同作品集「手を取り合って」の設定を使っています。
また、プチのアステルパーム作品とも関連があります。
「しっかりしろアリスー」
「私はしっかりしてるわ。魔理沙こそ、いつの間に分身したの?」
紅魔館からの帰り道、私はアリスを引っ張ってよたよたと飛んでいた。
今日は魔女会の日。普段は研究の交流会や最近の魔法事情などを語り合うそれなりにまじめな会なのだが、
今回はフランドールが来襲したあたりから雲行きがおかしくなった。
パーティーの帰りだったらしく正装で、
「あら魔理沙、アリス、ようこそおいでくださいました」
「いい紅茶ね。A型RH-かしら」
等、普段からは想像もできない大人びた事を言って皆を驚かせたのが原因にちがいない。
妹の成長を喜んだレミリアは、そのまま紅魔館を挙げてのパーティを開いたのだった。
宴席では皆、普段以上に陽気に騒いでいた。
紅魔館の住人たちも、フランドールの成長が嬉しかったのだろう。
勧められるままに飲んだ私達は、案の定、よたよた帰る羽目になったのだった。
「ほらアリス、しっかりしろって」
「魔理沙がふらふらするのがいけないんでしょう。しっかり手を掴みなさい」
いいかげんアリスをまっすぐ誘導するのがめんどくさくなって、箒の上に引き上げた。
アリスの手を取って、腰にまわす。
桜に色づいた手を握った感触で、この間のことを思い出した。
アリスのしなやかな白い手が、私の手をやさしくなでてくれた日のことだ。
恥ずかしくなって、思わず帽子に手をやろうとしたが、今日はそれをするとアリスが落ちてしまう。
仕方がないから顔を振って熱さを追い出し、両手で箒を握った。
まっすぐ飛ぶために意識を集中させようとしたところで、アリスが首に顔をこすりつけてきた。
くすぐったい。
くすぐったさでアリスを落とさないように左手で腰に回された手を掴むことにした。
ゆっくりと加速しながら、この左手が本当にアリスを落とさないようにするためなのか、私がアリスの手を触りたいのか、よく考えてみることにした。
魔理沙が私を箒の上に引っ張り挙げてくれた。
今日はいつもよりお酒を飲みすぎてしまったようで、魔理沙がふらふらしている。
いや、自分がふらふらしているのかもしれないが、どっちにしろふらふらなのは変わりない。
フランドールのお祝いなのだからそれは正しいことなのだと思いつつ、魔理沙の腰に手を回した。
魔理沙の箒に二人乗りするのは初めてではないが、いつも乗るたびに大きな背中だと思う。
華奢な体で、さわってみればどう考えても女の子の体なのに、そういう印象を受けるのだ。
女の子の骨格なのに、貧弱な肉付き、かと思えば腰は意外と丸みを帯びていて、少女と淑女の絶妙なバランス。
私が人形でこの骨格を再現しても、誰も魔理沙の躯だとは思われないだろう。
きっと魔理沙は、あふれる活力でこの体を大きく見せているのだ。
元気よく、猛スピードで、全力を傾けて。それが人間の生き方なのだろうか。
なんとなくさびしくなって、肩にあごを埋めてみる。
首に鼻をこすりつけて魔理沙のにおいを嗅ぐ。魔理沙が私の手を握ってくれたので、私もそれに答えてみる。魔理沙の背中はいじりがいがあるのだ。
肩甲骨の間に頬を添えると固い背中から心臓の鼓動が聞こえるし、
胃のあたりに耳を添えると今日食べた料理がぐるぐると消化されているのがわかる。
肩にあごを乗せると頬に柔らかな金髪を感じるし、
わきの下に腕を通すと魔理沙のふくらみが少しだけ感じられてちょっと恥ずかしい。
魔理沙が徐々にスピードを上げるの感じたので、それにあわせてゆっくり背中にしがみつく。
この背中はまだ私だけのもの。
家に帰り着くまでのもう少しの時間、私はそれを堪能することにした。
しがみついたまま、魔理沙に体を預けて寝てしまったアリス。
アリスの手を離せなくなってしまった魔理沙。
二人が家に着くのはもう少し後のことになりそうだ。
貴方のマリアリは素晴らしい!!
短いながらもとても素晴らしかったです。
次回作も楽しみにしています。
二人の体の温もりを感じてゾクゾクするような錯覚すら覚える。