Coolier - 新生・東方創想話

東方御伽草子 ~三枚の御札~

2009/06/13 23:26:58
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 人間は妖怪より恐ろしい。
 そんな話をしてきたけれど…。
 妖怪だって、本気を出せば人間より強いわ。
 その能力や、力をもってすれば、人間なんて歯が立たないもの。


 例えば、人間のような欲求を持ち合わせながら
 妖怪のような力をもっているものがいるとするのなら
 それほど恐ろしい奴はいないとは思わない?


 でも、そんな者であれ…自分の力量は見誤らないことね。









 東方御伽草子 ~三枚の御札~










「和尚、妖怪退治を行なってまいりました」


 坊主が声たからかに告げる。

 和尚様は、その坊主の言葉に対して、その坊主の声が聞こえていないかのように、ただ木魚を叩き続けている。坊主は、つまらなそうにしながらも、その手にある金銭を宙にと投げながら、口元を歪める。


「和尚、そんなものを叩いていたところで、誰からも感謝などされませんよ?」


 坊主は笑みを浮かべたまま、宙を舞う金銭だけを眺めながら独り言のようにつぶやく。

 和尚はただ黙って木魚を叩き続ける。


「今や、悪霊・妖怪を駆逐する僕のほうが、和尚よりよっぽど、みんなのためにされているんです。和尚も、少しは僕を見習ったほうがいいんじゃありませんか?」


 坊主はそういいながら、再び部屋から境内にと出て行く。


 坊主は、類稀な除霊の専門家であり、様々な場所からの注文に答えて、除霊を行なっていた。最初は、無償で行なっていたそれも…彼が青年という年齢になると、変化をしていき、金銭を要求したり、女性を求めたりと、し始めていた。


 和尚は、そんな坊主に何度も説教をしたが…まったく彼は聞かなくなっていた。


 坊主は自分の絶対的な力に自信を持っていた。
 彼には三つのお札があり、それを持ち、様々な妖怪や幽霊を相手にしていった。


 彼の力を持ってすれば、どんな妖怪でも構わないだろうという噂は広がり、今や彼は町の中でも、多くの人に慕われている存在となり始めていた。勿論…その裏では、彼は欲求を満たし続けていることなど……表に出る事はない。









「…お前が、噂の坊主か?」


 ある日、彼が訪れたのは、山を改築し新たな自分の城を建設しようとしていた、大名の一人であった。坊主は、多額の報酬がもらえるであろうとしり、すぐにと飛んでいった。


「はい、私めに、ございます」


 頭を下げながら告げる坊主に、大名は頷きながら話を始める。


「実はだな、私が新しく建てようとしている城の土地に、妖怪が住み着いており、どうにも上手くいかないのだ。私の部下が向ってもとてもではないが歯が立たない。そこでだ、お前のような勇猛果敢な除霊をおこなうものがいるのなら、頼みたい」


「大名様の言葉であるのなら、この坊主、必ずや、その願い、かなえましょう」

「うむ、成功の暁には、小判50両を贈呈する」

「は、は……」


 そのおもいがけない言葉に、坊主は声が震えてしまった。
 だが、これは思いがけないチャンスである。
 これさえ手にすれば、もうあんなお寺に過ごす必要はない。
 この力だけで商売が可能だ。





 坊主は、早速寺に帰ってくると、自分の商売道具である御札を手にし、大名から手に入れた地図を元にしてでかけようとしていた。そんな坊主を見た和尚は、大きく溜息をつきながら


「坊主、己の力量を弁えるんだ。妖怪は悪霊ではない。神と同じような存在なのだ」

「だけど、人間はそれが邪魔なんだ。ならば…どいてもらって喜ばれるのなら、そっちのほうがいいだろう?僕たちは、神様の奴隷じゃないんだ」


 坊主はそれだけいうと、颯爽と出かけていく。











 地図の通りでかけていく、坊主。



 山を越え、川を越えていくと……目的の場所があった。
 そこは開けた綺麗な場所であり……大小、様々な花が咲き乱れている。



「ここか…」



 坊主が周りを見渡す。

 青い空と太陽の下……周りを見渡す坊主。


 ふと、少し遠くに、こちらのほうを眺めているものを見つける。
 傘を差しているのか?影になっており、よく顔が見えない。


「あれが、大名様のいっていた妖怪か……」


 坊主が、いつものごとく、お札を取り出すと……その傘を差す妖怪に向ける。


「炎となって、あの妖怪を包み込め!」


 坊主がいうと、その花園を一気に炎として、その傘をさしたものを包み込んでいく。

 坊主としては、相手の抵抗もなく、あっという間に蹴りをつけてしまったのは、少々勿体無かったかなと、余裕の感情を抱いていた。





 だが、次の瞬間…、炎は一気に消え失せ…そこには何事もなかったかのように、花が先ほどと同じように咲き誇っている。


 坊主は狐に化かされたかのかと不思議に感じる。




 ゾク……。





 坊主は身の毛のよだつものを感じる。
 それは、今まで感じたことのない、強力な霊気である。
 坊主は、身体に鳥肌が立ち、体が震えるのを感じる。


 少し距離を置きながらも、先ほどよりかは近づいた傘を差したものがまだこちらをじっと眺めている。


 坊主は冷や汗を感じて、慌ててその場から逃げ出す。
 

 こんなはずではなかった
 こんなはずじゃ……。



「はぁ、はぁ……」



 人間、本当の恐怖というのは、声が出ないものである。
 坊主が走りながら、後ろを振り向くと、そこには、誰もいない。

 なんとか振り切ったかと思い、足を止めて、もう一度振り返ってみると……。


 そこには、先ほどと再び、距離を縮めて、傘を差した……女がいる。



 顔がわかるまでになりつつある距離で。



「ひ、ひぃぃぃ!!」



 坊主は慌てて、二枚目のお札を出す。



「か、川!大きな川となって、あいつを飲み込め!」



 お札はすぐに巨大な川となり、その女を飲み込んでいく。
 坊主は、水に飲み込まれた女を見て、ほくそ笑む。



「ざ、ざまぁーみろ!」



 坊主は、そのまま、再び走って逃げていく。

 やはり、なんというか不気味なものがあったからだ。

 山を越えたところで、もう一度振り返ると……そこにはあの日傘の女がいた。

 もう、ほとんど距離はない。
 手を伸ばせば届きそうな距離に、それはいた。




「うわぁあああああ!!」




 坊主は、その水浸しの女に対して絶叫をしながら、御札の三枚目を取り出す。


「あ、あいつを!蛇となって…あいつを倒せぇ!!」


 坊主はそう告げると慌てて駆け出していく。
 もう少しで、もう少しでお寺だ。
 そうすれば和尚様が匿ってくれるはずだ。
 大丈夫…大丈夫だ。
 相手は妖怪、神聖な場所である寺に逃げ込めば、何も恐れることはない。
 そうだ、そうなんだ……。

 お寺にと舞い戻ってきた坊主は、閉じられた門を叩く。



「和尚様!坊主です!ここをあけてください!!」



 背後を振り返り、何度も何度も扉を叩く坊主。



「お、和尚様!私が、私が悪かったです!自分の力量を見誤り、おごっていました。反省しております!ですから、どうかこの門をあけてください!お願いいたします!」



 坊主の目からは涙が溢れている。
 恐怖と絶望の目だ。
 扉を何度も叩いていると、鈍い音とともに、扉が開かれていく。



 坊主は笑顔と安堵の表情で、開かれていく扉を見つめる。

 だが、その安心と安堵、助かったという坊主の表情は変化を遂げる。

 絶望という名のものに……。



 開かれた扉の先、お寺は崩れ去っていた。



 そして、彼の目の前……日傘をあげ、はっきりとこちらを見る緑の髪の女…。


 大きく口をあけ……。






「つ~かまえた♪」
微妙ホラー?
まー昔話は基本ホラーですよね。

語り手…八雲紫
緑の髪の女…風見幽香
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コメント



0.320簡易評価
6.70名前が無い程度の能力削除
話自体は非常に面白かった。人間から見てみればその通りなんだろうなぁ、と。
ただ、これって東方でやる必要なくね?
8.70名前が無い程度の能力削除
無駄な部分を省いたのでしょうか? 
故にかやや物足りなさを感じました。 
↑の方がおっしゃられた「東方でやる必要はないのでは?」という意見を意識しながら読んだのですが、それをいったら大半の作品が該当するような気がしたので気にする必要はないかと
9.50名前が無い程度の能力削除
いや、三枚の御札って怪談と言うよりは“とんち話”があってこそだと思うのですが……

オリジナルでは和尚さんから渡される御札が三枚だったから『三枚の御札』であるわけで、坊主自身が所有しているのであれば御札が三枚である必要性はありませんよね

何だか全体的にチグハグな感じがしましたが、題材は面白いと思います。
13.80名前が無い程度の能力削除
ちょっ、ゆうかりんかっ!!そりゃ無理だわ、こえぇっ!!!

ただ、確かにちょっと物足りなさはありますね。
もう少しボリュームも欲しいところでした。