Coolier - 新生・東方創想話

東方X3

2009/06/26 12:24:47
最終更新
サイズ
23.39KB
ページ数
1
閲覧数
697
評価数
0/43
POINT
430
Rate
2.07

分類タグ

東方X戦記



第3話「何故だ、外の世界の争い!?悲しい瞳で愛を責めないで」
「な、何これ・・・・・・?」
飛び立って数分後、ある物を見つけて降り立った時、お空は絶句する。
それは・・・・・・機械人形が管理している作業場だった・・・・・・。
武装した機械人形が作業場を見張り、人間が奇妙な作業をしている。皆、顔がやつれている。
ある者は岩を削り、ある者はその岩を運び、またある者はそれを溶鉱炉に放り込む。
ここはもしかしたら、Zと同じ人間のアジトに違いない・・・・・・!
お空はそれを見て怒ると同時に何だか心がチクリと痛む。
「(・・・・・・それにしても、何で主である人間が機械人形の言いなりになっているんだろう・・・・・・?)」
あんな作業は機械人形に任せればいい。なのに、何故人間が働いているんだ?
意味が分からない。こいつらは本当にT‐Jを作り出して、さとり様達を殺したのか?
それが鴉頭のお空を悩ませる。その時、あるものが目に入る。
それは機械人形に追われている少女と少年だった。それを見て、更にお空は混乱した。
「どういう事・・・・・・何故、機械人形が主人である人間を襲っているの!?」
その時、お空は知らなかった。機械人形を所有しているのは北方勇者帝国だという事を。
そしてこの地域は北方勇者帝国に支配されて、その人間は奴隷だという事を。
お空は堪らず、飛び立つ。あの2人の人間が何故、機械人形に襲われているかを。



少女は自分の弟を連れて走った。息が荒いが、我慢するしかない。不意に弟が倒れる。
慌てて、支えて走り続ける。モタモタすると殺されるからだ。
少女は今でも覚えている。その時を・・・・・・。
突如、空飛ぶ船がこの辺鄙な街に現れ、あっという間に占領した事を。今ではそいつらの奴隷にされていた。
逆らう者は殺され、無理やりに働かせていた。少女達が逃げる事ができたのは奇跡に近いだろう。
その時、追手のロボットが現れた。子供の足ではスピードを改良した量産型T‐Jには勝てないだろう。
銃を向けて、手招きをする。言葉は喋れないので、こっちへ来いと言っているらしい。
少女は弟を抱く。このまま逃げると、殺される・・・・・・!
「待ちなさいっ!!」
そう声が聞こえた。助けか?そう少女は思って見上げ・・・・・・笑みを消した。
それは奇妙な衣装を着た女性だった。胸には目の様なイラストで、マントが羽の様に広がっている。
「・・・・・・どうやら、仲間割れ・・・・・・ということかしら?」
そう彼女が言う。目が明らかに友好的じゃないと言っている。
その時、ロボットが銃を向けて撃ちまくる。奇妙な女性がマントを広げ、飛び立つ。
「今度はこっちから行くよ!!」
そう言い、右手の棒を向ける。その時、その棒から弾が出た。
実弾ではない・・・・・・まるでSF漫画に出てくるエネルギー弾みたいなものだった。
全てのエネルギー弾がロボットに直撃する。直撃を受けたロボットは全て、爆発した。
あの弾・・・・・・まさか・・・・・・。少女は思い出す。あの時、この街を壊滅させた「あいつ」の事を・・・・・・。
あの女は「あいつ」と同じなのか・・・・・・!そう思うが否や、棒きれを拾い・・・・・・
「・・・・・・化け物っ!皆の仇!!」
そう叫んで、一気に振り下ろした。



お空は分からなかった。ここは本当にさとり様達を殺した奴がいる外の世界なのか?何故、仲間割れを起こした?
そう考えている時突如、棒きれを持った少女が襲いかかった。それに驚き、慌てて避ける。
「な、何するのよ!?それよりあんたに聞きたい所が・・・・・・。」
「うるさい!あんたもあいつの仲間でしょう!?父さん母さん達を閉じ込めて、私の友達を殺すなんて!」
そう叫び、少女は棒きれを振り回した。その言葉にお空はカチンときた。
「何言ってるの・・・・・・そう言うあんた達こそ機械人形を使って私の大切なものを殺させたでしょう!」
お空と少女の力量は歴然だった。はめている制御棒で少女を吹っ飛ばす。
吹っ飛ばされて、倒れる少女。そんな彼女に制御棒を突き付けるお空。
「・・・・・・あんた達、何で逃げて来たの?何で仲間割れを起こしたの?」
「な、何言っているの・・・・・・?」
「正直に話しなさい!!」
イラつきながら怒鳴ると、少年が少女を庇うかの様に立ち塞がる。その行動に驚くお空。
「な、何よ、あんた!どきなさい!」
「お姉ちゃんを撃たないで!」
「ライ逃げて!そいつはあの「勇者」の仲間よ!」
「勇者・・・・・・?一体、何の事なの!?」
「お姉ちゃんを撃たないで!何でもするからぁ!」
「お願い、弟に手を出さないで!殺すのは私にして!」
少女を庇うように立ちふさがる少年と必死に懇願する少女。お空はそんな2人に自分とお隣を思い出してしまう。
「・・・・・・何なのよ・・・・・・」
少年、少女の声を聞きたくないかのように両手で耳を塞ぐお空。分からない。一体、何があったんだ?
「これが・・・・・・ここがさとり様達を殺した外の世界なの!?分からない、分からない!もう何なのよ―――――!!」
そう泣き叫ぶお空に2人はキョトンとなる。やがて、少女が話しかける。
「・・・・・・貴方、あいつらの仲間じゃないの?外の世界って、貴方何者なの?」



「・・・・・・それじゃ、貴方は幻想郷という世界の住人で人間じゃないって言うの・・・・・・?」
信じられないという口調で少女、ミリアは言う。ようやく落ち着いた所で、廃墟のビル内で話し合った。
「自分の主人と友達を殺したのは殺人マシーンでそのZという人の目的はオクー達のDNAを軍事利用に?」
「うん。」
「それで、その原因である私達の世界に復讐を?」
「・・・・・・うん。」
そう答えるお空。何だか、外の世界は自分の想像と違っていた。悪い奴等がいっぱいいる世界だと思っていた。
けど、ミリアとライ(弟らしい)を見ると、本当に悪い奴等だらけの世界なのかと疑問が出る。
やがて、ライが言う。
「お姉ちゃん、オクーお姉ちゃんの話が本当なら、きっとあの勇者はオクーお姉ちゃんのDNAを使った奴だよ!」
「え?」
ライの言葉にお空はキョトンとする。その傍らでミリアがハッとなる。
「そうね・・・・・・だとすれば、オクーがあいつと同じ弾を撃った説明がつくわね・・・・・・。」
「どどどどういう事?」
「私が何故、貴方に攻撃したか・・・・・・それはこの街を廃墟にした勇者がオクーと同じ力を持っているからよ。」
「っ!?じゃあこの街は私と同じ核の能力で!?つーか、勇者って!?」
「勇者というのは、どうもあのロボットを指揮している頭領みたいな者らしい・・・・・・そいつのせいで友達が死んだ・・・・・・。」
「・・・・・・許せないよ・・・・・・。」
お空は怒りに満ちていた。街をこんな廃墟にする奴が許せなかった。
「さとり様達だけでなく・・・・・・ミリア達の街をこんな風にしちゃうなんて・・・・・・許さないよ!」
そう言って、お空は飛び立とうとする。が、その前にミリアに言いたい事が。
「あ、あのさ・・・・・・。」
「?」
「今までの1年間、私は外の世界を憎んでいた・・・・・・外の世界の人間は悪い奴ばかりだと思っていた・・・・・・でも、ミリアやライを見ると、やっと分かったよ・・・・・・外の世界の人間は悪い奴もいれば、いい奴もいる・・・・・・って。」
[外の世界の人間は悪い奴もいれば、いい奴もいるんだ!]
外の世界に復讐する計画での口論で勇儀が言った言葉を思い出す。そうまさにその通りなのだ。
「だから私は闘う・・・・・・捕まった人間を助けて、勇者とか言うふざけた奴を倒す為に!」
そう言い、お空はマントを広げ、一気にあの場所へ飛び立った。最初は呆然としたミリア達だったが。
「・・・・・・あの人(カラス?)・・・・・・本当に勇者と戦うっていうの・・・・・・?」
「でも、オクーお姉ちゃんは本気だよ!きっと勝てるよ!」
ライが言うとミリアはふっと笑う。
「大丈夫・・・・・・あの人ならきっと・・・・・・。」



「ほらそこ邪魔よ!どきなさい!」
北方勇者帝国の支配地の作業場でお空は奮闘していた。周りには機械人形の残骸が散らばる。
そして機械人形の1体がアイスピックを投げるがお空はそれを見て、避ける。
「・・・・・・これはヤマメの分!」
そう言い、お空は弾幕を放つ。爆発を起こす機械人形。
「パルスィの分!」
方向転換して他の機械人形に攻撃を仕掛けるお空。
「お隣の分!さとり様の分!こいし様の分!」
今、亡き者達の無念を晴らす為、お空は憎きT‐Jと同じ機械人形を破壊しまくる。
やがて、捕まった者達が入っている牢屋に辿り着いた。この時間は数を確認する為、牢に入れられているのだ。
お空はそれを発見し、数を確認する護衛の機械人形を撃破する。驚く人間達。お空は振り向いて言う。
「大丈夫!少し怪しいと思うけど、私は皆を助けに来たから!ささ、早く逃げて!」
牢の扉を壊し、中の人達を逃がすお空。人間達は慌てて外へと出る。幸い、入り口の見張りは全て壊したので安心だ。
ホッと一息をついて、お空は一気に上へ向かう。自分と同じ能力でミリアの街を壊した奴と戦う為に・・・・・・。



「ちいっ!旧式の鴉が!」
お空が映っているモニターを見、支配地№3の頭領である勇者3号は忌々しげにお空を睨む。
あの鴉が何故、ここにいるかは別として、奴のお陰で計画が滅茶苦茶だ。
3号の目的はこの地域にある特殊な石で武器を作る事だった。ここはあまり大きくないので、防衛力もたいした事はない。
ここで武器を作りまくって軍国に売りまくれば、我が帝国は幻想郷征服をより狡猾に進める。
それは我が主・Zと同じ癖かもしれない・・・・・・。あの方も軍事品を売りまくっていたし。
それをあのお空という奴が邪魔をした。あいつは自分と同じ能力を持っている・・・・・・!
「奴は・・・・・・キリュウは何故、あんな奴等の古臭い血で私を作ったんだ!!」
いらだしげにモニターを殴る3号。モニターが壊れるが、本人の手は無傷だ。彼女は自分の運命を呪っていた。
幻想郷など、所詮は古い奴等の集まり。奴等の力なくても科学の力で侵略できるものを・・・・・・。
そして、チルノの事も気に入らなかった。あの⑨妖精を仲間に入れること自体、間違っている。
自分の能力はそんな奴等の集まり・・・・・・能力の寄せ集めにすぎない。それが3号を苦しめる一因の1つである。
これも全ては・・・・・・博麗霊夢という巫女のせいだ。あんな奴のせいで、幻想郷が存在しているんだ。
だから、私は霊夢を殺す・・・・・・奴を殺して、忌々しい幻想郷を消滅させてやる・・・・・・。
「量産型は全滅寸前か・・・・・・ならばここへ来るがいい・・・・・・レイウジ・ウツボ!!」



お空は機械人形を撃破しつつ、上へ上へと昇っていた。悪い奴は上にいるものだと思っているらしい。
外の世界の人間は逃がしたし、これで安心して戦える。お空が上へと昇りあがると・・・・・・。
「・・・・・・うにゅ?あれかな・・・・・・?」
目の前には、豪華な扉があった。自分の勘だと、あそこにミリアが話した勇者がいるかも・・・・・・。
「うーん・・・・・・よし!御邪魔しマトリックス!!」
元気よく言い、お空は扉を開ける。その時!
「ふっふっふ・・・・・・。来たなレイウジ・ウツボ・・・・・・まさか、そう古くないギャグで言うとはな・・・・・・。」
お空が声のする方へ向くと、そこにはロープを纏った人物がいた。それに対しお空は・・・・・・
「何でカタカナなの!?あ、もしかして作者が漢字を忘れた?あとウツボじゃなくて霊烏路空(うつほ)だよ!」
ズデ―!
お空の言葉にその人物・・・・・・勇者3号は盛大にずっこけた。そして立ち上がって言う。
「貴様・・・・・・それが敵である私に対する最初のセリフか!?やはり貴様の遺伝子があると思うと頭が・・・・・・。」
「あ、そうだ!あんたでしょ!私と同じ核の能力でミリア達の街を吹っ飛ばした勇者というのは!?」
お空がそう言うと、3号は体制を整えて言う。
「あぁ、そうだ。この街の石は特殊でな・・・・・・武器を調達する為に少し邪魔物を片づけただけだ。」
「そんな理由で・・・・・・石目当てで街を壊すなんてひどいよ!」
「黙れ、ウツボ!いや、ウツホ!そもそもの原因は貴様がいけないのだ!」
「え?何で?」
「貴様等さえいなければ、私は貴様等の汚れた遺伝子により生まれる事が無かったのだ・・・・・・!」
憎らしげに言う3号にお空はある事に気づく。
「ま、まさか・・・・・・貴方、アリスが言っていたキリュウとか言う奴と同じアローン!?」
「クローンだ。ホー○アローンではない。あぁそうだ。私はキリュウによって3番目に生まれた貴様等地霊殿組のクローン・・・・・・。」
そう言って、ロープを脱ぎ捨てる3号。その3号の姿にお空は絶句した。
「・・・・・・!わ、私やさとり様達にそっくり・・・・・・!?」
何と3号はお空自身そっくりなのだ。しかも、お空だけではない。
きつめの眼は緑で、額には星マーク、黒い髪にはおさげをして、肩から閉じている目と開いている目が巻きついていた。
何より・・・・・・顔はお空にそっくりだ。
「我が名は地獄勇者、ザリク!ウツホ、貴様の息の根を止めてやる!!」
そう言って、構える3号・・・・・・ザリク。それに対し、お空も戦闘態勢を取る。
「よし、行くよ、ザリク!これ以上、好きにはさせない!」
今、2人の弾幕少女が対峙する。
ザリクは自分を汚らわしい遺伝子で生まれた原因の1つである幻想郷の住人に対する復讐心で、
お空はさとり様達の仇であり、外の世界の人間を苦しめているキリュウ達を倒すという一心で満ちていた。



お空は弾幕を張り、ザリクも負けじと弾幕を張る。まさにそれは幻想郷でよく見られる弾幕である。
1年前は、接近戦を好むT-Jであったが、今回の相手は自分と同じ能力を持つザリク。距離を取りつつ、撃ち合う。
勝負は正に互角・・・・・・かと、思いきや・・・・・・。
「くっ・・・・・・流石にこのままでは共倒れだな・・・・・・ならば!」
そう言い、ザリクはカードを取り出す。お空は驚く。何せ、自分と同じスペルカードを持っているからだ。
お空もそれに対抗してスペルカードを取り出す。
「核熱っ!」
「ニュークリアフュージョン!」
そう唱え、スペルを発動する。2つのスペルはお互いにぶつかり合い、消滅する。
Spell break!お空の頭の中にそんな文字が浮かぶ。
「ならば次は・・・・・・!」
「私なら・・・・・・よし次はこれね!」
「「爆符「プチフレア」!!」」
次のスペルも同じスペルであり、相殺されてしまう。その後しばらくはスペルの撃ち合いになる。
「(これじゃキリがない・・・・・・よし、こうなったら・・・・・・!!)」
ふと、ある事を思いついたお空はスペルを大量にセットする。それを見たザリクも同じ枚数でセットする。
「無駄だ!どうやら、得意のスペルも無効では、持久戦しかできないな!」
どうやら、ザリクは自分の作戦に気づいていない。よし、やってみよう。
お空はありったけのスペルを発動する。ザリクも同じようにスペルを放つ。やはり、相殺されるが・・・・・・。
「今だ!」
「何!?」
「スペルセット!「地獄の人工太陽」!!」
相殺されるや否や、お空はお気に入りのスペルを発動する。まさに時間差攻撃だ。
「くっ・・・・・・「地獄の人工太陽」!!」
慌てて、ザリクもスペルを発動する。そして2つのスペルもやはり、ぶつかり合い・・・・・・消滅する。
消滅の際に大爆発が起き、天井が吹っ飛ぶ。ザリクは瞬時にかわす。
「・・・・・・互いのスペルカードがなくなったか……奴め、最初のスペルは囮だったとは・・・・・・。」
「お気に入りのカードもそうだよ♪」
「なっ・・・・・・!」
上を見上げると、お空がいた。彼女は制御棒を上げ・・・・・・。
「オリャァァァァァッ!!」
「ガッ!」
ザリクの脳天に一撃を当てた、続いてお空は頑丈な制御棒を横へと振ってザリクを吹っ飛ばす。
「ガハッ!ど、どう言う事だ・・・・・・!」
「機械人形の戦いぶりを真似しただけ!」
「!T‐Jの得意な接近戦を仕掛けただと!?」
「私だって、スペルが効かないという事は承知よ!」
そう言って、お空は制御棒で連続にザリクをサッカーボールの様に吹っ飛ばす。まさかの戦略にザリクも予想できなかった。
一気にザリクを吹っ飛ばしたお空は倒れるザリクに制御棒を向ける。
「さて・・・・・・そろそろキリュウとかいう奴の居場所を言いなさい!」
「まさか・・・・・・この私が・・・・・・旧式の鴉如きに・・・・・・!」
ザリクは戦意を失っていた。顔は真っ青で、体が震えているのが分かる。
「もう1度言うわ。キリュウはどこなの!?」
「・・・・・・たくない・・・・・・。」
「え?」
ザリクの言葉にお空は聞き取れなかった。ザリクは壊れたテープレコーダの様に呟き続ける。
「嫌だ・・・・・・負けたくない、負けたくない、負けたくない、負けたくない・・・・・・!」
その時、ザリクの体が輝いたのだ。これには流石のお空も驚く。
「え?えっ!?」
「旧式如きに・・・・・・負けたくないぃぃぃぃぃぃ――――――!!!」
そう怒鳴り、ザリクの体は輝いた。そう、ザリクは本気モードになっているのである。
あまりの凄さに怯んだお空を睨み、彼女は言う。
「・・・・・・私は欲している・・・・・・勝利という名の栄光を・・・・・・勝利という輝きを・・・・・・例え、相手の勝利を奪おうとも!!」
その剣幕にお空も後退する。ザリクの本気に少し・・・・・・いや、かなり恐れている。まるでパルスィみたいだ。
「勝つ為なら、冷酷非道になろう・・・・・・卑怯者にもなろう・・・・・・人間共から何を言われようとも構わん!」
そう言って、補充できたのか、スペルカードをセットする。
「最後に私が・・・・・・勝―つ!勝―つ!私が勝―つ!!」
「トンカツ?・・・・・・じょ、上等じゃないの!私も負けるわけにはいかない!」
「行くぞ!スペルセット!ゾンビフェアリー!!」
「よし、私も!・・・・・・え・・・・・・?っ!?な、何でお隣のスペルを!?」
突然のスペルの名前にお空は絶句した。あのスペルは親友であるお隣のスペルだ。何故、使用できる!?
「何も、私の遺伝子の元が貴様だけじゃないとは言っていない!」
ザリクの言葉にお空はある言葉を思い出す・・・・・・。
『あぁそうだ。私はキリュウによって3番目に生まれた貴様等地霊殿組のクローン・・・・・・。』
『地霊殿組の』・・・・・・
「じゃ、じゃあ・・・・・・お隣だけでなく・・・・・・さとり様や、こいし様、キスメ、ヤマメ、パルスィも・・・・・・?」
「無論、勇儀と言う鬼娘もだ・・・・・・お前は自分だけでなく、そいつらと戦っている事になっている!」
そう言って、多くのスペルカードを取り出し、一気に発動するザリクにお空は避け続けるしかなかった。
避けながら、お空は見覚えのあるスペルを見て、思い出す。
あれはパルスィのスペル・・・・・・あれはヤマメのスペル・・・・・・あれは勇儀のスペルだ・・・・・・。
今のお空には手も足も出なかったのだ。
「くっ・・・・・・このままでは不利・・・・・・。」
「どうした?この程度か?」
「!?」
声に驚き見ると、後ろにはザリクがいたのだ。何故・・・・・・?
「言っておくが、私は貴様等のスペルを真似するだけではない・・・・・・貴様等の能力を使いこなせるのだ・・・・・・。」
そう言うや否や、お空を地面に向けて蹴り飛ばした。さっきのお返しだろうか。勇儀並みに痛い。
「尚、今のはこいしの能力だが、さとりの能力と拒絶反応を起こしてお互いの能力が半分になっているがな・・・・・・。」
だから、さとり様の能力があっても、心が完全に読む事が難しいのだろうか。吹っ飛ばされながら、お空は思った。
ザリクの本気の一撃に立つのがやっとの状態のお空。そんな彼女にザリクは不敵な笑みを浮かべる。
「ふん、やはり旧式はそんなものが限界か・・・・・・。」
「・・・・・・旧式、旧式って・・・・・・あんたの能力は私達のパクリでしょう・・・・・・!」
その言葉がかんに触ったのか、ザリクの笑みが消える。
「・・・・・・そんな口がまだ利けるとは・・・・・・いいだろう・・・・・・私の一撃を受けてみるがいい・・・・・・!」
ザリクがスペルカードを取り出すと途端に地面が揺れ始める。それ程、強力なスペルなのか・・・・・・。
ふっと笑って、ザリクがお空に止めの一撃を放つ。
「くらうがいいウツホ・・・・・・貴様のお気に入りの改良版、真・「地獄の人工太陽」・10連弾!!!」
その瞬間、ザリクがスペルを発動する。あの弾幕はまさにお空のお気に入りである「地獄の人工太陽」だが・・・・・・。
その弾幕はまるで10個あるのだ・・・・・・これが10連弾の正体なのか・・・・・・。
今のお空には、それに当たるしかできなかった・・・・・・。
「うにゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」
直撃を食らい、吹っ飛ぶお空。それを見て、ザリクが笑いだす。
「ふふふふ・・・・・・ふはははははは!!これが私の力だ!ははははははは!!」



所変わって、ここは幻想郷。魔法の森にノロノロと黒い妖精が飛んでいた。
彼女の名はリリーブラック(以下、リリーB)。1年前、T‐Jに殺されたリリーホワイトの姉的存在なものである。
天然のホワイトとは違い、攻撃的で人との関わりを嫌っていた。そしてホワイトを鬱陶しく思っていた。
だが、そのホワイトが行方不明になっていた。このままでは、春を伝える者がいなくなると大変な事になる。
そう思ったリリーBは仕方がなく、代わりに春を伝えまくった。ホワイトはどこに行ったのか?その事が頭から離れられない。
その時、突如やって来た紫と言うスキマ妖怪から信じられない事を聞く。
ホワイトが死んだのだ・・・・・・。正直、リリーBは半信半疑だった。
そして、堪らなくなって、何らかの協力を求める紫から逃げた。何故か涙が溢れてしまう。
あのホワイトが死ぬなんてあり得ない・・・・・・そう思いながら、飛んでいると木にぶつかる。
いつもはそんなヘマはなかったのだが、リリーBは落ちてしまう。ふと、ポケットから何かがこぼれた。
それはホワイトが書いた自分の絵だった。ホワイトにしてはよくできているといつもポケットに入れている。
それを見た瞬間、リリーBはその紙きれを掴んで地面に叩きつけようとしたが・・・・・・できなかった。腕が震えている。
「ホワイト・・・・・・一体、どこにいるのよ・・・・・・。」
そんな言葉が出る。その後、ぼんやりと立ちあがり、紙をしまってフラフラと飛ぶ。
目的地は自分とホワイトの家だった。あれから1年間、リリーBは一人ぼっちだった・・・・・・。
扉に手をかけた時、その扉が勝手に開きだした。ホワイトか!?そう思ったリリーBだったが・・・・・・。
「!な、何なのよ、貴方達!」
「不法侵入月兎です!」
そう言われるや否や、リリーBは謎の侵入者に捕まって中へ引きずり込まれてしまう。
今のボロボロな状態の彼女には突然の人物(?)に抵抗することができず、縛られてしまう。
「少し借りているわよ、地上の者・・・・・・。」
ふと、そんな声が聞こえる。見ると、そこには見知らぬ人物と見た事ない兎達がいた。
兎達は竹林のとは違い、何だかヘルメットみたいな物を被っており、そこから長い耳が出ている。
そして声を発した者はどこか幻想郷とは違う雰囲気を持っていた。頭にリボンを着け冷静な眼差しでリリーBを見ている。
彼女の名は綿月依姫。月の都で地上のものから月を守る部隊のリーダーであり、永琳の弟子の1人である者だった。
月の都と幻想郷は隔離されているのに、何故、依姫達がここにいるのか?それは説明しよう。
1年前、地上に逃げた賢者・八意永琳の突然の帰還に月の都は混乱し、彼女の説明に更に混乱した。
地上には、T‐Jという恐ろしい殺戮兵器が存在している事。そして蓬莱の薬を作った蓬莱山輝夜が行方不明になった事。
あまりの出来事に月の都は更なる波乱を迎えるが、とりあえず永琳を監禁することになった。
そして、月を守る部隊のリーダーである依姫とその姉、豊姫にある指示が与えられる。
一部の兎を連れて地上へ降り、蓬莱山輝夜の確保、T‐Jという機械人形のデータを奪う事であった。
どうやら後半が目当てであるが、依姫達はそれに従った。監禁された時、八意様は何故か疲れている様な感じだった。
別に蓬莱山輝夜の事は知らないが、八意様は彼女の事ばかりを話していたので、少し嫉妬しているかもしれない。
取りあえず、姉上の能力で部下であるレイセンを始めとする月の兎約7匹を連れて、地上(幻想郷)へと降り立ったのだ。
しかし、そんな彼女の事を知らないリリーBは彼女に突っ込もうとするが、ロープを持った月兎に引っ張られる。
「出ていきなさい!!ここは私の家よ!今の私は不機嫌だから!」
「そんなに怒らないでよ・・・・・・全く、地上のものにしてはいい家ね。」
そんな彼女の剣幕を無視しつつ、彼女は部屋を見回す。
ちなみにリリーBは知らないと思うが依姫は地上に降りた時、たまたま見つけたリリー家を借りているだけなのだ。
理由は1つ、永琳が話したクローン・キリュウの存在を見つける為だ。その為に、リリーBの家を借りているのだ。
「・・・・・・貴方もしかして、八意様が言っていた春の妖精、リリーホワイトの姉、リリーブラック?」
「っ!何故それを・・・・・・?八意様ってまさか永遠亭の!?」
依姫の言葉にリリーBは驚いて、かつてホワイトが冬で風邪引いた時にお世話になった事がある。依姫はきつめに言う。
「全く、妹が殺されたのに何をしているの、貴方は・・・・・・。」
「!うるさい!そんなのは嘘よ!ホワイトは死んでない!」
「じゃあ、貴方は妹が生きている証拠はあるの?」
「くっ・・・・・・でも、ホワイトが死んだという証拠はあるの!?」
「・・・・・・今度は現実逃避かしらね・・・・・・貴方それでも幻想郷の住人なの!?」
依姫の突然の大声に怯むリリーBだったが、こっちも負けるわけにはいかない。
「威張らないでよ!そっちこそ一体、どこから来たのよ!?」
「私?私の名は綿月依姫。八意様の弟子の1人で月の都の者よ。少し訳ありでここに来たのよ。あら、少し薄味ね。」
そう言いつつ彼女はあるものを飲む。リリーBは思い出す。あれは自分が楽しみにしていた春コーラーじゃないか!
「勝手に飲むな!」
「あら御免なさい、貴方のだったの?・・・・・・それより貴方、このまま妹を殺した者が黙っていると思っていた?」
「え?」
「貴方、今までどこへ行ってたの?ここで空飛ぶ船が侵略しようとしたって騒いでいたわよ。」
「よく聞けましたね~依姫様。」
その背後でレイセンが感心する。ちなみに彼女は逃げ出した鈴仙の代わりとして入って来た月兎である。
「まぁ、妖精達がうるさくしゃべっているのをたまたま聞いただけよ。それより貴方、知らなかったの?」
全然知らなかった。今まで、ホワイトを探しているのに夢中だったから。
それより、この幻想郷が襲われた?もしかして、紫が協力して、と言ったのはこれの為なのか?
それに気づいたのか、依姫がため息ついて言う。
「知らないみたいね・・・・・・何をやっているんだか・・・・・・貴方達も前のレイセンがあぁならない様に気を付けてね。」
「え?あの黒い妖精みたいな性格になっているんですか先輩?」
依姫の言葉に首を傾げるレイセン(2代目)。その時、どこからか知らないベル音が聞こえた。
「っ!無線係!」
「はっ!」
それを聞いた依姫の指示に1人(1匹?)の月兎が片手にアンチョコ持って受話器に耳を当てる。
「あのさ・・・・・・その長い耳は何なの?本物の耳はどっち?」
そんなリリーBの言葉を無視し、何かを聞いている月兎。どうやら盗聴しているらしい。
「・・・・・・地上の暗号は少し複雑ですが暗号変えても大丈夫です・・・・・・1人の勇者が移動基地へ向かっている様ですね。」
「勇者?何なのそれは?」
「分かりませんが、恐らく階級みたいなものでしょう。」
「成程・・・・・・移動基地は?」
「どうやら、その勇者は拠点をそこに移しだす模様です。」
「移動基地で地上を支配する気ね・・・・・・一刻も早く蓬莱山・・・・・・様を探し出さねば!出撃するわよ!」
その言葉に月兎達がアタフタと出かける準備をする。その間にリリーBは考えた。
もし・・・・・・もしホワイトがその謎の軍団に殺されたとしたら・・・・・・。いや、何よりホワイトの生死が先だ。
だから、リリーBは依姫に言う。
「・・・・・・依姫と言ったよね?私も連れていって!」
その言葉に依姫はキョトンとしたが、すぐにリリーBに冷たく答える。
「そんなものは自分でやりなさい。それに私は妖精だろうと穢れた者を連れて行きたくないの・・・・・・。」
「私はホワイトの生死が知りたい!もし殺されたとしたら、仇を取ってやりたい!お願い、私を連れて行って!嫌なら、月で偉そうなあんたが月の兎と共に不法侵入した上に私の春コーラー盗み飲みしたというのを皆にばらすわよ!!」
途端に、止まって振り返る依姫。その顔はひきつって、冷汗が大量に流れている。
「・・・・・・これだから、地上と関わりたくないのに・・・・・・。」
そうブツブツ言いつつリリーBに近づき、縛っている縄を解く依姫。そして彼女はレイセンに言う。
「レイセン、この妖精も連れて行くわ・・・・・・リリーブラックと言ったけ?貴方、足手まといにならないでよね。」
今、依姫チーム(+リリーB)も外の世界へと向かおうとした。
だが、この戦いはこれからも激しくなるという事を、誰も知らない・・・・・・。



続く



次回予告:「勝つ為なら、手段を選ばない地獄勇者ザリクに手も足も出ないお空。もはや気力を尽きた中、いよいよザリクの第2の計画が始まる・・・・・・。お空、あやうし!その時、力尽きた彼女に手を差し伸べる人物の正体は!?そして、傷つき倒れた筈のお空に奇跡が生んだ伝説のスペル技が発動する!次回、『究極一撃必殺!お空の地獄夢想技』にご期待ください!」
お久しぶりです。ZRXです。
今回は4話と一緒に描いたので少し遅くなりました。
今回はお空(時折、リリーブラック)メインです。少しオリ解釈がありますのでご了承ください。
次回はお空の反撃のターン!
名前が無い程度の能力
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.430簡易評価
0. コメントなし