも、やっぱり寂しいものだった。
霊夢は倍率が高いのだ。本人は全く自覚していないが。
「ま、明日にでも収穫を聞いてみることにするかね・・・」
負け惜しみのように言って、魔理沙は傍らに置いてあった本を手に取った。


「・・・で、私の所に来たという訳か」
開いているんだか閉じているんだか判然としない瞳で霊夢を見るのは騒霊三姉妹の長女、ルナサ・プリズムリバーだった。
プリズムリバー邸の応接間。
そこにはルナサと霊夢、そして、
「あははははあはあはははあはははははははははははあはあああはははははは・・・・」
虚ろな笑い声をあげつつ部屋を飛び回るメルランの姿。
二人とも慣れたもので、全開スルーである。
霊夢がここを訪れたのは、人気投票で自分より順位が上ではなく、かつまともな意見が出そうな相手が他に思い当たらなかったからである。
慧音の所に行くという手もあったが、三人寄ればなんとやらという言葉もある。まあ、そちらは早くも瓦解しているが・・・
「つまり、上位陣にあって霊夢にないものは何か、ということだな」
「まあ・・・そうなるのかな」
で、何か思い当たる、と言う彼女にルナサは考え込み・・・ややあって頷いた。
「霊夢」
「何?」
「心して聞いて欲しい」
「だから何をよ」
重ねて言う彼女に、霊夢は首を傾げる。
一呼吸おいて、ルナサが言う。
「お前はキャラが立ってない」
がーん。
「というか、個性が薄い」
ががーん。
ぐらりと、霊夢は上体を崩す。ソファーに手をやり、倒れ込むことだけは何とか防いだ。
そんな・・・キャラが立ってない?個性が薄い?
東方シリーズ最多出演の私が?
「ああ、いや。お前の言いたいことはだいたいわかる」
口を開きかけた彼女にルナサは待ったをかけた。
「一例として、私たちをあげるぞ」
言って彼女は人差し指を立てる。
「私は、糸目の優等生系気苦労の多いキャラと認知されているな」
ため息をつく。言ってて少し落ち込んだ。
中指を加える。
「メルランは・・・私も意味はよくわからんが、『メルポ』・・・」
ルナサがそう口にした瞬間、虚ろに飛び回っていたメルランの目がぎらりと光る。
「ガッ」
異様な速度で姉に接近、手刀をその脳天に叩き込む。
「あははははあはあはははあはははははははははははあはあああはははははは・・・・」
そして再び奇怪な笑い声をあげ、無軌道な空の旅を再開した。
「・・・まあ、こういうわけだな・・・」
ちょっと涙目になりつつ、ルナサは言う。
薬指を立てる。
「リリカは、腹黒いキャラとして幅を利かせているな」
姉さんやっちまいな、という台詞はなかなかに印象深い。
「・・・とまあこのように、あんまり出番がない私たちでも、こんな具合にキャラクターが出来上がっているわけだが」
ここで一旦言葉を区切る。
「お前の場合、紅白というのがあるが、これは通称であって個性とは言い難いな」
「う・・・」
言われてみれば確かにそうだ。
「霧雨魔理沙の、ひねくれたようで実は素直、や、十六夜咲夜の普段は完璧、でもお嬢様ラブという表裏な性格も魅力のうちだろうし」
「うう・・・」
「お前の、裏表がない性格というのは、売りとするにはやや弱い」
「ううう・・・」
言われたい放題だが、事実なだけに言い返せない。
「なら・・・なら私は一体どうしたらいいの?!」
「・・・・・・」
必死に訴えかける霊夢に、ルナサは沈黙する。
あれだけ言っておいてなんだが、実は対策は思いついていなかった。
「ふっふっふー」
どうしたものかと考え込んだ彼女の背後から現れたのは、騒霊三姉妹の末妹、リリカ・プリズムリバー。その手には三人分の茶器を乗せた盆。メルランは員数外のようだ。
「そういうことならルナサ姉さんよりわたしが適任ね!」
各人の前にカップを置き、ルナサの隣に腰掛ける。そして奇妙に気取った手つきでカップを持ち上げた。
一方ルナサはそんなリリカを珍しそうに見る。彼女が客に茶を入れるなどという気の利いたことをするのが意外なようだ。
まあそんな日もあるんだろう、とルナサも熱い液体を口に含み。
思いっきり吹き出した。
「もー、姉さん慌てて飲んじゃだめだよー」
咳き込む姉の背をばんばんと適当に叩きつつ、そんなことを言う。
「げほっ、な、何を入れたんだ」
辛い紅茶などというものを飲んだのは初めてだった。
「えー、わたし腹黒いからわかんなーい」
などとすっとぼける。聞かれていたらしい。
「そんなことより、霊夢の個性の話でしょ?」
「何かあるの?」
姉を放って言う妹に、身を乗り出してそう問う霊夢。
普段ならリリカの話をそう素直に聞きはしないのだが、そんなことを忘れ去るほど切迫しているらしい。
「個性の発露の第一、それはずばり見た目ね!」
「見た目?!」
大きく頷いて言うリリカに、霊夢は自らを見下ろす。
言わずもがなの巫女服が目に映った。
「服を替えろってこと?」
「いや、それはどうだろうな」
霊夢の言葉に、立ち直ったルナサが首を傾げる。
「少なくとも巫女服着ているのはお前しかいないし、そのアドバンテージを捨てることはないだろう」
「なんだ、姉さんも考えてるじゃない。そうね、わたしとしては、頭のリボンが弱いと思うわ」
そう言われてみるとそうかもしれない。霊夢は知り合いの頭の上を思い出し、そう思った。
プリズムリバー三姉妹もそうだが、どう見ても特注としか思えないような帽子をかぶっている連中が多い。これも個性の表れと言えるだろう。
「リボンがだめだとすると、何を付けたら?」
「帽子って言うのも今更ね。アクセサリー系がいいかも。ネコミミとかどう?」
用意してあったらしい。懐からネコミミカチューシャを取り出すリリカ。
「・・・ネコミミはアクセサリーか?」
ぽろり。
驚愕の面もちで、リリカがカチューシャを取り落とす。
「・・・リリカ?」
不審げに見る姉の手を、妹はがっしりと掴んだ。
「目が覚めたわ姉さん!そうよね、ネコミミはアクセサリーなんかじゃないわ!じかに生えてるケモノ少女じゃなきゃだめよね!カチューシャなんて邪道よね!流石姉さん!ルナサ姉さんは私の心の萌師匠なのー?!」
「そう言う意味で言ったんじゃないー!」
いきなりヒートアップしたリリカの手を、ルナサは慌てて振り払う。
「そもそも生粋のネコミミ娘は八雲さんのところにいるだろう!個性の話をしてるんだぞ個性の話を!」
「はっ!」
その言葉に、彼女の狂騒が止まった。
「・・・そうね、そうだったわ・・・」
「だろう?だから今更ネコミミも薄い・・・」
「・・・そうよね・・・ネコミミがいるんじゃない・・・ふふふ・・・」
じゅるりとリリカは口元を拭う。
実はかみ合っていなかったらしい。妹の知られざる一面を目撃し、げんなりとするルナサ。
そんな二人を霊夢は、生暖かく観察していた。
多分、誰も彼もダメ人間だなぁと思っているのだろうが、目の前の二人は人間ではない。
「・・・アクセサリーの話はひとまず置いておいて・・・そうだな、髪型を変えてみるとか」
咳払いを一つし、ルナサが改めて提案する。
「髪型かー」
それは良い考えかもしれない。
髪型に凝っている輩はそんなにいない。編み込みがせいぜいだ。
うん、髪というのは目の付け所がいいかもしれない。
が。
「長さが足りないわね・・・」
言って霊夢は自分の髪をつまみ上げる。
決して短いわけでもないのだが、凝った髪型にするとなるとやはり足りないだろう。
「ウィッグならあるけど、貸そうか?」
「いいの?」
「ここまできたら、とことん協力するわよー」
「リリカ・・・!」
感動したように言う霊夢。
実際にはおもしろそうだから、という理由でちょっかいを出しているだけなのだが、肝心の霊夢はそんなことに気付いていなかった。
「・・・・・・」
利害も一致しているようなので、ルナサもとりあえず沈黙している。
「見た目の問題はとりあえずこれくらいにして、次は・・・言動よ!」
びしー、と霊夢に指を突きつけるリリカ。ノリノリだった。
「言動?」
「そう!ハラペコキャラを幽々子さんに持っていかれたにもかかわらず、ルーミアちゃんのキャラが立ってるのは『そーなのかー』、のおかげよ」
本人がこの場にいたら、そーなのかーと言っていたであろうことうけあいだった。
そう考えると一理ある。
「しかし、そうなると決め台詞というのも二番煎じな気がするな」
「その辺はぬかりないわ」
ルナサの疑念に、リリカは指でオッケーサインを作った。
「というと?」
「さっき出た橙ちゃん、ネコミミっておいしいポジションにも関わらず、語尾が『にゃー』じゃないのよ。変な語尾を付ける!これなら誰ともかぶってないわ!」
「成る程!」
霊夢が表情を輝かせた。
誰もやっていないならナンバーワン且つオンリーワン。パーフェクトに個性的だ。
「変な語尾というと、どんなのがあるだろうな」
「んー、『にょー』とか『りゅん』とか・・・」
言って姉妹は霊夢に視線を向ける。その会話は聞いていなかったようだ。なにやら考え込んでいる彼女。
ややあって霊夢が顔を上げる。
「初めまして博麗霊夢です脳髄グシャー」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
・・・ショッキングにも程がある・・・
二人は内心絶叫していたが、いやに真剣な表情でどう?と問いかけてくる霊夢を見ると、そうも言えなかった。
姉妹は顔を見合わせ、アイコンタクトをとる。
必死に考えた霊夢には悪いが・・・他人と違えば個性というわけでもないよな。
これを助長するともっとおもしろくなりそうだよね!
遠回しにダメと言ったほうがいいな。
いい線いってると思わせちゃおうよ!
全然コンタクトを取れていなかった。それでも彼女らは頷きあう。
「・・・まあ、悪くはないと思うが・・・」
「もう少し煮詰めた方が良いと思うよ、うん」
いっている内容はほとんど同じだが、意図は全くベクトルが違っていた。
「そっかー」
ほっとしたように、霊夢は晴れやかに笑う。
「じゃあ私、そろそろ行くわ。あんまりおんぶだっこだと意味ないし」
「そうか」
「じゃあ付け髪持ってくるねー」
そして彼女はウィッグを受け取ると、にこやかにプリズムリバー邸を後にした。

「・・・・・・なあリリカ」
「何?姉さん」
「私たち、やれるだけのことはやったよな」
「やれるだけやっちゃったって気もするね」
「・・・・・・」
「あははははあはあはははあはははははははははははあはあああはははははは・・・・」


翌日である。
昨日の宣言通り・・・と言っても霊夢には届いてはいなかったが・・・魔理沙は博麗神社を訪れた。
ちょうど午後のお茶の時間。昨日の意趣返しと言うわけではないが、お茶でも飲んでだらだらしようという腹づもりだ。
が、いつもなら境内の掃除をしているはずの霊夢の姿が見えない。
「おーい、霊夢ー?お邪魔するぜー」
とりあえず境内に降り、声をかける。
「あら魔理沙、いらっしゃい」
きょうろきょろと辺りを見回していた背後から、神社の主の声。
「なんだそんなところにいたのか霊夢ぶぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ?!」
箒片手に木立の影から現れた彼女に、魔理沙は恥も外聞もなく吹き出した。
いつもの紅白の巫女服姿・・・とは言いがたい。
もともとの巫女服も相当改造されていたが、今の霊夢のそれは、それに輪がかかっていた。
袴。足首まであった赤いそれが、どういうわけか膝上まで切りつめられている。
上着も同様で、ノースリーブ状態だ。
そして何よりは、彼女の首から上。
表情が見えない。無表情であるとかそう言うことへの比喩ではなくて、掛け値なしに顔が見えなかった。
顎まで下ろされた前髪。もはや前髪という次元ではなくなっている。
そしてその隙間からのぞく目。正直怖かった。
「れ、霊夢?」
「どうしたのよ魔理沙・・・あ!」
動揺してろくに言葉も出ない魔理沙を訝しげに見ていた(多分。表情が見えないので確実とは言い難い)霊夢が、思い出したように声をあげる。
「いけない、語尾を忘れてたわ」
語尾?
魔理沙のまだ何とか機能している理性の部分が、その時点で拒否反応を出していたが、霊夢の言葉を止められるほどにリソースは残されていなかった。
霊夢はこほんと咳払いを一つ。
「いらっしゃい魔理沙臓物をブチ撒けろ」
「なんだそりゃー!」
バグ取り完了。ようやく我を取り戻した魔理沙は、思わずそう突っ込んだ。
「え?ご、語尾だけど・・・変臓物をブチ撒けろ?」
「語尾とかそういうレベルのシロモノじゃないだろ?!ていうかもうよせよそれ!」
不安げに言う霊夢。そんな彼女の様子には希少価値があるが、今の外観からするとそれほどないかもしれない。今現在の彼女はある意味激レアではあるのだが。
「そもそもなんなんだよその格好?!」
「私らしさを残しつつも、個性を前面に押し出したつもりだったんだけど・・・」
魔理沙の様子に、霊夢は気まずそうにそう言う。
「・・・というかな、そもそもどういう経緯でそんな格好する事になったんだ?」
魔理沙は魔理沙で、そんな霊夢の様子にようやく落ち着いたようだ。根本を問いかける。
乞われるままに、霊夢は説明しだした。

昨日プリズムリバー邸をおいとました後、もう少しその内容を詰めようと霖之助の所に行ったのだ。何か参考になるものはないかと思って。
そこで、やたらと丈の短いスカートをはいている少女の絵が大量に載った書物を発見した。
霖之助が言うには、それは外の世界の流行を紹介している書物だという。
外の世界の流行など、もちろん幻想郷には入ってこないので、それを取り入れても陳腐にはなるまい、と霊夢は判断した。
つまり袴の丈を切りつめたのだ。それにあわせて上着の袖もカットしてみた。丈を短くするだけなら、巫女服であるという利点も残せるし。
ものはついでとばかりに、霊夢は霖之助にも相談した。
彼が言うには、主人公たるもの、髪の毛は目元までなくてはならないとのことだった。
理由の程は定かではないが、霖之助ほどの知識人が言うのだから間違いもあるまい。目元まで、というのもなんなので霊夢なりにアレンジして、顎まで伸ばしてみた。幸い付け髪を借りてきたことだし。
そんなわけで、こんな事になったのだった。

「・・・・・・」
一通り霊夢から話を聞いた魔理沙は、指で眉間を押さえた。
「・・・魔理沙?」
「・・・あのな、霊夢」
不安げにこちらをのぞき見る彼女に、魔理沙はかんで含めるように言う。
「やりすぎ」
「ええっ?!」
「というか勘違いしすぎ」
「えええっ?!」
ショックだったようだ。彼女の言葉に後ずさる。
「特に髪の毛で目元を隠すって言うのはな、個性を無くすための仕様だぜ?」
「そんな・・・」
続く魔理沙の言葉に、霊夢はよろめいた。
普段の彼女なら、なんでそんなことを知っているんだ、と問いつめもしただろうが、今日ばかりはそんな余裕もないようだった。
「じゃ、じゃあ、この服装とか、語尾とかは・・・」
「・・・努力は認めるけど・・・普通に引くぜ」
それがとどめになったようだ。がっくりと膝をつく霊夢。
乙女チックにへたり込む彼女の姿は、何とも新鮮だった。こんな時になんだが、あらわになった太ももや、袖のあたりからのぞき込めそうなアレが非常にあれで艶めかしかった。
息をのんで、魔理沙は霊夢の前にしゃがみ込む。
そして顔面にかかった髪を掻き上げて、後ろにまとめてやった。
「・・・なあ霊夢、人気投票なんてどうでもいいじゃないか」
いつになく優しげな口調で、魔理沙言う。
「え?」
潤んだ瞳で彼女を見上げる霊夢。
ごくり、と魔理沙ののどが鳴る。
「レミリアも、アリスも、幽々子も、紫も、もちろんわたしも、みんなお前の良いところを知ってる。それでいいじゃないか。誰とも知らない奴らの人気投票の結果なんか、気にすることないさ」
「魔理沙・・・!」
感極まったように、霊夢は魔理沙に抱きついた。魔理沙も彼女をしっかりと受け止める。

かくして、一つの友愛が結実した。

「・・・でもそれ、一位の奴に言われるとすごい腹が立つわ」
超低温の呟きと共に、霊夢はするりと魔理沙から離れる。
「へ?」
夢心地だった魔理沙が、我に返って辺りを見回す。
彼女の周りには、無数の符、符、符、符・・・・・・

そしてそれは、一瞬で微塵に吹き飛んだ。


「・・・お、茶柱が」
同時刻。人里の片隅でお茶を煎れていた上白沢慧音に、ささやかな幸運が舞い降りていた。
「今日は良いことがありそうだな」
機嫌良くそう呟くと、湯飲みを片手に空を見上げた。
別に、爆発音や悲鳴が聞こえることもなかった。ここまでは。

そんなわけで、今日も一日、幻想郷は平和だった。

リリカ特製トウガラシティー、カプサイシンでダイエット効果が!
霊夢も騒霊シスターズも太りませんが。

人気投票ネタです、というには少々はばかられる内容ですが。
六位か・・・ちゃんと霊夢に入れたんですけど、ままならないものです。
・・・まあ、一押しは・・・

そんなわけで、お気に召していただければ幸いです。
SHOCK.S
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コメント



0.3350簡易評価
4.20Dr.マカーブル削除
ストレンジ・プラス+、エクセルサーガ、武装錬金、とりあえず気がついたのはこれだけ。
他にも何か使ってますかね?

慧音のささやかな幸運て・・・霊夢が訪ねて来なかった事ですな。

7.50七死削除
いやいや、霊夢。 キャラはしっかり立っているぞ。

不人気に苦しみ、あれこれと無駄な努力をしては全部失敗する
可愛そうな娘としてだg(夢葬封印・獄)
10.50はね~~削除
 霊夢は本気で難しいです、描くのが(挨拶)

 いや、キャラが立ってないとまでは言いませんが、実際それに近いですよねー。
 永夜8キャラで、私はそれぞれを主役にした話のコンセプトを考えましたが……。

・霧雨魔理沙(魔理沙はほっといても主役になります。以上っw)
・十六夜咲夜(クール+お嬢様への忠誠あつく、背景設定も話に使いやすい)
・魂魄妖夢(東方随一のいじられキャラで、東方では非常に珍しい真面目な子)
・西行寺幽々子(設定面が最も充実してる。さらに天ボケ+大食いのおまけつき)
・レミリア(咲夜さんとの絡みで出し易くフランなどの身内関係の話もできる)
・アリス(人形という他には無い要素があり、かつ歴史が長い。ビバツンデレ)
・八雲 紫(キャラの明確な立ち方、さらには八雲一家という最大の武器がある)

 そんな訳で。以上7キャラが主役の話は多分私、書けます。しかし……。
・博麗霊夢(巫女だね……。で、後なんだろ)

 私の認識はこんなもんです(汗)脇なら大丈夫ですけど、霊夢だけはメインで書くのは私無理です。
 天然入ってはいるものの、幽々子に比べるとそれが明確に出ている訳ではないですし。さらに、誰とも深い関わりを持っていない(永夜抄リードミーの霊夢コメントがそれに拍車をかけました)ので、人間関係から派生させるのもかなり難しく……うぐぅ。だから
『ああ、やっぱそう思うよね……』と、みょんな共感をいたしました、この話。
 このお話、霊夢を書こうと思う人は読むと為になりますよー(笑)

>ネコミミ
『そのとおりっ! 幾らネコミミモードなどと歌おうが、カチューシャなど邪道、真の猫娘にはあらずっ! ふははははは!』(←誰?)
>橙の語尾が『にゃー』じゃない
『そこが素人よ。にゃんと言わない猫娘……何と玄人好みなのかっ! ビバ!!』(帰れ)
16.50名前が無い程度の能力削除
>脳髄グシャー
>臓物をブチ撒けろ

霊夢って本当に巫女さんなんでしょうか・・・。
巫女さんというよりちょっとアレな殺z(夢想封印 滅)
17.50紫音削除
うーん、確かに霊夢って意外と難しいのかもしれませんねぇ。
まあでも、色々と納得できるSSでしたな。コメントの半分以上が『中国ー』だった中国なんて、正に典型例ですし(笑)
・・・そしてルナサ、君も苦労人な性分で慧音や妖夢、小悪魔たちと気が合いそうだね・・・(ほろり)

>この結果について、一部で血の雨が降ったとも言われているが
・・・鈴仙は輝夜あたりに八つ当たりされて入院中、っと(ぉ)
39.40名前が無い程度の能力削除
>「・・・でもそれ、一位の奴に言われるとすごい腹が立つわ」
同意。
44.50名前が無い程度の能力削除
>脳髄グシャー&臓物をブチ撒けろ
これだけでご飯三杯逝けます、マヂで。(w

つか霊夢、やっぱ気にしてたのね…。<6位
53.60名無し毛玉削除
確かにどうとでも使えそうで使いにくいですなぁ…霊夢は
橙の語尾が「にゃ~」になったら藍様が萌え死にそうだw
60.40蔭野 霄削除
霊夢もそれなりにキャラ立ってますよー。(あくまで『それなり』)
妖々夢2面の「略奪開始ー」は、東方に惹かれた理由の一つですし。
夜毎にふらふらと飛んでは、妖怪しばき倒しつつ金品を強奪する霊夢。
もしや、あのリナ・インバー(誰にも分からなさそうなネタに意味はあるのでしょうか?
89.80Nop削除
すき