このお話は続きものだよ!
いきなり展開過ぎて訳が分からないと思うので上から呼んできて下さい~。
ついでに前回と同じ量だと思っていると半端なく痛い目見ます。
時間に余裕を持って下さい。それでは
以下本編
7章の前
「さぁて紫?教えてもらうわよ?何がしたかったの…」
霊夢は振り返り、問い詰めるべき相手を見る。
表向きは強気な態度で紫を問い詰める姿勢を見せるが、心に一点の不信感があった。
何故大人しく帰したのか
誰を、とは言わずもがな、あの宇佐見蓮子という外の人間だ。
八雲紫は目的なくこんな境界に良くない行為をする奴ではない。
ならば当然目的があったのだろう。
だが、見ていた限り紫は蓮子に何かしたとは思えない。
反感を買いたかったなら大成功だろうがそうでないのは馬鹿でも分かる。
なのにどうして何も為す事無く大人しく彼女を帰したのか。
分からない、理解出来なかった。
「…紫?」
紫は、俯いていた。
辛そうに、悲しそうに、ただ俯いていた。
「ちょっと?どうかしたの?」
「いえ…何でもないわ霊夢。みっちり絞られる前に帰ろうかしらね…」
「あっ…ちょ…」
霊夢のその静止の声がまるで聞こえていないかのように、紫はスキマに消えていった。
何も知らないフリをする月は歪な形のまま、ゆっくりと登っていった。
7
「メ…リー…?」
消えた、突然何の前触れももなく消滅してしまった友人の名を呼ぶ。
文字通り何も無い部屋ですら、その声ほど悲しさを響かせはしない。
私の――宇佐見蓮子の目の前で、マエリベリー・ハーンは消えた。
非現実過ぎる、そう頭の中では常識が声を上げる。
ならこれは何だというのだ。
常識は黙りこくる。
そう、非常識だ。そんな事は分かっている。
自分自身が学習している事が超統一物理学だ。現実、というものに関して言えばかなり真実に近い位置にある学問だ。
そして自分は悪いが教授なんかが言っている事では退屈ですらない程度の事は知っている。
(だから教授からの評価と試験の点数が反比例するのだが)
だから、知っているのだ。現実を。
いや、知っていると思い込んでいた。現実を。
目の前で起こっている事は現実だ。
逃れようのない、紛れもない現実。
現実は動かせない。目の前にある者がリンゴであるのにみかんだと言えばそれはみかんになるのか?
なる訳がないだろう。
現実は現実。それ以上にもそれ以下にもなりえない。
なら。なら、どうする?
そんな所まで良く思考が保ったものだ。
そこまで考えた所で思考は止まり、私は大声をあげて泣き続けた。
「メリー!メリー!メリ――――!!!」
ただただ愛しい友人の名前だけを繰り返して。
8
私に勇気をくれた大切な蓮子へ
ねえ蓮子、私達、一杯冒険したよね。
時には京都から周りの府県に、ちょっと前にはヒロシゲで東京まで行ったもんね。
その時その時で気紛れに境界越えたり境界越えたり境界越えたりってね(笑)
その更に前にさ、蓮子は「夢と現は違う物」って言ってたよね。
あの時はさ、実はさっぱり意味分かんなかったんだよね。
現に私は夢で見たものを持っているじゃない!ってね。
あ、何か文末に「ね」が重なってるわね。ほらまた(笑)
何か話そらしちゃってるね私。
とても話しにくい事なんだ。
当時理解出来なかったけどある事がきっかけで理解できる事ってあるのよね。
蓮子の言ってた事をこの前やっと理解したの。
夢で、私が消えたわ。理由も何も分からないけど、いきなりね。
目の前には貴女がいた。蓮子が。凄い驚いた顔をしてたのよ?カメラで撮れば良かったくらい。
夢で撮っても持って帰れるかもしれないでしょ?そしたら私は貴女の身に覚えのない写真を持っているってことよねうふふ。
でね、その次の日から、体がすごく重たかったの。
最初は風邪でも引いたかなって思ってたんだけど、段々違和感が出てきたわ。
時折私の体が透けてしまうの。
数分で戻るようなものだったんだけど、ぞっとしたわ。
だって自分の体の向こうに景色が見えるんだもの。
それで、何とかしたくて調べたわ。そしたら分かったの。
蓮子は知ってるわよね?“ドッペルゲンガー”って。
そっくりな二人が出会ってしまうと、死んでしまうってやつ。
あの夢を見るちょっと前の日に、私は会ったの。
私とそっくりな人に。
だから思ったわ。あの夢は私の死を伝えているんだと。
この前は怒らせちゃってごめんね。
蓮子は優しいから、心配しちゃうと思ったの。
夢で見てしまった以上、それは現実。
同じものである以上、起こってしまう事は変えられないと思ったわ。
もちろん、ただの夢でした―ってなったら話すつもりだったけどね。
それじゃあ蓮子、貴女がこれ読んでるとしたら私は死んじゃったんだと思うわ。
ありがとう、それからさよなら。
貴女に聞かれた事、ホントは直接話したかったかな。
貴女の最愛の友人であり続けたいと願います。
マエリベリー・ハーンこと、メリー
P.S
貴女に貰った勇気は私の
メリーが残した紙袋の中に、一枚の手紙が入っていた。
しかし、私が来る直前に書いていたのか、最後が欠けている。
「“あり続けたいと願う”ですって…?」
床が濡れた。
ポタリ、ポタリと滴が濡らす。
「ふざけないで…私は貴女に想いを伝えてないのよ…?」
腕は震え、手紙をぎゅっと抱きしめた。
私の所為だ。
夢と現は別だ、等とメリーに言わなければ彼女はいつものように「こんな夢を見たの」と話してくれたかもしれない。
夢と現との関連性を私が話してしまったから、メリーは私に話せなかった。
それなのにメリーは願ってくれている。
親友でいたいと願ってくれている。
「メリー…」
マエリベリー・ハーンの想いは、自分に伝わった。
これでもかと言う位、伝わった。
なら、どうする?
先程の問いが再び立ちはだかった。
でも、今度は違う。
蓮子の側にも、答えがある。
「メリーは一つだけ勘違いをしたわ…」
手紙を読んで、確信した事がある。
ドッペルゲンガー、と言った。当然知っている。そして相手はおそらくあの紫とかいう胡散臭い奴だろう。そうでないならこの繋がりは理解出来ない。偶然というのは出来過ぎていないものだ。
ドッペルゲンガー関連の逸話は多い。
しかし、それらとこれとは決定的な違いがある。
それが、メリーの誤解。
メリーは死んだ、いや違う。死んだ、かもしれない。
彼女は消えた。
しかし過去のドッペルゲンガーの逸話は死体が出ているのだ。それに出会ったら大抵その場で死んでいる。
それが、決定的な違い。
「悪いけどね…メリー。私達は秘封倶楽部よ。私達で秘封倶楽部なの」
震えていた腕を無理やりに抑えつけ、蓮子は言う。
「私の夢は何?決まってる!!」
夢と現は違う物。だから人は夢に向かって行けるのだ。
「メリーと一緒に過ごす未来よ!!現実だろうが運命だろうがそんなものに誰が私の最愛の友人を奪わせるものですか!!」
先程とは違う、弱さをかなぐり捨てた声。
「こんな摩訶不思議な現象よ?秘封倶楽部を相手にして不思議なままでいられると思って?」
まだ重みを持っていた紙袋をバッグに大切にしまい、蓮子はその家をあとにした。
9
霊夢はマヨヒガに向かっていた。
外の人間、宇佐見蓮子との騒動のあった翌日である。
太陽は真上に差し掛かっている時間帯で、きっとこれから会う妖怪は寝ている時間だ。
まぁ、あれは昼でも夜でも寝ている事が多いが。
昨日の様子は異常だった。
いくら自分が博麗の巫女、即ち中立であり誰かに加担する事のないものだとしても、普段の八雲紫という存在を知っていれば、否応なしにこうせざるを得ない。
あれでは異変ではないか。
全く、と呟いてはと顔を上げれば見覚えのある景色。
春雪異変の時だったか、その時に初めて来た、あのマヨヒガに着いていた。
「何も考えちゃいなかったのに…勘って怖いわね」
怖いのは勘ではなく霊夢そのものであるが本人には勘が怖いようだ。
「誰でも良いっちゃ良いんだけど…居るかしら」
「こらっ入るな!!」
橙登場。
「訂正。誰でも良くは無いわ。話さえ通じれば誰でも良いんだけど」
「無視するな―!これでも…」
と涙ぐましくも橙がスペルカードを放とうとした瞬間、
「黙らっしゃい!!!」
霊夢の玉串の一撃を浴び、橙は昏倒した。
「…ったく…ちょっと藍ー?紫ー?…ってどっちかくらいしかまともに居ないのね…」
「ああ、誰かと思えばお目出度い霊夢じゃないか」
「いつの話だいつの。紫居る?」
出て来たのは藍だった。
紫の式にしておそらくは最強の妖獣だろう。妖獣同士の戦いなど見た事は無いが。
「紫様か?今は休んでおられるが…昨日から様子がおかしかったのでな」
やっぱりだ。様子がおかしかったのは私をからかう為の演技という訳ではないようだ。
「そ。起こしてきて頂戴」
「勘弁してくれ…」
そう言いながらも勝てない相手に仕方なく従い紫の居る方へ向かって行った藍はそれとなく哀れに見えた。
「紫さm…」
バキャ、という嫌な音がして藍の悲痛な叫びが霊夢まで届いた。
数分後
「駄目だ。紫様は起きない」
「あんた…平気?」
思わず霊夢が心配してしまうほどに酷い目に会って帰ってきた藍は、それでも主が起きないという。
「スペル6つもぶつけたんだが…」
ほんまかい。
主なのかなんなのかいまいち分からない主従だ。
「そう…」
無理やりにでも起こすつもりでいたがこれじゃ埒が明かない。
夢想封印をぶつけても起きないんじゃないだろうか。
そんな事を考えつつこの後の行動を考える。
どの道この様子では藍に紫の異変の原因は分からないだろう。
「とりあえず起きたら呼んで頂戴。夜になっても起きなかったら私が無理やり起こすわ」
「あ、ああ。分かった」
霊夢はマヨヒガを後にし、神社へと戻った。
しかし、自分の勘には逆らえない。
とても、強い違和感が昨日から自分を支配していた。
「癪だわ…紫の所為よ、紫の。起きたらただじゃおかないわ」
と本人がもうしばらく眠って痛くなるようなセリフを吐き、大結界へと向かう。
「結界に異変は無い、と…蓮子を送ってからちゃんと調整したから当然なんだけどさ…」
誰に言うでもなく言ったその言葉にまさか返事が来るとは思わなかった。
「おーい霊夢!まだ此処にいたのか?」
魔理沙の聞き慣れた声だった。
「あら、まだって何よ」
「いや、今日も此処で宴会だって言ってないけど決まってるだろ?掃除してなかったから良いのか?って思ってな」
「帰れ」
その時霊夢は突然感じた。
結界の向こう側に、誰かがいる気配を。
10
「おい宇佐見蓮子!!宇佐見蓮子はいないのか?」
「教授ー蓮子ちゃんから手紙預かってまーす」
「何だと?」
拝啓素敵な教授さん
私聡明な宇佐見蓮子は友人を捜す壮大な冒険の旅に出る所存でございます。
つきましては、私の処置は適当にお任せしますんで、勝手につまんない講義をしていてください。
つまるところこれから当分抗議に私はいません!(☆
五月蠅く「宇佐見蓮子はいないのか?」とか言わないように!
それじゃば~い
教授よりは賢い自信のある宇佐見蓮子
+私の親友、マエリベリー・ハーン
「…………」
教授、沈黙。沈没。
結局その講義の時間は教授による愚痴で終わるのだが、最後が友人の為に頑張る蓮子は素晴らしいとかいう結論で終わった事に同級生一同が唖然としていた。
友人のメールによってこの事実を知った蓮子は教授を少し見直したと言うがこれはまた別の話。
「さぁて、メリー!見てなさいよ…貴女をこのまま終わらせはしないわ!」
そう強く叫んだ蓮子は、実は学校の敷地内に居た。
そう、あの裏庭である。
此処から私は幻想郷に入り込んだ。
幻想郷にはあの紫という女がいる。
ならば、もう一度幻想郷に行って何か手掛かりを掴みたかった。
意気込みがあった所で当てがないのでは虚しすぎる。
しかし、裏庭には何も無かった。
「…誰か来なさいよね…教授辺りに見つかったらどうなる事か…」
刹那、景色が歪んだ。
「え?」
しかし、一瞬で元通りの景色が視界を埋め尽くす。
気のせいか?
それとも何かあるのか?
まるで景色の暗転。
それは今までにも何度か経験してきたものだった。
そう、境界を超える時の景色。
しかし、今は境界を超えた訳ではない。
周りは変わらないし、学校もそのままの位置にある。
なら?
境界が絡んでいるのか?
思考回路は限界に近かった。
物理学では到底説明のつかない事象が昨日から立て続けに起こっているのだ。
それも、メリーが消えたという心的なショックも大きい中で。
蓮子は自分では気付いてはいなかったが、かなり疲弊していた。
「くそぅ…最初っから詰まるなんてなぁ…」
幻想郷に入ってからの動きは色々と検討したが、入る方法は流石に見当もつかない。
見当もつかない?
いや、待て。
一つだけあるじゃないか。
博麗
確か霊夢さんは博麗霊夢と名乗った。
なら、もしかしてあの神社は博麗神社なんじゃないか?
博麗神社なら知っている。
名前だけじゃない。場所も、今は誰も住んじゃいない事も。
当然だ。メリーと一緒に行った事もあったのだから。
知っていて当然だ。
私もそこで生まれたのだから。
私には霊感が無い訳ではなかったが特別強い訳でもなかった。
博麗神社の後継ぎとして生まれた筈の私は博麗神社から捨てられた。
神様の声なんて私には聞こえなかったから。
親や周囲の人間はまるで聞こえてもいないものを聞こえたと言わせたいようで。
幼い私はそんな事で嘘をつけなくて、役立たずとして捨てられた。
秘封倶楽部を始めたのは、それが一つの理由だった。
霊感が強い訳ではない私は、霊感が強かったなら見る事の出来た、到達できたであろう世界にずっと憧れていた。
だから、メリーを見た時に雷が落ちたように感じた。
私の目から見ても彼女に絶大な霊感がある事は分かった。
それがきっかけで彼女に声をかけた。彼女も私の霊感に気付いていて、互いに異能の者としてあまり良い思いをしてこなかったからだろうか、私達はすぐに打ち解けて仲良くなれた。
それで、最初は単なるオカルトサークルとして秘封倶楽部を立ち上げた。
心霊写真の分析などを中心に活動をした。
互いに協力したり一緒に過ごしている事で私の霊感はメリーに影響されるように大きくなり、
ある時にメリーは私に話した。
「ねえ蓮子。今まで黙ってたんだけど、さ。別世界って信じる?」
「別世界?信じ…てるのかしら。あるとは思うわ。どうして?」
こんな会話から始まった。
それが私達のこれからを左右する、どころかここまで大きくなるとは思ってはいなかった。
「私の能力は分かるでしょ?万物の境界。それは世界にも存在するの。それでね、この写真。ここに境界があるのよ」
「紙と空気の境界?」
「馬鹿。世界と世界の境界。つまりこの境界の奥には私達の想像もつかないような異世界が眠ってるのよ!!!」
メリーはとても嬉しそうだった。
「どうして“今まで黙ってた”の?」
「蓮子の霊感が変動してたからよ。霊感の増幅なんて自然現象じゃないからね、もしもそれが世界の境界を超えた時に干渉しちゃった場合にどうなるか分かんなかったから」
「つまり私の霊感が安定したと」
「大☆正☆解!」
この日から、秘封倶楽部は「オカルトサークル」から「不良サークル」になったのだ。
ぱんぱかぱーん。
うーん、何だか思考が逸れたわね。
でもこれでアテが出来たわ。博麗神社に行ってみよう。
私を捨ててから僅か一年で廃神社になってしまった私の母屋。
きっとそこに手掛かりがある筈だ。
11
「情けなー…自分の生まれた場所に戻ろうとしてるだけなのにすんごく疲れた…メリーと来た時は全然感じなかったのに…。私まだ引きずってんのかしら」
捨てられた、というのはどう見ても素敵な輝かしい思いでとは言えない。
その場所に戻る事もまた精神に優しい行為とは言えないだろう。
でも平気だと思った。
メリーと来た時には全く感じなかったから。
平気だと思ったのに。
一人だと余裕ぶる余裕すらなくなっていた。
「全く…大学生の女の子が一人で山登って汗だくだなんて…」
仕方ないっちゃ仕方ないのだが愚痴は出る。それも仕方ない。
結局メリーと来た時は1時間で足りた道のりを4時間もかけて歩いた。
「見てなさいよ…すぐにメリーに…」
視界が揺れた。
今度は境界なんて関係ない、完全な疲労によって。
「う…」
どっと疲れが押し寄せて、神社の鳥居を背もたれ代わりにしゃがみ込む。
「はぁ…」
今は少し休もう。少し休んで、その後行動を考えよう。
「じゃなきゃ…もたない…わ」
ゆっくりと蓮子の意識は闇に飲まれていった。
瞼が重い。
どれ位経っただろうか。
ぼぅっと意識が戻ってくる。
「煩い…」
周りはまるで祭りでもしているかのようにとてもうるさかった。
「ちょっと?生きてる?蓮子?」
誰だ?私を呼んだのは…紫の服…メリー…?
「ちょっと紫!!あんたいつの間に起きてたのよ?」
「今」
私に声をかけていたのは紫だった。
霊夢さんの大声で私の意識ははっきりと戻ってきた。
「しかも蓮子じゃない!紫あんたまた何かしたの?」
「今回はしてないわよ。この子が自分で外の博麗神社まで来て境界を超えたのね」
「だから神社に居るって訳か。ほら起きなさいって。何しに来たか知らないけど幻想郷に来たかったんでしょ?到着してるわよ?」
幻想郷。
そうだ、私はメリーを探しにここに来て、
「……なんで大宴会してるんです?」
「私が聞きたいくらいよ…冥界の屋敷の方が広いじゃない…」
会った事のない人(というか多分妖怪なんだろうなぁ)が大勢集まって悪夢のようなお祭り騒ぎが繰り広げられていた。
食えや飲めやの大宴会。
「お!ウサギ蓮子じゃないか」
「宇佐見だって言ったじゃない!」
その惨状に目を泳がせていた私に魔理沙さんが声をかける。
「魔理沙さんも宴会?」
「いつも通りな。あと“さん”なんて付けないでくれ…慣れてない事はされるもんじゃないぜ~」
「私も霊夢でお願い。さん付けなんてするような面子じゃないからねぇ」
二人ともいい感じに酔っているようで、魔理沙の方はもう顔が赤い。
霊夢は酒に強いのか、顔は赤いものの言葉自体ははっきりしている。
「で?何しに来たのよ…あんまりしょっちゅう境界越えられちゃうと流石に良くないんだけど」
「ごめん…でもメリーが…」
「?」
私は話した。あの後の事を。
メリーの所へ向かうと、メリーが消えた事。
紫が何か知っていると思い此処に来ようと博麗神社まで来た事を。
「うふふ、蓮子?私が何を知っていると?」
「全てよ。これから白状させるから」
不敵に笑う紫を睨みつける。しかし紫は笑みを崩さない。
「普通の人間である貴女が私に“させる”?ふふふ、応援してるわよ?」
「私からも頼んじゃおうかしら?紫?」
「え?」
霊夢だった。霊夢が紫に玉串を突き付け、札を持ち、そう言い放った。
「今日さぁ、昨日あんたの様子がおかしかったのを不審に思ってあんたの家に行っても起きやしないし、その癖神社汚しに宴会だけは起きてきやがるし蓮子が聞きたい事は私が聞きたい事とも繋がってそうだからいっそのことまとめて話してもらえたりすると嬉しいんだけど?」
立て板に水、まくし立てるように霊夢は綴り、紫に「ね?」と笑いかける。
当の紫はまさかの伏兵に真っ青だ。
「あ、いや霊夢、その~」
「問答無用。話せ。じゃないと…」
「その先は聞きたくないけど…」
「夢想封印!!!!!」
爆音。
大宴会に仕込まれていた火薬のように私には理解出来ない“何か”が破裂し、紫を吹き飛ばした。
「ちょっと…死んだんじゃ?」
流石に心配になる。
「なぁに言ってんだ。あれで死ぬようなら10000回は死んでるぜ。ところで蓮子」
「へ?」
「お前外の世界から来たってホントか?」
何を言い出すんだろうか。
私、魔理沙に話したっけ?
「ああいや、霊夢に聞いたんだが…それでだ、外の世界の物何か持ってないか?」
その先は言わなくても分かる。
是が非でも欲しいという目をしていた。
「あ…ああ、うん。何かしらあるけど…欲しい?」
「くれるのか!?」
そんだけ欲しそうな眼をされたらあげざるを得ないだろう…。
「じゃぁ…ん、これはどう?」
そう言って私が渡したのは、板チョコだった。
「何だ?」
「チョコレートってお菓子よ。食べてみなさい?」
魔理沙は恐る恐るそれを口に含んだ。
そんなに恐がらなくても…あんたみたいにスパイスの塊なんて渡さないから。
「甘い!!」
「ちょっと!私にも一口!」
霊夢も便乗し、…あれ?紫はどうなった?
……無惨
その言葉がこの上なく当てはまる惨状だった。
ずたっぼろにされた紫が転がされ、口から煙を吐いていた。
「ひ…酷いわ…霊夢…」
「で、蓮子?貴女の友人が消えたって話だったかしら?それを紫が何か知ってるのね?」
傷がある程度癒えた紫を前に、霊夢が切り出す。
流石に妖怪は回復が早い。早すぎる。
「ゆかりん全身が痛くてたまらないわ…」
「これがメリーが残した手紙なんだけどね、ドッペルゲンガーだと思ってるみたいなの」
「ゆかりんは泣いてるわよ!!」
「成程ね、ドッペルゲンガーか。でもあれは消滅ってよりは死ぬってニュアンスなイメージがあるけど…」
「ゆかりんも死ぬかと思ったわ!!どうしてくれるの霊夢!」
「問題はそこなのよ。私の見立てではドッペルゲンガーではないわ。そうではない何かを勘違いしたか、…分かんないけど」
「ゆかりんも分かんないわ!どうして私がこんなに酷い目にあわされないといけないの!?」
「ねぇ紫。あんた死にたい?ガチで」
「ごめん…」
宴会の隅で真面目な顔をして(るのは私だけかもしれない)話している集団はかなり異様だったが本人たちには異様さは当然分からず、周りは酔えるだけ酔っていて誰も不自然さに突っ込みすらしなかった。
話の途中、霊夢は自分が何故この話にここまで首を突っ込んでいるのかが分からなくなって、
「ねぇ…そろそろ私関係ない?」
と聞いたものの、
「お願い…協力して欲しいの!」
という蓮子の必死さに負け、協力を余儀なくされた。
「うーん…紫の様子がおかしいと思ってたらいつも以上にうざい事するだけだし…ちょっと首突っ込みすぎたわ…」
因みに魔理沙は、
「こんな楽しそうなこと放っておけるか。チョコレート代位は働いてやるぜ」
と笑った。
ちなみにチョコレートは88円の安売りしていたやつである。
偽っておかないと適当な処で逃げられちゃうかな。
12
マエリベリー・ハーンはそこに居た。
ずっと一人ぼっちだったマエリベリー・ハーンには初めて心を許せる友が出来て。
あの日、日本に来ることが決まってからずっと抱えていた不安が霧消した。
「ねぇハーンさん。私宇佐見蓮子よ。よろしくね」
だから、ずっと一緒に居たかった。
なのに、どうして?
特別な幸せが欲しかったわけじゃない。
人並みの幸せを感じたかっただけだ。
その幸せを共有出来る人に出会えたのに。
私にとって別れは必然となり、全てが崩れ去った気もした。
でも、最後に会えて良かったと、心から思った。
13
「ねぇ魔理沙、さっきの甘いチョコレートってやつは?」
「あとは私のだ!とっとくんだよ!」
そんな下らない言い争い。
そんな光景を軽くスル―しつつ、蓮子は考えていた。
どうすればいい?
ドッペルゲンガーではないとして、ならば原因は何か。
これがはっきりしないと手の打ちようがないのは事実だ。
でもそんな事で諦めるようなら初めから幻想郷に来てまで解決しようとなんてしない。
それが分かっていても何とかしたい、だから何とかしようと足掻くんだ。
大学ノートは殆ど難解な理論で埋まり、解決への糸口を探す様子が見て取れる。
しかし、糸口は見えない。
そもそも物理的な問題ではないのだから。
「蓮子?貴女は自分が何をしようとしているか分かっているのですか?」
不意に、そんな声が聞こえた。
八雲紫の声。
先程までのぼろぼろでふざけた様な表情は何処へやら、真剣な面持ちで蓮子を見つめていた。
「何、って簡単な話よ。親友を取り戻そうとしている、それだけよ」
「いいえ、違うわ」
即座に発せられる否定。
「じゃあ何だってのよ」
「貴女は消えたものを蘇らせようとしているの。何を意味するか、大体分かるでしょう?」
「何よ、世界のルールをぶち破ろうとしてるって話?」
死んだものは戻らない。
同様に、消えた者は戻らない。
論理や心理などの域ではない。
厳然たる現実だ。
「世界のルールよ?貴女達が挑もうとしているのは何らかの意思じゃない。世界そのものなのよ?」
紫は、それを恐れていた。
だから、蓮子を此処に連れて来たのだ。
知らない所でメリーが消え、手紙には死んでしまう、と書かれている。
こうなれば死を疑う事もないだろう。
そうなればこんな無茶をしなかった筈だ。
だが、蓮子はあの時心の底から必死にメリーに会おうとしていて。
紫はそれを止める、もとい阻む権利は無いと判断した。
だから、仕方なくだが大人しく帰したのだ。
しかし、いまこうして危惧したとおり彼女は世界を破ろうとしている。
消え去る者を戻そうとしている。
だから、これは止めなくてはならない。
世界のバランスを担う柱の一つとして。
外で大きな異変になってしまえば当然幻想郷にも影響は小さくないのだから。
「今すぐに止めて、諦めなさい。悔しいでしょうけど、それが最善の道なのよ」
あまりに残酷な事を、告げる。
本当は言いたい事なんかではない。
しかし、言わねばならないのだ。
蓮子は俯いていた。
きっと分かってはいたのだろう。やろうとしている事がどういう意味を持つのか―――
「ふざけないで」
――――え?
「それを貴女が言う?幻想郷を創ったのは貴女でしょう?」
そこを突かれるとは意外だった。
「霊夢に聞いたのかしら?」
「んなこと聞かないわ。考えれば見当は付く。境界を操る力。この類の力でないと世界の隔離は不可能。そして消え去る者が、幻想がここに入り込むという事はただの境界じゃない、意味を持つ境界。ここまでくれば余程の大きさの力の持ち主しかあり得ないわ。私が境界を越えたって話を霊夢にした時霊夢は真っ先に貴女の名前を出した。つまりそれほど大きな境界の類の力を持ってるのは貴女だけって訳。で、話を戻すけど、世界に反するですって?それをどうして私が貴女に言われなきゃならないの?幻想郷を創った貴女がそれを言う?」
「私の境界は消えたものではなく消え逝きそうになる者を…」
「だったらメリーも一緒よ!!!!メリーはまだ消えてないわ!!消え去るというのは存在が認められなくなること!なら私は信じ続けるから!メリーの存在を!!私がいる限りメリーは消えない!!!」
そこまでを一気に言い切り、すううう、と大きく息を吸う。
何か言うのかと思えば何も言わずただぶはああああ、と息を吐き出す様を見ながら紫は唖然とし続けていた。
こんな人間、私は知らない。
傲慢で、愚かで、救いようのない哀れな存在。
これが普通の人間というものの総評だ。
霊夢や魔理沙など、規定がある以上例外もまた存在するが普通は。
だが、この人間は何だ。
霊夢達とも一線を画した存在。
世界の理、即ち真実を理解しながら、限りない可能性を理論の下で引っ張り出す。
今だってそうだ。
おそらく人間が聞けば単なる言葉遊びのように捉えられてもおかしくはないだろう。
しかし妖怪は元来精神に左右される生命だ。
そして世界は事実上物理的にではなく精神的、つまり形にならぬもので構成されている。
蓮子の理論は、妖怪の賢者という視点から言えば、一つの“正論”なのだ。
「…ふぅ。仕方ないわね」
紫の溜息。
心底呆れた風に見えるのに、口元はどこか笑っているようにも見えた。
世界のバランス、か。まぁ異質な現象が起こっている以上バランスはおかしくなってるんでしょうし。
そんな半ば諦めの笑顔。
それが、メリーにとても似ていた。
「私も協力してあげるわ。………ま、実際無関係ってわけじゃないからね」
「それについても問いただして構わないかしら?」
「今は勘弁…霊夢にいじめられて疲れたのよ」
この協力が、世界を打ち破る一つの道になる。
蓮子は思った。
絶対に、諦めない。
EX2
今進んでいる道が間違っていたり、途切れていたりして、進めなくなった時、貴女はどうするの?
進めない、これが覆しようのない事実だった時、つまり“意地でも通る”以外の方法で、という事だけれども。
貴女はどうする?
まず先に進めない事を認知する。
此処までは一緒ね。私と。
じゃあ次は?
もと来た道を引き返す。
そうよね、未知が途切れてしまったんだから、戻るしか無い。
なんて、言うと思った?
どうして道は一本だと決まっているの?
生きる事とは大海原を進む事よ。
初めから道なんてないの。
あてのない旅に、渦潮があるからって元通りに戻る訳ない。
障害があって進みようがないなら、全く違う方向へ行けばいいじゃない。
もと来た道は見てきたものばかりだけど、全く違う所には全く新しいものがあるのだから。
大事な友人を失った。
これは良いわ。分かった。
なら諦めて指定されたとおりの道を進むの?
お断りよ。
ここは大海原だもの。
世界に反する道くらい用意しておきなさい。
用意してない準備の悪い世界なら喜んで反逆してやるわ。
「道」は「未知」に通ずる。
知られてないから道なのに、どうして決まったように話す?
未知だもの。既知にするのは私次第だわ。
私の道は、私が決める。
世界なんかに、邪魔させるものですか。
下も楽しみに待ってますので頑張って下さいノシ
ふぶき 様>
ゆかりんは真面目な時と馬鹿げた時とを上手く使い分けられる子供みたいな大人。
そんなイメージです。
下の方もお願いしますね!