Coolier - 新生・東方創想話

東方の金曜日Part11

2009/05/22 09:00:53
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東方の金曜日



第11話「キリュウ」
魂魄妖夢は主である幽々子と共に歩いていた。これからどうするかは分からずにいた。
それなのに・・・。
「妖夢、ご飯まだ―?」
「またですか・・・?果物でも我慢してくださいよ・・・。」
「ちぇちぇちぇー・・・。」
「日本語で話してください。」
こんな状況でも、幽々子はこんな感じだ。持っている籠にはさっき採った果実がギッシリ入っていた。
幽々子はぶーぶー言いながらも果物を食べつつ言う。
「これから、どうするんです?」
「そうね・・・。T‐Jは機械人形って言ってたわよね?」
「はぁ、そうですが・・・。」
「それじゃ、その背後に作り主・・・黒幕がいるわね。」
幽々子の言葉に妖夢は驚く。
確かにそうだ。T‐Jも作られた身なら、きっと作り主である黒幕がいるに違いない。
しかし一体誰が?何の為に?
そう考える妖夢の傍で幽々子は果実を食べつつ、うろうろする。
「ムグムグ・・・あら?あれは・・・。」
ふと、幽々子はある物を見つける。
それは、手帳だった。古ぼけていて、何処か見たことのある手帳だった。
「これって・・・あの天狗の手帳ですか?」
妖夢が恐る恐る尋ねる。文が死んだというのは、既に腕時計の脱落者情報で知ったからだ。
幽々子は手帳を拾い、中身を見る。その途端、顔が驚きの表情になる。
妖夢も驚く。こんな幽々子様の表情は初めてだ。
いつも天真爛漫で、呑気に食べ物を食べまくっている幽々子様。そんな彼女が真剣な顔をしている。
「なるほどね・・・。」
「ゆ、幽々子様?一体、何ですか・・・。」
「妖夢にはまだ早いわね・・・。さして言うなら・・・黒幕は意外と近くにいること、ということね。」
妖夢には理解できなかった。一体、手帳に何が書いてあったんだ?幽々子様は何を知ったんだ?
そんな疑問が頭の中でビュンビュン渦巻く中、
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
悲鳴が聞こえた。妖夢には聞いたことのある声だ。幽々子もはっとなる。
「この声は騒霊団の末っ子・・・。妖夢、行くわよ・・・。」
「は、はいっ!」
幽々子と共に妖夢も後を追う。暫しの間、妖夢達は悲鳴の所へ辿り着いた。
そこには、いつも白玉楼でいつもお世話になったプリズムリバー3姉妹の帽子と楽器が落ちており、その向こうには・・・
奇妙な刀を2本持ったT‐Jが立っていた・・・。
妖夢は刀を抜いて、T‐Jに戦闘態勢を取る。周りを見ても、あの騒がしい彼女達が見えない。
「ルナサさん達をどこにやった!?言え!」
妖夢がT‐Jに詰め寄ると、幽々子が妖夢になだめる様に言う。
「無駄よ、妖夢。あの人形は喋らないのか、喋れないらしいわ。それにどうやら、あの3姉妹はもういないわ・・・。」
妖夢はその言葉を聞いて、絶句した。
死んだのか?殺されたのか?
いや待て。妖夢はある事実を思い出す。
「で、ですが・・・。ルナサさん達は少し違いますが、幽々子様と同じ幽霊の身・・・。幽霊が死ぬなんてあり得ません!」
だが、幽々子は首を振り、こう言う。
「私にも分からないわ・・・。だけど、幽霊とて万能ではないもの。きっと、彼は幽霊の対処法を持っているかもしれない・・・。」
そして、幽々子はT‐Jに向かって言う。
「貴方に言いたいことがあるわ・・・。」
そして、こう言う。
「“キリュウ”という人って知っているかしら?」
妖夢は一瞬、戸惑う。キリュウ?一体何なのだそれは?幽々子様は何でそれを・・・?
「実は、貴方に殺された哀れな鴉天狗の手帳を見つけ出してしまって・・・その中に驚くべき情報がギッシリ詰まっていたわ。まず、キリュウ。これは恐らく、貴方を作った人か、関係者なのか、はたまた黒幕なのか・・・。正解かしら?」
T‐Jは幽々子の言葉を聞いていたが、首を傾げる。幽々子はやれやれとため息をつく。
「秘密厳重故にしらばっかくれているのか、はたまた覚えていないのか、困ったわね・・・。」
でも・・・、と幽々子は指さしてこう言う。
「貴方の正体は『遺伝子内蔵自律型戦闘殺戮兵器』ということが分かったわ。そしてその遺伝子の元は・・・闇の巫女。」
闇の巫女?妖夢はその言葉に驚く。巫女というのは、霊夢などの博麗神社の巫女か?
そんな妖夢にはお構いなしに、幽々子は続ける。
「かつて、幻想郷が出来上がったばかりの頃・・・。ある巫女が暗黒の闇へ堕ちてしまい、闇の巫女として覚醒し、幻想郷を恐怖のどん底に落としました。しかし、それを食い止める者が2人いました。それは紫と・・・霊夢のご先祖である巫女でした。長い戦いの末、遂にゆかりん達は闇の巫女を外の世界へ封印しました、めでたしめでたし・・・。」
そして、幽々子はT‐Jにこう言う。
「知らないと思うけど、貴方にはその闇の巫女の力が宿っているらしいわ。ルーミアを殺した時、貴方は退魔の刀を使ったわね?きっと、霊夢みたいに妖怪退治を専門とする巫女の癖とかが今も貴方の中に残っているかもしれないわね・・・。ふふふ、天狗の記者としてのプライドは馬鹿に出来ないわね・・・。まぁ、中には信じられない情報も入ってたけど・・・分かった?」
そう言った瞬間、T‐Jは突如、幽々子に斬りかかった!慌てて、妖夢が刀で受け止める。
「ぐっ・・・幽々子様・・・どうやらこいつは口封じするらしいです・・・!」
「そんなに秘密を知られたものは生かしてはおけないと思っているらしいわね・・・仕方がない・・・。」
そうため息つくと、幽々子はスペルカードを取り出す。
「妖夢―、スペル使うから下がって―。半人が死んじゃうわよー。」
「御意!」
そう言い、妖夢は下がる。主である幽々子の能力は相手を死に誘う能力である。
「それー♪」
スペルの解放と共に、死を誘う蝶がT‐Jの周りに集まる。
しかし、一瞬で死に至らせる蝶もT‐Jには効いていないが、妖夢はある事に気づく。
「おかしい・・・T‐Jのスピードにキレがなくなっている・・・。動きが鈍くなっている・・・。」
「答えは簡単よ。闇の巫女の遺伝子はT‐Jの内側と外の皮に付着しているのよ。いくら遺伝子とは言え、死の蝶の前では、死んでしまい、消えてしまう・・・。結果、外側の遺伝子がなくなり、T‐Jの動きが鈍くなったのよ。」
天狗のお陰よ、と幽々子は手帳をひらひらさせて言う。
やがて蝶が消えると、T‐Jは2人に襲いかかる。妖夢は好機とばかり、刀持って、対峙する。
「相手のスピードが鈍くなればこっちのもの!一気に奴の皮を削り取って、幽々子様の力で、内部の遺伝子も滅ぼす!」
妖夢はT‐Jに怒涛の勢いで斬りまくる。しかし、T‐Jはなかなか頑丈であった。
だが、T‐Jの反撃には楽々とかわせる。ならば、持久戦で勝負だ。
一方の幽々子はT‐Jが持っている刀を見つつ、プリズムリバー3姉妹が消えた理由を探す。
確かに、妖夢の言う通り、あの3姉妹は自分と同様、霊の類。死ぬことはもうない。
そして、T‐Jの2本の刀を見る。よし、と頭の中を整理して、探してみる。
結果・・・。
「・・・・・・・・・っ!」
幽々子はある事を思い出し、絶句する。まさかそんな筈では・・・。このままでは妖夢が危ない!
「妖夢、止めなさい!危険よ!」
「みょ?うわっ!」
幽々子の声に気づいた妖夢はあろう事か、小石に足をかけてこけてしまう。それをチャンスとばかり、T‐Jが攻撃する。
「(大丈夫だ・・・。あの剣さばきでは、致命傷とならないだろう。皮を斬らせて骨を断つ戦法で反撃せねば・・・)」
そう冷静に思った瞬間、驚くべきことが起こる。
幽々子が妖夢をかばったのだ。幽々子の背をT‐Jが斬りかかる。
「くうっ・・・!」
幽々子は痛みに顔をしかめるも、妖夢を抱いたまま、T‐Jに背を向ける。
「ゆ、幽々子様!?」
そして、高く飛んで逃げる幽々子達を見て、諦めたのか、T‐Jは2本の刀をしまおうとする。
突如、T‐Jの背後から爆発音が。伏せるT‐J。
立ち上がって見ると、そこには神奈子、諏訪子、雛、早苗、静葉、稔子、そして合流したのかさとりやお隣、お空もいた。
「さとり、どうだ?奴の心が読めるか?」
「無理ですね・・・。彼の心は全く無みたいで全然読めません・・・。それにしても不運ですね・・・。こいしを探したら、彼と鉢合わせになるなんて・・・。」
「まぁ、仕方がない。早苗、下がっておくれ・・・。一気にぶっつぶす!!」
T‐Jは既に動きは鈍くなっている。しかし、神奈子達に向かって斬りかかった。



妖夢達は何とか、T‐Jから逃れていた。しかし、妖夢は幽々子の行動が理解できなかった。
「幽々子様。何故、私なんかを庇おうとしたので・・・っ!」
妖夢は気づいた。幽々子の体が薄くなり始めたのだ。幽々子の呼吸も苦しかった。
「こ、これでわかったでしょ?・・・あれに斬られたら、半人半霊の貴方もお終いなのよ・・・。」
「これは一体・・・?」
「・・・除霊刀よ・・・。」
「っ!」
その言葉に妖夢は絶句した。聞いたことがある。
除霊刀とは、長い間、西行寺が封印していた驚異の刀であり、妖夢の刀の1つ同様に、迷いを断ち切る伝説の剣である。
「・・・プリズムリバー達もそれで斬られたのね・・・。死んだじゃなくて、成仏したのよ・・・。」
『P-184 ルナサ・プリズムリバー
       メルラン・プリズムリバー
       リリカ・プリズムリバー T‐Jの手により成仏 現在脱落者13名』
妖夢は言葉を失った。何故、奴は西行寺の剣を持っているのだ?奴は何者なんだ?
「幽々子様!私にも教えてください!、黒幕は一体誰なんですか!?『遺伝子内蔵自律型戦闘殺戮兵器』とは何なんですか!?闇の巫女とは何ですか!?幽々子様は天狗の手帳で何を見たんですか!?」
あらゆる感情と共に、問い詰める。しかし、幽々子は微笑んでこう答える。
「言ったでしょう?黒幕は意外にも近くにいるって・・・。」
そして、手帳を妖夢に差し出す。
「これを、霊夢に渡しなさい・・・。あと、伝言も宜しくね・・・。『必ず、異変を解決しなさい』、と・・・。」
そう言う、幽々子の体が徐々に薄まる。妖夢の眼から涙が溢れる。
「幽々子様・・・何故・・・何故、私を庇ったんです?」
「ふふ、妖夢はまだ若いからこんな所で死なれちゃいけないからよ・・・。紫や貴方には寂しい思いするけど、御免ね♪」
そう微笑み・・・幽々子の体は消えていった。
「幽々子様・・・・・・!」
『S-185 西行寺幽々子 T‐Jの手により成仏 現在脱落者14名』



その一方で神とT‐Jの戦いは続いていた。
T‐Jは神奈子達の攻撃を受けまくったが、負けじと反撃を行っている。
「くっ・・・!奴めなかなかやるな・・・。」
「この厄・・・少し弱まっている・・・!ならば!」
そう言い、雛はT‐Jの所に突っ込む。
「雛下がれっ!死ぬ気か!?」
「大丈夫よ!私は厄神!今、厄を放出している私に近づけば、誰もが不幸になる!」
厄を放出し、雛はT‐Jに近づく。零距離でなら、T‐Jに勝てると思ったからだ。
T‐Jは雛に攻撃するが、雛にかわされてしまう。それ所か、木にぶつかったりと大変な目に遭っている。
「ふふ、どうかしら厄に振り回される気分は?」
そう言い、雛はスペルを取り出す。一気に全てのスペルを開放するつもりだ。
だが、T‐Jに異変が生じる。
突如、T‐Jの体からどす黒い煙が上がった。何だ?と不思議がる神奈子達に対し、雛が真っ青になる。
「何よあれ・・・?あんな厄、今まで見たことない!一体・・・一体何なのよ貴方は!」
パニックに陥る雛にT‐Jは黄金の剣で雛の体を貫く。
「・・・!そ、そんな・・・私の厄が・・・消されているなんて・・・。」
そう言い、雛は倒れた。
『P-190 鍵山雛 T‐Jの手により死亡 現在脱落者15名』
「い、嫌ぁぁぁ!!」
突如、早苗達の傍で見守っていた稔子が逃げ出した。慌てて、静葉も追いかける。
「落ち着いて稔子!」
「嫌よ!敵う訳ないじゃない!お家に帰る!」
「落ち着いて!大丈夫よ、私や神奈子さん達がついているから・・・。」
そう言い、静葉は稔子に抱きつく。
「大丈夫・・・大丈夫だから・・・。」
「お姉ちゃん・・・。」
しかし、T‐Jはそんな姉妹愛に浸るほど、寛大ではなかった。
雛を刺し殺した黄金の剣で2人を一気に貫いた。
「み、稔子、御免・・・・・。」
「いいの・・・お姉ちゃんと一緒なら・・・・・。」
そう言い合い、秋姉妹も倒れてしまう。
『A-191 秋静葉
  秋稔子 T‐Jの手により死亡 現在脱落者17名』
「静葉・・・稔子・・・。くそっ!私がついていながら!」
またも神仲間である秋姉妹の死に神奈子は焦った。自分がいながら、大切な仲間を死なせてしまった。
T‐Jはそんな神奈子をよそに、次のターゲットを見つける。
視線の先は・・・早苗だった・・・。
「え?・・・えぇっ!?」
「し、しまった!」
秋姉妹がいない今、早苗はあまりにも無防備だった。それに気づいたT‐Jは黄金の剣を早苗に向けて、投げ出した。
「早苗―――――!よけろ―――――!!」
神奈子が叫ぶ。しかし、早苗はどうすればいいのか分からなかった。
「え、えと・・・こここういう場合は・・・奇跡のスペル・・・。」
あたふたとスペルをセットしようとする早苗。しかし、あまりにも遅かった。
もう駄目か!?誰もがそう思う時、
「させないっ!」
突然、諏訪子が猛ダッシュで早苗に近づき、早苗を突き飛ばす。
そして、代わりに諏訪子が刺された・・・。
「諏訪子様ぁぁぁぁ!!」
早苗は絶叫し、諏訪子の所へ駆けつける。
「諏訪子様!諏訪子様!しっかりしてください!」
早苗は諏訪子を抱く。
「さ、早苗・・・。どうやら、この剣は神でも殺せるらしいよ・・・。」
「何故・・・何故、私のような者を庇ったのです?」
「へへへ・・・早苗は私達にとって家族みたいなものだよ・・・。家族を守るのに理由はいらないよ・・・。」
そして、諏訪子は神奈子やお空に向かって言う。
「神奈子、今まで喧嘩して御免ね・・・。お空、その力を皆のために使ってね・・・。」
そう言うと、諏訪子はガクッと力尽きた。
「諏訪子様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『S-204 洩矢諏訪子 T‐Jの手により死亡   現在脱落者18名』
「す、諏訪子が・・・。」
お空が絶句する。しかし、神奈子には、別の感情にあふれていた。
怒り。ただそれだけの事である。
「貴様だけは・・・絶対に許さん!!!」
そして対峙しようとすると、どこからかスキマが出、紫が現れた。
「八雲の・・・。」
「神奈子・・・。」
紫はT‐Jを気にしつつ、全ての事情を話した。式神である橙と藍が死んだこと。サニーを連れて、スキマで行く途中でミスティアに合流したこと。そして腕時計で旧友である幽々子が成仏してしまったのを知ったこと。
「そうか・・・。それより、スキマ使えるのか?」
「いえ、場所が程定まっていないから、ほぼランダムよ。今回ので10回目。」
「八雲の・・・頼みがある・・・。」
「私もです。」
神奈子に続き、さとりも言う。彼女の思考を読み取ったのか、覚悟を決めたような顔だった。
「早苗を・・・頼んだ。」
「八坂様・・・。」
神奈子の言葉に早苗は絶句する。八坂様、まさか・・・。
神奈子は微笑み、早苗に肩を置く。
「早苗・・・お前はまだ若い。だから、私の言う事を聞いてくれ・・・。お前の奇跡の能力を霊夢や霧の字(魔理沙)と合わせてほしい。そうすれば、絶対、奴に勝てる・・・。お前達は幻想郷の・・・いや、全ての希望なんだ・・・。」
早苗は覚悟を決めた。八坂様は死ぬ気でT‐Jを足止めしようとしている・・・。
しかし、今の私ではかえって、八坂様の足手まといになってしまう・・・。
八坂様も死ぬのは嫌だが、八坂様は霊夢さん達に全てを賭けたのだ。
だから涙ながらに、早苗はこう答える。
「わかりました・・・必ず、この異変を解決します・・・。」
さとりも続ける。
「紫さん、お空をお願いします・・・。」
「えっ!?さとり様は何をするの!?」
突然の出来事にお空は驚く。ご主人は何を言っているのだ?
「お空・・・多分、あんたの核はきっとあの巫女達を支援してくれるとさとり様は思っているんだよ。」
お空に説明するように、お隣が言う。
「お、お隣は・・・?」
「あたいは残るよ。」
突然の言葉にお空は絶句する。
「な・・・何で!?」
「さとり様も残るっていうからよ。あたいも残るわよ。足止めぐらいさせてよね。」
「お隣・・・貴方・・・。」
「もう心を読んだかもしれませんが、ご主人を一人ぼっちにさせたくありませんからね。」
戸惑うさとりに対し、お隣はニカッと笑う。その時、T‐Jが動き出す。
「皆、早くして!」
紫に言われて、早苗はスキマに行こうとする。そして、お空の手を取り、一緒に行こうとするが払われてしまう。
「お空さん、早く!」
「嫌だ!さとり様やお隣が残るなら、私も残る!」
「お空・・・。」
お空の言葉に驚くさとり。自分は心を読む妖怪故に嫌われていた。お空はそんな自分を慕っていたとは・・・。
「お空・・・あなたはこいしを探しだし、霊夢さんと共にT‐Jを倒す任務があるのです。紫さん、早く。」
「分かったわ・・・。貴方達、この鴉をスキマに入れなさい。」
スキマからサニーとミスティアが現れ、早苗と共にお空を羽交い絞めにしつつ、スキマに連れて行く。
「離して!さとり様やお隣も死ぬなら、私も死ぬ!」
「駄目です!八坂様達は自らの命と引き換えに、私達を生かそうとしているのです!早く!」
「離してよ!嫌だよ!さとり様やお隣が死ぬなんて嫌だよ!私を一人ぼっちにしないでよ!お隣―!」
そんなやり取りの中、突如、T‐Jはミスティアに向けてある物を投げつけた!
「痛っ!・・・あれ、生きてる?つーか、これって・・・。」
しかし、ミスティアには何の異常も見られない。ふと、ミスティアは足元に箱があることに気づく。
箱の中身を見てみると、そこには虫型のアクセサリーが。これは・・・。
「これって・・・これってリグルが徹夜で作ったアクセサリー!」
ミスティアには分かっていたのだ、リグルが徹夜でアクセサリーを作っている時に。それを渡して、自分に告白する事を。
今はもういないリグルのアクセサリーをギュッと抱きしめながら、ミスティアはT‐Jに言う。
「これを・・・これを届けてくれたの?貴方、何の為に・・・?」
しかし、T‐Jはそれに答えず、金色の剣持って、彼女達に襲いかかる。
「くっ・・・アクセサリーを届けたから、そいつのいるあの世へ逝け、という訳か・・・嫌な奴だよ本当・・・早くしな!」
八坂は舌打ちしつつ、紫に言う。今、暴れるお空を何とか入れている所だ。スキマが閉じ始める。
「さとり様―!お隣―!」
そんなお空の悲痛な声と共に、スキマが閉じられた。目標を失ったT‐Jは神奈子達に向ける。
「ふっ。来たな・・・。何か手はあるのか?」
「神奈子さんには早苗さんが取っておいたサブウェポンがありますね?」
「ああ、それが?役に立たないと思うが?」
「私に考えがあります。貴方と私達のサブウェポンの弾薬をお隣の死体車に詰め込んで、T‐Jにぶつけます。その後、私達のスペルで引火させて爆発させればいいのです。油やガスボンベも何故かありますから、爆発力は凄まじいと思います。」
「わ、分かった。よし、私は・・・。」
「神奈子さんがT‐Jを引き付けてる間に、私が準備し、お隣が弾薬入りの死体車を発進させます。そして、一定の距離で離して、全員のスペルで引火、ですよね?」
「ふっ、心を読むなよ。」
「さとりですから。」
「そうだな・・・行くぞっ!!」
そう言い、神奈子はT‐Jに攻撃を仕掛ける。
T‐Jの攻撃は思いっきり振っているのか、動きが鈍い。いくら同じパワータイプの神奈子でも、容易にかわせた。
一方でさとりとお隣は、こそこそと準備をしている。
「さとり!まだか!?」
「もう少しです・・・あとはここをくっ付けて・・・少し多すぎですね・・・よしっできました!下がってください!」
そう言われ、神奈子は後ろに下がる。その瞬間、大量に弾薬を死体車に詰めたお隣が発進する。
「いっけ―――-―!!」
そう叫びながら、お隣が突っ込む。しかし、3人は予想もつかないことを目の当たりにする。
T‐Jが脚部からチェーンを取り出し、投げたのだ。チェーンはお隣の首に巻きつく。
「ぐえっ!」
そして、チェーンを引っ張り、死体車ごとお隣を引っ張り、
剣でお隣を刺す。
「お、お隣―――!!」
さとりが叫ぶ。お隣は血を吐きながら、こう言う。
「さとり様・・・早く・・・スペルカードを・・・!」
「な、何を言うのです!?今助けます!」
「来ないでください!早く引火しないと奴が・・・。」
見ると、T‐Jは死体車を引き離そうと苦戦していた。
「接着剤が多めに効いてよかった・・・。私に・・・私に構わず、早く・・・スペルカードを・・・。」
「・・・。」
「さとり・・・。」
「やむを得ません・・・。スペルを・・・。」
そして、2人は全てのスペルカードを発動させる。
「許してください・・・お隣・・・。」
「ちっきしょ―――――!!」
スペルによる弾幕が死体車に当たり、大爆発を起こした・・・。
『O-215 火車隣 T‐Jとの戦闘により死亡 現在脱落者19名』
さとりと神奈子はその火をずっと見ていた。
戦いに勝った。だが、あまりにも犠牲が多すぎた。大切なものを失ってしまった・・・。
「さとり・・・。」
「・・・さようなら、お隣・・・。」
さとりが涙を流し、呟く。



その時、火の中から影が現れた。
「「何っ!?」」
2人は絶句した。あの大火では普通生き残れない筈だ。なのに、何故・・・。
何故、生きているんだよ!?
やがて、火の中から、T‐Jが現れた。服はすっかりなくなり、銀色の皮(装甲)が鈍く光る。
仮面の奥の目が赤く光り、装甲のカバーが開き、中からどす黒い煙を吐き出す。
その瞬間、T‐Jは一気に走りだし、2人が気づいたときには、神奈子を、次にさとりを斬った。
「がはっ・・・!そ、そんな・・・。」
「思考が読み取れない上に、速過ぎる・・・。」
そして、T‐Jが止めを刺そうとしている中、2人はこう言う。
「どうやら、私達は・・・彼を本気にさせたようですね・・・。」
「そうだな・・・。」
「(お空・・・死なないでください・・・。)」
「(早苗、霊夢・・・後はお前に任せる・・・。)」
それが2人の最後の思考であった・・・。その2人にT‐Jの刃がおろされた。
『O-215 さとり
       八坂神奈良子 T‐Jの手により死亡 現在脱落者21名』



崖の傍らで妖夢は腕時計の情報を見て、絶句した。まさか、神奈子とさとりが死ぬなんて・・・。
どうすればいいのだ?幻想郷の神ですら殺せる殺人鬼機械人形相手に勝てるのか?
そんな疑問が頭の中に響く。その時、
「ほほぅ?その腕時計で、仲間が死んだという事を知るんじゃな?便利じゃのー。」
ふと、声がかけられる。年老いた言葉遣いの割に、幼い感じの声だ。
振り向くと、そこには白い髪で赤い眼をしていた少女だった。少女は笑いながら言う。
「それにしてもT‐Jという奴めは凄いようじゃのー。まさに殺し合いのチャンピオンじゃな。」
T‐Jを知っているのか!?妖夢は警戒する。
「何者だ!?まさか、キリュウという奴の仲間か!?」
「ほほぅ?キリュウを知っているのか?そりゃよいよのぅ。しかし、これは見ものだったぞ、主を失ったお主の顔。」
そう言われ、妖夢はカチンときてしまう。しかし、少女は続ける。
「そう、幽々子も馬鹿な霊じゃ。部下を庇って死ぬとは・・・おっと、成仏だったか!にしても、闇の妖怪を始めとして、蛍の妖怪なんか、死神に裏切られて殺されるのは正直、驚いたな。あの月の光の妖精が死ぬ前に泣き叫んで逃げるのは見ものじゃったわい。春の妖精の天然は正直、呆れたがな。式神の狐も自分の式神が殺されて仇を討とうとしたら、逆に返り討ちにされるとは・・・駄目じゃのー。そう言えば、嫉妬の妖怪が死んだ時、冷静な筈の鬼が泣き叫んだのは快感じゃった。いや愉快じゃ愉快じゃ♪」
「黙れっ!何故そのような事を知っている!?貴様、T‐Jの主か!?」
ケラケラと笑い続ける少女に対し、遂に妖夢は激高した。
「おおぅ、怖い怖い・・・。では、本当の事を言ってやろう。わしはT‐Jの未来の主じゃ。そして・・・。」
そして、ニマッと笑いながら少女が言う。
「天狗2匹を殺したのは、わしじゃ。このキリュウじゃ♪理解したかの?」
キリュウ?彼女が?文達を殺したのは彼女?妖夢には理解できなかった。
だが、他人の死を楽しむ様なその笑みが許せなかった。皆の死を楽しむ者を許せなかった。
「キリュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
怒りのあまり、妖夢は少女・キリュウに刀を振り下ろした。
だが・・・指の2本でその一太刀は止められてしまった。
「どうした?そんなものでは、わしを殺せぬぞ?」
「くっ・・・。」
「怯えているのか?ホォ?ではこっちだって恐ろしい所見せてやるぞー♪」
そう言い、キリュウは妖夢から刀を奪い、彼女を殴りまくった。あまりの早さに避けきれなかった。
「ほれほれほれ!どうした!?こんなものでは、主の無念を果たせないぞー!1、2、3、4、5、終わりじゃっ♪」
そう言い、妖夢を崖へと殴り飛ばす。すんでの所で妖夢は崖の端に捕まるが、身動きが取れない。
「おや、可哀想に・・・幽々子のお使い果たせずに死んでしまうのか?少し、手助けするかの?」
そう言い、キリュウはある物を取り出す。それは・・・折れている五寸釘だった。
「死の手助けをな♪」
そう言い、キリュウは左腕の腕時計の上に五寸釘を当て、一気に拳で釘を打った。
「ぐあっ!」
妖夢はあまりの痛さに手を離してしまった。そして・・・。
「うあぁ―――――――――――――――――――――――――!!」
そう言う声と共に妖夢は奈落の底へ落ちてしまった・・・。
「かっかっか!その絶叫!その絶望感!その全てがわしを満たしてくれる!この殺し合いは最高じゃ!ぬしらもそう思うか?」
そう言い、キリュウの視線の先には、隠れて震えているメディスンとこいしがいた。こいしは途中でメディスンに出会ったのだ。
「ふふふ、可哀想に・・・迷子になったんじゃな?よし、わしが手伝うぞよ・・・。」
そう言い、キリュウは刀を上にあげた。妖夢から奪った刀だ。
「死の手助けをな♪」
「た、助けてスーさん!」
「助けてお姉ちゃん!死にたくない!」
「やれやれ、腕時計を見ていないのか?もうすぐ、姉に会えるぞこいし、あの世でな・・・。」
そう言い、キリュウは笑いつつ刀を振り下ろした・・・。
『Y-229 魂魄妖夢 原因不明のLOST 現在脱落者22名』
『Y-229 こいし
       メディスン・メランコリー 死亡 現在脱落者24名』



続く
ZRXです。
今回はインフルエンザにかかった恐れがあって休んだので、代わりに少し長く書きました。
やはり、多すぎると読みづらいと言われていますが、正直、短くまとめにくいようで・・・。
次回は、カリスマ溢れるお方達も遂に動き出します。
ZRX
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コメント



0.370簡易評価
1.無評価名前が無い程度の能力削除
これはひどい。
御都合主義と作者の自己陶酔の極み。
2.10名前が無い程度の能力削除
分類を「オリキャラアリ」ではなく、「オリキャラのみ」にする事をお勧めします。
4.無評価名前が無い程度の能力削除
上の方の自己陶酔という言葉がしっくりきます。
これはひどい。
7.10名前が無い程度の能力削除
申し上げにくいですが、ご自分の作品へのコメントについて一度真面目に考えてみて下さい。
正直今回の展開は「キャラをまとめて始末して今後の執筆を楽にしよう」程度の考えで書かれたとしか思えません。
貴方が東方のキャラをゴミ同然に扱って何が伝えたいのか分かりません。
10.10名前が無い程度の能力削除
原作に対して人として最低限の礼儀も払えないなら二次創作なんてやめてしまえ。恥を知れ。
11.無評価名前が無い程度の能力削除
もうええわ、点すら入れたくない。
何より変えようとする気が見られない。
12.無評価名前が無い程度の能力削除
誤字を報告しておきます。
お燐の名前が『お隣』になっているしフルネームは、『火車隣』ではなく『火焔猫 燐』です。
あと脱落者の部分は『八坂神奈良子』じゃなく『八坂 神奈子』です。
13.20名前が無い程度の能力削除
東方の二次創作として見なければ、あらゆる要素を台無しにしまくって突っ走る展開は、なかなか新鮮ではある。
ここだけで見れば個人的には70点くらい。

しかし二次創作としてみると、キャラの見せ場がほとんどないのが厳しい。
別にオリキャラが無双しててもいいと思うんだ。
でもせめてどうして、そんなに強いのか納得できるくらいは、やられる側のキャラも書いてほしいと思った。
軍神も土着神の頂点も単なる殺人事件の被害者に成り下がってたら・・・ねえ?
天空をつかさどる神様が何故に爆薬に頼らなきゃいけないんだ・・・・?
湖ごと引っ越してきたような奴らだぜ・・・?
14.無評価名前が無い程度の能力削除
小出しにして作品数稼ぐだけならまとめて投げては。
正直冒頭と後書きだけ見れば大体分かってしまう程度のもんで、読む気がしない。
貴方は不特定多数の前に作品を出すにはまだ早いと思う。
三年くらいしてからまた来ては。
18.無評価名前が無い程度の能力削除
もう次回もいらないから
東方キャラがかわいそう
19.無評価名前が無い程度の能力削除
荒らしに見えてもおかしくないな
21.10名前が無い程度の能力削除
…そろそろ止めとこうか。
望まれぬ作品を投稿し続けてもそれは最早荒らしと大差無い。
22.無評価名前が無い程度の能力削除
原作を知ろうぜ。
成仏はともかく妖怪は簡単に死なない。
原作設定ぶち破るのは大いに結構だが相応の理由と多くの人からの言葉の覚悟が要る。
どう考えても覚悟とかじゃなく無視して書いているようにしか見えない。
何か言われても帰る気が無く、こうして事実批判が多い、この状態をもっと真摯に受け止めるべきでは?
23.無評価名前が無い程度の能力削除
上誤字。
何か言われても帰る気が>変える

あと上の方々も仰ってますがオリキャラ自体に批判はまったくありませんが東方キャラを好きな人がここに来て作品を読んでいます。ぽんぽん殺したくて書いてるように見えるのですが事実どうなんです?
24.無評価名前が無い程度の能力削除
もはや妖怪というより一般人と殺人鬼の戦いだな
幽々子が成仏したってことは西行妖が復活するのかな?
ところで、T-Jを作った黒幕って河童とか、にとりとかっていうオチじゃないだろうな
25.30名前が無い程度の能力削除
T-J・・・なんて恐ろしい奴・・・。
もはや、もう殺人鬼マシーンじゃないよ!まさにチートだよ!あと誤字に注意!
とりあえず、キリュウの存在が気にかかるが・・・。
26.無評価名前が無い程度の能力削除
キリュウとキュウリって似てるね
28.20名前が無い程度の能力削除
まぁ、頑張れ!
せめてハッピーエンドにしてさ!
29.無評価名前が無い程度の能力削除
ひどいってもんじゃない、酷すぎる。
楽しいストーリーを期待してみている人々にこんな残酷な話を見せ付けられたら見る人も悲しむと思います。だからこんな話は即刻やめてもらいたいです。
30.10名前が無い程度の能力削除
これはひどい。

・・・と言いながらも、こんなに多くの人が読んで、こんなにレスが付いてるわけだから
結局は作者の計画通りってことになるのかな?
確かに鳴かず飛ばずの凡作よりも、ずっと皆の食いつきが良いのは事実だしね
31.無評価名前が無い程度の能力削除
先に言っておきますが最後になって
「釣りでした^^」
みたいなありきたりなオチだけはやめてくださいよ?
これだけ叩かれても続ける度胸はある意味すごいです
32.無評価名前が無い程度の能力削除
手前が時間を無駄にするのは構わんが、
人の時間を無駄にさせるなよ。さっさと筆を折れ。
33.無評価名前が無い程度の能力削除
理想郷レベル
34.90名前が無い程度の能力削除
素晴らしい
少なくとも、ありきたりなボンクラコメディより余程笑える
37.無評価名前が無い程度の能力削除
以前批判を受けたわたしがいうのもなんですが、引き際を知るということも大切だと思います
そして時間を十分に置いてから筆をもてばよろしいのではないでしょうか
38.30名前が無い程度の能力削除
すいません点数忘れてました
39.50名前が無い程度の能力削除
東方キャラにもう少し反撃らしい反撃があってもいいかなと思う。
東方にはチートに近い能力持ってるのがわんさか居るし
チート対チートみたいな迫力ある展開を希望。
40.無評価名前が無い程度の能力削除
作者さんの執筆原動力がどこにあるのかが一番気になる
41.無評価名前が無い程度の能力削除
唯でさえ話としておかしいのに、これ以上どう短くまとめるんだ?

これじゃ荒しと変わらんな。
42.無評価リース削除
誤字が酷過ぎる
オリキャラ主体となりすぎていて東方SSであるという意味がない
いままでは期待という意味でコメントしませんでしたが無理と悟りました
43.無評価名前が無い程度の能力削除
一人二人なら、そりゃキャラが死んじゃうのも仕方ないとは思うんだ。それが好きなキャラでもね。
けど、ねぇ……。
これほどだと何か恨みがあるんじゃないかとすら思えてくる。
それに東方の二次創作を投稿する場所で、それぞれのキャラの口調がここまで違和感だらけなのには驚くよ。ほんと。
キャラ解釈が適当すぎる。なんというか、こんな雰囲気だろうな、で書いているのが見え見え。それこそ某動画サイトの情報だけで書き続けている印象。