*ごめんなさい
*原作はおろか、一般的な二次設定すらふっ飛ばしたようなキャラ崩壊があったりします。肌に合わないと思われた方は、『戻る』をクリックしていただいた方が、きっと幸せです。
「私、もっとこの幻想郷の事を知らなければならないと思うんです」
「どしたの、急に?」
「諏訪子!箸咥えたまんま話すんじゃないの、お行儀悪い」
いつも通り夕飯を3人仲良く囲んでいた所、いつも真面目な早苗が、いつものように真面目な顔で己の決意を口にした。あまりにも唐突だったので、思わず諏訪子は箸を咥えたままの状態で硬直してしまった。それを先ほどからイライラを募らせていた神奈子が注意した。とは言え、蛙はビックリすると硬直してしまうのだ。それを怒られてもどうしようもない。それにしても幻想郷を知ることと、この夕飯は何か関係あるんだろうか?有るのかもしれない。箸を舌で置き、改めて眼下のメニューを見る。胡麻の素揚げ(ごま油)。思い悩んでいなければ、こんなメニュー作らないだろう。箸と箸の隙間よりも小さいため、とても箸じゃ食べれない。神奈子がイラつくのも無理ないメニューだった。
「今日、プリズムリバーさんたちに会ってきたんです」
そう言うと、早苗は少し俯き加減で今日の出来事について語り始めた。
ことの始まりは、今度神社で行われることになったお祭りである。折角だから何か特別なイベントでもやろうかと、スパッツの天狗に意見を求めた所、騒霊楽団を呼んでみてはどうかと言われたのだ。彼女たちの演奏は里のお祭りや、分社の宴会でも聞いたことがある。なるほど、いい意見かもしれない。そう思った早苗は早速彼女たちの住処へと足を運んだのだった。
「すみませ~ん。妖怪の山の方から来た者ですがなんですが」
古びた洋館のドアを叩き、ドアの正面から身体をどけて反応を待つ。いかにも何か出そうな感じのする建物だが、何も出ないだろう。お化けなんて、いて当たり前の物が幻想郷にいるわけが無い。幻想郷では常識に捕らわれていてはいけないのだ。ノックをして30秒ほど経った所で、ガチャッとドアが開けられた。
「どちらさま?」
住人が出たのを確認したところでドアの影から姿を現し、頭を下げる早苗。紅白や白黒と違い、彼女は礼儀正しいのだ。
「山の神社で風祝をしている守矢早苗です。お願いがあって伺ったんですけれど」
急に物陰から姿を現した早苗に、少々相手は驚いていた様子だったが、お願いがある、と切り出すと俄かに顔が明るくなった。
「もUヵゝUτイ士事σ依頼?マシ〃τ〃?ちょ→ぅれUレヽωT=〃け`⊂〃♪」
「は、はい?」
が、今度は早苗が驚く番だったようだ。急に目の前の少女から、懐かしいノリが伝わってきたため、裏返った変な声を出してしまった。そんな早苗を気にも留めず、彼女は後ろからじっとこちらの様子を窺っていた少女に声をかける。
「メルラ~ン!ぉイ士事T=〃ッτ!まT=禾ムT=ち☆σファ冫増ぇちゃぅ∋?人気者ッτこまゑ∋Йё→??」
「どうせ、私の演奏なんか誰も聞いてないのよ……みんな姉さんの内股とリリカの脹脛にしか興味ないんだ……」
メルラン、と呼ばれた少女が、この館よりもどんよりとした雰囲気で言葉を返し、恨めしそうな目で早苗を睨んできた。
「も~、イ可言ッτωσ?メルランめちゃヵゝゎU〃ゃω!」
「いいのよ……私なんて」
「ね、姉さんたち!?何してるの!?お客さんの相手は私がするっていつも言ってるじゃない!」
何処までも明るい表情で、と言うか、妙に高いテンションで慰めにかかる少女と、異常なまでに低いテンションで応じる少女。そんな状況を打開するかのように、もう一人の少女が現れた。確か、三女のリリカさんだったはずだ。早苗が記憶の扉を探っている間、リリカは2人の姉に「あっち行って!部屋で待機!」と言いながら廊下の角の方へと押しやっていた。そして、改めて早苗の方へとやってきて頭を下げた。
「どうも、見苦しい所を……」
「Who are you?」
早苗の感想は、その一言で言い表せた。誰だこいつら、としか言いようが無い。
「あ、あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ」
「プリズムリバーは英語じゃないんですか?」
「あ」
「って、そんなことはどうでもいいんです!誰ですか今の2人?!」
「ルナ姉とメル姉……だけど……」
「嘘ですよね?オカシイじゃないですか。鬱なのが長女で、躁なのが次女じゃなかったんですか!?」
「それは、その」
リリカが話し辛そうに視線を逸らし、ぼそっと呟いた。
「楽器持つと、性格変わるんだ」
変わりすぎだろ。
「と、言うことがあって」
「なるほどねぇ。意外すぎて言葉も出ないよ」
眼下に広がる胡麻の群れに、腕を組んで攻略法を考える諏訪子。その隣では神奈子がオンバシラをセットしていた。そんな2人を気にせず、箸を口に運びながら早苗は更に別な日の出来事を口にした。
「それだけじゃないんですよ。この間、閻魔様に届け物に行った時だって」
以前、ちょっとした世話をしてもらったことがあったので、お礼の品を届けようと、はるばる彼岸にある閻魔の家まで出向いた時の事だ。ドアをノックしようとした所、早苗の耳に中から2人の声が聞こえてきた。
「お客さんですかね?」
出直すのは面倒だけれども、邪魔するのも申し訳ない。扉の前で悩んでいても仕方が無かったので、窓の方へと回り、鏡を使って中の様子を窺った所、どうやら客は死神のようだった。上司と部下だし、ありえない話ではない。が、鏡に映る閻魔の格好は目を疑う物だった。
「あ~、もう!またこんな所に脱ぎっぱなしにして。ちゃんと籠に入れてくださいよ!それに、服着てくださいよ服を!」
「え~、めんどくさ~い」
エプロン姿でポニーテールに髪を纏め、脱ぎ散らかされた服を鷲掴みにして籠に放り込みながら説教する小町に、下着姿でぼさぼさ髪の映姫が、座布団を枕に寝転がってチューハイを飲みながら応えていた。
「大体、乾いたのはちゃんと畳んで棚に……あぁっ、またぐちゃぐちゃになってる!」
「そ~ぉ?」
「ぐちゃぐちゃじゃないですか!たったの1週間で!あれほどちゃんと仕舞えってあたいが言ってるのに!」
「してるつもりですよ、できる範囲で」
「つもりなだけじゃないですか。パンツは1枚づつ、靴下はワンセットずつ、立てて仕舞えって言ってるのになんで重ねちゃうんですか?」
(諏訪子様も、同じようなことを神奈子様に言われてたなぁ)
「小町、あなたは思い違いをしている」
あ~、もうっ!と言いながら小町は棚の整理を始めた。そんな小町の方へ、映姫が上半身だけ起こして反論する。
「私の能力は白黒つけるためのものです。ピンクや水玉の判別なんて出来ま、きゃん!」
「これは能力の問題じゃないでしょう!?あと、あたいの台詞取らないでください」
下着の束をぶつけられた鼻をさすりながら、映姫は元の姿勢に戻り、今度は口を尖らせて愚痴を零し始めた。
「仕事中昼寝してるんだから、そのくらい良いじゃないですか」
「あぁっ?」
「ひっ!」
が、その愚痴はしっかりと小町の耳に届いたようだった。それはそうだろう。窓の隙間から聞いてる早苗の耳にも届いているのだから。額に青筋を浮かべてぎろりと睨む小町に、閻魔らしからぬ悲鳴を上げて、小柄な身をすくめる映姫。そんな彼女に何の遠慮もなく、小町は後ろからギリギリと頭を握り締めた。
「い、痛い!痛いです小町!」
「私が、偶にうとうとするのは、映姫様が残業手伝わせたり、家事やらせたり、夜中にトイレに行けないからって起こしたりするからでしょうが!?」
「そ、そうです!そうでした!ごめんなさい!」
(弱いなぁ閻魔様……って言うか、トイレに行けないからって死神さんに連絡してどうするのかしら?)
そもそも、彼岸の電話線はどういう構造になっているのだろうか?里や分社にも繋がれば楽なのに。そんな事を考えていたら、話が進展していたようだった。本来の目的を思い出し、早苗は聞き耳を立てることに集中する。
「全く、いい加減にしてくださいよ!大体、」
「ぐすっ」
「え?」
「ふぇっ、えぐっ」
「ちょ、」
「うわ~~~ん」
「え、映姫様?!」
早苗も驚いて物音を立てそうになった。鬼ならぬ、閻魔の目にも涙。幻想郷のあらゆる人妖に恐れられ、泣く子も黙る閻魔様が、子供のようにべそをかき始めたのだ。見た目は少女だけに、これはかなり心臓に悪いだろう。小町も先ほどまでの怒りは何処にやら、わたわたと慌てふためいていた。
「小町は、ひっく、私が嫌いなんです!だがら、係わり合いになりたく、うぐっ、ないんですねっ」
「やっ、誰もそんなことは」
「嘘です!ぐすっ、私は小町のこと好きなのに、小町は他の人たちみたく私が嫌いなんです!」
「そんな、あたいにとって映姫様はとても大事な人ですよ!嫌うわけないじゃないですか」
「でも、さっきから凄い嫌そうに、私に怒って」
「それは違います。大事に思ってるからこそ、叱ってるんですよ」
「……ホント?」
「もちろんですとも」
「……うわぁぁん、小町ぃぃ」
「よしよし」
雨降って地固まる。ひしっと抱き合う2人を見届けて、早苗は窓からそっと離れる。子供をあやすように、慈愛に満ちた笑顔を浮かべる死神と、その大きな胸の影で、新世界の神の様な笑みを浮かべる閻魔。彼女たちは、早苗が死んだ後も、時には喧嘩をしながらずっと仲良くやっていくのだろう。閻魔が死んだらどこへ行くのか?そんな事を考えながら、早苗は手提げに入った羊羹を食べつつ里の方へと向かったのだった。
「む、あれは?」
「山の巫女、かしら?」
「風祝です。こんにちは慧音さん、永琳さん」
早苗が買い物がてら里をぶらぶらしていると、胸の大きな女性が2人、早苗に声をかけてきた。とりあえず、正しい神職認識を示してから、挨拶する。里の守護者である慧音はともかく、永琳が里にいるのは珍しい気がした。この2人が一緒にいるとなると、原因は大分限られてくるが、一応早苗は原因を問いただすことにした。もしかしたら、二柱の貴重な栄養源に影響のあることかも知れないからだ。
「何かあったんですか?」
「あ~、昨夜ちょっとな」
「姫と妹紅が割りと里の近くでやらかしたのよ。で、姫のスプラッタが里に落っこちて大騒ぎになっちゃったの」
「うわぁ……」
夜中に里の近くでドンパチドンとやっていたら、里の皆だって様子を窺っていただろう。そこに、見た目は絶世の美女のスプラッタが降ってきたらどうなるか。想像に難くないだろう。
早苗自身は実際にやりあったことはないが、蓬莱人の2人はかなりの実力者だと聞いている。それが、魅せる目的ではない、殺し合いを里の近くでわざわざやったことに疑問を覚えた。何度か宴会で会った事があるが、どちらもちゃんと分別のある人だったと記憶していたからだ。
「それにしても、どうして里の近くなんかで?」
「偶には刺激が欲しかったってことなんじゃないかしら?視られてる方が燃えるのよ、きっと」
「刺激、ですか?」
「お、おい永琳」
慧音が顔を真っ赤にして止めようとしたものの、相変わらずの笑顔を浮かべながら言葉を続けた。
「自家発電なのよ」
「はい?…………って、えぇっ?!」
永琳の言葉に途惑うこと数瞬、意味を理解した早苗も、慧音同様耳まで真っ赤に染まってしまった。そんな早苗の様子が面白いのか、永琳は嬉々とした表情だ。
「最近目覚めた見たいなんだけど、ドMもあそこまで行くと凄いわよねぇ。蓬莱人にしか出来ない究極のプレ、」
「ちょ、いいです!わかりましたから!」
「少しは人目を気にしてくれ!」
なおも続けようとする永琳の口を慌てて塞いだ。道行く人たちは何事かとこちらをちらちらと見やっている。まぁ、街中で(見た目は)年頃の少女のする会話ではない。周りの様子に気付いたのか、あらあら、と笑みを浮かべ永琳は2人を残して去っていった。酷い逃げの打ち方である。さてどうするべきか?取り残された早苗に、慧音が真面目な顔で話しかけてきた。
「今の話、妹紅には言わないでくれ」
「あ、妹紅さんは知らないんですか?」
「あぁ、『最近勝ちっぱなしなんだ♪』と、素直に喜んでいるんだ。真相を知ったらどうなるか……」
慧音はそう言って身震いをした。確かに、本人の与り知らぬ所で、そんな風に扱われたりしたら……考えただけで、早苗にも鳥肌が立ってきた。世の中知らない方が幸せなことは多い。
慧音と別れ、ふよふよと神社へ飛んでいく途中、ある考えが早苗の頭をよぎった。
(もし、もしもお互い同意の上だったら……)
『ふひっ、ふひひっ!汚物は切り刻んで焼却だぁ!』
『あぁっ、熱い!身体が熱いのもこたん!Motto、Motto!』
「あははっ、まさかねぇ?」
頭の中で、世紀末に居そうなマッチョに消毒されるお姫様が湧いてくる。とりあえず、その道の泰斗である天子と幽香に伺ってみようと思ったのであった。
「と、言うわけなんです」
「はぁ」
「いや、事の真相はわからないんですけどね。でも、この幻想郷にはまだまだ知らないことがあるんじゃないかって」
「まぁ、そうかもね」
リグルちゃんが蝗の佃煮食べてたり、チルノちゃんがリーマン予想解いたり、とまず有り得ない様な仮説を立てる早苗に諏訪子は曖昧な返事を返す。今の彼女に大事なのは、目の前の胡麻のごま油揚げの処理だ。いつの間に食べ終わったのか、早苗は自分の食器を持って台所へ。よく見ると、スプーンを持っていた。きっと、無意識に自分だけは食べきれるようにスプーンを出したのだろう。流石は奇跡を起こす程度の能力。早苗、恐ろしい子!隣では、神奈子が箸を逆さまに持って、必死の形相で一粒ずつ口に運んでいる。こんな面倒な手段はゴメンだ。だが、自分の能力ではスプーンを召還は出来ない。悩むこと1分。ついに諏訪子は起死回生の秘策を思いついた。
「箸がダメなら舌を使えばいいじゃない」
隣を見ると、神奈子も舌を伸ばしていた。
訳解らねぇ!! 何だこれ(爆笑)
里の近くで繰り広げるスプラッタな殺し合いとか凄かったですね。
早苗が想像した二人のセリフとか面白かったですよ。
誤字の報告
>で、姫のスプッラタが里に落っこちて
ここだけ『スプラッタ』ではなかったです。
ちなみに私の戦闘力は53万です。
が、耐えられませんでしたwwwwwwww