Coolier - 新生・東方創想話

運命「紅い悪魔と七曜の魔法使い」

2009/05/03 09:38:52
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咲夜が倒れた
新種のウィルスらしい

夕方、紅茶が遅いので見に行ったら、高熱を出して倒れていたのでびっくりした
永琳に見せた所、最近幻想入りしてきたウィルスらしい
「まったく、ウィルス程度であんなになるなんて、人間はもろいわね。てっきり猛毒にやられたのかと思ったわ」
取り敢えず咲夜に紅茶をくませるわけにもいかないので、小悪魔の紅茶を貰いに来た
「今回のウィルスは感染力が高いそうよ。妖怪にも普通に感染するらしいわね。あなたは知らないけど」
「昨日咲夜に付きっきりだったけど、なんともないわ」
「羨ましいわね」
パチュリーはマスクをしていた
魔法使いにも感染するらしい
確かにパチュリーはただでさえでも喘息なのだ
この上病気にでもなれば…
「パチュリー様!マスクはちゃんと鼻までしてくださいって言ってるじゃないですか!!」
「いいのよ!鼻までしたら息が出来ないのよ!私は喘息患ってるのよ!?死なす気!?だいたい何で濡れてるのよこのマスク!重いのよ!」
「死なすって大袈裟な…。感染したらそれこそ死にますよ?それにマスクが濡れてるのは喉を乾燥させないためです」
「だったら紅茶を飲めばいいじゃない」
パチュリーのさも正論言ってるような顔を見て、小悪魔は頭を抱えてその場に座り込んでしまった
「何やっているの。はやく紅茶を入れなさい」
「ああ、私にもお願い」
小悪魔は溜息を一つおいて、渋々紅茶を汲みに行った
「で、貴方は紅茶を飲みに来ただけ?」
「折角だから何か読んで行こうかしらね」
パチュリーが積んでいた本の一つを手にとった
パチュリーの本にはヨーロッパ方面の言語が多い
彼女の生まれがヨーロッパ方面なのだから当然だ
私もそうだった
「折角だからここで読んで行こうかしらね、小悪魔に遠くまで一々紅茶を運ばせるのもあれだし」
「久しぶりね」
「何が?」
「レミィがここで本を読むの」
「そうだったかしらね…何年ぐらい前になるかしら」
「何十年も前よ」
「あの頃は咲夜も美鈴も小悪魔もいなかったわよね…」
「レミィと」
「パチェだけだった」
「まぁフランもいたのだけれど」
「懐かしいわね」
「ええ、本当に…」



『紅い悪魔と七曜の魔法使い』



「じゃあ、お母さんは街に買い物に行ってくるわ」
「また私はお留守番なの?」
「人間はとても怖いって言ってるじゃない。いくら吸血鬼でも、束になられたら勝てないわよ」
「でも、ひとりじゃつまらないわ」
「もう…」
紅魔館
ヨーロッパのどこかにひっそりと立つ吸血鬼の館
世界では魔法が衰退、科学が人類の進化をひく時代になっていった
魔法は便利だが、使用出来る者が限られる
使える者、使えない者によって格差社会が生まれるのを防ぐためだ
だが、現状では魔法の衰退によって魔法使い、魔族などの人外の類が圧倒的な格差を受けた
人は人の上に人を作らず――
どこの神の言葉だっただろうか
いや、これは神の言葉などではない
人が人の上に人を作る事を拒んだだけなのだ
人より力を持つものは人に滅ぼされる
人の批ではない程の力を持つ吸血鬼もそれは例外ではなかった

ある日の事だ
「じゃ、お母さんは買い物に行くわね」
「また私は置いてけぼりなの?」
「じゃあ、今日は途中まで連れていってあげるわ」
「本当に!?」

町は小高い山を一つ越えた所にある
その山頂でレミリア達は立ち止まった
「あれが人の町よ」
「広いのね。何人ぐらい住んでいるのかしら」
「さぁ、数千人はいるんじゃないかしら」
「ふーん…」
「レミリアちゃんとはここでお別れよ」
「え?もう?」
「そこ、レミリアちゃんから右。そこに木の開けている道があるでしょ?その先の小屋で待ってて欲しいの」
私はしばらく駄々をこねたが、渋々小屋へ向かった
意外と道は遠かったが、道は道で意外に広かったので迷うことはなかった

数分後、小屋を見つけ、入った
そして出会った
まるで寝巻のような服装で、紫色の長い髪
紫色の瞳
分厚い本を何冊も重ねて椅子にし、そしてその手には、自身とさして変わらぬ大きさの本
いや、手は添えているだけだろう
本は魔力によって浮き、少女はページをめくるだけだ
「貴方、ここに住んでいるの?」
「そうよ」
「ふぅん。私しばらくここに居させてもらうから。いいわよね」
「別に」
少女の瞳はひたすらに本を見続ける
表情はまさしく無表情といった所だった
はたしてこちらの話すら聞いているのだろうか?
「本、借りていい?」
「別に」
「何かおもしろい本とかない?」
「どんな本が好み?」
なるほど、こちらの話は聞いているのか
話が出来ない訳ではないようだ
「単純で面白い奴。物語とか」
「ドアから右に五つ目の棚、上から八段目、右から三冊目」
少女は本から目を離さない
つまりはこの蔵書を全て把握しているのか
だがここに住んでいるとあらば、覚えるかもしれない
つくづく本ばかりだ
三百六十度、見渡すかぎり本棚ばかりで壁は見えない
小さな小屋だが数百冊の本はあるだろうか
本棚は天井まで延び、入る限りの本が詰められている
床にも数冊本が散乱していた
本に囲まれる生活というのはこういう物なのだろう
言われた本を手にとった
いわゆる冒険ファンタジーだ
私は本をあまり読まないが、不思議と物語に引き込まれていった

「レミリアちゃん、帰るわよ~」
気付けばもうそんな時間だった
時間を忘れるような体験は久しぶりだ
そして帰る前に彼女に聞くことが二つある
「貴方、名前は?」
「パチュリー・ノーレッジ」
「そう、私はレミリア・スカーレット」
そしてもう一つ
「この本、借りていくわよ」
その時初めて、こちらを見たのだ
無表情だったが
「気に入ったの?」
「今日から私のお気に入りよ」
そして彼女は視線を本に戻した

それからしばらく、私はパチュリーの所に通った
通うたび、彼女の口数も増えて来た
当然だ。私達は既に親友なのだから
「ところで、パチェの家族は?いないの?」
「家出してきたの。本棚ごと」
「どうして?」
「今は魔法が差別を受けているでしょう?私の家族はそれを恐れ、魔法を捨てたのよ」
「で、貴方は逃げてきたのね」
「魔法が、私の全てだもの」

またある日の会話では
「よくこんなにたくさん本を持ってきたわね。どんな魔法を使ったのかしら」
「空間転移の魔法よ。とても時間がかかったわ」
「おかしな話ね。魔法は無から有を作り出す力なのに、有から有に変えることは出来ない」
「属性の違いよ。得意不得意と同じ」
「そういう貴方の得意魔法は?」
「七曜の魔術」
「魔法概念の基礎ね」
「効率的魔術よ。相手の弱点をついてこそ―」
「また始まった」
いずれ、パチュリーのほうから話すことも増えた
今のように長々と語ることも増えた
二人の距離は確実に近づいている
そんなある日―
レミリアが小屋に向かうと、すぐに異変に気付いた
山頂でチカチカと光が瞬いていた
そして嫌な予感は当たった
人間達がパチュリーの小屋に攻め入り、パチュリーはそれを一人で守り続けていたのだ
考えるよりも早く、体は動いた

「流石ね、あの数の人間をあっという間に…」
「あの小屋は人間には見つからないんじゃなかったの?」
ステルスというやつだったか、人間には見えないようになってたはず
「単なる目くらましよ。見つかればそれで終わり。どうやら私の親達が通報をいれたらしいわね」
「親が…!?」
「きっと恥さらしを野放しにするくらいならいっそ殺してしまうつもりだったのでしょうね」
「信じられないわ…実の娘を殺すなんて」
「やさしいのね。貴方」
「当たり前の考え方よ。まさか貴方、これからずっとあいつらと戦い続けるつもり?」
「そうなるわ」
「家に来なさい」
パチュリーは首を傾げた
「どういう事?」
「図書館をうちの地下に移すの。術の間、私が守ってあげる」
レミリアの妹、フランドールを閉じ込めているもう一つの地下室
「いいの?」
「私と貴方の仲じゃない」
レミリアは母の許可をとり、無事に図書館を移し終えた

そして…悲劇は起きた
人は彼女らを逃がさなかったのだ

「ごめんなさい。私が…」
「いいのよ。今は戦って。こうなることは私も分かってた」
突然大量の人間が攻めて来た
自分のせい、と自責するパチュリーを励まし、母が戦っている表に向かう

「パチュリーちゃん!魔法陣を完成させてほしいの!」
「!?」
幻想郷…私たちのような社会から弾き出された者を受け入れてくれる楽園
その移住準備の話だ
「はやく!」
パチュリーは小さく頷くと、地下へ急いだ
「お母様!今は人間達と戦うべきでは!?」
「私はパチュリーちゃんを彼らと戦わせられないわ」
「彼ら…」
響きわたる爆音
そのさきには
「魔法使い…!?」
「ご両親よ」
「そんな…」
魔法使いは言った
「私にも世間体というものがある。今人類に必要とされていない物にいつまでもうつつを抜かすようなやつを家族にはしておけんのだよ」
何が
何がっ!!
「何が世間体よ!地位だとか名誉だとか、そんなもののために、魔法使いの誇りを捨てるの!?」
「理解してくれとはいわん。受け入れてほしい」
「出来る訳無いでしょうが!!この魔法使い崩れが!!騙るな外道!!」
爪で薙ぐ
魔法の障壁で防がれ、布一枚程度のダメージしかない
「殺してやるっ……!あんた達が……あんた達の勝手で!!こんな」
「レミリア」
他ならぬ、母の声に遮られた
「お母様…」
「異なる存在が馴染めないのは仕方のないこと」
「だから!それが分かったから私が」
「貴方が戦うことなんてない」
「でも!私にも誇りがあるわ!」
「レミリアちゃん、戦う事が誇りじゃないわ。誇りは、護るものよ」
「じゃあ私は、誇りを護るための戦いを」
母は、ゆっくりと首を振った
「私の誇りは、レミリアちゃんなの」
その言葉が最後だった
直後に私は屋敷の中の壁にたたき付けられた
「お…か……様……」
ああ、お母様はいつもこうだ
普段すごく優しいのに、こんな時は本気の力で叱る
今みたいに壁にたたき付けられたこともあったし、片腕が吹き飛ばされたこともあった
ああ、どうしてこういうときに限ってこんなことしか思い出せない
どうして、お母様の優しい笑顔が思い出せない
「お母…様……」
嫌だ、思い出したくない。思い出してはいけない
今、遠くで傷つきながらこちらに向ける笑顔
重なってしまう
重なってはいけないのに
精一杯の力で踏み出す
母の元へ

「転送準備…終わったわ」

しかしそれはパチュリーに遮られる
それを聞いた最後に、母は顔を戻した
「ありがとう」
そう呟いた気がした
「お母様!!」
駆け寄ろうとする
だが、パチュリーがそれをさせない
「どきなさい!」
「嫌よ。貴方を殺させるわけにはいかない」
「私も、お母様を殺させるわけにはいかないのよ!」
「ごめんなさい…約束なの」
瞬間、レミリアの体が麻痺したかのように動かなくなった
「パ…チェ…」
魔女が踏み出す
館の外へ
「パチュリー!!」
魔女の両親は叫んだ
パチュリーは聞かない
強く、彼らを見つめて
いつも眠たげだった瞳は鋭く、力強く
変わってしまった世界に別れを告げる
「さようなら。誇りを捨てた薄汚い愚者。さようなら。守るべきものを守り抜いたを誇り高き吸血鬼!」
地面に広がる魔法陣に手を付け、
「私は貴方達を」
力の限り叫んだ


「一生忘れない!!」


光が満ちて行く
少女らを包む
誇り高き吸血鬼は、最後までそれを見送り…
「お母様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
彼女の誇りの、悲痛な叫びが響き渡った




「貴方のお母さんと約束したのよ。幻想郷へ渡る為に必要な魔力は貴方のお母さんじゃ足りなかった。そこに、私が図書館で出会ったから…」
「…………」
「迷惑はかけるとは言ったけど、貴方を守るためになら戦えるって…」
「…………」
「ごめんなさい。謝って済まないことだけど」
「…………パチェは悪くないわよ」
「…ありがとう。でも、ごめんなさい」
「寝るわ」
「…そう」
「パチェ」
「何かしら」
「本…読んでくれないかしら」
「……ええ。」

「「私の(貴方の)お気に入りを」」







それから何十年も後……








「そろそろ、咲夜の様子を見に行ってみるわ」
言って、レミリアが席を立った
「いってらっしゃい」
部屋に出る手前、レミリアが言った
「この本、借りていくわよ」
パチュリーは笑って返した
「気に入ったの?」

「今日から私のお気に入りよ」
慣れないシリアスな話を書いてみた
レミリアとパチュリーの出会いの話ってなんか少ないよね!
って訳で書いてみた
シリアスなのに短っ
もうちょい中身のある文章が書きたいかなぁ・・・今後の課題か

実はコレ、シリーズになります。三部作+もしかしたらオマケが一つつくかも
まあ、続きは近いうちに

批判・意見無しでは作者は生きていけません(ウソかも
今回慣れない事したからツッコミ所満載だと思うんで、遠慮なくどうぞ~

フランについて
ぶっちゃけると二話の途中まで忘れていたんですよね
一話で名前は出してたのに
この際、フランは出しません。無理に出すと書きたいことがグダグダになるんで
最後にちょっと見せ場でも作ってあげようかな
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
拍手返信
有名人が読んでくれている・・・だと・・・?

GUNモドキ氏
陳腐な響きなのは確かですね
記述はしていませんが"魔族"というのは、魔法等、人間が信仰するようになった
科学の力に反する力を持つ者達への、人間の中での共通認識で括った言葉といいますか
悪い意味でのあだ名というわけではないんですがね
そんなイメージで使っています

煉獄氏
誤字多っ!
淡白なのは承知
もう少し掘り下げてじっくり書きたい所ですが
それはそれで難しいもんで
まあ作者の技術不足です。すいません
過剰睡眠摂取症候群
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コメント



0.590簡易評価
2.70GUNモドキ削除
フランドール完全に空気ですねぇ。
魔族とか言われると何か嫌ですね。
生理的嫌悪感、とまでは行きませんが、陳腐な響きに聞こえてしょうがない今日この頃。
昔はこうじゃなかったんですが、最近の小説考察やSS推考サイトに行くと結構そう言うのに影響されてしまいますね。
いやはや、数の力とメディアの力は恐ろしい、そりゃあ妖怪達も幻想郷に行きたくもなりますねぇ。
4.80煉獄削除
レミリアとパチュリーの出会いから幻想郷へと渡る時のことになった
出来事など少し淡白な感じもしましたが面白いと思いました。
フランが出てこないのは二人が主だったからでしょうか?
パチュリーの二者へ向けられた言葉が良いですね。

誤字の報告
>人が人の上に人をを作る事を
『を』が重複してますよ。
>私はしばらくただをこねたが
『駄々』ではないでしょうか?
>「内に来なさい」
『うち、もしくは家』だと思います。
13.100名前が無い程度の能力削除
いい話だぁ