Coolier - 新生・東方創想話

ウソ?ホント?

2009/05/27 06:20:08
最終更新
サイズ
5.59KB
ページ数
1
閲覧数
1210
評価数
11/33
POINT
1910
Rate
11.38

分類タグ


「ただいま。あれ、サニーは?」
 私が日課の散歩から帰ると、家にはスターしかいなかった。
「おかえり。サニーはなんか、さっき出かけちゃった」
「そっか。そういえば、スターは昨日作ったプリン、もう食べた?」
「うん。昨日の夜、食べちゃった」
「早っ」
「美味しかったよ」
 ほわほわとした笑顔がまぶしい。それにしても、スターは行動がはやいなぁ。

 ――うん、昨日は楽しかった。
 急に、サニーが甘いもの食べたい! 
 って言うから、皆で相談してプリンを作ることにしたの。
 里まで行って、新鮮な卵をちょこっともらってきて……。
 サニーがヘマして、鶏に見つかっちゃったのには驚いたわ。
 クケー!ってくちばしでつつかれそうになって、急いで逃げてきた。
 おかげでちょっとしか卵は手に入らなかったから、三つ作るのがやっとだったよ。
 時計を眺める。もうちょっとでおやつかな。
 だったら、サニーの帰りを待って一緒に食べようかな。
 プリンって、はじめて作ったから楽しみ。いちばん手際がよかったのはスターだった。
 私のも、おいしくできてるといいけど……。
「たっだいまー!」
 そうこうしているうちにサニーが帰ってきた。なにか両手にかかえてる。
「おかえり、サニー。なにそれ?」
「お帰り。また香霖堂?」
 ふっふっふ、と胸を張って勿体ぶっている。
 見たところ、ただのガラクタみたいなんだけど。
「面白そうなものがあったからもらってきたの!」
「非、合法的に?」
「スター、それは、しー」
 サニーが口元に人さし指をあてて口をつむぐようにいう。
 あそこの店主はなにをやっているんだろうか。こんなんで大丈夫なのか。
「で、それはなに?」
 気になったので訪ねてみる。
「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれた。これは嘘発見器といって」
「うさんくさっ」
 なんだかそのネーミング自体が嘘くさい……。
「もう、ルナ! 最後まで聞いてよ!」
「はいはい」
「ふっふっふ……よくぞ聞いてくれた。これは嘘発見器といって」
「そこからやり直すんだ……」
 まったくだ。
 スターのつっこみを無視して、サニーが続ける。
「この機械は嘘を聞きつけるとランプが光ってブザーが鳴るようにできているのだ!」
 しばしの沈黙。それ、すごく実用性ないよね……。むだに大きいし。
「――二人とも黙っちゃってぇ、びっくりした?」
 にたにたと自慢顔のサニーが少しかわいそう。思わずスターと顔を見合わせる。
 確かにびっくりしたけどね。ちがう意味で。
「サニーはリリー・ホワイトのことが嫌い!」
 出し抜けにスターが叫んだ。声が大きくて、思わずビクッ、としてしまう。
「……どうしたの? 急に」
「え? 機械がちゃんと動くなら、反応するんじゃない?」
 嘘発見器は静かに緑色のランプを照らしていた。
「これは、嘘じゃない、ってこと?」
 私がサニーをチラリとみると、サニーは冷や汗をかきながら口をひらいた。
「……だってあの人、春過ぎるじゃない……ちょっと、怖いよ」
「そうなんだ。てっきり反応するとおもったよ」
 そうは言うけど、スターはここまで考えて言ってたんじゃないかな……。
「ま、まぁ、それは置いといて! ルナ、何か嘘言ってよ!」
 嘘? 急に言われても困るよ。
 うーん……。
「え、じゃぁ……サニーは嘘発見器を香霖堂からちゃんと買い取ってきた」
「ブー」
 今度はけたたましい音と共に赤色のランプが点滅した。
「おー! ちゃんと動くみたいだね」
 感心してるけどサニー、なんかダメくない? まぁ、いっか。
「ほら、何か他にはない?」
 サニーが促す。改まって考えてみると、嘘ってなかなか出てこない。
 こんなのはどうかな?
「……博麗神社の巫女は働き者」
「ブー」
 ブザーが鳴り響き、赤いランプ。
「まぁ、そのまんまだね」
「……うん」
「ルナはドジっ子、じゃない!」
 って、スター何それ?!
「ブー」
 嘘発見器が騒々しいブザー音と一緒に赤色のランプが点灯した。
「うんうん。結構正確ね」
 スターが満足そうに頷いている。納得いかないなぁ……。
「ルナは私達の中で一番のナイスバディ!!」
 ――っ!
「ちょ、ちょっと何言ってるのよサニー!!」
「あれ? 赤いランプは点いてるけど、ブザーならなかったね」
 スターが言う。
 うぅ……私だって、ちょっとくらい自覚はあるわよ……。
 サニーがニヤッとこちらを見ている。
 そっぽを向く。そっぽを向いたそちら側にいるスターと目が合う。
「ぺったんぺったん」  
「っ、何の事よ! スター!」
「……お餅?」
 ……もういいよ。そんなこと言ったって、どうせドングリの背比べだもん……。
「今のはルナが音を消してたんだよね? ふーん、なかなかやるじゃん。この機械」
 サニーが満足気に嘘発見器を眺めている。
 もういいや。これに付き合っててもしょうがないし、おやつにしちゃお。
 冷蔵庫の方へといく。
 プリン、プリン。
 ちょっとドキドキ。きっと表情はにやにやしてるかも。
「……って、あれ?」
「ルナ、どうしたのー?」
 ……な、い?
「私のプリン……ない」
「――ギクッ」
 サニーの様子がなんか変だ。
「サニー! 何か知ってるでしょ!!」
「し、知らないよぉ」
「ブー」
「……あらあら」
 機械の方に目をやると、スターは興味深げに赤いランプを眺めていた。
「サニー!!」
「い、いや、ちょっと見えなくしてるだけで」
「ブー」
 ひょっとして……食べちゃったの……? 私、あんなに楽しみにしてたのに……。
 ……サニーと一緒に、食べたかったの、にぃ、……。
「ご、ごごゴメン! ルナ、ゴメン。あんまりにも美味しそうだったから」
「サニーの馬鹿!! サニーと一緒に食べようと、…思ってたのに、思ってたのに!!」
 たかがプリンのことかもしれないけど、何故だかすごく悲しかった。
 サニーとスターが慌てているのが、ちょっとだけ滲んでる。
「ルナ、落ち付いて」
「ゴメンね。そんなに楽しみにしてただなんて……」
 知らないわよ! はじめて作った、記念のプリンなのに!!
「何よ……サニーなんて、」
 家中が静まり返る。
「サニーなんて、大ッ嫌いッ!!!」






「ブー!」





 嘘発見器が今までにないくらいのボリュームでブザーをならした。もちろん、ランプは赤。
 しばらくブザーが鳴り響く。
 ブザーの余韻も消え去って、静か。
 ちょっと経ってから、スターが口を開いた。
「――また、皆でつくろ? それで、今度は皆で、一緒に食べよ?」
「……うん」
「…………私、ごめんね。ルナ」
 サニーもちょっと、目が赤い。
「……私も、大嫌いとか言って、ごめん」
 私とサニー、二人してしおらしくしてしまう。
「――ふふっ。やっぱり、嘘発見器、正確ね」
 悔しいけど、スターの言う通りみたい。
 やっぱり三人、仲良しが一番だよね!
 
 なにはともあれ、ここまで読んで頂きありがとうございます。
 ルナかわいいよルナ。一番の苦労人っぽくて、大好きです。
 でも、三人そろっての三月精! 
 みんな好きですが。
 三人仲良く、キャッキャウフフとさわいでいてほしいんだぜ。

 ☆6/30日! 誤字修正。ナスバディってなんやねん(´・ω・`)
実里川果実
http://vivaemptiness.ushimairi.com/
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.990簡易評価
3.90漆野志乃削除
ルナかわいいよルナ。
やっぱり仲のいい彼女達が一番ですよね。
9.70名前が無い程度の能力削除
和むわあ。
10.10名前が無い程度の能力削除
読みにくい。
最低の作品。
11.90名前が無い程度の能力削除
性能が大幅に幻想よりな嘘発見器
16.100名前が無い程度の能力削除
ある意味でSFなのか?
和んだ。
17.100名前が無い程度の能力削除
いい雰囲気。
対ツンデレ最終兵器ですな>ウソ発見器
20.80名前が無い程度の能力削除
空気を読んだな、妖怪「ポリグラフ」。
それとも声の大きさに応じて音量が自動調節されるのですかね。
21.90名前が無い程度の能力削除
これは良いほのぼの。思わず笑みがこぼれました。
23.90名前が無い程度の能力削除
何てほのぼのを見せてくれるんだ!?
GJ!!
24.100名前が無い程度の能力削除
これはなごむ
26.100名前が無い程度の能力削除
最後の「ブー」に心臓を打ち抜かれた。