――今日も陽炎が遠くを暈している。あの日の夏も陽炎が――
「3x+7y=・・・、おい東風谷、外にUFOでも来てるのか?おい!聞いてるのか?」
「あっ、うっ、いいえ!本日は晴天ですっ!」
外を眺めてボーっとしていた私は、驚いて立ち上がった。するとすぐに笑い声が上がる。人の失敗を笑うなんて、けしからんやつらだ。
「さて、東風谷は後で職員室へ来るように、以上」
先生がそう言った所で、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。とりあえず私は呼ばれてしまったので、職員室へと向かう。
職員室へ入ると、先生は名簿の私のコマを指差した。そこには日付ごとにチェックがあったり無かったり……
「お前が授業中話を聞いていない日数だ。親が居なくて大変なのは分かるが、睡眠はちゃんと取らんと良かんぞ。」
そう言って先生は、私の腕にプリントの束を乗せた。
「宿題のプリントだ。俺の机に乗せておいてくれ」
とりあえず仕方が無いので私はプリントの山を運んだ。重い荷物に足をよろめかせながらも、やっとのことで教室の前まで着くと扉が閉まったいる。プリントを片足で支えながら、扉を開けた。誰だ、こんな時に扉を閉めた奴は。
先生の机の上にプリントを乗せると、重荷が無くなったので、体が浮くように軽くなった。うん、自由ってすばらしい。確かにボーっとしていた私が悪いわけだがこれは少しきつ過ぎる。まったくひどい先公だ。
「ひどい先公で悪かったな」
ギクッ!後ろを振り返るとそれこそお多福の様に優しい笑顔の先生だが後ろから伝わる殺気は鬼だ。ひとまずここは誤っておこう。
「すっ、すいません……」
「いいんだよ東風谷。そんなにトイレ掃除がやりたいんならいくらでもやらせてやるから」
ううっ……やっぱり相当怒ってる。この調子だと1週間は連続掃除当番だな。
先生は笑顔だが顔に早く掃除しに行けと書いてある様なきがするので
放課後、家に帰ろうと自転車に乗ると、タイヤに穴が開いたのか、ペタンコになった。近くには直せる様な人は居ない。
仕方がない。このまま行こう・・・。ペダルを力を入れて踏み込む。思ったよりも重い。ガタガタと鳴らしながら、校門を出ると
今度は上り坂。仕方がない。押していこう・・・。坂を上がりきった所で、自転車に乗る。さっきまでが嘘のように下り道を滑っていく。
ガタガタと騒音を立てているが、きっと大丈夫だ。ここから家までは、ずっと下り道なので、きっと大丈夫だろう。
下り道を下っていくと、小さな神社が見えた。
「こんな所に神社あったっけ…」
私は自転車を止めて、神社へ入っていった。見た感じでは誰も住んでいなそうな感じだ。
「はくれい…じんじゃ?」
読みにくい字で、そう柱に彫ってある。良く見ようと顔を近づけると、後ろから声が聞こえた。
「早苗ちゃん、あんまり見てると虫がつくよ」
ご近所の叔母さんだ。確かに変な虫がいそうな気配がある。
「おばちゃん、こんなとこに神社あったっけ?」
「つい昨日まで草で覆われてたからね、今日草刈したばっかりなのよ」
「ふーん…」
そういえばここは草がぼぉぼぉだったなぁと思いつつ、私は自転車に乗った。
坂道を降りていくと、やっと家に着いた。
「ただいまっ」
そう言って家に入るが、返事はない。まぁ私しか暮らしてないんだから当たり前か……
また外へ出て、タイヤを見ると、穴は案外小さかった。たぶんボンドで直るだろう。速乾ボンドで穴を塞ぎ、空気を入れると、
意外とちゃんと膨らんだ。これで大丈夫だ。私は自転車を車庫へ入れると、家に入った。
「はぁー、疲れたー」
思いっきりソファーに座り込み、雑誌を広げる。
「夏の幽霊特集。か・・・」
恐怖をそそる様な変な形の字で書いてある。そこには霊感能力者が暴くとか死の人形とか書いてある。
「実在した神様?」
その隅に、なぜか引かれる見出しがあった。どれどれ…なるほど。なにやら山奥の神社に巨大な蛙が居たらしい。……くだらん。第一それは妖怪だと思うんだけどなぁ。私は雑誌を閉じると、布団を敷きに行った。襖を開けると、線香のにおいがする。線香の香る布団を敷きそこに潜り込むと、私は目を閉じた。
次の朝、私は鳥の声で目覚めた。まるで春のような気持ちのいい目覚め、時計の針は……
「うわっ! こんな時間!」
時計の針は7時40分を指している。急いで着替えて自転車に飛び乗る。ボサボサのかみは仕方が無いという事にしておこう。
――15分後、私は一応席に着く事ができた。全速力で突っ込んだから駐輪場の鉄板が凹んでた記憶があるけどそこは気にしない。
大きく深呼吸をしたとき、先生が教室へ入ってきた。また退屈な授業が始まる。私はあまりこういった忙しい作業は向いてないと思う。
受験勉強や成績なんかどうでもいい。まぁ将来の事を考えると気にしなくちゃいけないのは分かるけど……。そんな事を考えてるとまた眠気が襲ってきた。私がボーっとし始めたところで頭にチョークが飛んでくる。おでこに直撃したチョークは既に木端微塵になっている。なんという力……。
もちろん目覚めた私は後方に倒れる。眠いときに寝るのは健康体だ、ここまでする必要は無いと思うのだが。
退屈な授業が終わり、私は自転車を取りに駐輪場へ向かった。もちろんトイレ掃除も終わっている。
「……あぁ、やばい……」
朝のは気のせいじゃなかった、後ろの鉄板が半分はがれてる。見つかったら十中八九トイレ掃除延長だ、勘弁してほしい。
私は早めに出る事にした。理由は簡単。先公に会わないためだ。思いっきりペダルを踏み込む。いつもの坂を上がり、下る。
途中でまたあの神社が見えたが、今日は特に興味も湧かないので無視して通り過ぎた。
家に着いた私は、夕飯の準備を始めた。次第に香ばしい香りが広がる。焦げている訳ではない。ふと窓を見ると、小さな蛙が窓に張り付いている。
窓を開けて、近くにあった棒でつつくと蛙は何処かへ飛んでいった。
後日、なぜか私は早めに登校した。部活動をしている生徒を除いては、学校に居ないので教室には誰も居ないはずだ。つまり私が1番乗りだ。
……と思われたが、教室の中には既に人が居た。メガネにおさげ、話した事が無い奴だ。しばらくの間沈黙のときが流れる。
「……おはよう…ございます。」
「おっ、おはよう…」
沈黙を破ったのは、彼女のほうだった。私は対人関係はあまり得意ではないのでこういうのはこそばい。
もじもじしている私に、彼女は机から1冊の本を出し、差し出した。
「読みますか?」
「あっ、う、お言葉に甘えて」
本を受け取り、表紙を見ると、如何にもな字で日本の怪談と書いてある。
「こういったのが趣味なんだ~」
最近の子供の心理はよく分からない。
「変ってるってよく言われる」
そう言って、彼女は少しだけ笑った。
「ありがと、借りてくね。私は東風谷 早苗」
「私は谷屋 千春」
――青い世界は眩しくて、私の濁った目には映らない。陽炎の夏は、夢のように過ぎて行き――
それからの日々、私は毎日早めに学校へ行っていた。勿論友達に会うためである。
いつものように、駐輪場に自転車を止めて、いつものように校舎へ向かう。いつものように教室へ入るといつもとは違う雰囲気が
教室に漂っている。
「まだ谷屋さん来てないのかなぁ」
そう呟いて、私は席に座った。するとその時、教室の外のほうで悲鳴が上がった。急いで駆けつけると、谷屋さんが数人の生徒に囲まれている。
彼女のいたるところには真新しい傷がある。囲んでいた生徒の1人が、手をふり上げた時、私は反射的に彼女をかばうような姿勢をとっていた。
「どけよコラァ!」
柄の悪い生徒が脅しを掛ける。まったく最近の若いもんは……。私は谷屋さんの腕をつかんで走った。あいつらは怒声を上げながら追いかけてくる
しばらく走ると、その怒声も聞こえなくなった。
「大丈夫?」
声を掛けると、彼女は小さくうなずいて少し笑った。このまま学校へ戻るのもあれなので、私は彼女を家に送った。
私も今日は行く気がしないから休もう。決してズル休みではない。
足が重い。今日は気分が冴えないが2日連続で無断欠席するのもよくないので登校する事にした。
階段を上がり、教室の扉を開けたとき、腹部に違和感を感じた。下を見ると……棒
「……うぐっ!」
中にいた生徒が、私の腹部をほうきで突いた。不意を付かれた私はお腹を押さえる。痛みで霞む目を開けると、昨日の柄の悪い奴らが嫌な笑みを浮かべている。そのうちの一人が、私の髪の毛を掴んで引っ張った。抵抗なしに私は床に倒れる。無防備な状態の私を、奴らは何度も踏みつける。
周り中から笑い声が聞こえる。微かに目を開けてみると、踏みつける足に見覚えのある足があった。
「――! 谷屋さん」
何故? 何故彼女は私を踏みつけるんだろう。答えはすぐに見つかった。彼女にとって私は友達なんかじゃなかったんだ。私が一方的に彼女の事を友達だと思い込んでいたんだ。そう考えている時、私は蹴飛ばされロッカーにぶち当たった。私は力を振り絞って状態を立て直した。
それを見たあいつ等は少しだけ警戒したようだったが、直ぐに近づいて来る。
「……来るな…」
「あぁん?」
「近づいて来るなぁ!!」
叫んだ瞬間、一番近かった生徒が吹き飛び、窓ガラスが割れた。吹き飛んだ生徒は頭から血を流して動かない。
「やっ、やばいコイツ! 逃げろ!」
敗北濃厚を悟ったのか一気に散って逃げ出したが、私も逃がすつもりは無い。私は落ちていた金属バットを拾うと、開かないドアを開けようとする1人の頭をかち割る。赤いのか黒いのか分からないものが飛び散る。それが動かなくなったところで私は次の標的を定める。
「待ってくれ! 仕方なかったんだ、あたしは悪く無い!」
言動無用。そいつの頭も思いっきり叩く。
「うぉりゃぁぁぁ!」
1人が飛び掛ってきたが、そんな攻撃私には通用しない。そいつの頭も叩き割った。灰色のバットが見る見るうちに赤黒く変っていく。
――残るは1人。
「まって東風谷さん、私たち友達よね?」
今更何言ってんだ。私は無慈悲にそれも叩き割った。周りは赤いものでいっぱいになっている。
私はバットを捨ててベランダに出ると、手すりに立った。
自殺ではない。なぜか飛べそうな気がした。飛び降りると、地面に落ちる事も無く、浮いている。
――楽しい過去は霞んでいるのに、何で見たくない過去はこんなにも鮮明に残っているんだろう――
うーん、もう朝か……。流石に小さい神社はほこりだらけで、お世辞にも寝心地がいいとは思わなかった。
耳を立てると、私の家の方向からサイレンの音が聞こえる。多分警察だろう。つかまると面倒だ、まぁ流石に空飛ぶ逃亡犯は捕まえられないと思うけど。私は神社を出ると、当ても無く飛び立った。どこでもいい、静かなところ、深い森なんかに住みたい。
しばらく飛ぶと、昔話のような山々が連なる場所に来た。見ると、上のほうに神社がある。あそこなら人もあんまりいないし快適に暮らせるだろう。 神社へ降り立つと、本当に誰もいない。坊主一人いない。
「おっかしいなぁ、まぁ誰もいないほうが楽なんだけど」
私は誰もいない神社に上がった。すると何かの気配を感じた。奥から低い女の声が聞こえる。
「神の社に土足で上がりこむたぁ良い度胸してるね、あんた」
声のほうへ振り向くと、太いしめ縄を背負った女がこちらを睨み付けている。
「神様かなんか知らないけど、今すぐ出て行ったら殺さないであげる。」
「ほぉ~、やってみなよ」
私が脅してもまったく動じない。よし、今からその選択を後悔させてやる!私は5つの光の玉を作り、投げつけた。ブゥーンと音を立てて進んでいく。昨日暇つぶしに作った技だ。人間程度にこれができるはずが無い。だが女はそれにも動じず、軽くよけた。
「あれだけ言っておいてこの程度かい?」
へらへらと挑発してくる。別にこれくらい避けられたってどうでもいい。ほんの序の口だ。
「これからが本番だよ!」
私は両手を前に構えた。白い光が両手の中心で渦を描いていく。それが大きく成長したところで。フリスビーの様に投げる。高速で回転しながら女に向かって進んでいく。これで真っ二つだ!
「……こんなもんかい」
女は私の会心の一撃を、軽々と片手で潰した。そんな…こいつ何者…、すると幾つもの赤い流線状の光が飛んでくる。すべて命中したが、確実に絶命しないところを狙って撃ってきてる。私は吹き飛ばされ、そのまま倒れた。
「ほら、あんたが勝ったんだから煮るなり焼くなり好きにしなさいよ」
「あんた人間にしては強いね、どうだい? 家で働かないかい?」
少し考えるような素振りを見せて、女は言った。
「えっ?」
「だから家の神社の巫女になれって事だよ。最近引越し作業で忙しいからな。それにここまで来たって事はどうせ帰る場所無いんだろ」
そう言って差し出されたては、何故か滲んでいたけれど、とても暖かく、大きく見えた。
「早苗~、お茶まだ~?」
奥から洩矢様の声が聞こえる。私はいい声を作り、少し待ってくださいという。まったく人使いの荒い方々だ。
私はできるだけ丁寧にお茶を出し、石段の掃除に移った。暫くほっときぱなしだったからコケがたくさん生えている。
遠くを見ると、幻想の山々が陽炎に揺れていた。もしかしたらこんな日々が幸せなのかも。と柄にもない臭いことを考えて、私はたわしで石を磨き始めた。
「3x+7y=・・・、おい東風谷、外にUFOでも来てるのか?おい!聞いてるのか?」
「あっ、うっ、いいえ!本日は晴天ですっ!」
外を眺めてボーっとしていた私は、驚いて立ち上がった。するとすぐに笑い声が上がる。人の失敗を笑うなんて、けしからんやつらだ。
「さて、東風谷は後で職員室へ来るように、以上」
先生がそう言った所で、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。とりあえず私は呼ばれてしまったので、職員室へと向かう。
職員室へ入ると、先生は名簿の私のコマを指差した。そこには日付ごとにチェックがあったり無かったり……
「お前が授業中話を聞いていない日数だ。親が居なくて大変なのは分かるが、睡眠はちゃんと取らんと良かんぞ。」
そう言って先生は、私の腕にプリントの束を乗せた。
「宿題のプリントだ。俺の机に乗せておいてくれ」
とりあえず仕方が無いので私はプリントの山を運んだ。重い荷物に足をよろめかせながらも、やっとのことで教室の前まで着くと扉が閉まったいる。プリントを片足で支えながら、扉を開けた。誰だ、こんな時に扉を閉めた奴は。
先生の机の上にプリントを乗せると、重荷が無くなったので、体が浮くように軽くなった。うん、自由ってすばらしい。確かにボーっとしていた私が悪いわけだがこれは少しきつ過ぎる。まったくひどい先公だ。
「ひどい先公で悪かったな」
ギクッ!後ろを振り返るとそれこそお多福の様に優しい笑顔の先生だが後ろから伝わる殺気は鬼だ。ひとまずここは誤っておこう。
「すっ、すいません……」
「いいんだよ東風谷。そんなにトイレ掃除がやりたいんならいくらでもやらせてやるから」
ううっ……やっぱり相当怒ってる。この調子だと1週間は連続掃除当番だな。
先生は笑顔だが顔に早く掃除しに行けと書いてある様なきがするので
放課後、家に帰ろうと自転車に乗ると、タイヤに穴が開いたのか、ペタンコになった。近くには直せる様な人は居ない。
仕方がない。このまま行こう・・・。ペダルを力を入れて踏み込む。思ったよりも重い。ガタガタと鳴らしながら、校門を出ると
今度は上り坂。仕方がない。押していこう・・・。坂を上がりきった所で、自転車に乗る。さっきまでが嘘のように下り道を滑っていく。
ガタガタと騒音を立てているが、きっと大丈夫だ。ここから家までは、ずっと下り道なので、きっと大丈夫だろう。
下り道を下っていくと、小さな神社が見えた。
「こんな所に神社あったっけ…」
私は自転車を止めて、神社へ入っていった。見た感じでは誰も住んでいなそうな感じだ。
「はくれい…じんじゃ?」
読みにくい字で、そう柱に彫ってある。良く見ようと顔を近づけると、後ろから声が聞こえた。
「早苗ちゃん、あんまり見てると虫がつくよ」
ご近所の叔母さんだ。確かに変な虫がいそうな気配がある。
「おばちゃん、こんなとこに神社あったっけ?」
「つい昨日まで草で覆われてたからね、今日草刈したばっかりなのよ」
「ふーん…」
そういえばここは草がぼぉぼぉだったなぁと思いつつ、私は自転車に乗った。
坂道を降りていくと、やっと家に着いた。
「ただいまっ」
そう言って家に入るが、返事はない。まぁ私しか暮らしてないんだから当たり前か……
また外へ出て、タイヤを見ると、穴は案外小さかった。たぶんボンドで直るだろう。速乾ボンドで穴を塞ぎ、空気を入れると、
意外とちゃんと膨らんだ。これで大丈夫だ。私は自転車を車庫へ入れると、家に入った。
「はぁー、疲れたー」
思いっきりソファーに座り込み、雑誌を広げる。
「夏の幽霊特集。か・・・」
恐怖をそそる様な変な形の字で書いてある。そこには霊感能力者が暴くとか死の人形とか書いてある。
「実在した神様?」
その隅に、なぜか引かれる見出しがあった。どれどれ…なるほど。なにやら山奥の神社に巨大な蛙が居たらしい。……くだらん。第一それは妖怪だと思うんだけどなぁ。私は雑誌を閉じると、布団を敷きに行った。襖を開けると、線香のにおいがする。線香の香る布団を敷きそこに潜り込むと、私は目を閉じた。
次の朝、私は鳥の声で目覚めた。まるで春のような気持ちのいい目覚め、時計の針は……
「うわっ! こんな時間!」
時計の針は7時40分を指している。急いで着替えて自転車に飛び乗る。ボサボサのかみは仕方が無いという事にしておこう。
――15分後、私は一応席に着く事ができた。全速力で突っ込んだから駐輪場の鉄板が凹んでた記憶があるけどそこは気にしない。
大きく深呼吸をしたとき、先生が教室へ入ってきた。また退屈な授業が始まる。私はあまりこういった忙しい作業は向いてないと思う。
受験勉強や成績なんかどうでもいい。まぁ将来の事を考えると気にしなくちゃいけないのは分かるけど……。そんな事を考えてるとまた眠気が襲ってきた。私がボーっとし始めたところで頭にチョークが飛んでくる。おでこに直撃したチョークは既に木端微塵になっている。なんという力……。
もちろん目覚めた私は後方に倒れる。眠いときに寝るのは健康体だ、ここまでする必要は無いと思うのだが。
退屈な授業が終わり、私は自転車を取りに駐輪場へ向かった。もちろんトイレ掃除も終わっている。
「……あぁ、やばい……」
朝のは気のせいじゃなかった、後ろの鉄板が半分はがれてる。見つかったら十中八九トイレ掃除延長だ、勘弁してほしい。
私は早めに出る事にした。理由は簡単。先公に会わないためだ。思いっきりペダルを踏み込む。いつもの坂を上がり、下る。
途中でまたあの神社が見えたが、今日は特に興味も湧かないので無視して通り過ぎた。
家に着いた私は、夕飯の準備を始めた。次第に香ばしい香りが広がる。焦げている訳ではない。ふと窓を見ると、小さな蛙が窓に張り付いている。
窓を開けて、近くにあった棒でつつくと蛙は何処かへ飛んでいった。
後日、なぜか私は早めに登校した。部活動をしている生徒を除いては、学校に居ないので教室には誰も居ないはずだ。つまり私が1番乗りだ。
……と思われたが、教室の中には既に人が居た。メガネにおさげ、話した事が無い奴だ。しばらくの間沈黙のときが流れる。
「……おはよう…ございます。」
「おっ、おはよう…」
沈黙を破ったのは、彼女のほうだった。私は対人関係はあまり得意ではないのでこういうのはこそばい。
もじもじしている私に、彼女は机から1冊の本を出し、差し出した。
「読みますか?」
「あっ、う、お言葉に甘えて」
本を受け取り、表紙を見ると、如何にもな字で日本の怪談と書いてある。
「こういったのが趣味なんだ~」
最近の子供の心理はよく分からない。
「変ってるってよく言われる」
そう言って、彼女は少しだけ笑った。
「ありがと、借りてくね。私は東風谷 早苗」
「私は谷屋 千春」
――青い世界は眩しくて、私の濁った目には映らない。陽炎の夏は、夢のように過ぎて行き――
それからの日々、私は毎日早めに学校へ行っていた。勿論友達に会うためである。
いつものように、駐輪場に自転車を止めて、いつものように校舎へ向かう。いつものように教室へ入るといつもとは違う雰囲気が
教室に漂っている。
「まだ谷屋さん来てないのかなぁ」
そう呟いて、私は席に座った。するとその時、教室の外のほうで悲鳴が上がった。急いで駆けつけると、谷屋さんが数人の生徒に囲まれている。
彼女のいたるところには真新しい傷がある。囲んでいた生徒の1人が、手をふり上げた時、私は反射的に彼女をかばうような姿勢をとっていた。
「どけよコラァ!」
柄の悪い生徒が脅しを掛ける。まったく最近の若いもんは……。私は谷屋さんの腕をつかんで走った。あいつらは怒声を上げながら追いかけてくる
しばらく走ると、その怒声も聞こえなくなった。
「大丈夫?」
声を掛けると、彼女は小さくうなずいて少し笑った。このまま学校へ戻るのもあれなので、私は彼女を家に送った。
私も今日は行く気がしないから休もう。決してズル休みではない。
足が重い。今日は気分が冴えないが2日連続で無断欠席するのもよくないので登校する事にした。
階段を上がり、教室の扉を開けたとき、腹部に違和感を感じた。下を見ると……棒
「……うぐっ!」
中にいた生徒が、私の腹部をほうきで突いた。不意を付かれた私はお腹を押さえる。痛みで霞む目を開けると、昨日の柄の悪い奴らが嫌な笑みを浮かべている。そのうちの一人が、私の髪の毛を掴んで引っ張った。抵抗なしに私は床に倒れる。無防備な状態の私を、奴らは何度も踏みつける。
周り中から笑い声が聞こえる。微かに目を開けてみると、踏みつける足に見覚えのある足があった。
「――! 谷屋さん」
何故? 何故彼女は私を踏みつけるんだろう。答えはすぐに見つかった。彼女にとって私は友達なんかじゃなかったんだ。私が一方的に彼女の事を友達だと思い込んでいたんだ。そう考えている時、私は蹴飛ばされロッカーにぶち当たった。私は力を振り絞って状態を立て直した。
それを見たあいつ等は少しだけ警戒したようだったが、直ぐに近づいて来る。
「……来るな…」
「あぁん?」
「近づいて来るなぁ!!」
叫んだ瞬間、一番近かった生徒が吹き飛び、窓ガラスが割れた。吹き飛んだ生徒は頭から血を流して動かない。
「やっ、やばいコイツ! 逃げろ!」
敗北濃厚を悟ったのか一気に散って逃げ出したが、私も逃がすつもりは無い。私は落ちていた金属バットを拾うと、開かないドアを開けようとする1人の頭をかち割る。赤いのか黒いのか分からないものが飛び散る。それが動かなくなったところで私は次の標的を定める。
「待ってくれ! 仕方なかったんだ、あたしは悪く無い!」
言動無用。そいつの頭も思いっきり叩く。
「うぉりゃぁぁぁ!」
1人が飛び掛ってきたが、そんな攻撃私には通用しない。そいつの頭も叩き割った。灰色のバットが見る見るうちに赤黒く変っていく。
――残るは1人。
「まって東風谷さん、私たち友達よね?」
今更何言ってんだ。私は無慈悲にそれも叩き割った。周りは赤いものでいっぱいになっている。
私はバットを捨ててベランダに出ると、手すりに立った。
自殺ではない。なぜか飛べそうな気がした。飛び降りると、地面に落ちる事も無く、浮いている。
――楽しい過去は霞んでいるのに、何で見たくない過去はこんなにも鮮明に残っているんだろう――
うーん、もう朝か……。流石に小さい神社はほこりだらけで、お世辞にも寝心地がいいとは思わなかった。
耳を立てると、私の家の方向からサイレンの音が聞こえる。多分警察だろう。つかまると面倒だ、まぁ流石に空飛ぶ逃亡犯は捕まえられないと思うけど。私は神社を出ると、当ても無く飛び立った。どこでもいい、静かなところ、深い森なんかに住みたい。
しばらく飛ぶと、昔話のような山々が連なる場所に来た。見ると、上のほうに神社がある。あそこなら人もあんまりいないし快適に暮らせるだろう。 神社へ降り立つと、本当に誰もいない。坊主一人いない。
「おっかしいなぁ、まぁ誰もいないほうが楽なんだけど」
私は誰もいない神社に上がった。すると何かの気配を感じた。奥から低い女の声が聞こえる。
「神の社に土足で上がりこむたぁ良い度胸してるね、あんた」
声のほうへ振り向くと、太いしめ縄を背負った女がこちらを睨み付けている。
「神様かなんか知らないけど、今すぐ出て行ったら殺さないであげる。」
「ほぉ~、やってみなよ」
私が脅してもまったく動じない。よし、今からその選択を後悔させてやる!私は5つの光の玉を作り、投げつけた。ブゥーンと音を立てて進んでいく。昨日暇つぶしに作った技だ。人間程度にこれができるはずが無い。だが女はそれにも動じず、軽くよけた。
「あれだけ言っておいてこの程度かい?」
へらへらと挑発してくる。別にこれくらい避けられたってどうでもいい。ほんの序の口だ。
「これからが本番だよ!」
私は両手を前に構えた。白い光が両手の中心で渦を描いていく。それが大きく成長したところで。フリスビーの様に投げる。高速で回転しながら女に向かって進んでいく。これで真っ二つだ!
「……こんなもんかい」
女は私の会心の一撃を、軽々と片手で潰した。そんな…こいつ何者…、すると幾つもの赤い流線状の光が飛んでくる。すべて命中したが、確実に絶命しないところを狙って撃ってきてる。私は吹き飛ばされ、そのまま倒れた。
「ほら、あんたが勝ったんだから煮るなり焼くなり好きにしなさいよ」
「あんた人間にしては強いね、どうだい? 家で働かないかい?」
少し考えるような素振りを見せて、女は言った。
「えっ?」
「だから家の神社の巫女になれって事だよ。最近引越し作業で忙しいからな。それにここまで来たって事はどうせ帰る場所無いんだろ」
そう言って差し出されたては、何故か滲んでいたけれど、とても暖かく、大きく見えた。
「早苗~、お茶まだ~?」
奥から洩矢様の声が聞こえる。私はいい声を作り、少し待ってくださいという。まったく人使いの荒い方々だ。
私はできるだけ丁寧にお茶を出し、石段の掃除に移った。暫くほっときぱなしだったからコケがたくさん生えている。
遠くを見ると、幻想の山々が陽炎に揺れていた。もしかしたらこんな日々が幸せなのかも。と柄にもない臭いことを考えて、私はたわしで石を磨き始めた。
設定もおかしいし細かいところでも変なところが多すぎて終始違和感が付きまといます。
いえいえ、誤らなくていいです
発想は特に悪くないと思いますので、これとあなたの成長への期待を考慮した点数をつけます。
次回作期待しています!
さすがに風祝とかの設定を無視するのはありえない
でも残念ながら2度と書かないというのは無理だと思うので、18の方は名前を見たときに読まないようにしてください。
初投稿ですし、これからの精進に期待します。
まずは公式設定を意識することかな…?
とりあえず東方WIKI等を読み漁り、また挑戦したいと思います。
その時はまた「あぁアイツか」みたいな感じで読んで頂けたら幸いです。
それと。勢いだけで書いたものを投稿しないでください。推敲って知ってますか?
まぁ、なんやかんや言いましたけど、文章力はそこまで低くないと思うので。応援してますよ。