Coolier - 新生・東方創想話

東方の金曜日Part5

2009/05/16 20:43:08
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「東方の金曜日」



第5話「それぞれの意志、それぞれの思い」
(神様+巫女チーム)
「さてと・・・。」
任務が開始されて、森に着くや否や、守谷神社の神、神奈子は突然、バッグを開ける。同じく、神である諏訪子も続く。
「どうかなさいましたか八坂様、諏訪子様?」
その行動に2人の神に仕える巫女、早苗は不思議そうに尋ねる。
「決まっているでしょ早苗。」
そういい、神奈子はバッグから、サブウェポンである武器を取り出す。
「捨てる。」
「あ、成程・・・ってえぇ!?」
武器を捨てる?早苗にとっては神奈子の行動が理解できなかった。
「な、何故ですか八坂様!?せっかくZさんが支給した武器を捨てるなんて・・・。」
「そう、そこなんだよ早苗・・・。」
と、神奈子が先生のような口ぶりで早苗に言う。
「まず、任務の1番目は、確か別々に行動しなければならないってZは言ってた。何故だと思う?」
「大勢いると、T‐Jに感づかれるから?」
「そう。んじゃ、3番目ではなるべく集団行動にする理由は?」
「皆で戦えば、T‐Jに勝てる・・・あ。」
そう言い、早苗は理解する。
1番目と3番目の任務が全く矛盾しているではないか。それでは・・・。
「別々なのか、集団行動なのかどっちなのか分からないよね~。」
早苗の心を読んだかのような口調で諏訪子が言う。
「それでお二人は、Zさんを信用してないのですね。」
「信用してないというか、あいつから無責任的オーラが漂っている気がして・・・。」
「ですが、そんな理由でせっかくの武器を捨てるなんて少しひどいのでは・・・。」
「早苗・・・人の話はちゃんと聞いたほうがいいぞ・・・。まず、Zの話を思い出すこと。」
「失礼ですが、どこからですか?」
「Zが私達を呼んだ理由の話で、軍隊が全滅したって言っていただろ?」
「はい。生存者がいないって言っていました。」
「軍隊が持っているのはこういう類の武器だよな?」
「そうですね。」
「・・・。」
わかんないのかな~、と神奈子は呆れつつ、続ける。
「じゃ、早苗よ。私達が軍隊でも勝てなかったT‐J相手に軍隊の武器を持ってどうやれと?」
「・・・あ!」
やっと早苗は理解した。確かにそうだ。T‐Jにも勝てなかった軍隊の武器を持っても効き目ないなら意味がない。
あと、弾幕も効果が薄いとなるとT‐Jはある意味、チート殺人鬼マシーン!
やっと理解した早苗に今度は諏訪子が説明する。
「あと、ランダムで支給しますって、やばい状況なのにランダムってなんか適当っぽさを伺えるし。」
「ま、そんな訳だ。という訳で、こんなもの邪魔になるから捨てておく。」
そう言って、神奈子と諏訪子の2人は持っていたサブウェポンを捨てた。
ただ、捨てた、と言っても地面の上に置いただけだが。
「・・・よし。」
「よしじゃないわよ!」
そう抗議したのは、神様の1人であり、秋姉妹の姉、静葉だ。
「捨てたって勿体ないじゃないの!あんたならわかるけど、私達のような者達には大切な武器よ!」
「だから全滅した軍隊の武器なんて・・・。」
「ど―せ捨てるなら、地面に穴掘って、入れて埋めなさいよ!これじゃ、不法投棄よ!」
「お姉ちゃん、そんなことをしたら、“じゅう”の木が生えちゃうよ!」
「「「いや、外の世界だから生えないよ!生えたら、怖いし早苗以上に奇跡だわ!!」」」
外の世界の武器を知らない稔子に対し、神奈子、諏訪子、静葉が突っ込んだ。
「あの・・・でしたら、私が持ちましょうか?」
早苗の言葉に神奈子が首を傾げる。
「いや、だから、効き目ない武器を持っていても・・・。」
「確かにそうです。ですが、もし、T‐Jがこれを発見して拾ったら・・・。」
「大丈夫だよ早苗。あいつは大抵、鉈や刀等の接近戦用武器しか持っていないらしいから。多分。」
諏訪子の言う事は確かだと思う。ルーミアが殺された時、T‐Jは銃じゃなく、鉈等を使っていた。
相手は近距離での戦いを得意としているかもしれない。対し、こちらは距離を置いて弾幕で戦うのを得意とする面々。
だが、この銃を流石に捨てるのは少し、気がひけた。いくらZが適当に支給されたものと言っても、使わずに捨てるのは勿体無いと思う。
「せめて、牽制用とかに使ったほうが効率がいいと思います。戦闘には役に立たないとはいえ、他にも使い所があります。」
「へ~なんだか早苗ってなんだか人間のお母さんみたいだね。」
「事実、家じゃ早苗が家事をやっているんでな。少しは頼りになると思うぞ。」
「か、神奈子様!?稔子様もからかわないでください!」
そう言われ、慌てて、早苗は真っ赤になる。頼りになるって、自分はまだまだではないか。
幻想郷に来た時、自分は奇跡の能力に相当自信を持っていた。自分の能力あれば、お二人を守れると思っていた。
しかし、博麗霊夢というもう一人の巫女であり、今では先輩的存在である彼女にやられて以来、反省する。
幻想郷には常識が通じないということだ。
それ以来、早苗は精一杯修業することとなった。
いつか、霊夢さんに負けない立派な巫女になりたい。お二人や霊夢さんに認めてもらいたい。
その一心だけで今まで修行していた。
そんな早苗の心を見透かしたかのように、神奈子は早苗の肩に手を置き、言った。
「早苗・・・無理にお前が戦う必要はないぞ。お前は優しいし、まだ若い。いざという時は、私に頼ってもよい。」
それは今まで見た中でも優しそうな八坂様だった。と、その時、
「やっぱり、あそこは厄いわね~。遠くからでも分かるわ~。」
空からくるくる回りながら、厄神である雛が降りてきた。
「雛様、T‐Jのことですか?」
「いえ、違うわ。とてつもない厄があの方角から漂ってきているわ。あのまま放っておけば、誰かが危険だわ。」
「けど、あそこだとT‐Jだと鉢合わせになるかもしれないよ。だってZが行くなって言っているし。」
そう諏訪子が言う。確かに、と早苗はとある事を思い出す。

それは、早苗達がホテルを出る前のこと、Zが最後にこう言った。
「最後に言いたいことですが、腕時計の地図にも表示されている通りに、赤い円が描かれているのがわかりますか?」
そう言われ見て地図を操作すると、とある場所に「DANGER」と真ん中に書かれた赤い円が表示してあった。
「・・・確かにあったけど、それがどうかしたの?」
霊夢が不審そうに尋ねる。
「どうやら、その場所がT‐Jのアジトの辺りだと思うのです。」
その言葉に一同が「え!?」と驚く。
「何で?」
「わかりません。ですが、その地域に調査隊を派遣したのですが、その部隊が戻ってこないのです・・・。」
「・・・ということは、そこがT‐Jの出没場所?」
「らしいです。」
そのことを聞いて、チルノが立ち上がる。
「んじゃ、そこへ行く!!」
チルノの突然の言葉に一同が驚く。こいつ、死ぬ気か?
「チルノ様落ち着いてください・・・。危険ですよ。」
「何言ってるの!危険でもあいつを倒せばいいでしょ!?絶対にルーミアの仇を取って・・・ムグムグ」
自信満々に言うチルノに耐えかねて、大妖精がチルノの口をふさぐ。
ゴホン、と咳払いしつつ、Zが皆を見回しつつ、言う。
「・・・と言う訳で、皆さんも腕に自信がなければ、その赤い円に入らない方がいいですよ・・・。」
[回想終了]

「まぁ、諏訪子の言う通りだ。今は他の奴等と合流してからにするぞ。」
そう言い、神奈子はコンパスで位置を確認しつつ、先頭をとりながら前進する。
彼女に続き、諏訪子や秋姉妹、早苗、そして後ろ髪を引っ張られるような表情の雛も前進した。



(パチュリー以外の紅魔館チーム)
ビギビギ・・・という音が森中に響き渡り、レミリアは自分のサブウェポンを砕いた。
「ふん・・・こんなチャチなものに頼らなくてはいけないと思われるなんて、吸血鬼もなめられたものね。」
今のお嬢様は不機嫌モードだと、紅魔館唯一の人間であり、メイド長の咲夜はそう考える。
無理もない。訳もわからない外の世界の島に連れて行かれ、しかも難易度高めの任務を行う羽目になるからだ。
「所で咲夜のサブウェポンを何なのかしら?」
「さぁ・・・見ていませんし・・・。」
そう言い、咲夜はバッグの中身をレミリアに見せる。
中身は咲夜が使用しているのより長く、地味なカラーリングのナイフだった。
「・・・まぁ、ランダムの割には、咲夜に相応しい武器ね・・・。」
「予備として取っておきます。」
「あ、私のウェポンは三節根でしたよ?」
「「あんたには聞いていない。」」
「あうぅ・・・。」
そう言われ、門番の中国こと、紅美鈴はしょげてしまう。
「失礼ですが、お嬢様は、T‐J抹殺に反対なのですか?」
「ん?まぁ、私はただ、外の世界の人間如きに命令されるつもりはないから。」
けど、とレミリアは視線をさまよわせる。その先には・・・。
「らんらんらら~ん♪今日は悪い奴と弾幕ごっこ~♪」
楽しそうに歩いているのはフランドール・スカーレット。レミリアの妹であり、何でも壊す能力を持つ。
「フランがその気になっている以上仕方がないわね・・・。」
「はぁ・・・。」
そう咲夜は納得する。きっとお嬢様は妹様のことに気を使っているんだな、と。
だから、咲夜はレミリアにこう言う。
「お嬢様。」
「何?」
「万が一のことがあれば、私がお守りします。」
その言葉にレミリアはポカンとしたが、やがてプッと吹き出す。
「馬鹿ね。自分の身は自分で守るわ。ま、一応期待しておくわね。」
そう言って、レミリアは先程から、視線をキョロキョロさせている小悪魔のほうへ向かった。
小悪魔のほうは、彼女に気づき、しどろもどろになる。
「え?えっと、お、お嬢様?」
「こあ、さっきから何しているの?」
「え、えっとその・・・。」
アタフタと言い訳を探すことに必死な小悪魔を見て、レミリアはため息をつく。
「・・・命令よ、小悪魔。貴方はパチェの所へ行きなさい。」
「え・・・。」
突然のことに小悪魔はビックリした。
「貴方はパチェの使い魔でしょ?ならば、ここにいる必要はないわ。パチェに会って、連れ戻すなり、一緒に行動するなり、好きにしなさい。」
「お嬢様・・・わかりました・・・少し、離れさせて頂きます。」
そう言い、小悪魔はどこかへと去る。それを咲夜が心配そうにレミリアに尋ねる。
「お嬢様、大丈夫ですが?もし、小悪魔がT‐Jと鉢合わせになったら・・・。小悪魔、ドジですし・・・。」
「大丈夫よ、咲夜、ぬかりはないわ・・・。あの子にちょっとだけ運命を変えたからきっとパチェに会えるわ。」
そう言うレミリアはどこか寂しそうだった。それを咲夜は不思議に思った。
「・・・どうかなさいましたお嬢様?」
「ふっ、流石は咲夜ね・・・。・・・・・ちょっと向こうへ行きましょうか?内緒よ。」
そう言い、他の2人(フランと美鈴)の所から離れ、レミリアは話す。
「・・・1週間前に永遠亭の医者が館に来たことは覚えているわね?実は・・・。」
そして、レミリアは想像もつかないことを咲夜に話す・・・。
「っ!?・・・し、しかしお嬢様はどうして止めてくれなかったのです・・・。」
「止めようとしたわ。けど、私の能力でもその運命を変えることはできなかったわ・・・。」
咲夜はその事を聞いて信じられなかった。だが、カリスマ溢れるお嬢様が嘘を言う筈がない。
けど・・・けど、そのようなことがあったとは・・・。
この事は内密に、とレミリアに言われ、咲夜はフラン達のいる所へ向かう。
「あ、咲夜さん?どうかなさいましたか?」
咲夜の顔色を見たのか、美鈴が尋ねる。
「何でもないわ。・・・。中国。」
「は、はい。」
「死なないでね・・・あんたが死んだら、誰が門番を勤めるの?」
そう言われ、美鈴は苦笑気味に笑う。
「・・・何なの?」
「い、いえ。そう言われると頑張らなきゃいけないなーと思いまして・・・。」
先に行ってます~、と美鈴は慌てて、何も考えずに前進するフランを追う。
そういった中で、咲夜は心の中で決心する。
「(お譲様や妹様はもとより、パチュリー様、小悪魔、中国は絶対に死なせない・・・。絶対に皆で生き残らなければいけない・・・例え、この身が滅びようとも!)」



(永遠亭チーム)
「えーりん!この腕時計、パソコン機能がない!」
「当り前ですよ・・・この状況でよくそんなことが言えますね・・・。」
永遠亭で、いや、幻想郷でパチュリーと1,2を争う(?)引き籠りの月の姫、輝夜の言葉に永琳は呆れてしまう。
とりあえず、こういった異変はかつての故郷、月の都でもなかった。これはある意味危険な状況だ。
しかし、姫様はそのような状況下でも、全くいつもと同じようだった。その頭の中身を見てみたいと思う。
「他の皆も動くかしら?」
「らしいですね。」
「ルーミアっていうちっちゃな妖怪が死んだのがショックだったわ・・・。」
「私もです。」
「ま、いざという時は、私の不死の能力があるから、願い事は頂きね。幻想郷と月の都が平和に暮らせるという願いを。」
「ですね・・・・・・・え?」
輝夜の言葉に永琳は耳を疑う。
「ま、まさか姫様・・・T‐Jと戦う気ですか!?」
「ええそうよ。」
「いけませんっ!」
「え、永琳・・・?」
突如の永琳の大声に輝夜は少し驚く。
「何故です?T‐Jと戦うなんて無茶です!」
「・・・じゃあ永琳は他の皆が死んでいくのを黙って見ているの?」
「っ!?」
そう言われ、永琳は絶句する。何だろう・・・いつもの姫様じゃない・・・。
混乱する永琳に対し、輝夜は静かに話す。
「そう、私と貴方、それに妹紅は不老不死。老いることも、死ぬこともない・・・。だったら、それを誰かの為に使いましょ?」
「で、ですが・・・。」
永琳は必死に考える。自分達は確かに不老不死だが、人間と同じ痛覚がある。例え、姫様がT‐Jと何度も闘っても、勝ち目がない。返り討ちにされるだろう。
桁違いの傷を受けても、死ぬことはない、いや、できないのだ。死ぬほどの痛みがあっても死ねず、それを繰り返せば、
最悪、精神が崩壊する・・・。
永琳は輝夜が精神崩壊してしまう姿を思い浮かべてしまい、必死にそれを振り払おうとする。
それを見た、輝夜は永琳に向かって言う。
「もし、私の心が壊れたら・・・また、貴方に迷惑をかけてしまうわね・・・。けど、今はやるしかないのよ。もし、T‐Jを放っておけば、Zの言う通り、誰かが傷つき、誰かの命が奪われてしまう・・・。私はあの機械人形を許せない・・・!命を平気で奪う者を許すわけにはいかない・・・!」
そう怒りを抑えきれない輝夜を見て、永琳は驚く。
今まで、自分を大切に思った姫様。
時折、我儘言って困らせた姫様。
よく、パソコンとかに夢中で引き籠って、世話を焼かせた姫様。
妹紅をからかって楽しんでいる姫様。
あの頃の姫様。
今いる姫様はその中にはいない。
そして輝夜は同じ月の都出身である鈴仙に近づく。
今の鈴仙は、うつむいていて、震えていた。無理もない。
かつて恐れて、戦闘放棄して逃げた彼女だ。T‐Jと戦うのが怖いということはわかってしまう。
「鈴仙・・・。」
「・・・・・っ。」
「無理して、私達について来なくてもいいわよ。私達がやるから。」
「えっ・・・?で、ですが姫様が・・・。」
「姫の安全を守るのが従者の役目というのはもういいわ。怖いなら怖いって素直に言いなさい。貴方には今回は流石に危険すぎるわ・・・。だから、安心して。」
「姫様・・・。」
「さ、行きましょうか永琳。」
そう言い、彼女は微笑む。
「T‐Jが死ぬか、私の精神が壊れるか、早く戦いを終わらせましょう・・・。」
今の永琳に輝夜を止める術はなかった。
鈴仙は2人が去るのをただ、見ていた。すると、後ろからチョンチョン。
振り向くと、妖怪兎のリーダーであるてゐだった。
「大丈夫よ、れーせん。あんな奴なんてえーりんや姫にかかればイチコロよ。」
「てゐ・・・。」
「あ、もしかしてビビったの?それともちびった?」
「なっ・・・何言ってるの!?ただ、師匠達の足手まといになりたくないだけよ!」
図星をさされ、真っ赤になった鈴仙はすぐに2人の方へ向かって行った。
そう、自分は臆病者だ。だが、お2人を危険な目にあわせたくない。
帰る時は皆で帰ろう。たった今だけど、そう決心した。
そう思いながら走っていく鈴仙を見て、てゐは呆れつつ、言いながらついて行く。
「やれやれ・・・素直じゃないから・・・。でもま、そういう所がいいんだなー。」


R島の所々で幻想郷の住人達はそれぞれの思いを胸にしながら、行動を始める。
例え、理由が違えども、打倒T‐Jに燃えている者は少なくはない。
とは言っても、ミスティアのように現在の状況に怯える者もいるかもしれない。
だが、T‐Jの正体や、これから起こる惨劇の事を誰も知る者はない・・・。
今、霊夢達のサバイバルバトルが始まる・・・。



続く
ZRXです。
今回は霊夢以外の視点(早苗→咲夜→永琳)を描いてみました。
少し、キャラが異なっていますので注意してください。

次回はT‐Jが遂に霊夢達に魔の手を伸ばします・・・!
ZRX
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コメント



0.440簡易評価
7.10名前が無い程度の能力削除
前作の内容と見比べるとプロットを組まずに行き当たりばったりで書いているということがよくわかりました。
11.60名前が無い程度の能力削除
これで前回の疑問はほぼ回収できましたね。
面白くなってきた。
14.40名前が無い程度の能力削除
是非最後まで纏めきって見せてください