時は幻想暦○○○年。
何故かどういうわけか、巨大な妖怪が出没するようになった昨今。
その足音は安眠を妨げ、また飛行音も安眠を妨げ、人間と普通の妖怪たちは、眠れぬ日々を過ごしていた。
そんな状況に対抗するため、お馴染みの面々は、ある組織を立ち上げた。
その名も・・・。
咲夜「と、いうわけで。『暇を得た人妖達による巨大妖怪駆除部隊』、定例会議を行います。」
恐らくリーダーであろう十六夜咲夜は、開会の宣言をした。
霊夢「何よ、そのネーミングは?」
魔理沙「長いし、物凄くそのまんまだな。」
恐らく暇であったのであろう人間、博麗霊夢と霧雨魔理沙。
二人は、咲夜のネーミングセンスに疑問を持つ。
咲夜「じゃあ、略して『暇得隊(かとくたい)』ね。」
霊夢「いや、そういう問題じゃなくてね。」
魔理沙「大体、暇を得たのはお前だけだろう。霊夢はいつでも暇だが、私は忙しいんだ。」
霊夢「咲夜が暇?なに、クビにされたの?」
咲夜「違うわよ。巨大な妖怪なんかが跋扈していたら、邪魔だし月は見えないし、五月蝿いし、
何より外見の上で舐められる恐れもあるって、お嬢様がね。それで、お暇を。」
魔理沙「結局、わがままお嬢様のいつものわがままか。」
咲夜「それに、洗濯物も乾かないし。」
咲夜は、レミリアの命令で、こんな団体を立ち上げたらしい。
霊夢「まぁ、咲夜がここに居る理由なんてどうでもいいのよ。問題は、そのネーミング。」
咲夜「別にいいじゃない。それに、ネーミングよりも実績が大切なのよ。」
魔理沙「名前負け殺人ドールに言われちゃお終いだぜ。」
咲夜「・・・何?やる気なの?名前負けマスタースパークが。」
魔理沙「あ~?」
咲夜「あ~?」
早速暇得隊に、内部分裂の危機が訪れる。
アリス「ちょっと。喧嘩じゃなくて会議でしょ。さっさと終わらせてくれない?」
慧音「小田原評定は御免だぞ。」
それを止めに入る、人間以外、アリス・マーガトロイドと上白沢慧音。
霊夢「・・・あんたらは何なのよ。」
慧音「里の人間も、眠れぬ日々を過ごしているもんでな。ちょっと来てみた。」
アリス「同じく。これで手早く事が済むなら、それに越したことはないし。」
咲夜「手早く済むかどうかは、あなたたちのやる気次第ね。」
慧音「まあ、里の平和のため、頑張るとするよ。」
慧音の参加理由が、最もまともに聞こえるのは気のせいか。
それはともかく、内部分裂の危機は何時の間にか去り、会議は再開される。
咲夜「昨今の巨大妖怪。その出現の原因は、まったく不明。」
アリス「耐久性も、段違いに強いわ。いくら撃ち込んでも、一向にやられてくれないし。」
霊夢「ほんと、常識を外れてるわねぇ。何とかならないの?」
魔理沙「何とかするために、こんなところに集まったわけだが。」
霊夢「こんなところって、そもそも、何でうちの神社でやるよ?」
咲夜「ここが一番・・・、まぁ、集まり易いじゃない?」
魔理沙「茶も茶菓子も食べ放題飲み放題だ。」
霊夢「勝手に食べるな~!!」
どうも暇得隊本部は、一般で言うところの博麗神社らしい。
よく見なくても、みんなでちゃぶ台を囲んで、お茶を飲みながら話し合っている。
お茶菓子付きである。
咲夜「話は脱線したけど、何か対策案があれば言って頂戴。」
霊夢「私にとっては、脱線した話の方が重要なんだけどね。」
慧音「とにかく、問答無用で撃ち込んだのでいいんじゃないか?全員で。」
霊夢「横暴ね。」
魔理沙「横暴だな。」
慧音「お前らに言われたくは無いぞ。じゃあ、他に案があるとでも言うのか?」
アリス「全員で、全力で撃ち込むってのは、無しよ。」
魔理沙「あ~?細かいこと言うなよ。」
慧音「全然細かくないぞ。それじゃあ私の意見と変わらんじゃないか。」
霊夢「別に、見回りでいいんじゃないの?」
咲夜「火の用心で火事が少なくなったら、みんなやってるわよ。」
アリス「根本的な解決には、ならないってことね。」
霊夢「ああそう。まぁどうでもいいけど、早く終わらせてくれないかしら?このままじゃ、
お茶とお饅頭とお煎餅と・・・・・。あ~!もうこんなに減ってるじゃないの!」
魔理沙「咲夜、お茶だ。あと、羊羹。」
アリス「あ、私も。」
慧音「私もだ。」
咲夜「上司は私よ。自分で勝手に用意しなさい。」
霊夢「勝手に飲むな食べるな~~~!!!」
会議は紛糾した。
霊夢「ああもう!!当面は見回り!んで、見つけたら誰かに連絡、そして攻撃!
これでいいでしょ!いいわよね!ファイナルアンサー!?」
咲夜「どうも、それしか無いようね。」
アリス「どっちにしろ、横暴だけど。」
霊夢「もう会議は終わり!煎餅も饅頭も片付けなさい!」
結局、当面は見回り、怪獣を見つけ次第連絡、という形をとることになった暇得隊。
咲夜「それじゃあ、今日から早速、活動するけど・・・・。誰が行く?」
アリス「私はパス。」
霊夢「私も。」
慧音「同じく。」
魔理沙「以下同文だ。」
咲夜「・・・・誰もやる気は無いわけね。」
霊夢「あんたもね。」
誰も、自ら見回りに出ようとはしない。
咲夜「仕方ないわね。ちょっと待ってなさい。」
魔理沙「あ~?」
咲夜「お待たせ。」
魔理沙「待ってないぜ。」
アリス「時止めて何をしてたの?」
咲夜「これをね。」
霊夢「?」
咲夜は、何時の間にか手に持っていたお皿を、ちゃぶ台に置く。
咲夜「ここに、お饅頭が五つあります。でもこの中に一つだけ、はずれが入っています。」
霊夢「ちょっと!!これって、さっき片付けたお饅頭じゃないの!!」
咲夜「そのはずれを食べたのが、今日の見回り当番。これでいいでしょ?」
霊夢「よくないわよ!」
アリス「ロシアンルーレットね。」
慧音「何かの催し物みたいだな。」
魔理沙「まぁいいぜ。さっさと決めてしまおうぜ。」
霊夢「無視するな~!」
約一名は騒がしいが、咲夜の提案に賛成する一同。
それぞれ饅頭を手に取り、そして。
咲夜「いただきます。」
霊夢「いただきます!」
魔理沙「いただきます。」
慧音「いただきます。」
アリス「いただきます。」
ぱくっ
一斉に、食べた。
咲夜「う~ん、美味しいわね。」
霊夢「そりゃあ、私がいつも買ってる、美味しい奴だもの。ていうか、もう勝手に持ち出さないでよ?」
アリス「さっきから、適当に頂いてるけどね。」
慧音「あ~、さっきも頂いたけど、これは美味しいな。何処で売ってるか、後で教えてくれ。」
魔理沙「・・・いや、不味い。」
霊夢「不味いって。あんただって、いつも食べてる奴じゃない。」
魔理沙「いいや不味い。大体、私は中身が餡じゃなくて羊羹の奴なんか食べたことは無い。」
霊夢「中身が羊羹?」
咲夜「あ、それハズレ。」
魔理沙「何だと?」
ハズレ饅頭の中身は、羊羹だったらしい。
霊夢「って咲夜!あんた羊羹まで勝手に持ち出したの!?」
咲夜「もう、何がどれだけ減っても、わからないんじゃないの?」
魔理沙「ていうことは、あれか?記念すべき第一回目の当番は、私かえ?」
アリス「じゃないの?ハズレなんだし。」
今日の見回りは、魔理沙と決まった。
魔理沙「仕方無い。行ってやるよ。」
アリス「魔理沙。」
魔理沙「ん?」
ぽいっ
アリスは魔理沙に、何かを投げた。
魔理沙「っと。・・・水晶玉か。」
アリス「連絡手段よ。これで、こっちと連絡を取り合えるわ。」
魔理沙「ご都合主義だな。」
アリス「そんなもんよ。」
魔理沙「そんなもんか。」
そんなもんです。
魔理沙「まぁいい。さっと行って、どかんと帰ってくるぜ。」
咲夜「どかん、とやるような事態に、ならないことを祈るわ。」
連絡手段を手に入れ、出撃する魔理沙。
暇得隊の、始動である。
・
・
・
魔理沙「やれやれ。折角だから、何事かあることを望むぜ。」
非常に不謹慎ではあるが、何も無いのにパトロールなどしても、それはとてもつまらない。
アリス『魔理沙、聞こえる?』
魔理沙「聞こえてないぜ。」
アリスから、連絡が入る。
水晶玉を覗き込む魔理沙。
アリス『あんたの前方、変な気配が突貫してきてるわ。』
魔理沙「聞こえてないといったはずだ。・・・・で、何だって?」
アリス『聞こえてないんでしょ?』
ギュルルルルルル!
何かの音が、魔理沙の耳に入る。
魔理沙「何だこの音は?」
アリス『だから、あんたの前方から、何かが接近してるって。』
魔理沙「何、そんなこともわかるのか?益々もって、ご都合主義だな。呆れるぜ。」
アリス『どうでもいいけど、避けたら?』
魔理沙「あ~?」
アリスに、避けるように言われた矢先、
どか!
魔理沙「うわ~~~・・・・!!!」
魔理沙は『何か』に当たり、撃墜されてしまった。
アリス「魔理沙?ちょっと、魔理沙?」
アリスが呼びかけてみるが、返事は無い。
咲夜「どうしたの?」
アリス「返事が無いわ。変事はあったみたいだけど。」
咲夜「状況から判断して。魔理沙に、何があったと思う?」
アリス「どうも魔理沙が、寝落ちしたみたいね。居眠り運転。」
霊夢「あ~、最近眠れないからねぇ・・・。」
慧音「交通事故だな。」
幻想郷には、道路交通法などは存在しない。
咲夜「霊夢、捜索隊を率いて、魔理沙を回収してきて。」
霊夢「捜索隊って・・・。隊と言えるほどの人数が居ないじゃない。」
咲夜「気分の問題よ。それに、こんな人数だから、一人欠けると仕事が増えるのよ。」
霊夢「あ~あ。面倒だなぁ・・・・。」
渋々霊夢は、魔理沙を探しに行くことにした。
・
・
・
魔理沙「あ~・・・・、何か、ふわふわしてるぜ・・・・・。」
魔理沙は、何やらよく解らない空間に居た。
?「魔理沙・・・・。魔理沙・・・・。」
突如謎の声が、魔理沙を呼ぶ。
?「魔理沙・・・。目覚めろ、魔理沙よ・・・・。」
魔理沙「魔理沙魔理沙五月蝿いぜ。私が居なきゃほんと何にも出来ないんだからな、人間供。」
?「あんたも人間だろう?」
魔理沙「・・・・ん・・・?ここは何処だ?」
眼を覚まして初めて、ここがよく解らない空間であることを認識した魔理沙。
?「ここは、お前の精神の世界だ・・・。私は、お前の心に語りかけている。」
魔理沙「精神の世界?お前は誰だ?」
魔理沙は、声のする方を向く。
藍「ようやく目覚めたか。」
そこには、八雲藍が居た。
魔理沙「何だ狐か。何か用か?」
藍「お前には済まないことをした・・・。」
魔理沙「ああ。損害賠償を要求する。」
重ねて言うが、道路交通法、ついでに傷害罪も、幻想郷には存在しない。
全ては、示談である。
魔理沙「ところで、何が済まなかったんだ?」
藍「私と正面衝突した。ちょっと、変なのに食われそうになったから、急いで退散したんだ。そしたら・・・。」
魔理沙「変なの?」
藍「でっかい妖怪だ。いや、それだけならまだよかったんだけど・・・・。」
魔理沙「よくないぜ。」
藍「まさか、あんたをうっかり轢き殺してしまうなんてねぇ・・・。紫様に怒られないかな?」
魔理沙「そりゃ、私を殺したら、私のファンが殺しに来るに決まって・・・・。ん?」
藍「どした?」
魔理沙「つまり、私は死んだわけか?」
藍「あれ?気付いてなかった?私と衝突した拍子に、気を失って、そのまま落下して・・・。」
魔理沙「な・・・・、何だって~!!」
自分が事故死したことに、びっくりしてみる魔理沙。
魔理沙「と、驚いてみたが、どうせすぐに生き返れるだろ?」
藍「いや、それがね・・・・。」
魔理沙「ん?」
藍「あんたの身体、全身複雑骨折及び火傷、脳挫傷に頭蓋骨陥没脊髄損傷、肝硬変にガン、と診断された。」
魔理沙「どうやったらそこまで怪我できるんだよ?」
藍「私が聞きたいよ。ある種の奇跡だな。」
肝硬変にガンは、怪我ではない。
明らかに誤診だろう。
魔理沙「じゃあ何か?私に人間やめて幽霊になれって?」
藍「そりゃ無理だ。さっき白玉楼行って、幽々子嬢に相談してきたんだが、見事に断られた。
あんな活きのいい奴が幽霊になったら、冥界の法則が崩れてしまうって。」
魔理沙「なるほど。法則云々は知らんが、私ほどの人間は、普通に幽霊にはなれんということだな。」
藍「そこで、私は結論を出した。」
魔理沙「何だ?」
藍「あんたの魂をそのまま戻しても、すごく痛い挙句にすぐまた死んで、また元通りだ。
しかし、私と命を共有することによって、身体は正常に動く・・・・・。はず。」
魔理沙「ふむ。」
藍「あとは、あんたの身体が完全に回復するまでの辛抱だ。回復した地点で、私が落ちればいい。・・・はず。」
魔理沙「さっきから、はずはずって、確証は無いわけか?」
藍「無い。」
魔理沙「・・・・・・。」
藍「私としても、あんたを殺したままじゃ、後味が悪いし。」
魔理沙「その程度で、罪を償えると思ったら大間違いだぜ?」
藍「あ~、わかってる。代わりに、貴重な体験をさせてやるよ。」
魔理沙「貴重な体験?」
藍「まぁ要するに、私が憑くということは、私がいわゆる式になって、あんたに取り憑くことだ。」
魔理沙「ああ、確かに、狐狗狸さんを憑けるのは貴重かもしれんな。」
藍「だろう?」
魔理沙「まあどの道、自力じゃ生き返れん。早速やってもらおうか。」
藍「承知した。その前に、コレを渡しておこうか。」
魔理沙「ん?」
魔理沙は藍から、一枚のスペルカードを渡された。
魔理沙「何だコレは?」
カードには、『藍』とかいてある。
藍「困ったことがあったら、これを使うといい。使用回数は無限だ。」
魔理沙「ほう。」
藍「それでは、しばらくの間だが、よろしく頼む。」
そう言うと、藍は消えていった。
魔理沙「ところで、どうやってここから出るんだ?」
自分の精神の世界など、正直来ることは無い。
故に、元の世界へ帰る方法など、全くわからない。
魔理沙「まあ、寝ていれば何とかなるか。」
そう言うと魔理沙は寝転がり、眼を閉じた。
果報は寝て待て、である。
・
・
・
さて、ここは森の中。
魔理沙が連絡を絶った付近である。
霊夢は捜索隊を率いて、魔理沙の回収に来ていた。
霊夢「魔理沙~。何処で寝てるの~?」
慧音「取って食われるぞ~。」
人数不足の為、霊夢以外には慧音しか居ない。
霊夢「いや、その心配は無いんじゃない?」
慧音「誰も食べないか?」
霊夢「食べないわよ。」
魔理沙「失礼な。私は高級品だ。」
茂みから、魔理沙がひょこっと顔を出す。
慧音「高級品が美味いとも限らないけどな。」
霊夢「キャビアなんて、塩の味しかしないみたいだしね。」
慧音「黒くて小粒で・・・。まさにキャビアだな。」
霊夢「トンブリよ。キャビアの劣化品・・・・って、あれ?魔理沙じゃないの。」
霊夢が、魔理沙に気付いた。
慧音「生きていたか。」
魔理沙「今気付いたのか?まぁいいけど。」
慧音「しぶといな。」
霊夢「しぶとさだけが取り得だからねえ。」
慧音「油虫か。」
霊夢「油虫ね。」
魔理沙「折角、交通事故から奇跡的に生還したというのに、酷い言われようだぜ。まったく。」
霊夢「交通事故?」
魔理沙「ああ、実は・・・・・。」
魔理沙が答えようとした、そのときである。
ずず~ん!
ずず~ん!
霊夢「ん?」
轟音とともに、激しい揺れが一行を襲う。
慧音「何だ、この揺れは?」
霊夢「決まってるでしょ?最近の、睡眠不足の原因。魔理沙が事故した遠因。」
魔理沙「そうか。私が酷い目に遭ったのは、こいつのせいか。」
三人は、音のする方を向いた。
そこではなんと・・・。
ルーミア「ジンニク~!ジンニク~!」
ずず~ん!
ずず~ん!
巨大化したルーミアが、何やら叫びながら暴れていた。
霊夢「うわっ!どっかで見たやつまで巨大化!?」
慧音「何か知らんが、怒ってるように見えるな。」
魔理沙「怒りたいのは私だぜ。」
様子を伺う三人。
藍(魔理沙よ、こいつだ。私を食べようと、追い掛け回してきたのは。)
藍が、魔理沙の心に語りかけてくる。
魔理沙「そうなのか?じゃあ、こいつが私を殺した犯人か。」
霊夢「?何独り言言ってるのよ。」
魔理沙「精霊が語りかけてくるんだ。」
霊夢「・・・・何処にも居ないじゃない。」
魔理沙「私専属の精霊だ。」
藍の言葉は、魔理沙以外には聞こえないらしい。
ルーミア「オイナリサーン!キツネウドンー!」
ずず~ん!
どど~ん!
慧音「いなり寿司?狐うどん?」
霊夢「よくわかんないけど、お腹すいてるのかな?」
魔理沙「とりあえず、あいつは私の仇だ。」
霊夢「何?あれに衝突して、意識が飛んでたの?」
魔理沙「まぁ、そういうことにしておいてくれ。」
直接の加害者は、藍だが。
ルーミア「ギューニクー!マンガニクー!」
慧音「(怒)・・・・何か、無性に腹が立った。」
慧音が腹を立てる一方で、霊夢は咲夜に連絡をする。
霊夢「咲夜、あいつどうする?」
咲夜『殺っておしまい。』
霊夢「何で口調が高圧的なのよ。」
咲夜『だって、リーダーは私だし。』
アリス『とりあえずあいつの名称は、ルーミア型怪獣、ルミアーね。』
霊夢「揃ってネーミングセンス無いわね。」
アリス『ほっといてよ。これ書いてる人間が、センス無いんだから。』
魔理沙「アリス。放送禁止用語には気をつけろよ。」
咲夜『とにかく、ほっといてもロクなことにならないのは確かよ。』
霊夢「そうね。それじゃあ、退治しますか。」
魔理沙「合点だ。」
現場に居合わせた霊夢、魔理沙、慧音の三人は、目の前の巨大妖怪、怪獣ルミアーの退治にかかった!
霊夢「夢想妙珠!」
魔理沙「マスタースパーク!」
慧音「幻想天皇!」
ずどど~ん!
どか~ん!
魔理沙「やったか?」
スペルカードの一斉攻撃により、煙が上がり、目の前を覆う。
慧音「・・・・・ち。」
慧音が舌打ちする。
と、同時に、視界が回復する。
ルミアー「ジミニイタイー!」
ずず~ん!
ずず~ん!
痛みによって、暴れまわる怪獣ルミアー。
霊夢「地味に痛い、だって。」
慧音「並大抵の攻撃では、歯が立たんということか・・・・。」
そう言ってるうちに、怪獣が三人の方を向いた。
ルミアー「ソコナノカー!」
目から、ムーンライトレイが放たれた!
ずどばばばばばば!!
霊夢「やばい!」
慧音「くっ!」
どか~ん!
魔理沙「うわっ!」
霊夢「魔理沙!」
爆発の衝撃で、魔理沙はバランスを崩し、地上に落下して行く。
どさっ!
魔理沙「んあっ・・・・!」
幸いにも、木や葉がクッションとなり、怪我は無かった。
魔理沙「いたたたた・・・・。お~い、無事か~?」
背中を摩りながら、声をかける。
し~ん・・・
魔理沙「返事は無い、みんな死んだようだ・・・。」
藍(あっちにしてみれば、あんたが死んだように思われるんじゃないか?)
魔理沙の中の藍は、ツッコミを入れてみる。
藍(魔理沙よ、私が渡したスペルカード。あれを使うのだ。)
魔理沙「あ~?洒落か?」
藍(い、いや、そんなつもりは無いぞ・・・・。)
魔理沙「それはいいとして、使うとどうなるんだ?」
『藍』と書かれたスペルカードを見る魔理沙。
藍(使えばわかる。)
魔理沙「使えばって、なぁ。」
不審に思いつつ魔理沙は、天に向かってスペルカードを掲げる。
ぴか~~~~!!
魔理沙「!?」
光が魔理沙を包んだ。
・
・
・
霊夢「ああもう!二重結界!」
慧音「義満クライシス!」
どか~ん!
ルミアー「ジンニクー!!」
どど~ん!
スペルカードとビームの応酬。
しかし、決着はつかない。
むしろ、二人が押され気味である。
霊夢「も~!ほんと何なのよ!!」
慧音「何の効果も無いな。」
霊夢「魔理沙は何処行ったのよ!こういうときは、あいつの力任せが役に立つってのに!」
慧音「私に怒鳴られても困る。・・・それにしても、何処に・・・・。」
ぴか~~~!!!
向こうの方に、光の柱が現れる。
霊夢「今度は何よ~?」
慧音「あ、あれは・・・・・。」
二人が次に見たモノ、それは・・・。
藍「ジュワ!」
八雲藍であった。
藍は、怪獣と同じサイズ、つまり巨大化している。
霊夢「藍じゃないの。あいつまででっかくなって、ほんと、どうかしてるわ。」
慧音「見ろ!」
藍「ヂュワ!」
どか!
ルミアー「ギャー!」
藍「ジュワ!」
どか!
ルミアー「アア~~!」
でっかい藍は、怪獣ルミアーを、殴ったり叩いたりしている。
魔理沙(おい!あんたが表に出るのはわかるとして、何で巨大化するんだ!?)
藍「(カッコいいじゃないか。巨大ヒーローへの変身は、男の子なら誰でも憧れるものだろ?)」
魔理沙(私は乙女だぜ。何か間違ってないか?)
女の子は、変身ヒロインに憧れるものである。
霊夢「ちょっと咲夜!あれは何よ!?」
咲夜『知らないわよ。現場の判断に任せるわ。』
霊夢「現場の判断って・・・・。」
慧音「何を判断すればいいんだか・・・・。」
霊夢「あいつの名称でも、考えろってことかしら?」
慧音「・・・・・う~む。」
霊夢「でっかい藍・・・。そう、ウルトラ藍よ!」
慧音「ウルトララン?」
※今ここに、理不尽な巨大妖怪を倒すヒーロー(ヒロイン)が誕生した!
その名は、ウルトララン!
さあ行け!怪獣を退治しろ!がんばれ、ウルトララン!
ウルトララン「ヘアッ!」
どかっ!
ルミアー「アギャ~!」
魔理沙(どうでもいいが、何なんだ、その掛け声は。)
ウルトララン「デュワ!(気分の問題だ。気にするな。)」
魔理沙が、ウルトラランの心に語りかける。
ウルトララン「(よし、トドメを刺してやる。喰らえ!)」
トドメを刺そうとした、その瞬間。
テンコー!テンコー!
ウルトララン「?」
魔理沙(おい、何だこの音は?)
ウルトラランの尻尾が、テンコー!の音とともに点滅を始めた。
テンコー!テンコー!
霊夢「五月蝿いなぁ。何の音よ?」
慧音「あいつの尻尾から鳴ってるぞ。しかも光ってるし。」
霊夢「何の合図かしら?」
※説明しよう
巨大化した八雲藍ことウルトラランは、その巨大化の代償として精神が不安定になり、
変身から三分経つと理性を失い、たまらなく『スッパテンコー』をしたくなってしまうのだ!
九つの尻尾からのテンコー音は、その予兆である!危うし、ウルトララン!!
ウルトララン「(ブルブルブル!!)」
魔理沙(何ぃ~!!)
高速で首を横に振るウルトララン。
中の魔理沙も、流石に驚きを隠せなかった。
霊夢「何か、凄く慌ててるわよ。」
慧音「あ~、きっと、本人にしても予定外の出来事だったんだろ。」
割と冷静に観察する二人。
ルーミア「ニク~!」
どか!
ウルトララン「グア!」
ルミアー「クイシンボーハワタシー!!」
びーーーーーむ!
どかーん!
ウルトララン「ヌガ~!!」
隙を突かれて、一気に劣勢になるウルトララン。
霊夢「ウルトララン、しっかり!私が楽できないじゃないの!」
慧音「そいつを放っておいては、夜も眠れないんだ。頑張れ!」
二人は、自らの為に、ウルトラランに声援を送る。
魔理沙(あいつら、好き勝手言ってくれるな・・・・・。)
テンコー!テンコー!テンコー!テンコー!
点滅は激しくなり、音の間隔も速くなる。
ウルトララン「(や、やばい・・・。激しく・・・・スッパ・・・。)」
魔理沙(おい!頼むからやめてくれ!)
本気で懇願する魔理沙。
ウルトラランの中の魔理沙は、そう思った。
ルミアー「イタダキー!」
がぶ!
ウルトララン「イタタタタタタ!!」
腕を噛まれるウルトララン。
霊夢「ああ、ウルトラランが食べられる!」
ルミアーは、ウルトラランを本気で喰らおうとしている。
ルミアー「ングング・・・・。」
ウルトララン「・・・・・・デア!」
ブン!
ルミアーを振り払うウルトララン。
腕には、歯型が残っている。
ルミアー「ニクー!」
ウルトララン「ハァ~・・・、ハァ~・・・・(私を怒らせたな・・・!)」
辛うじて理性を取り戻したウルトラランは、その手を十字に構えた。
ウルトララン「(魔理沙よ。私に力を貸せ。)」
魔理沙(ち・・・。このままじゃ、公衆の面前でスッパテンコーだ。協力するぜ。)
ウルトララン「(マスタースパークを撃つ時みたいに、力を集中しろ・・・・。)」
ウルトラランの手に、エネルギーが充填される。
ルミアー「ヤキニクー!」
び~~~~む!
それより先に、ルミアーの目から、ムーンライトレイが放たれる!
ウルトララン「(喰らえ必殺!マスター狐狸妖怪レーザー!!)」
ムーンライトレイを軽くかき消す、ウルトラランの必殺技!
それが今、放たれようとしている!
ウルトララン「デュワ!!」
どばああああああああ!!
ウルトラランの手から放たれた光線は、目からのムーンライトレイをかき消し、
ルミアー「ギャアアアアアアアア!!」
そのままルミアーを、倒した。
どどど~~~~ん!!
断末魔の叫びとともに、ルーミア型怪獣ルミアーは爆発した。
霊夢「やった!」
慧音「お~、見事だな。」
喝采を送る傍観者二人。
ウルトララン「ジュワッチ!」
くるくるくる~・・・・・
ウルトラランは急いで、回転しながら何処かへ飛んでいった。
霊夢「あら、どっかに飛んで行っちゃった。」
慧音「ともあれ、怪獣は退治されたな。目出度し目出度しだ。」
霊夢「それはそうと、また魔理沙を探さなきゃね。」
慧音「あ~、それが本来の目的だったな。面倒くさい。」
霊夢「もう、帰ろうかな~・・・。」
事が終わって、やれやれと思った二人は、面倒な現実に直面する。
しかし、それはすぐに解決された。
魔理沙「お~い、無事か?」
向こうから、魔理沙が走ってきたからだ。
二人は、あ~よかった、と思った。
仕事が終わってよかった、という意味のよかったである。
霊夢「何処行ってたのよ。この忙しい時に。」
慧音「後半はそうでもなかったけどな。」
魔理沙「お~、見た感じ怪獣は居なくなったようだが。」
霊夢「あんた見てなかったの?」
魔理沙「あ~?」
霊夢「ウルトラランが、やっつけたのよ。お陰で私は楽できたわ。」
魔理沙「ああ、私を助けたのはそいつだぜ。多分。」
霊夢「そうなの?」
魔理沙は、自分がウルトラランに変身したことを隠すことにした。
この先万が一、変身することになって、そして時間切れでスッパテンコーをすることになったら・・・。
そう考えると、とても自分がウルトラランであるとは、言えない。
魔理沙「まぁ、よくぞ私を探し出してくれた。ご苦労だったな。」
霊夢「あ~、ご苦労だったわよ。それじゃ、帰ろうかしら。」
慧音「ちょっと待った。」
霊夢「何?」
慧音「あれを見ろ。」
慧音が示した方向。
そこには。
ルーミア「う~ん・・・・・・。」
ルーミアが、伸びていた。
意識は無さそうである。
慧音「あれ、さっきの怪獣の、原型だろう?」
霊夢「そうね。」
慧音「持って帰って、いろいろ調べた方がいいんじゃないか?」
魔理沙「賛成だ。幸い、うちには尋問と掃除のプロが居るしな。」
霊夢「まあ、好きにしてよ。」
三人は、ルーミアを持って帰ることにした。
藍(よくぞ、私を使いこなしたな。魔理沙よ。)
魔理沙「使いこなすも何も、お前が表に出て勝手に巨大化して、勝手に戦ってただけじゃないか。」
藍(しかし、スッパテンコーは予想外だった・・・。気をつけてくれ。)
魔理沙「いや、あんたが気をつけてくれ。これじゃ私が変態扱いされる。」
藍(さて、私は出番があるまで眠ることにするよ。何かあったら、アレを使ってくれ。)
魔理沙「ああ。いちいち話しかけられたら、ノイローゼになってしまうぜ。」
藍(久しぶりの休暇だ。あ~、お休み・・・・・。)
藍の声は、聞こえなくなった。
魔理沙「大丈夫なのか?私の身体は。」
前途に不安を感じつつ、魔理沙は博麗神社に帰還した。
魔理沙と藍の、ウルトラランの果てしない戦いが、今始まる!
カラータイマーが切実過ぎて爆笑。
腹痛い。というか懐かしい。なんとも対象年齢が高めで。
何はともあれ、次回以降も凄まじく期待です。
見た瞬間、ディスプレイが汚れてしまったじゃないですか…どうしてくれようw
他にも随所で細かいネタが沢山。ぎゅうにく。――人肉!って聞こえてきそうだったり。
久々に笑わせていただきました。…ところで続くんですよね!?
楽しみに待ってます。
内容も、期待に違わずテンポやノリもツボに入りまくりでした。
続きが気になる・・・・・・(笑
ああ今でも鮮やかに蘇るあの日々…バルタンの不気味さに怯え、ダダの姑息な戦い方に怒り、ピグモンの散り様やジャミラの断末魔に涙し、スカイドンの重量に四苦八苦する科特隊&ウルトラマンに笑い…あ、スカイドンの回はレティで決まりだ!!
それにしても、3分以上戦えない理由が良すぎ(テンコーテンコー
最後に、フランゲリオン以来の連載パロディ、期待しています。
続きはだれが出てくるだろうか…
何故か『公衆の面前でスッパテンコー』というフレーズが頭から離れてくれません。どうしてくれよう。
ともあれ、ウルトラランの今後のスッパ……じゃなくて素晴らしい活躍ぶりを楽しみにしています。
あと、ムーンライトレイはやっぱり目から出すんですね(笑)。
次回がまったく予測できねーす。
しかし、藍さま、コスモス並みに口数が多いなぁ。
ナレーションも面白いし、一番爆笑したのはカラータイマー音が「テンコー」
な所です。腹抱えながら地面叩くなんて何年ぶりか!!(超爆)