注意書き
この話は人によっては不愉快になる百合表現がネタとして含まれています。
また、これを書いたときの作者のテンションが高いので突っ込みどころが多いです。
これらが苦手な方はどうぞご注意ください。
OK?
ならば、ようこそ作者の世界へ!
紅魔館の一室。
ただひたすらに小悪魔は紙にペンを走らせていた。
尋常でない速度で次々と書き上げられていく写真にも劣らない精密な絵の数々。
それは、館の主である永遠に幼き紅き月が半裸で地面に突っ伏している絵であった。
それは、完全で瀟洒なメイド長が無防備に足を開き、宜しくない物が丸見えで酔い潰れている姿であった。
それは、動かない大図書館がなぜか紫のズタボロの布切れで申し訳程度に体を隠している姿であった。
書き上げられた絵の数はもはや十枚にも及んだ。
その中には普通の魔法使いや蛇の闘神、竜宮の使いに閻魔の姿も見える。
「ふう……」
小悪魔が呟いて額の汗を拭う。
綺麗な赤い髪からはみ出た、二対の小さな蝙蝠の羽がせわしなく動いている。
「これで、この前の宴会の分はおしまいですね」
先日、博麗神社で行われた宴会で脳内メモリーへと記憶してきた内容を自動書記の力を使って書き留めたのだ。
こうしておけば、何かの拍子で脳内メモリーが破損しても、見て思い出す事が出来る。
作業終了の余韻に浸りながら小悪魔は手早く紅茶を注ぎ一口。
「しかし、もう数年続けてきましたがさすがに骨が折れる」
自動書記の力は尋常ではないくらいに頭に負担を掛ける。
真夏であったら冷却パッドを頭に巻いていても熱暴走を起こしかねないほどに脳を酷使するのだ。
「外部メモリーでも増設するべきですかねえ」
などと一人呟く小悪魔の頭に、不意に音楽が響いた。
ちゃららっちゃっちゃっちゃ~ちゃ~♪
「お?」
小悪魔は悟った、レベルアップしたのだと。
たったいま仕上げた絵の分の経験値で更なる高みに上れたのだと。
「何が出るかな~♪ 何が出るかな~♪」
レベルアップによって新能力を獲得できる場合がある。
現時点で小悪魔が獲得している能力は三つ。淫夢、自動書記、瞬間完全記憶である。
どれも、小悪魔にとっては有用で理想の能力であった。故に次の能力もそうであると信じて疑っていない。
そして小悪魔の頭の中に、レベルアップによって生じた新能力が表示される。
「これは!?」
驚愕の声が漏れた。
次に浮かんだのは満面の笑み。
「今夜が、楽しみですね~」
頭の羽をせわしなく動かしながら心底、愉快そうに、小悪魔は呟いた。
☆☆☆
小さな悲鳴が響いた。
それは紅魔館のメイド長、十六夜咲夜のものだ。
彼女はベッドに下着姿のまま、うつぶせに寝かされていた。
「な、何をしたのよ、美鈴?」
弱々しく問う声に彼女へと跨っている赤髪の女性、紅美鈴は変わらぬ笑みで答えた。
「いえ、少し体の自由を奪うつぼを押させてもらっただけですよ」
「ど、どうして? マッサージをしてくれるんじゃ……」
美鈴は答えずにそのまま無言で、咲夜の太股に手を這わせた。
「ひぅ!?」
堪らずに声を上げる咲夜に美鈴は底知れぬ笑みを浮かべる。
「まだ、咲夜さんに教えていない事がありまして、それを教えて差し上げようかと」
「お、教えていない事?」
頬を高潮させながら咲夜が戸惑った様子で問う。
「ええ、房中術ですよ。いずれはお嬢様の相手をしていただかなければいけませんから」
答えに、咲夜の顔に僅かな怯えが浮かんだ。
美鈴は覆いかぶさるように咲夜を抱きしめると優しく、その体を撫で回し始める。
「子供だと思っていたのに、いつの間にかこんなに体が出来てしまっていたんですね」
確かめるように、控えめな胸を、引き締まった腰元を、閉じられた太股を撫でていく。
「や、やめ……私達、女同士で……んっ!」
「関係ありませんよ、それは人間同士の常識でしょう?」
咲夜の頬に自分の頬を寄せて、美鈴は呟いた。
「それとも、私ではお嫌ですか?」
悲しそうな呟きに、咲夜の瞳が揺れる。
美鈴の顔をまともに見れずに咲夜は枕に顔を埋める。
やがて、消え入るような声が聞こえた。
「……嫌じゃない」
顔こそ見えないが、耳まで紅く染めている事が分かる。
「美鈴なら、嫌じゃないわ……」
覚悟を決めたように枕に埋めていた顔を上げると、美鈴の下で少しだけ動く体をなんとか向き合うように仰向けにする。
「だから、優しくしてね、私の教育係様……」
頬を朱に染めて、瞳に涙を浮かべながら咲夜はそう、呟いた。
☆☆☆
永遠に幼き紅き月レミリア・スカーレットは危機を迎えていた。
両手を押さえられて自室の床に組み敷かれている。
「これはどういうことよ、パチェ!」
眼光鋭くやや離れたところで椅子に座る親友に問いかける。
レミリアの親友、動かない大図書館パチュリー・ノーレッジは悠々とティーカップを片手にその様子を見学している。
「実験よ、レミィ」
「実験だと!? いったい何の?」
外見はまだ、幼女だとは言えレミリアは真祖と呼ばれる吸血鬼だ。
押さえ込まれたら跳ね除ければよい。人や、そこらの妖怪など寄せ付けぬ圧倒的な膂力を押さえ込めるものはそうそう居ない。
だが、今回は押さえ込んでいる者が問題であった。
「お姉さま、おとなしくしてよ」
「フラン、いったいどうしてしまったの!?」
フランドール・スカーレット。
他でもないレミリアの実妹だ。同じく真祖の吸血鬼で、単純な力だけならばレミリアを大きく上回る。
フランドールの赤い瞳が濡れている。さらに、頬は高潮し、表情には今にも涎をを垂らさんばかりの焦燥が見て取れる。
早く言えば、欲情しているのだ。
幼き愛らしい顔に浮かぶ、そのアンバランスな表情は例えようも無い妖しさを醸し出していた。
「吸血鬼が、吸血鬼の血を吸うとどうなるのか、気になってしまったのよね」
いつもどおりの、憎らしいほどの落ち着きでパチュリーは静かに言葉を紡いだ。
「さいわい、妹様はレミィと触れ合いたがっていたみたいだったから、少し後押ししてみたのよ」
「パチェ!」
レミリアは何とかフランドールの拘束から抜け出そうとももがく。
だが、真祖のその力を込めた腕は、同じく真祖である妹によって万力のように固定されて動かせない。
「お姉さま、頂戴ね……」
フランドールがその牙をレミリアの首元に近付ける。
「パ、パチェェェェ!!」
それを怒りとも焦りとも付かない表情で見ながらレミリアは絶叫した。
だが、それを聞いてもパチュリーは動かない。ただ、興味深げに眺めるだけだ。
「ぐぅ、あ……ああ!?」
レミリアの悲鳴と共に体が痙攣し跳ねた。
フランドールの牙が、レミリアに食い込んでいる。
「ああ……フランやめ……」
フランドールは姉の言葉など聞こえぬように、ただ喉を動かしている。
こくり、こくりと音が鳴り、レミリアの血が抜き取られていく。
吸血鬼がその血を吸うときに、吸われるものにはその痛みをごまかすために代わりのものが与えられる。
それは、目も眩むような快楽だ。体の全てを刺激し、逆らう事を許さない圧倒的な快楽。
「ぎ……う……」
レミリアは歯を食いしばりそれに耐える。
紅魔館の主ともあろう者が快楽に溺れるなどと言う無様を晒す訳にはいかない。
永遠とも思える僅かな時間が過ぎ去り、フランドールはレミリアから牙を引き抜いた。
「ふぅ……あ……」
「おいしかったよ、お姉さま」
無邪気に微笑んで、フランドールは喜びをあらわにする。
息も絶え絶えなレミリアはそれでも、飛びかけた意識を叱咤して言葉を発した。
「そう、よかった。じゃあどいてくれるかしら?」
やらなくてはいけない事があるから。
いま、すぐ近くでこちらを観察しているパチュリーを睨み付ける。
彼女に変化があった。
呆れるほど表情が無いのは変わらない。
が、纏う雰囲気が明らかにおかしい。そう、たとえるなら目の前の妹のような……
不意にフランドールが、組み敷いていた手を離す。
レミリアはそのまま自分を見下ろしてどこうとしないフランドールを押しのけようとした。
が、どうした事か腕に力が入らずに、弱々しくフランドールの胸元を押すだけで留まる。
「まだだよ」
フランドールがそういった。
力の出ないレミリアの服を無造作に掴む。
何かが破ける音が響く、
「フラン!?」
破かれた服からは病的に白い肌が露出していた。
「もっと、欲しいの。いろいろな所から、お姉さまが欲しいの」
らんらんと光る瞳。
この瞬間、レミリアは初めて自分が狩られるものになったのだと認識した。
五百年の人生の中で、常に蹂躙するものであった立場が逆になった事を悟り、レミリアの表情が崩れた。
「や、やめ……て……」
その顔に浮かぶのは怯えの表情だ。
おそらくそれは……
「初めて見る表情ね、レミィ」
パチュリーがいつの間にか傍に寄ってきていた。
「私も混ぜてね、今のレミィったらとても……」
それはレミリアも初めてみる表情だった。
嗜虐者の顔、それが二つ。
「興味深いわ」
覆いかぶさってくる二つの影に、レミリアが初めて悲鳴を上げた。
☆☆☆
紅美鈴は紅魔館の廊下を疾走していた。目指すは大図書館。
朝方から紅魔館の様子がおかしかった。
まず、門番妖精たちがおかしかった。
異様に体を寄せ合い、べたべたしていた。
美鈴自身に熱い視線を送ってくるものも少なくなかった。
次に妖精メイド達もおかしかった。
職務など手に付かない様子で虚空を眺めていたり、門番妖精達と同じくべたべたしていたり。
極めつけは咲夜だ。
不意に美鈴の前に現れると、なにか吹っ切れたような優しい笑みで、私、気にしていないからねと良く分からない事を言って早々に消えてしまった。
食堂ではレミリアとフランドールが対面に座り、顔を紅くして俯いたまま動かない。声を掛けても無反応で、心ここにあらずといった様子であった。
異変だ。昨日、美鈴は夜間警備で門を守っていた。
朝になり、仕事を終えて館に戻ると自分と共に仕事をしていた数名の門番妖精以外の様子がおかしかった。
侵入者の形跡は無かった。あらかじめ張っておいた気で紅魔館を包む一種の結界には何の反応も無かった。
過去の経験から、内部で何かが起こったと判断。
そして、この異常な状況の解決に向けての意見を貰うために、この館で誰よりも知識が豊富な者をたずねようとしていた。
「パチュリー様!」
図書館に入り、主の名前を呼ぶ。
彼女はすぐに見つかった。
いつもの机に座り、いつものように本を読んでいる。
「美鈴、あのね……」
「はい」
珍しく、パチュリーの方から声を掛けられて美鈴が戸惑ったような声を出す。
「レミィの様子、どうだったかしら?」
本で顔を隠すようにして問いかける。
「おかしかったですね、顔を赤くしたまま、心ここにあらずといった様子で」
「そ、そう……」
パチュリーは顔を上げない。
いつもと違い、その声にはなにか照れたような感情がこもっている事に美鈴は気が付いた。
「それだけではないのです、紅魔館全体がおかしくなってしまっていて……」
「紅魔館全体が?」
「ええ、なにかご存知ですか?」
「詳しく話して頂戴」
本から顔を上げたその表情は、すでにいつもの知識と日陰の少女のものだった。
☆☆☆
「……なるほど」
説明を受け、パチュリーが思案するように眉を寄せた。
「おそらく、夢だわ」
「夢ですか?」
「ええ、その様子だと、皆、ある夢を見たのね。本物と間違わんばかりのリアルな夢よ」
「どのような夢ですか?」
美鈴の問いに再びパチュリーは本で顔を隠す。
「そこまでよ!な夢よ」
「はぁ……」
いまいち要領がつかめないと美鈴は思った。
「とりあえずこれではっきりした事があるわ」
パチュリーが言葉と共に近くにあった呼び鈴を鳴らした。
パタパタと足音を立てて彼女の使い魔である小悪魔が走ってくる。
「小悪魔」
「なんでしょうか、パチュリー様」
満面の笑みで小悪魔が答える。
「昨日、何かしたかしら?」
「いいえ、何も」
「そう、ところで貴方、夢を操れたわよね?」
「はい! 皆に喜んでもらおうと思って取得した力なので」
小悪魔は笑みを絶やさない。
「ありがとう、昨日は良い夢を見れたわ、皆も同じような夢を見たらしいけれど……それは新しい能力かしら」
「ええ、範囲淫夢と言いまして、お役に立てたなら光栄です」
胸を張って小悪魔が答える。
ここに来て美鈴もようやく何が起こったのか理解した。
ため息が二つ漏れた。
「あ、あれ?」
突然重くなってしまった雰囲気に小悪魔が戸惑ったような声を上げた。
「そういうことね」
「そういうことですか……」
悪気はなかったのだろう、むしろ良かれと思ってやったに違いない。
この小悪魔と言う少女は常識がずれている。
そして……
「ほぅ、そういうことだったか……」
どこからとも無く蝙蝠が集まり真祖が具現化した。
「…………」
その傍にメイド長が姿を現す。
表情こそ済ましているがどこか憮然とした雰囲気が感じられる。
「小悪魔、あのね……」
異様な雰囲気に怯えをにじませる小悪魔にパチュリーは言った。
「感謝して居るわ、それで、レミィ」
真祖が言った。
「ええ、あんなに無様な姿を晒させてくれて」
メイド長が言った。
「ぬかよろこ……こほんっ!……このお礼はしなくてはいけませんね?」
小悪魔が後ずさる。
「い、いえ、お礼なんて。私は皆さんがあられもない姿を晒して居るのを見るのが好きなだけで私自身は別に……」
小悪魔が逃げようとした後ろにはすでにメイド長が居る。
「遠慮しないで、貴方にも味わってもらいたいのよ」
真祖が優しい笑みで言った。
「ひぃっ!?」
その場に尻餅をついてしまった小悪魔に三人が迫る。
「ゆ、許して……くださ……わたし……はじめ……て……」
小悪魔の悲鳴を背に受けて、ため息をつきながら美鈴がその場を後にした。
-終-
というかマジで小悪魔何者だ…
何故だかあなたの名前がいやらしいお団子に見えてしまったwww
レベルが上がっただけで天災級の能力になるとか、うらやまs・・・じゃなくて、妬ましいですねぇ。
いやあ、それにしても、ギリギリでしたね、色んな意味で。
夢の続きは向こうで待ってればいいのかな。
咲夜さんの可愛らしさに不覚にもキュン!となってしまったぜ……。
咲夜さん……
めーさくは美しいね!