「さとり様!!大変です!!おくうが!!」
そう言いながら、猫車を押しながらやってきたのはお燐だ。
猫車にはぐったりして顔を真っ赤にしているおくうが乗っていた。
状況を確認するのにはお燐の心の中を見るのが一番手っ取り早い。
私はお燐の心の中を読み取ることにした。
私がいつものように死体を放り込みに灼熱地獄ににいくと、火力が妙に下がっていた。
「おくうー。火力が下がってるからちょっと上げてー」
いつもなら、
「はーい」
とか返事があるのに、今日は返事がない。
「おくう?聞こえないのー?」
・・・・返事がない。
いやな予感がする。
熱々の灼熱地獄を汗だくになりながらおくうを探す。
いくら呼んでも返事がない。
ふと下に目線を落とすと、陰におくうのマントのようなものが見えた。
近づいて呼んでも返事がない。
「おくう!おくう!」
いくら呼んでも返事をしないから体をゆすろうとした。
・・・けど尋常でない熱がおくうから伝わってくる。顔も真っ赤だ。
おくうを揺り動かしてもぴくりとも動かない。
息は、かすかにしているだけ。
持っていた猫車に身体の熱いおくうを乗せてさとり様のところへ向かった。
変な病気にかかったに違いない。
あんたみたいなヤツは風邪ひかないんじゃなかったの!?
・・・・・
なるほど、そういう事ね。
おくうの身体に触れると本当に熱くて(いつも体は熱い子なんだけど)息もかすか。
「おくう!おくう!」
呼んでも返事がない。
「さとりさまぁ・・・こういう時・・・どうすればいいんですかぁ・・・」
お燐が泣き出しそうな目でこっちをみている。
私はたくさんペットを飼っているから、時々病気になってしまうものもいる。
ある程度はペット達の病気に関しても知識はあるけれど、ここまで急に症状が出るものは私も体験したことがなかった。
・・・・
「お燐、貴方よく博麗神社に出入りしてるわよね?」
「あ・・・、はい。」
「竹林の薬師の居場所、貴方聞いてない!?」
「あの竹林は迷いやすいし、私は行ったことないです・・・」
「・・・わからなくても、とにかく、連れて行くしかないわね」
「はい!さとり様」
私はお燐と一緒におくうを猫車に乗せて地上へと向かった。
しばらく地上なんか出たことないから、場所はさっぱりだ。
お燐に案内され、博麗神社で竹林の場所を聞き、薬師の所へ向かった。
向かう間もおくうは息も苦しそうにしている。
竹林を進んでいるときに偶然薬師のところに住む月の兎に出会った。
心を読むと、里へ薬を売りに行った帰りのようだ。
「鈴仙・優曇華院・イナバ!この子を薬師のところへ連れて行きたいの!急患よ!手伝いなさい!!」
月の兎はなぜ自分の名前を知っているのか、目をきょろきょろさせながらも、意識の無いおくうを見て緊急事態と悟り、急いで薬師のところまで案内した。
「危ないところだったわ・・・」
薬師は言った。
心を読み取ると、おくうは何とか一命を取りとめ、注射と解熱用の座薬を処方されて回復に向かっているようだ。
薬師は続けた。
「最近、幻想卿のカラスの間で流行ってる病気があるのよ。かかると三日で確実に死んでしまう恐ろしい病気。気が付いたのが早くて良かったわ。
ワクチンと特効薬が出来てるから、地上のカラス達にはワクチンを打つようにしたのだけど・・・地底にまでカラスがいるなんて知らなかったわ」
薬師の心を読み取ると、おくうは離れで寝ているらしい。
「薬を出しておくから、今日は意識が戻り次第連れて帰って良いわよ」
薬師との話の内容をお燐に伝えると
「よかったぁ~・・・」
と、緊張の糸が切れてへなへなとへたりこんでしまった。
「お燐が気づいてくれたおかげよ。本当にありがとう」
「おくうがっ・・・死ななくて、本当に良かった・・・」
ぽろぽろと泣き出すおりんを抱きしめてやった。
おくうの意識が戻ったと月の兎が伝えた。
「お燐、ありがとう・・・」
「おくうのバカ!死ぬかと思ったんだから!」
また、お燐はポロポロと泣き出してしまった。
地霊殿に戻った私たちは、念のためにおくうにベットで休むように伝えた。
さて、薬の時間だ。
薬は、粉薬が二種類と座薬ね。
「さとり様ぁ・・・それはちょっと嫌ですぅ・・・」
「つべこべ言わないの!さっさとお尻出しなさい!」
「う・・・うにゅぅぅぅぅ・・・・・」
恥ずかしそうな表情でもだえるおくうはちょっと可愛かった。
空さんに…
最後のうにゅぅ…に萌えるぜ!
ってカラスに座薬って使えるのか?