何に重きを預けるかによって、人生は如何様にも変わる。
しかし、ニンゲンはそれを積み重ねによってだいたい定めるものだ。
一度天秤が傾けばどこまでも落ち込んで行くものだ。
それを眺める事はオツなものだが、その火の粉がこちらまで降りかかることもあるのだからたまらない。
ニンゲンに近付くのは、最早よほどの物好きであると相場は決まってしまっている。この長命な、ニンゲンで言う"バケモノ"の中ですらそう暗黙の認識が出来てしまったのだから、ニンゲンの存在はどれほどの時が経ったとしても基本は変わらなかったのだろう。
しかし私も、大分傾いてしまった。
そうして外側から眺めているのか、私も人間達のように観察対象へ変じていたのかすらも、分からない。興味を失ったと言えば、それが最も正しいか。
ああ、そういえばニンゲンだけが意固地だと言ってきたが、実はそれを眺め続けてきたバケモノ共のほうがよほどに意固地だった。最近にまで至って、ようやくそれが自覚の域に達した。
―――ニンゲンと、ヨウカイ。
精神を作り定めていく方法が、本当に前述の通りであるならば。
・・・・当たり前のことだ。長命さと、それによる種族の相対的な矜持を備えたバケモノ共。
後者の方がよほどに、救いがたい存在に違いない。
・・・・誰にとって救いがたいか?
それは勿論、思う者に選るだろう。
私にそれは当てはまらない。救いがたいとは思わない。
いや、これには多少の語弊がある。
私はそう思う事が割合少ない。
・・・・そう、"相対的に"。
何との相対かは、最早述べる必要はないだろう。
―――ヨウカイと、ニンゲン。
文字が伝わり、記号が伝わり、言語が伝わり。
ヨウカイにはおぞましさと敵意が。
ニンゲンには脆さと賢さ――俗に言う卑怯さ――が付加された。
けれど、分かるでしょう?
これも誰かの基準による、偏った解釈であると。
あなたは気になるかしら?
この解釈が誰のものか。
でも、知るならば覚悟して頂戴。
それは貴方の認識を経ると言うことだから。
誰かと道を違えると言うことだから。
それを決して忘れないで頂戴ね。
ああ、答えを言う前に、あなたの考えを聞こうかしら。
この解釈が、一体どのような存在によるものなのか。
―――あら、貴方とは気が合いそうにありませんわね。
* * *
そうして、女は笑った。
それは妖艶さ。
しかし、どこか幼い気配のある、女との話。
・・・・後でそれが誘導された答えであることに気付いたとしても、最早それは何の力も持たない。
形や軽重はともかく、私は彼女を"拒否"することを採択したのだ。
ああ、思えばそれが彼女の"偏り"であったのだろう。
おそらく私以外の者も、そうやって答えを誘導されたのだ。
そうして彼女は満足しているのだ。
ニンゲンとの戯れを。
戯れでしかないニンゲンとの対話を。
彼女にとってニンゲンは、重きに充てるどころか既に決まってしまっている存在であるのだ。
故に、言葉という形無きものでしか計らない。
私に、あるいはニンゲンにその心を晒け出すことなどない。
全て、煙に巻いて消えてしまう。
・・・・結局、私は言葉にして何も伝えなかった。
しかし女は正確に汲み取っていたはずだ。
私の考え。
"それは女自身の解釈である"と。
つまり私はおそらく、いや確実に、女に敵意を見出していた。
それは私の警戒心。
それは私の脆弱さ。
そして私の、怠惰。
道は交わらずとも、存在できるのだ。
それで私は良しとした。それが全ての答えだったのだ。
彼女にとってもそうだったろう。
そうして私は、逃避する―――
・・・・もし。
もし、彼女の言葉に他の何かを汲み取れる何者かがいるのなら。
私はその者に託す。
私の中にある未練を。
私の中にある独占欲を。
誰が彼女の心を動かすのか。
私でなくて良い。
誰か。
その瞳の揺らぎを、―――
****
それが、"誘導された答え"と考えた時点で、この者は適正外。
心から"彼女"を信頼しなければ、正解などない。
けれど、彼女がそんな存在を認めるだろうか?
彼女がそれを自身の誘導と認めるのはいつか。
誰かがそれを彼女の誘導と認めないのはいつか。
平行線は交わることがあるのか。
・・・・さて、どれが誰にとっての正解だろう?
彼女にとって"ニンゲン"が取るに足らぬ存在であったならば、その結末も彼女には些末。
その命の有無も。
その出会いそのものも。
しかし。
それでも人と言葉を交わす心情。
形すらないその心に、波紋を広げる存在に。
・・・・彼女と道を交わす人間に、私は全てを託す・・・・。
しかし、ニンゲンはそれを積み重ねによってだいたい定めるものだ。
一度天秤が傾けばどこまでも落ち込んで行くものだ。
それを眺める事はオツなものだが、その火の粉がこちらまで降りかかることもあるのだからたまらない。
ニンゲンに近付くのは、最早よほどの物好きであると相場は決まってしまっている。この長命な、ニンゲンで言う"バケモノ"の中ですらそう暗黙の認識が出来てしまったのだから、ニンゲンの存在はどれほどの時が経ったとしても基本は変わらなかったのだろう。
しかし私も、大分傾いてしまった。
そうして外側から眺めているのか、私も人間達のように観察対象へ変じていたのかすらも、分からない。興味を失ったと言えば、それが最も正しいか。
ああ、そういえばニンゲンだけが意固地だと言ってきたが、実はそれを眺め続けてきたバケモノ共のほうがよほどに意固地だった。最近にまで至って、ようやくそれが自覚の域に達した。
―――ニンゲンと、ヨウカイ。
精神を作り定めていく方法が、本当に前述の通りであるならば。
・・・・当たり前のことだ。長命さと、それによる種族の相対的な矜持を備えたバケモノ共。
後者の方がよほどに、救いがたい存在に違いない。
・・・・誰にとって救いがたいか?
それは勿論、思う者に選るだろう。
私にそれは当てはまらない。救いがたいとは思わない。
いや、これには多少の語弊がある。
私はそう思う事が割合少ない。
・・・・そう、"相対的に"。
何との相対かは、最早述べる必要はないだろう。
―――ヨウカイと、ニンゲン。
文字が伝わり、記号が伝わり、言語が伝わり。
ヨウカイにはおぞましさと敵意が。
ニンゲンには脆さと賢さ――俗に言う卑怯さ――が付加された。
けれど、分かるでしょう?
これも誰かの基準による、偏った解釈であると。
あなたは気になるかしら?
この解釈が誰のものか。
でも、知るならば覚悟して頂戴。
それは貴方の認識を経ると言うことだから。
誰かと道を違えると言うことだから。
それを決して忘れないで頂戴ね。
ああ、答えを言う前に、あなたの考えを聞こうかしら。
この解釈が、一体どのような存在によるものなのか。
―――あら、貴方とは気が合いそうにありませんわね。
* * *
そうして、女は笑った。
それは妖艶さ。
しかし、どこか幼い気配のある、女との話。
・・・・後でそれが誘導された答えであることに気付いたとしても、最早それは何の力も持たない。
形や軽重はともかく、私は彼女を"拒否"することを採択したのだ。
ああ、思えばそれが彼女の"偏り"であったのだろう。
おそらく私以外の者も、そうやって答えを誘導されたのだ。
そうして彼女は満足しているのだ。
ニンゲンとの戯れを。
戯れでしかないニンゲンとの対話を。
彼女にとってニンゲンは、重きに充てるどころか既に決まってしまっている存在であるのだ。
故に、言葉という形無きものでしか計らない。
私に、あるいはニンゲンにその心を晒け出すことなどない。
全て、煙に巻いて消えてしまう。
・・・・結局、私は言葉にして何も伝えなかった。
しかし女は正確に汲み取っていたはずだ。
私の考え。
"それは女自身の解釈である"と。
つまり私はおそらく、いや確実に、女に敵意を見出していた。
それは私の警戒心。
それは私の脆弱さ。
そして私の、怠惰。
道は交わらずとも、存在できるのだ。
それで私は良しとした。それが全ての答えだったのだ。
彼女にとってもそうだったろう。
そうして私は、逃避する―――
・・・・もし。
もし、彼女の言葉に他の何かを汲み取れる何者かがいるのなら。
私はその者に託す。
私の中にある未練を。
私の中にある独占欲を。
誰が彼女の心を動かすのか。
私でなくて良い。
誰か。
その瞳の揺らぎを、―――
****
それが、"誘導された答え"と考えた時点で、この者は適正外。
心から"彼女"を信頼しなければ、正解などない。
けれど、彼女がそんな存在を認めるだろうか?
彼女がそれを自身の誘導と認めるのはいつか。
誰かがそれを彼女の誘導と認めないのはいつか。
平行線は交わることがあるのか。
・・・・さて、どれが誰にとっての正解だろう?
彼女にとって"ニンゲン"が取るに足らぬ存在であったならば、その結末も彼女には些末。
その命の有無も。
その出会いそのものも。
しかし。
それでも人と言葉を交わす心情。
形すらないその心に、波紋を広げる存在に。
・・・・彼女と道を交わす人間に、私は全てを託す・・・・。
紫が誰かに一言話し、誰かは返事もせずに立ち去ったという場面なのでしょうか?
状況説明がなく互いの独白がすれ違って終わるので、結局何が起きていたのかなあと疑問が残ります。
紫と誰がそれぞれの考えを持つに至った過程が少しでも描かれていれば納得できたのですが。
抽象的な作品なのでこちらの読み違いがあるかもしれませんが、ご容赦ください。次回作を期待しています。
拙作へのコメントありがとうございます!
改めて読み返してみると、抽象的すぎて読み手に全く優しくない文章となっていました。
投稿すると意気込んで、焦りすぎていたのかもしれません。指摘されて、初めて気付きました。
今作の失敗を元に、次作は客観的に見ても理解できる、自分が改めて小説と思えるモノを投稿したいと思います。
このような稚拙な小説を読んでくださり、本当にありがとうございます!
しっかり、精進させて頂きます! 未熟者ですが、これからよろしくお願いします。
点数のみの方も、ありがとうございます!
文章力もあると思いますしw
次回作大いに期待してます。同じ書き手同士、がんばっていきましょう
ありがとうございます、そういって頂けるととても嬉しく、意欲が沸いてきます!;
次回作はいつになるか分かりませんが、自分なりに頑張らせて頂きます!
拙作へのご感想、ありがとうございます。今後とも、よろしくお願いします!