Coolier - 新生・東方創想話

恋する鬼は止められない

2009/06/24 00:15:52
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 地底と地上を結ぶ境目にある橋の袂で、私は今日も人々を見守る。地上と地底を行き来するにはここを通る必要があるので、妖怪が通り過ぎていくこともよくある。それはいいのだが、少し前に地上のふざけた神様が余計な事をして、異変を察知した人間がこれまた余計な事をしてくれたものだから、最近ではここを通る人数が異様に増えてしまった。



 彼らの顔を見ていると、無性にイライラしてくる。べつに彼らの事が気に入らないわけではない。けれど、あのうれしそうな顔を見ていると、何故かだんだん腹が立ってくる。


 きっとこの後楽しそうに笑うのだろう。一日中笑って遊んで、「疲れた~」とか言いながらまた幸せそうな顔をするのだろう。



 彼らに不幸になってほしいわけでも、自分もあんな顔をしてみたいというわけでもない。だけど、この心に燃える嫉妬の炎はいつも私を捕らえて離さない。まるでこの身を焦がすような思いを押さえつけながら、私はその日もいつものように橋を眺めていた。






「やあ、元気かい?」

 ああ、またこいつか。
 声をかけてきたのは鬼。名を勇儀という。
 以前からこいつは勝手にここにやってきては、一人で色々と話し、ある程度話すと帰っていくのだが、それだけでは飽き足らず、この前などは私の事を好きだと言いだした。

 別にこいつの事が好きなわけではないが、こう毎日来られては相手にしないわけにもいかない。私はため息をつきながら彼女を一瞥した。

「何か用?用がないなら帰ってくれるかしら」
「なんだよ、つれないなぁ。せっかく誘いに来たのに」
「はぁ?勝手に決めないでよ。私はどこへも行かないわ」
「そう言うなよ。あんた、この辺りから出た事ほとんどないだろ?いつもいつもそう難しい顔してたら疲れるぞ?」
「別に疲れてないし、ここから離れる気もない」
「むぅ……なら仕方ない」

 そう言って勇儀は後ろを向いた。
 やっと諦めたか。それにしても珍しい。普段はもっとしつこく言ってくるのに。



 そんな事を考えていた刹那、私の体がふわりと浮いた。
 勇儀は私を軽々と持ち上げると、小脇に抱えるようにしていた。

「ば、馬鹿!降ろせ、降ろしなさい!」
「だめだよ、今日は絶対一緒に行くって決めたんだ。ああ、こっちのほうがよかった?」
 そう言うと、この莫迦は私を前に抱え、私の膝の裏と背に腕を差し入れた。

 所謂、お姫様抱っこというやつだ。

 この時の私の顔は、たぶん真っ赤だったと思う。何故か知らないが、体中が熱くて仕方なかった。

「やめろ!こんなのいやだ!」
「どうして?」
「だって……恥ずかしいから……」

 私の言葉を聞くと、勇儀はうれしそうに笑いながら私を降ろした。
 その笑顔は本当に素敵で、まるで心が洗われるようで。

「なあパルスィ、一緒に来てくれるかい?」

 卑怯だ。鬼のくせに、こいつはずるい。こんな事をされたら、断る事なんて出来ないじゃないか。

「ま、まあいいわ。それで、どこへ行くの?」
「ああ、久しぶりに山の様子でも見に行こうかと思ってね。あのスキマに見つかるとああだこうだと怒られそうだから、デートしてることにすれば問題ないだろ?」

 なんだよ。それじゃあまるでデートがついでみたいじゃないか。こいつと本気のデートがしたいだなんて思ってないが、それにしてもひどい。

「ずいぶんな考えね」
「そう言うなって……ああ、もしかしてデートがおまけみたいだ、とか思ってる?」
「そ、そんなことない!あんたとどうしようが関係ない!ただ、あんたがどうしてもって言うから行ってやるだけで……」
「ふふ、じゃあそういうことにしておこうか。さあ、出かけよう」

 そう言ってあいつは先に行ってしまう。置いていかれるのは心外なので、私は後に続いた。

 そんな私を見て、なんだかあいつがうれしそうに微笑んだような気がしたが、きっと気のせいだろう。



   *   *   *



 山に入ると、夏の香りが漂ってきた。私には地上にいた頃の記憶はないが、こういう感覚は意外と憶えているものだ。
 河の水は澄み、木々の緑が美しく輝く。季節の美しさを感じられていいのだが、一つだけ問題があった。


 暑い。


 地底は灼熱地獄跡のほうに行かなければひんやりした場所だし、ここまで暑くなることはまずない。季節があるのは素敵な事だが、こういう問題があったか。


「大丈夫かい?これ、使うといいよ」

 私がへばっていると、勇儀がハンカチを貸してくれた。
 なんだ、こいつにも人を気遣う事が出来たのか。

「あ、ありがとう」
「ふふ、へばってるパルスィもかわいいなぁ」
「だ、黙れ!」
「はいはい」

 駄目だ、こいつといるとペースが乱される。まるで、私がこいつの事を好きみたいな気持になってしまって――いや、そんなことない。私はこんな奴好きじゃない。こんなやつなんか……







「と、ととととと止まれえええ!!」

 見ると、一人の天狗が私達の前に立ち塞がっていた。犬なのだろうか、尻尾と耳がある。髪と同じ銀色の毛を生やすそれらは怯えたように震えながらも、勇ましく思える何かを感じさせた。


「おや、哨戒か。以前よりも早く来るようになったんだね」
「い、いくら貴女様が鬼であっても、お連れの方は山に入れられません!」
「生意気ね、この犬」
「そう言うなパルスィ、こいつらも組織の中で大変なのさ。ときに白狼天狗よ、私達を黙って通す気はないかい?何ならいっそのことここで……」
 勇儀が拳を握る。白狼天狗とやらは盾を構え、戦闘に入る気のようだ。彼女の一撃は、あの程度の盾では防ぎようがない。勇儀が本気で打ち込めば、きっとあの天狗は盾ごと砕け散ってしまうだろう。


「お止めください!」


 緊迫した空気を、上空からの一声が打ち破る。空から舞い降りた鴉天狗は白狼天狗と私達との間に立った。声からして、以前あの巫女が持ってきた珠から聞こえていた声の主のようだ。

「久しぶりだね、文。以前は変な珠から声だけしか聞いてなかったし」
「勇儀様もお変わりなく。あの時は失礼致しました。ところで勇儀様、今日は何用でございますか?」
「いや、ただ山の様子を見に来ただけさ。山の神様っていうのも見てみたかったし」
「成程。でしたら、どうぞお通りください」
「ああ。……そうだ、そこの白狼天狗、名前は?」

 震えていた天狗は一瞬ビクッとなったが、すぐに冷静さを取り戻して答える。どうやら、仲間が来て落ち着いたらしい。

「犬走椛です。ご無礼をお許しください、勇儀様」
「ああ、気にしてないよ。椛、いい覚悟を見せてもらった。これからも頑張りな」
「は、はい!」

 椛という名のその天狗の顔が輝いていた。それを見て、私はなんだか彼女が羨ましくなった。それがどうしてなのかはわからない。けれど、この羨望は妬みに変わって、私の心を蝕んだ。
 だから、ついひどいことを言ってしまった。

「ねえ、こんな犬放っておいていきましょうよ」
「犬ではありません!彼女は狼です!」

 隣にいた文が何やら怒っている。
「失礼ですよ、パルスィさん。彼女を犬と呼んでいいのは私だけです」
「文様、ひどいです……」
 ひどいと言いながら、椛はうれしそうにしている。ああ、そういうことか。
 これでは、これ以上言っても無駄だ。そう考えて、私は平謝りしながら彼女達に背を向ける。

「ごめんなさい。それじゃあね」
「悪かったね、お前達。またいずれ酒でも呑もう。さて……おーい、パルスィー」
 天狗達にそう言って、勇儀は先に歩き出した私を呼び止める。どうせ追いかけてくると思っていたので、私は止まらずに歩き続けた。そんな私に、彼女は大声で呼びかける。


「パルスィ、神社はこっちだぞー!」









 それから山頂の神社に向かう間、私は妙な感覚に苛まれた。
 私は、絶えずあれこれと話しかけてくる隣の鬼の事を考えていた。

 なんだか、自分で自分の事がよくわからなくなった。私は、勇儀の事が好きではない。確かに彼女はよくしてくれるし、感謝もしている。だけど、私は彼女に恋愛感情を抱いた事などない。彼女には悪いけど、私では彼女の想いに応えられない。

 昨日まで、私の心はそう決まっているはずだった。けれど、今日はなんだか変だ。他の子が勇儀に褒められているのを見て、羨ましく思った。その前だって、頬を染めてしまったり……
 駄目だ、考えれば考えるほどわからなくなる。私は勇儀を好きじゃないはずなのに、彼女を意識している自分がいる。今はもう、まともに彼女の顔さえ見られない。今彼女と目が合ったら、どうなってしまうかわかったものじゃない。




「どうしたパルスィ、具合でも悪いのかい?」
 急に言われて驚いた私は、勇儀の目を見てしまった。

 彼女の純真な瞳が、心配そうに私を見つめる。

「な、なんでもない!」
 恥ずかしくて、私は目を背けてしまった。それを見て、彼女は微笑んで言う。
「そうか。それだけ元気なら問題ないな」
 そう言うと、またどうでもいい話を続ける。

 まったく、わかっているんだかいないんだか。もし私の心に気づいていたら、何か言ってくれるだろうに。まさか、全てわかっていて、それで焦らしているのだろうか。そうだとしたら、相当趣味の悪い奴だ。尤も、勇儀はいつも真っ直ぐな性格だからそんなことできるはずもないが。

 そんなことを思いながら、私は彼女の話を聞いていた。







 そうこうしているうちに、守矢の神社に着いた。成程、かなり立派な造りだ。周りを見ていると、本殿の正面に一人の女性が立っているのに気がついた。
 注連縄と何本かの柱を背負い、腕組みをして仁王立ちしたその姿は威厳に満ち溢れてはいるのだが、どこか滑稽な雰囲気が拭い去れない。きっとこの人が面倒を起こしてくれた神様なのだろう。どうやら、奇抜なのは行動だけではないようだ。

「よく来たね!文から話は聞いてるよ、勇儀にパルスィ。私は八坂神奈子。ここの神様さ」
 神奈子はうれしそうにしている。なんだか、勇儀と話し方が似ているような気がする。
「ああ、よろしく頼むよ、神奈子。ほら、パルスィも挨拶しなよ」
「どうも。」
「こら、またそうやって愛想悪くする。失礼だろ?」
「気にしなくていいよ。それより、来客を祝して今宵は宴会だ。たっぷり呑んでいきな!」
「お、用意がいい!じゃあおよばれしようか。な、パルスィ?」
 宴会と聞いて勇儀は目を輝かせている。きっと私が行きたくないとごねたところで、彼女は一人でも宴に行き呑んだだろう。
「ええ、呑みましょう。せいぜい呑まれない程度にね」



   *   *   *



 宴はまさに地獄だった。
 神様というのは、鉄の肝臓を持っているらしい。ここの神様は二人いるようで、私達を迎えた神奈子の他に少し幼い容姿の洩矢諏訪子という神様が宴会にやってきたのだが、二人とも勇儀に勝るとも劣らない酒豪だった。久々に同等に呑める相手がいてうれしいようで、勇儀のペースもいつも以上に速い。

「くぅ、やっぱり鬼は違うねぇ、諏訪子?」
「ほんとほんと。私達のペースについていける相手なんて萃香くらい……あ、あいつも鬼か」
「まあ鬼の中でも私達四天王に勝てる酒豪なんていないからね。いや、しかしこのくらいの人数で呑む酒もいいもんだ」

 私はあまり酒が強いほうではないので、こういう時にはどうしても傍にいられない。近くにいると必然的に呑まされるので、とてもじゃないけどいられたものではない。
 私は少し離れた縁側で、一人空を見上げていた。
――星が綺麗だ。


「星が綺麗ですね」

 私が振り返ると、緑色の髪をした少女が立っていた。格好からここの巫女であろう事はわかったが、どうしてこの辺りの巫女は腋を見せたがるのだろう。
 私が訝しげな表情をしていたせいか、彼女は少し慌てたように言った。
「私、東風谷早苗といいます。隣、いいですか?」
「え?ああ、どうぞ」
 よいしょ、と言いながら早苗は私の隣に腰掛けた。無茶苦茶な連中の多いこの幻想郷では、こういう普通の少女は珍しい。

「貴女、ここの巫女なの?」
「いえ、風祝です」
「違いは?」
「んー、特にはないと思います」
「へえ」
「私、お酒はどうも苦手で……パルスィさんもあまり召し上がらないんですか?」
「嫌いじゃないんだけどね。あのペースと量はとても無理」
「そうですね。でも、お二人についていくなんて、勇儀さんすごいですね」
「そうね……」

 早苗は不思議な雰囲気を持っていた。どことなく温かくて、優しい気持になれるような空気を彼女が纏っているようだ。今は落ち着いているが、きっとこの子も年齢に不相応な苦労や苦痛を乗り越えてきたのだろう。
 そういえば、彼女達は外の世界から来たと言っていた。外がどんな世界なのかは知らないが、聞くところによると幻想郷とは似ているようでまったく違うらしい。おそらく、ここに来る決断も、ここに来てからの生活も、彼女にとっては苦痛だったに違いない。彼女はその世界での生活を捨て、新しい生活を人妖が闊歩するこの地で始めなければならなかったのだから。

 でも、彼女は乗り越えた。だからこうして不思議な温かい笑みを浮べられるのだ。
 その笑みを見ているうちに、私は勇儀の事を早苗に聞いてほしいと思った。きっと早苗なら、今の私の気持に整理をつける手助けをしてくれるかもしれない。


「ねえ早苗、初対面で悪いけど、ちょっと相談したい事があって……」
「なんですか?私でよければ、どうぞおっしゃってください」
「ええと……早苗は、誰かを好きになった事ってある?」
「す、好きに、ですか!?ないと言えば嘘になりますが……うぅ」
 早苗は真っ赤になり、頭を抱えてしまった。ああ、もう少しオブラートに包むべきだったか。
「じ、じゃあ質問を変えましょうか。そうだな……この際だから言っちゃうけど、身近な人を好きになるのって変かな?」
「身近な人ですか。うーん……それがどのくらい身近なのかにもよりますが、親しい間柄が好きに変わるのは自然だと思いますよ」
「そうか……なんだか私、自分がよくわからなくなっちゃって。好きなのかそうじゃないのか、自分でわからないの」
 
 早苗は少しの間悩んでいたが、やがて顔を上げて口を開いた。

「パルスィさんの気持は、パルスィさん本人にしかわかりません。きっと、大事なのは誰かに聞く事ではなく、貴女自身が勇儀さんの事をどう想っているのかだと思いますよ」

 その言葉は、まるで霧を晴らすかのように私の心を明るくした。
 私は勇儀を意識している。それは事実じゃないか。それはきっと、私が彼女を好きだからなのだろう。

 今まで、私は自分の心と向き合うのが怖かった。もし自分が勇儀を好きだとして、どうしていいかわからなかった。だから、知らず知らずのうちに自分の本心から目を背けていたのだ。
 でも、今は違う。自分の心を見つめなおして、結論に行き着いた。
――私は、勇儀の事が好きだ。



「ありがとう、早苗。相談に乗ってもらっちゃって……そういえば、どうして勇儀の事だってわかったの?」
「それはお二人の様子を見ていればわかりますよ。頑張ってくださいね!」
 早苗は両の拳を握りグッとポーズを取った。なんだかさっきまで相談に乗っていてくれていたのが嘘みたいだ。そんな年相応の可愛い仕草を見て、私も思わず笑みを零す。



「うおーいぱるすぃ、のんでるかー?」

 静かなはずの縁側が突如喧騒に包まれる。どうやら珍しく酔ってしまったらしく、勇儀はしつこく絡んでくる。

 ああ、これが千年の恋も冷めるというやつか。

「ちょ、やめなさいよ。よばれた宴で酔うなんて迷惑でしょ?」
「よってない、ぜ~んぜんよってないよ~だ」
「ごめんね、あんたの話をしてたら勇儀が真っ赤になっちゃって。それから酔いも早く回ったようなんだ」
 申し訳なさそうに顔を出した神奈子はけろっとしている。流石は神様、とでも言うべきか。
「いいえ、大丈夫。でも勇儀を連れて帰らなきゃ……では、今日のところはこれで。」
「ああ、またおいで」
 手を振る二柱の隣で、早苗はまたあのポーズをしている。応援してくれるのはいいが、ああして何度もされると少し恥ずかしいものだ。







 帰り道、勇儀に肩を貸しながら、私は空を見上げた。
 なんて綺麗な星空だろう。地底にいるとこういう風景は見られないから、余計に綺麗に見える。

「ねえ勇儀」
「んー?」
「この星空、手を伸ばしたら届きそうじゃない?」
「そんなわけないさ。この手の届く範囲のものさえ、思うようにいかないんだから……ウップ」
「そう?届きそうで届かない、そのギリギリを追い求めるからいいんじゃないかしら。……それに、貴女の言うものは、すでに届いていると思うけど?」


 私の言葉に、勇儀は歩みを止めた。やっと熱の引いてきた彼女の頬が再び上気し始める。

「つ、つまりそれは……」
「……なんだか、私も酔ってしまったみたい。だから、今から言う事は酔いの産物であって、私の意思ではないかもしれないわ」

 ああ、顔が熱い。まるで本当に酔っているみたい。

「ああ。それで?」

「それで、その……勇儀、私は貴女の事を……







 やっぱり言わない。」



 隣で勇儀がずっこける音が聞こえた。
「ど、どうして言ってくれないんだ!?」
「なんでも言えばいいってもんじゃないわ。想いに応えるには、行動で示さなければ。貴女が毎日私に会いに来てくれたみたいにね」

 本当は、ただ恥ずかしくて仕方なかっただけだ。やっぱり好きなんて言葉は簡単に言えることではない。





 けれど、この鬼は私とは違った。

「確かにそうだな。でもね、言わなきゃ伝わらない事もあるんだよ。ずっと私がそうしてきたみたいにね。
 パルスィ、私はお前が好きだ。うまく言葉が出てこないけど、とにかくお前の事が――」






 この時、やっぱり私は酔っていたのだと思う。酒にではなく、彼女自身に。





 それはほんの一瞬の出来事。
 口を塞ぐように、彼女の麗しい唇に自分のそれを重ねる。
 酒の匂いに、幽かに香る彼女の味。
 それはまるで、夜空を照らすあの星の輝きのようで――







 唇が離れた後も、彼女の頬は腫れるように紅い。もしかすると、触ったら熱いかもしれない。
 尤も、私も同じような状態だろうとは思うけれど。

「な、ななななんでいきなり……」
「言ったでしょ、行動で表すって。さあ、帰りましょう。もう夜も遅いわ」


 私が一歩先に歩き出すと、彼女は私の手を握ってきた。一瞬びっくりしたが、私はすぐにその手を握り返す。




 本当に、大変な奴に好かれたものだ。嫉妬を操る私が、こんなにも幸せを感じてしまうなんて。でも、それは仕方のない事だ。あいつの笑顔を見せられたら、嫉妬なんてどこかへ飛んでいってしまう。これじゃあ嫉妬狂いの橋姫も形無しだ。


 ああ妬ましい。ふふ、ほんとうに妬ましいわ。
 
 
以前勇パルは書かせて頂きましたが、その時に姐さんが姐さんらしくないとの指摘を受けましたので今回はぐいぐい引っ張っていく姐さんにしてみようとしました……が無理でした。
普段は「私についてこい!」だけどキスとかされるとおどおどしちゃう姐さんは譲れなかった。反省する気など更々ない。

追記:妙に文の間隔が空いていたので修正しました。どうやらコピペした際にずれてしまったようです。指摘してくださった方、ありがとうございます。
でれすけ
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コメント



0.1590簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
いいぞ、もっとやれ!
2.100名前が無い程度の能力削除
なんだかパルスィが普通の恋する女の子だ。
いい話でした。
6.100名前が無い程度の能力削除
むむむ、この俺が鬼にパルパルしてるだと!?
15.100奇声を発する程度の能力削除
よっしゃこの調子で
ドンドンいっちゃおー!!!
19.80名前が無い程度の能力削除
なんだかんだいって流されるままなパルスィ可愛い。

ちょいと行間が全体的に空きすぎなのが気になりました。
もうちょい狭めてもらえるともっと読みやすいなぁと思ったり。
24.100名前が無い程度の能力削除
勇儀はやっぱりパルスィのしりに敷かれているのがしっくりくる
30.無評価名前が無い程度の能力削除
>普段は「私についてこい!」だけどキスとかされるとおどおどしちゃう姐さん
むしろもっとそういうのがあってもいいと思うよ…!!GJ!