山の奥の奥、川を渡り、谷を越え、森をつっきって延々と歩き続けたら、もしかして辿り着けるかもしれない。
そんな、自然が豊かな……というよりもそれ以外何もない場所に、幼稚園がありました。
幼稚園ですから、もちろん通っているのは小さい子供たちですが、どうも一癖も二癖もある子ばかりです。
それもそのはず。ここに通っているのは、ほとんど妖怪の子供たちです。人間の子供はここでは少数派。
それ位、この博麗幼稚園は人里離れたところにありました。
**
暑かった夏も終わり、幻想郷の秋もだいぶ深まってきました。
山を彩った木々も、その葉を落とし始めています。
お日様もまだまだがんばっているけれど、さすがに夏のような元気はありません。
時折ひゅうと吹く風がちょっと冷たく感じられる、そんな秋の日。
幼稚園の中からは今日もにぎやかな声が響きます。
のぞいてみると……いましたいました。今日もやっぱり元気いっぱいの三人組です。
赤いリボンの女の子はルーミア。隣の女の子になにやら熱弁をふるっています。
ちょっと耳を傾けると、どうやら秋の食べ物で何が一番おいしいか。というお話のようです。
このルーミア。この三人の中ではおとなしい方なのですが、食べ物の事だけは別。誰よりも元気になります。
でもよく聴いてみると、ルーミアが言っているのはあれもおいしいし。これもおいしいし…
と、一つに決められない様子。
確かに、秋はおいしいものが多いですからね。
そのお話の相手は橙。
ルーミアの熱弁に対して、「一番おいしいのは秋刀魚だよ」と、一歩も譲りません。
橙はそのお魚が大好きなので、何日かに一度は食べたいと言ってお姉さんを困らせるのでした。
そうそう。こんな山の中ですが、なぜか橙のお家には新鮮な海のお魚があります。
どこから手に入れてるんでしょうね。
ここでルーミア。熱弁をふるいながらも、実は秋刀魚のことが気になって仕方ありません。
なにせ幻想郷から出たことがないので、秋刀魚を食べたことがありません。
なので、橙のことがちょっぴりうらやましくて、でもやっぱりちょっとくやしいので、そのことは黙っています。
最後はチルノです。いつもなら、大抵は騒ぎの中心の彼女ですが、今日は出遅れています。
それくらい、二人は熱く盛り上がっています。近寄りすぎると溶けてしまうかもしれません……というのは冗談ですけども。
実のところ、チルノの一番のお気に入りは先生のおやつなので、どれか一つという事はありません。
けれどそれを言ってしまったら、二人の激論に思いっきり巻き込まれそうなので言いません。
ちょっと賢くなったチルノです。
でもどうでしょう? そういう態度だと、お約束として……
ルーミアと橙がチルノに言いました。ものすごい勢いです。
「それでっ、チルノちゃんは…」
「どっちがおいしいと思うっ!?」
突然話を振られて、チルノは目を白黒。
「え、えっと…」
どちらも期待に満ちた瞳です。どっちかなんて、とても選べません。
というか、あまり話を聞いていなかったので、何と何を比べているのかもよくわかりません。
振って沸いた大ピンチです。
なおも詰め寄る二人に、チルノとしては誰でもいいから助けてほしいという気持ちでいっぱいです。
でも、周りを見てみても、部屋にはこの三人しか……
その時、立て付けの悪い障子戸が、いつものようにがたがたと音を立てて開き、霊夢がやってきました。
「あんたらー。ちょっと座んなさ…」
いつもの台詞を言おうとした霊夢に、二人の矛先が向かいました。
チルノは神様っているんだなぁと思いました。そして、霊夢にごめんなさいと心の中で謝りました。
まぁ、別にチルノが悪いわけではないんですけどね。
二人とも大声で一緒に話すので、やかましい事この上ありません。
しかも、今来たばかりの霊夢には二人の話が一向に伝わりません。
霊夢はとってもにこやか~な表情ですが、払え串を握った手がふるふると震えています。
なぁ~んか嫌な予感がしますね。
「とりあえず…」
気配がちょっとだけ変わりました。それに気付いたチルノはこそこそとその場を離れようとします。
気付いていない二人はなおもしゃべり続けます。
次の霊夢の声は、二人の声を合わせたのより、もっとずっと大きな声でした。
「あんたら、ちょっと黙んなさい!」
そう言って、懐からお札を三枚取り出して放りました。
一枚はルーミア、一枚は橙に向かいます。
そして、びっくりして身動きできなかった二人の口にぴったんと張り付きました。
「「むーーーっ」」
手足をばたばたと動かして大騒ぎです。でもお札はなかなか取れてくれません。
もごもごとくぐもった声が聞こえます。
もう一枚はチルノに向かいましたが、少し距離があったおかげで見事よける事ができました。
これはかなりの快挙ですよ。
でも、チルノはへたりこんで肩で息をしています。
後ろの壁にお札が当たったとき、パァンととても気もちのいい音がしたからです。
ちらりと横目で見ると、お札が張り付いているあたりに埃が舞っています。
飛んでくるときに勢いがつきすぎたのかもしれません。
あんなのが当たったら、とっても痛そうです。
座り込んだまま恐る恐る見上げると、霊夢はぽりぽりと頬をかいています。
さすがにやりすぎたと思っているのでしょうか。
けれども、霊夢はおもむろに新たなお札を取り出しました。
「なかなかやるわね」
チルノはあわてて首をぶんぶんと振って言いました。
「まってまって。私、今日はそんなに騒いでなかったでしょ」
霊夢はそれを聞いて、何かを思い出すような仕草をした後、
そういえばそうねと言ってお札をしまいました。
チルノはほうっとため息をつきます。先生は、怒るとやっぱり恐いです。
そんなこんなで、朝の騒がしさも一服しました。
続きは後でということで、ルーミアと橙もおとなしくしています。
霊夢は窓に歩み寄ると、がらりと開けました。
涼しいというよりは、ちょっと冷たい風が部屋に吹き込みました。
その風を直接受けた霊夢は、無意識に肩の辺りをさすります。
さすがに、いいかげん冬服でも出そうかなと思いつつ、三人に向き直りました。
「ここから何が見える」
意図がよくわかりません。けれどもルーミアが元気に手を挙げて、「お空が見える」と答えました。
霊夢はそうねと答え、他にはどうと言って、今度はチルノに聞きました。
チルノは首をかしげながら、「山…と、森」と答えます。
霊夢は心持ち嬉しそうにうんうんと頷きます。そして最後に橙に聞きました。
橙はちょっと考えています。言いたかったのを、先に言われてしまったからです。
少し悩んだ末に、「庭が見える」と答えました。
霊夢は大きく頷きました。
「そう、庭があるわね。じゃ、その庭には何がある」
三人がぱたぱたと集まってきて外を見ます。
庭には井戸とか、昨日地面にお絵かきした跡とか、いろいろなものがありましたが、
一番目に付くのは一つでした。
三人はお互いに目を合わせると、一緒に言いました。
『葉っぱ』
そのとおり。赤や黄色のような色とりどりの、あるいは茶色くなってしまった葉っぱが、
庭を埋め尽くすくらいの勢いで積もっています。
これは、掃除が大変そう……あ、なんとなく霊夢の考えていることがわかってきました。
っと、こちらを睨んでいます。さすが、伊達に先生をやっているわけじゃありません。
霊夢は気を取り直して三人に言いました。
「ってことで、今日はみんなで掃除をするわ」
『え~~』
もちろん、一斉に不満の声が上がります。
けれど、そんな反応は予想済みといった感じで、霊夢は落ち着き払っています。
「まぁ、そう言うと思ったけどね」
そして、懐に手を入れると大きな包みを取り出しました。
はっきり言って、どこに入っていたのか不自然なくらいの大きさです。
みんな不思議に思いましたが、それを言ってしまうとまたお札が飛びそうなので誰も何も言いません。
それに、今は中身のほうが気になります。
三人が見守る中、霊夢は包みをほどいていきます。
すると、勢い余った中身が一つ、ころっと転がり出ました。
子供たちの目が釘付けになります。
お分かりでしょうか。包みの中身はさつま芋でした。
三人はまじまじとそのお芋を見つめ、霊夢を見上げます。
落ち葉とお芋、とくれば、答えは一つしかありません。
「集めた葉っぱで焼き芋にするから、みんながんばってちょうだい。」
そう言うと、転がったお芋を拾い上げて包みに戻してしまいました。
子供たちからとっても残念そうなため息が漏れます。
それから、と言って霊夢が付け足しました。
「一番がんばった子には、大きいのあげるから」
それを聞いて、二人が勢いよく飛び出しました。
チルノと橙です。まだまだ焼き芋の魅力は健在です。
けど、あれれ、真っ先に飛び出しそうなルーミアはどうしたんでしょうか。
なぜかその場で立ったまま、動こうとしません。
どうしたのかなと霊夢が前に立っても反応しません。
どこかぽおっとした目で、どこか遠いところを見ています。
耳を近づけると、独り言が聞こえました。
「お芋……甘くて…ほかほか……わは~~」
あらら、口元からよだれがたれています。ちょっと気が早すぎますね。
霊夢はその口元をハンカチで拭うと、耳元でささやきました。
「早く行かないと、大きいのとられちゃうわよ」
はっとわれに返ったルーミア。一目散に駆けていきました。
あっさりと三人を乗せることに成功し、部屋には霊夢だけが残りました。
腰に手を当てて、やれやれといった様子です。
「まったく、ほんと単純なんだから…」
抱えている包みを見下ろします。
「別に大きいのじゃなくたって、こんないっぱいあるのに」
そんな事を呟きながら、霊夢の表情はなんだかとても嬉しそうです。
なんだかんだ言っても、やっぱり素直な子供たちがかわいいのでした。
「さて…と。そろそろ私も行かなきゃね」
そう言って、霊夢も部屋を出ました。
** **
霊夢が外に出ると、子供たちは三者三様に落ち葉を集めています。
チルノは「何でこんなこと…」とかぶつくさ言いながらも、手だけはせかせかと動かしています。
少し意地っ張りなのは相変わらずですね。
惜しむらくは、掃き方が大雑把なせいで、あちこち葉っぱが残っていることでしょうか。
ルーミアはというと、葉っぱをかき集めては、両手いっぱいに抱えて縁側のほうに運んできます。
少しくらい服が汚れてもお構いなしです。
でも、そんなに両手いっぱいに抱えて足元は大丈夫?
彼女の向かう先には、もう結構な量の葉っぱが集まっています。
そしてその手前にはひょっこりと顔を出している石が…。
霊夢が声をかけようとする寸前に、見事につまずいて転んでしまいました。
頭からまっすぐに集めた葉っぱの中に突っ込みます。ばふっという音がしました。
飛び散った葉っぱがぱらぱらと舞います。
霊夢が駆け寄って覗き込みます。
ルーミアはしばらく固まっていたかと思うと、やがてくるりと仰向けになりました。
にっこり笑顔でけがをした様子もありません。
葉っぱが受け止めてくれたみたいです。
そのまま、両手を広げてお空を見上げています。
「どうしたの」
「ふかふか~~。きもちいい」
「…そう、ならいいわ。びっくりさせるんじゃないわよ」
あっちから「こらーっさぼるなーーーっ」というチルノの声が聞こえてきます。
一方で橙は、ほうきをとても上手に使って手際よく葉っぱを集めています。
どうやら、お家でお手伝いをしているみたいですね。感心感心。
ところが、舞い落ちる葉っぱが鼻に当たったみたいで、くちゅんとかわいいくしゃみをしました。
それから目の前をぱらぱら落ちていく葉っぱが気になるみたいで、
きょろきょろとあっちを向いたりこっちを向いたり。ちょっと手がお留守です。残念。
そんな子供たちを眺め、ちょっと時間がかかるかなと思いつつ、
霊夢は縁側の近くをさっさっと掃いていきます。
さすがに先生なだけあって手馴れたものです。
「面白そうなことやってるじゃないか」
そう声をかけてきたのは、霊夢よりもずっと大人っぽい女性です。
でも彼女の話し方はとてもざっくばらんで、あまりそういうことを感じさせません。
「掃除のどこが?」
「それだけじゃないだろ」
「ち、ばれてるし」
「私に隠し事なんて、十年は早いね」
霊夢は手を止めて女性のほうを振り返りました。
その霊夢に女性は続けて話しかけます。
「なんか、お前が一番楽してるように見えるねえ」
「目を配るのも仕事のうちよ。だいたいあんたこそサボってんじゃない」
「いいんだよ、うちの連中は優秀だから」
そう言って、からからと笑います。
冗談半分、本気半分というところでしょうか。
「ま、今日はちょっと派手にやらせるつもりだし、みんな腹減るだろうと思ったからな。
食料の調達に来たってわけだ。どうだ、生徒想いの先生だろう?」
「いつだって派手な気もするけどね」
「そうかい?」
全く悪びれた様子もありません。
そんな二人のところにルーミアが駆けてきました。
「せんせー。チルノちゃんが…」
ルーミアの指差した先では、チルノがほうきを振り回して遊んでいます。
どうやら、早くも飽きてきてしまったようですね。
それを見て、女性はニヤニヤと笑います。
「ほれほれ、子供のお守りは大変だねえ」
「五月蝿い。後で持ってったげるからさっさと…」
その時、建物の裏手で ドォーーーン と大きな音が響きました。
なにかもうもうと土煙も上がっています。
二人の先生は呆然としてそちらのほうを眺めています。
先に我に返ったのは女性のほうでした。
「いやあ、元気が良いのはいいことさね」
すっきりさっぱりと前後の脈絡を無視した、とてもさわやかな口調です。
「いいからさっさと戻れっ。建物を壊すな!」
「はいよ。じゃ、よろしく」
「せんせー、はやくはやく」
ルーミアは霊夢を急かしてぐいぐい袖を引っ張ります。
「あー、わかったから。ちょっと待って待って…」
先生のお仕事は大変そうです。お掃除よりもよっぽど。
** ** **
幼稚園の建物はあまり大きくありませんが、庭は結構な広さがあります。
元気いっぱいの子供たちが走り回っても、ぜんぜん平気なくらいです。
ですから、やっと葉っぱを集め終わったころ、子供たちは三人ともへとへとでした。
それに比べて、霊夢先生は涼しい顔です。
途中からは三人に混じって、同じように掃除をしていたにもかかわらずです。
やっぱりすごいなぁとみんな思います。
集まった葉っぱはそれこそ山のようです。いったいどこから降ってきたのか不思議なくらいです。
そんな落ち葉の山を背にして、霊夢は言いました。
「ご苦労様。おかげでいっぱい集まったわ。」
ちょっと疲れた顔をしながらも、みんな元気にうなずきます。
みんなこの後の焼き芋に心躍らせています。
チルノが代表して言いました。
「せんせー、早く焼こうよ」
二人がコクコクうなずきます。
「はいはい。一寸待ってなさいって」
そう言って、またしても懐から例の包みを取り出しました。
何度見ても不思議です。
そして、そのお芋を片っ端から落ち葉の中に放り込んでいきます。
その霊夢を見つめている子供たち。なにか言いたそうです。
「……何…って、ああ、そっか」
何が言いたいのかわかった霊夢は、三人の前に包みを出します。
「みんな頑張ってくれたからね。好きなの選びなさい」
わっと包みに群がる子供たち。その勢いにはさすがの霊夢もたじたじです。
わいわいきゃいきゃい騒ぎながら、みんな気に入ったお芋を選びます。
「目印つけときなさいよ」
『はーいっ』
三人が自分のお芋を丁寧に落ち葉の中に入れたのを見届けて、
霊夢は残りのお芋を全部放り込み、お札を一枚取り出しました。
そして、なにか呪文のようなものを唱えると、お札にポッと火がともります。
それを投げ入れると、落ち葉はやがてパチパチと小気味よい音を立て始めました。
そして、次第に火は落ち葉の山全体に広がっていきます。
子供たちから歓声が上がり、輪になって歌い始めます。
「おっ芋 おっ芋 おっいしっいおっ芋」
「はーやくやっけて やっけたらはっやく」
「たっべたっいなっと」
歌といっても、音程もリズムもばらばら。歌詞だって適当です。
でもそんなことは関係ありません。
みんな本当に楽しそうに歌っています。
そんな光景をちょっとまぶしそうに見つめつつ、霊夢は焚き火を調節しています。
おいしく焼くのは実は結構難しいのです。
焦げたり、生だったりしたら、みんながっかりですもんね。
そんな霊夢の苦労も知らずに、子供たちは歌っておどって大騒ぎです。
それでもって、何分かおきに「せんせー、まだ?」と聞いてきます。
霊夢はそのたびに、もうしばらく待ちなさいと答えます。
「わ、けむい~。目痛い~」
待ちきれなくなったルーミアが焚き火を覗き込んでいると、
意地悪な風が吹いて、おもいっきり煙を被ってしまったのです。
見ると、ほかの二人も煙を浴びたらしく、こんこん咳き込んでいます。
「ちょっとルーミア、目こすっちゃ駄目。それからあんたらも…って、ああもう。
まだしばらくはできないから、あっちで遊んでなさい。できたら呼ぶから」
どうにも待つことは苦手な子供たち。
焚き火の中のお芋に心惹かれながらも、追いかけっこを始めました。
それでも時々こっちを見ては、今か今かとそわそわしています。
また、霊夢としても楽しみであることに違いはないので、適当なのを枝で突っついてみては
まだ生ねと思って、はやる気持ちを抑えるのでした。
** ** ** **
いつの間にか、もう夕方も近くなっています。
この季節になると、お日様が沈むのがとても早いです。
「熱いから気をつけなさいよ…特に橙」
「うん」
先回りして釘をさしてから、それぞれのお芋を発掘して子供たちに渡します。
受け取った子供たちは、お手玉のようにしながら冷まします。
さすがにすぐには食べられません。
それでもしばらくして、どうにかこうにか手で持てるくらいになりました。
真ん中から二つに割ると、白い湯気がほかほか立ち上ります。
甘い匂いがふんわり広がります。
我慢できなくなったルーミアが、皮も剥かずにかぷっといきました。
そして、やっぱりと言うか何と言うか、あんまり熱いので目に涙がにじみます。
熱さをこらえるように、ちょっと下を向きます。
「気を付けろって言われたばっかりじゃない」
チルノはまだまともに持てなくて、指先でつまんで冷めるのを待っています。
「だいじょうぶ? ルーミアちゃん」
ちょっぴり心配そうに橙が聞きました。こちらは丁寧に皮を剥いています。
「あひゅい。れもおいひい」
口にお芋を入れたまま、上目づかいで答えるルーミアは、どこから見ても幸せいっぱいです。
そんな顔を見せられては、チルノと橙も、もう我慢できません。
いっしょにお芋にかじりついて、ルーミアの仲間入りです。
「む…ん~ん~」
突然チルノが、胸をドンドンたたき始めました。
慌てて食べたせいで、つっかえてしまったのです。
「っとにあんたらは、人の言うこと聞かないんだから」
「んぐんぐ……ぷはっ。助かった…」
霊夢が差し出した水を飲んで、ようやく人心地ついたチルノ。
懲りずにまた大きく口を開けたところで、霊夢にぺちっと頭をたたかれました。
「あんたは反省って言葉を知らないのかしら」
「う、ごめんなさい」
「焦んなくたっていっぱいあるんだから、落ち着きなさい」
そう言いながらお芋を一口。「ん、おいし。いいできね」と、満足そうです。
ルーミアは早くも二個目に手を伸ばしています。
チルノはほんのちょっと控えめに、だけどやっぱり口いっぱいにほおばっています。
半分くらいを食べ終えた橙が、霊夢の袖を引っ張りました。
「なに、橙」
「お姉ちゃんにも持っていってあげていい」
橙は目を輝かせて答えます。
「いいわよ…っと、そういえば。ちょっと待って」
駆け出そうとする橙を止めて、袋を一つ取り出すと
その中に焼きたてのお芋をたくさん入れていきます。
「ついでにみんなの分も持ってってちょうだい」
そう言って、焼き芋のいっぱい入った袋を橙に渡しました。
橙は、「うんっ」と元気よくうなずいて、ずっしり重い袋を大事に抱えて歩いていきます。
それを見送って振り返ると、今度はチルノとルーミアがなにか言い合っています。
よく見てみると、ルーミアは二つも三つもお芋を抱えていて、服もなにか不自然に膨らんでいます。
原因は一目瞭然です。
やれやれと額に手を当てて、空を見上げました。
お日様も赤く染まり始めて、そろそろ西に傾こうとしています。
自分たちの影も、いつのまにか長く伸びていました。
「あーあ。今日も一日、騒がしかったわねぇ」
思いきり背伸びをして、息をいっぱいに吸い込みました。
ひんやりしてきた空気が、焚き火で火照った体に気持ちいいです。
掃除をして、焼き芋をして、それを食べて。
ただそれだけの一日だったのに、ずいぶんといろいろあったような気がします。
チルノが呼ぶ声が聞こえました。
騒がしくて忙しい一日は、もうしばらくは終わりそうにありません。
「でも…」
ま、それもいいかな。
最後の呟きを聞いた人は誰もいません。
もう、ルーミアが最高です。
焼き芋を思い浮かべてわは~~
落ち葉のクッションでわは~~
楽しい事大好きで、美味しいもの大好きでまったりな感じがたまりません。
橙も藍思いだし、チルノは少し成長したみたいだし、
次回のネタもありそうなので、今後も楽しみです。
今回は、なんとか平穏無事に過ぎた様ですね(^^;
こっそりボヤでも出すんじゃないかと期待して(ゲフゲフ
おじさんもう頬が緩みっぱなしですよ`,、('∀`) '`,、
霊夢より大人っぽい女性とというのが誰のことかさっぱり解りません。
いや、まさか、『彼女』が大人っぽい筈、あはhうわ!nなんだおまえやめ(恋符炸裂)
まあ、冗談はさておき、子供達もそうですが、大人な霊夢達というのもいい雰囲気でてますの~
幼稚園での快活なその様子。親御さんならずとも、遠くから見守ってあげたくなります。
敬体の文章は、読んでいると中だるみしてしまいがちなのですが、この作品はそれもなく、自然に読み終えることが出来ました。
それでは私も、よだれたらしてわは~、なルーミアに1票(何)。