-13-
赤く色付いた葉を踏みしめ、陽の光が低く射し込む道を行く。
まだ早い時間のせいか、吐く息が白い。
やがて緑の葉が目立つようになり、何時の間にか辺りの景色は、太く逞しい幹が立ち並ぶ竹林へと姿を変えていた。
夜に跋扈する魍魎共はその塒へと帰り、代わって鳥や動物たちが起き出すには今暫くの間がある。夜と朝の狭間にある竹林は、朝もやにの中にあり、静寂だけが支配していた。
その奥に、竹の幹を横に渡し、竹の枝を並べた柵に囲まれた、小さな庵がひっそりと佇んでいる。
「…ただいま。」
竹柵の戸を開け、誰とも無く声をかけると、庭の奥から小柄な影が、白い服の裾をはためかせながら駆けて来る。
永琳は微笑を浮かべると、突進してきた少女を受け止めるように抱きしめた。
「ただいま、てゐ。早いのね。」
永琳の胸に頬擦りする少女──てゐの頭をくしゃくしゃと撫でると、その頭に生えている白い毛に包まれた長い耳が嬉しそうに一緒に動いた。
「お帰りなさい、師匠。」
庵の縁側に、何時の間にか立っていたもうひとりの少女がそう声をかける。
「…ただいま、ウドンゲ。遅くなって悪かったわね。使い魔でも寄越そうと思ったんだけれど、そうもいかない理由があってね。」
「いえ、いいのです。弟子の私が案じたところで、杞憂に終わることは自明ですから。師匠の身に、何か起こるわけがありませんもの。」
もうひとりの少女──鈴仙は苦笑混じりにそう答えた。見た目は幼いが、達観しているかのような涼しげな眼差しと、外見に似つかわしくない喋り方が、妙な違和感を与えると同時に知性を感じさせる。
その頭には、やはり白く長い耳が生えており、ちょうど真ん中でお辞儀をするように折れていた。
と、急にてゐが永琳から離れると、スカートのポケットから紫色の果実を取り出し、両手で差し出した。何か、捕らえた獲物を主人に見せる猫のように見えないこともない。
「あら、あけびの実ね。どこで採ってきたのかしら。竹林では採れない筈だけど、山のほうに行ったの?」
てゐは困ったような顔をして首を傾げる。理解できなかったのか、それとも理解はできたが伝える術がないのか。
「…ありがとう。」
永琳はそれを受け取ると、てゐの頭を撫でてやった。満面の笑みを浮かべると、てゐはまた弾かれたように庭の奥へと駆けて行ってしまった。
「てゐは、師匠がお疲れなのではと思ったのでしょう。あけびの実は滋養強壮に良いですから。」
「…ふふ、そうかもしれないわね。」
永琳は、まるで自嘲するような笑いを浮かべた。
「姫は?」
「まだお休みです。」
さして興味もなさそうに無言で鈴仙の返答を流すと、永琳は縁側に腰を下ろした。そして、膝の上に霖之助から貰ってきた本を置く。
「…その本はいかがなさったのですか?」
「風変わりな人間から貰ったのよ。久しぶりに、面白い人間に出会ったわ。」
それを聞いて、鈴仙は微かに眉をひそめた。
「…必要以上に人間と親しくすると、姫のご機嫌を損ねるかもしれません。」
永琳は横目で鈴仙を見上げた。それは言われなくても分かっている、とでも言いたげだったが、あえて口には出さない。
姫──輝夜とて、短い間だが地上で暮らしていた時期もあったのだから、多少なりとも人間と接しなければ、ここで暮らしていくことなどできないことくらい承知している筈である。
だが──それも、元凶はというとやはり自分だ。
永琳はまた自嘲するような表情を浮かべると、押し殺すように笑った。
「ウドンゲ──いえ、鈴仙。」
急に本名で呼ばれた鈴仙は、虚を突かれたように耳を真っ直ぐに立てると、慌てて傍に正座した。
今更になって、師と仰ぐ永琳を見下ろすように立っていたことに気が付き、うな垂れたように下を向いて上目で永琳を見やる。合わせて、長い耳も伏せるように倒れた。
そんな鈴仙の恐縮振りを知ってか知らずか、またはあえて無視したのか、永琳は庭のほうを見つめたまま静かに問いかけた。
「…鈴仙、あなた、月に帰りたい?」
思わず顔を上げる鈴仙。
「い、いえ!私は姫と師匠に恩があります。私を月に返さない為に、あんな大掛かりな術まで…。」
「…建前は聞きたくないわ。」
一刀両断。
鈴仙はまた下を向いてうな垂れる。しばらくの間、そのまま黙っていたが、やがて小声で話し始めた。もちろん、耳と一緒に下を向いたまま。
「私は──私は、姫と師匠と一緒なら、どこでも構いません。」
「──そう。」
その答えに、満足するわけでもなく、かといって憤懣やるかたなしといった風でもなく、暫く永琳は沈黙を続けた。
鈴仙がちらっと顔を上げて見る。
永琳の横顔は、ひどく寂しそうに見えた。
やがて──溜息をひとつつくと、永琳は鈴仙のほうに向き直った。
「…もう随分長い時間が経ったわ。地上にこれだけ長い間居るとね、考え方とかも人間に近い部分とか出てきたかもしれない。」
鈴仙は少し困ったような、曖昧な表情でそれに答える。実のところ、急に永琳がそんなことを話した真意が良く分からない。
「…もう月からの使者がこの地に入り込めないことは分かったのだから、もう少し気楽に生きたいものね。隠れてばかりでは息苦しくて。」
そう言って微笑む永琳だったが、鈴仙にはその姿がやはりどこか寂しそうに映る。
「師匠、何かお気に病む事でも?」
「違うわ、違うけど──。」
風が吹き、銀色の髪を揺らす。
「あなたは、不老不死というものがどういうものなのか、分からないものね。話しても無駄だったわ。」
急に、取り残されてしまったような気分に陥り、鈴仙はまたうな垂れた。
確かに、不老不死をもたらす禁断の秘薬──蓬莱の薬によって、永琳は死を知らない。また、輝夜は永遠を操ると同時に、永遠を生きる者だ。
鈴仙だけが違う。
月での人間との戦いで命を落としかけたように、不死の身ではない。いつか遠い日──その果てには、永琳や輝夜と別れる日も来るだろう。
顔を上げ、口を開こうとしたその瞬間、身を乗り出した永琳の人差し指が、鈴仙の唇に当てられた。
その先に鈴仙が何を言おうとしたのか、それを言わなくても分かったのか、永琳は寂しげに微笑む。
「…不老不死とは、得るものもあるけれど、失うものも多いわ。──例えば故郷とかね。」
その言葉が、永琳自身と、輝夜と、そしてもう一人の人物を示していることに、鈴仙は気がついた。
指を離すと、目を伏せる永琳。
「私は、ずっと異郷にいるものと思っていたの。」
そして今度は、鈴仙の頭に手を乗せ、その髪をゆっくりと撫でる。
「でも最近はね、みんなで暮らせる場所が、本当に私が帰るべき場所──故郷なのだと、そんな風に考えるようになってきたわ。」
半ば呆然と見上げた鈴仙の目に映った永琳の顔には、優しい笑みが浮かんでいた。
永琳は、輝夜が本当に笑ったところを見たことがない。それを奪ったのは、間接的にだが永琳自身に他ならない。少なくとも、彼女自身はそう考えている。
永遠を統べる力を持ち、死を知らず、過去にも未来にも囚われない輝夜。それはまた、永琳にも当てはまることだ。
そして、望まぬ不死の力を得て、過去も未来も、帰るべき場所をも失った少女にも──。
輝夜を逃す為に同胞を皆殺しにし、輝夜と一緒に暮らしていた者には口止め料にと、あの薬を渡した。
地上の者にとっては価値あるものと聞いていたので、それを渡したこと自体は永琳なりの配慮だったのだが、なぜかその薬は別な者の手に渡ってしまったらしい。
以来、二人は果てしなく、殺し合いとしか呼べない無意味で非生産的な行為を延々と繰り返している。
終わらぬ生に飽いて、消えぬ命を弄ぶ事で退屈を紛らす輝夜と、明けない夜に哭き、生を奪った輝夜を憎み、永遠の苦悩に苛まされる少女。
ずっと愚かしいことだと思っていたのだが、最近の永琳は別な考えを抱くようになっていた。
二人は、その苦輪から放たれる時に何を想うだろう──。
「私が死んだら、あなたは笑って見送ってくれるかしら?」
どこか遠くを見つめるように、他の誰かに尋ねているような気にもさせる永琳の問いかけに、鈴仙は言葉に詰まり、何も答えられなかった。
「…もし、死を目の前にしたら、あの子は笑ってくれるのかしらね。」
笑い合う二人の姿と、それを見守る自分の姿が永琳の瞼の裏に浮かび、そして消えた。
-14-
空に薄く流れる雲の切れ目から僅かに太陽が顔を覗かせ、西に傾きかけたその姿が、家々を黄昏色に染め上げる。
長く伸びたその影に、不意に変化が訪れた。
そして、風が木の葉を巻き上げると、それが合図のように黄昏の中に忽然と人が姿を現す。
黒の外套に、銀色の長い髪。
それに気付いた者はもちろん、目にした者もいない。目にした者が居たところで、それは地平に沈み行く夕陽が見せる幻影か錯覚のように感じたはずだ。
ちらっと永琳は辺りを見渡すと、何事もなかったかのように店の暖簾をくぐった。この里でいつも利用している店である。
「失礼するわよ──。」
いつも通りそう言いかけたところで、彼女の動きが止まる。
「やあ、いらっしゃい。」
そう笑いかけたのは、見知った店の主人である好々爺ではなかった。鋭い眼光を丸眼鏡で隠した、あの博識な青年の姿だったのである。
呆気に取られている永琳に、してやったり、といった底意地の悪い笑みを投げかける霖之助。
「…あんな辺鄙なところでは客が来ないから、里のほうに移ったのかしら?」
まるでせせら笑うように永琳が皮肉たっぷりにそう言うと、
「いや、いい出物がないかと見に来たのですが、ここの小父さんに店番を任されましてね。」
と、わざとらしく肩をすくめて霖之助は答えた。何とも嘘臭いと言い方に、憮然とした表情で永琳は顔を逸らす。
その拍子に、店の奥で椅子に腰掛けていた少女と永琳の目が合った。
青みがかった銀色の髪に、胸元を赤いリボンで飾った青いワンピース姿の少女。その瞳には強い意志が感じられ、凛然とした気丈さを伺わせる。
「それに──彼女がどうしても会いたいって言うものでね。」
そう霖之助が言うと、少女は驚いた表情を彼に向け、そして勢い良く立ち上がると永琳に駆け寄った。
「そうか!あなたが、あなたが薬師さんなのか!」
破顔一笑すると、握手しているつもりなのか、永琳の両手を取ってぶんぶんと上下に激しく振る少女。
永琳は苦笑混じりでそれに応えたが、一瞬だけ霖之助に恨みがましい視線を投げつけた。どう考えても、待ち構えていたと考えるのが自然で、先程の言は嘘だとしか思えない。
「会えて嬉しいよ。ああ、私はこの里の──あ、いや、名前は上白沢慧音という。よろしく。」
「彼女は、この里の世話役みたいなものでね。」
付け加えるように霖之助が言うと、永琳は少し不思議そうな顔をした。世話役と呼ぶには少し若すぎる気がしたのである。
だが、それは表に出さず、永琳は外套のポケットから硝子の瓶を二つほど取り出して机に置いた。一方は白い粉のようなものと、もう一方には黒い丸薬が詰められている。
「…これは、今回の分よ。」
「ありがとう!」
努めて事務的な口調で告げたつもりの永琳だったが、慧音はまったく気にしない様子の笑顔でそれに答えた。
「ずっと会いたかったんだよ、この店に上等の薬を持って来てくれる人がいるって聞いてから。ずっとお礼を言おうと思ってて。」
少し照れたようにはにかんだ笑みを見せる慧音。だが、逆に永琳は困ったような顔をして視線を外す。待っている者がいると、店の主人に聞かされてはいたのだが、もちろんそれを避けてきたのは説明するまでもない。
当然、目立つのは避けたいと思っているからなのだが──。
「…苦手なのよ、そういうのは。」
これが本音である。
「でも、びっくりした。今週はもう来ないと思っていたのに。」
「…近くの森に、薬の材料採集に来たのよ。ついでに、と思って。」
霖之助から代価を受け取りながら、永琳素っ気無くそう告げたが、それは半分だけ嘘である。
「そうなのか?それなら、言ってくれれば、村の若い衆を向かわせたのに。」
「…少し危険な場所だし、それに秘密にしておきたいのよ。」
それは本当。
魔法の森は危険な場所であることに間違いはないし、それに案内してくれたアリスと、他人には──特に魔理沙には、と念を押されたのだが──絶対に教えないと約束をしていたのである。
良質の材料が採れる場所は秘密にしたいという説明に納得したのか、慧音もそれ以上は追及しようとはしなかった。
「でも、まさか霖之助と知り合いだとは思わなかったよ。ここで待ってろって言われた時には、何かと思ったんだが。」
「…この里でも変わり者として知られているようね。」
永琳が皮肉で応酬すると、霖之助は惚けた笑いでそれに応える。やはり待ち構えていたのだ。
「ああ、そうだ、良かったら名前を教えてくれないか。」
「…八意永琳よ。」
「永琳か。うん、いい名前だ。」
何故か満足気な慧音の口から、霖之助と同じ言葉が出てきたことに永琳は可笑しくなり、少し嘆息するように苦笑した。
「ところで、夜に里の寄合があるんだが、顔を出してくれないか。あなたにお礼を言いたい人は私だけじゃないんだ。」
思い出したように慧音がそう誘ったが、
「…そういうのは苦手なの。」
と、永琳は取り合わない。
慧音はまだ何か言いたそうな表情を覗かせたが、無理強いしても無駄と言うことを悟ったからなのか、残念そうに溜息をついただけで黙ってしまった。
それを見て少しだけ、永琳は慧音に何か憐れむような視線を向けたが、当の本人はそれに気がつかなかった。
里の入口まで永琳を送ることにしたのだが、店を出てからは三人とも沈黙したままだった。
「なあ…よかったら──この里に住んでくれないか?」
入口の番所まで来たところで、慧音はやや伏せ目がちに、少し戸惑いを見せながら永琳にそう尋ねる。
「あなたの作ってくれた薬は、本当に皆の役に立っている。この里には医者がいないし、万一の時には、南の里の施術所まで山二つ越えなきゃならないし…。」
反応を窺うような慧音に、やや困ったような顔をしながら、
「…同居人がそれを嫌うと思うの。」
と、何故か永琳は霖之助の方に向かってそう静かに答えた。霖之助は軽く目を伏せ、嘆息する。
慧音はそれに気が付かない。
「…分かっているんでしょう?人間ではないの。」
もう一度、そう永琳が静かに告げる。
「なんだ。それなら気にしなくても──私も一緒だ。」
「知ってるわ。」
軽く笑って、永琳は呟くように言った。それを見て、分かっていたのかと慧音は苦笑した。
──だが、やはり慧音は気が付いていない。
永琳の言葉が、誰のことを指しているのか、わざと不明確にしていることに。そしてそれが、一人の人物を指しているのではないことに。
「知っていて…、知っていて、会わせたのね。霖之助。」
永琳が目を細めながら霖之助を見やる。香霖堂で交わした会話と同じく、主語を省略して核心部分だけを訊く。
彼は言葉では答えず、ただ穏やかな笑みと共に小首を傾げた。
くっくっ、と、喉の奥で笑う永琳。
「…本当に博識なのね、あなた。それに聡明で──少しずるいわ。」
霖之助は、分かっていて、意図して慧音に引き合わせたのだ。それも、永琳が慧音のことを知っており、逆に慧音は永琳のことを知らないという確信を持って。
そして、異界の伝承まで──輝夜のことすらも、この青年は知っていたのだ。
慧音と霖之助が知己だったとは永琳自身も予想外だったが、一度会っただけなのに、心の中まで見透かされていたかのようで、永琳は驚きと共にある種の感動すら覚えていた。
長いわだかまりを払拭する糸口を、まさか人間が与えてくれるなど、想像もしていなかったのである。
「人間にしておくには惜しいわね。気に入ったわ。」
「褒め言葉と受け取っておきますよ。」
霖之助は肩をすくめておどけたようにそう言うと、一転して今度は真面目な顔になる。
「…また、店のほうに来て下さい。」
「…ええ、お邪魔するわ。」
そう告げると、背を向けた永琳だったが、取り残されたように不安げな眼差しで見つめる慧音に気が付くと、彼女に向き直る。
そして、おもむろにこう言った。
「『年年歳歳花相似』という詩があるわね。」
慧音は、びっくりしたような顔をした。
「あ、ああ。古い異国の詩だ。続きはこうだな、『歳歳年年人不同』。」
「そうね。花は変わらず美しいけれど、人は年老いて行く…という意味ね。」
少し目を伏せる永琳。
「…でも、こういう解釈はどうかしら。──花はその姿をいつまでも変えないけれど、人はいつか時と共に変わることができると。」
僅かな逡巡の後、今度は慧音の目を真っ直ぐに見つめ、永琳は穏やかな笑みと共にそう告げる。
年年歳歳花相似
歳歳年年人不同
その瞳は、どこか遠くの別な場所を見つめているように、慧音には映った。
「あ…ああ、そうとも。──きっと、変われるさ。あなたの同居人も、この里と人間を好きになってくれる。きっと、きっとだよ。」
比喩的な永琳の言い回しを、やっと理解した慧音は、希望に満ちた表情で強く言った。
霖之助もそれを見て微笑む。
その二人に向けて微笑を浮かべると、永琳は踵を返す。
「…また来るわ。」
「ああ!待ってるよ!」
軽く手を振って歩き出す永琳に、手を振り続ける慧音。
西の空は茜色に染まり、地平に沈み行く夕陽が、その後ろに長い影を落とす。
二人は、黙って永琳の後姿を見送り続けた。
「あっ!」
慧音と霖之助とが、同時に声を上げた。
一瞬、ほんの一瞬だ。
地平に沈み行く夕陽の最後の姿が、緑色の光を放ったように映ったのだ。
「…今…。」
言いかけながら慧音が霖之助を見やると、霖之助は永琳の後姿を見つめたままだった。
慧音が視線を戻すと、立ち止まっている小さな姿が目に入る。
だが、それも一瞬のことで、やがて後姿はまた歩き出した。
慧音はもう一度、霖之助を見る。
視線に気が付くと、霖之助は穏やかな微笑を浮かべ、ゆっくりと頷いた。
慧音も微笑むと、頷く。
緑の太陽。
沈む夕陽の最後の光が緑色に輝く時、それを目にした者は、心の中の偽りが拭い去られると言われている。
そして──そして、自分の心の奥底を覗き込むことが出来るようになるとも言われている。
二人は黙ったまま、いつまでも道の彼方の小さな後姿を見送り続けた。
同じように、緑の陽光を見たのであろう永琳の姿が見えなくなるまで、ずっと見送り続けていた──。
(-了-)
この上無く美しいラスト、しっかりと堪能させていただきました。
なんちゅーか、作者様の文章は映画でも見ているかのような錯覚を叩き込んでくれやがりますね。
文字を観るとでも言えばいいのでしょうか。
言葉の一つ一つに、ものすごい存在感があるのですよ。
こんなこくまろな文章を私も書ける(描けるでも可)ようになりたいです。
>>「魔理沙とアリスは本当は仲良し」
>>アリスのような子が時折見せる弱さというか可愛らしさが、私の中の萌えどころの美学
鼻血噴きながら三回転してバク宙うった衝撃に頭髪が全て抜け落ち禿げ上がるほどに同意させていただきます。
アリスツンデレ説を墓の中まで持って行く所存ですよ私は。
魔理沙とアリスに対する永琳の視線に、「もしや……?」とは思っていましたが、やっぱりそういう事だったんですねえ。良い伏線でした。
>>私の希望的妄想
こんだけ壮大な妄想を東方の世界にどんぴしゃとハメてくる実力は凄いとしか言い様がないです。
「幽冥傳奇」もそうでしたが作者様の幻想シンクロ率は恐ろしく高いですね。
自分には違和感なんて全然感じません。
希望的妄想大歓迎。
ハッピーエンドが嫌いな人間なんて、多分いませんし。
あ、第六話が読めた喜びに舞い上がって肝心な言葉を忘れていました。
遅くなりましたが、完結お疲れ様です。
最初から最後まで、唸らされっぱなしの一作でした。
この作品を作り上げてくれた作者様に心から感謝を。
両手を挙げて激しく同意します。東方シリーズのエンディングではみんな仲良くやってますから、きっと二人も…。
>>魔理沙とアリスは本当は仲良し
そりゃあもう(笑)
今になってようやく、第一話で書かれていた「里で待っている者」が慧音のことだったことに気付いたのですが…。
最後に使う伏線を最初に用意していたところが、改めてその高い構成力に驚かされました。
そして美しく余韻の残る終章。
緑光現象を見た者は自分の本当の心に気がつく、というのはスコットランドの伝説ですね。いつか輝夜と妹紅に仲良くなって欲しい、という永琳の本当の想いが叶いますように。
重い展開と穏やかな展開の絶妙なさじ加減、伏線の配置の仕方、文章の読みやすさ、そして何よりも永琳の言葉一つ一つの重さ。
どれを取ってもとても言葉に表せないぐらい素晴らしい…脳内で映画でも見てるような感覚まで覚えてしまいました。
最終話だとうどんげと永琳の対話シーンは感涙ものでした。とにかく臨場感が凄い。凄いという言葉しか思い浮かばない程、文章表現が凄い。
そして最後の詩と情景。完全に無条件降伏ものですorz
アリスの事とか「同意」というか、いろいろ言いたいというか、本当は叫びたいのですが、それはとりあえず他の人が言ってくれると思うので置いておきますw
最後に一言だけ…
(前略)ありがとうございます。
動きのある展開、登場人物の心情を晒し出す重い展開、それらがとても良く出ていて読みごたいのある作品でした。
中盤、かなり緊張した展開に驚き、第六話での穏やかな展開がまた良い。
永琳の印象が変わったな…。
霖之助がかっこよすぎたw。
最初から最後まで美しき文章です。
作品の文章力と構成はお見事の一言。
永琳とウドンゲの会話に好感触。
自分の産まれた所が故郷なのか、それとも自分が居たいと思うところこそが真の故郷なのか。
不老不死がどれ程の呪いなのかはなった者にしか分かりません。
でも、何時かきっと人は変われる日が来ると私は信じています。
私用で数日家を開けており、感想大変遅くなりました。すいませんー。
そして。完結おめでとうございますっ。できるならば私の方もMUIさんと同時に完結させたかったのですが……今よーやく書き終わりました(苦笑)
しかし、相変わらずというか……何ですかねこの文章力。もう嫉妬するより遥かに先のレベルです。まずもって真似ができない。雰囲気との相乗効果は、最後まで全く失われる事がありませんでした。
そしてタイトルの意味。どこでぶつけてくるかと思いましたが、こう来たかと。主人公は永琳だった。という事に気がつくまでは絶対に分からないけど、分かるとこうまでストンと心に入る。お見事です。ああ、でも永琳良いキャラだ……。いや、まさかここまで書けるとは。永琳の描写など欠点無しです。凄すぎる。
次に霖之助と慧音。慧音の描写なんか、最初見たときは無茶苦茶びっくりしましたよ、私の中のイメージと違って。でも繰り返し読むと好きだなと思わせられるのです。凄く強く。
霖之助も、もの凄く味が出ています。でも確かにずるいw 永琳とくっついたりとかしないかな、ドキドキ……(お前はそういう事しか考えられんのかっ!)
いや、素晴らしかったです。リレーでもお互いに頑張りましょう~。
>魔理沙とアリスは(以下略)
私の第5話読んでください、私の回答がこっそり書いてあります。
以上!(爆笑)
話の運び方、そして物語の光景を引き立てる文章力。・・・素晴らしいです。
それぞれの性格が非常に良く立っていて、読んでて気持ちよかったです。ただ、霖之助カッコよすぎw
>輝夜と妹紅
妹紅は昔はともかく、今は自分でも気付いてないだけで輝夜に惹かれてるんじゃないかと思います。多くの人の死と想いに触れてきた妹紅にとって輝夜は、自分の気持ちを全力でぶつけても、必ず純粋な想いで返してくれる。そんな安心感を持てる相手なんじゃないかなーとか思うわけです。・・・ただその方法が殺し合いなんて物騒なモンな訳ですが。・・・ただ輝夜の方は、純粋に妹紅のこと嫌ってそうだから、余程のキッカケでもない限り仲良くするのは難しいのかなぁ・・・・・・
それで今さっき作品を読み終えて、なるほど、と。
>それでも、私はいつか二人は仲良くなれるものと信じたい。
(神妙に頷きつつ)同意です。
互いを殺し合う関係にあり、そうするに足る理由があったとしても、いつか和解する時がやってきて欲しい。永遠という果てしない時間を憎しみ合うなんて悲しすぎますからね。
それこそ、理想主義者な私の希望的妄想ですが。
そんな中での、霖之助の立ち位置も面白いですね。この男にはどこまでが見えているのか、底が知れません。
ちなみに私、香霖堂を読んでないので、霖之助のことをよく知りません。なので、このお話での霖之助が私の中でのデフォ設定になりそう(笑)。
それはさて置き
>「魔理沙とアリスは本当は仲良し」
もちろん一口に仲良しと言ってもそれは手を繋いで並んで一緒に歩くみたいな仲良しじゃなくて5話目にあったように事あるごとにいがみ合いながらも何だかんだ相性ぴったしカンカンでしかも双方そのことを絶対に認めない認めたくない認めてやるかっみたいにおめーらちったあ素直になれとか思わず突っ込みたくなるようなそんな仲良し関係ですよね!!(希望的妄想過多)
幻視「させる」能力、しかと堪能させていただきました。
5年近く前のこの作品を見つけられて良かった!
素敵な作品をありがとうございました 。