Coolier - 新生・東方創想話

紅い女の平和な日常

2009/05/23 19:57:17
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序章 紅い女





「ふーん。悪魔の館ねー」

巷で噂の悪魔の館。
その恐ろしいまでの紅の霧から畏怖を込めて「紅魔館」と呼ばれる。


ここは西欧。
多くの争いが世界を支配する時代、人智を超える力は確かに存在していた。


「よいしょっと」
スラリと高い身長、夕陽のように美しい紅の髪。
均整のとれたその体は無駄がなく、恐ろしいまでの美を持っていた。
大陸風の独特な衣装にその身を包み、スリットからは艶のある脚が覗いている。

そんな夢のようなプロポーションの女性が、その街を歩いていた。

「もしかして…スカーレット・デビル…かしら?」

そう呟いて妖艶な笑みを浮かべる。
道行く男性は皆彼女に目を向けるが、そんなものを一切気にもせず彼女は歩いた。

悪魔の館、紅魔館へ。





1 紅魔館




「あー。パチェー」
紅魔館。

人が皆恐れるその館の主は、幼い子供だった。
名を、レミリア・スカーレット。
少女は、年相応の声で年相応の顔をして隣に座る友人に話しかける。

「話し相手ならお断りよ。咲夜にでも頼んで頂戴」
「ケチ―。咲夜は買い出し中よー」
どうやら話し相手が欲しかったようだ。
「全く、…何よ」
ずっと持っていた本に視線を落としていた友人、パチュリー・ノーレッジはやっと顔をあげる。
「いや、何かさ…最近“力”を感じない?」
「咲夜じゃないの?そろそろ帰る頃でしょう?」
違うのよ、とレミリアは首を振る。
「もっと別の…どす黒い感じなのよ」
「悪いけど、私は分からないわ…まぁちょっと調べてみる?」
「うん…」
パチュリーはポンッという音と共に両手で支えるほどの大きさの水晶玉を呼びだした。
彼女は、魔女だ。
怒らせるときっと怖い。普段大人しいから。

「力、力…どの辺なの?その気配みたいのは」
「そうね、あっちの海の方、その辺だと思う」
水晶が濁る。
「あら。これは何なの?」
「濁るなんて…おかしいわ。私は気配を探ってただけよ?気配だけで水晶をここまで染めるなんて…余程大きな力の持ち主としか言いようがない…」

「あら、何ですかその水晶は」
「ひゃあ!!!」

突然後ろから声をかけられ、二人はみょんな声をあげる。
「ささささささ咲夜!いきなり何!」
余程心臓に悪かったようである。


咲夜、と呼ばれたその女性は15歳程度だろうか。
彼女は人間だ。
人間が悪魔の館で働くのには相応の理由があってしかるべきであり、彼女の場合もまた例外ではない。
彼女には異質な力があった。それは、時間に干渉し操る能力。
それ故に利用され、蔑まれ、それをこの主レミリアに救われたのだ。
彼女のレミリアへの忠誠は強く、またよく働いてくれるので紅魔館は咲夜のおかげで成り立っている。


その咲夜は買い出しを終えて戻ってきていた。
そして買い出しとはまた別の荷物もまた持って。
「まぁ良いわ。咲夜。あれ頂戴」
「はいただいま」
咲夜はそう返すとバッグから瓶を取り出す。
瓶の中身は、紅い液体―――血、だった。そしてそれはレミリアにとって必要なもの。
レミリア・スカーレットは吸血鬼。
スカーレット・デビルと恐れられた悪魔、その直系の…●●代目である。

「でね、何かとんでもなさそうなのが都市には居るみたいなんだけど…貴女都市で何か見なかった?」
「いいえ…まぁ今日助けていただいたりはしましたが…」
しかしレミリアはそれに首を傾げた。
咲夜は、強い。
時間を止めていると攻撃するる事も敵わなくなってしまう(相手の神経が働かない)が、能力を活かした戦いもできる。
基礎能力が高い上(人間にしては、だが)に努力を怠らない。
その彼女が、助けられた、というのがまずおかしい。

「いえ、ちょっと余所見をしてしまいまして、―――――」
咲夜は簡単にその出来事を話して伝えた。




おっさん、と言える程度の年齢の男性が怒鳴っていた。私、咲夜に。
「おいこらぁ!!ガキだからって許されると思ってんのかぁ!!?」
あーあーあー。全く余所見してぶつかるのはそんなに悪い事だったっけ…
「何とか言えやこらぁ!!」
しっかも一人にそんな…10人も寄ってたかって…その上何つーセンスのない脅し文句…さっさと抜けるか…
「いい加減にがっ!!!??」
え?

「はーいちょっと邪魔よー」

周りの大人たちがそろって避けていく中で一人の女性がその煩い男の一人の後頭部を叩いたのだ。
「おいてめぇ!何しやがる!」
「すっこんでろ!」

「すっころんでろー!」
女性は笑顔でそう言うと次の瞬間には男たちが全員伏していた。
それも、関節を外されて。
「まーったく、こういう輩がいるから治安が回復しないのよねー、って大丈夫だった?」
「え、ええ…」




「―――――という事です。別に私だけでもどうにか出来ましたが、その女性があまりにも…」
そこで咲夜は顔を赤くして、美しかったので、と小さく言った。
過ぎたる芸術は誰しも語る事にすら緊張をするものである。

「ねえその人強いかな!!」
「わぁ!!!」
今度は咲夜が素っ頓狂な声をあげた。
その後ろにはレミリアと大差ない少女がいる。歪な羽を持った彼女は、
「フラン。あまり咲夜を驚かせないの」
その名をフランドールという。
フランドール・スカーレット。レミリア・スカーレットの妹であり、故に吸血鬼である。
右手を握ることで狙ったものを破壊する事が出来るという恐るべき少女だ。

「えへへー、ごめんなさーい。でも咲夜が見惚れちゃうなんて、凄いんだろうなー」

誰も気付いてはいなかった。

その“凄そうな女性”が館の門の前に来ている事に。






2 復讐





門が開いて、女性が中に入っていく。


「―――!!誰か来たわ!」
「っ!!すみません!」
咲夜が慌てて門に向かう。館の警備も、彼女の仕事だった。
咲夜は走って、門の方に視線をやる。
「さっきの…?」
先程自分を魅せた女性がそこにいた。

「貴女!どうしてここに?」
「…ああ、さっきのお嬢さん。ここに住んでたの?人間にしか見えないけど…」
女性は首をかしげる。
「ええ、私は人間よ。何か問題ある?」
咲夜はまだこの女性の狙いが、目的が分からなかった。
「人間…ああ、本当に人間だったの!この館に!人間!!!あっははははは!」
だが、自分を助けてくれた人とはいえ、そんな笑われて温厚でいられるほど寛大ではない。
「人間と思ってると掬われるわよ?」
「足元は見ておかないとね」
女性はさらりと返す。
「貴女、名前は?」
咲夜は話を続ける事を選ぶ。
相手の実力が分からない以上、下手には出られない。例え、敵だとしても。
「私の名前?そんなのどうだっていいでしょう…?」
女性はいきなり咲夜に“何か”を向けた。殺気のような、そんな感覚的な何かを。
「……うっ!!?」
その強さに思わず後ずさり、冷や汗を垂らす。
「あら、本当に人間と思ってると掬われそうね。普通の人なら今の何ともないもの」
「え…?」
女性は淡々として言う。襲いかかるでもなし、突っ切るでもなし。
ただ、話をしていた。
「気当たりなんてのは分かんない人にはどうってことのないものよ。素人に気当たりするなら今の5倍位はやらないと」
そう言って彼女はにっこりと笑う。
「貴女の目的は何?」
「確かに“貴女”じゃ味気ないわね。私は紅美鈴。適当に呼んじゃって?」
「目的は!」
「ふーん、話は逸らせないか。鍛えられてるのね。じゃあそれに敬意を表して教えましょう。私の目的は、」

そこで美鈴は一拍おいて、続きを明かす。



「復讐よ」



復讐…?誰に?
そんな想いが顔に出たのだろうか、相も変わらず美鈴は淡々と続ける。
「私の両親は“スカーレット・デビル”に殺されてね。その上私のいた故郷はほぼ全滅。厳密には私以外全員抹殺。挙句隣町に逃げた私を待っていたのは壊滅した隣町。行けども行けどもゴーストタウン。素敵でしょう?私はその復讐に来たのよ。ドゥーユーアンダスタン?」
軽い表情で、何でもない事のように、彼女は言い切った。
信じられない。レミリアお嬢様が、そんな事をしたなんて。
「あ、信じられない?そうよねぇ、自分の家にそんな人がいるなんてびっくりよねぇ。でもね、それが真実なの。時に残酷なのよ。真実は」

嘘だ。
頭は否定していた。
だけど、同時にこの人が嘘をついているようには感じなかった。
矛盾している。
だけど、だけど、どうしたらいい?

「ここに入って…どうするつもりなの?」
「殺す」

僅かな望みを砕かれた。
彼女が殺す気なしでここにいるのなら、後からどうとでもなるなどと考えた自分が馬鹿だった。


「私は…この館の従者よ?」
「だから?」
殺す、そう言った時も今も、全く殺気なんて感じない。
今だってコロコロと笑顔ですらいる。
「従者は主を守るのが常識でなくて?」
「後悔するよ?」
まだ笑っている。
「後悔なんてしない。私はここに居なかったら今頃死んでた」
「訳アリか。ま、別に復讐対象の関係者だからって殺しやしないよ。そんなんじゃキリがない。でも痛いのは我慢しててね?」

咲夜は自分の武器、銀ナイフを手に忍ばせる。

勝てるか?
自分に問いかける。
あの街で見せた動きが彼女の本気ならば、十分に勝てるだろう。
私を助けるなんて行為をしたし、普通に街を歩いてられるんだから、きっと相手は人間。
ならば、足を切りつけるなりすれば動きは封じれる。


勝てる、だろう。


美鈴は両手を構えることすらせずに、自分を見ている。
まだ、笑顔だ。

でも、


怖い。


ただ立っているだけの姿、それが恐ろしいまでに美しい。
「時間よ…止まれ」
その恐怖から逃れるために、咲夜は能力を行使した。

世界が死ぬ。
風の音も、鳥の鳴く声も、草木のさざめきも、消える。
同時に立っているだけの美鈴のふらふらと揺らしていた腕が止まる。

「…ふぅ」

これで落ち着いた。
次はナイフの準備だ。

咲夜は空間から数多のナイフを取り出し、美鈴に向かって投げつける。
その全てが彼女の前で止まり、縛られた時間の糸が切れるのを待つ。

「準備OK。殺す気はないけど…手足は悲惨な事になるのは勘弁してよ?動け!」

狙いは全て腕や脚。
正直、その綺麗すぎる体には傷も付けたくなかったが、そうは言っていられない。

美鈴を見る。
彼女は、



まだ笑顔だった。


「わお」
そう短く囁くと、彼女はナイフを受け止め始めた。
的確に、
確実に、
一本一本。
至近距離にナイフが現れいきなり自分に向かって来ているにも関わらず、だ。
それは、明らかに異常な光景。

「ありえない…」
咲夜が今度は呟いた。
これはまるで自分の能力を知っていたようではないか。
いや、知っていたってこんな反応…。
レミリアお嬢様に手を差し伸べられた時、信じる事の出来なかった私は同じ事をした。
その時お嬢様はそのほとんどを全身に受けたのだ。あっけにとられた顔のまま。
それを目の前の女性は…


「痛っ!」
美鈴の声が不意に耳に入った。
「あっちゃー、一本取り損ねた…びっくりしたなぁもう」
「当たって…た…?」
「貴女とんでもない能力持ってるのね…訳アリな訳だわ。今のはびっくりしたわよもう」
びっくりしたなら表情くらい崩してもいいだろう、と思ったが黙る。
100本近く投げたのだ。
でもあたったのは1本。こんな事は今までに無かった。

怖い。

本能的な恐怖だ。
目の前で呑気に脚に刺さったナイフを抜く様子を見る限り彼女は妖怪なのだろう。
だが、そんな事はもうどうでもいい。
怖い。
得体の知れないものを相手にしている気分だ。
逃げたい。
逃げたい。

「で…も…」

怖い。それでも私は、お嬢様を守るためにここに居たいのだ。
主が自分にくれたのは、何だ?

名前、運命、居場所、命。

彼女の言う通り、酷い事をしてきたのかもしれない。
でも、私は、救われたんだ。

「もう諦めなさいって。あんまり人に攻撃したくはないんだから…」
「それでも私は!!!お嬢様にお仕えするって決めたんだ!!!」

「!!!…今度はさっきの倍か!!」
美鈴の前には再びナイフの大群。
ものともせずに受け止める。一度見てしまえば彼女には造作ない。
死角から飛んでくるナイフにも適切に対応し、全てを受け止め、打ち落とす。
「…にしても、」
しかし美鈴には気になる事が一つだけあった。

「今“お嬢様”って言ったか!?」
「言った!!私の主!レミリアお嬢様!!」
「……あれ?」
美鈴の表情がついに崩れた。
「ここは…通さない!!!」
「わー!!ちょっとタンマー!!!」
突然困った表情になった美鈴は脚を滑らせてすっ転び、ナイフの山に串刺しになった。
「あぐっ」
何とも情けない形で、美鈴は意識を手放した。
 




3 スカーレット・デビル





「咲夜、そいつは確かにスカーレット・デビルって言ったのね?」
「…はいお嬢様」
そう、とレミリアは小さく溜息を吐き、目の前でダウンする女性―――美鈴を見た。
「パチェ…」
「大陸ね。貴女の想像通りだと思うけど?」
それを聞いたレミリアは拳を強く握り締める。
強く、強く。
「っ!お嬢様!」
「あ。ああ」
強く握りすぎて、爪が自分の手を切ったらしかった。血が出ている。
その血を舐めつつ、フランドールが弄んでいる水晶玉を見た。
どす黒く濁っていたそれは、虹色に染まっていた。
「いつからあれはオパールになったのよ」
「これの所為ね」
パチュリーは美鈴を指さす。

そこはレミリアの部屋だったので暗かったが、水晶はまるでライトのように場違いな光を放っている。

「んあ!!」
ばん、と美鈴が跳ね起き、辺りを見回す。
「あらおはよう」
「あ、おはようございますー…ってここどこです?」
そんなとぼけた事を真顔で言う。
「紅魔館よ」
レミリアもそれに負けないくらいとぼけた答えを返す。
「ああ、では貴女がレミリアさんですか。…ホントに“お嬢様”ですねぇ」
「何よ」
「いえ、私の間違いだったようです。申し訳ありませんでした。何か謝罪をしたいのですがどうしたらいいでしょう?」
完全にマイペースである。
パチュリーもフランドールも何も言わないのを見ると、事情を理解できてないのが自分だけだと咲夜は思った。
「あの、お嬢様?これはいったいどのような状況なのでしょう?」
「ああ、コイツは私が仇だと思ってたけど何か違ったーって事よ」
そんなんで良いのかと思い美鈴を見る。

………
…………
………………
「あ、そんなまじまじと見られても。いえ、今言われたとおりですよ。ホントにすみませんでした」
すみませんと本当に思ってるのかも怪しい笑顔でそんなことをさらりと言ってのける。

しかしレミリアは一転、真面目な顔つきになってパチュリーと話している。
謝罪に何をさせるか、という事なのだろうが何をさせるのか、ちょっと不安である。


「紅美鈴、だったかしら?」
「お!珍しいですね。こっちの人大抵覚えてくれないんですよ」
「貴女を雇うわ」
「あ、それ無理です」

あっけらかん、とはこういう事を言うのだと私は頭を抱えた。
お嬢様の命令もそうだがこの美鈴という女は真正のとんでもない奴だ。
「あら、本当に無理かしら?」
「はい~、すみません。私にはやらなきゃいけない事があるので」

やらなきゃいけない事、

そう言った時、一瞬部屋の空気が変わった気がした。
何か…、そう。寒く、なった。

「そう!やらなきゃいけない事ね!それじゃあ仕方ないわねぇ!」
レミリアはどうしてか笑う。
初めて美鈴も不快そうな顔をした。

「あのね美鈴。貴女、“スカーレット・デビル”を捜してるんでしょう?」
「あ、彼女から聞きました?………」

その時だ。
今度こそはっきりと感じた。
寒くなるどころではない、今すぐにこの場から逃げたくなる感覚。




「……………………知ってるんですか?」




見逃すはずもなかった。
あのレミリアの腕が小さく震えていた。パチュリーは顔色を変え、目を見開いて美鈴を見ている。フランドールすら目を逸らした。見ていられない、と言うように。
あの戦いのときの感覚が戻ってきた。

怖い。


一体この妖怪は何者なんだろうか。
あっけらかんと図々しいかと思えば、こんな威圧まで持って。

「はは…こりゃ驚いたわ。こんなおっかない奴と咲夜を戦わせてたなんて。水晶に映ってた力もコイツね」
レミリアの若干震えた声。
精一杯抑えてるのが彼女らしい。

「そりゃ、私だって分別ある妖怪ですから。加減位はしますよ」
「咲夜に加減する奴なんてそういないわよ」
レミリアの呆れた声。まだ微妙に恐怖の色があることにパチュリーは気付いていたが、何も言わなかった。
自分が何か言ったらきっとその声は震えてしまっているから。

「でねぇ、スカーレット・デビル、だけど知ってるわよ」
「あいつは何処に居る!!!!!!」
がたん、と強く立ち上がる。
横のテーブルに置いてあったカップが倒れる。
中身が零れる。
「落ち着けって。何処に居るのかは知らない。でも、私の知り合いだよ」




咲夜は思う。

私空気だ。




「妹様」
仕方ないので同じく乗り遅れていそうなフランドール様に声をかける。
しかし、
「あいつか…」
ご存じの模様。

そんな咲夜には気付かずレミリアは誘う。
「私は今もあいつを捜してるわ。パチェ…こいつね、魔女なんだけど、パチェに協力してもらって探ってるの」
「あんたはアイツとどういう?」
美鈴の質問に、レミリアは少し戸惑いを見せる。
「あいつは…ま、旧友、ってところかしら。で、どう?私の所に居れば…」
「アイツの情報も入りやすい、そういう事ね。でも、あんたらが私を雇うメリットは?」
「簡単でしょう?うちは人手不足に悩んでるのよ」
「なるほどね…乗った。ここに住まわせてもらうよ」
「よっしゃ交渉成立。今日は軽く宴にしましょう。歓迎パーティーね」
レミリアはご機嫌に笑った。



「私空気だー」
咲夜が一人、呟いた。




4 幻想の日常




「ふぁ…あ…」
「まったく、仕事中にでかでかと欠伸なんて大した度胸じゃない?」
「ひえ!咲夜さん!!」

あれから何年だろうか。
美鈴は段々スカーレット・デビルについて何かを言う事は少なくなっていったし、スカーレット・デビルに関する話も聞かない。話さない。
幻想郷に来る事になった時も、私は彼女が反対すると思った。
しかし一切反対せず、紅魔館ごと幻想となった。

どころか今だって呑気に大欠伸。
もうスカーレット・デビルの事なんて忘れてるんじゃないだろうか。

「マスタースパーク!!」
「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」
「大変!隊長が焦げてる!」
「ああ!白黒が!」
「パチュリー様のお仕置きがああああ!!!」

この地で雇われた妖精メイド(門番)達が真っ蒼になって魔理沙を追いかける。
これもいつもの光景だ。
美鈴はすぐに起き上がり、帽子を拾う。
「全くあいたたたた、容赦ないなぁ相変わらず」

平和だ。

咲夜は冗談のようにそんな事を思った。



「レミィ、ちょっと良い?」
レミリアを呼ぶ声。
「パチェ!どうしたの?ひきこもりがこんな所に」
「こんな所、って屋内でしょうが。というか外位出るわよ。偶には」
それでも偶には、な友人に苦笑しつつ、レミリアは本題に入る。
「で、どうしたの?」
「ああ、そうだったわ。例の件だけど」
「待って。例の件じゃ分からない」

しばらく笑い声が聞こえていたがその声はしばらくすると止んだ。

「そう、…見つかったの。あいつが。この事は美鈴に…」
「伝えない方が良いわ。やっと平和な生活を出来るようになったんだもの。…酷いとは思うけど、…彼女の為にも」





「さぁて、もうすぐ夕方だけど今日の夕飯は何かな―」
美鈴は今日も呑気に過ごしている。
「美鈴、来なさい。夕飯にするわ」
「はーい!」




いつもと変わらない日常を過ごす。

平和な日常は幻想になってはいけない。
レミリアとパチュリーは静かに水晶玉を片付けた。
どうしてテストシーズンってお話を書きたくて仕方ないんだろう。
サボりたいからだよ!
美鈴や小町と一緒にシエスタしたい楼閣です。

今回の話は…どうでしょう?
何だか今までで一番自分の中でも判断のつかない作品になりました。
でも自分的には気に入っています。続編を書きたくなるくらいには。書くかは分からないですけど。

タグにもつけてますが、この話を作るきっかけは咲夜さんの方が先に紅魔館に居たら、とか考えた事でした。
あんまり咲夜さん活躍させてあげられなかったのでちょっと残念です。

なにはともあれ楽しんで頂ければと思います。
それでは。
楼閣
http://ameblo.jp/danmaku-banzai
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コメント



0.1270簡易評価
10.70名前が無い程度の能力削除
お嬢様がビビるほど強い美鈴、実力がみたいですね
続編がとても気になります。

後半の咲夜さんマジ空気
14.70名前が無い程度の能力削除
『いつからオパールになったのよ』←これが秀逸。
17.無評価楼閣削除
きゃん!

なかなかどうしてシエスタは許されないのか…。
さてさて、今回もコメントを頂きましたよ!

10>
美鈴は実は強いんだよ説を私は唱え続けます!(何だお前
続編…書いてみることにします!
咲夜さん空気w。いっつも目立ってるからですよby美鈴

14>
オパール!
気に入った頂けたようで幸いです。
ネタ一つ笑って頂けると何か爽快な気分します。

評価してくださった方、コメントくださった方、ありがとうございました!