東方の金曜日
最終回「君がいるから:帰るべき場所は幻想郷」
「博麗霊夢・・・噂以上に殺しがいのある奴じゃ・・・。寝顔はまぁいいが。」
そう言い、キリュウは疲れ果てて眠っている霊夢に手を伸ばそうとしているその時、
ズド―――ン!!
突如、謎の光線がどこからか飛び、量産型機械人形のいる別の船を沈めた。
「な、なんじゃ!?地震、雷、火事、親父!?」
「いや、違う、マスタースパークだぜ・・・!」
混乱するキリュウにふと声がかかる。怒気を含んだ声。まさか・・・。
「幻想郷一のバリバリパワー弾幕使いの霧雨魔理沙・・・!?」
それは、怒りの表情の魔理沙だった。マスタースパークで船を沈めたのだ。
「おうよ!弾幕はパワーだぜ!黒幕が誰であれ、霊夢を返してもらおうか!!」
そう言い、キリュウにビシッと指を突き付ける魔理沙。後ろには小悪魔がコッソリ隠れている。
「ふん・・・じゃが、2人だけでこの量産型T‐J軍団+わしに勝てるかの?」
そう言うや否や、魔理沙達にゾロゾロと集まる量産型T‐J達。周りを囲み、身動きを取れなくしている。
「くっ・・・!だが、例え1人だろうとお前達の好きにさせないぜ!」
そう言い、ミニ八卦炉を構える魔理沙。じりじり近づく量産型T‐J達。その時!
「「1人じゃないっ!」」
その声が聞こえ、突如、大量の人形が量産型T‐J達に襲い掛かり、首にあるコードを切る。動かなくなる量産型T‐J達。
「な、なんじゃ!?何故動かん!?」
「その機械人形は首にあるコードを切られると活動を停止する。その欠点を取り除いたのがT‐Jよ・・・。」
またもや驚くキリュウに声が。この声、そして人形と言えば・・・。
「おぉ!アリスか!何で分かったんだ?」
魔理沙が驚く。目の前には空中を浮遊しているアリスだったのだ。
「キリュウ!Zが私達の能力を外の世界の争いに利用する為にT‐Jを使って私達を陥れたことも、天狗やメディスンを殺したのが貴方なのも、その貴方が母様(神綺)のクローンだと言う事は・・・このスパイ人形がみんな教えてくれたわ!」
そう言い、アリスは握っているものを見せる。それは・・・サブウェポンとして支給された台湾だった。
「ツカマッター!タスケテー!」
そう言い、必死にジタバタする台湾。どうやらアリスに捕まって、尋問されたらしい。量産型T‐Jの弱点もそうかもしれない。
すると、空から何かが落ちてきて、量産型T‐Jの一部を吹っ飛ばした。
それは勇儀だった。桶から顔を覗かせているキスメを抱き、怒りの表情を見せているそれは、まさに鬼だった。
「話はアリスから聞いた・・・。覚悟しろよ・・・この白髪野郎!!」
「ひょっ!?」
勇儀の怒りの表情にビビったのか、白髪呼ばわりされたのか、変な声を上げるキリュウ。
一部の量産型T‐Jに助けを求めようと振り向く。その瞬間、量産型T‐Jが消えた・・・いや、下の穴に落ちたのだ。
当然、ここは船の上だから穴は開いていない。という事は・・・。
突如、スキマが現れた。スキマを操る者はこの世に1人しかいない。
「どうやら、貴方の野望もここまでのようね・・・。覚悟はできているかしら?」
そう言い、冷やかな眼差しをキリュウに向ける紫。彼女にとって大切なものを奪った張本人の1人だからだ。
そして紫のスキマからぞろぞろと仲間達が現れる。
「キリュウさん、もう止めてください!これ以上闘っても無意味です!」
そう言うのは、霊夢と同じ巫女である早苗だった。彼女の背には形見である椛の刀があった。
「よくも・・・よくも、リグルやルーミアを!」
「許せない!」
そう言ったのは夜雀のミスティアと妖精であるサニーミルクだ。
「もう貴方には勝ち目はないわ・・・。もし、やるっていうなら容赦しないけど・・・!」
そう怒気を含んだ言葉を言ったのは、永琳。彼女は弓矢を構え、後ろには鈴仙とてゐが戦闘態勢を取っている。
「ぬぬぬ・・・じゃ、じゃがわしらには数隻の戦艦+それを操る量産型T‐J軍団がおる!それさえ・・・。」
あれば・・・と言う言葉を遮るかのように突如、キリュウの船以外の戦艦が沈み始める。
遠くにある船は大きな爆発と共に沈み、近くの船は巨大な要石によって潰された。
「にゃっ!?あ、あれは・・・!」
絶句するキリュウの前に降り立つ影が2つ。お空と天子だった。
「許さない・・・さとり様やお隣達を殺した奴らを許さない!!」
「衣玖の仇・・・何としてでも取らせてやる!!」
目に涙を浮かべながらも大切な物を奪われた怒りをキリュウに向けるお空と天子。それに後ずさるキリュウ。
「まさかこの船以外全滅とは・・・!まぁいい、サンプル入りはもう行ったし、操縦係以外カモーン!!」
キリュウの合図と共にぞろぞろとまだいるのか、量産型T‐Jが出てくる。しかし、それも長くはなかった。
到着した途端、どこからかナイフが現れ、量産型T‐Jにブスブスと刺さったのだ。
そして、瞬間移動したかのように咲夜が現れた。
「小悪魔、無事だったのね?」
「咲夜さん・・・。」
「もう何も言わないで、全ては私が未熟だから・・・。・・・さて、黒幕が貴方と言う訳でいいのね?」
怒りと悲しみの混じった眼をしながら、咲夜はナイフを構えた。と、そこへ・・・。
「キリュウ――――――――――――――!!!」
ふと、そんな声が聞こえた。
何だろうと見るとなんと妖夢が空からダイブしたのだ!
キリュウ達の船に近づき、手すりに掴まるが・・・手すりが折れてしまった。
「うあぁぁ―――――――――――――――!!」
叫びながら落ちる妖夢。水しぶき。呆然となる一同・・・。
数秒後、ずぶ濡れになった妖夢がやっと甲板に辿り着いた。
「キリュウ・・・幽々子様の仇!そして我が剣を返してもらおう!」
「妖夢!生きていたのか!?」
「・・・すまない・・・。」
魔理沙の驚きの声に赤面しつつ答える妖夢。多分、雰囲気を台無しにしたと思ったのだろう。
その時、頭上がなんだか熱い。上を見上げると・・・。
「お前には・・・もう永遠などはない!!」
憤怒の表情で不死鳥の如く、炎の翼を纏う妹紅がいた。彼女も永遠の親友とライバルの仇を取りたかったのだ。
今、4人を除く全ての生存者がここに集結した。キリュウの前に集まる一同。
「さてと・・・死んだ奴らの為に、お前だけは絶対許しちゃおけないぜ!!」
そう言い、キリュウに再び指を突き付ける魔理沙。しばらく、唸っていたキリュウだったが・・・。
「ぐぐぐ・・・仕方がない・・・主であるZがいない以上闘っても無駄し、わしらの負けじゃ。」
「?何だ?いやに早いな・・・何を企んでいる!?」
「何も~?わしらはただ、Zの指示しか動かないのでの~。とりあえず・・・。」
そう言い、傍らの量産型T‐J2体を進ませる。1体両腕には霊夢が抱きかかえられている。もう1体の傍にはにとりが。
「ぬしの親友達を返そう。後は煮るやり焼くなり、好きにするがよい。」
「・・・1つ、いいか?」
「何じゃ?」
しばらく躊躇った魔理沙だったが、やがて意を決したかこう言う。
「・・・お前が本当に神綺のクローンなのは分かった。けど、何の為に生まれたんだ?本当にクローンはお前だけか?」
「・・・・・・。」
その質問をまるでキリュウは嫌っていたかの様に黙っていたがやがてにっと笑いだし、答えた。
「・・・ふっ、ぬしの想像に任せようぞ・・・・・・1年じゃ。」
「何?」
突然の言葉に驚く魔理沙。1年って何だ?一体、何を企んでいる?
「1年後の月未明で13日の金曜日、わしらは幻想郷を侵略する。」
「「何っ!?」」
「今回はぬしらの勝ちじゃが、次回は決してそうはいかんと思うぞククク・・・。」
「くっ・・・!」
その事を魔理沙は直ぐにマスタースパークを撃ちたかったが、今は霊夢達の方が先だ。
量産型T‐J2体は魔理沙に2人を渡すとすぐに後退した。同時に霊夢を抱え、皆の所へ戻る魔理沙。
「魔理沙・・・皆・・・御免・・・。」
「お前のせいじゃないぜ、にとり・・・気にするなよ・・・永琳、どうだ?霊夢は・・・。」
「ひどく衰弱しているわ・・・。すぐに幻想郷に戻りましょう・・・。」
魔理沙もそうしたい気持ちだった。しかし、ふとある事を思い出す。
「皆、少し耳を貸せ。」
そう言い、他の面々に小声で話す魔理沙。それを不思議に思うキリュウ。
「う~ん?どうした?」
その時、魔理沙がどこからか小袋を取り出し、キリュウに放る。
「ん?何じゃこれは?」
「返すぜ・・・。いくら私でもこんな物はいらないし・・・。」
キリュウは袋の中身を見た。見るとその中には、腕時計がギッシリ入っていた。Zの死に反応して外せるようになったのだ。
「さ、皆急ぎましょう・・・。」
紫がそう言い、スキマを開ける。その向こうには懐かしの幻想郷であった。
霊夢を抱えた紫を先頭に次々と一同がスキマに入る。最後に魔理沙が入ろうとすると、
「霧雨魔理沙・・・ぬしと博麗霊夢、どういう関係なんじゃ?」
突如、キリュウに尋ねられた。魔理沙は振り返り、答える。
「・・・親友だ・・・。私と霊夢は永遠の親友だぜ・・・。1年後・・・今度こそ絶対にやってやる・・・!」
「ふむ・・・楽しみじゃな・・・。」
その言葉を聞きながら魔理沙はスキマへと入り・・・スキマは消えた・・・。
スキマが消えるや否や、キリュウはホッと一息ついた。
「やれやれ・・・奴等の友情のお陰で助かった・・・。じゃが・・・。」
そう言い、携帯を取り出し、通話する。相手はかつてのZの部下だ。
「もしもし?あの3人・・・特にAチルノとかいう奴はどうじゃ?」
『これはキリュウ様・・・。はい、大妖精氏とレティ氏は眠っております。』
「おまけはどうでもよい。Aチルノはどうなのじゃと言っておる。」
『チルノ氏はかなり衰弱していますが、大分回復しております。・・・ですが、何の為に確保しておくのですか?』
「余計な詮索はよい・・・死ぬぞ?」
『し、失礼しました・・・。直ちにサンプルと共に目的地へ向かいます。』
返事をし、切る。
「クククク・・・1年か・・・。まぁよい、その間に奴にじっくり教え込んでやろう・・・。」
そしてキリュウはR島を見る。
「R島・・・。わしの生まれ場所であり、コードネーム『紅』の実行場所・・・じゃが・・・Zの奴め、一体何を企んでおる?確かに、幻想郷の者達をおびき寄せるのにはちょうどいいが、本当に軍事目的で計画しておったのか?」
そう考えるキリュウの耳にふと音がした。
それは歌だった。とても綺麗でそしてどこか悲しげな歌声が辺りに響く。
『~♪ 星達が消え、やがて天は壊れる いつかは分かり合えたあの頃はどこへ行ったの?もう戻りたい 』
『 だけど、貴方にはもう会えない もう愛し合えない だって 私は紅に染まっているから 』
『私は紅 誰にも愛されず、偽りの体を血に染める悲しき人形 私の居場所は一体どこなの? ~♪』
しかし、精神が異常と言われ、殺し合いを楽しむキリュウにとってはつまらないモノに過ぎない。
「誰じゃ?そんなヘンチクな歌を歌っているのは?・・・・・・・・・・ガハッ!」
その瞬間、キリュウの体に光が貫いた。幸い致命傷には至らなかったが、全身を撃たれ、崩れ落ちる。
「がはっ・・・何故じゃ・・・何故わしが殺気に気付かない・・・!?」
その時、キリュウは見た。歌声の本人を。
それは少女だった。年は霊夢位で背には見覚えの翼が左右非対称で多く生えてある。服装も不思議な雰囲気を持つ。
そして髪は虹色で、赤き瞳をキリュウに向ける。
『貴方は・・・貴方は誰?どうしてあの人は死んだの?』
「っ!?まさか・・・Zか!?」
『あの人は私の全て・・・あの人は私の生みの親・・・大切な存在・・・あの人を死なせた貴方は・・・悪い人。』
そう言い、キリュウに手を突き付ける。それを見て慌てたキリュウは気力を振り絞って必死に否定した。
「ま、待てい!わしはZを殺してないぞ!わしはキリュウ!殺したのは幻想郷の住人、博麗霊夢じゃ!」
すると、その少女は首を傾げる。
『・・・キリュウ?貴方はあの人に最初に作られた人・・・そして幻想郷・・・私のもう一つの故郷・・・。』
その時、キリュウはハッとなる。
まさか、コードネーム『紅』とは・・・自分が生まれた訳は・・・。
「全ては・・・こ奴の為か・・・!」
少女は船に降り立ち、キリュウに近づく。そしてキリュウを見下ろして言う。
『・・・私は紅・・・あの人に作り出された人形・・・そしてあの人曰く、全ての支配者・・・』
R島のZ-111。そこにT‐Jの残骸があった。
その時、T‐Jの体から煙が出た。煙は意志を持っているかの様に1つに集まる。
やがて、煙が晴れると・・・そこには巫女が立っていた。
黒と銀色の巫女装束を纏い、手に黒き刀を持つ。その顔は驚く事に・・・霊夢にそっくりだったのだ・・・。
やがて、彼女は不敵に笑った。
「ふぅむ・・・やっと解放されたか・・・。なに、とんだ邪魔が入ったが、我の戦いはこれからだ・・・。残るは紫、神綺、そして博麗神社の子孫。だが、全て亡き者にしてやろう・・・この闇の巫女である我、博麗霊牙がな!!」
この時・・・遂に闇の巫女が復活してしまったのだ・・・。今、2つの世界に闇が訪れる・・・。
あれから数カ月が経った。やっと幻想郷に帰り着いた一行だったが決していつも通りの毎日を送ることはできなかった。
レミリア達、大勢が死んだのである。やがて、生き残った者も少しずつ変わり始めた。
咲夜は紅魔館の妖精メイドに事の始終を離し、「ここに残るかどうかは貴方達に任せる」と言ったらしい。
しかし、紅魔館に去る者はいなかった。それでも主のいない館を今も掃除とかしている。
小悪魔も今も主のいない大図書館の整理とかを行っている。
しかし、咲夜が時折見せる寂しげな表情・・・それは自らの無能さで親愛なる者を失ったという絶望感であった。
妖夢は白玉楼で庭の掃除や霊の事とかで忙しかった。今はクヨクヨしている場合ではないと強がっている。
だが、妖夢の耳にはもうご飯をねだる幽々子の声が聞こえず、腰にさしている刀は1本となっていた。
妖夢は日夜、剣の修業を続けた。今はいない主の大切な白玉楼を守る為に。
早苗も守谷神社でただ1人生活していた。
彼女の周りにはかつて天狗や神様などで賑わっていた。それが今や1人だった。
しかし、彼女は挫けなかった。自分が頑張らなきゃいけないのだと。それが八坂様達との約束だと。
そう、椛さんの刀に誓う早苗。修業はまだまだこれからだ。
ミスティアは戻って以来、店を再開しなかったが、今はやっと店を開いている。
だが、何時もの様に歌を歌う気にはなれなかった。愛すべき者と親友を失った故に。
サニーミルクも親友2人を失った。その寂しさに耐えきれず、今は彼女の手伝いをしている。
そして悲しみに浸るミスティアの首には、虫型のアクセサリーが輝いていた。
鈴仙とてゐは永遠亭で妖怪兎と共にある人の帰りを待っていた。
永琳である。彼女はなんと月の都へ帰ったのである。
鈴仙には理解できなかったが、永琳は主である輝夜の夢、幻想郷と月の都の共存の為に行ったのである。
そして、捕らわれたのか未だに帰ってこない。しかしそれでも鈴仙達は待っていた。師匠の帰りを。
勇儀、キスメ、お空の3人は地下の地霊殿へと戻った。
勇儀とお空は2人でキスメの保護者となって、今も亡き者達の分まで暮らしている。
しかしある時、お空が勇儀との口論の末、何処かへと行ってしまい、消息を絶った。
口論の原因は・・・お空が立てた外の世界への復讐計画であった。お空は外の世界を憎んでいた。
アリスは今も一人で人形達と共に魔法の森にある家でなんとか暮らしている。
スパイだった台湾も今では上海と蓬莱にしごかれていた。上海達が少し大人になった気がした。
けど、彼女はしばらくしたら、魔界へ帰ってみようかなと思った。
母、神綺に闇の巫女の事を聞き出す為に。母は一体何を隠しているかを調べる為に。
妹紅は再び、寂しく竹林にいた。今、彼女も2つ失ってしまった。
親愛なる親友と長年殺し合ってきた憎きあいつ・・・。それを失ってしまった。
また孤独を味わることとなった。そして、彼女の精神に異変が生じた。
彼女はしょっちゅう天界に飛んでいく。自分と同じ境遇の者に同情させたいが故に。
悲しみと孤独の苦痛により、精神が壊れ始める妹紅。やがて、悲しみの心までも失ってしまうのだろうか?
天子は人が変わったかのようにしょっちゅう地上に降りては、人助けや悪い妖怪退治を行っている。
退屈しのぎに異変を起こした天人の影はもう見られなくなっていた。
そんな彼女に妹紅という来客が来ている。最初は忙しい故に無視したが、彼女の様子の変化に気づく。
そして天子は妹紅を励ましていた。妹紅にまだ人としての心を持っていることを信じて。
そして、にとりと小町。2人の行方を知る者は誰もいない。
にとりは自分の行いに責任を感じ、魔理沙達の所から去ってしまったらしい。
だが、小町は生きているのかは分かるが、どこにいるかは不明だった。
ただ、亡き映姫の仕事机にポツンと「退職届」が置いてあった・・・。
そして博麗神社・・・。
「霊夢―。今晩の食糧―。」
「・・・あぁ、紫ね・・・。ありがとう・・・。」
スキマから紫が現れた。今は居候として神社に住んでいる。マヨイガだと寂しさで胸が潰れそうだったからだ。
そして紫は博麗神社の巫女であり、長い付き合いの彼女を見る。
霊夢は今では異常な程、変わってしまった。今は無口になり、右手首に包帯が痛々しそうに巻きついていた。
目も虚ろで、あの頃の霊夢とはかけ離れていた。
だからだ、と紫は思う。だから今度は自分が霊夢を守る時だと。
そして、意を決したかのように霊夢が呟く。
「・・・紫・・・私ね・・・。」
「ん?何?」
「・・・もう戦う事を止める・・・。妖怪退治も止める・・・」
「・・・そう・・・。」
「命を奪うって・・・こんなに怖かったなんて・・・。皆死んで・・・あいつを殺して・・・もう分からないよ・・・。」
そう言う霊夢は悲しそうだった。体の震えが止まらない。彼女はもう戦いたくないのだ。
分かるわ、霊夢・・・。貴方はこれでも・・・裏表のない直情的で思いやりのある子だから・・・。
そう思い、紫は霊夢をギュッと抱いた。
「・・・紫・・・御免・・・私、臆病だった・・・。」
「いいの・・・もういいのよ・・・これからは私達が頑張るから・・・。」
そう言う紫に抱かれた霊夢の頬に一筋の涙が流れた。
魔理沙は神社に差し入れを持って来たがその光景を見て、後にしようと来た道を戻った。
「(霊夢・・・可哀想に・・・。)」
魔理沙は霊夢の事を思った。あの時、彼女を殴った事で後悔していた。
この異変で多くの仲間が死んでしまった。霊夢にとっては馴染み深い者達が。
そしてパチュリーや魅魔様など、私と関係が長い者も死んでしまった・・・。
だが、悲観に暮れている場合じゃない。あと数か月、13日の金曜日にまた同じ異変が起こるのだ。
何て残酷な運命。何故、その運命が生じたのだろうか。それに答える者はいない。
霊夢は変わってしまった。そして戦う事を止めた。無理もないことだ。
霊夢だけじゃない。咲夜や妖夢達も変わってしまった。皆変わってしまった。
平和溢れる故郷、幻想郷。しかし、結界の向こうの外の世界は争いが生じているらしい。
何故?何故、幻想郷のように平和に生きられない?魔理沙はそれが分からなかった。
欲望が多くの悲しみを生み出し、狂気が多くの命を奪う外の世界。
そして、Zのように幻想郷を自らの目的に使う者もこれから多くなるだろう。
「・・・何で・・・何でこうなっちまうんだよ・・・。」
魔理沙は目元の涙を拭った。けれど、拭っても、拭っても涙が溢れる。
「外の世界の人間は・・・酷すぎるぜ・・・。」
そう言う魔理沙の言葉を聞く者は誰もいなかった・・・。
完
最終回「君がいるから:帰るべき場所は幻想郷」
「博麗霊夢・・・噂以上に殺しがいのある奴じゃ・・・。寝顔はまぁいいが。」
そう言い、キリュウは疲れ果てて眠っている霊夢に手を伸ばそうとしているその時、
ズド―――ン!!
突如、謎の光線がどこからか飛び、量産型機械人形のいる別の船を沈めた。
「な、なんじゃ!?地震、雷、火事、親父!?」
「いや、違う、マスタースパークだぜ・・・!」
混乱するキリュウにふと声がかかる。怒気を含んだ声。まさか・・・。
「幻想郷一のバリバリパワー弾幕使いの霧雨魔理沙・・・!?」
それは、怒りの表情の魔理沙だった。マスタースパークで船を沈めたのだ。
「おうよ!弾幕はパワーだぜ!黒幕が誰であれ、霊夢を返してもらおうか!!」
そう言い、キリュウにビシッと指を突き付ける魔理沙。後ろには小悪魔がコッソリ隠れている。
「ふん・・・じゃが、2人だけでこの量産型T‐J軍団+わしに勝てるかの?」
そう言うや否や、魔理沙達にゾロゾロと集まる量産型T‐J達。周りを囲み、身動きを取れなくしている。
「くっ・・・!だが、例え1人だろうとお前達の好きにさせないぜ!」
そう言い、ミニ八卦炉を構える魔理沙。じりじり近づく量産型T‐J達。その時!
「「1人じゃないっ!」」
その声が聞こえ、突如、大量の人形が量産型T‐J達に襲い掛かり、首にあるコードを切る。動かなくなる量産型T‐J達。
「な、なんじゃ!?何故動かん!?」
「その機械人形は首にあるコードを切られると活動を停止する。その欠点を取り除いたのがT‐Jよ・・・。」
またもや驚くキリュウに声が。この声、そして人形と言えば・・・。
「おぉ!アリスか!何で分かったんだ?」
魔理沙が驚く。目の前には空中を浮遊しているアリスだったのだ。
「キリュウ!Zが私達の能力を外の世界の争いに利用する為にT‐Jを使って私達を陥れたことも、天狗やメディスンを殺したのが貴方なのも、その貴方が母様(神綺)のクローンだと言う事は・・・このスパイ人形がみんな教えてくれたわ!」
そう言い、アリスは握っているものを見せる。それは・・・サブウェポンとして支給された台湾だった。
「ツカマッター!タスケテー!」
そう言い、必死にジタバタする台湾。どうやらアリスに捕まって、尋問されたらしい。量産型T‐Jの弱点もそうかもしれない。
すると、空から何かが落ちてきて、量産型T‐Jの一部を吹っ飛ばした。
それは勇儀だった。桶から顔を覗かせているキスメを抱き、怒りの表情を見せているそれは、まさに鬼だった。
「話はアリスから聞いた・・・。覚悟しろよ・・・この白髪野郎!!」
「ひょっ!?」
勇儀の怒りの表情にビビったのか、白髪呼ばわりされたのか、変な声を上げるキリュウ。
一部の量産型T‐Jに助けを求めようと振り向く。その瞬間、量産型T‐Jが消えた・・・いや、下の穴に落ちたのだ。
当然、ここは船の上だから穴は開いていない。という事は・・・。
突如、スキマが現れた。スキマを操る者はこの世に1人しかいない。
「どうやら、貴方の野望もここまでのようね・・・。覚悟はできているかしら?」
そう言い、冷やかな眼差しをキリュウに向ける紫。彼女にとって大切なものを奪った張本人の1人だからだ。
そして紫のスキマからぞろぞろと仲間達が現れる。
「キリュウさん、もう止めてください!これ以上闘っても無意味です!」
そう言うのは、霊夢と同じ巫女である早苗だった。彼女の背には形見である椛の刀があった。
「よくも・・・よくも、リグルやルーミアを!」
「許せない!」
そう言ったのは夜雀のミスティアと妖精であるサニーミルクだ。
「もう貴方には勝ち目はないわ・・・。もし、やるっていうなら容赦しないけど・・・!」
そう怒気を含んだ言葉を言ったのは、永琳。彼女は弓矢を構え、後ろには鈴仙とてゐが戦闘態勢を取っている。
「ぬぬぬ・・・じゃ、じゃがわしらには数隻の戦艦+それを操る量産型T‐J軍団がおる!それさえ・・・。」
あれば・・・と言う言葉を遮るかのように突如、キリュウの船以外の戦艦が沈み始める。
遠くにある船は大きな爆発と共に沈み、近くの船は巨大な要石によって潰された。
「にゃっ!?あ、あれは・・・!」
絶句するキリュウの前に降り立つ影が2つ。お空と天子だった。
「許さない・・・さとり様やお隣達を殺した奴らを許さない!!」
「衣玖の仇・・・何としてでも取らせてやる!!」
目に涙を浮かべながらも大切な物を奪われた怒りをキリュウに向けるお空と天子。それに後ずさるキリュウ。
「まさかこの船以外全滅とは・・・!まぁいい、サンプル入りはもう行ったし、操縦係以外カモーン!!」
キリュウの合図と共にぞろぞろとまだいるのか、量産型T‐Jが出てくる。しかし、それも長くはなかった。
到着した途端、どこからかナイフが現れ、量産型T‐Jにブスブスと刺さったのだ。
そして、瞬間移動したかのように咲夜が現れた。
「小悪魔、無事だったのね?」
「咲夜さん・・・。」
「もう何も言わないで、全ては私が未熟だから・・・。・・・さて、黒幕が貴方と言う訳でいいのね?」
怒りと悲しみの混じった眼をしながら、咲夜はナイフを構えた。と、そこへ・・・。
「キリュウ――――――――――――――!!!」
ふと、そんな声が聞こえた。
何だろうと見るとなんと妖夢が空からダイブしたのだ!
キリュウ達の船に近づき、手すりに掴まるが・・・手すりが折れてしまった。
「うあぁぁ―――――――――――――――!!」
叫びながら落ちる妖夢。水しぶき。呆然となる一同・・・。
数秒後、ずぶ濡れになった妖夢がやっと甲板に辿り着いた。
「キリュウ・・・幽々子様の仇!そして我が剣を返してもらおう!」
「妖夢!生きていたのか!?」
「・・・すまない・・・。」
魔理沙の驚きの声に赤面しつつ答える妖夢。多分、雰囲気を台無しにしたと思ったのだろう。
その時、頭上がなんだか熱い。上を見上げると・・・。
「お前には・・・もう永遠などはない!!」
憤怒の表情で不死鳥の如く、炎の翼を纏う妹紅がいた。彼女も永遠の親友とライバルの仇を取りたかったのだ。
今、4人を除く全ての生存者がここに集結した。キリュウの前に集まる一同。
「さてと・・・死んだ奴らの為に、お前だけは絶対許しちゃおけないぜ!!」
そう言い、キリュウに再び指を突き付ける魔理沙。しばらく、唸っていたキリュウだったが・・・。
「ぐぐぐ・・・仕方がない・・・主であるZがいない以上闘っても無駄し、わしらの負けじゃ。」
「?何だ?いやに早いな・・・何を企んでいる!?」
「何も~?わしらはただ、Zの指示しか動かないのでの~。とりあえず・・・。」
そう言い、傍らの量産型T‐J2体を進ませる。1体両腕には霊夢が抱きかかえられている。もう1体の傍にはにとりが。
「ぬしの親友達を返そう。後は煮るやり焼くなり、好きにするがよい。」
「・・・1つ、いいか?」
「何じゃ?」
しばらく躊躇った魔理沙だったが、やがて意を決したかこう言う。
「・・・お前が本当に神綺のクローンなのは分かった。けど、何の為に生まれたんだ?本当にクローンはお前だけか?」
「・・・・・・。」
その質問をまるでキリュウは嫌っていたかの様に黙っていたがやがてにっと笑いだし、答えた。
「・・・ふっ、ぬしの想像に任せようぞ・・・・・・1年じゃ。」
「何?」
突然の言葉に驚く魔理沙。1年って何だ?一体、何を企んでいる?
「1年後の月未明で13日の金曜日、わしらは幻想郷を侵略する。」
「「何っ!?」」
「今回はぬしらの勝ちじゃが、次回は決してそうはいかんと思うぞククク・・・。」
「くっ・・・!」
その事を魔理沙は直ぐにマスタースパークを撃ちたかったが、今は霊夢達の方が先だ。
量産型T‐J2体は魔理沙に2人を渡すとすぐに後退した。同時に霊夢を抱え、皆の所へ戻る魔理沙。
「魔理沙・・・皆・・・御免・・・。」
「お前のせいじゃないぜ、にとり・・・気にするなよ・・・永琳、どうだ?霊夢は・・・。」
「ひどく衰弱しているわ・・・。すぐに幻想郷に戻りましょう・・・。」
魔理沙もそうしたい気持ちだった。しかし、ふとある事を思い出す。
「皆、少し耳を貸せ。」
そう言い、他の面々に小声で話す魔理沙。それを不思議に思うキリュウ。
「う~ん?どうした?」
その時、魔理沙がどこからか小袋を取り出し、キリュウに放る。
「ん?何じゃこれは?」
「返すぜ・・・。いくら私でもこんな物はいらないし・・・。」
キリュウは袋の中身を見た。見るとその中には、腕時計がギッシリ入っていた。Zの死に反応して外せるようになったのだ。
「さ、皆急ぎましょう・・・。」
紫がそう言い、スキマを開ける。その向こうには懐かしの幻想郷であった。
霊夢を抱えた紫を先頭に次々と一同がスキマに入る。最後に魔理沙が入ろうとすると、
「霧雨魔理沙・・・ぬしと博麗霊夢、どういう関係なんじゃ?」
突如、キリュウに尋ねられた。魔理沙は振り返り、答える。
「・・・親友だ・・・。私と霊夢は永遠の親友だぜ・・・。1年後・・・今度こそ絶対にやってやる・・・!」
「ふむ・・・楽しみじゃな・・・。」
その言葉を聞きながら魔理沙はスキマへと入り・・・スキマは消えた・・・。
スキマが消えるや否や、キリュウはホッと一息ついた。
「やれやれ・・・奴等の友情のお陰で助かった・・・。じゃが・・・。」
そう言い、携帯を取り出し、通話する。相手はかつてのZの部下だ。
「もしもし?あの3人・・・特にAチルノとかいう奴はどうじゃ?」
『これはキリュウ様・・・。はい、大妖精氏とレティ氏は眠っております。』
「おまけはどうでもよい。Aチルノはどうなのじゃと言っておる。」
『チルノ氏はかなり衰弱していますが、大分回復しております。・・・ですが、何の為に確保しておくのですか?』
「余計な詮索はよい・・・死ぬぞ?」
『し、失礼しました・・・。直ちにサンプルと共に目的地へ向かいます。』
返事をし、切る。
「クククク・・・1年か・・・。まぁよい、その間に奴にじっくり教え込んでやろう・・・。」
そしてキリュウはR島を見る。
「R島・・・。わしの生まれ場所であり、コードネーム『紅』の実行場所・・・じゃが・・・Zの奴め、一体何を企んでおる?確かに、幻想郷の者達をおびき寄せるのにはちょうどいいが、本当に軍事目的で計画しておったのか?」
そう考えるキリュウの耳にふと音がした。
それは歌だった。とても綺麗でそしてどこか悲しげな歌声が辺りに響く。
『~♪ 星達が消え、やがて天は壊れる いつかは分かり合えたあの頃はどこへ行ったの?もう戻りたい 』
『 だけど、貴方にはもう会えない もう愛し合えない だって 私は紅に染まっているから 』
『私は紅 誰にも愛されず、偽りの体を血に染める悲しき人形 私の居場所は一体どこなの? ~♪』
しかし、精神が異常と言われ、殺し合いを楽しむキリュウにとってはつまらないモノに過ぎない。
「誰じゃ?そんなヘンチクな歌を歌っているのは?・・・・・・・・・・ガハッ!」
その瞬間、キリュウの体に光が貫いた。幸い致命傷には至らなかったが、全身を撃たれ、崩れ落ちる。
「がはっ・・・何故じゃ・・・何故わしが殺気に気付かない・・・!?」
その時、キリュウは見た。歌声の本人を。
それは少女だった。年は霊夢位で背には見覚えの翼が左右非対称で多く生えてある。服装も不思議な雰囲気を持つ。
そして髪は虹色で、赤き瞳をキリュウに向ける。
『貴方は・・・貴方は誰?どうしてあの人は死んだの?』
「っ!?まさか・・・Zか!?」
『あの人は私の全て・・・あの人は私の生みの親・・・大切な存在・・・あの人を死なせた貴方は・・・悪い人。』
そう言い、キリュウに手を突き付ける。それを見て慌てたキリュウは気力を振り絞って必死に否定した。
「ま、待てい!わしはZを殺してないぞ!わしはキリュウ!殺したのは幻想郷の住人、博麗霊夢じゃ!」
すると、その少女は首を傾げる。
『・・・キリュウ?貴方はあの人に最初に作られた人・・・そして幻想郷・・・私のもう一つの故郷・・・。』
その時、キリュウはハッとなる。
まさか、コードネーム『紅』とは・・・自分が生まれた訳は・・・。
「全ては・・・こ奴の為か・・・!」
少女は船に降り立ち、キリュウに近づく。そしてキリュウを見下ろして言う。
『・・・私は紅・・・あの人に作り出された人形・・・そしてあの人曰く、全ての支配者・・・』
R島のZ-111。そこにT‐Jの残骸があった。
その時、T‐Jの体から煙が出た。煙は意志を持っているかの様に1つに集まる。
やがて、煙が晴れると・・・そこには巫女が立っていた。
黒と銀色の巫女装束を纏い、手に黒き刀を持つ。その顔は驚く事に・・・霊夢にそっくりだったのだ・・・。
やがて、彼女は不敵に笑った。
「ふぅむ・・・やっと解放されたか・・・。なに、とんだ邪魔が入ったが、我の戦いはこれからだ・・・。残るは紫、神綺、そして博麗神社の子孫。だが、全て亡き者にしてやろう・・・この闇の巫女である我、博麗霊牙がな!!」
この時・・・遂に闇の巫女が復活してしまったのだ・・・。今、2つの世界に闇が訪れる・・・。
あれから数カ月が経った。やっと幻想郷に帰り着いた一行だったが決していつも通りの毎日を送ることはできなかった。
レミリア達、大勢が死んだのである。やがて、生き残った者も少しずつ変わり始めた。
咲夜は紅魔館の妖精メイドに事の始終を離し、「ここに残るかどうかは貴方達に任せる」と言ったらしい。
しかし、紅魔館に去る者はいなかった。それでも主のいない館を今も掃除とかしている。
小悪魔も今も主のいない大図書館の整理とかを行っている。
しかし、咲夜が時折見せる寂しげな表情・・・それは自らの無能さで親愛なる者を失ったという絶望感であった。
妖夢は白玉楼で庭の掃除や霊の事とかで忙しかった。今はクヨクヨしている場合ではないと強がっている。
だが、妖夢の耳にはもうご飯をねだる幽々子の声が聞こえず、腰にさしている刀は1本となっていた。
妖夢は日夜、剣の修業を続けた。今はいない主の大切な白玉楼を守る為に。
早苗も守谷神社でただ1人生活していた。
彼女の周りにはかつて天狗や神様などで賑わっていた。それが今や1人だった。
しかし、彼女は挫けなかった。自分が頑張らなきゃいけないのだと。それが八坂様達との約束だと。
そう、椛さんの刀に誓う早苗。修業はまだまだこれからだ。
ミスティアは戻って以来、店を再開しなかったが、今はやっと店を開いている。
だが、何時もの様に歌を歌う気にはなれなかった。愛すべき者と親友を失った故に。
サニーミルクも親友2人を失った。その寂しさに耐えきれず、今は彼女の手伝いをしている。
そして悲しみに浸るミスティアの首には、虫型のアクセサリーが輝いていた。
鈴仙とてゐは永遠亭で妖怪兎と共にある人の帰りを待っていた。
永琳である。彼女はなんと月の都へ帰ったのである。
鈴仙には理解できなかったが、永琳は主である輝夜の夢、幻想郷と月の都の共存の為に行ったのである。
そして、捕らわれたのか未だに帰ってこない。しかしそれでも鈴仙達は待っていた。師匠の帰りを。
勇儀、キスメ、お空の3人は地下の地霊殿へと戻った。
勇儀とお空は2人でキスメの保護者となって、今も亡き者達の分まで暮らしている。
しかしある時、お空が勇儀との口論の末、何処かへと行ってしまい、消息を絶った。
口論の原因は・・・お空が立てた外の世界への復讐計画であった。お空は外の世界を憎んでいた。
アリスは今も一人で人形達と共に魔法の森にある家でなんとか暮らしている。
スパイだった台湾も今では上海と蓬莱にしごかれていた。上海達が少し大人になった気がした。
けど、彼女はしばらくしたら、魔界へ帰ってみようかなと思った。
母、神綺に闇の巫女の事を聞き出す為に。母は一体何を隠しているかを調べる為に。
妹紅は再び、寂しく竹林にいた。今、彼女も2つ失ってしまった。
親愛なる親友と長年殺し合ってきた憎きあいつ・・・。それを失ってしまった。
また孤独を味わることとなった。そして、彼女の精神に異変が生じた。
彼女はしょっちゅう天界に飛んでいく。自分と同じ境遇の者に同情させたいが故に。
悲しみと孤独の苦痛により、精神が壊れ始める妹紅。やがて、悲しみの心までも失ってしまうのだろうか?
天子は人が変わったかのようにしょっちゅう地上に降りては、人助けや悪い妖怪退治を行っている。
退屈しのぎに異変を起こした天人の影はもう見られなくなっていた。
そんな彼女に妹紅という来客が来ている。最初は忙しい故に無視したが、彼女の様子の変化に気づく。
そして天子は妹紅を励ましていた。妹紅にまだ人としての心を持っていることを信じて。
そして、にとりと小町。2人の行方を知る者は誰もいない。
にとりは自分の行いに責任を感じ、魔理沙達の所から去ってしまったらしい。
だが、小町は生きているのかは分かるが、どこにいるかは不明だった。
ただ、亡き映姫の仕事机にポツンと「退職届」が置いてあった・・・。
そして博麗神社・・・。
「霊夢―。今晩の食糧―。」
「・・・あぁ、紫ね・・・。ありがとう・・・。」
スキマから紫が現れた。今は居候として神社に住んでいる。マヨイガだと寂しさで胸が潰れそうだったからだ。
そして紫は博麗神社の巫女であり、長い付き合いの彼女を見る。
霊夢は今では異常な程、変わってしまった。今は無口になり、右手首に包帯が痛々しそうに巻きついていた。
目も虚ろで、あの頃の霊夢とはかけ離れていた。
だからだ、と紫は思う。だから今度は自分が霊夢を守る時だと。
そして、意を決したかのように霊夢が呟く。
「・・・紫・・・私ね・・・。」
「ん?何?」
「・・・もう戦う事を止める・・・。妖怪退治も止める・・・」
「・・・そう・・・。」
「命を奪うって・・・こんなに怖かったなんて・・・。皆死んで・・・あいつを殺して・・・もう分からないよ・・・。」
そう言う霊夢は悲しそうだった。体の震えが止まらない。彼女はもう戦いたくないのだ。
分かるわ、霊夢・・・。貴方はこれでも・・・裏表のない直情的で思いやりのある子だから・・・。
そう思い、紫は霊夢をギュッと抱いた。
「・・・紫・・・御免・・・私、臆病だった・・・。」
「いいの・・・もういいのよ・・・これからは私達が頑張るから・・・。」
そう言う紫に抱かれた霊夢の頬に一筋の涙が流れた。
魔理沙は神社に差し入れを持って来たがその光景を見て、後にしようと来た道を戻った。
「(霊夢・・・可哀想に・・・。)」
魔理沙は霊夢の事を思った。あの時、彼女を殴った事で後悔していた。
この異変で多くの仲間が死んでしまった。霊夢にとっては馴染み深い者達が。
そしてパチュリーや魅魔様など、私と関係が長い者も死んでしまった・・・。
だが、悲観に暮れている場合じゃない。あと数か月、13日の金曜日にまた同じ異変が起こるのだ。
何て残酷な運命。何故、その運命が生じたのだろうか。それに答える者はいない。
霊夢は変わってしまった。そして戦う事を止めた。無理もないことだ。
霊夢だけじゃない。咲夜や妖夢達も変わってしまった。皆変わってしまった。
平和溢れる故郷、幻想郷。しかし、結界の向こうの外の世界は争いが生じているらしい。
何故?何故、幻想郷のように平和に生きられない?魔理沙はそれが分からなかった。
欲望が多くの悲しみを生み出し、狂気が多くの命を奪う外の世界。
そして、Zのように幻想郷を自らの目的に使う者もこれから多くなるだろう。
「・・・何で・・・何でこうなっちまうんだよ・・・。」
魔理沙は目元の涙を拭った。けれど、拭っても、拭っても涙が溢れる。
「外の世界の人間は・・・酷すぎるぜ・・・。」
そう言う魔理沙の言葉を聞く者は誰もいなかった・・・。
完
なんでここまで酷評されたのかもまるで分かってないんじゃあ、荒らしと変わらん。
オリキャラ使う前に普通にSSかいてみりゃいいのに。
結局またあのような残酷な戦いを繰り返すのはもうやめてほしい。
あなたには血も涙もないのですか!?もし、その作品のシリーズを作るときは東方ファンの人々が絶対に許しません。こんなにひどく残酷な話は作らないでください!!ここに来ている全ての閲覧者に謝ってください!!
お疲れ様と言わせていただきます。
一応全作品に目を通していたわけですが、面白いとは思えませんでした。
T-Jとの戦闘などですが、彼女たちは力を持つ妖怪にも関わらず、非常識なまでの強さに
殆ど成す術なく殺されていったり一方的に虐殺されていくのは、やはりどうかと思いました。
誤字を指摘してくださっている方たちもいましたけど、それも修正されていませんね…。
それと、話の中で使われている『・・・』は『…(三点リーダ)』にしたほうが良いかと。
ただ、話の一部一部で良かった文章もあるとは思います。
次回作がどんなものになるかは解りませんが、精進してください。
これは典型的な東方じゃなくても良い話、むしろ東方ですらない。
これ単に東方だと人目引くから東方にしてみただけですよね?
個人的には面白かったけど、最後まで救いが無いのはやっぱ辛い。
次回作ではもう少し明るい展開を希望。
あと全作を一度見直して、誤字や変換ミスは修正しておいた方がいいかと。
読んでいてつらい場面もたくさんありましたが、完結させた作者さんの意志にこの点数を。
キャラ設定を木っ端微塵にしてまで、東方でやる理由がさっぱり解りません。
主要キャラを軒並み殺しておいて、この終わり方は酷すぎる…。
これだけ酷評されているにも関わらず、それを改善しようとしないのであれば荒らしと思われても仕方のないことです。
この状況で完結させた根気だけは素晴らしいですが、次回からは自分のサイトででもやってください。
十年後に思い出して恥ずかしさのあまり転げまわってしまうそんなことがない為にも。
ぽつぽつ高い点入ってるのは自演かなぁ。
荒らしとしか思えませんでした
所々上手いかな?と思う部分がありましたが、終わりに関してもまだ救いがあるようなら良かったかな…と
一度オリキャラ抜きで書いてみてはどうでしょう?
何だかそれなら輝くものがありそうに感じました
次回作が出るならまた読みたいと思います、頑張って下さい!
お疲れ様でした。
次回作は望まれぬ事ぐらい察せ。
これだけの批評を無視し続ける態度。
完全に荒しですね。
次回作、作んなくていいですよ。
作るとしてもここに投稿しないでください。
ただ、あれだけいろいろ批判的な意見が出る中で完結させた精神力に感嘆しました。
次回作があるということでしたので、それくらいの精神力で「精進」してください。
言葉に偽り嘘無きよう、本当にお願いします。
何人も言ってたと思うがここは東方好きな人達がシリアスな話であれ楽しい話であれ読んでいる意味のある、読んで良かったなと思える作品を求めています。
確かに同人活動は自由ですが、ここは色々な人がそういった話を読みに来る場所でもあるという事を理解していますか?
そしてこういった場所に作品を出す以上、最低限のルールくらいは意識したらどうなんです?
誤字を指摘されても直さない、というのは出したら終わり、というあなたの投げやりさが如実に表れているんじゃないんですか?他にも話の内容にまで口を出すのはいけないと思いますが、長さについての指摘も多かったじゃないですか?なのに改善は欠片も見られず仕舞い。
次回作、はっきり言って今回のような事をするなら自分のサイトでも作って自己満足の世界に浸っていてください。はっきり言いますが不愉快です。
そういうSS職人として駄目な条件を全て兼ね備えた「反面教師」として良い例にはなった。
今からSSに挑戦する人達が「こうなったらダメだ」と自戒したり、また「自信ないけど、この人よりはマシだよね」という投稿の気安さの役に立ってくれれば良いと思う。
もしかして、いくら酷評されても続けたのはただの意地ですか?だとしたら、それは無駄な悲しみ、怒り、憎しみを生むだけです。要は戦争と同じです。だから、もし、あなたが本当に東方を愛していて、またもう一度SSを書きたいのであれば、名前をかえて、もう一度普通の小説を書いてください。違うのであれば、ここから去るべきだと僕は思います。次回作は取りやめるべきだと自分は思います。
おかしなうえに、長文失礼しました。
それ以前に、読ませる「文章」の書き方を考えるべきかと思います。
安易な連載はそれだけで敬遠されがちです。その上、無駄な分割などはイメージを悪くします。
なぜ、連投するんでしょう? 12と13などは統合しても良かったのではないのでしょうか?
どうしてプロットを詰めて、そこから全体像を見直すということを疎かにするのでしょう?
余分な部分をそぎ落とすことで、上下編にするなど工夫のしようはいくらでもあります。
行き当たりばったりの支離滅裂な文章は読み手を不快にさせます。そして誤字もまた見ていていいものではありません。東方二次創作でキャラの名前の誤字を連発、というのはいかがなものでしょうか?
ましてや、わざわざ指摘してくださった誤字の修正をしないなど最低としか言いようがありません。
そして何より、単純に貴方には長編を魅せるだけの文章力がないかと思います。
文章が稚拙であるとか以前に、句読点であったり文章作法を理解すべきです。
せめて、次回の投稿は義務教育を終えてからにしていただきたい。
その為思うように点数が伸びない、コメントが貰えない等も多く、また多くの批判を受ける場所でもあります。
ですが自分を高めるために、多くの作家の方々は誤字脱字の指摘を含め批判を受け入れ、より良い作品づくりを目指しています。
残念ながら貴方にはその姿勢が一切見受けられません。誤字脱字の修正も行わない、何度も注意を受けたぶつ切りでの投稿方法もやめない、作品の内容も一切のコメントを無視。
そんな人が「精進します」など言っても全く信用できません。
ご自分の行動がどう思われているか一度真剣に考えてみて下さい。
それがすべての10点。
その方が自由にやれると思うし
勿論その場合投稿するのはここじゃないけれど
オリキャラのタ-ミネータージョンソンもキュウリ様もいい味だしてたよ
いっその事東方のキャラを出さずに、投稿場所も別の所でやればもっと面白くなったと思います
次回も期待しております
連続長編は中々、やりきるのが難しい物です。
本当にお疲れ様でした。
part1より拝見しましたが、徐々に文章の書き方もこなれてきて、次の作品が楽しみになります。
一度や二度の批評で決して筆を折ることの無きようにお願いいたします。
重ね重ねになりますが、次回作を期待しております。
お前って絶対、投稿した気違い自身だろ?
「一度や二度の批評」?この糞話投稿している時点で12、13の異常な内容の糞話を既に投稿して、その度に批判されまくってんだぞ。
つーか投稿者の気違いは絶対コメント読んでないよな。誤字等の修正すらしてないってことは無視…いや批判ばかりだって判ってるから見てすらいない。
最低だな。
あれだけ批判されつつも完成お疲れ様です。
なら自分で死を実践してみせな、死んでいった奴らと同じようにな。
こんなにムカついた事は初めてだ、だから俺はお前に決闘を申し込む。
お互い武器なしで拳で語り合おうじゃないか。
小説の書き方について解説しているサイトや本を読むと、やってはいけない悪い例というのが載ってたりしますよね。
今までは「いくらなんでもそんな酷いのあるわけないw」と笑っていましたが、それ以上に醜悪なものを目の当たりにしてしまったので認識を改める事にします。まさかこのようなものが実在するとは……