「魔理沙の……バカーーー!!!!!!!」
「お、おいアリス!」
魔理沙の止める声も聞かず、アリスは自宅を飛び出していった。
■
ここは幻想郷。
夢だか酒だかなんだかが、入り交じった世界。
その世界の一角に神社がある。
名を博麗神社と言う。
外の世界と幻想郷との境界を守る結界――通称博麗結界――を展開している巫女さんがいるのが、ここである。
結界を張っている巫女である博麗霊夢は、それなりに力を持った人間であり、数々の異変を解決していったものすごい人間である。
そんな彼女は、神社の境内にちょこんと座っている。
ずるずる。
のんきにお茶を飲んでいる姿からは想像できないが、すごい人である。
紅白の巫女服……なのだが、肩から腋の部分にかけて地肌が露出している特殊な巫女服である。もちろん脇毛なんてそんな失礼なものは、生えていない。
というよりも、もとから生えていないらしい。
妖怪の山にあるもう一つの神社の巫女さんも同じような服装なのだが、もちろん毛は生えていない。
元来巫女さんというのは、生えていない存在らしい。さらにいうと、女性のあの部分も生えていない。そのため、「生えていないからはずかしくないもん」というわけで、はいてもいないらしい。
と、文屋が言っていたが、さだかではない。
写真をとったわけでも、第三者が発見したわけでもないので、なんとも胡散臭いものだ。
ずるずる。
霊夢はのんきにお茶をすすりながら、今日も牧歌的な青空を眺めている。
「うーん、今日も平和ね。本当に平和よね。もう、それはそれはものすごく平和すぎて、『ヘイワ』を『ピンフ』と読んじゃうぐらいに平和よね~」
と、何気ない昼のひとときを過ごしていると、
「れーーーーーーーーーーーーーーーーいーーーーーーーーーむーーーーーー!!」
神社の鳥居から、一人の少女の声が聞こえてきた。
霊夢は怪訝な表情でそれを眺めていると、やがて人影が見えてきた。
金髪の髪に赤のカチューシャ。西洋人形のような整った顔立ちなのだが、その顔は涙で無惨なものとなっている。
彼女は、アリス・マーガトロイド、妖怪である。
魔法の森あたりに住んでいるらしく、普段は自宅でお人形作りに勤しんでいる。そして、友人の霧雨魔理沙といつも一緒なのだが、今日は珍しく一人だ。
そして、どたどたと、霊夢に駆け寄った。
「ひどいのよ! ひどいのよ!」
肩をがくがくを揺らされながら、霊夢は鬱陶しそうにつぶやいた。
「だれが、どうひどいのよ?」
「魔理沙がが! 魔理沙がが!」
「ひどいのはいつも通りでしょ? その魔理沙がが」
そう言って、アリスをひっぺがすと、
「というわけで、私はお茶を飲むので忙しいの。んだから、帰ってくれるかしら?」
だが、アリスは帰るどころか、目に涙を溜めて、
「うぐっ……うぐっ……!」
うわーんと泣き出した。
このままじゃ埒があかないと感じた霊夢は、
「あーもう、分かったわよ話を聞くから、んでどうしたの?」
片肘をついて、尋ねると、アリスはまた泣き出して(いや、すでに泣いていたが)霊夢に抱きついた。
「実は、魔理沙がー!」
「ええい! とりあえず、涙をふけ、鼻をかめ!」
「ちーん……ちん」
「!?」
「痛い……」
「だろうね」
アリスは、頭に出来た大きなたんこぶを押さえながらつぶやいた。
「ったく、人の服で鼻をかむやつがいるわけ?」
「……ここに」
頭を押さえる。
全くどうして、自分の知り合いはろくでもないやつが多いのだろうか。
「とりあえず、どうしたっていうのよ?」
「実はね……」
アリスはうつむきながら話し始めた。
■
「アリスー! あっそびにきたぜーーー!!!」
豪快にアリスの家の扉を開け放ち、我が家者で入ってきた白黒の魔法使いが霧雨魔理沙だ。
「ま、魔理沙!?」
アリスは大げさに振り返る。その顔は真っ赤である。
それもそのはずである。
今、まさに彼女が作っていた人形は――。
「ん? アリス、何を作っているんだ?」
興味津々でアリスの手元をのぞき込む魔理沙。
慌てて隠そうとしたが、時すでに遅し。
「これって、もしかして私か?」
その通りだ。アリスが現在進行形で制作中だった人形はまさしく、魔理沙そのものだった。
1/60スケール魔理沙人形を見られたアリスは、顔を真っ赤にしながら、
「べっ、別に変な意味があるわけじゃないのよ。ちょ~と、作ってみたくなっただけで……」
必死に言い訳をしていたのだが、その様子を見て言った魔理沙の一言がこれだ。
「なーんか、ぶっさいくだなー」
わっはっは! と笑う魔理沙。
「え……?」
「いや、私そっくりなんだけどさ、なんか可愛くねーなーと思ったんだよ」
そういって、再び笑い出した。
アリスは、しばらくぽかーんとして、再び机の上に置いてある1/60スケール魔理沙人形を
見つめ、やがてわなわなと震えだした。
その様子があまりにも普通じゃなかった魔理沙は、不安げに彼女に向かって手を伸ばした。
「あ、アリス? どうし……」
キッと、魔理沙をにらむと、近くにあった上海人形を投げつけて、
「魔理沙のバカーーーーー!!!!!!!」
そう叫んで、家を飛び出したのであった。
■
「それで、現在に至ると?」
「そうなの」
話し出すと落ち着いたのか、もう涙は止まっていた。
「つまりあんたは、自分が作った魔理沙人形が不細工だと言われて怒った……と?」
しかし、アリスの答えは霊夢の予想していたのとは、ちょっと違っていた。
アリスはあごに手を当てて、
「うーん、ちょっと違うかしら?」
「は? どうゆうことよ?」
「だって、魔理沙不細工って言ったのよ!」
「だから、それを怒っているんでしょ?」
「違うの!」
「じゃーなによ?」
いよいよもって面倒くさくなってきた。
アリスは両頬に手を当てて顔をぽっと赤くして、くねくね動く。気持ち悪い。
「あのかっわいい魔理沙の姿を精巧に作った、私の1/60霧雨魔理沙が可愛くないって言ったのよ。それはつまり、魔理沙自身が可愛くないって言っているようなものよ」
「は?」
意味が分からず、霊夢は目を丸くして、境内に座って語るアリスを見つめる。
「自分で自分の事を可愛くないって言ったのよ! それが許せなかったのよ! あんなに可愛い可愛い魔理沙が、自分自身で可愛くないって言うなんて……う、ううう」
そこまで説明すると、また泣き出した。
これじゃあ、どうにもこうにも話が進まない。
さっさとこいつには帰ってもらって、自分は飯食って糞して寝たいというのに……。
霊夢はため息をはくと、
「あのさ、あんたはそんな魔理沙も含めて好きなんじゃないの?」
「え……?」
なんとなく言ってみた霊夢の切り返しにアリスは、泣くのをやめて、彼女を見た。霊夢は一口お茶を飲むと続けて、
「だから、鈍感でデリカシーがない――そんな魔理沙があんたは好きじゃないの? って言ってんのよ」
「あ……」
理解したのか、アリスは言葉を漏らした。
「そうだった……私はそんな魔理沙が大好きだったんだ……。それをあんな小さな事で……」
そして、何を決意したのか、境内から降りると、腰に手を当てて、
「そうよ! 私と魔理沙の中はあんな事では、わかるわけないわ! そうよ!」
自分で理解して、自分で納得して、結局何が何だか分からない霊夢をよそに、アリスはスカートを翻しながら、振り向き、
「ありがと、霊夢」
にっこりと微笑んだ。
「!!」
どきり。
思わずその姿が可愛かったのは、自分自身の胸だけにとどめておいた。
「それじゃ、今日はありがとう!」
そう言って、アリスは神社を後にした。
いつの間にか、幻想郷は夕焼け空で彩られていた。
■
後日。
「れーーーーーーーーーいーーーーーーーーーむーーーーーーーーーー!」
今度は魔理沙が飛んできた。
「今度はあんたかよっ!」
「変態なんだよ! アリスがが!」
「あいつが変態なのはもとからでしょ? アリスがが!」
「だって、あいつ今日誤りに行こうと思って、あいつの家に行ったら、あいつ何してたと思う?」
「さあ?」
魔理沙は声を大にして言った。
「あいつ、私の人形の服をはぁはぁあえぎながら脱がせていたんだぜ! 『はぁ……はぁ……かわいい、可愛いわ魔理沙……』って言っていたんだぜ!」
どうやら、どうにもならないみたいである。
■
おまけ
「この鼻水と涙がついた服……」
あの泣き顔と、そのあとのアリスの笑顔を思い出して顔を赤くしてしまった霊夢。
「と、とりあえず……」
――そのままで保管しておこう。
―完―
「お、おいアリス!」
魔理沙の止める声も聞かず、アリスは自宅を飛び出していった。
■
ここは幻想郷。
夢だか酒だかなんだかが、入り交じった世界。
その世界の一角に神社がある。
名を博麗神社と言う。
外の世界と幻想郷との境界を守る結界――通称博麗結界――を展開している巫女さんがいるのが、ここである。
結界を張っている巫女である博麗霊夢は、それなりに力を持った人間であり、数々の異変を解決していったものすごい人間である。
そんな彼女は、神社の境内にちょこんと座っている。
ずるずる。
のんきにお茶を飲んでいる姿からは想像できないが、すごい人である。
紅白の巫女服……なのだが、肩から腋の部分にかけて地肌が露出している特殊な巫女服である。もちろん脇毛なんてそんな失礼なものは、生えていない。
というよりも、もとから生えていないらしい。
妖怪の山にあるもう一つの神社の巫女さんも同じような服装なのだが、もちろん毛は生えていない。
元来巫女さんというのは、生えていない存在らしい。さらにいうと、女性のあの部分も生えていない。そのため、「生えていないからはずかしくないもん」というわけで、はいてもいないらしい。
と、文屋が言っていたが、さだかではない。
写真をとったわけでも、第三者が発見したわけでもないので、なんとも胡散臭いものだ。
ずるずる。
霊夢はのんきにお茶をすすりながら、今日も牧歌的な青空を眺めている。
「うーん、今日も平和ね。本当に平和よね。もう、それはそれはものすごく平和すぎて、『ヘイワ』を『ピンフ』と読んじゃうぐらいに平和よね~」
と、何気ない昼のひとときを過ごしていると、
「れーーーーーーーーーーーーーーーーいーーーーーーーーーむーーーーーー!!」
神社の鳥居から、一人の少女の声が聞こえてきた。
霊夢は怪訝な表情でそれを眺めていると、やがて人影が見えてきた。
金髪の髪に赤のカチューシャ。西洋人形のような整った顔立ちなのだが、その顔は涙で無惨なものとなっている。
彼女は、アリス・マーガトロイド、妖怪である。
魔法の森あたりに住んでいるらしく、普段は自宅でお人形作りに勤しんでいる。そして、友人の霧雨魔理沙といつも一緒なのだが、今日は珍しく一人だ。
そして、どたどたと、霊夢に駆け寄った。
「ひどいのよ! ひどいのよ!」
肩をがくがくを揺らされながら、霊夢は鬱陶しそうにつぶやいた。
「だれが、どうひどいのよ?」
「魔理沙がが! 魔理沙がが!」
「ひどいのはいつも通りでしょ? その魔理沙がが」
そう言って、アリスをひっぺがすと、
「というわけで、私はお茶を飲むので忙しいの。んだから、帰ってくれるかしら?」
だが、アリスは帰るどころか、目に涙を溜めて、
「うぐっ……うぐっ……!」
うわーんと泣き出した。
このままじゃ埒があかないと感じた霊夢は、
「あーもう、分かったわよ話を聞くから、んでどうしたの?」
片肘をついて、尋ねると、アリスはまた泣き出して(いや、すでに泣いていたが)霊夢に抱きついた。
「実は、魔理沙がー!」
「ええい! とりあえず、涙をふけ、鼻をかめ!」
「ちーん……ちん」
「!?」
「痛い……」
「だろうね」
アリスは、頭に出来た大きなたんこぶを押さえながらつぶやいた。
「ったく、人の服で鼻をかむやつがいるわけ?」
「……ここに」
頭を押さえる。
全くどうして、自分の知り合いはろくでもないやつが多いのだろうか。
「とりあえず、どうしたっていうのよ?」
「実はね……」
アリスはうつむきながら話し始めた。
■
「アリスー! あっそびにきたぜーーー!!!」
豪快にアリスの家の扉を開け放ち、我が家者で入ってきた白黒の魔法使いが霧雨魔理沙だ。
「ま、魔理沙!?」
アリスは大げさに振り返る。その顔は真っ赤である。
それもそのはずである。
今、まさに彼女が作っていた人形は――。
「ん? アリス、何を作っているんだ?」
興味津々でアリスの手元をのぞき込む魔理沙。
慌てて隠そうとしたが、時すでに遅し。
「これって、もしかして私か?」
その通りだ。アリスが現在進行形で制作中だった人形はまさしく、魔理沙そのものだった。
1/60スケール魔理沙人形を見られたアリスは、顔を真っ赤にしながら、
「べっ、別に変な意味があるわけじゃないのよ。ちょ~と、作ってみたくなっただけで……」
必死に言い訳をしていたのだが、その様子を見て言った魔理沙の一言がこれだ。
「なーんか、ぶっさいくだなー」
わっはっは! と笑う魔理沙。
「え……?」
「いや、私そっくりなんだけどさ、なんか可愛くねーなーと思ったんだよ」
そういって、再び笑い出した。
アリスは、しばらくぽかーんとして、再び机の上に置いてある1/60スケール魔理沙人形を
見つめ、やがてわなわなと震えだした。
その様子があまりにも普通じゃなかった魔理沙は、不安げに彼女に向かって手を伸ばした。
「あ、アリス? どうし……」
キッと、魔理沙をにらむと、近くにあった上海人形を投げつけて、
「魔理沙のバカーーーーー!!!!!!!」
そう叫んで、家を飛び出したのであった。
■
「それで、現在に至ると?」
「そうなの」
話し出すと落ち着いたのか、もう涙は止まっていた。
「つまりあんたは、自分が作った魔理沙人形が不細工だと言われて怒った……と?」
しかし、アリスの答えは霊夢の予想していたのとは、ちょっと違っていた。
アリスはあごに手を当てて、
「うーん、ちょっと違うかしら?」
「は? どうゆうことよ?」
「だって、魔理沙不細工って言ったのよ!」
「だから、それを怒っているんでしょ?」
「違うの!」
「じゃーなによ?」
いよいよもって面倒くさくなってきた。
アリスは両頬に手を当てて顔をぽっと赤くして、くねくね動く。気持ち悪い。
「あのかっわいい魔理沙の姿を精巧に作った、私の1/60霧雨魔理沙が可愛くないって言ったのよ。それはつまり、魔理沙自身が可愛くないって言っているようなものよ」
「は?」
意味が分からず、霊夢は目を丸くして、境内に座って語るアリスを見つめる。
「自分で自分の事を可愛くないって言ったのよ! それが許せなかったのよ! あんなに可愛い可愛い魔理沙が、自分自身で可愛くないって言うなんて……う、ううう」
そこまで説明すると、また泣き出した。
これじゃあ、どうにもこうにも話が進まない。
さっさとこいつには帰ってもらって、自分は飯食って糞して寝たいというのに……。
霊夢はため息をはくと、
「あのさ、あんたはそんな魔理沙も含めて好きなんじゃないの?」
「え……?」
なんとなく言ってみた霊夢の切り返しにアリスは、泣くのをやめて、彼女を見た。霊夢は一口お茶を飲むと続けて、
「だから、鈍感でデリカシーがない――そんな魔理沙があんたは好きじゃないの? って言ってんのよ」
「あ……」
理解したのか、アリスは言葉を漏らした。
「そうだった……私はそんな魔理沙が大好きだったんだ……。それをあんな小さな事で……」
そして、何を決意したのか、境内から降りると、腰に手を当てて、
「そうよ! 私と魔理沙の中はあんな事では、わかるわけないわ! そうよ!」
自分で理解して、自分で納得して、結局何が何だか分からない霊夢をよそに、アリスはスカートを翻しながら、振り向き、
「ありがと、霊夢」
にっこりと微笑んだ。
「!!」
どきり。
思わずその姿が可愛かったのは、自分自身の胸だけにとどめておいた。
「それじゃ、今日はありがとう!」
そう言って、アリスは神社を後にした。
いつの間にか、幻想郷は夕焼け空で彩られていた。
■
後日。
「れーーーーーーーーーいーーーーーーーーーむーーーーーーーーーー!」
今度は魔理沙が飛んできた。
「今度はあんたかよっ!」
「変態なんだよ! アリスがが!」
「あいつが変態なのはもとからでしょ? アリスがが!」
「だって、あいつ今日誤りに行こうと思って、あいつの家に行ったら、あいつ何してたと思う?」
「さあ?」
魔理沙は声を大にして言った。
「あいつ、私の人形の服をはぁはぁあえぎながら脱がせていたんだぜ! 『はぁ……はぁ……かわいい、可愛いわ魔理沙……』って言っていたんだぜ!」
どうやら、どうにもならないみたいである。
■
おまけ
「この鼻水と涙がついた服……」
あの泣き顔と、そのあとのアリスの笑顔を思い出して顔を赤くしてしまった霊夢。
「と、とりあえず……」
――そのままで保管しておこう。
―完―
こんなアリスなら鼻をかまれても許せる!w
>「だって、あいつ今日誤りに行こうと思って、あいつの家に行ったら、あいつ何してたと思う?」
この場合は誤りではなく、謝りが正しいかと思います。
あと慌てた様の表現だったら申し訳ありませんが、あいつは家に行ったらのところの1回でいいかもです。
「文マリにいこう!」
魔理沙、アンタすごいよ。まさか本命はそっちだったなんて。
それはともかく、いい変態っぷり。いい変態の連鎖!これで魔理沙が霊夢に変態性欲を持ったならば、それはやがてメビウスの輪を描くだろう。
魔理沙に更なる変態が集まり、その変態が変態を呼ぶならば、それは魔理沙を頂点とした生命の樹木。セフィロトの木となるだろう。
ルール違反だけど、『文マリにいこう』で笑いすぎて椅子ごと倒れたから20に伝えたい。
そ の 発 想 は な か っ た !
かな?まぁそれはともあれ、
霊夢、賽銭やるからそれをこっちにWA☆TA☆SE!
っ[五万]
そう、ガンダムでいえばだ。
アリスすげえ!
霊夢がが