注意
Ⅰ.ちょい役ですがオリキャラ注意。
Ⅱ.ルーミアと霊夢の好感度はそれなり。
:REPLACED:
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「れいむれいむ~、お肉たべたいー。」
夕暮れの中、博麗神社に能天気なルーミアの声が響く。
「あのねぇ、ウチも家計が厳しいんだから……」
困ったように霊夢は言う。
紅霧異変以来、時々こうして出現しては霊夢にまとわりつくようになったルーミアだが、 その可愛らしい体躯からは想像もつかないほどの大食らいだ。
霊夢一人ならば今の財政状況でもよいだろうが、ただ飯食らいが増えると話が違う。
三年ぶりに『雑草調理法』という本に頼る羽目になることだけは避けたい。
第一タダで食べさせるのはちょっと癪だ。
「むう……、だって参道を通る人を食べようと思っても居ないんだもん。」
「参道の人は食べちゃダメでしょ。」
ルーミアの額を叩く霊夢。
ぺち、と間の抜けた音がする。
ルーミアは額をすりすりしながら涙目になってつぶやく。
「うーん、じゃあ添加物がたくさん入ってそうだけど、魔理沙。」
「多分、あなたの方が料理されるわね。」
霊夢がじっとルーミアを見る。
「そういえばあなたって何だか軟らかくておいしそうね。」
にっこり笑いながらじっと見てくる霊夢。
ルーミアは思わず笑顔を引きつらせて二、三歩引いてしまう。
目前の巫女ならば妖怪を食べてもおかしくない。
おかしくない。
「よ、妖怪を食べる人間なんて聞いたことがないよ。」
「そりゃ、食べようとは思わなかったからねぇ。」
ずず、とお茶を飲む霊夢。
「じゃあ、目の前が取って食べれる……」
「良薬は口に苦し。」
言い終わる前に返されてむっとするルーミア。
「うーん、じゃあどうやったらお肉が食べられるのよ」
ぽふっと縁側に座って頬を膨らませる。
「そうね……お金があればその分だけ食事ができるわ。」
茶葉の使い回しが過ぎて既に色がほとんどない。
「お金?」
「そう。ここに来る参拝客が入れてるでしょう?」
賽銭箱を指差す。
「うーん、見たことないんだけれど。」
きらきら輝くルーミアの瞳に見つめられてむっとする霊夢。
「いるわ、参拝客。この前だって……この前だって……。いつだっけ?」
「れーむ、無理しない。」
ぽんぽんと肩をたたく。
「どうせ、どうせ過疎神社よ。 馬鹿にすればいいんだわ……じゃなくて、お金。里へ行って働けば手に入るわ。」
「はたらく?働くとお肉が食べられるの?」
小首を傾げるルーミア。
リボンがさらりとゆれる。
「そういうこと。そうね……」
空をぼうっと見る。
つられてルーミアも空を見上げる。
ふわふわとした雲がゆっくりと流れていく。
大きな塊が屋根の向こうに消え去ったところで突然、霊夢が立ち上がる。
「そうだ、ちょっと待ってて。」
そういって奥に引っ込む。
突然のことに驚いてそちらを見つめるルーミア。
あんぐりと口を開けていると、封書を手にした霊夢がにこやかに戻ってきた。
「これを慧音に渡して。」
ルーミアの手を取ってぎゅっと握らせる。
手元の手紙とにっこり笑った霊夢を交互に見比べる。
「けーね?」
「キモい人よ。慧音だったら顔が広いから里の仕事を紹介してくれると思うわ。」
満面の笑みで教え込む。
「そーなのかー。」
「それじゃ、いってらっしゃい。」
ルーミアは十進法を体現しながら闇を纏わせ、ふよふよと飛び去った。
「あ、キモい人。あなたがけーね?」
キモ……上白沢慧音の前に磔の聖者をかたどりながら降りてくる。
「私は上白沢慧音だが、キモくはない。」
むっとしながら答える。
「うーん、満月のときだけキモ……」
「いやもういいから。それにしても闇の娘が何の用だ?事と次第によっては……」
慧音が構えたところで、封書を突き出す。
「働きにきたの。これ読んで。」
驚いた。
キモとか何とか言われたことも忘れて思わずルーミアと封書の間で視線を往復させる。
この能天気で自由気ままな闇妖が働くなどと言い出すとは……
そう思いつつ封書を受け取る慧音。
「う、霊夢からか。なになに……」
封書を開けてさらりと書状を読む。
うん、と一つうなずく。
「なるほど、つまり今しばらくの食事のために仕事が欲しいわけだな。」
「そうよ。お肉を食べたいならお仕事しなさいって。」
腰に手を当ててエッヘンとでも言いたげに胸を張るルーミア。
「仕様がないな。襲って食うのでなく、 労働の対価で食べたいというのなら協力してやろう。そうだな……」
腕を組んで顎に手をやってしばらく考える。
仕事を用意してあげたいのは山々だ。
しかしそう都合よく仕事があるわけではない。
まして、ルーミアは何かの技術があったりするわけでなく、 『闇を操る程度の能力』と妖怪であるがゆえの力の強さだけだ。
はてさて、どうしたものか……
「先生、慧音先生。」
突然、向こうから走ってくる屈強な壮年の男が慧音に話しかけてきた。
「おお、五郎兵衛さん。どうしましたか?」
「いやあ、あの里の外れの物見やぐらのことです。」
五郎兵衛と呼ばれた男が里の外を指差す。
時間的に見えづらいが、確かにそこにはやぐらがある。
「む、建替えは明日か。この時期の貴重な晴れの日に建替えたいからな。」
時候は梅雨。
晴れる日が益々貴重となってくる時期だ。
無駄にはできない。
「へい、そうです。ですが、相方が体調を崩しまして……木材を運ぼうにも人手が足らんのです。」
「なるほど。それならば丁度よい。この娘が仕事を欲しがってる。」
ルーミアをまじまじと見る五郎兵衛。
エッヘンと胸を張るルーミア。
「あの、大丈夫なんですかい?」
無理は無い。
一見可憐な少女がこのような労働に耐えられるとは考えられない。
「見た目に拠らず、力はあるぞ、多分。」
そういってルーミアに向き直る。
「ルーミア、早速仕事がある。手伝ってはくれぬか?」
「わかった。仕事仕事~。お肉お肉~」
神妙な顔でうんうん頷く。
「幾つか木材を運んでくれ。場所は五郎兵衛の案内にしたがってくれ。」
背丈の倍ほどもある大八車に、目線の高さまで詰まれた木材を積んでなお軽々と運ぶルーミア。
綺麗に半分になっている月に向かって進む。
これで五往復目。
なんとかとかいう人の案内も要らなくなった。
車輪が石やなんかを踏みつけてガタゴトいうのが楽しい。
騒霊の音楽も楽しいけれど、こんな音もなんだか音楽に聞こえてくるから不思議だ。
ガタゴト、ガタゴト、ガタゴト。
「おしごと~、おにく~。」
楽器は地面と大八車、奏者と歌い手はルーミア。
それもいいかもしれない。
たくさんの人間とすれ違う。
里の中では襲われない、そんな安心感からか「かわいいわね」と話しかけてくる人間も居る。
その人には思わずにっこりと笑い、「おねぇちゃんもきれいだね」と答えた。
あるいは明らかに避けて通る人間も居る。
そんな人にはわざわざ話しかけることも無い。
むしろ、よけなくていい。
同じ人間でありながら、その姿は、その行動は百人百様。
ルーミアは考える。
自分も人間みたいに百様の同族がいるのかもしれない、と。
慧音とすれ違う。
通るたびに手を振って笑ってくれる。
こんなときにも何だかふわふわしているルーミアを心配しているのか、 あるいは危険な妖怪だと思って監視なのかもしれないが、 こうににこやかに見つめられれば悪い気がしない。
ガタゴトと大八車を引いて里の門を出る。
百五十歩ほど歩くとやぐらの元に着く。
「運んできたよー。」
両手を挙げて五郎兵衛に手を振るルーミア。
「おう、お疲れ。」
五郎兵衛は穴掘りをやめて振り向くとルーミアに駆け寄って大八車から木材を引き下ろす。
「見かけによらず力持ちだな。」
「えっへん。お肉のためにがんばるよ~。」
「お、えらいなぁ。」
わしゃわしゃとルーミアの頭をなでる。
「えへへ~。」
ルーミアの笑顔が左右に揺れる。
「よし、終わったぞ、お嬢ちゃん。」
額に溜まった汗をぬぐうと、ルーミアに笑顔を向ける。
「うん、じゃあ次だね。」
そういって軽くなった大八車を構えなおす。
引っ張るとまた違う音を立てる。
ガラガラ、ガラガラ、ガラガラ
「おしごと~、おにく~。」
荷物が無いから軽々と進む。
そうこうしているうちにもう三往復。
全ての材木を運び終えた。
「おわったよー。」
運び終わったルーミアを見て五郎兵衛が駆け寄る。
「おう、お嬢ちゃん。いい仕事したな。」
「そーなのかー。」
エッヘンと満足げに胸を張るルーミア。
「そうだとも。今日はよく頑張ったな。お疲れさん。これで仕事は終わりだ。」
ぽんぽんとルーミアの肩を叩く。
「わーい、やったー。久しぶりのお肉だ~。」
ルーミアは両手を挙げて踊るように回った。
「ただいまー。」
「あら、お帰りなさい、ルーミア。」
ふわふわと飛んでくると、ちょこんと霊夢の前に座る。
「いっぱい働いたよ。」
両手を挙げて円を描き、胸を張る。
「そう、頑張ったわね。」
ルーミアの頭をなでる霊夢。
目を細めてされるがままになるルーミア。
「それじゃあ、お給料を持って一緒に買い物に行きましょ。」
「お給料?」
「今日働いた分だけもらったお金のことよ。」
「うーん、お金って何?。」
立ち上がりかけた霊夢だが、再び居住まいを正す。
「……ルーミア、あなた働いたんでしょ?」
「そうだよー。たくさん運んだよ。ガラガラゴトゴト楽しかったよ。 ゴロ……五郎兵衛もいい仕事したって言ってた。」
ルーミアの何も考えてなさそうな笑顔に嘘はない。
「何も渡されていないの?四角い紙や丸い金属とか。」
「何ももらってないよー。」
それならば……
「何?じゃあ、あのきもけーね、ただ働きさせたの!?」
突然大きな声を出した霊夢に驚いて、おもわず目を閉じて縮こまるルーミア。
「ただ働き?」
「そう、ただ働き。働いたのにお金がもらえないことよ。
この世に恩をあだで返す仕打ちは数あれど、ただ働きに勝るあだはないわ。」
お払い棒をぎゅっと握る。
宴会のたびに押し付けられる片づけを思い出す霊夢。
少しくらい、気持ち程度でいいからお賽銭で賽銭箱を鳴らしても罰は当たるまい。
「そーなのかー。あ、でもお仕事の後おにく食べたよ。五郎兵衛の、おいしかった。」
にへらと笑ったルーミアの口からだらっとよだれがこぼれる。
「あら、その人にご馳走してもらったの?」
ルーミアは満面の笑みをたたえて言った。
「うん、その人を馳走してもらったの。」
Ⅰ.ちょい役ですがオリキャラ注意。
Ⅱ.ルーミアと霊夢の好感度はそれなり。
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「れいむれいむ~、お肉たべたいー。」
夕暮れの中、博麗神社に能天気なルーミアの声が響く。
「あのねぇ、ウチも家計が厳しいんだから……」
困ったように霊夢は言う。
紅霧異変以来、時々こうして出現しては霊夢にまとわりつくようになったルーミアだが、 その可愛らしい体躯からは想像もつかないほどの大食らいだ。
霊夢一人ならば今の財政状況でもよいだろうが、ただ飯食らいが増えると話が違う。
三年ぶりに『雑草調理法』という本に頼る羽目になることだけは避けたい。
第一タダで食べさせるのはちょっと癪だ。
「むう……、だって参道を通る人を食べようと思っても居ないんだもん。」
「参道の人は食べちゃダメでしょ。」
ルーミアの額を叩く霊夢。
ぺち、と間の抜けた音がする。
ルーミアは額をすりすりしながら涙目になってつぶやく。
「うーん、じゃあ添加物がたくさん入ってそうだけど、魔理沙。」
「多分、あなたの方が料理されるわね。」
霊夢がじっとルーミアを見る。
「そういえばあなたって何だか軟らかくておいしそうね。」
にっこり笑いながらじっと見てくる霊夢。
ルーミアは思わず笑顔を引きつらせて二、三歩引いてしまう。
目前の巫女ならば妖怪を食べてもおかしくない。
おかしくない。
「よ、妖怪を食べる人間なんて聞いたことがないよ。」
「そりゃ、食べようとは思わなかったからねぇ。」
ずず、とお茶を飲む霊夢。
「じゃあ、目の前が取って食べれる……」
「良薬は口に苦し。」
言い終わる前に返されてむっとするルーミア。
「うーん、じゃあどうやったらお肉が食べられるのよ」
ぽふっと縁側に座って頬を膨らませる。
「そうね……お金があればその分だけ食事ができるわ。」
茶葉の使い回しが過ぎて既に色がほとんどない。
「お金?」
「そう。ここに来る参拝客が入れてるでしょう?」
賽銭箱を指差す。
「うーん、見たことないんだけれど。」
きらきら輝くルーミアの瞳に見つめられてむっとする霊夢。
「いるわ、参拝客。この前だって……この前だって……。いつだっけ?」
「れーむ、無理しない。」
ぽんぽんと肩をたたく。
「どうせ、どうせ過疎神社よ。 馬鹿にすればいいんだわ……じゃなくて、お金。里へ行って働けば手に入るわ。」
「はたらく?働くとお肉が食べられるの?」
小首を傾げるルーミア。
リボンがさらりとゆれる。
「そういうこと。そうね……」
空をぼうっと見る。
つられてルーミアも空を見上げる。
ふわふわとした雲がゆっくりと流れていく。
大きな塊が屋根の向こうに消え去ったところで突然、霊夢が立ち上がる。
「そうだ、ちょっと待ってて。」
そういって奥に引っ込む。
突然のことに驚いてそちらを見つめるルーミア。
あんぐりと口を開けていると、封書を手にした霊夢がにこやかに戻ってきた。
「これを慧音に渡して。」
ルーミアの手を取ってぎゅっと握らせる。
手元の手紙とにっこり笑った霊夢を交互に見比べる。
「けーね?」
「キモい人よ。慧音だったら顔が広いから里の仕事を紹介してくれると思うわ。」
満面の笑みで教え込む。
「そーなのかー。」
「それじゃ、いってらっしゃい。」
ルーミアは十進法を体現しながら闇を纏わせ、ふよふよと飛び去った。
「あ、キモい人。あなたがけーね?」
キモ……上白沢慧音の前に磔の聖者をかたどりながら降りてくる。
「私は上白沢慧音だが、キモくはない。」
むっとしながら答える。
「うーん、満月のときだけキモ……」
「いやもういいから。それにしても闇の娘が何の用だ?事と次第によっては……」
慧音が構えたところで、封書を突き出す。
「働きにきたの。これ読んで。」
驚いた。
キモとか何とか言われたことも忘れて思わずルーミアと封書の間で視線を往復させる。
この能天気で自由気ままな闇妖が働くなどと言い出すとは……
そう思いつつ封書を受け取る慧音。
「う、霊夢からか。なになに……」
封書を開けてさらりと書状を読む。
うん、と一つうなずく。
「なるほど、つまり今しばらくの食事のために仕事が欲しいわけだな。」
「そうよ。お肉を食べたいならお仕事しなさいって。」
腰に手を当ててエッヘンとでも言いたげに胸を張るルーミア。
「仕様がないな。襲って食うのでなく、 労働の対価で食べたいというのなら協力してやろう。そうだな……」
腕を組んで顎に手をやってしばらく考える。
仕事を用意してあげたいのは山々だ。
しかしそう都合よく仕事があるわけではない。
まして、ルーミアは何かの技術があったりするわけでなく、 『闇を操る程度の能力』と妖怪であるがゆえの力の強さだけだ。
はてさて、どうしたものか……
「先生、慧音先生。」
突然、向こうから走ってくる屈強な壮年の男が慧音に話しかけてきた。
「おお、五郎兵衛さん。どうしましたか?」
「いやあ、あの里の外れの物見やぐらのことです。」
五郎兵衛と呼ばれた男が里の外を指差す。
時間的に見えづらいが、確かにそこにはやぐらがある。
「む、建替えは明日か。この時期の貴重な晴れの日に建替えたいからな。」
時候は梅雨。
晴れる日が益々貴重となってくる時期だ。
無駄にはできない。
「へい、そうです。ですが、相方が体調を崩しまして……木材を運ぼうにも人手が足らんのです。」
「なるほど。それならば丁度よい。この娘が仕事を欲しがってる。」
ルーミアをまじまじと見る五郎兵衛。
エッヘンと胸を張るルーミア。
「あの、大丈夫なんですかい?」
無理は無い。
一見可憐な少女がこのような労働に耐えられるとは考えられない。
「見た目に拠らず、力はあるぞ、多分。」
そういってルーミアに向き直る。
「ルーミア、早速仕事がある。手伝ってはくれぬか?」
「わかった。仕事仕事~。お肉お肉~」
神妙な顔でうんうん頷く。
「幾つか木材を運んでくれ。場所は五郎兵衛の案内にしたがってくれ。」
背丈の倍ほどもある大八車に、目線の高さまで詰まれた木材を積んでなお軽々と運ぶルーミア。
綺麗に半分になっている月に向かって進む。
これで五往復目。
なんとかとかいう人の案内も要らなくなった。
車輪が石やなんかを踏みつけてガタゴトいうのが楽しい。
騒霊の音楽も楽しいけれど、こんな音もなんだか音楽に聞こえてくるから不思議だ。
ガタゴト、ガタゴト、ガタゴト。
「おしごと~、おにく~。」
楽器は地面と大八車、奏者と歌い手はルーミア。
それもいいかもしれない。
たくさんの人間とすれ違う。
里の中では襲われない、そんな安心感からか「かわいいわね」と話しかけてくる人間も居る。
その人には思わずにっこりと笑い、「おねぇちゃんもきれいだね」と答えた。
あるいは明らかに避けて通る人間も居る。
そんな人にはわざわざ話しかけることも無い。
むしろ、よけなくていい。
同じ人間でありながら、その姿は、その行動は百人百様。
ルーミアは考える。
自分も人間みたいに百様の同族がいるのかもしれない、と。
慧音とすれ違う。
通るたびに手を振って笑ってくれる。
こんなときにも何だかふわふわしているルーミアを心配しているのか、 あるいは危険な妖怪だと思って監視なのかもしれないが、 こうににこやかに見つめられれば悪い気がしない。
ガタゴトと大八車を引いて里の門を出る。
百五十歩ほど歩くとやぐらの元に着く。
「運んできたよー。」
両手を挙げて五郎兵衛に手を振るルーミア。
「おう、お疲れ。」
五郎兵衛は穴掘りをやめて振り向くとルーミアに駆け寄って大八車から木材を引き下ろす。
「見かけによらず力持ちだな。」
「えっへん。お肉のためにがんばるよ~。」
「お、えらいなぁ。」
わしゃわしゃとルーミアの頭をなでる。
「えへへ~。」
ルーミアの笑顔が左右に揺れる。
「よし、終わったぞ、お嬢ちゃん。」
額に溜まった汗をぬぐうと、ルーミアに笑顔を向ける。
「うん、じゃあ次だね。」
そういって軽くなった大八車を構えなおす。
引っ張るとまた違う音を立てる。
ガラガラ、ガラガラ、ガラガラ
「おしごと~、おにく~。」
荷物が無いから軽々と進む。
そうこうしているうちにもう三往復。
全ての材木を運び終えた。
「おわったよー。」
運び終わったルーミアを見て五郎兵衛が駆け寄る。
「おう、お嬢ちゃん。いい仕事したな。」
「そーなのかー。」
エッヘンと満足げに胸を張るルーミア。
「そうだとも。今日はよく頑張ったな。お疲れさん。これで仕事は終わりだ。」
ぽんぽんとルーミアの肩を叩く。
「わーい、やったー。久しぶりのお肉だ~。」
ルーミアは両手を挙げて踊るように回った。
「ただいまー。」
「あら、お帰りなさい、ルーミア。」
ふわふわと飛んでくると、ちょこんと霊夢の前に座る。
「いっぱい働いたよ。」
両手を挙げて円を描き、胸を張る。
「そう、頑張ったわね。」
ルーミアの頭をなでる霊夢。
目を細めてされるがままになるルーミア。
「それじゃあ、お給料を持って一緒に買い物に行きましょ。」
「お給料?」
「今日働いた分だけもらったお金のことよ。」
「うーん、お金って何?。」
立ち上がりかけた霊夢だが、再び居住まいを正す。
「……ルーミア、あなた働いたんでしょ?」
「そうだよー。たくさん運んだよ。ガラガラゴトゴト楽しかったよ。 ゴロ……五郎兵衛もいい仕事したって言ってた。」
ルーミアの何も考えてなさそうな笑顔に嘘はない。
「何も渡されていないの?四角い紙や丸い金属とか。」
「何ももらってないよー。」
それならば……
「何?じゃあ、あのきもけーね、ただ働きさせたの!?」
突然大きな声を出した霊夢に驚いて、おもわず目を閉じて縮こまるルーミア。
「ただ働き?」
「そう、ただ働き。働いたのにお金がもらえないことよ。
この世に恩をあだで返す仕打ちは数あれど、ただ働きに勝るあだはないわ。」
お払い棒をぎゅっと握る。
宴会のたびに押し付けられる片づけを思い出す霊夢。
少しくらい、気持ち程度でいいからお賽銭で賽銭箱を鳴らしても罰は当たるまい。
「そーなのかー。あ、でもお仕事の後おにく食べたよ。五郎兵衛の、おいしかった。」
にへらと笑ったルーミアの口からだらっとよだれがこぼれる。
「あら、その人にご馳走してもらったの?」
ルーミアは満面の笑みをたたえて言った。
「うん、その人を馳走してもらったの。」
無邪気に残酷
まじりっけのない純粋な闇そのもの
ルーミアのその純粋さが恐くもありますが、仕事をする姿はとても可愛らしいものでしたね。
話も読みやすかったと思いますし、面白かったですよ。
確かに使い古されたネタであるとはいえ、
作品全体がほんわかとしていたから無警戒でした。
初投稿ということですが、
大八車のガタゴトの描写が巧く、なにやら楽しく可愛いルーミアが浮かんできます。
次の作品にも期待してます
いい話で終わらせてくださいよぉ。
抱きしめたくなるほどの愛くるしさと、身も心も凍る残酷さ。
それが同時に存在するのがルーミアだと思っています。
ルーミアの話だから、いつの間にかわかりやすい感じになっていたのかな?
>>煉獄さん (10)
可愛らしいルーミアも、人を食うルーミアも同じ人物。
性格がぶれないようにかなり気をつけました。
>>16さん
伏線を幾つか置いておいて、なおかつオチを最後までひた隠すのにかなりの時間を割きました。
この点、うまくいったようでよかったです。
ルーミア可愛いルーミア可愛いルーミア可愛い
>>20さん
勤労の後でおなかが空いていたのです。
>>25さん
後味の悪さ、か。
もうちょっとあっさりめな感じにしたかったけれど、いつのまにか五郎兵衛とのふれあいが多くなってました。
ルーミアが五郎兵衛を食べるのをためらうにはいささか好感度が足りなかったようで……
>>GUNモドキさん (25)
いや、ホント、ごめんなさい。
次はギャグかいい話で終わらせます。
次回作がブラックとは限らないだろうけど、次も頑張ってください
ラストで一気に鳥肌が立ちました!!!!
報酬の取り決めは事前にしっかりやっておこうという教訓ですか。
そ、そんなぁ・・・と言う残念さが大きかったです。
「仕事」の中で彼女は人との間に何も感じなかったのでしょうか?
それをあっさり無視して食べちゃうって言うのは無邪気・純粋と言うより
単なる心無い一妖怪に見えてしまいます。
読解力が足らず作者さんの真意が理解できていなかったのなら申し訳ありません。
落差が割合に表現できてほっとしてます。
次もがんばります。
>>40さん、44さん
どんな意味で「馳走してもらった」かは読み手が自由に決められる。
私が思い浮かぶのは二つくらいですが……
>>47さん
そう意味を取られたのは私の失敗だと思います。
・ルーミアの人食い属性が想起されない文章作り
・五郎兵衛との親密度を上げすぎない(五郎兵衛を○ってしまう程度に)
の間でどう調整したものかと随分悩みましたが……
やはり、もうちょっと五郎兵衛との会話をあっさりしたものにしたほうが良かったかなあ、と考えてしまう。
この時点で、労働の対価が肉を食わせることになってる