(これより前の部分は、すでに失われて久しい……と、彼女は言った)
六幕目
紅魔城天守の場
・チヨボ
浦島遊んだ竜宮に、寅吉迷うた天狗の国。
本朝に仙境は数あれど、とりわけ暢気は幻想郷。
そを惑わせし不埒の紅霧、いざ我が手で絶やさんと、紅白まとった揚羽蝶、博麗のかんなぎ夜を飛ぶ。
急ぎの足は韋駄天の、天祐ありて城の奥、王手飛車角最後の詰めに、待ツたをかける無粋の追手。
咲夜、下手より出やる。
咲夜 アアコリヤコリヤ、鬼よりも恐ろしきは姫様(ひいさま)の御勘気。
南無参、せめては矢の一本でもへし折って、忠義の奉公。
(ト小柄構へ)
霊夢 エエ猪口才な。女中ならば味噌の壱合、塵紙を壱帳、求めに出るがせいぜい奉公。
(ト幣帛構へ)
舞台いツぱいの立ち回り。
霊夢、相手を組み伏せ見得。
咲夜、上手に引ツ込み、チヨンチヨンにて返し。
霊夢 枯尾花かまことの魔物か、サア正念場。正体見せよや小童め。
ドロドロ鳴る。
黎魅、花道スツポンより出やる。
黎魅 テモ頼みとならぬは人の身ぢやわいな。
霊夢 ハテ先の女中、人であツたか。
・チヨボ
墨を流せる天穹に、星は見えねどぽツかりと、鮮やか浮かぶは血染めの月。
薔薇も椿も下にィ下にィ、地べたで生きる一切へ、まことの紅さを教えおく、天文中の天文を、隠す不遜の蝙蝠の、翼広げて呵呵大笑。
これぞ南蛮百鬼の親玉、通り名をば深紅の黎魅、牙を光らせいよいよお出ましィ。
黎魅 アア情けなや、おことは殺生戒を破りしぞ。
霊夢 イヤせいぜいひとり、勘定の内にはあらず。
黎魅 オオ。
(ト思入れ)
霊夢 サテ聞かつしやれ。そこもとの、いけシヤアシヤアの暮らしぶり、我ら一同はなはだ迷惑。
黎魅 短気は損気の古言もあろうに、剣呑剣呑。訳も知らずに何をおつしやる。
霊夢 エエ問答無用。罷れい罷れい。
黎魅 ここは我が城、我が住処。罷るべきは、おことならんや。
霊夢 うつし世より罷れと申したるぞ。
ドロドロ強く鳴る。
双方詰め寄る。
黎魅 夕餉も済んだ先から、なんとも是非の無い話ぢや。
霊夢 女中ごときに身を守らせたるとは笑いぐさ、猛き平家武者の一門とて海の泡と消えつるを、箱入りの弱姫ならば語るもおろか。
黎魅 咲夜は優れたる箒役、およそ雑魚首ひとつ我が前に投げ出すことなきものを。
霊夢 ムウ。そこもとが武辺、ドレドレいかほどなりや。
ドロドロ止。
代はつて下座、伴天連節『亡き姫しのぶ七重神楽』しづかに鳴らす。
黎魅 知らんわい。日輪のもとに置く身無ければ、土を踏むのも玉手箱。
霊夢 箱入りだけに。オオよく出来たよく出来た。
黎魅 サテ。望月のかくも美事に紅ならば、おことが玉の緒、霧に消ゆべし。
霊夢 サテサテ。望月のかくも美事に紅なれど。
黎魅 楽しき夜と、アなりそうぢやわいな。
霊夢 永き夜と、アなりそうぢやのう。
両者きツと見得。
(これより後の部分は、汚損が激しく判読不能)
勉強してる人はわかるんだろうなあ。
不勉強な自分にはさっぱりだった。
意味がわかればたのしそうなんだけど。
次は魔理沙版売らないとね。
でも、もう少し本文のほうを読みやすくしてくれたらな…とは
個人的にですが思いました。
でも「江戸」という年代的なものでいえば、普通なのかもしれないんですよね。
台詞の置き換えが上手い。
ただ、内容が内容だけに、一発ネタな感じはしますが ^^;
本文:紅魔郷ステージ6(霊夢)を歌舞伎?風に書き上げたもの。
後書:それを曰くありげな代物としててゐが慧音に言葉巧みに売りつける。
一発ネタですが面白かったです。
初めに注意がきした方が途中飛ばして酷評する人が減ると思いますよ。
この投稿自体も、またしかり。
>ちょっとシュール
こんなパロディを考えた、あなたの頭の中身も!
これは、ちょっとした奇襲でした。
二度とは使えない手だとは思いますが、個人的には嫌いじゃないです。
歌舞伎役者が腋巫女コスプレで芝居している姿を想像して、吹いた。
かっけぇぇ!!
こりゃええわ。ドツボに入った。
縁取りとかしたお嬢さん達がこんな台詞で会話してるだろう様はまさにシュール。
面白かったです。
読みやすいこのリズムに憧れます
拍手、ぱちぱち
日本に伝わる見事な文体をありがとうございました
レミリアの漢字読みは「れいみ」で良いのかな?
これはいいパロディ。魔理沙バージョンも読んでみたかったですね。