Coolier - 新生・東方創想話

ウルトララン

2004/11/06 07:40:15
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時は幻想暦○○○年。
何故かどういうわけか、巨大な妖怪が出没するようになった昨今。
その足音は安眠を妨げ、また飛行音も安眠を妨げ、人間と普通の妖怪たちは、眠れぬ日々を過ごしていた。
そんな状況に対抗するため、お馴染みの面々は、ある組織を立ち上げた。
その名も・・・。

     咲夜「と、いうわけで。『暇を得た人妖達による巨大妖怪駆除部隊』、定例会議を行います。」

恐らくリーダーであろう十六夜咲夜は、開会の宣言をした。

     霊夢「何よ、そのネーミングは?」
    魔理沙「長いし、物凄くそのまんまだな。」

恐らく暇であったのであろう人間、博麗霊夢と霧雨魔理沙。
二人は、咲夜のネーミングセンスに疑問を持つ。

     咲夜「じゃあ、略して『暇得隊(かとくたい)』ね。」
     霊夢「いや、そういう問題じゃなくてね。」
    魔理沙「大体、暇を得たのはお前だけだろう。霊夢はいつでも暇だが、私は忙しいんだ。」
     霊夢「咲夜が暇?なに、クビにされたの?」
     咲夜「違うわよ。巨大な妖怪なんかが跋扈していたら、邪魔だし月は見えないし、五月蝿いし、
        何より外見の上で舐められる恐れもあるって、お嬢様がね。それで、お暇を。」
    魔理沙「結局、わがままお嬢様のいつものわがままか。」
     咲夜「それに、洗濯物も乾かないし。」

咲夜は、レミリアの命令で、こんな団体を立ち上げたらしい。

     霊夢「まぁ、咲夜がここに居る理由なんてどうでもいいのよ。問題は、そのネーミング。」 
     咲夜「別にいいじゃない。それに、ネーミングよりも実績が大切なのよ。」
    魔理沙「名前負け殺人ドールに言われちゃお終いだぜ。」
     咲夜「・・・何?やる気なの?名前負けマスタースパークが。」
    魔理沙「あ~?」
     咲夜「あ~?」

早速暇得隊に、内部分裂の危機が訪れる。

    アリス「ちょっと。喧嘩じゃなくて会議でしょ。さっさと終わらせてくれない?」
     慧音「小田原評定は御免だぞ。」

それを止めに入る、人間以外、アリス・マーガトロイドと上白沢慧音。

     霊夢「・・・あんたらは何なのよ。」
     慧音「里の人間も、眠れぬ日々を過ごしているもんでな。ちょっと来てみた。」
    アリス「同じく。これで手早く事が済むなら、それに越したことはないし。」
     咲夜「手早く済むかどうかは、あなたたちのやる気次第ね。」
     慧音「まあ、里の平和のため、頑張るとするよ。」
     
慧音の参加理由が、最もまともに聞こえるのは気のせいか。
それはともかく、内部分裂の危機は何時の間にか去り、会議は再開される。

     咲夜「昨今の巨大妖怪。その出現の原因は、まったく不明。」
    アリス「耐久性も、段違いに強いわ。いくら撃ち込んでも、一向にやられてくれないし。」
     霊夢「ほんと、常識を外れてるわねぇ。何とかならないの?」
    魔理沙「何とかするために、こんなところに集まったわけだが。」
     霊夢「こんなところって、そもそも、何でうちの神社でやるよ?」
     咲夜「ここが一番・・・、まぁ、集まり易いじゃない?」
    魔理沙「茶も茶菓子も食べ放題飲み放題だ。」
     霊夢「勝手に食べるな~!!」

どうも暇得隊本部は、一般で言うところの博麗神社らしい。
よく見なくても、みんなでちゃぶ台を囲んで、お茶を飲みながら話し合っている。
お茶菓子付きである。

     咲夜「話は脱線したけど、何か対策案があれば言って頂戴。」 
     霊夢「私にとっては、脱線した話の方が重要なんだけどね。」
     慧音「とにかく、問答無用で撃ち込んだのでいいんじゃないか?全員で。」
     霊夢「横暴ね。」
    魔理沙「横暴だな。」
     慧音「お前らに言われたくは無いぞ。じゃあ、他に案があるとでも言うのか?」
    アリス「全員で、全力で撃ち込むってのは、無しよ。」
    魔理沙「あ~?細かいこと言うなよ。」
     慧音「全然細かくないぞ。それじゃあ私の意見と変わらんじゃないか。」
     霊夢「別に、見回りでいいんじゃないの?」
     咲夜「火の用心で火事が少なくなったら、みんなやってるわよ。」
    アリス「根本的な解決には、ならないってことね。」
     霊夢「ああそう。まぁどうでもいいけど、早く終わらせてくれないかしら?このままじゃ、
        お茶とお饅頭とお煎餅と・・・・・。あ~!もうこんなに減ってるじゃないの!」
    魔理沙「咲夜、お茶だ。あと、羊羹。」
    アリス「あ、私も。」
     慧音「私もだ。」
     咲夜「上司は私よ。自分で勝手に用意しなさい。」
     霊夢「勝手に飲むな食べるな~~~!!!」
        
会議は紛糾した。

     霊夢「ああもう!!当面は見回り!んで、見つけたら誰かに連絡、そして攻撃!
        これでいいでしょ!いいわよね!ファイナルアンサー!?」
     咲夜「どうも、それしか無いようね。」
    アリス「どっちにしろ、横暴だけど。」
     霊夢「もう会議は終わり!煎餅も饅頭も片付けなさい!」

結局、当面は見回り、怪獣を見つけ次第連絡、という形をとることになった暇得隊。

     咲夜「それじゃあ、今日から早速、活動するけど・・・・。誰が行く?」
    アリス「私はパス。」
     霊夢「私も。」
     慧音「同じく。」
    魔理沙「以下同文だ。」
     咲夜「・・・・誰もやる気は無いわけね。」
     霊夢「あんたもね。」

誰も、自ら見回りに出ようとはしない。

     咲夜「仕方ないわね。ちょっと待ってなさい。」
    魔理沙「あ~?」
     咲夜「お待たせ。」
    魔理沙「待ってないぜ。」
    アリス「時止めて何をしてたの?」
     咲夜「これをね。」
     霊夢「?」

咲夜は、何時の間にか手に持っていたお皿を、ちゃぶ台に置く。

     咲夜「ここに、お饅頭が五つあります。でもこの中に一つだけ、はずれが入っています。」
     霊夢「ちょっと!!これって、さっき片付けたお饅頭じゃないの!!」
     咲夜「そのはずれを食べたのが、今日の見回り当番。これでいいでしょ?」
     霊夢「よくないわよ!」
    アリス「ロシアンルーレットね。」
     慧音「何かの催し物みたいだな。」
    魔理沙「まぁいいぜ。さっさと決めてしまおうぜ。」
     霊夢「無視するな~!」

約一名は騒がしいが、咲夜の提案に賛成する一同。
それぞれ饅頭を手に取り、そして。

     咲夜「いただきます。」
     霊夢「いただきます!」
    魔理沙「いただきます。」
     慧音「いただきます。」
    アリス「いただきます。」


 ぱくっ


一斉に、食べた。

     咲夜「う~ん、美味しいわね。」
     霊夢「そりゃあ、私がいつも買ってる、美味しい奴だもの。ていうか、もう勝手に持ち出さないでよ?」
    アリス「さっきから、適当に頂いてるけどね。」
     慧音「あ~、さっきも頂いたけど、これは美味しいな。何処で売ってるか、後で教えてくれ。」
    魔理沙「・・・いや、不味い。」
     霊夢「不味いって。あんただって、いつも食べてる奴じゃない。」
    魔理沙「いいや不味い。大体、私は中身が餡じゃなくて羊羹の奴なんか食べたことは無い。」
     霊夢「中身が羊羹?」
     咲夜「あ、それハズレ。」
    魔理沙「何だと?」

ハズレ饅頭の中身は、羊羹だったらしい。

     霊夢「って咲夜!あんた羊羹まで勝手に持ち出したの!?」
     咲夜「もう、何がどれだけ減っても、わからないんじゃないの?」
    魔理沙「ていうことは、あれか?記念すべき第一回目の当番は、私かえ?」
    アリス「じゃないの?ハズレなんだし。」

今日の見回りは、魔理沙と決まった。

    魔理沙「仕方無い。行ってやるよ。」
    アリス「魔理沙。」
    魔理沙「ん?」


 ぽいっ


アリスは魔理沙に、何かを投げた。

    魔理沙「っと。・・・水晶玉か。」
    アリス「連絡手段よ。これで、こっちと連絡を取り合えるわ。」
    魔理沙「ご都合主義だな。」
    アリス「そんなもんよ。」
    魔理沙「そんなもんか。」

そんなもんです。

    魔理沙「まぁいい。さっと行って、どかんと帰ってくるぜ。」
     咲夜「どかん、とやるような事態に、ならないことを祈るわ。」

連絡手段を手に入れ、出撃する魔理沙。
暇得隊の、始動である。

 ・
 ・
 ・


    魔理沙「やれやれ。折角だから、何事かあることを望むぜ。」

非常に不謹慎ではあるが、何も無いのにパトロールなどしても、それはとてもつまらない。
  
    アリス『魔理沙、聞こえる?』
    魔理沙「聞こえてないぜ。」

アリスから、連絡が入る。
水晶玉を覗き込む魔理沙。

    アリス『あんたの前方、変な気配が突貫してきてるわ。』
    魔理沙「聞こえてないといったはずだ。・・・・で、何だって?」
    アリス『聞こえてないんでしょ?』


 ギュルルルルルル!


何かの音が、魔理沙の耳に入る。

    魔理沙「何だこの音は?」
    アリス『だから、あんたの前方から、何かが接近してるって。』 
    魔理沙「何、そんなこともわかるのか?益々もって、ご都合主義だな。呆れるぜ。」
    アリス『どうでもいいけど、避けたら?』
    魔理沙「あ~?」

アリスに、避けるように言われた矢先、


 どか!


    魔理沙「うわ~~~・・・・!!!」

魔理沙は『何か』に当たり、撃墜されてしまった。

    アリス「魔理沙?ちょっと、魔理沙?」

アリスが呼びかけてみるが、返事は無い。

     咲夜「どうしたの?」
    アリス「返事が無いわ。変事はあったみたいだけど。」
     咲夜「状況から判断して。魔理沙に、何があったと思う?」
    アリス「どうも魔理沙が、寝落ちしたみたいね。居眠り運転。」
     霊夢「あ~、最近眠れないからねぇ・・・。」 
     慧音「交通事故だな。」

幻想郷には、道路交通法などは存在しない。

     咲夜「霊夢、捜索隊を率いて、魔理沙を回収してきて。」
     霊夢「捜索隊って・・・。隊と言えるほどの人数が居ないじゃない。」
     咲夜「気分の問題よ。それに、こんな人数だから、一人欠けると仕事が増えるのよ。」
     霊夢「あ~あ。面倒だなぁ・・・・。」

渋々霊夢は、魔理沙を探しに行くことにした。

 ・
 ・
 ・

    魔理沙「あ~・・・・、何か、ふわふわしてるぜ・・・・・。」

魔理沙は、何やらよく解らない空間に居た。

      ?「魔理沙・・・・。魔理沙・・・・。」

突如謎の声が、魔理沙を呼ぶ。

      ?「魔理沙・・・。目覚めろ、魔理沙よ・・・・。」
    魔理沙「魔理沙魔理沙五月蝿いぜ。私が居なきゃほんと何にも出来ないんだからな、人間供。」
      ?「あんたも人間だろう?」
    魔理沙「・・・・ん・・・?ここは何処だ?」

眼を覚まして初めて、ここがよく解らない空間であることを認識した魔理沙。

      ?「ここは、お前の精神の世界だ・・・。私は、お前の心に語りかけている。」
    魔理沙「精神の世界?お前は誰だ?」

魔理沙は、声のする方を向く。

      藍「ようやく目覚めたか。」

そこには、八雲藍が居た。

    魔理沙「何だ狐か。何か用か?」
      藍「お前には済まないことをした・・・。」
    魔理沙「ああ。損害賠償を要求する。」

重ねて言うが、道路交通法、ついでに傷害罪も、幻想郷には存在しない。
全ては、示談である。

    魔理沙「ところで、何が済まなかったんだ?」
      藍「私と正面衝突した。ちょっと、変なのに食われそうになったから、急いで退散したんだ。そしたら・・・。」
    魔理沙「変なの?」
      藍「でっかい妖怪だ。いや、それだけならまだよかったんだけど・・・・。」
    魔理沙「よくないぜ。」
      藍「まさか、あんたをうっかり轢き殺してしまうなんてねぇ・・・。紫様に怒られないかな?」
    魔理沙「そりゃ、私を殺したら、私のファンが殺しに来るに決まって・・・・。ん?」
      藍「どした?」
    魔理沙「つまり、私は死んだわけか?」
      藍「あれ?気付いてなかった?私と衝突した拍子に、気を失って、そのまま落下して・・・。」
    魔理沙「な・・・・、何だって~!!」

自分が事故死したことに、びっくりしてみる魔理沙。

    魔理沙「と、驚いてみたが、どうせすぐに生き返れるだろ?」
      藍「いや、それがね・・・・。」
    魔理沙「ん?」
      藍「あんたの身体、全身複雑骨折及び火傷、脳挫傷に頭蓋骨陥没脊髄損傷、肝硬変にガン、と診断された。」
    魔理沙「どうやったらそこまで怪我できるんだよ?」
      藍「私が聞きたいよ。ある種の奇跡だな。」

肝硬変にガンは、怪我ではない。
明らかに誤診だろう。

    魔理沙「じゃあ何か?私に人間やめて幽霊になれって?」
      藍「そりゃ無理だ。さっき白玉楼行って、幽々子嬢に相談してきたんだが、見事に断られた。
        あんな活きのいい奴が幽霊になったら、冥界の法則が崩れてしまうって。」
    魔理沙「なるほど。法則云々は知らんが、私ほどの人間は、普通に幽霊にはなれんということだな。」
      藍「そこで、私は結論を出した。」
    魔理沙「何だ?」
      藍「あんたの魂をそのまま戻しても、すごく痛い挙句にすぐまた死んで、また元通りだ。
        しかし、私と命を共有することによって、身体は正常に動く・・・・・。はず。」
    魔理沙「ふむ。」
      藍「あとは、あんたの身体が完全に回復するまでの辛抱だ。回復した地点で、私が落ちればいい。・・・はず。」
    魔理沙「さっきから、はずはずって、確証は無いわけか?」
      藍「無い。」
    魔理沙「・・・・・・。」
      藍「私としても、あんたを殺したままじゃ、後味が悪いし。」
    魔理沙「その程度で、罪を償えると思ったら大間違いだぜ?」
      藍「あ~、わかってる。代わりに、貴重な体験をさせてやるよ。」
    魔理沙「貴重な体験?」
      藍「まぁ要するに、私が憑くということは、私がいわゆる式になって、あんたに取り憑くことだ。」
    魔理沙「ああ、確かに、狐狗狸さんを憑けるのは貴重かもしれんな。」
      藍「だろう?」
    魔理沙「まあどの道、自力じゃ生き返れん。早速やってもらおうか。」
      藍「承知した。その前に、コレを渡しておこうか。」
    魔理沙「ん?」

魔理沙は藍から、一枚のスペルカードを渡された。

    魔理沙「何だコレは?」

カードには、『藍』とかいてある。

      藍「困ったことがあったら、これを使うといい。使用回数は無限だ。」
    魔理沙「ほう。」
      藍「それでは、しばらくの間だが、よろしく頼む。」

そう言うと、藍は消えていった。

    魔理沙「ところで、どうやってここから出るんだ?」

自分の精神の世界など、正直来ることは無い。
故に、元の世界へ帰る方法など、全くわからない。

    魔理沙「まあ、寝ていれば何とかなるか。」

そう言うと魔理沙は寝転がり、眼を閉じた。
果報は寝て待て、である。

 ・
 ・
 ・

さて、ここは森の中。
魔理沙が連絡を絶った付近である。
霊夢は捜索隊を率いて、魔理沙の回収に来ていた。

     霊夢「魔理沙~。何処で寝てるの~?」
     慧音「取って食われるぞ~。」

人数不足の為、霊夢以外には慧音しか居ない。

     霊夢「いや、その心配は無いんじゃない?」
     慧音「誰も食べないか?」
     霊夢「食べないわよ。」
    魔理沙「失礼な。私は高級品だ。」

茂みから、魔理沙がひょこっと顔を出す。
 
     慧音「高級品が美味いとも限らないけどな。」
     霊夢「キャビアなんて、塩の味しかしないみたいだしね。」
     慧音「黒くて小粒で・・・。まさにキャビアだな。」
     霊夢「トンブリよ。キャビアの劣化品・・・・って、あれ?魔理沙じゃないの。」

霊夢が、魔理沙に気付いた。

     慧音「生きていたか。」
    魔理沙「今気付いたのか?まぁいいけど。」
     慧音「しぶといな。」
     霊夢「しぶとさだけが取り得だからねえ。」
     慧音「油虫か。」
     霊夢「油虫ね。」
    魔理沙「折角、交通事故から奇跡的に生還したというのに、酷い言われようだぜ。まったく。」
     霊夢「交通事故?」
    魔理沙「ああ、実は・・・・・。」

魔理沙が答えようとした、そのときである。


 ずず~ん!


 ずず~ん!


     霊夢「ん?」

轟音とともに、激しい揺れが一行を襲う。

     慧音「何だ、この揺れは?」
     霊夢「決まってるでしょ?最近の、睡眠不足の原因。魔理沙が事故した遠因。」
    魔理沙「そうか。私が酷い目に遭ったのは、こいつのせいか。」

三人は、音のする方を向いた。
そこではなんと・・・。

   ルーミア「ジンニク~!ジンニク~!」


 ずず~ん!


 ずず~ん!


巨大化したルーミアが、何やら叫びながら暴れていた。
    
     霊夢「うわっ!どっかで見たやつまで巨大化!?」
     慧音「何か知らんが、怒ってるように見えるな。」
    魔理沙「怒りたいのは私だぜ。」

様子を伺う三人。

      藍(魔理沙よ、こいつだ。私を食べようと、追い掛け回してきたのは。)

藍が、魔理沙の心に語りかけてくる。

    魔理沙「そうなのか?じゃあ、こいつが私を殺した犯人か。」
     霊夢「?何独り言言ってるのよ。」
    魔理沙「精霊が語りかけてくるんだ。」
     霊夢「・・・・何処にも居ないじゃない。」
    魔理沙「私専属の精霊だ。」

藍の言葉は、魔理沙以外には聞こえないらしい。

   ルーミア「オイナリサーン!キツネウドンー!」


 ずず~ん!


 どど~ん!


     慧音「いなり寿司?狐うどん?」
     霊夢「よくわかんないけど、お腹すいてるのかな?」
    魔理沙「とりあえず、あいつは私の仇だ。」
     霊夢「何?あれに衝突して、意識が飛んでたの?」
    魔理沙「まぁ、そういうことにしておいてくれ。」

直接の加害者は、藍だが。

   ルーミア「ギューニクー!マンガニクー!」
     慧音「(怒)・・・・何か、無性に腹が立った。」

慧音が腹を立てる一方で、霊夢は咲夜に連絡をする。

     霊夢「咲夜、あいつどうする?」
     咲夜『殺っておしまい。』
     霊夢「何で口調が高圧的なのよ。」
     咲夜『だって、リーダーは私だし。』
    アリス『とりあえずあいつの名称は、ルーミア型怪獣、ルミアーね。』
     霊夢「揃ってネーミングセンス無いわね。」
    アリス『ほっといてよ。これ書いてる人間が、センス無いんだから。』
    魔理沙「アリス。放送禁止用語には気をつけろよ。」
     咲夜『とにかく、ほっといてもロクなことにならないのは確かよ。』
     霊夢「そうね。それじゃあ、退治しますか。」
    魔理沙「合点だ。」

現場に居合わせた霊夢、魔理沙、慧音の三人は、目の前の巨大妖怪、怪獣ルミアーの退治にかかった!

     霊夢「夢想妙珠!」
    魔理沙「マスタースパーク!」
     慧音「幻想天皇!」

 
 ずどど~ん!


 どか~ん!


    魔理沙「やったか?」

スペルカードの一斉攻撃により、煙が上がり、目の前を覆う。

     慧音「・・・・・ち。」

慧音が舌打ちする。
と、同時に、視界が回復する。
    
   ルミアー「ジミニイタイー!」


 ずず~ん!


 ずず~ん!


痛みによって、暴れまわる怪獣ルミアー。

     霊夢「地味に痛い、だって。」
     慧音「並大抵の攻撃では、歯が立たんということか・・・・。」

そう言ってるうちに、怪獣が三人の方を向いた。

   ルミアー「ソコナノカー!」

目から、ムーンライトレイが放たれた!


 ずどばばばばばば!!


     霊夢「やばい!」
     慧音「くっ!」

 どか~ん!

    魔理沙「うわっ!」
     霊夢「魔理沙!」

爆発の衝撃で、魔理沙はバランスを崩し、地上に落下して行く。


 どさっ!


    魔理沙「んあっ・・・・!」

幸いにも、木や葉がクッションとなり、怪我は無かった。

    魔理沙「いたたたた・・・・。お~い、無事か~?」

背中を摩りながら、声をかける。


 し~ん・・・


    魔理沙「返事は無い、みんな死んだようだ・・・。」
      藍(あっちにしてみれば、あんたが死んだように思われるんじゃないか?)

魔理沙の中の藍は、ツッコミを入れてみる。

      藍(魔理沙よ、私が渡したスペルカード。あれを使うのだ。)
    魔理沙「あ~?洒落か?」
      藍(い、いや、そんなつもりは無いぞ・・・・。)
    魔理沙「それはいいとして、使うとどうなるんだ?」

『藍』と書かれたスペルカードを見る魔理沙。

      藍(使えばわかる。)
    魔理沙「使えばって、なぁ。」

不審に思いつつ魔理沙は、天に向かってスペルカードを掲げる。


 ぴか~~~~!!


    魔理沙「!?」

光が魔理沙を包んだ。

 ・
 ・
 ・   
 
     霊夢「ああもう!二重結界!」
     慧音「義満クライシス!」


 どか~ん!


   ルミアー「ジンニクー!!」


 どど~ん!


スペルカードとビームの応酬。
しかし、決着はつかない。
むしろ、二人が押され気味である。

     霊夢「も~!ほんと何なのよ!!」
     慧音「何の効果も無いな。」
     霊夢「魔理沙は何処行ったのよ!こういうときは、あいつの力任せが役に立つってのに!」
     慧音「私に怒鳴られても困る。・・・それにしても、何処に・・・・。」

 ぴか~~~!!!

向こうの方に、光の柱が現れる。
 
     霊夢「今度は何よ~?」
     慧音「あ、あれは・・・・・。」

二人が次に見たモノ、それは・・・。

      藍「ジュワ!」

八雲藍であった。
藍は、怪獣と同じサイズ、つまり巨大化している。

     霊夢「藍じゃないの。あいつまででっかくなって、ほんと、どうかしてるわ。」
     慧音「見ろ!」
      藍「ヂュワ!」


 どか!


   ルミアー「ギャー!」
      藍「ジュワ!」


 どか!


   ルミアー「アア~~!」

でっかい藍は、怪獣ルミアーを、殴ったり叩いたりしている。

    魔理沙(おい!あんたが表に出るのはわかるとして、何で巨大化するんだ!?)
      藍「(カッコいいじゃないか。巨大ヒーローへの変身は、男の子なら誰でも憧れるものだろ?)」
    魔理沙(私は乙女だぜ。何か間違ってないか?)

女の子は、変身ヒロインに憧れるものである。

     霊夢「ちょっと咲夜!あれは何よ!?」
     咲夜『知らないわよ。現場の判断に任せるわ。』
     霊夢「現場の判断って・・・・。」
     慧音「何を判断すればいいんだか・・・・。」
     霊夢「あいつの名称でも、考えろってことかしら?」
     慧音「・・・・・う~む。」
     霊夢「でっかい藍・・・。そう、ウルトラ藍よ!」
     慧音「ウルトララン?」


※今ここに、理不尽な巨大妖怪を倒すヒーロー(ヒロイン)が誕生した!
 その名は、ウルトララン!
 さあ行け!怪獣を退治しろ!がんばれ、ウルトララン!


 ウルトララン「ヘアッ!」


 どかっ!


   ルミアー「アギャ~!」
    魔理沙(どうでもいいが、何なんだ、その掛け声は。)
 ウルトララン「デュワ!(気分の問題だ。気にするな。)」

魔理沙が、ウルトラランの心に語りかける。

 ウルトララン「(よし、トドメを刺してやる。喰らえ!)」

トドメを刺そうとした、その瞬間。     


 テンコー!テンコー!


 ウルトララン「?」
    魔理沙(おい、何だこの音は?)

ウルトラランの尻尾が、テンコー!の音とともに点滅を始めた。

      
 テンコー!テンコー!


     霊夢「五月蝿いなぁ。何の音よ?」
     慧音「あいつの尻尾から鳴ってるぞ。しかも光ってるし。」
     霊夢「何の合図かしら?」


※説明しよう
 巨大化した八雲藍ことウルトラランは、その巨大化の代償として精神が不安定になり、
 変身から三分経つと理性を失い、たまらなく『スッパテンコー』をしたくなってしまうのだ!
 九つの尻尾からのテンコー音は、その予兆である!危うし、ウルトララン!!


 ウルトララン「(ブルブルブル!!)」
    魔理沙(何ぃ~!!)

高速で首を横に振るウルトララン。
中の魔理沙も、流石に驚きを隠せなかった。

     霊夢「何か、凄く慌ててるわよ。」
     慧音「あ~、きっと、本人にしても予定外の出来事だったんだろ。」

割と冷静に観察する二人。

   ルーミア「ニク~!」


 どか!


 ウルトララン「グア!」
   ルミアー「クイシンボーハワタシー!!」


 びーーーーーむ!


 どかーん!


 ウルトララン「ヌガ~!!」

隙を突かれて、一気に劣勢になるウルトララン。
          
     霊夢「ウルトララン、しっかり!私が楽できないじゃないの!」
     慧音「そいつを放っておいては、夜も眠れないんだ。頑張れ!」

二人は、自らの為に、ウルトラランに声援を送る。

    魔理沙(あいつら、好き勝手言ってくれるな・・・・・。)


 テンコー!テンコー!テンコー!テンコー!


点滅は激しくなり、音の間隔も速くなる。

 ウルトララン「(や、やばい・・・。激しく・・・・スッパ・・・。)」
    魔理沙(おい!頼むからやめてくれ!)

本気で懇願する魔理沙。
ウルトラランの中の魔理沙は、そう思った。

   ルミアー「イタダキー!」


 がぶ!


 ウルトララン「イタタタタタタ!!」

腕を噛まれるウルトララン。

     霊夢「ああ、ウルトラランが食べられる!」

ルミアーは、ウルトラランを本気で喰らおうとしている。
   
   ルミアー「ングング・・・・。」
 ウルトララン「・・・・・・デア!」


 ブン!


ルミアーを振り払うウルトララン。
腕には、歯型が残っている。

   ルミアー「ニクー!」
 ウルトララン「ハァ~・・・、ハァ~・・・・(私を怒らせたな・・・!)」

辛うじて理性を取り戻したウルトラランは、その手を十字に構えた。

 ウルトララン「(魔理沙よ。私に力を貸せ。)」
    魔理沙(ち・・・。このままじゃ、公衆の面前でスッパテンコーだ。協力するぜ。)
 ウルトララン「(マスタースパークを撃つ時みたいに、力を集中しろ・・・・。)」

ウルトラランの手に、エネルギーが充填される。

   ルミアー「ヤキニクー!」


 び~~~~む!


それより先に、ルミアーの目から、ムーンライトレイが放たれる!

 ウルトララン「(喰らえ必殺!マスター狐狸妖怪レーザー!!)」

ムーンライトレイを軽くかき消す、ウルトラランの必殺技!
それが今、放たれようとしている!

 ウルトララン「デュワ!!」


 どばああああああああ!!


ウルトラランの手から放たれた光線は、目からのムーンライトレイをかき消し、

   ルミアー「ギャアアアアアアアア!!」

そのままルミアーを、倒した。


 どどど~~~~ん!!


断末魔の叫びとともに、ルーミア型怪獣ルミアーは爆発した。

     霊夢「やった!」
     慧音「お~、見事だな。」

喝采を送る傍観者二人。

 ウルトララン「ジュワッチ!」


 くるくるくる~・・・・・


ウルトラランは急いで、回転しながら何処かへ飛んでいった。

     霊夢「あら、どっかに飛んで行っちゃった。」
     慧音「ともあれ、怪獣は退治されたな。目出度し目出度しだ。」
     霊夢「それはそうと、また魔理沙を探さなきゃね。」
     慧音「あ~、それが本来の目的だったな。面倒くさい。」
     霊夢「もう、帰ろうかな~・・・。」

事が終わって、やれやれと思った二人は、面倒な現実に直面する。
しかし、それはすぐに解決された。

    魔理沙「お~い、無事か?」

向こうから、魔理沙が走ってきたからだ。
二人は、あ~よかった、と思った。
仕事が終わってよかった、という意味のよかったである。

     霊夢「何処行ってたのよ。この忙しい時に。」
     慧音「後半はそうでもなかったけどな。」
    魔理沙「お~、見た感じ怪獣は居なくなったようだが。」
     霊夢「あんた見てなかったの?」
    魔理沙「あ~?」
     霊夢「ウルトラランが、やっつけたのよ。お陰で私は楽できたわ。」
    魔理沙「ああ、私を助けたのはそいつだぜ。多分。」
     霊夢「そうなの?」

魔理沙は、自分がウルトラランに変身したことを隠すことにした。
この先万が一、変身することになって、そして時間切れでスッパテンコーをすることになったら・・・。
そう考えると、とても自分がウルトラランであるとは、言えない。

    魔理沙「まぁ、よくぞ私を探し出してくれた。ご苦労だったな。」
     霊夢「あ~、ご苦労だったわよ。それじゃ、帰ろうかしら。」
     慧音「ちょっと待った。」
     霊夢「何?」
     慧音「あれを見ろ。」

慧音が示した方向。
そこには。

   ルーミア「う~ん・・・・・・。」

ルーミアが、伸びていた。
意識は無さそうである。

     慧音「あれ、さっきの怪獣の、原型だろう?」
     霊夢「そうね。」
     慧音「持って帰って、いろいろ調べた方がいいんじゃないか?」
    魔理沙「賛成だ。幸い、うちには尋問と掃除のプロが居るしな。」
     霊夢「まあ、好きにしてよ。」

三人は、ルーミアを持って帰ることにした。

      藍(よくぞ、私を使いこなしたな。魔理沙よ。)
    魔理沙「使いこなすも何も、お前が表に出て勝手に巨大化して、勝手に戦ってただけじゃないか。」
      藍(しかし、スッパテンコーは予想外だった・・・。気をつけてくれ。)
    魔理沙「いや、あんたが気をつけてくれ。これじゃ私が変態扱いされる。」
      藍(さて、私は出番があるまで眠ることにするよ。何かあったら、アレを使ってくれ。)
    魔理沙「ああ。いちいち話しかけられたら、ノイローゼになってしまうぜ。」
      藍(久しぶりの休暇だ。あ~、お休み・・・・・。)

藍の声は、聞こえなくなった。

    魔理沙「大丈夫なのか?私の身体は。」

前途に不安を感じつつ、魔理沙は博麗神社に帰還した。
魔理沙と藍の、ウルトラランの果てしない戦いが、今始まる!

 ああ、またやってしまった・・・・。

 あの、語るまでも無い有名なヒーロー物を、パロってみました。初っ端から滅茶苦茶。各隊員の配役は、まぁ・・・・。
 さて、またやってしまったわけですが、とりあえず有名どころのお話は書きたいと思っています。オチも、なんとか・・・。何話から読んでも問題ないように、仕上げて逝きたいなと思っています。
 フランゲリオン以来の連載モノとなってしまいますが、生暖かく見守っていただけたら、これ幸いです・・・。
Piko
[email protected]
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コメント



0.3060簡易評価
13.50shinsokku削除
タイトル見た瞬間吹きましたよ、ええ。
カラータイマーが切実過ぎて爆笑。
腹痛い。というか懐かしい。なんとも対象年齢が高めで。
何はともあれ、次回以降も凄まじく期待です。
14.70名も無き名無しさん削除
>>テンコー!テンコー!
見た瞬間、ディスプレイが汚れてしまったじゃないですか…どうしてくれようw
他にも随所で細かいネタが沢山。ぎゅうにく。――人肉!って聞こえてきそうだったり。
久々に笑わせていただきました。…ところで続くんですよね!?
15.無評価名も無き名無しさん削除
失礼、後書きで続くって書いてありましたorz
楽しみに待ってます。
16.40削除
タイトルが妙に語呂よくて爆笑。
内容も、期待に違わずテンポやノリもツボに入りまくりでした。

続きが気になる・・・・・・(笑
28.90テュルフング削除
タイトル見て爆笑。これで誰がウルト○マンなのか一目瞭然。

ああ今でも鮮やかに蘇るあの日々…バルタンの不気味さに怯え、ダダの姑息な戦い方に怒り、ピグモンの散り様やジャミラの断末魔に涙し、スカイドンの重量に四苦八苦する科特隊&ウルトラマンに笑い…あ、スカイドンの回はレティで決まりだ!!

それにしても、3分以上戦えない理由が良すぎ(テンコーテンコー

最後に、フランゲリオン以来の連載パロディ、期待しています。
39.40名前が無い程度の能力削除
じつはソコナノカーがツボに入りました
続きはだれが出てくるだろうか…
48.50いち読者削除
 藍が登場した時点で、何らかの形でスッパテンコー使うんだろうなー、とは思いましたが、そう来ますか(笑)。危うくお茶を吹くとこでしたよ。
 何故か『公衆の面前でスッパテンコー』というフレーズが頭から離れてくれません。どうしてくれよう。
 ともあれ、ウルトラランの今後のスッパ……じゃなくて素晴らしい活躍ぶりを楽しみにしています。

 あと、ムーンライトレイはやっぱり目から出すんですね(笑)。
49.60SETH削除
精神が不安定になってスッパテンコーって・・・w
50.70名前が無い程度の能力削除
3分過ぎるとテンコーかよ!
次回がまったく予測できねーす。
しかし、藍さま、コスモス並みに口数が多いなぁ。
55.100Mr.モル削除
pikochuさんの話はいつも見させてもらってますが相変わらずセンス抜群ですね~。

ナレーションも面白いし、一番爆笑したのはカラータイマー音が「テンコー」
な所です。腹抱えながら地面叩くなんて何年ぶりか!!(超爆)
80.80名前が無い程度の能力削除
テンコー、テンコー