誰かが言った。幻想郷はすべてを受け入れるのだと。
誰かが言った。幻想郷は楽園であると。
そこでこの僕、森近 霖之助は考える。
楽園とは何なのだろう、と。
誰のためのものなのだろう、と。
もともとは普段つけている日記のネタにでもしようかと思っていたのだが、一度考えだすと中々に難しいものだ。
だが同時に面白くもあると思う。
僕にとっての幻想郷は、決して楽園ではない。
せっかく構えた店は全然繁盛しないどころか、顔見知りの少女たちに商品を持って行かれる日々だ。
だが、僕以外の者の考えは違うのかもしれない。何よりこの問いは、一人で想像するのには限度があるだろう。
ちょうど据え置きの薬が無くなってきたことだし、ついでに意見を聞いてみるのも悪くはないだろう。
そう思い立って、僕は店から出る。
目的地は永遠亭だ。
相変わらずの竹林を親切な人の案内で抜けて永遠亭にたどり着いた僕は、さっそく入口の傍にいた顔見知りの少女に問いかけてみることにした。
「やあ、少しいいかな」
彼女は香霖堂や人里に薬を運んできて売っている妖怪兎で、名前を鈴仙・優曇華院・イナバという。
決して愛想がいいとは言えない彼女だが、やはり今日もうつむき顔での受け答えだった。
「……なんですか」
相手と顔を合わせようとしない。さらに言えば、会話することを煩わしく思っている節さえある。
そんな声色だった。
僕はそんな対応にももう慣れ切ってしまっているので、臆することなく会話を続ける。
「ちょっと聞きたいことがあってね」
鈴仙は表情を変えずに僅かに首を縦に振った。質問はいいが速く済ませろ、というところだろうか。
「なに、そんなに難しいことじゃない。君にとって、この幻想郷は楽園なのかどうか。それを聞きたくてね」
質問を受けた鈴仙ははあ、とため息を吐く。
僕の質問に呆れているのだろうか。あるいは何か別のことが引っ掛かっているのだろうか。
そんなことを考えている間に、彼女は一言だけ
「楽園なんて、この世にあるわけないじゃないですか」
そう呟いてから、逃げるようにどこかへ行ってしまった。
残された僕は、その一言の意味を少し考えてみる。
彼女は幻想郷だけではなく、楽園というものの存在を否定していた。これはどういうことだろう。
しばらく考えていると、一つのひらめきが生まれる。
「そういえば、彼女は月兎だったか」
それなら少しは納得がいく。
月の住民であったのなら、地上は穢れたものだと教わってきたはずだ。
その地上にある幻想郷を、楽園ではないとするのも頷ける。
「だが……」
彼女の言葉は楽園そのものを否定していた。
これは月の者の考え方なのだろうか。
もしかしたら鈴仙独自の考え方なのかもしれない。
僕の頭の中を、様々な考えが巡っていく。
「あら。入り口で唸ってる不審者を見に来たのだけど、店主さんだったの」
考えに没頭していた僕に声がかけられる。
僕は自分が永遠亭の軒先で考えごとに没頭しているという事にようやく思い至って、少し恥ずかしくなりながらも声の主の方を向く。
「何か面白いことでもあったのかしら?」
そこにいたのは、長い黒髪と豪華な和服が印象的な永遠亭の主だった。
蓬莱山 輝夜。彼女もまた月の住人だったはずだ。
「ああ失礼。最近ふと疑問がわいてきてね。それについて頭を働かせていたんだ」
「ふーん。面白そうね。聞かせてもらえないかしら」
僕がありのままに話すと、輝夜は当然のように食いついてきた。
彼女も暇だったのだろうか。
「そんなに複雑な話じゃないんだけどね。楽園とは何かっていうのが題でね」
一息ついて、鈴仙の時と同じ質問をその主に投げかける。
「君にとって、この幻想郷は楽園と呼べる場所なのかい?」
まず最初にふぅん、と感心しているのか呆れているのかよくわからない相槌が返ってきた。
それからしばらくたって、輝夜の答えが返ってくる。
「今のところは楽園ね、幻想郷」
僕は黙ってその先を促す。
「楽園の定義は永劫不変よ」
それはそれで退屈なんだけどね、と何かを想うような輝夜の呟きが聞こえた。
「そして幻想郷。私がここに来たのはもう随分昔のことだけど、その頃と比べても何も変わっていない」
右腕を伸ばし、竹林を指差しながら言葉が続く。
「私はこの檻の外を詳しくは知らないわ。ちらっと見た程度よ。けど、だからこそこう言えるわ。昔とそっくりだって」
檻とは竹林のことだろうか。それとも大結界のことだろうか。
「ちらりと見た風景も、その時にみた人間や妖怪も。昔と何も変わっていない。
詳しく知っていけば違いも見つかるんでしょうけど、そうしなければ違いがわからないなんていうのは、つまり同じものだということよ」
なるほど、と僕は頷く。
僕が今まで生きてきた中で、幻想郷が急激な変化を見せたことはおそらくない。
「だから、楽園。おまけに退屈させないように趣向を凝らしてあるんだから、至れり尽くせりよね」
趣向とは、異変のことだろうか。
確かに、異変が起こり巫女が解決するという一連の動作は、もはや日常的なものになってしまっていると言っても過言ではないだろう。
「私の意見はこのくらいね。参考になったかしら?」
「ああ。とても参考になったよ」
それから兎たちが薬を持ってきてくれるまでの間、僕は輝夜に感謝の言葉を述べていたのだった。
「楽園なんてない、か」
薬を受け取った帰り道、僕は先ほどの二人との会話を整理していた。
特に気になったのは、鈴仙の言葉だ。
同じ月の住人だった輝夜の方は、幻想郷を楽園だといい、楽園の定義を語ってくれた。
つまり楽園はあるのだと言っている。
対して鈴仙は、楽園を否定している。
この二つの相反する意見をまとめていけば、そこそこ面白い日記が書けそうだなと思う。
同時に、この二つの意見だけでは足りないのではないのかとも思う。
「ままならないな」
深く考えようとするには、どうやっても意見が足りない。
足りないのなら、誰かに意見を求めるしかない。
「よし」
僕は行き先を変更することにした。
香霖堂ではなく無縁塚へ。
おそらく、顔見知りのサボり魔な死神、小野塚 小町がいるだろう。
「ここが楽園か、だって?」
無縁塚で寝ころんでいた死神にも同じように問いかけると、首をかしげながらこちらを見返してきた。
僕の質問の意図が読めなかったのだろう。
「ああ。まあ日記のネタ探しだと思ってくれていいよ」
「また変なことを書く日記だねえ」
この辺りはお互い慣れたものだ。
お互いに酒を酌み交わした者同士、友情めいたものがあるのだろう。
酒の力は偉大である。
「さて、楽園か」
肩に立てかけている鎌を小刻みに動かしながら、言葉を選んでいるようだ。
「そうだねえ。……店主さん。あんたはこの世界の中央には何があると思う?」
この問いは、言葉通りに受け取るものではないだろう。
死神としての小町が相手のなら、生と死で問題ないだろう。
だがおそらく小町の求める答えはそれではない。
僕は彼女に楽園を問うた。
それに関する質問ならば、小町の立場は死神ではなく楽園の最高裁判長の下にある者として考えるべきなのだ。
ならば
「そうだね……罪と罰、なんていうのはどうだい?」
生と死に値する二大概念。
生きることは罪を産み出し、死することが罰である。
僕は信じていないし、おそらく小町も信じていないだろう。
それでも会話が続くのは、お互いが求める言葉を薄々分かっているからだろうか。
酒を酌み交わした者同士、奇妙な縁が生まれているのかもしれない。
やはり酒の力は偉大である。
「まあそうさ。
世の中罪と罰が交互に巡って回ってる。
それが普通の世の中さ。
じゃあ、店主。
楽園には、罪と罰ってのがあると思うかい?」
「楽園というくらいだから、どちらも存在しないんじゃないかい?」
僕は小町の問いに問いかけを返す。
それを受けた小町はいやいや、と首を横に振りながらまた話しだす。
「楽園にだって罪はあるさ。でなきゃ追放される奴なんていないだろう。
でも罰は存在しない。
楽園の追放は、あくまで楽園を出た時点で与えられるものさ。
楽園の中にいる間は、罰を受けたとは言えないだろう?」
話を続けるために何か反論をしようとして、結局よい言葉も思いつかず、僕は小町の話を聞き続けていた。
「振り返ってこの幻想郷。ここには罪も罰もある。
例えばあたいがこうやってこっそり休憩をとっていることは罪さ。
そして、そのあたいを四季様が説教するのが罰」
「つまり、幻想郷は楽園ではないと?」
ようやく僕が口を挟むことができる間があいた。
あるいは彼女が意図的にあけたのかもしてない。
「まあね。けど、それでいいとあたいは思うよ。
もしも幻想郷が罰せられないような所だったら、あたいはずっと真面目に仕事をしなきゃならなくなる」
罪を犯すが故に罰を与えられるのか。
罰のために、罪が与えられるのか。
生死観にも似た、浅くも深い死神の言葉が耳に残った。
「罪と罰に、永劫不変か」
無縁塚に背を向け、今度こそ香霖堂へと歩きながら、考えを整理していた。
輝夜と鈴仙の、ある意味正反対な反応。
楽園を肯定した輝夜と、楽園を否定した鈴仙。
これを、小町の言った罪と罰を使ってどうにか整理できないだろうか。
僕はうんうん唸りながら道を歩いて行った。
あともう少しでひらめきそうなのに、何も思いつかない。
「まいったな」
物事を考えるにあたって、最も辛い時間だ。
自分の頭の中のことなのに、それが形にならないのだから。
そんなことを考えるうちに、香霖堂にたどり着いてしまった。
とりあえず、適当に酒でも飲んで思考をほぐそうか。
そう思いながら扉に手をかけた時、そこに小さな紙切れが挟まっているのが目に入った。
「うん?」
広げてみれば、中には綺麗な字が書かれている。
『棚にあったカップが気に入ったので貰って行きます。
お代は金庫の中に。
他にもこのようなカップがあれば買い取らせていただきます』
紙の下の方には、紅魔館と書かれていた。
「やれやれ。鍵はかけておいたはずなんだけどな」
言いつつも、きちんとお代を置いて行ってくれているだけマシだろうと許してしまう自分がいた。
「ふむ。紅魔館か」
それとは別に、僕は一つのことに思い至る。
紅魔館自体が、この幻想郷では比較的新しい存在だ。
ならば、また違った意見が聞けるのではないのだろうか。
「ふう。……行くか」
歩き疲れてはいるものの、好奇心が勝っている。
僕は蔵の中から適当にカップを見繕い、紅魔館へと向かって歩き出した。
門に背を預けて幸せそうにシエスタをしている門番の横を通り抜けて紅魔館に入った僕は、メイド長の出迎えを受けた。
「ようこそ紅魔館へ。綺麗なカップと店主を歓迎いたしますわ」
冗談めかして言っているが、カップを歓迎しているのは本当なのだろう。
チラチラと僕が持っている風呂敷を見ているのがよくわかった。
おそらくわざとあからさまに視線をよこして催促しているのだろうか。
「それはどうも、ご丁寧に」
僕も冗談めいた口調で礼を述べながら風呂敷を渡す。
メイド長は中身を確認して顔を綻ばせた。
「良い趣味です。さすがは店主」
欠点をあげるとすれば、あからさまに褒めているところだろうか。
それ以外はいつも通りに完璧なメイド長だった。
「お代の方は、どうなさいますか?」
「今回はいいよ。そのかわり、少し聞かせてほしいことがあるんだけど」
いつものように珍しい品を用意しようとしていたであろう彼女は、少し驚いた顔でこちらをみる。
が、それも一瞬。
次の瞬間には、普段の彼女に戻っていた。
「そんなに込み入ったことではないよ。この幻想郷は君にとっての楽園なのか、っていう質問なんだ」
僕の問いに対し、メイド長は悩む素振りすら見せずに即答した。
「私は紅魔館のメイド長、十六夜 咲夜。
お嬢様にお仕えする者です。
私の運命は常にお嬢様と共に。
ならば私にとっての楽園とは即ち、お嬢様の傍にのみあるでしょう」
答えた後、非の打ち所のない一例とともに、咲夜は姿を消した。
やはりメイド長は忙しいのだろう。
そう結論付けた僕は、そのまま紅魔館の奥へと進んでいく。
楽園は主の傍にと彼女は言った。
ならばその主の楽園は、どこにあるのだろうか。
「少なくとも私には必要ないものね」
客間にたどり着いた僕を、まるで待ち構えていたように出迎えたレミリア・スカーレット。
彼女は、僕の楽園とは? という問いに対してこう返した。
「必要無い、とは?」
在るけれども必要ないのか。無いからこそ必要ないのか。
そんなニュアンスを込めて問いかける。
「そうねえ」
言葉を探しながらレミリアがテーブルをトントンと叩く。
直後、何の前触れもなくテーブルの上に大量のな品物が現れた。
「ねえ、店主。これがなんだかわかる?」
その品々を指差しながら彼女が言う。
僕はその物品を手に取ってみた。
道具の名前と用途が頭の中に浮かび上がってくる。
名前は様々なものがあったが、その用途は一つ。
「吸血鬼を殺すためのアイテム、か」
僕の呟きに、レミリアはそうだと頷いた。
「そのとおり。これらのアイテムは、このレミリア・スカーレットの首を落とすために作られたものよ」
正確には吸血鬼全般をさしているから、レミリアだけを狙ったものではないのだろうが。
僕は黙って聞き役に徹する。
「これでもまだほんの一部よ。
もっと多くの兵器が、この私に対して用いられたわ。
もちろんその兵器が最初からあったわけではない。
私に負けた経験を持って、改良していった結果ね。
何が面白いかと言えば、この兵器達は精々五十年程度の間にここまで造られたということね」
どんなものでも、新しくするというのは難しいものだ。。
生き物自体が、急激な変化を受け入れるようにできていないからだ。
「おそらく、この私を打ち倒さんが為に寝る間も惜しんで作り上げたのだろう品々。
そんな品を持ったハンター共が、懲りもせず飽きもせず戦いを挑んできたのが外の世界よ」
ここまで喋って、一息つく。
そして姿勢を直して再び喋り出す。
ここからが本番だと、僕も姿勢を正した。
「ところが、ここにはそれがない。
門番と手合わせをするような輩まで出る始末よ。
私を憎み、恐れながらも果敢に立ち向かってくるような者がいない。
それどころか、馴れ合おうとしている風でさえある」
僕は会話を盛り上げるため、あえてレミリアに意見を述べてみる。
「それなら、君から動いてみてはどうだい?
君は吸血鬼なのだから」
いくつもの制約を抱えてなお、恐怖の対象となりえる吸血鬼。
レミリアがその気になれば、幻想郷を荒らすことなど容易いだろう。
「ふん。
その結果が今の有様よ。
このレミリア・スカーレットが、退屈しのぎの道化役になってしまった」
実におもしろくなさそうに彼女が呻く。
「店主。
確かに私は吸血鬼、レミリアという名の吸血鬼だ。
だが同時に、私は貴族でもある。
スカーレットという名の大貴族よ。
貴族には貴族の矜持があるの。
舞踏会で武器を振り回すような野蛮人にはなるわけにはいかないし、そもそもなることができないのよ」
矜持、誇り。
決して蔑ろにはできないもの。
吸血鬼としても、貴族としても、捨てられないものなのだろう。
だからこそ彼女は強いのだ。
なんとなくそう思った。
「だから私はこう答える。
幻想郷は確かに楽園だけど、この私には相応しくないとね」
その答えに僕は思わず感心してしまった。
望まぬ楽園に、矜持のみで留まろうというのだ。
そのどこまでも不遜な物言いは、まさに尊敬にさえ値するものだろう。
「ふう。つまらない話をしてしまったわね。後で咲夜に欲しいものでも言っておくといいわ」
この程度では、カップの対価にすらならないと。
そう言い残して彼女は奥に引っ込んでいった。
僕は彼女への敬意をもって、奥の通路に一礼してから客間を後にした。
「ちなみにパチュリー様は、楽園はいいから本をよこせと仰っておりました」
紅魔館の門前で、メイド長に見送りを受ける。
横では折檻を受けた門番が、既にうとうとし始めていた。
「それではこれが品物になります」
そう言って渡されたのは、パチュリーの書斎から持ってきてもらった数冊の本だ。
結局対価として、主に吸血鬼について書かれているものをいくつか譲ってもらうことにしたのだ。
「ありがとう。今日はいい話を聞かせてもらえたよ」
僕は感謝の言葉を述べながら本を受け取る。
「そう言っていただいて何よりですわ」
メイド長はそう言って一礼して見せる。
客人を相手に、最後の最後まで隙を見せないのはさすがだと思った。
「……こんなものかな」
紅魔館から香霖堂に戻ってくる頃には既に陽が落ちてしまっていた。
僕はろうそくの灯りの下で日記をつけている。
香霖堂にはランプも当然あるのだが、日記を書くにあたって雰囲気を重視しようと思ったのだ。
「うむ」
自分で書いた日記を読み返しながらひとり頷いて見せる。
今日聞いたことを、僕の中でまとめて文にしたものだ。
特に、レミリアの話が最も参考になった。
望まぬ楽園という言葉。
これを用いて考えると、一番頭を悩ませた問いに答えが見つかるのだ。
楽園なんてないと。
鈴仙の言っていたことは、つまりはこういうことになるのだろう。
私の望む楽園なんてない、と。
あるいは、輝夜と小町の意見をあわせてこういう考え方もできる。
罰がないからこそ、罪の存在が際立つ永劫不変の楽園。
罪とは即ち過去の象徴でもある、過ちをあらわすもの。
つまり鈴仙と輝夜の違いは、己の過去を拒否しているのか受け入れるのかという部分にあるのだろうという考え方だ。
もっともこちらの方は彼女たちの身の内に多分に干渉することになってしまうだろうから、日記には書かないことにする。
しかし、永劫不変、罪と罰、馴れ合い。
三者三様の意見が出てきた。
つまり楽園というものの定義は、生きる者の数だけあるということだろう。
彼女たちの語る楽園像はしかし、幻想郷の形とは少し違う気がする。
それでもなお、彼女たちは幻想郷に在るのだ。
己が内に楽園を持つ者達が、決して楽園とは言いきれない場所に在る。
まるで誰かが望んだかのように。
「最後は……これでいいかな」
いつか誰かに見られるかもしれない日記の、今日の部分の最後に、僕はまとめを書き足した。
幻想郷を楽園とするなら、それを定義できるのは幻想郷だけだ。
ならばこの幻想郷は、誰のためでもない。
強いて言うならば、幻想郷の為の楽園なのだろう。
誰かが言った。幻想郷は楽園であると。
そこでこの僕、森近 霖之助は考える。
楽園とは何なのだろう、と。
誰のためのものなのだろう、と。
もともとは普段つけている日記のネタにでもしようかと思っていたのだが、一度考えだすと中々に難しいものだ。
だが同時に面白くもあると思う。
僕にとっての幻想郷は、決して楽園ではない。
せっかく構えた店は全然繁盛しないどころか、顔見知りの少女たちに商品を持って行かれる日々だ。
だが、僕以外の者の考えは違うのかもしれない。何よりこの問いは、一人で想像するのには限度があるだろう。
ちょうど据え置きの薬が無くなってきたことだし、ついでに意見を聞いてみるのも悪くはないだろう。
そう思い立って、僕は店から出る。
目的地は永遠亭だ。
相変わらずの竹林を親切な人の案内で抜けて永遠亭にたどり着いた僕は、さっそく入口の傍にいた顔見知りの少女に問いかけてみることにした。
「やあ、少しいいかな」
彼女は香霖堂や人里に薬を運んできて売っている妖怪兎で、名前を鈴仙・優曇華院・イナバという。
決して愛想がいいとは言えない彼女だが、やはり今日もうつむき顔での受け答えだった。
「……なんですか」
相手と顔を合わせようとしない。さらに言えば、会話することを煩わしく思っている節さえある。
そんな声色だった。
僕はそんな対応にももう慣れ切ってしまっているので、臆することなく会話を続ける。
「ちょっと聞きたいことがあってね」
鈴仙は表情を変えずに僅かに首を縦に振った。質問はいいが速く済ませろ、というところだろうか。
「なに、そんなに難しいことじゃない。君にとって、この幻想郷は楽園なのかどうか。それを聞きたくてね」
質問を受けた鈴仙ははあ、とため息を吐く。
僕の質問に呆れているのだろうか。あるいは何か別のことが引っ掛かっているのだろうか。
そんなことを考えている間に、彼女は一言だけ
「楽園なんて、この世にあるわけないじゃないですか」
そう呟いてから、逃げるようにどこかへ行ってしまった。
残された僕は、その一言の意味を少し考えてみる。
彼女は幻想郷だけではなく、楽園というものの存在を否定していた。これはどういうことだろう。
しばらく考えていると、一つのひらめきが生まれる。
「そういえば、彼女は月兎だったか」
それなら少しは納得がいく。
月の住民であったのなら、地上は穢れたものだと教わってきたはずだ。
その地上にある幻想郷を、楽園ではないとするのも頷ける。
「だが……」
彼女の言葉は楽園そのものを否定していた。
これは月の者の考え方なのだろうか。
もしかしたら鈴仙独自の考え方なのかもしれない。
僕の頭の中を、様々な考えが巡っていく。
「あら。入り口で唸ってる不審者を見に来たのだけど、店主さんだったの」
考えに没頭していた僕に声がかけられる。
僕は自分が永遠亭の軒先で考えごとに没頭しているという事にようやく思い至って、少し恥ずかしくなりながらも声の主の方を向く。
「何か面白いことでもあったのかしら?」
そこにいたのは、長い黒髪と豪華な和服が印象的な永遠亭の主だった。
蓬莱山 輝夜。彼女もまた月の住人だったはずだ。
「ああ失礼。最近ふと疑問がわいてきてね。それについて頭を働かせていたんだ」
「ふーん。面白そうね。聞かせてもらえないかしら」
僕がありのままに話すと、輝夜は当然のように食いついてきた。
彼女も暇だったのだろうか。
「そんなに複雑な話じゃないんだけどね。楽園とは何かっていうのが題でね」
一息ついて、鈴仙の時と同じ質問をその主に投げかける。
「君にとって、この幻想郷は楽園と呼べる場所なのかい?」
まず最初にふぅん、と感心しているのか呆れているのかよくわからない相槌が返ってきた。
それからしばらくたって、輝夜の答えが返ってくる。
「今のところは楽園ね、幻想郷」
僕は黙ってその先を促す。
「楽園の定義は永劫不変よ」
それはそれで退屈なんだけどね、と何かを想うような輝夜の呟きが聞こえた。
「そして幻想郷。私がここに来たのはもう随分昔のことだけど、その頃と比べても何も変わっていない」
右腕を伸ばし、竹林を指差しながら言葉が続く。
「私はこの檻の外を詳しくは知らないわ。ちらっと見た程度よ。けど、だからこそこう言えるわ。昔とそっくりだって」
檻とは竹林のことだろうか。それとも大結界のことだろうか。
「ちらりと見た風景も、その時にみた人間や妖怪も。昔と何も変わっていない。
詳しく知っていけば違いも見つかるんでしょうけど、そうしなければ違いがわからないなんていうのは、つまり同じものだということよ」
なるほど、と僕は頷く。
僕が今まで生きてきた中で、幻想郷が急激な変化を見せたことはおそらくない。
「だから、楽園。おまけに退屈させないように趣向を凝らしてあるんだから、至れり尽くせりよね」
趣向とは、異変のことだろうか。
確かに、異変が起こり巫女が解決するという一連の動作は、もはや日常的なものになってしまっていると言っても過言ではないだろう。
「私の意見はこのくらいね。参考になったかしら?」
「ああ。とても参考になったよ」
それから兎たちが薬を持ってきてくれるまでの間、僕は輝夜に感謝の言葉を述べていたのだった。
「楽園なんてない、か」
薬を受け取った帰り道、僕は先ほどの二人との会話を整理していた。
特に気になったのは、鈴仙の言葉だ。
同じ月の住人だった輝夜の方は、幻想郷を楽園だといい、楽園の定義を語ってくれた。
つまり楽園はあるのだと言っている。
対して鈴仙は、楽園を否定している。
この二つの相反する意見をまとめていけば、そこそこ面白い日記が書けそうだなと思う。
同時に、この二つの意見だけでは足りないのではないのかとも思う。
「ままならないな」
深く考えようとするには、どうやっても意見が足りない。
足りないのなら、誰かに意見を求めるしかない。
「よし」
僕は行き先を変更することにした。
香霖堂ではなく無縁塚へ。
おそらく、顔見知りのサボり魔な死神、小野塚 小町がいるだろう。
「ここが楽園か、だって?」
無縁塚で寝ころんでいた死神にも同じように問いかけると、首をかしげながらこちらを見返してきた。
僕の質問の意図が読めなかったのだろう。
「ああ。まあ日記のネタ探しだと思ってくれていいよ」
「また変なことを書く日記だねえ」
この辺りはお互い慣れたものだ。
お互いに酒を酌み交わした者同士、友情めいたものがあるのだろう。
酒の力は偉大である。
「さて、楽園か」
肩に立てかけている鎌を小刻みに動かしながら、言葉を選んでいるようだ。
「そうだねえ。……店主さん。あんたはこの世界の中央には何があると思う?」
この問いは、言葉通りに受け取るものではないだろう。
死神としての小町が相手のなら、生と死で問題ないだろう。
だがおそらく小町の求める答えはそれではない。
僕は彼女に楽園を問うた。
それに関する質問ならば、小町の立場は死神ではなく楽園の最高裁判長の下にある者として考えるべきなのだ。
ならば
「そうだね……罪と罰、なんていうのはどうだい?」
生と死に値する二大概念。
生きることは罪を産み出し、死することが罰である。
僕は信じていないし、おそらく小町も信じていないだろう。
それでも会話が続くのは、お互いが求める言葉を薄々分かっているからだろうか。
酒を酌み交わした者同士、奇妙な縁が生まれているのかもしれない。
やはり酒の力は偉大である。
「まあそうさ。
世の中罪と罰が交互に巡って回ってる。
それが普通の世の中さ。
じゃあ、店主。
楽園には、罪と罰ってのがあると思うかい?」
「楽園というくらいだから、どちらも存在しないんじゃないかい?」
僕は小町の問いに問いかけを返す。
それを受けた小町はいやいや、と首を横に振りながらまた話しだす。
「楽園にだって罪はあるさ。でなきゃ追放される奴なんていないだろう。
でも罰は存在しない。
楽園の追放は、あくまで楽園を出た時点で与えられるものさ。
楽園の中にいる間は、罰を受けたとは言えないだろう?」
話を続けるために何か反論をしようとして、結局よい言葉も思いつかず、僕は小町の話を聞き続けていた。
「振り返ってこの幻想郷。ここには罪も罰もある。
例えばあたいがこうやってこっそり休憩をとっていることは罪さ。
そして、そのあたいを四季様が説教するのが罰」
「つまり、幻想郷は楽園ではないと?」
ようやく僕が口を挟むことができる間があいた。
あるいは彼女が意図的にあけたのかもしてない。
「まあね。けど、それでいいとあたいは思うよ。
もしも幻想郷が罰せられないような所だったら、あたいはずっと真面目に仕事をしなきゃならなくなる」
罪を犯すが故に罰を与えられるのか。
罰のために、罪が与えられるのか。
生死観にも似た、浅くも深い死神の言葉が耳に残った。
「罪と罰に、永劫不変か」
無縁塚に背を向け、今度こそ香霖堂へと歩きながら、考えを整理していた。
輝夜と鈴仙の、ある意味正反対な反応。
楽園を肯定した輝夜と、楽園を否定した鈴仙。
これを、小町の言った罪と罰を使ってどうにか整理できないだろうか。
僕はうんうん唸りながら道を歩いて行った。
あともう少しでひらめきそうなのに、何も思いつかない。
「まいったな」
物事を考えるにあたって、最も辛い時間だ。
自分の頭の中のことなのに、それが形にならないのだから。
そんなことを考えるうちに、香霖堂にたどり着いてしまった。
とりあえず、適当に酒でも飲んで思考をほぐそうか。
そう思いながら扉に手をかけた時、そこに小さな紙切れが挟まっているのが目に入った。
「うん?」
広げてみれば、中には綺麗な字が書かれている。
『棚にあったカップが気に入ったので貰って行きます。
お代は金庫の中に。
他にもこのようなカップがあれば買い取らせていただきます』
紙の下の方には、紅魔館と書かれていた。
「やれやれ。鍵はかけておいたはずなんだけどな」
言いつつも、きちんとお代を置いて行ってくれているだけマシだろうと許してしまう自分がいた。
「ふむ。紅魔館か」
それとは別に、僕は一つのことに思い至る。
紅魔館自体が、この幻想郷では比較的新しい存在だ。
ならば、また違った意見が聞けるのではないのだろうか。
「ふう。……行くか」
歩き疲れてはいるものの、好奇心が勝っている。
僕は蔵の中から適当にカップを見繕い、紅魔館へと向かって歩き出した。
門に背を預けて幸せそうにシエスタをしている門番の横を通り抜けて紅魔館に入った僕は、メイド長の出迎えを受けた。
「ようこそ紅魔館へ。綺麗なカップと店主を歓迎いたしますわ」
冗談めかして言っているが、カップを歓迎しているのは本当なのだろう。
チラチラと僕が持っている風呂敷を見ているのがよくわかった。
おそらくわざとあからさまに視線をよこして催促しているのだろうか。
「それはどうも、ご丁寧に」
僕も冗談めいた口調で礼を述べながら風呂敷を渡す。
メイド長は中身を確認して顔を綻ばせた。
「良い趣味です。さすがは店主」
欠点をあげるとすれば、あからさまに褒めているところだろうか。
それ以外はいつも通りに完璧なメイド長だった。
「お代の方は、どうなさいますか?」
「今回はいいよ。そのかわり、少し聞かせてほしいことがあるんだけど」
いつものように珍しい品を用意しようとしていたであろう彼女は、少し驚いた顔でこちらをみる。
が、それも一瞬。
次の瞬間には、普段の彼女に戻っていた。
「そんなに込み入ったことではないよ。この幻想郷は君にとっての楽園なのか、っていう質問なんだ」
僕の問いに対し、メイド長は悩む素振りすら見せずに即答した。
「私は紅魔館のメイド長、十六夜 咲夜。
お嬢様にお仕えする者です。
私の運命は常にお嬢様と共に。
ならば私にとっての楽園とは即ち、お嬢様の傍にのみあるでしょう」
答えた後、非の打ち所のない一例とともに、咲夜は姿を消した。
やはりメイド長は忙しいのだろう。
そう結論付けた僕は、そのまま紅魔館の奥へと進んでいく。
楽園は主の傍にと彼女は言った。
ならばその主の楽園は、どこにあるのだろうか。
「少なくとも私には必要ないものね」
客間にたどり着いた僕を、まるで待ち構えていたように出迎えたレミリア・スカーレット。
彼女は、僕の楽園とは? という問いに対してこう返した。
「必要無い、とは?」
在るけれども必要ないのか。無いからこそ必要ないのか。
そんなニュアンスを込めて問いかける。
「そうねえ」
言葉を探しながらレミリアがテーブルをトントンと叩く。
直後、何の前触れもなくテーブルの上に大量のな品物が現れた。
「ねえ、店主。これがなんだかわかる?」
その品々を指差しながら彼女が言う。
僕はその物品を手に取ってみた。
道具の名前と用途が頭の中に浮かび上がってくる。
名前は様々なものがあったが、その用途は一つ。
「吸血鬼を殺すためのアイテム、か」
僕の呟きに、レミリアはそうだと頷いた。
「そのとおり。これらのアイテムは、このレミリア・スカーレットの首を落とすために作られたものよ」
正確には吸血鬼全般をさしているから、レミリアだけを狙ったものではないのだろうが。
僕は黙って聞き役に徹する。
「これでもまだほんの一部よ。
もっと多くの兵器が、この私に対して用いられたわ。
もちろんその兵器が最初からあったわけではない。
私に負けた経験を持って、改良していった結果ね。
何が面白いかと言えば、この兵器達は精々五十年程度の間にここまで造られたということね」
どんなものでも、新しくするというのは難しいものだ。。
生き物自体が、急激な変化を受け入れるようにできていないからだ。
「おそらく、この私を打ち倒さんが為に寝る間も惜しんで作り上げたのだろう品々。
そんな品を持ったハンター共が、懲りもせず飽きもせず戦いを挑んできたのが外の世界よ」
ここまで喋って、一息つく。
そして姿勢を直して再び喋り出す。
ここからが本番だと、僕も姿勢を正した。
「ところが、ここにはそれがない。
門番と手合わせをするような輩まで出る始末よ。
私を憎み、恐れながらも果敢に立ち向かってくるような者がいない。
それどころか、馴れ合おうとしている風でさえある」
僕は会話を盛り上げるため、あえてレミリアに意見を述べてみる。
「それなら、君から動いてみてはどうだい?
君は吸血鬼なのだから」
いくつもの制約を抱えてなお、恐怖の対象となりえる吸血鬼。
レミリアがその気になれば、幻想郷を荒らすことなど容易いだろう。
「ふん。
その結果が今の有様よ。
このレミリア・スカーレットが、退屈しのぎの道化役になってしまった」
実におもしろくなさそうに彼女が呻く。
「店主。
確かに私は吸血鬼、レミリアという名の吸血鬼だ。
だが同時に、私は貴族でもある。
スカーレットという名の大貴族よ。
貴族には貴族の矜持があるの。
舞踏会で武器を振り回すような野蛮人にはなるわけにはいかないし、そもそもなることができないのよ」
矜持、誇り。
決して蔑ろにはできないもの。
吸血鬼としても、貴族としても、捨てられないものなのだろう。
だからこそ彼女は強いのだ。
なんとなくそう思った。
「だから私はこう答える。
幻想郷は確かに楽園だけど、この私には相応しくないとね」
その答えに僕は思わず感心してしまった。
望まぬ楽園に、矜持のみで留まろうというのだ。
そのどこまでも不遜な物言いは、まさに尊敬にさえ値するものだろう。
「ふう。つまらない話をしてしまったわね。後で咲夜に欲しいものでも言っておくといいわ」
この程度では、カップの対価にすらならないと。
そう言い残して彼女は奥に引っ込んでいった。
僕は彼女への敬意をもって、奥の通路に一礼してから客間を後にした。
「ちなみにパチュリー様は、楽園はいいから本をよこせと仰っておりました」
紅魔館の門前で、メイド長に見送りを受ける。
横では折檻を受けた門番が、既にうとうとし始めていた。
「それではこれが品物になります」
そう言って渡されたのは、パチュリーの書斎から持ってきてもらった数冊の本だ。
結局対価として、主に吸血鬼について書かれているものをいくつか譲ってもらうことにしたのだ。
「ありがとう。今日はいい話を聞かせてもらえたよ」
僕は感謝の言葉を述べながら本を受け取る。
「そう言っていただいて何よりですわ」
メイド長はそう言って一礼して見せる。
客人を相手に、最後の最後まで隙を見せないのはさすがだと思った。
「……こんなものかな」
紅魔館から香霖堂に戻ってくる頃には既に陽が落ちてしまっていた。
僕はろうそくの灯りの下で日記をつけている。
香霖堂にはランプも当然あるのだが、日記を書くにあたって雰囲気を重視しようと思ったのだ。
「うむ」
自分で書いた日記を読み返しながらひとり頷いて見せる。
今日聞いたことを、僕の中でまとめて文にしたものだ。
特に、レミリアの話が最も参考になった。
望まぬ楽園という言葉。
これを用いて考えると、一番頭を悩ませた問いに答えが見つかるのだ。
楽園なんてないと。
鈴仙の言っていたことは、つまりはこういうことになるのだろう。
私の望む楽園なんてない、と。
あるいは、輝夜と小町の意見をあわせてこういう考え方もできる。
罰がないからこそ、罪の存在が際立つ永劫不変の楽園。
罪とは即ち過去の象徴でもある、過ちをあらわすもの。
つまり鈴仙と輝夜の違いは、己の過去を拒否しているのか受け入れるのかという部分にあるのだろうという考え方だ。
もっともこちらの方は彼女たちの身の内に多分に干渉することになってしまうだろうから、日記には書かないことにする。
しかし、永劫不変、罪と罰、馴れ合い。
三者三様の意見が出てきた。
つまり楽園というものの定義は、生きる者の数だけあるということだろう。
彼女たちの語る楽園像はしかし、幻想郷の形とは少し違う気がする。
それでもなお、彼女たちは幻想郷に在るのだ。
己が内に楽園を持つ者達が、決して楽園とは言いきれない場所に在る。
まるで誰かが望んだかのように。
「最後は……これでいいかな」
いつか誰かに見られるかもしれない日記の、今日の部分の最後に、僕はまとめを書き足した。
幻想郷を楽園とするなら、それを定義できるのは幻想郷だけだ。
ならばこの幻想郷は、誰のためでもない。
強いて言うならば、幻想郷の為の楽園なのだろう。
永遠を体現する蓬莱人や生と死を見つめる死神、牙を抜かれた吸血鬼に向けた着眼点は面白い物がありますが、
いかんせん細かい描写が欠けている気がしてなりません。(香霖堂⇒永遠亭⇒無縁塚⇒香霖堂⇒紅魔館への道中など)
考察に重点をおいているのだとは思いますが、起承 結で終わってしまい千篇一律の念が拭えませんでした。
せっかく霖之助の一人称で話を進めているんですし、
「霖之助ならこんな考察や行動をするだろう」という内容を混ぜてみてはいかがでしょう?
内容については割りと楽しめたのでこの点数で。
霖之助ならまず自分である程度の答えを用意するのではないでしょうか
この考察の仕方なら、文や魔理沙の方がしっくりする気がします