Coolier - 新生・東方創想話

天子の贈り物

2009/06/08 00:31:28
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これは作品集75に投稿した
『変わる者、変える者』の続きのような話ですので
もし読んでいなければそちらから読んでいただく事を推奨します。










春の暖かさも何時しか暑さに変わり始めた、
そんな初夏を感じるようになったある日、衣玖は天子に呼び出された。

天界の一角、
広大に広がる桃畑に衣玖は降り立つ。
桃畑の桃達は熟れ始めて辺りに仄かに甘い香りを漂わせていた。

その香りを心地よく思いながら衣玖は自分を呼び出した天子の姿を探す。

「総領娘様?総領娘様どこですかー?」

衣玖は声を上げて天子を捜すが近くにいないのか、それともまだ来ていないのか
その姿は一向に見つからない。

まいったものだ、突然使いの者が訪れて呼び出された。

しかし、呼び出されたはいいが、使いの者は桃畑にいるとしか伝えてくれなかった。
天界の桃畑はとにかく広い。
この広大な空間から人一人を見つけるのはなかなか至難である。
こんな事ならもっと詳しく使いの者に話しを聞いておくべきであった。

もしも、捜すのであれば時間がかかってしまう。
衣玖はこれからの用事を思い頭を抱える。

今日はこれから行かなくてはいけない場所があった。
以前出合った兎、その師匠からのお願いらしく、何でも彼女達の屋敷には一人だけ
穀潰しいてホトホト困っているためどうにかしてほしいとの事だった。

天子、パルスィ、その他諸々を上手い具合に更生できた自分の実力を見込んでの依頼であった。

そのため、今日は竹林の方に行かなければならなかった。
約束の時間はまだ一時間程先だが、移動時間を考えると
此処であまり時間を潰すわけにはいかない。

いっその事バックれてしまおうか、と思い始めた時

「衣玖ー」

少し離れた場所から自分の名を呼ぶ天子の声が聞こえた。

声の方に振り向けば天子が笑顔でこちらに走ってくる姿が目に映った。

時間にして三十秒程で天子は衣玖の元に辿り着いた。
彼女は息を切らし額には珠のような汗を幾つも浮べていた。
多分自分が此処に来る前からこの広大な桃畑の中を走り回って
自分を捜していたのだろう。

天子はハァハァと荒い息を吐きながら何とか呼吸を整えようとしていた。
二度三度と深く呼吸をして改めて衣玖の名を口にした。

「来て、くれたのね、衣玖、……その、待ったかしら?」

ハァハァと息を切らしながら言う彼女の不安そうな声に
衣玖は『いえ、私は今来た所です』と優しく微笑んだ。

その言葉に天子は安堵の溜息をついた。

「よかった、使いの子に、私が、何処で待ってるか、伝えて、いなかったから
もしも、貴女が、私を捜していたり、貴女に、用事があったら、って思った、から」

「総領娘様、私は逃げませんから落ち着きましょう?息切れが酷いですよ?
もう少し深呼吸しましょう、はい、吸ってー、吐いてー」

「ご、ごめんなさいね」

衣玖のテンポに合わせて天子はしばらく深呼吸に集中する。

スゥー、ハァー、スゥー、ハァー

「フゥー、すごいわ衣玖、息切れが簡単に直っちゃった」

衣玖のテンポに合わせて五度ほど深呼吸をすると先程の苦しさが
嘘のように消えてしまい、天子は驚いた。

「ちょっとした呼吸方ですよ、コレを極めると十分空気を吸い続けて十分吐き続ける事も、
百キロメートル走っても息切れしなくなる事も可能なんですよ、って紅い屋敷の門番が
言っていました」

「へぇー」

その言葉に天子はただ感心していた。
目をキラキラと輝かせて感心している天子に衣玖は聞く。

「それで総領娘様、今日はどういったご用件でしょうか?」

「え?ああそうだったわ」

天子は衣玖の言葉に手を叩く

「今日はその、貴女に相談したい事があったのよ」

「相談ですか?」

「ええ、そうなの」

相談とは何の相談なのだろうか?
きっと厄介事ではないだろうが、自分を頼る相談事とはいったいなんだろう?

今の天子は昔の天子とは違う。
以前は自己中心の不良天人なんて呼ばれていたが自分の洗n……、
もとい授業(?)を受けて天子は変わった。

その事実は天界だけではなく地上にも知れている。
以前は他人任せだった身の回りの事も自分で行う様になったし、天界の桃の木の世話など
今では彼女が一番気にかけていて、毎日手入れを忘れないほどで
天子の父親も涙を流して衣玖に感謝したものだ。

そんな彼女が相談とは一体何なのだろう?

「一体どの様な事なのでしょうか?」

「う、うん、ほら私って去年の夏に幻想郷の皆に迷惑をかけたでしょ?
だから、そのお詫びがしたくて……」

自分のかつての行いを恥かしそうに語る彼女には以前の不良天人と呼ばれた頃の面影はなく
とても穏やかで、お淑やかである。

「それはいい考えではありませんか」

それなのに一体何を迷っていると言うのだろう?

「それで、お中元の時期だから贈り物をしようと思ったのだけれど……」

そこまで聞いて天子が何を迷っているのか気付いた。

天界には桃しかないのだ。

それに比べて、地上には美味しい料理も、天界と同じ桃もある。
今更桃を贈られても喜んでくれないのではないだろうか、と天子は不安なのだ。

「桃なんて、珍しくも何ともないでしょ?それに、地上には美味しい料理も沢山
あるみたいだから、その、皆喜んでくれないんじゃないかなって不安なの……」

その言葉に衣玖は首を横に振る。
それは違いますよ、と

「総領娘様、そういった贈り物は気持ちが一番大事なんですよ?
総領娘様が丹精込めて育てた桃ではありませんか、きっと皆さん喜んでくれますよ」

「本当?」

衣玖の言葉に天子は今だ不安そうにしている。

なら、

「では、桃を使ってお菓子を作ってはいかがでしょうか?」

「お菓子?」

「はい、総領娘様の手作りでしたらきっと皆さんにも誠意が伝わるはずですよ?」

「でも私は、お菓子どころか、料理も、した事ないのよ?」

語尾を弱めて顔を赤くして天子はシュンと項垂れる。
その様子を可愛く思いながら

「では、私がお手伝いしますよ」

衣玖は微笑む。

「え?でもそれじゃあ衣玖が大変じゃない?」

「大丈夫ですよ、今日はこれから少し用事がありますが明日は何もありませんから
ですから、総領娘様は今日のうちに材料を集めておいて下さい」

衣玖は必要な材料を簡単に天子に説明する。
天子は聞き逃さない様に真剣に衣玖の話を聞く。

一言一句間違えない様に何度も頭の中で言葉を反芻した。



――



衣玖は一人竹林を目指していた。

途中、先程の天子とのやり取りを思い出す。
本当に彼女は変わった。
いつも強気で、我侭で、自分勝手だった彼女の口から
あんな不安そうな言葉が聞ける日が来るとは思わなかったし
他人への贈り物に悩んだり料理が出来ない事を恥じる姿が見れるとは
思いもしなかった。

そんな天子と付き合いの長い衣玖は先程まで見ていたお淑やかな天子を見てただ思う。
今までの騒がしく、慌ただしい彼女の姿を間近で見続けていた彼女は自分の知っている
天子とは似ても似つかなくて

「気持ち悪い」

と彼女は柔らかに微笑み、ただ心の底からそう思うのでした。
いや、やったのはアンタだろう!?

――

13度目の投稿となりました。

今回は以前リクエストに『お嬢様天子も見てみたい』とあったので書いてみましたが、
何だか最後の最後に衣玖さんの黒さの際立つ話になってしまいました。

何だコレは?

そのうち他のリクエストも消化したいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

タグに『これは酷い』を追加しました。

4様
衣玖さんの以外な一面でした。
6様
たまには2Pカラーのブラック衣玖さん。
9様
最初はほのぼので終わりだったのですが、インパクトを求めたらこんな話に…
12様
自分のやった事は完全に棚に上げています。
15様
次の犠牲sy…、もとい受講者は輝夜姫です。姫様逃げてー
17様
ちょっとおちゃめな衣玖さんでした(ぉ
21様
誤字指摘に感謝いたします、修正しました。
しかし衣玖さん自分がやったのに、本当に酷い。
奇声を発する程度の能力様
冗談じゃなくなってる辺り本当に酷い事になってしまいました。
27様
本当に、衣玖さん自分でやっておいてそれはない…
29様
半分以上はみ出てる……
30様
たまには騒がしくない、お淑やか風天子もいいですよね?

コメントありがとうございました。
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コメント



0.1180簡易評価
4.100名前が無い程度の能力削除
衣玖さん!?
6.90名前が無い程度の能力削除
ひどいwwwwwだがいいwwwwww
9.80名前が無い程度の能力削除
これはひどい衣玖さん
前置きの文章が、いやSS全体が、最後の一言を鋭くしてやがるぜ
12.90名前が無い程度の能力削除
衣玖さんひでえw
15.80名前が無い程度の能力削除
ああそうか、前回天子は調きょ……もとい講習を受けたんだっけ。
17.100名前が無い程度の能力削除
衣玖さんwwwwwwひどすぎるwwwww
21.80名前が無い程度の能力削除
>本当に彼女は変った。
「変わった」じゃ?

しかしこれは酷いw
25.100奇声を発する程度の能力削除
衣玖さんwww
確かにこれは酷いwwww
27.100名前が無い程度の能力削除
衣玖さん、自分でやっといてそれはないw
29.70名前が無い程度の能力削除
うわぁ・・・w
30.100名前が無い程度の能力削除
いいじゃないかわいらしいじゃない天子