四月、本来ならば桜の花びらが舞い、薄紅色の世界を彩るだろう。されど今幻想郷を彩っているものは純粋な白、いつまでも降り続く冬の落とし子、すなわち雪。
風が吹き雪が舞う、辺り一面の雪景色。降りしきる雪の中一際目立つ青い影、一人の少女の姿がそこにはあった。
少女の肩の上には小さな妖精のようなものが浮かんでいる。近付いてみればよくわかるのだがそれは妖精なのではなく、精巧に作られた人形であった。人形遣いの少女、アリス・マーガトロイドはその人形に語りかけるかのように静かに言葉をつむぎ始めた。
「私がこの異変に気付いたのはもう半月も前のことだったわ。四月に入りこれからだんだんと春の気配が近付いてくるはずなのに一向にやってこない。むしろ冬の気配が強くなっている。私はすぐに何者かが裏で動いていると気付いたわ」
「るるる?」
隣に浮かぶ人形が相槌を打つかのように短く鳴った。どうやらこの人形は言葉を解するらしい。
「似たような事が去年の夏にもあったわ。あの時には幻想郷が霧で覆われてしまった。けれどあれは誰が見ても異常な事態だったものだから一日程度の時間で解決されたわ。けれど今回は違う、今回の犯人は頭が切れるようね。ゆっくりとだけど確実な方法をとっているわ。妖気のかけらも残さずに行っているもの。これではあいつもすぐには気付かないでしょう」
アリスは不敵な笑みを浮かべて夜空を見上げた。今回の犯人がいるであろう方向に向かって、どれだけ手が込んだことをしようが私にはお見通しだとばかりに。
うつろな瞳で人形はアリスを見つめる。何かを問いかけるような瞳、アリスは人形に向き直り、なおも言葉を続けた。
「とりたてて犯人に対して私が文句を言うことはないわ。別に春が訪れなかろうが私の知った事ではないもの。ただ単純に利用してやろうというだけ。さすがに今は四月も半ば、あいつもそろそろ気付くはずよ。今回の件が何者かの犯行だってことに。気付いてしまえばあいつは事件の解決に赴くわ。面倒くさいといいながらね。それなら必ずあいつはここを通る。犯人を捕まえるためにはここを通るしかないもの。つまりここで待ち構えていれば…」
「八百パーセント霊夢にあえるってことよね!」
………………あれ!?
魔法でも使ったのだろうか?アリスの顔は一瞬にして真剣な表情からにやけた笑い顔へと変化していた。
「理想では霊夢が最初にやってくるのが一番なんだけど……、魔理沙がやってくる場合もあるのよね。霧のときも霊夢といっしょに吸血鬼退治に出かけたって言うし。まあ魔理沙なら弾幕ごっこでもやって追い返してしまえば問題ないかしら」
「……よくよく考えてみれば全く知らない別の人間が来るかもしれないのよね。そんなことになったらどうしましょうかしら。別に春を取り戻すのを邪魔したいわけじゃないんだから素通りさせてもいいんだけど……」
「いいことを思いついたわ!そうよ!この現象の犯人を霊夢にすればいいのよ。それで手伝ってあげるわ、とか言えば大義名分ありで霊夢に会いに行けるわ!」
「いや~、やっぱり私って頭が良いわ。どこぞの野魔法使いとは大違い。これで誰が来ても大丈夫ね」
「見た目も今回のために頑張ったのよ。本当は霊夢とお揃いの赤と白の服にしたかったんだけど、それはちょっと恥ずかしいから、赤色と対称になる青色をつかった服。対称にした場合、白も黒にするべきなんでしょうけど、そうすると魔理沙と被ってしまうわ」
「で、問題は霊夢が来た場合なんだけど…。どうしよう?本人を前にするとどうしても憎まれ口をたたいちゃうのよね。これもそのうち治さなくちゃいけないんだけど」
「はぁ~、こればっかりはしょうがないわね。ちょっと話して憎まれ口をたたきあって、弾幕ごっこでもして楽しめれば別にそれだけで満足ということにするわ」
「なんにしても誰かが来ないことには始まらないんだけど。もしかしてまだこの異常な事態に気付いていないのかしら。…ありえるわね。霊夢って、年中頭が春っぽいから、もう頭の中では春になってるんじゃないかしら。」
「……嫌な予感。なんだか本当にそうじゃないかって気がしてきたけど、きっと気のせいよね。そうよ、そうに決まってるわ!」
「とにかく、そんなことを考えていたら気が滅入って仕方がないわ。もっと楽しいことを考えましょう。最近気付いたことなのだけど、霊夢は紅白の二色でしょ。私は七色。霊夢の二色を私の七色で割ると0.285714になるの。」
0.285714 -> おー、に、はち、いつ、なな、ひと、よん。 -> おにはいなひとよ -> おにあいなひとよ。
「お似合いな人よ!つまりは霊夢と私はお似合いな人なのよーーーーーー!!」
もう夜も深まり人々が眠りにつくころ、アリス・マーガトロイドの奇声が幻想郷へと響き渡っていった。
うたかたの夢、未だ咲かぬ桜の花。待ち人は未だ来ず。幻想郷とアリスの心に春がやってくる日はいつのことになるのであろうか。
なお、余談ではあるが霊夢たちが異変に気付きアリスの元にやってくるのはまだ半月以上も先、五月の出来事である。
風が吹き雪が舞う、辺り一面の雪景色。降りしきる雪の中一際目立つ青い影、一人の少女の姿がそこにはあった。
少女の肩の上には小さな妖精のようなものが浮かんでいる。近付いてみればよくわかるのだがそれは妖精なのではなく、精巧に作られた人形であった。人形遣いの少女、アリス・マーガトロイドはその人形に語りかけるかのように静かに言葉をつむぎ始めた。
「私がこの異変に気付いたのはもう半月も前のことだったわ。四月に入りこれからだんだんと春の気配が近付いてくるはずなのに一向にやってこない。むしろ冬の気配が強くなっている。私はすぐに何者かが裏で動いていると気付いたわ」
「るるる?」
隣に浮かぶ人形が相槌を打つかのように短く鳴った。どうやらこの人形は言葉を解するらしい。
「似たような事が去年の夏にもあったわ。あの時には幻想郷が霧で覆われてしまった。けれどあれは誰が見ても異常な事態だったものだから一日程度の時間で解決されたわ。けれど今回は違う、今回の犯人は頭が切れるようね。ゆっくりとだけど確実な方法をとっているわ。妖気のかけらも残さずに行っているもの。これではあいつもすぐには気付かないでしょう」
アリスは不敵な笑みを浮かべて夜空を見上げた。今回の犯人がいるであろう方向に向かって、どれだけ手が込んだことをしようが私にはお見通しだとばかりに。
うつろな瞳で人形はアリスを見つめる。何かを問いかけるような瞳、アリスは人形に向き直り、なおも言葉を続けた。
「とりたてて犯人に対して私が文句を言うことはないわ。別に春が訪れなかろうが私の知った事ではないもの。ただ単純に利用してやろうというだけ。さすがに今は四月も半ば、あいつもそろそろ気付くはずよ。今回の件が何者かの犯行だってことに。気付いてしまえばあいつは事件の解決に赴くわ。面倒くさいといいながらね。それなら必ずあいつはここを通る。犯人を捕まえるためにはここを通るしかないもの。つまりここで待ち構えていれば…」
「八百パーセント霊夢にあえるってことよね!」
………………あれ!?
魔法でも使ったのだろうか?アリスの顔は一瞬にして真剣な表情からにやけた笑い顔へと変化していた。
「理想では霊夢が最初にやってくるのが一番なんだけど……、魔理沙がやってくる場合もあるのよね。霧のときも霊夢といっしょに吸血鬼退治に出かけたって言うし。まあ魔理沙なら弾幕ごっこでもやって追い返してしまえば問題ないかしら」
「……よくよく考えてみれば全く知らない別の人間が来るかもしれないのよね。そんなことになったらどうしましょうかしら。別に春を取り戻すのを邪魔したいわけじゃないんだから素通りさせてもいいんだけど……」
「いいことを思いついたわ!そうよ!この現象の犯人を霊夢にすればいいのよ。それで手伝ってあげるわ、とか言えば大義名分ありで霊夢に会いに行けるわ!」
「いや~、やっぱり私って頭が良いわ。どこぞの野魔法使いとは大違い。これで誰が来ても大丈夫ね」
「見た目も今回のために頑張ったのよ。本当は霊夢とお揃いの赤と白の服にしたかったんだけど、それはちょっと恥ずかしいから、赤色と対称になる青色をつかった服。対称にした場合、白も黒にするべきなんでしょうけど、そうすると魔理沙と被ってしまうわ」
「で、問題は霊夢が来た場合なんだけど…。どうしよう?本人を前にするとどうしても憎まれ口をたたいちゃうのよね。これもそのうち治さなくちゃいけないんだけど」
「はぁ~、こればっかりはしょうがないわね。ちょっと話して憎まれ口をたたきあって、弾幕ごっこでもして楽しめれば別にそれだけで満足ということにするわ」
「なんにしても誰かが来ないことには始まらないんだけど。もしかしてまだこの異常な事態に気付いていないのかしら。…ありえるわね。霊夢って、年中頭が春っぽいから、もう頭の中では春になってるんじゃないかしら。」
「……嫌な予感。なんだか本当にそうじゃないかって気がしてきたけど、きっと気のせいよね。そうよ、そうに決まってるわ!」
「とにかく、そんなことを考えていたら気が滅入って仕方がないわ。もっと楽しいことを考えましょう。最近気付いたことなのだけど、霊夢は紅白の二色でしょ。私は七色。霊夢の二色を私の七色で割ると0.285714になるの。」
0.285714 -> おー、に、はち、いつ、なな、ひと、よん。 -> おにはいなひとよ -> おにあいなひとよ。
「お似合いな人よ!つまりは霊夢と私はお似合いな人なのよーーーーーー!!」
もう夜も深まり人々が眠りにつくころ、アリス・マーガトロイドの奇声が幻想郷へと響き渡っていった。
うたかたの夢、未だ咲かぬ桜の花。待ち人は未だ来ず。幻想郷とアリスの心に春がやってくる日はいつのことになるのであろうか。
なお、余談ではあるが霊夢たちが異変に気付きアリスの元にやってくるのはまだ半月以上も先、五月の出来事である。
確かに、割ると似合うというのは良い意味ではないかも。
まあ、これだけ脳内春満開なら、そんなこと気にも留めないでしょう(笑)。