Coolier - 新生・東方創想話

飛べ、酔っ払い

2009/06/06 09:39:35
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ねぇ、羨ましいと思わない?

凄いとは思わない?
夢の世界では、少女が空を飛ぶのは、何等不思議なことではないのよ?
寧ろ、少女以外のモノが空を飛ぶことの方が不自然なわけ。
そんなものは普通過ぎるくらいで、理屈ばかりの私達の世界とは大違い。

反重力?
人間が飛行するに足る運動熱量の確保?

夢の世界では知ったことじゃないのよ。
背中の羽で飛び、箒に跨がって飛び……
揚句にはメイド服で空を舞う。
彼女達は何の疑問も持つ事なく、ただ当たり前の様に空を漂うだけ。

私は羨ましいわ。
羨まし過ぎる。
私の見ている夢なんだから、私にも空を飛ぶことぐらい出来てもいいのにね。
せっかくの夢なんだもの……

夢の中でも夢見ちゃうのも、どうかと思うけれどね。
夢で見る自分は本当の自分なんて、どこかの心理学者が言っていたような覚えがあるけれど、私はそんな説は嫌いだわ。
だって、浪漫が無いもの。
私だって、空の一つも飛んでみたいもの……

いや、違うわね――



******



「――……えーと、マエリベリー・ハーンさん?」

深夜、私の部屋で二人でお酒を飲むのは、別段変わったことではなく、寧ろまぁ通例行事となっているのだけれど、思わず敬語でフルネームを呼んでしまったのは、きっと、多分、恐らく、私の思考が正常で有る場合に限り、私の親友が今からするであろう行動を予測した場合、それが異常なものばかりであることを示している。
正直に言って、今まで彼女がお酒の肴として一方的に話していた内容と、彼女が現在進行系で行っている行動を見れば間違いないことだろう。
人間、お酒が入ると何をしでかすかわかったものではないが、おかげで私の方はすっかりお酒が抜けてしまった。

「あの、マエリベリー・ハーンさん?」

私は、改めて私の親友の名前を口に出した。
その行為は、ある意味これから起こるであろう現実を、推測を認めたくなく、逃避をするという意味合いも恐らく含まれていたに違いないだろう。
あくまで、推測のままであってほしい。
私の親友である、マエリベリー・ハーン……メリーは謗らぬ顔で、その宝石のような瞳で私を見据え、ほんの少し小首を傾げた。
ほんのりと頬が紅く、若干焦点が定まっていない……寧ろ目が据わっているような気もするけれど……
その点を除けば、その姿はどこか可愛らしく、これが普段ならば大変愛でたい衝動に襲われるのだが、今はそれどころではない。

困惑を続ける私に、彼女は不思議そうに。
本当に不思議そうに、こう言った。

「どうしたのよ、改まっちゃって?」

……天然か?
天然なのか、我が親友?
それとも狙ってやっていて、ツッコミ待ちって奴なのかしら?

「いや、ね?その、さ……」
「なによ、貴方らしくないわね」

この女、どうやら何がなんでも私に言わせたいのだろうか?
正直、本当に、出来ることなら今すぐにでも逃げたかったのだけれど……

私はふう、と短く息を吐く。

仕方が無い、できれば本当にスルーしたかった。
ここまで来たら、もう、覚悟を決めよう。

その疑問を口にした。



「……イッタイ、ナニヲシテイラッシャルノデショウカ?」



若干片言だった気もするけれど、この際気にしないでほしい。
尋ねるだけでも本当ならば勘弁願いたいことなのだから、これくらいは許して欲しい。

まぁ、どうみたところで、先ほどよりも状況が悪化した我が親友が取るであろう行動は間違いなく予想通り

「決まってるじゃない――」



あ、やばい。

私は精神学を履修しているわけではないけれど、その私から見ても、これは言える。
メリーさんは、人生に疲れてらっしゃる。
それも、非常に。



「――私も空を飛ぶのよ」



いや、ちよっと飛ぶのよって貴方。
勿論窓には転落防止用の格子が嵌められているけれど、どうやら力技で格子を外すつもりらしい。
此処、二階よ?
痛いで済むかどうか――

「メリー!ストップ!落ち着いて!」

言っている間にも彼女は窓を乗り出し、格子に強く力を込め始める。
まずい、マジか。
というか、まずい、マジだ。
あろうことか、奴はマジで飛ぼうとしている様だ。
お酒の力だろうか?
とにかくまずい。
言っているうちに、格子の右下部分のネジが、バキッという音と共に弾け飛んだ。

むぅ、此処までメリーが酔うのも珍しいなんて冷静に言っている場合ではないわ。
なんだか本気で洒落にならなくなってきた。
私はとにかくメリーの行動を止めようと、彼女と窓の間に体を入れ込む。

「どいて、蓮子」
「どかないわよ、馬鹿。あんた死にたいの?二階から落ちたら下手したら死んじゃうわよ」
「大丈夫よ、今の私なら空を飛ぶことくらい多分、どうってことないわ!」
「そんなわけあるか!」
「あるのよ!」

有無をも言わせぬ勢いに、私は思わずたじろいだ。
な、何この迫力は。
私が困惑していると、メリーはゆっくりと口を開いた。

「おばあちゃんが言っていた。DO・ITの精神で逝けば、なんでも出来るって」
「やってやれとか行くの字が違うとかそもそも出来ないわよとか色々と突っ込みを入れたいところではあるけれど、なによそのライダーっぽいおばあちゃんは!」
「おばあちゃんを馬鹿にするなーっ!」

なおもメリーは私を押しのけ、窓から飛び出そうとしている。
このままでは、押し切られるのも時間のもんだ――


――


その時、ふとした偶然が重なり、あることが起こった。
私の部屋はそこまで広い部屋ではない。
その狭い部屋でチューハイやビールをバカバカと空けていれば、足場などすぐに無くなってしまうのだ。

突然、がくんと、メリーの姿が視界から消えた。
いや、視界に入るのは部屋の天井。
私が傾いているんだ。

この時、漸く私は何が起こったのかを理解した。
メリーが空き缶を踏んで、転んだのだ。
反射的に出したのだろう、両腕で、私を突き飛ばすように倒れ込みながら。

どんと、背中に何かがぶつかった。
おそらく、窓の格子だろう。
危ない、危うく落ちるところだったわ――



『』



不気味な、嫌な音が響く。

「え?」
「おー……」

メリーの感嘆するような声。
急な浮遊感。
そう、まるで格子が壊れたような……

嫌な予感が……

とゆうか、ああ、そうか――



これ、私、落ちてるじゃん。


「ひぁぁぁぁぁぁぁああ……あぁん」



『ぐちゃ』



******



「にしても、無事で本当によかったわよねぇ」
「良かないわよ」

暢気にそう言ってのける我が親友に、私は冷ややかな視線を送る。
そもそも、全く無事等ではないのだ。

顔に出来た多くの切り傷。
右鎖骨、右腕、肋骨三本を骨折し、体中に打撲。
左足にひび。

それでよく無事とか言えるわよね。
落ちた先にゴミ袋が置かれていなければ、もっとひどい怪我を負っていたかもしれないし、下手をすれば死んでいたかもしれない。

「ごめんね、蓮子」
「うん?まぁ、いいんだけどさ、入院費なんかはメリーが出してくれているわけだし」

まぁ、私のせいだしねと、苦笑いをするメリー。

「まぁ、少し早い夏休みかと思えばね」
「……まだ五月よ?」
「入院一月、全治三、四ヶ月だそうだもの。私は右利きだし?しばらく代返よろしくー」
「あはははは、私も飛んでくるわ」

メリーじゃ飛べないわよ。
少女って年齢じゃ無いもの。

「ん?なにか言ったかしら?」
「……いいえ、何にも。たださ――」



本当に飛べれば良いのにねぇってね。
うぃー、漆野志乃でございます。
おばあちゃんが言っていた、私が書く作品はアホくさいと。
いいじゃない、アホだって。
だって人間だもの。

挨拶もそこそこに、今回は私と仮面ライダーのエピソードでも語ってみようかと思いましたが、思っただけでどうしようもありませんでした。
あ、響〇が好きです、〇鬼。
あの変身音叉、当時すげえ発想だなあと。
あとはカ〇トが軽くプライベート・スクウェアかましてる辺り\やべえ/と思った記憶があります。
けど、やっぱりAmazonですよねー。


追記っぽい何か・タグに「良い子は絶対に真似するなよ☆」を追加しました。
コメントでの指摘ありがとう。
みんな、大好きだぜっ!
漆野志乃
[email protected]
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コメント



0.1070簡易評価
8.無評価名前が無い程度の能力削除
大空に聞けwwww
11.100名前が無い程度の能力削除
この馬鹿っぽさが二人の日常っぽくてとてもいい
17.80名前が無い程度の能力削除
>メリーは謗らぬ顔で
素知らぬ、かな。

なんだこの馬鹿メリーはwww
20.70くるせいだー削除
いやまさか落ちないだろうと思ってたらマジで落ちちゃったw
29.100名前が無い程度の能力削除
おい落ちるなよと思っていたら・・・You can't do it.