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21世紀、人は世紀末を乗り越え、その新たなる世界へと足を踏み入れた、
恐怖の大王は表れず、散在した愚か者だけが涙を流したその世紀末、
すっかり人々の心から忘れ去られたそれは、新たなる場所で牙をむいた。
そう、幻想郷は今この時が世紀末!
「この食料状況はまさに世紀末……!」
美鈴は世紀末の進行状況に冷や汗を流す、幻想郷の食糧事情を調べれば、
そこにあったのはわずかな種籾と数枚の干物のみ。
「ほう、私の寺子屋に何を持って忍び込んだかは知らんが、
それはいささか無礼というものではないのかね?」
「み、水……」
「そうか、水か、なら己の目から流れ出たものを飲むといい」
侵入者の頭をわしづかみにした慧音は勢いよく頭を振り下ろす、
寺子屋に世紀末な重低音が鳴り響いた。
「ほぁ……!!」
「せめて普通に客人として迎えられてからそういう行為はとってもらいたいものだな」
「だだだだって咲夜さんに一週間食事抜きの罰を食らったんですよ!?」
「知るか!」
「あと世はまさに世紀末なんですよ!」
「それがどうした!」
涙目で訴える美鈴と睨みつける慧音、二人の間では炎が燃え盛る。
「ん? 何かが燃えて……」
ようやく炎に気づいた慧音が窓の外をのぞくと、
あたり一面は真っ赤に燃え盛っていた。
「作物畑に火が!?」
「わー、まさに世紀末ですねぇ」
「しゃおらぁ!!」
「ひぐぅ!!」
慧音はありったけの苛つきを込めて美鈴にもう一度頭突きを決めると、
窓から飛び出して炎の元へと向かう。
「ヒャッハー!」
「この声は妹紅か!?」
燃え盛る炎の中心では、妹紅がその翼を広げて辺りを焼き尽くしていた。
「ヒャッハー! 汚物は消毒だー!!」
「やめるんだ妹紅ー! 寺子屋の子供達が頑張って作った作物なんだぞー!」
「ヒャッハー! 聞こえないなー!」
「くっ……!」
呼びかけに応じず、さらに炎の範囲を広げていく妹紅、
慧音は意を決すると、その炎の中に飛び込んでいく。
「一体どうしたというんだ!」
「……ヒャ、ヒャッハー!」
「炎を止めてくれ! お前に頭突きはしたくない!」
「うう……汚物は消毒なんだー!」
「わっ!?」
寄り縋る慧音を突き放すように妹紅は炎を撒き散らす、
一瞬ひるんだ慧音だったが、すぐに炎を払いのけて妹紅に喰らい付く。
「頼む! もうやめてくれぇ!」
「うぐっ……」
「離れてください慧音さん! 私が仕留めます!」
「美鈴!?」
その時、美鈴が炎を突っ切って妹紅との距離を詰める。
「待ってくれ! 妹紅が理由も無しにこんなことをするはずがない!」
「悪に容赦は必要ありません!」
「や、やめろぉぉぉ!」
「鈴斗残悔拳!!」
ふわり、と美鈴の体が宙に浮き、二人の上を飛び越えた。
「……な、何? 一体何をされたの?」
「こめかみ近辺の秘孔を突きました、あなたはあと三秒後に死にます」
「何だって!?」
流れるような動きで飛び越え、両の指で頭部の秘孔を挟むように突く、
そのあまりにも華麗な動きは二人にそれを悟らせることすらなかった。
「死ぬまでの間に自らの行いを悔いなさい」
「冗談はよしてくれ美鈴殿! 妹紅が死ぬなんぶべらっ!」
「慧音ーっ!?」
美鈴が二人の上を飛び越えてからきっかり三秒後、
慧音は顔中の穴という穴から血を噴き出して倒れた。
「うわー! 何で! 何で慧音がっ!!」
「ん? 間違ったかな?」
「間違ったかな? じゃないだろぉ!!」
「……鈴斗神拳の前には、死、あるのみ」
「ごまかすなっ!!」
妹紅は倒れた慧音を抱きかかえると、必死に声をかける。
「慧音! しっかりするんだ慧音!」
「……うう……妹紅……」
「良かった、まだ生きてる……すぐに永琳のところに連れてってやるからな!!」
「安心してください、まだ秘孔を突ききってはいません」
「どう見ても全力で突いてるだろうが!!」
ジョインジョイン永遠亭。
「……これは酷いわね、普通の人間なら頭が破裂して即死してるところよ」
搬入された慧音の様子を見て眉をしかめる永琳、
首から上が血に染まっている状態では無理も無い。
「常人の百二十倍といわれる頭蓋骨の硬さでそれを免れたってとこね」
「で、慧音は助かるのか?」
「任せなさい、私は天才だーっ!」
「(……不安だ)」
なにやらうれしそうな表情で慧音と共に治療室に入る永琳、
それを妹紅は心配そうな眼差しで見送った。
「永琳だから大丈夫だよね……」
「永琳姉さんならなんとかしてくれるでしょう」
「うおわっ! ついてきてたのか!」
「ええ、あなたに聞きたいこともありましたし」
「聞きたいこと?」
「作物を焼いた理由ですよ」
美鈴は真剣に妹紅を見つめて問いかける。
「恐らくは幻想郷に流れ込んできている大量の世紀末があなたに――」
「作物に毒もってる虫が沢山沸いてたから」
「異変を……って、虫?」
「うん、虫、慧音や子供達に対処させるのは危険だから……その、まぁ……焼いた」
「岩山両斬波!!」
「うわちっ!!」
突如振り下ろされる美鈴の右手、しかし妹紅はそれをすんでの所でかわす。
「いきなり何するんだ!」
「世紀末です! 世紀末があなたをあんな凶行に走らせたんです! 間違いありません!」
「お前の頭の方が世紀末だよ!!」
こうなれば、と妹紅も炎を纏って臨戦態勢に移る、
しかしその時、治療室から響く声が二人の動きを止めた。
「さぁーて、どの薬から試してやろうかぁ~」
『ん?』
治療室から響いてくる永琳の叫び、
と同時に二人の心を言い知れぬ不安が襲う。
「これが八意流琳斗神拳だーっ!!」
「……なんかすごく嫌な予感がする」
「大丈夫です、姉さんはいつも世紀末ですから」
「それ全然大丈夫じゃないから! 慧音ー!!」」
妹紅は治療室の戸を蹴破って中へと乗り込んだ。
「ん……妹紅か、騒々しいな」
「あれっ、慧音? 大丈夫……なの?」
「ああ、なんでこんなところで寝ていたのかはわからんがな」
体を起こしながら答える慧音、
永琳はその様子を確認すると、左手を慧音の肩に乗せる。
「これで……あなたにも見えるはずよ、あの死兆星が!」
『なんだと!?』
永琳は右手で天空を指差せば、どこからともなく現れる北斗七星、
その脇にある小さな星が慧音の目に映る。
「見せてどうするんだ!?」
「冗談よ冗談、あとはここの秘孔を突けば……」
「――ぴにゃ!!」
その声を発したきり、慧音はぴくりとも動かなくなった。
「お、おい、なんか変なうめき声をあげたんだけど……?」
「……せめて痛みを知らずに安らかに死になさい」
「死なせてどうする!!」
「もういい、ここまでよ」
「何がここまでっ!?」
永遠亭はまさに世紀末。
「妹紅さん落ち着いてください、慧音さんは私が何とかします!」
「美鈴!」
「慧音さんを治す秘孔は……これだ!」
「うわらば!」
「ん? 間違ったかな……?」
「お前もか!」
慧音の体力ゲージはとっくに零である。
「こうなったらもうあれしかないわね」
「ええ、あれでいきましょう姉さん」
「ああもう! あれとか何でもいいから早く慧音を助けてくれ!!」
「美鈴、準備はいい?」
「はい、姉さん」
永琳と美鈴は喚く妹紅を見据えると、こう言い放った。
『せめて奥義で葬ろう』
「やっぱりかーっ!!」
― 完 ―
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あ、そっちじゃない?
この場合拳王ポジションは誰なんだ・・・!?
作者よ、(頭が)天に還るときがきたのだ・・・!
タチ悪過ぎるwwwwww
そのうち皆でバスケでも始めそうだwww