Coolier - 新生・東方創想話

従者バカ、酒バカ

2009/06/05 22:11:53
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春の白玉楼―――
―――桜舞い散る中庭は少女達の狂宴の会場となる

「今日は御招き頂きありがとうございます。
紅魔館の従者代表としてご挨拶に来ました」
一人のメイド長が西行寺の当主の前に挨拶にきた
「あらあら~、そんなに硬くならなくても良いわよ~。
ここの桜が綺麗なのも春の間だけだもの、存分に楽しんでいって頂戴」
満開の桜を背にして満面の笑み、既に始まっていた宴でほろ酔いの当主は
分かっているのか分かっていないのか浮かれ半分で言ってのけた
「はい、お言葉に甘えさせていただきます。
詰まらない物ですがこれを……」
反面、紅魔館のメイド長は律儀に礼を言い一本のボトルを差し出す
―――――年代物のワインだ
「まあ~、うふふふっ、有り難く受け取って置くわ
―――よ~む~!」
薄紅に染まった頬にボトルを擦りつけながら庭師の名を呼ぶ
刹那、息を荒くして庭師が駆けてきた
「ふぅ……只今参りました、幽々子様」
「相変わらず早いのねぇ~、このワイン皆に振舞って来てくれない?」
「はい、分かりました……あまり飲みすぎないようにお願いしますね?」
主の名を受けた庭師は少し困ったように告げた
酔っぱらいは手が付けられない―――
片付けの度にセクハラされていれば嫌と言うほど分かる
「もぅ……こんな時くらい良いじゃない」
「お言葉ですが……幽々子様は酔っぱらいと言う物を良く知るべきですよ」
疑問符を浮かべる主をよそにいそいそと庭師は作業に戻る
仕事は山の様に有るのだ


――――――――――――――――――――

「さて……どれから手を付けた物か……」
庭師の仕事は減ることがない
寄贈品の振舞、酔っぱらいの介護、揉め事の仲介……多種多様に渡る
「困っているようだな、私も手伝おう」
「へ……?」
迷う庭師の背後からスキマ妖怪の式である天狐が現れた
「あら、丁度良かった私もそうしようと思っていたの
「え……?」
驚く庭師の背後から紅魔館のメイド長が現れた
二人を目の前にして天の助けと言うものを感じるが庭師は考える
二人とも今は「客人」なのだ。手伝いなど頼んで良い物か?
良い訳が無い。庭師はそう考えた
「お気持ちは有難いのですが―――――」
「迷惑か?」
「迷惑かしら?」
庭師がそう考えるのが分かっていたかの様に二人のカットが入る
妙に凄みのある二人に庭師の選択肢は無くなってしまった
「……お願いします」
「紫さまも……あの様にお世話になっているのだ、これが筋だろう」
天狐が指した場所にはスキマ妖怪が鬼と酒をかっ喰らって居た
二人の周りには15升程の冷酒の空き瓶
飲み比べにも程がある
「レミリアさまも……楽しんでいらっしゃるから、これ位はね」
メイド長が指した場所では吸血鬼が巫女と戯れて居た
巫女に懐く吸血鬼の姿にはカリスマのかけらも無い
無礼講にも程がある
「あ……あはは……ご苦労様です……」
庭師も他人ごとでは無い、視線の先には主が映っていた
歌声を披露していた夜雀に抱きついている、喰らい付くの間違いか
悪酔いにも程がある
「では……さっさと片付けてしまいましょうか」
互いに互いの主の醜態を確認すると
庭師の声で各従者たちは一斉に仕事に取り掛かった
自棄にも程がある


――――――――――――――――――――

「ふぅ……大分落ち着きましたね」
ちんどん屋の曲調が落ち着いた辺りで庭師が言う
「その様だな、一時はどうなることかと思ったが」
自分の式を連れてこなくて良かったと安堵の中で天狐が言う
「まあ、実際どうにでもなるんだけど疲れるのよね」
一段落ついて茶菓子の用意をしながらメイド長が言う
実際、時間を止めなくて済んだのが奇跡の様だった
止む事の無い注文に、収まらない騒ぎ、吸血鬼の妹のせいで桜の枝が被害を受けた
495年生きても子供、暴れだすと酔っぱらい同様手が付けられない
しかし
そんな事よりも従者達の懸念は自身らの主に向いていた
毎度の事だが、はしゃぎ過ぎでは無いかと
茶席について三人は無言で紅茶を啜る
長い沈黙の中、真っ先に口を割ったのは天狐だった
「毎度の事だが……宴となると紫さまも人が変わる」
「そうみたいね、鬼と張り合うなんて驚きよ」
控え目に言ったつもりなのだがメイド長のメスが入る
「まあ、レミリア様も似た様な物だけど……」
「あんなにじゃれ合う吸血鬼は見た事が無いな」
メイド長のフォローに天狐が仕返しとばかりに漏らす
「ま、まあ……宴会ですから、それくらいは……
ウチの幽々子様だって……」
「緩いな」
「あの夜雀、食べられないのかしら?」
胃の痛むような空気に謙遜した庭師の言葉にすら棘が飛んできた
そんな事はつゆ知らず、主たちは
酒を飲み、人に擦り寄り、雀に喰らい付く
落胆の余り庭師が爆弾を投下する
「アレは無いですね……」
やってしまった
二人の従者の眉間に皺が寄る
「アレと言うのは誰の事だ?」
「まさかレミリア様の事じゃ無いわよね?」
「あ……いえ……その」
庭師がハッとして取り繕おうとした時にはもう遅かった
二人の間に火花が散る
「ほぉ……ずいぶん過保護な従者だな」
「そっちこそ、甘やかしすぎじゃない?」
このままではマズイ、庭師の本能がそう告げる
「ほら、今日は無礼講ですし、抑え―――」
「少し黙っていてくれ、西行寺の当主の心配でもしたらどうだ?」
「あそこ、死者が出るわよ?死体が無いなら証拠も無いけど」
間に割って入れない、どころか主を蔑まれた庭師も我慢できない
「……っ!幽々子様を侮辱するな……」
「お互いさまでしょう?」
「ああ、そうだ。……話し合う必要があるみたいだな」
頭に血が上ってしまった三人は止まらない
自然と言っていいのか、話し合いになる訳も無く、弾幕ごっこが始まる
これこそが最悪の事態だった
「幽々子様の事を何も知らない癖にっ!」
「お互い様だと言っているだろう、紫様を悪く言わない事だっ!」
「あら、比べるだけ失礼だと思わないのっ!?」
人目も気にせずに激しい弾幕の撃ち合いが始まる
人目を気にしていれば良かったのだ
「弾幕はパワーだぜっ!」
「飲み比べの次は力比べ?望むところだよ!」
「貴女達は少しやりすぎる……この弾幕で少し反省すると良い!」
彼女たちの姿を見た酔っぱらいが訳も分からずに乱入、言いたい放題し始めた
それを止めに入る閻魔や巫女、されどももう止まることは無い
ここに、第一回「弾幕戦争in白玉楼」が開催された


――――――――――――――――――――

「――――地上は騒がしいわね、やっぱり野蛮だ。誘われなくて正解よ」
今回の宴会に誘われなかった天子が拗ねたように呟き
      おもむろに紙を取り出してはメモした



地上の生き物は自己主張が強い
こんばんは、こんにちは、おはようございます
くーです。
シリーズものとは別に少しずつ書いていた小説をあげてみました。
皆さんにも譲れないものありません?
わたしが譲れないのはこま×え(ry

最後まで読んで頂いた方もそうでない方もありがとうございます
感想などいただけるとありがたいです
くー
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コメント



0.380簡易評価
4.100名前が無い程度の能力削除
かわええのう
11.無評価名前が無い程度の能力削除
て、天子・・・・・。
ところで
>巫女に懐く吸血鬼の姿
をkwskですね・・・・・
12.90名前が無い程度の能力削除
そしてまさかの点数入れ忘れ。パパびっくり
13.40名前が無い程度の能力削除
うーん、なぜかはわからないけど、すごく違和感が。
16.80名前が無い程度の能力削除
面白かっただけにもうすこし長かったらな~