誰かが、こんな事を言った。
『タイムスリップは不可能である』
でも、それは私にとっては、ただ幻想を持たない大人の言い訳にしか思えなかった。
そして……
私の幻想は、思いもしない形で始まった。
* * *
目覚めた時、そこは、見たことが無い森の中だった。
突然の出来事だった。不意に意識が途切れたかと思いきや、すぐ意識が戻り、そうしたらこんな森の中、一人で立っていたのだから。都会暮らしが長い私にとって、こういう木々が生い茂った森というものは非常に不気味だった。
「何で……私はここに居るんだろう……」
そう、口にした瞬間だった。後で、何かが動いた気配がしたのは。
「誰!?そこに居るのは?」
私の声が響くばかりで他は何も音がしない。
「誰か居るの?居たら返事して!」
………………ガサッ。
「え?」
…………………………ガサ、ガサ、ガサ。
「え…な…何よ……」
そして、出てきたのは……
牙をむき出しにして襲い掛かろうとした獣であった。
即座に分かった。このままでは噛み殺される!そう思ったときには既に、私は一目散に襲い掛かってくる獣から逃げた。何もかも分からない森の中で、とにかく思いついた方へ、何も考えず、ただ逃げる事しか考えなかった。
しかし、やはり私の方がこんな状況の中で圧倒的に不利だと言うのは冷静になっていればすぐ分かった事だ。だから、すぐ追いつかれると思った。しかし、後ろを見ると、私の眼には暗い森しか映っていなかった。
「ハア、ハア、ハア……に、逃げ切った……のかな……?」
私は近くにあった木に片手をつき、そのままその木を背に座り込んだ。
「確かいきなり気を失って、それですぐ眼を覚ましたらここにいて、確か夜だったわよね……あの時……って夢じゃないのかしら!?」
空を見上げると、僅かに見える木々の隙間から幾つか輝くものが見えた。星である。しかも、空が闇に染まっている。この森の暗さも今が夜であることをよく示していた。
私は携帯を開いた。画面には『圏外』と表示されていた。それはこのような森の中、そこまで電波が届いてくれる筈も無い。問題は日付だった。画面が示している日付は――
「うそ……あの時からまだ1時間も経っていないの……?」
考えれば考えただけややこしくなる。今から1時間も経たない前、私は突如気を失い、その直後、眼を覚まし、そのさらに直後、なぞの獣に追いかけられ、そして今へと至る。これは夢だ、夢でしか有り得ない、そう自分に言い聞かせるのだが、地面の感覚はしっかりとあるし、今、背にしている木もその表皮の感覚はリアルだ。
「これって夢よね……いや、絶対に夢だ!…………あ痛たッ」
試しに自分の頬をつねってみた。結果、しっかりと痛かった。
「夢じゃないの!?これ!?もうっ!」
文句を言いつつ、少し休む事にした。
――後になって思うのだが、この時、最初からよく考えていれば良かった。今、逃げ始めてから僅か10分と経っていないのに、こんなにあっさりと逃げ切れるだろうか。
「一体何なのよ……!ここがどこか分からないのに、いきなりあんな凶暴なあッ……!」
完全に油断しきった私の頭の横を、何か鋭いものが掠め、後ろの木に直撃した。
その一瞬の出来事に、思わず固まってしまう。私の目の前に居たのは、ついさっきまで追け回していた奴だったから……
その瞳が私の眼と合う。そして、鋭い爪が付いた前足を振り上げた……
そこで、私の意識は途切れてしまった……
* * *
「お、目が覚めたか」
次に意識が戻った時には、私はまた何処か知らない所に寝かされていた。
「準備もせずに林の中に入って行くなんて、命知らずも程々にしたほうが良いぞ」
「あ、あの……」
「おっと、あんまり無理するな。相当逃げ回ってたのか。服がかなり汚れてた。まあ、あそこはあまり知能が高くない獣が居るから、次にあそこに行こうとするなら、ちゃんと準備しないと」
「わ、私……」
「とりあえず、何か話があっても、今は休め。ああ、そうだ。私は上白沢慧音。もし何かあったらすぐ呼んでくれ」
慧音と名乗る女性は、その言葉を残し、この場を去った。
あんな状況からよく生き延びていたな、と思う。多分、あの瞬間、誰かが私を見つけて、そして助けてくれたのか、あるいはあの獣が勝手に逃げていったのか。まあ、どちらにしろ、今、私は生きているというのは間違いない。そして、傍に誰か居てくれるというだけで、とても安心できる。
「それにしても、ここはどこなんだろ……」
だが、考える時間は貰えなかった。すぐに疲労感が押し寄せ、睡魔が襲ってきた。それに打ち勝つ気力は無く、そのまま意識は闇の中へ……
* * *
「すると、彼女は『神隠し』されたって事か?」
「そう。ところがねぇ……」
「何だ?何か問題でも?」
「彼女を『神隠し』する気は全く無かったのにね、見てみたらこっちに来ていたのは彼女だったのよ」
「本来なら別の人が、という事になるのか?」
「そう。だから、彼女はさっさと帰してても良いわよ」
「?本当に良いのか?」
「ええ、それは勿論でしょう。では、私はする事があるので~」
「……逃げた、のか……?」
――――さて、どうするべきか。
最初に考え始めたのはその事だった。
今、隣の部屋で眠っている少女は、どうも外から来たらしい。その事を伝えた八雲は胡散臭い妖怪である以上、全て鵜呑みにするのはどうかと思うのだが、彼女は里の中でも見かけたことが無い服装をしていたし、第一、ここの住人なら、あの林に装備無しで入っていくのはどれだけ無謀か分かっている筈だ。と、言う事は、彼女が外から来たというのは本当か。
「しかし、そのまま帰しても良いものか……」
慧音には、漠然ともしない不安があった。それは、むしろ紫の態度が気になったからである。そもそも、『神隠し』をする相手を間違う事が、本当にあるのか、そこが疑問に思っていたのだが、どうにもはぐらかされたように思えるのだ。
「まあ、『帰して』と言われて帰さない訳は無いのだが、まあ、後々鉢合わせたら聞き出すとするか」
* * *
「あそこに見えるのが博麗神社だ」
「あそこって……ああ、あの小高い所の?」
その次の日、私は元居た場所、つまり私が、少し前に慧音から聞いた『神隠し』というものをされた場所に帰してくれる事になった。で、何でも、『麓の神社』からでないと、外に出られないという。それは、この辺り一面が結界で覆われているからで、その神社が唯一、結界の外と中を繋ぐ、いわば、通路であるらしい。
「ところで、ついさっき、ここについて軽く触れたが……」
神社への長い石段を登る途中で慧音が功話し掛けてきた。
「それについては、決して他人には話してはいけないぞ」
「え?でも、それはちょっと……第一、戻ったら戻ったで色々と問いただされるのは目に見えてますから。しかも、それがしつこいったらありゃしないので……」
「それは大変そうだな。ならば……」
慧音は、私にある言葉を耳打ちした。
それは、『何処かの山奥の集落にお邪魔していたとでも言っておく』というものだ。
「それなら大丈夫、かも」
「多分な。それより、もうすぐで神社に着くぞ」
大体10分は昇っていただろう。石段を登りきったとき、まず最初に目に飛び込んだのは朱塗りの鳥居だった。
「うわ、これはデカイ」
「そんなに珍しそうに見るものなのか!?」
珍しそうに、か。
私は都会生まれの都会育ちで、とにかく無機質なものばかり見てきた。で、多少『自然』というものは見たことがある。しかし、私は、これまで神社や寺院に行った事がほとんど無く、ここ2、3年は一切行っていないため、どうにも神社というものが珍しく映ってしまうのだ。しかし、慧音の言い方からして、この辺りにいる人にとって博麗神社というものは当たり前のもの、らしい。
その、朱塗りの鳥居の先には、2人の人影があった。どうも2人で何か口喧嘩をしているようだった。
「やれやれ、またか」
慧音が大きく(多分わざとしている)溜息をついた。『またか』と言うだけあってこの2人の口喧嘩はいつも起きているようだ。
「だーかーらー、また面倒な事起こすんじゃないわよ!」
「もう!話を聞きなさい!」
「話なら散々聞いたわよ!何回聞いたってあんたが悪いって事が変わると思う?」
「すぐ決め付けないのよ!それがあなたの悪い癖」
「な……!言ったな!」
「なんだか、最初は口喧嘩に聞こえてたけど、今聞いてたらただの罵り合いに聞こえる……」
「やれやれ……おい、2人とも、そこで止めにしろ」
慧音のその言葉で2人は私の方を同時に向いた。
「……で?この人ね、あんたが間違って連れてきたのは」
「そうよ。さあ、こっちに来て。準備はもうできてるわよ」
そして、紫のドレスを着た女の人は、私の手を取って、母屋の裏に連れて行った。
「災難だったわね。いきなりここに連れて来られて。しかも、凶暴な輩が沢山居る所に。でも、これで大丈夫よ」
そう言って、その人は、私の目の前に大きな黒い物を出した。
「この中に入れば、後は勝手に元居た場所へ戻るわ。それと……」
「ここの事は他言無用、ですか」
「む、知ってるのなら別にいいわ。さあ、誰かがきっと心配してくれているでしょう。早く帰りなさいな。ところで……貴女の名前は?」
「私?私の名前は……」
* * *
「ああ……名前ぐらい聞いたって良いじゃない。別に大した事じゃないし」
「というか、彼女がまた来るとは限らないんだぞ。私は極力余計な事は覚えないほうが良いと思うんだが」
丁度そこへ、紫が戻ってきた。
「八雲、彼女はどうなった?」
「彼女?無事に送り届けたわ。これでひとまず安心」
「よく言うわよ。あんたが間違って『神隠し』をしたんでしょ。あんたが片を付けるのは当たり前」
「む……」
そう言われたら、紫に反論の余地は無し。
「さて、私は帰るが……」
慧音がわざとそこで区切って言う。
「口喧嘩も程々にな」
「余計なお世話よ」
「む、酷いわね」
こういう時だけ何故か息が合う。
霊夢は箒を取り出し、境内の掃除を始め、紫はスキマを開いて何処かへ行く。しかし、その紫の表情が何か釈然としない。何か引っかかる事があるのだろうか。霊夢もそれには薄々感じているだろう。その時は、何故違う人を『神隠し』してしまったのか、そう考えているとしか思い付けない。
しかし、それについて霊夢が口出しできる訳が無いので、彼女はただ黙っているしかなかった。
* * *
ここに来て、ようやくこれまでの流れを掴めた。
まず、私は友人のグループに蓮台野――と私は聞かされていた――に連れ出された。
森の中には複数の道があるが、その中から、ある神社に繋がる道を選んだ。その神社こそ、博麗神社である。
で、その道の途中で、突然気を失った。
これが大雑把な流れだ。友人達は、恐らくまだ麓の旅館に居るだろう。今回の旅行……半ば強制的に連行されたこの旅行は、一泊する予定で、多分彼らが予約した旅館に居るだろう、あるいは麓まで歩いていれば、そのうち会うかもしれない。まあ、とりあえず急ぎ気味に麓に行こうと考えていた。
そこで私は、不意に携帯を開いた。
「20XX/X/XX 8:09」
時刻表示には『確かに』そう出ている。
確かにそうなのに、全く違う。
麓の町、たった一晩でここまで変化するか?
昨日は木製の建物がまだ建っていたが、たった一晩で全て跡形もなく消し飛ぶか?
いや、それは有り得ない。
ならば、何故……?
不安になって、昨日泊まる予定だった旅館の場所へ向かった。
そこは……旅館ではなかった。全く別の建物に変わっていた。
何で……?
一体何が起きたか分からない。ただ混乱するしかない私であったが、このあと出会う物が、私に止めを刺す。
少し歩いて、何かの本屋に入ってみた。本屋というものの雰囲気も違う。
そこの壁にはカレンダーが貼ってあった。
そのカレンダー……そこの書かれてあるものこそが、私にどうしようもないショックを与える。
カレンダーには、こんな事が書かれてあった。
「21XX年」
それを見た瞬間、私の思考回路はショートし始めた。これが、現実なのか、それともただの夢なのか、とにかく現実味が無かった。何しろ、100年も後の時代にタイムスリップしていることになっているのだから!
もし、これが本当なら、私が知っている人は誰も居ないわけで、例え私の家に帰ろうとしても、そこには誰も居ない……いや、もう私の家自体が存在しないのではないか。だとしたら、私には帰るべき場所が無く、身寄りも無く、私のすべてのモノが無く……
だから、これが夢であると願うのだが、現実とは、夢をこうもあっさりと打ち破ってしまうのか。
何かに触れば何らかの感触はあるし、他人にぶつかれば痛みを感じる。もしこれが夢ならば、何の感覚も働いていないはず。何も感じられないはず……
だから、絶対にそれを受け入れられない、絶対に受け止めてはならないと思うのだが、たった一つの結論を受け入れるしか、受け止めるしかない。
――私は、100年後の未来にタイムスリップしていた――
雨が降っていた。それは、最初は小雨程度だったが、次第に激しくなった。道行く人々が急いで傘を差すなり走り出すなりしている中、私は道の隅で誰の気にも留められず独りで座り込んでいた。
「何で?どうして?どうして私がこんな目に?」
何もかも信じられなかった。今起きている事がとても信じられなかった。
これが、現実であると結論はついているが、どうしてもそれを認めたくなかった。それは、今感じつつある『孤独』に対する恐れだ。
人は、孤独では生きられない。誰かがそう言っていたのを覚えている。そして、今私は一切『生きている』と感じる事が出来ないのである。
かれこれ1時間が経っていた。僅か1時間の間に、ここまで精神的ダメージをここまで与える事が、この世に今私が陥っている事以外にあるだろうか……
空を見上げてみると、そこには、これまで見てきた星や月が、一切変わらずにある。どうやらこの雨は天気雨のようだ。そういうものは初めて見た。雨の中100年間ほとんど変わる事の無いものを見たら、普通なら感嘆するだろう。
しかし、私は違う。
私の視界に、星と月が入ると、これまで見たことの無い物が勝手に私の視野に現れてくるのだ。
日付と、時刻。
私が今どこに居るか。
私自身に異常が起きているのだ。もはやこの状況は危険だ。
かといって、私に何ができる?何もかも分からない状況で、私は何も出来やしない。
とにかく、この町を出ようと、立ち上がろうとした瞬間――
「貴女は……なんでここで鬱ぎ込んでいたの?」
目の前に『彼女』が立っていた。
「貴女には関係ないじゃない」
「ちょっと目に入ったから……すごく寂しそうにして……何かあったの?」
「放っておいてよ」
「む、すごく機嫌悪っ」
機嫌が悪い……客観的に見ればそうなのだが、私はとても鬱ぎ込んでいた。訳も分からぬ内に、100年も後の時代に飛ばされていたのだから。
そんな私を見かねたのか、彼女は大袈裟に溜息をついた。
「本当に、もうっ。ねぇ、じゃあさ、あなたは自分独りで何でも解決しようとする人?」
その問い掛けに、面を食らってしまう。
「でも、それってすごく大変じゃない?私はそう思うの。だからさ、誰かに打ち明けてみたら……どうかしら」
「……だれもいない」
「?」
「私が知っている人は誰もいない」
「あら?もしかして浮浪者?それはそれは」
彼女は多分本気で言っているのだろう。でも、その表現は的を射ているわけで――
「浮浪者……か。なら私は時代の浮浪者ね」
それを肯定せずにはいられなかった。
「……ねぇ、あなた一体何者?」
「過去の人。それも100年前の。タイムスリップして来たのよ。どう?信じられるわけ……」
「あるわ」
その声は、これまでとは違って、妙に力が込められていた。
「この世にはね、信じてはいけない事は無く、信じられない事も無い。それをどう受け止めるかが問題なのよ。例え他の誰もが信じられないような事でも、私はそれを信じる事が出来る。まあ、それは……私が周りと「違う」からなんだろうけれど……」
そう言って、彼女は、右手で顔を被い、親指と人差し指の隙間から右眼を覗かせた。その金色の眼は、私の方に真っ直ぐ向けられている。
「さっき、自分の事を、『過去の人』と言ってたわよね。じゃあ、あなたの周りに纏わり付く『歪み』は、時間の流れが違うからなのかしら?」
「『歪み』……?それって一体何……?」
「真っ黒い線みたいなもの。何でか知らないけど、私は、昔から『歪み』が視えるのよ」
つまり、それは見えない何かが視えるということだ。
「へぇ。じゃあ、時計も何も見ないで今の時間を当ててあげようか?」
「そんな事ができるの?」
「ええ。今は……10時XX分」
その言葉に、彼女は驚き、そして自分の携帯を取り出して、時間を確認した。そして。
「どうしてこんなにも当たるのかしら!?」
「私も他の人には無いものを持っているからね」
明らかに自嘲の意味合いを含む言い方でそう言った。
そう、これは期せず得た能力なのだ。本当は、こんなものは無くても良い。
こうやって、明らかに人間離れしたものを持っていれば、きっと誰からも拒絶されるに違いない。そもそも、私はいつまでも理想郷なんていう叶う筈の無い夢を抱いていた。それが、周囲からはいつまで経っても成長しないように映ったのだろう。だからなのか、私は霊的なもの、空想的なものに強く興味を引かれるのだが、つい昨日連れ出されたのは私をどこか遠くに追いやる為なのか、などと思い始めていた。
「だから、私は誰とも一緒でない。一緒で無いから、誰も要らない。さあ、帰ってちょうだい」
「すっごく便利よね。私の時計って、すぐ狂うけど、何でだろ?」
「ねえ、話聞いてる!?今私なんて言ったか……!」
「聞いてなかった」
そこまできっぱり言うことではない。が、彼女はそう言った。
「あのねえ……」
「というか、私にはどうして……」
一時の沈黙。その沈黙が私には辛かった。
「貴女が、拒絶するか分からないわ」
その辛さは、その言葉を以って、鋭く私の心に突き刺さった。
「は…はは……何言ってるの……?」
「貴女ねぇ、さっきから私に『放って置け』だの『帰れ』だの言ってるけど、本当に誰も要らないの?私にはね、ただの強がりにしか聞こえないわよ」
「強がりなんかじゃない!」
私の声が、辺りに響く。その響きが、何となく怖く感じられた。
「嘘ね。少なくとも私はそう思う。だって、自分で気付いていないでしょうけど、貴女の目はすごく悲しそうよ。自分の中ではそういうのを隠そうとしているけれど、身体は正直よ。ねえ、もしかして、友達、いない?」
「……」
「やっぱり。だったら、私が貴女の友達になってあげる」
「え……でも……」
「何言ってるのよ。『過去から来た人と友達になった』なんて言ったら一生の自慢よ」
「自慢になるかい」
「……。ちょっと、何よ、それ。もう!こうなったら無理矢理でも連れて行こうかしら!」
「それだけは勘弁!」
「嘘、嘘よ。さて、と……あら?いつの間にか雨が止んでたわ」
雨。それは、私の心を表していたのか。
「丁度いいわね。で?どうするの?」
「……もう、仕方ないか」
私はゆっくりと立ち上がった。ずっと座っていたからなのか、すごく身体が痛かった。そこに差しのべられる手。その時の彼女はとてもにこやかだった。その笑顔につい笑みがこぼれる。そして、私がその手を取った。
「ねえ、貴女の名前は?」
私が立ち上がると、直ぐに彼女が尋ねた。
「宇佐見蓮子よ。貴女は?」
「私?マエリベリー・ハーンよ」
それが、「彼女」との出逢いであり、そして、私を何から何まで変える事になった。
* * *
それから、私はメリーの大学に入る事になった。奇しくも、私が元の時代で通っていた大学と同じだった。そこに、私の記録が未だに残っていたのだろうか、教授達からは驚きの声の連続だった。それも当然だ。何せ、100年前に突如姿を消した学生がその時の姿のまま目の前に現れたのだから。そこで彼らは、私が通学するのを許した。
それからの生活は多少はましだった。友達というものがこれまで誰一人居なかった中、メリーという友達と暮らす事になったからだ。
* * *
その後……
「ええと……ここでいいの?」
「確かに同じ道を通って来た筈なんだけれどなぁ……100年でこんなに神社って荒らされるのかしら?」
マエリベリー・ハーンとの出逢いから、既に1年は経っていたであろうか、私とメリーは博麗神社に来ていた。が、目の前に今ある博麗神社はものの見事に崩壊していた。
「そういえば……博麗神社が崩壊したって何か書いてあったっけ」
「それっていつ!?」
「100年前」
メリーは時にとても『外した』発言をする。丁度今みたいに。
「100年前のいつよ!」
「そういえば、確か……2008年の……」
「その時はまだ向こうにいたわよ!!」
メリーの服を乱暴に掴んで前後に服が破けかねないほど激しく揺する。
「や、やめて!落ち着いて!」
「むう……で、何が原因だったの?」
メリーが手にしていた鞄からファイルを取り出した。そこにはかなりな枚数の紙が綴じられていた。恐らくその中身は殆どが私達が調べた事のメモで埋め尽くされているだろう。
あの日から1ヵ月位経った頃、メリーが突然こんな事を言い始めた。
『私ね、色々な所に行って、そこで境界暴きをしているのよね』
その前に聞いていたことだが、メリーは『結界が視える』能力を持っているらしい。が、その視える物が結界ではなくて空間に出来た歪みで、それを勝手に『境界』と名付けて、趣味でそれが見えそうな所を巡っているらしい。傍から見ればどこかおかしく見えるのだが、本人はこれで結構本気だったりする。何しろ、これまで何十回もその目的で旅してるというのだ。
で、その後。
『蓮子も、一緒に行ってみる?』
つまり、メリーの趣味での旅行に私を連れ出そうとしたのだ。
その時ははっきり言って迷惑だった。本人には言ってないけれど。私は、帰る方法を見つけようとしていた。しかし、一向に見つからず、かなりストレスが溜まっていた頃合いだった。本人は気分転換させる気だった。そして、その時は移動手段に電車、しかも、何故か予約が必要だったのだが、何と、メリーは勝手に予約していたのだ。しかも、2人分を!
流石にそれには驚いた。そこまでするのか、と本気で聞いてみたかった。結局その時は踏み止まったが。
それから今に至るまで、色々な事があった。例えば、旅費の話。メリーがただでさえ少ない私の所持金から半分位援助で出して欲しいと言った時には先程みたいにメリーの服を掴んで激しく揺すっってやった。その後メリーが具合を悪くしたりして、とにかくただすんなりと今日に至れなかった。
さて、話は元に戻して、メリーがそれらしいメモを見つけて、それを読み上げた。
「『・博麗神社は3度崩壊している。そのうち2度はほぼ1ヶ月の間に起こっており、さらに崩壊から1度目は数日、2度目は次の日に、誰も修理していないのにも拘らず修復されているのを目撃されている。しかし、3度目の崩壊以降、修復の目処は立っていない。なお、全て地震が原因とされている。』と、いう事なのよ。で、続きにこれだけが書いてあったの。『地震とは言えども、非常に狭い地域のみの地震だった』とね」
「それじゃあ気づきやしないわね」
と、そこで溜息を吐いた。
メリーと私は境内だったところに足を踏み入れた。まだ石畳は残っていたが、大分風化しており、ひび割れや、1個だけ石が抜けている所が結構あった。
母屋はどうやら柱が折れたらしく、真二つに割れた柱が外に飛び出していた物もあった。
その、屋根が落ちてきたときの衝撃はもの凄かったらしく、周囲の石畳の石がそのまま飛び抜けていたりした。
特に酷いのが鳥居だ。朱塗りは地震の衝撃からか、かなり剥がれ、さらに根元から折れて、無残にも横たわっていた。鳥居の周囲が赤くなっていたのはその為だろう。
ただ、誰か居たという痕跡が全く見つからなかった。それは流石に不自然だと思った。神社は大体一人は居るものではないかと思ってたからだ。
「うーん……無人だったのかな?」
「それは有り得ないわ。だってここは神社よ?だったら、大体一人は……」
「そうとも限らないわよ。結構あるの。誰も居ない神社が。蓮子の時代にはそういうのは無かったの?」
「無いわね」
「そっか。それより、ここは結構歪みが見えるわ。あっちにも、こっちにも……」
「じゃ朝、一番多いのは?」
そう言って、母屋の方に駆け寄ったその時――
「きゃあっ!?」
突然何かに強く引っ張られる感覚がして、一気に意識が真っ暗になった。
メリーが何か言っていた。多分消えて行く私を引き止めようとしたのだろう。しかし、そんなメリーの思いを裏切るように、私の意識はメリーの声を聞かずに完全に切れてしまった。
* * *
「そのやり方は多少乱暴じゃないか?」
「……でも、こうするしかないのよ。私でも『向こう』から引き寄せるためにはどうしても『神隠し』をする必要があるのよ」
「神隠し、ねぇ……まあ、私がどうこう言える訳は無いし、とりあえず上手くいけば良いんじゃないか?もう後は私が割り込むなんて事はしないからさ、後はあんたが満足できるような結果を残しな」
「……気になることが一つ。貴女、女よね?どうしてそんなに男口調なのかしら?」
「放っとけ」
* * *
目が醒めると、そこは昼になっていた。それ自体は何ら不思議ではない。しかし、そこには明らかな変化があった。
「博麗神社が……直ってる!?」
しかも、辺りは草木が生い茂る森は在れど、神社の周囲に在るだけで、つい先程よりも神社の境内は広い。そして、復興している博麗神社は見覚えがあった。
「1年前と見た目は変わらない……でも、何?この違和感……見た目は変わってないのに、何か合わない……」
その時だ。母屋から人影が出て来たのは。
「やっと目が醒めたか。ずいぶんと長い間そこで寝ててさ、それで『起こすな』って言われてさ。さ、こっちに来て、中に入りな」
中から出てきたのは珍しい巫女の服――これも見覚えがある――を着た少女が、ぜんぜん似合ってない男らしい口調でそう言ってきた。そして、私の服を見た。私は石畳の外で寝ていた。彼女の言葉から推測できる通り、私の服は汚れていた。
「うー……」
「そら、着替えな。何か知らないけどさ、多分風呂場の近くに着替えがあるから」
彼女に催促されて、私は着替えるために風呂場へ向かった。案外すぐ見つかり、着替えを目にした途端、思わず中途半端に「えっ」と声を挙げてしまった。
その着替えは、今私が着ている物と変わらなかったのである。
「何で!?」
これを見て誰もが疑問に思うだろう。しかし、今はとりあえず着替えることにした。
「ん、着替えて来たか。さ、そこに座れよ」
「一つ疑問が。何で男口調なのですか?」
「気にするな」
気にするな、と言われても気になるのだからしょうがない、と言いかけたがそれは踏み止まった。それより、1年前の巫女とは全然違う事に気付いた。それに、私はタイムスリップした身、もしやと思って尋ねる。
「今は……西暦何年です?」
「え、え、えーと……」
「西暦21XX年よ。憶えなさい」
突然、別の人の声が聞こえた。そして、どこからともなく黒い物体が現れ、そこから女の人が現れた。
その人を見て、私は驚いた。そしてつい、こう言ってしまった。
「メリー!?」
総、確かにその女の人はマエリベリー・ハーンと似ていたのだ。しかし――
「私は八雲紫。貴女の言う『メリー』とは別人よ」
そう言われて、少しがっかりする。しかし、それも仕方ない。メリーはここには居なかったし、それに、メリーが私と一緒に『何か』に巻き込まれたはずが無い。
それでも、私が驚いたのはまだ別な理由があり、この人も、1年前に見た覚えがあった。
だが、私の頭は既に混乱を始めた。
「い、今は21XX年?」
「そうよ。宇佐見蓮子さん。100年振り、いや1年振りかしら?」
「おい、それって100年前って言っただろ?」
「それはいいの。でも……まさか本当にタイムスリップしてたなんてね……不安はあったけど、まさか本当の事になるなんて思ってもいなかったわ」
つまり、私がタイムスリップしたのは偶然か。
「それにしては……100年経ったと言っておいてどうして生きてるんですか?」
「それはね、私が妖怪だからよ」
「ええっ!?」
* * *
そして、私にとって最初で最後の『異変』を経験する事になる。それは幻想郷のではなく寧ろ……
『タイムスリップは不可能である』
でも、それは私にとっては、ただ幻想を持たない大人の言い訳にしか思えなかった。
そして……
私の幻想は、思いもしない形で始まった。
* * *
目覚めた時、そこは、見たことが無い森の中だった。
突然の出来事だった。不意に意識が途切れたかと思いきや、すぐ意識が戻り、そうしたらこんな森の中、一人で立っていたのだから。都会暮らしが長い私にとって、こういう木々が生い茂った森というものは非常に不気味だった。
「何で……私はここに居るんだろう……」
そう、口にした瞬間だった。後で、何かが動いた気配がしたのは。
「誰!?そこに居るのは?」
私の声が響くばかりで他は何も音がしない。
「誰か居るの?居たら返事して!」
………………ガサッ。
「え?」
…………………………ガサ、ガサ、ガサ。
「え…な…何よ……」
そして、出てきたのは……
牙をむき出しにして襲い掛かろうとした獣であった。
即座に分かった。このままでは噛み殺される!そう思ったときには既に、私は一目散に襲い掛かってくる獣から逃げた。何もかも分からない森の中で、とにかく思いついた方へ、何も考えず、ただ逃げる事しか考えなかった。
しかし、やはり私の方がこんな状況の中で圧倒的に不利だと言うのは冷静になっていればすぐ分かった事だ。だから、すぐ追いつかれると思った。しかし、後ろを見ると、私の眼には暗い森しか映っていなかった。
「ハア、ハア、ハア……に、逃げ切った……のかな……?」
私は近くにあった木に片手をつき、そのままその木を背に座り込んだ。
「確かいきなり気を失って、それですぐ眼を覚ましたらここにいて、確か夜だったわよね……あの時……って夢じゃないのかしら!?」
空を見上げると、僅かに見える木々の隙間から幾つか輝くものが見えた。星である。しかも、空が闇に染まっている。この森の暗さも今が夜であることをよく示していた。
私は携帯を開いた。画面には『圏外』と表示されていた。それはこのような森の中、そこまで電波が届いてくれる筈も無い。問題は日付だった。画面が示している日付は――
「うそ……あの時からまだ1時間も経っていないの……?」
考えれば考えただけややこしくなる。今から1時間も経たない前、私は突如気を失い、その直後、眼を覚まし、そのさらに直後、なぞの獣に追いかけられ、そして今へと至る。これは夢だ、夢でしか有り得ない、そう自分に言い聞かせるのだが、地面の感覚はしっかりとあるし、今、背にしている木もその表皮の感覚はリアルだ。
「これって夢よね……いや、絶対に夢だ!…………あ痛たッ」
試しに自分の頬をつねってみた。結果、しっかりと痛かった。
「夢じゃないの!?これ!?もうっ!」
文句を言いつつ、少し休む事にした。
――後になって思うのだが、この時、最初からよく考えていれば良かった。今、逃げ始めてから僅か10分と経っていないのに、こんなにあっさりと逃げ切れるだろうか。
「一体何なのよ……!ここがどこか分からないのに、いきなりあんな凶暴なあッ……!」
完全に油断しきった私の頭の横を、何か鋭いものが掠め、後ろの木に直撃した。
その一瞬の出来事に、思わず固まってしまう。私の目の前に居たのは、ついさっきまで追け回していた奴だったから……
その瞳が私の眼と合う。そして、鋭い爪が付いた前足を振り上げた……
そこで、私の意識は途切れてしまった……
* * *
「お、目が覚めたか」
次に意識が戻った時には、私はまた何処か知らない所に寝かされていた。
「準備もせずに林の中に入って行くなんて、命知らずも程々にしたほうが良いぞ」
「あ、あの……」
「おっと、あんまり無理するな。相当逃げ回ってたのか。服がかなり汚れてた。まあ、あそこはあまり知能が高くない獣が居るから、次にあそこに行こうとするなら、ちゃんと準備しないと」
「わ、私……」
「とりあえず、何か話があっても、今は休め。ああ、そうだ。私は上白沢慧音。もし何かあったらすぐ呼んでくれ」
慧音と名乗る女性は、その言葉を残し、この場を去った。
あんな状況からよく生き延びていたな、と思う。多分、あの瞬間、誰かが私を見つけて、そして助けてくれたのか、あるいはあの獣が勝手に逃げていったのか。まあ、どちらにしろ、今、私は生きているというのは間違いない。そして、傍に誰か居てくれるというだけで、とても安心できる。
「それにしても、ここはどこなんだろ……」
だが、考える時間は貰えなかった。すぐに疲労感が押し寄せ、睡魔が襲ってきた。それに打ち勝つ気力は無く、そのまま意識は闇の中へ……
* * *
「すると、彼女は『神隠し』されたって事か?」
「そう。ところがねぇ……」
「何だ?何か問題でも?」
「彼女を『神隠し』する気は全く無かったのにね、見てみたらこっちに来ていたのは彼女だったのよ」
「本来なら別の人が、という事になるのか?」
「そう。だから、彼女はさっさと帰してても良いわよ」
「?本当に良いのか?」
「ええ、それは勿論でしょう。では、私はする事があるので~」
「……逃げた、のか……?」
――――さて、どうするべきか。
最初に考え始めたのはその事だった。
今、隣の部屋で眠っている少女は、どうも外から来たらしい。その事を伝えた八雲は胡散臭い妖怪である以上、全て鵜呑みにするのはどうかと思うのだが、彼女は里の中でも見かけたことが無い服装をしていたし、第一、ここの住人なら、あの林に装備無しで入っていくのはどれだけ無謀か分かっている筈だ。と、言う事は、彼女が外から来たというのは本当か。
「しかし、そのまま帰しても良いものか……」
慧音には、漠然ともしない不安があった。それは、むしろ紫の態度が気になったからである。そもそも、『神隠し』をする相手を間違う事が、本当にあるのか、そこが疑問に思っていたのだが、どうにもはぐらかされたように思えるのだ。
「まあ、『帰して』と言われて帰さない訳は無いのだが、まあ、後々鉢合わせたら聞き出すとするか」
* * *
「あそこに見えるのが博麗神社だ」
「あそこって……ああ、あの小高い所の?」
その次の日、私は元居た場所、つまり私が、少し前に慧音から聞いた『神隠し』というものをされた場所に帰してくれる事になった。で、何でも、『麓の神社』からでないと、外に出られないという。それは、この辺り一面が結界で覆われているからで、その神社が唯一、結界の外と中を繋ぐ、いわば、通路であるらしい。
「ところで、ついさっき、ここについて軽く触れたが……」
神社への長い石段を登る途中で慧音が功話し掛けてきた。
「それについては、決して他人には話してはいけないぞ」
「え?でも、それはちょっと……第一、戻ったら戻ったで色々と問いただされるのは目に見えてますから。しかも、それがしつこいったらありゃしないので……」
「それは大変そうだな。ならば……」
慧音は、私にある言葉を耳打ちした。
それは、『何処かの山奥の集落にお邪魔していたとでも言っておく』というものだ。
「それなら大丈夫、かも」
「多分な。それより、もうすぐで神社に着くぞ」
大体10分は昇っていただろう。石段を登りきったとき、まず最初に目に飛び込んだのは朱塗りの鳥居だった。
「うわ、これはデカイ」
「そんなに珍しそうに見るものなのか!?」
珍しそうに、か。
私は都会生まれの都会育ちで、とにかく無機質なものばかり見てきた。で、多少『自然』というものは見たことがある。しかし、私は、これまで神社や寺院に行った事がほとんど無く、ここ2、3年は一切行っていないため、どうにも神社というものが珍しく映ってしまうのだ。しかし、慧音の言い方からして、この辺りにいる人にとって博麗神社というものは当たり前のもの、らしい。
その、朱塗りの鳥居の先には、2人の人影があった。どうも2人で何か口喧嘩をしているようだった。
「やれやれ、またか」
慧音が大きく(多分わざとしている)溜息をついた。『またか』と言うだけあってこの2人の口喧嘩はいつも起きているようだ。
「だーかーらー、また面倒な事起こすんじゃないわよ!」
「もう!話を聞きなさい!」
「話なら散々聞いたわよ!何回聞いたってあんたが悪いって事が変わると思う?」
「すぐ決め付けないのよ!それがあなたの悪い癖」
「な……!言ったな!」
「なんだか、最初は口喧嘩に聞こえてたけど、今聞いてたらただの罵り合いに聞こえる……」
「やれやれ……おい、2人とも、そこで止めにしろ」
慧音のその言葉で2人は私の方を同時に向いた。
「……で?この人ね、あんたが間違って連れてきたのは」
「そうよ。さあ、こっちに来て。準備はもうできてるわよ」
そして、紫のドレスを着た女の人は、私の手を取って、母屋の裏に連れて行った。
「災難だったわね。いきなりここに連れて来られて。しかも、凶暴な輩が沢山居る所に。でも、これで大丈夫よ」
そう言って、その人は、私の目の前に大きな黒い物を出した。
「この中に入れば、後は勝手に元居た場所へ戻るわ。それと……」
「ここの事は他言無用、ですか」
「む、知ってるのなら別にいいわ。さあ、誰かがきっと心配してくれているでしょう。早く帰りなさいな。ところで……貴女の名前は?」
「私?私の名前は……」
* * *
「ああ……名前ぐらい聞いたって良いじゃない。別に大した事じゃないし」
「というか、彼女がまた来るとは限らないんだぞ。私は極力余計な事は覚えないほうが良いと思うんだが」
丁度そこへ、紫が戻ってきた。
「八雲、彼女はどうなった?」
「彼女?無事に送り届けたわ。これでひとまず安心」
「よく言うわよ。あんたが間違って『神隠し』をしたんでしょ。あんたが片を付けるのは当たり前」
「む……」
そう言われたら、紫に反論の余地は無し。
「さて、私は帰るが……」
慧音がわざとそこで区切って言う。
「口喧嘩も程々にな」
「余計なお世話よ」
「む、酷いわね」
こういう時だけ何故か息が合う。
霊夢は箒を取り出し、境内の掃除を始め、紫はスキマを開いて何処かへ行く。しかし、その紫の表情が何か釈然としない。何か引っかかる事があるのだろうか。霊夢もそれには薄々感じているだろう。その時は、何故違う人を『神隠し』してしまったのか、そう考えているとしか思い付けない。
しかし、それについて霊夢が口出しできる訳が無いので、彼女はただ黙っているしかなかった。
* * *
ここに来て、ようやくこれまでの流れを掴めた。
まず、私は友人のグループに蓮台野――と私は聞かされていた――に連れ出された。
森の中には複数の道があるが、その中から、ある神社に繋がる道を選んだ。その神社こそ、博麗神社である。
で、その道の途中で、突然気を失った。
これが大雑把な流れだ。友人達は、恐らくまだ麓の旅館に居るだろう。今回の旅行……半ば強制的に連行されたこの旅行は、一泊する予定で、多分彼らが予約した旅館に居るだろう、あるいは麓まで歩いていれば、そのうち会うかもしれない。まあ、とりあえず急ぎ気味に麓に行こうと考えていた。
そこで私は、不意に携帯を開いた。
「20XX/X/XX 8:09」
時刻表示には『確かに』そう出ている。
確かにそうなのに、全く違う。
麓の町、たった一晩でここまで変化するか?
昨日は木製の建物がまだ建っていたが、たった一晩で全て跡形もなく消し飛ぶか?
いや、それは有り得ない。
ならば、何故……?
不安になって、昨日泊まる予定だった旅館の場所へ向かった。
そこは……旅館ではなかった。全く別の建物に変わっていた。
何で……?
一体何が起きたか分からない。ただ混乱するしかない私であったが、このあと出会う物が、私に止めを刺す。
少し歩いて、何かの本屋に入ってみた。本屋というものの雰囲気も違う。
そこの壁にはカレンダーが貼ってあった。
そのカレンダー……そこの書かれてあるものこそが、私にどうしようもないショックを与える。
カレンダーには、こんな事が書かれてあった。
「21XX年」
それを見た瞬間、私の思考回路はショートし始めた。これが、現実なのか、それともただの夢なのか、とにかく現実味が無かった。何しろ、100年も後の時代にタイムスリップしていることになっているのだから!
もし、これが本当なら、私が知っている人は誰も居ないわけで、例え私の家に帰ろうとしても、そこには誰も居ない……いや、もう私の家自体が存在しないのではないか。だとしたら、私には帰るべき場所が無く、身寄りも無く、私のすべてのモノが無く……
だから、これが夢であると願うのだが、現実とは、夢をこうもあっさりと打ち破ってしまうのか。
何かに触れば何らかの感触はあるし、他人にぶつかれば痛みを感じる。もしこれが夢ならば、何の感覚も働いていないはず。何も感じられないはず……
だから、絶対にそれを受け入れられない、絶対に受け止めてはならないと思うのだが、たった一つの結論を受け入れるしか、受け止めるしかない。
――私は、100年後の未来にタイムスリップしていた――
雨が降っていた。それは、最初は小雨程度だったが、次第に激しくなった。道行く人々が急いで傘を差すなり走り出すなりしている中、私は道の隅で誰の気にも留められず独りで座り込んでいた。
「何で?どうして?どうして私がこんな目に?」
何もかも信じられなかった。今起きている事がとても信じられなかった。
これが、現実であると結論はついているが、どうしてもそれを認めたくなかった。それは、今感じつつある『孤独』に対する恐れだ。
人は、孤独では生きられない。誰かがそう言っていたのを覚えている。そして、今私は一切『生きている』と感じる事が出来ないのである。
かれこれ1時間が経っていた。僅か1時間の間に、ここまで精神的ダメージをここまで与える事が、この世に今私が陥っている事以外にあるだろうか……
空を見上げてみると、そこには、これまで見てきた星や月が、一切変わらずにある。どうやらこの雨は天気雨のようだ。そういうものは初めて見た。雨の中100年間ほとんど変わる事の無いものを見たら、普通なら感嘆するだろう。
しかし、私は違う。
私の視界に、星と月が入ると、これまで見たことの無い物が勝手に私の視野に現れてくるのだ。
日付と、時刻。
私が今どこに居るか。
私自身に異常が起きているのだ。もはやこの状況は危険だ。
かといって、私に何ができる?何もかも分からない状況で、私は何も出来やしない。
とにかく、この町を出ようと、立ち上がろうとした瞬間――
「貴女は……なんでここで鬱ぎ込んでいたの?」
目の前に『彼女』が立っていた。
「貴女には関係ないじゃない」
「ちょっと目に入ったから……すごく寂しそうにして……何かあったの?」
「放っておいてよ」
「む、すごく機嫌悪っ」
機嫌が悪い……客観的に見ればそうなのだが、私はとても鬱ぎ込んでいた。訳も分からぬ内に、100年も後の時代に飛ばされていたのだから。
そんな私を見かねたのか、彼女は大袈裟に溜息をついた。
「本当に、もうっ。ねぇ、じゃあさ、あなたは自分独りで何でも解決しようとする人?」
その問い掛けに、面を食らってしまう。
「でも、それってすごく大変じゃない?私はそう思うの。だからさ、誰かに打ち明けてみたら……どうかしら」
「……だれもいない」
「?」
「私が知っている人は誰もいない」
「あら?もしかして浮浪者?それはそれは」
彼女は多分本気で言っているのだろう。でも、その表現は的を射ているわけで――
「浮浪者……か。なら私は時代の浮浪者ね」
それを肯定せずにはいられなかった。
「……ねぇ、あなた一体何者?」
「過去の人。それも100年前の。タイムスリップして来たのよ。どう?信じられるわけ……」
「あるわ」
その声は、これまでとは違って、妙に力が込められていた。
「この世にはね、信じてはいけない事は無く、信じられない事も無い。それをどう受け止めるかが問題なのよ。例え他の誰もが信じられないような事でも、私はそれを信じる事が出来る。まあ、それは……私が周りと「違う」からなんだろうけれど……」
そう言って、彼女は、右手で顔を被い、親指と人差し指の隙間から右眼を覗かせた。その金色の眼は、私の方に真っ直ぐ向けられている。
「さっき、自分の事を、『過去の人』と言ってたわよね。じゃあ、あなたの周りに纏わり付く『歪み』は、時間の流れが違うからなのかしら?」
「『歪み』……?それって一体何……?」
「真っ黒い線みたいなもの。何でか知らないけど、私は、昔から『歪み』が視えるのよ」
つまり、それは見えない何かが視えるということだ。
「へぇ。じゃあ、時計も何も見ないで今の時間を当ててあげようか?」
「そんな事ができるの?」
「ええ。今は……10時XX分」
その言葉に、彼女は驚き、そして自分の携帯を取り出して、時間を確認した。そして。
「どうしてこんなにも当たるのかしら!?」
「私も他の人には無いものを持っているからね」
明らかに自嘲の意味合いを含む言い方でそう言った。
そう、これは期せず得た能力なのだ。本当は、こんなものは無くても良い。
こうやって、明らかに人間離れしたものを持っていれば、きっと誰からも拒絶されるに違いない。そもそも、私はいつまでも理想郷なんていう叶う筈の無い夢を抱いていた。それが、周囲からはいつまで経っても成長しないように映ったのだろう。だからなのか、私は霊的なもの、空想的なものに強く興味を引かれるのだが、つい昨日連れ出されたのは私をどこか遠くに追いやる為なのか、などと思い始めていた。
「だから、私は誰とも一緒でない。一緒で無いから、誰も要らない。さあ、帰ってちょうだい」
「すっごく便利よね。私の時計って、すぐ狂うけど、何でだろ?」
「ねえ、話聞いてる!?今私なんて言ったか……!」
「聞いてなかった」
そこまできっぱり言うことではない。が、彼女はそう言った。
「あのねえ……」
「というか、私にはどうして……」
一時の沈黙。その沈黙が私には辛かった。
「貴女が、拒絶するか分からないわ」
その辛さは、その言葉を以って、鋭く私の心に突き刺さった。
「は…はは……何言ってるの……?」
「貴女ねぇ、さっきから私に『放って置け』だの『帰れ』だの言ってるけど、本当に誰も要らないの?私にはね、ただの強がりにしか聞こえないわよ」
「強がりなんかじゃない!」
私の声が、辺りに響く。その響きが、何となく怖く感じられた。
「嘘ね。少なくとも私はそう思う。だって、自分で気付いていないでしょうけど、貴女の目はすごく悲しそうよ。自分の中ではそういうのを隠そうとしているけれど、身体は正直よ。ねえ、もしかして、友達、いない?」
「……」
「やっぱり。だったら、私が貴女の友達になってあげる」
「え……でも……」
「何言ってるのよ。『過去から来た人と友達になった』なんて言ったら一生の自慢よ」
「自慢になるかい」
「……。ちょっと、何よ、それ。もう!こうなったら無理矢理でも連れて行こうかしら!」
「それだけは勘弁!」
「嘘、嘘よ。さて、と……あら?いつの間にか雨が止んでたわ」
雨。それは、私の心を表していたのか。
「丁度いいわね。で?どうするの?」
「……もう、仕方ないか」
私はゆっくりと立ち上がった。ずっと座っていたからなのか、すごく身体が痛かった。そこに差しのべられる手。その時の彼女はとてもにこやかだった。その笑顔につい笑みがこぼれる。そして、私がその手を取った。
「ねえ、貴女の名前は?」
私が立ち上がると、直ぐに彼女が尋ねた。
「宇佐見蓮子よ。貴女は?」
「私?マエリベリー・ハーンよ」
それが、「彼女」との出逢いであり、そして、私を何から何まで変える事になった。
* * *
それから、私はメリーの大学に入る事になった。奇しくも、私が元の時代で通っていた大学と同じだった。そこに、私の記録が未だに残っていたのだろうか、教授達からは驚きの声の連続だった。それも当然だ。何せ、100年前に突如姿を消した学生がその時の姿のまま目の前に現れたのだから。そこで彼らは、私が通学するのを許した。
それからの生活は多少はましだった。友達というものがこれまで誰一人居なかった中、メリーという友達と暮らす事になったからだ。
* * *
その後……
「ええと……ここでいいの?」
「確かに同じ道を通って来た筈なんだけれどなぁ……100年でこんなに神社って荒らされるのかしら?」
マエリベリー・ハーンとの出逢いから、既に1年は経っていたであろうか、私とメリーは博麗神社に来ていた。が、目の前に今ある博麗神社はものの見事に崩壊していた。
「そういえば……博麗神社が崩壊したって何か書いてあったっけ」
「それっていつ!?」
「100年前」
メリーは時にとても『外した』発言をする。丁度今みたいに。
「100年前のいつよ!」
「そういえば、確か……2008年の……」
「その時はまだ向こうにいたわよ!!」
メリーの服を乱暴に掴んで前後に服が破けかねないほど激しく揺する。
「や、やめて!落ち着いて!」
「むう……で、何が原因だったの?」
メリーが手にしていた鞄からファイルを取り出した。そこにはかなりな枚数の紙が綴じられていた。恐らくその中身は殆どが私達が調べた事のメモで埋め尽くされているだろう。
あの日から1ヵ月位経った頃、メリーが突然こんな事を言い始めた。
『私ね、色々な所に行って、そこで境界暴きをしているのよね』
その前に聞いていたことだが、メリーは『結界が視える』能力を持っているらしい。が、その視える物が結界ではなくて空間に出来た歪みで、それを勝手に『境界』と名付けて、趣味でそれが見えそうな所を巡っているらしい。傍から見ればどこかおかしく見えるのだが、本人はこれで結構本気だったりする。何しろ、これまで何十回もその目的で旅してるというのだ。
で、その後。
『蓮子も、一緒に行ってみる?』
つまり、メリーの趣味での旅行に私を連れ出そうとしたのだ。
その時ははっきり言って迷惑だった。本人には言ってないけれど。私は、帰る方法を見つけようとしていた。しかし、一向に見つからず、かなりストレスが溜まっていた頃合いだった。本人は気分転換させる気だった。そして、その時は移動手段に電車、しかも、何故か予約が必要だったのだが、何と、メリーは勝手に予約していたのだ。しかも、2人分を!
流石にそれには驚いた。そこまでするのか、と本気で聞いてみたかった。結局その時は踏み止まったが。
それから今に至るまで、色々な事があった。例えば、旅費の話。メリーがただでさえ少ない私の所持金から半分位援助で出して欲しいと言った時には先程みたいにメリーの服を掴んで激しく揺すっってやった。その後メリーが具合を悪くしたりして、とにかくただすんなりと今日に至れなかった。
さて、話は元に戻して、メリーがそれらしいメモを見つけて、それを読み上げた。
「『・博麗神社は3度崩壊している。そのうち2度はほぼ1ヶ月の間に起こっており、さらに崩壊から1度目は数日、2度目は次の日に、誰も修理していないのにも拘らず修復されているのを目撃されている。しかし、3度目の崩壊以降、修復の目処は立っていない。なお、全て地震が原因とされている。』と、いう事なのよ。で、続きにこれだけが書いてあったの。『地震とは言えども、非常に狭い地域のみの地震だった』とね」
「それじゃあ気づきやしないわね」
と、そこで溜息を吐いた。
メリーと私は境内だったところに足を踏み入れた。まだ石畳は残っていたが、大分風化しており、ひび割れや、1個だけ石が抜けている所が結構あった。
母屋はどうやら柱が折れたらしく、真二つに割れた柱が外に飛び出していた物もあった。
その、屋根が落ちてきたときの衝撃はもの凄かったらしく、周囲の石畳の石がそのまま飛び抜けていたりした。
特に酷いのが鳥居だ。朱塗りは地震の衝撃からか、かなり剥がれ、さらに根元から折れて、無残にも横たわっていた。鳥居の周囲が赤くなっていたのはその為だろう。
ただ、誰か居たという痕跡が全く見つからなかった。それは流石に不自然だと思った。神社は大体一人は居るものではないかと思ってたからだ。
「うーん……無人だったのかな?」
「それは有り得ないわ。だってここは神社よ?だったら、大体一人は……」
「そうとも限らないわよ。結構あるの。誰も居ない神社が。蓮子の時代にはそういうのは無かったの?」
「無いわね」
「そっか。それより、ここは結構歪みが見えるわ。あっちにも、こっちにも……」
「じゃ朝、一番多いのは?」
そう言って、母屋の方に駆け寄ったその時――
「きゃあっ!?」
突然何かに強く引っ張られる感覚がして、一気に意識が真っ暗になった。
メリーが何か言っていた。多分消えて行く私を引き止めようとしたのだろう。しかし、そんなメリーの思いを裏切るように、私の意識はメリーの声を聞かずに完全に切れてしまった。
* * *
「そのやり方は多少乱暴じゃないか?」
「……でも、こうするしかないのよ。私でも『向こう』から引き寄せるためにはどうしても『神隠し』をする必要があるのよ」
「神隠し、ねぇ……まあ、私がどうこう言える訳は無いし、とりあえず上手くいけば良いんじゃないか?もう後は私が割り込むなんて事はしないからさ、後はあんたが満足できるような結果を残しな」
「……気になることが一つ。貴女、女よね?どうしてそんなに男口調なのかしら?」
「放っとけ」
* * *
目が醒めると、そこは昼になっていた。それ自体は何ら不思議ではない。しかし、そこには明らかな変化があった。
「博麗神社が……直ってる!?」
しかも、辺りは草木が生い茂る森は在れど、神社の周囲に在るだけで、つい先程よりも神社の境内は広い。そして、復興している博麗神社は見覚えがあった。
「1年前と見た目は変わらない……でも、何?この違和感……見た目は変わってないのに、何か合わない……」
その時だ。母屋から人影が出て来たのは。
「やっと目が醒めたか。ずいぶんと長い間そこで寝ててさ、それで『起こすな』って言われてさ。さ、こっちに来て、中に入りな」
中から出てきたのは珍しい巫女の服――これも見覚えがある――を着た少女が、ぜんぜん似合ってない男らしい口調でそう言ってきた。そして、私の服を見た。私は石畳の外で寝ていた。彼女の言葉から推測できる通り、私の服は汚れていた。
「うー……」
「そら、着替えな。何か知らないけどさ、多分風呂場の近くに着替えがあるから」
彼女に催促されて、私は着替えるために風呂場へ向かった。案外すぐ見つかり、着替えを目にした途端、思わず中途半端に「えっ」と声を挙げてしまった。
その着替えは、今私が着ている物と変わらなかったのである。
「何で!?」
これを見て誰もが疑問に思うだろう。しかし、今はとりあえず着替えることにした。
「ん、着替えて来たか。さ、そこに座れよ」
「一つ疑問が。何で男口調なのですか?」
「気にするな」
気にするな、と言われても気になるのだからしょうがない、と言いかけたがそれは踏み止まった。それより、1年前の巫女とは全然違う事に気付いた。それに、私はタイムスリップした身、もしやと思って尋ねる。
「今は……西暦何年です?」
「え、え、えーと……」
「西暦21XX年よ。憶えなさい」
突然、別の人の声が聞こえた。そして、どこからともなく黒い物体が現れ、そこから女の人が現れた。
その人を見て、私は驚いた。そしてつい、こう言ってしまった。
「メリー!?」
総、確かにその女の人はマエリベリー・ハーンと似ていたのだ。しかし――
「私は八雲紫。貴女の言う『メリー』とは別人よ」
そう言われて、少しがっかりする。しかし、それも仕方ない。メリーはここには居なかったし、それに、メリーが私と一緒に『何か』に巻き込まれたはずが無い。
それでも、私が驚いたのはまだ別な理由があり、この人も、1年前に見た覚えがあった。
だが、私の頭は既に混乱を始めた。
「い、今は21XX年?」
「そうよ。宇佐見蓮子さん。100年振り、いや1年振りかしら?」
「おい、それって100年前って言っただろ?」
「それはいいの。でも……まさか本当にタイムスリップしてたなんてね……不安はあったけど、まさか本当の事になるなんて思ってもいなかったわ」
つまり、私がタイムスリップしたのは偶然か。
「それにしては……100年経ったと言っておいてどうして生きてるんですか?」
「それはね、私が妖怪だからよ」
「ええっ!?」
* * *
そして、私にとって最初で最後の『異変』を経験する事になる。それは幻想郷のではなく寧ろ……
ここからどう広がり、そして畳まれていくのか楽しみにしています
ただ話内の時間の進み方が少し分かりにくいです。
こういう作品はもっと長めに書いた方が良いかもしれない。
個人的にはあっさりしすぎてるかなと。
それと、これで『前』なんて言ってるけど、『後』じゃ全部纏まらない。
ストーリー的には一区切り付く、程度かな?
一応期待されているようなので、全力で続きを書かせてもらいます。