Coolier - 新生・東方創想話

欠月永夜 その1

2004/11/21 10:58:01
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つと、目を覚ます。外はまだ明るい。それどころか日が昇ってまもない。
―異常だ。
そういう自覚はある。とはいえ自分の体調が狂ったわけでもないが。

「あれ、紫様? こんな時間に起きたのですか?」
部屋にパタパタとはたきをかけていた藍が驚いてこちらを振り返る。
「……ふあ、今何時?」
「まだ朝食を終えたばかりの時間ですよ?」
「……寝る……」
「そうですか、おやすみなさい」
ごそごそと布団にもぐりこむが……目は冴えて眠れない。
がばっと跳ね起きた。
「寝るか起きるかハッキリして頂くと掃除がしやすいのですが」
いつの間にやら藍の手には箒が。
「黒いののマネ?」
「しません」
即否定。
「起きられるのなら朝食にします? それとも昼食?」
「それぞれのメニューは?」
「朝食は味噌汁とお新香、ご飯。昼食は流しそうめんの予定です」
「……流すの?」
「はい。竹は橙が今採りに行っています」
「じゃあ、昼食で」
「では紫様、どいてください」
箒で部屋から追い出された。まったく、これが主に対する扱いだろうか。
ことがすんだらお仕置きしなければ。

部屋の外、縁側から空を見上げる。
うっすらと月が。その月は、ほとんど満月。
あくまでほとんどであり満月ではない。少し欠けている。
人間は気づかないだろう。だから動きたくなくても動かなくてはいけないのかもしれない。
月があのままでは安眠できないから。

「あれ、紫様起きてるの?」
橙が飛んできた。身長の倍はあろうかという竹を持って。
「おはよう、橙。今日も元気そうね」
「はい! えっと、今から流しそうめんするんです。紫様の分も準備しますからもう少しそこでのんびりしていてくださいね」
橙は竹を置くとぴょんぴょん跳ねながら藍の元へ。
「藍様~、竹とって来ました~」
「ん、ご苦労。ついでに割って組み立てておいて。私は麺の準備をするから」
「は~い」
再び飛び出してきた橙はどこからか取り出した剣を振りかざす。
―あんなの家にあったかしら? 
「妖怪が鍛えたこの楼観剣に斬れぬものなど、殆ど無い!」
一閃。竹は真っ二つに。さすがいい切れ味。
「冥界の庭師から盗って来たの?」
「力ずくで借りておいたんです」
後ろにはざるに山となったそうめんを持った藍が。
「気が向いたら返して置くように。さ、いただきましょう」

「これ返してきま~す!」
橙は食後の運動にと冥界へ楼観剣を返しに空へ。
藍は食器を片付る。手持ち無沙汰になりとりあえず竹をすきまに片付けた。
「あれ、竹を捨てちゃったんですか?」
「いいえ、片付けただけよ」
「どうやって取り出すつもりです?」
「う~ん、廻り巡って流れ着くかも」
「それは取り出すといいません」
「まあ、いいじゃない」
「まあ、いいですね」
こんな時間からは珍しいやり取り。思わず月を見上げる。
「ああ、結局月が満ちませんね」
「おかげで安眠できないわ」
「紫様はどうなさるおつもりです?」
「そうね、誰かが動くまで待つか、あるいは誰か誘って行くか」
「1人で行くという選択肢は?」
「眠い」
「私も行きましょうか?」
「藍は式。相手にちょうど良いのが風下の神社にいるわ」
「紅白?」
「ええ。足手まといにはならないでしょうから」
「では準備しておきます」
と歩き始めた藍が振り返る。
「そうそう、今日の夕飯はなにがいいですか?」
「とりあえず力の付くものを」
「わかりました」

夕食後、藍をつれて月を見上げる。
「橙!」
「呼ばれて飛び出て~」
「今日はお留守番」
「ええ~、藍様ひどい」
橙は涙目で。
「危ないから。泣いてもダメ」
橙、今度は笑う。
「笑ってもダメ」
橙、最終兵器として藍に抱きつく。
「うっ……それでもダメ。橙は我が家を黒いのやら、もしかしたら来るかもしれない紅白から守って」
「は~い」
「いってきます」

こうして二人は月を元に戻すためマヨイガを出るのだった。

「さて、どうやって紅白を口説こうかしら?」
「やっぱり物で釣るのが楽かと」


ここへの投稿は初めてとなる、ASOBUともうします。

永夜抄をやりこんでいるとむらむらっと書きたくなってそのまま書いてしまいました。
今更ながら結界組でストーリーを追っていこうかな~と。
てなわけで4~5回は続きます。

ASOBU
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