Coolier - 新生・東方創想話

友情≒0地点

2009/05/01 02:34:59
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 人生が暇だから衣玖を探してた。
 要石に乗ってとろとろ飛んで探してた。
 桃の匂いのする空をとろとろ飛んで、桃の匂いがしてきそうな地面を見下ろして探してた。
 天界はどこを見回しても桃の木ばっかりある。どこに行っても桃の匂いしかしない。
 天界の半分以上は桃で出来ていて、あとの半分は退屈さで出来ていて、私の人生の半分以上九割くらいは退屈さで出来ている。桃は一割くらい。帽子にも付いている。
 
 別に暇を潰すなら、萃香でも良かった。
 でもさっき萃香に貸してる土地に行ってみたら泥酔して寝てた。
 萃香の人生の半分は泥酔で出来ていて、残りの半分が泥酔して寝ているで出来ている。
 衣玖の事で訊きたい事があったのに。萃香は桃の木に寄りかかって鼻提灯してた。
 涎がだらだら垂れててアルコールと桃の匂いが混じってた。
 酔いつぶれた小鬼を眺めてもおもしろくない。
 どれくらい詰まらないかなと実験するために、試しに三時間くらい泥酔して寝ている萃香を眺めてたことがある。
 鼻提灯が形成されて、少しずつふくらみ、やがて弾けるまでの過程を、何度も何度も何度も何度も繰り返し眺めた。
 そしたら自分も眠くなって居眠りした。
 今まで退屈な事を色々したことがあるけど、その中でも二番目くらいに退屈な行為だった。
 一番退屈だったのは一人で人生ゲームをやった時。
 ほんとは萃香とやろうとしたけど、その時も萃香は寝てた。
 仕方ないから、萃香のいびきをBGMに一人でルーレットを回してた。
 医者になって子供が二人生まれて南の島で老後を暮らした。
 債権回収でもご祝儀でも誰からもお金を貰えなかった。
 人生ゲームはどうでもいい。
 鬼の角には桃が突き刺さる。
 尖ってるし長いから、何個か串刺しに出来る。
 さっき、何個くらい突き刺せるのか試してみた。
 暇つぶしに出来ることに関して、私の右にでる者はたぶんあんまり居ない。
 角があれば桃くらいは突き刺す。
 突き刺すために角は存在していて、桃は突き刺されるために存在している。
 桃が割れてしまわないように注意して、角へ丁寧にぐりぐりとねじ込むようにしていったら、両方に四つまで刺せた。
 果汁が溢れ出してた。萃香の頭から顔にまでつたって、首から胸元にまで染みこんでいってた。
 すぐに蟻が群がってきて、真っ黒くなった。
 それでもまだ寝てた。起きて欲しかったけど寝てた。
 真っ黒い萃香を見てたけど、五分くらいで飽きた。
 しょうがない、衣玖を探そうかな、とか思った。


 衣玖は釣りしてた。
 ちっちゃな池。歩いてぐるっと回っても五分も掛からないくらい。でも鯉とかナマズとかウナギとかフナとか居て、桃の木に囲まれてる。天界は大概のものが桃の木に囲まれてる。
 池がそうなら、丘もそうだし、林もそうだし、家もそうだし、林も桃の木で出来てる。桃の木さえ桃の木に囲まれている。ひとも犬も猫も、なんでもかんでも桃に囲まれてる。桃に囲まれてないものは無い。
 たまに衣玖はここの池で釣りしてる。桃の木に囲まれて釣りしてる。それか雲の中を飛んでる。
 あとは桃とか食べてる。桃の木に囲まれながら桃食べてる。
 衣玖も基本的に人生が暇なんだと思う。衣玖が桃を囓ってるのも見るたびに、暇そうだなと思う。
 でも天界の生活なんて、大抵はみんなそんなもん。天人も竜宮の使いもあんま変わらない。
 天人は朝起きて桃食べて、釣りして桃食べて、踊って桃食べて、歌って桃食べて、桃食べて寝る。以上。
 竜宮の使いだと、朝起きて桃食べて、桃食べて雲の中飛んで桃食べて、たまに釣りして桃食べて寝る。以上。
 小鬼だと、朝も夜も無く桃食べてお酒飲んで、お酒飲んで桃食べて寝て、桃食べてお酒飲んで寝る。以上。
 全部が桃で始まって、桃で終わる。
 何もかも桃の匂いがして、何もかもから桃の匂いがする。


「衣玖は人生が暇なの?」
 衣玖の隣に座るなり、訊いてみた。
 下草は柔らかくて、お日様は気持ちよくて、水面はキラキラしてた。
 釣り糸がちょっとだけ揺れてた。風はほとんど無い。
 そしてやっぱり桃の木が私たちを囲んでいる。

 衣玖は私を見た。無表情だった。
 道ばたに落ちてる石ころを見てるみたいだった。
 けど、鬱陶しそうな目線を加味すれば、むしろ石ころよりも犬のうんこを見てるみたいだな、と思った。

 例えば衣玖の隣に来たのが私じゃなくて、犬のうんこじゃなくて、台風で天界まで飛ばされてきた皮膚病の野良犬だったら、もっと同情するみたいな顔をすると思う。
 それか子犬だったら抱っことかするかも知れない。
 衣玖が犬を好きかどうかは知らない。もしかしたら犬が嫌いで蹴飛ばすかも知れない。
 でも衣玖はあんま蹴飛ばさないと思う。せいぜいつま先でつつく程度だと思う。でもやっぱ切れて殴るかも知れない。

 たまに自分が犬だったら良かったかもと考える時もある。
 犬なら世界の半分くらいの人には好かれる。あとの半分は猫派だから、仕方ないけど。
 でもそういう事を考えるといつも途中でむかついてきて、考えるのをやめる。
 慣れてるし。とか思ってむかついてやめる。
 私ほど他人から蔑まれたり疎まれたり嫌われてるひとは、あんま居ないと思う。
 私は絶望的なほどに我が儘で、壊滅的なほどに傍若無人らしい。
 ずーっと昔から他の天人に言われてきた事だ。あいつらは徳を積んでるだけあって、だいたい正しいことを言う。
 あいつらが言うことは大概気にくわないけど、たまには良いことも言う。
『嫌われ者にだって、良いことがある。誰かに嫌われる事を恐れなくて良いことだ。最初から嫌われてるから』
 もっともだと思った。
 私が恐れなくていいって事は、私はどこまでも自由だと言うことだ。何をやったって気にする必要がない。 
 きっと。たぶん。
 これは素晴らしい事に違いない。
 ずっと、そう思うことにしてた。
 実際に、だいたい正しかった。
 私は誰も恐れず、何も躊躇せず、やりたいことをひたすらやってきた。
 だいたい正しいな、と思ってた。
 だいたいは正しかったけど、問題もある気がしてた。
 石ころや犬のうんこの立場は、面白くはない。
 私の人生は暇だった。
 
「総領娘様が、魚釣りをする事を暇と捉えるなら、そうなのでしょう」
 衣玖は目をウキに戻した。私の事はどうでも良さそうだった。
 魚釣りをしてるんだから、当たり前だ。とも思う。
 でも、私が犬とか猫だったら、もうちょっと違うのかなとも思うけど。
 私は嫌われてるから仕方ない。
 この前、緋想天異変をやった後で衣玖から嫌われるようになった。お灸を据えられた。
 もとから話した事もない相手だったけど。どうしようもうない馬鹿娘みたいに思われてたみたいだけど。
 ひたすらやりたい事をやった結果がそれだった。
 せっかく人生を暇じゃなくするために異変を起こしたのに、それで知り合った相手が私を嫌う。
 そして人生が暇になる。
 もう一度なんかやってやろうかなとも思う。
 けどきっとまた、それで誰かと知り合っても、嫌われて、人生が暇になる繰り返しになる。私は馬鹿じゃない。
 どうにかするべきだ。と思った。

 だから三日前にも衣玖と一緒に釣りしようとしてここに来た。
 人生が暇な同士で一緒に釣りでもをしようかと、色々話しかけてたら突然に衣玖が切れて私を殴った。
 私は悪くないと思うのに、すごい切れてた。ドリルだった。 
 もともと衣玖内での私の評価が10点満点で1点だったとしたら、異変で0.5くらいになったんだと思う。
 0.3かも知れない。0.2かもしれないけど誤差の範囲だ。
 ともかく最初から下がりようがないくらい低い評価だったし。コンマ少々くらい下がったところで、あんまり変わりはない。無表情な目で私を見て、それからウキに目を戻すまでの時間が0.5秒くらい違うだけだと思う。
 さらに三日前の喧嘩で評価が0.1くらいになった気もする。
 ゼロになったら、もっと人生が暇になるな、と喧嘩が終わった後で思った。
 たぶん。私に目を向ける時間が0.5秒からゼロになる。

 そんな事を昨日萃香になんとなく言ってみたら、『じゃあプラスになるようにすればいいじゃん、友達になれば人生暇じゃなくなるんじゃないのお?』と、ろれつの回らない舌で言われた。
『あんたがさあ、地上の妖怪や人間たちが楽しそうに見えるのは、みんな一緒に遊ぶ相手がいるからなんだよ。あんたに必要なのは異変を起こす事じゃなくて、友達なのさあ』とも言われた。

 そうかも知れないと思った。 
 じゃあどうすれば、どうしたら例えば衣玖が友達になってくれるかな、と訊き返した時には、もう萃香は寝てた。
 三時間待っても起きなかった。
 仕方ないから家に帰って自分で色々考えた。
 一晩中考えた。
 どうやったら友達になれるだろう、なんて考えるのは生まれて初めてだった気がする。

「衣玖って友達居ないよね」
 一晩熟考に熟考を重ねた言葉を言ってみた。
 
 衣玖はどうでもよさそうに、私の声が聞こえないみたいに、ウキをじっと見てる。
「居ますよ」

 はい、実は私もいないんですよ。と言うと思ったのに。
 居ますよって言った。予定が違う。

「いつも一人じゃん」

「たまに萃香さんとお酒飲みますよ」

「たまにだけ?」

「はい」

「そうなんだ」

「はい」

「へえ」

 池の真ん中で鯉が跳ねた。なんで跳ねるんだろう。別に跳ねなくたっていいじゃん。
 魚なんだし。水の中で生きてればいい。
 でもきっと魚も人生が暇なんだと思う。たまには跳ねたくなるんだと思う。

「食べるの?」
 訊いてみた。
 なんでそんな事を訊いてるんだろうと思うけど、衣玖が予想外のリアクションをしたから、ちょっと焦っちゃった。
 ええと、次はなんて言えばいいんだっけ。

「釣った魚ですか?」

「うん」

「食べます」

 台詞を思い出した。
「私も友達ぜんぜん居ないんだよね」

「友達は食べません」

「そうじゃなくてさ。私も衣玖と同じでぜんぜん友達居ないんだよね」
 ウキを眺めながら言いってから、衣玖を見てみた。
 衣玖はウキを見てた。  

「そうですか」

「うん」

「巫女はどうしたのですか。総領娘様は神社によく出かけていたではないですか」

「今は神社は萃香が直してるし、霊夢は他にいっぱい友達いるじゃん」

「そうですか」

「うん。なんだか霊夢的には、私別に居なくていいかなみたいな感じだし」
 また鯉が跳ねた。あの鯉もよっぽど暇なんだと思う。
 三十センチくらい跳ねて、ぼちゃんと落ちて、ふわふわした波紋が岸までゆっくりやってきた。
 暇つぶしで異変起こしてみても、結局暇な人生に戻った。
 何人かの地上の知り合いと、二人の天界の知り合いは出来た。でもそれだけだった。
 萃香の言うとおりなんだと思う。私に必要なのは、もう一度異変を起こしたりする事じゃない。
 
 だから、「ねえ衣玖、私も一緒に釣りしていい?」三日前と同じ事をもう一度言ってみた。

「この池は誰の物でもありません。ご自由にどうぞ」

 衣玖はウキから目を離さずに、三日前と同じ事を言った。

「うん。じゃあご自由にする」


 家に戻って釣り竿を持ってきた。
 釣りはあんまりやったことがない。
 小さい頃はパパに連れられてやってた気がするけど、今は家族で出かける事は無い。
 パパが他の天人から馬鹿にされてもヘラヘラしてるのを見ると、むかつくから外を一緒に歩くことは無くなった。
 一番仕掛けが簡単なのを持ってきた。
 竿の先っぽに糸と針が付いてるだけのやつ。
 でも餌を忘れた。ていうか餌ってなんだっけ。小さな団子みたいのだった気がするけど。
 そういえば三日前は餌がどうこう言う前の段階で殴られたっけ。

  
「餌くんない?」頼んでみた。

 衣玖は大きな升を差し出してきた。ずいっと私の目の前に、無表情で、不機嫌そうに。 
 升の中には湿ったおがくずみたいな物、白くて小さな芋虫が動いてた。
 キモかった。

「キモ。なにこれ」

「サシです」

「サシ?」

「蛆虫です」

「キモ」

「これをお尻から頭にかけて釣り針で貫通させてください」

「無理。キモイから」

「そうですか」

「うん。無理。衣玖やってよ。キモイから」

「では竿を貸してください」
 衣玖はやっぱり無表情で、不機嫌そうに言って、私の竿を手に取って、升の中を指でほじくりだした。
 おがくずが爪の間に詰まって気持ち悪そう。

「指さ、気持ち悪くないの?」
 訊いてみた。相手を気遣うのは大切だと思う。
 せっかく私の代わりにキモイ作業をしてくれてるんだから、優しい言葉の一つもかけるべきだと思った。

「平気です」と言って衣玖は一匹の蛆虫を摘んだ。もぞもぞ動いてる。

「へえ衣玖ってすごいね。良く平気で掴めるね、そんなキモくて汚いの。私なら絶対無理だし」
 やっぱ相手を褒めるのは大切だと思う。

 けど、どうしてか衣玖が蛆虫を投げつけてきた。
 びちっと鼻に当たった。

「わっ、何すんのよ衣玖。汚いじゃん」

「すみません総領娘様。つい切れちゃいました」

「そうなんだ。なんで切れたの。意味わかんないし」
 ハンカチで顔を拭いた。

「もう一匹投げつけてもいいですか?」

「やだ。蛆虫が顔とか無理。私、衣玖じゃないし」

 びちっ!
 さっきより強く投げてきた。今度は口の中に入ってきた。
慌てて吐きだした。ぺっぺっぺっぺっぺ。

「食べないですか?」

「うん。食べない。なんで投げるの。汚いじゃん。そんなの食べたくないよ。掴みたくもないし」
 ちょっとむかついたけど我慢した。
 喧嘩したらまたこの前と同じになる。

「そうですか」

「うん。それより早く釣りしたい。さっさと餌付けて欲しいんだけど。切れてないで餌つけてくんない?」

「殴ってもいいですか?」

「ダメ」

「どうしてですか」

「なんで殴るの。ドリルでしょ? あれすごい痛いじゃん」

「痛いですよ」

「ダメ。前やられたとき、ほっぺとかひりひりしたし、昨日まで痛かったよ」

「すみません。あの時もストレスが100%を越えてしまって、つい突発的に殴ってしまいました。殴っていいですか?」

「ダメ」

「では総領娘様は黙ってて下さい。ストレス溜まるので」

「うん。わかった」

 蛆虫が衣玖に摘まれて針の先っぽでお尻を刺された。痛そうに激しくうねうねしだした。
「あ」ついつい声を出しちゃった。あんまり痛そうだから。
 刺された針が胴体を貫通して頭から飛び出た。
「あー!」ついつい大声を出しちゃった。とっても痛そうだから。

 衣玖が針に突き刺した蛆虫を指で潰した。
 ブチ、って鳴った。

「今95%くらいなんですよ」って衣玖が言った。やっぱり無表情で。

「なにが」聞き返してみた。

「ストレスです」 
 
「へえ。じゃあ早く餌つけてよ」

「いま96%になりました」

「そうなんだ」

「はい」

「衣玖知ってる? ストレス溜まると早死にするらしいよ。ストレスは溜めない方がいいよ」

「今97%になりました」

「もしかしてやっぱ私のせいで衣玖はストレス溜めてる?」

「はい」

「あ、やっぱ、そうなんだ。なんとなくそうかなと思ったんだよね」

「はい」

「勝手にストレス溜めないでよ」

「今99%になりました」

「どうしたらストレス溜めないの?」

「総領娘様が来る前まではストレス0%でした」

 また怒らせちゃってるみたい。三日前とだいたい同じだ。
 一緒に釣りしたいだけなのに、衣玖はすぐにストレスを溜める。
 今日は優しい言葉をかけたり褒めたりして、かなり気をつかったつもりだったのに。
 キモイ作業を頼んだのが不味かったのかも知れない。
    
「じゃ、今日は帰るね」

「帰るのですか?」

「うん、だって衣玖は早死にしたら困るじゃん?」

「ええ、まあ。それはそうですが」

竿を返してもらった。
 衣玖は意外そうな顔をしてる。
 三日前みたいにまた私が殴られるまで食い下がって、喧嘩になると衣玖は思ってたのかも知れない。
 喧嘩してもそのあと人生が暇になるだけで、良いことがあんまり無い。
 私だって馬鹿じゃないし、学習するちゃんと。

「じゃあね」手を振ってみた。

「はい」衣玖も手を振り替えしてきた。意外そうな顔のまま、呆気にとられたように、ひらひらと。

  
 


 屋敷に帰ってみたら、人生が暇だった。
 喧嘩しないで戻ってきても、人生が暇だった。
 これならいっそ喧嘩したほうがマシだったかも、って思うくらい人生が暇だった。
 でもあそこでまた喧嘩したら、きっと私の評価がゼロになって、もっと人生が暇になるんだろうな、とも思った。
 気づいたら釣り竿を自分の部屋にまで持っていってきてた。
 なんとなく振り回してみた。ヒュンと風を切って糸が舞い、釣り針が襖に引っかかった。
 針には乾いた蛆虫の死体がくっついたままになってたらしい。剥がれ飛んで、畳の上に落ちた。

 蛆虫の死体を見てた。乾いて焦げ茶色に変色してた。

 蟻が来た。
 最初は一匹だった。黒くて大きい蟻。蛆虫の死体を見つけて触覚で触ってた。
 縁側への襖は開けっ放しになってたから、そこから来たみたい。
 すぐに行列が集まってきた。 
死体が縁側に引っ張られていった。
 縁側に女中の一人が通りかかった。
 蟻の行列を見て短い悲鳴を上げた。
 女中は箒を持ってきて掃いた。
 箒で掃き出される蟻を私は見ていた。女中は掃き出される蟻を見ている私を嫌な顔で見ていた。
 何百匹もの蟻が箒で腹を潰されたり、脚をもがれたり、首を捻られたりしながら、外に掃き出された。
 庭の敷石の上に散らばった蟻の死体たちを、別の蟻が運んでいった。
 人生が暇だ。と思った。

 萃香のとこにもう一度行ってみた。
 そしたらやっぱ寝てた。
 相変わらず蟻がびっしり覆っていた。
 もう一回池に行こう、と、蟻で真っ黒になった萃香を見ながら思った。
 衣玖が私の分の餌を付けるのでストレスが溜まるなら、餌は自分で付ければいい。
 そうすれば一緒に釣りできるはず。そう思った。
 


 衣玖は私が立ち去った時と同じ場所で、まだ釣りしてた。
 桃の木に囲まれて釣りしてた。
 私が近づいてくと、衣玖はさっきよりも意外そうな顔をした。桃の木に囲まれながら意外そうな顔をした。
 衣玖の人生も一割くらいは桃で出来ている。

「やっぱ釣りしていい?」訊いてみた。

「どうぞ」衣玖はそれだけ言った。

「餌貸して」升を指さした。

「竿を貸してください」衣玖は私の竿を指さした。

「自分で餌付ける」

 衣玖は意外そうな顔を通り越して、目をちょっとだけ大きくしてびっくりした。

「ご自分でなさるんですか?」

「うん」

「キモくないのですか?」

 升が目の前に差し出された。
 おがくずの中でうぞうぞ動いてた。

「キモイ」

「では竿を貸してください」

「いい、自分でやる」

升に指を突っ込んでみた。
 フニフニしたのが指の表面をうぞうぞ動く感触は、思ったより気持ち悪かった。
 思わず目を閉じちゃった。

「目を開けないと、摘めないですよ」

「う、うん」

 瞼を開けた。
 指の周りにうぞうぞが集まってた。
 声を出しそうになって、我慢した。
 嫌な事を我慢するのは得意だ。
 我慢しないのはもっと得意だけど。
 我慢した方が得な事も多い。
 私を貶したり馬鹿にしたりする天人は、私が怒ったりすると得意げに説教する。
 あいつらの得意げな顔が大嫌いだ。
 おかげで我慢するのも得意になった。
 一匹の蛆虫を摘み上げた。
 フニフニな体のかたっぽが尖ってて茶色くなってる。私の親指とひとさし指の間でうねうねしてる。
 
「尖ってない方から針を刺してください」

「うん」

 ブスリ、とやってみた。
 うねうねが激しくなった。
 この蛆虫は我慢するのが得意じゃないみたいだ。
針をさらに深く差し込んだ。針のカーブに合わせて白い体が曲がって、その形に固定され、しばらくピクピクとだけ表面が動いてたけど止まった。針の黒い光沢に体液がつたってる。私の指と指の間で蛆虫の人生が終わったらしい。暇な人生だったのか、暇じゃない人生だったのか訊いてみたい気がしたけど、もう死んでる。

「これでいいの?」訊いてみた。

「はい。お上手です」


 竿を池に向けて振った。糸を水の中に垂らした。
 草の上に座って、水の下の事を想像した。
 針の形になって死んだ白いフニフニを、魚が丸飲みするのを想像した。
 喉に針が刺さるのを想像した。痛そうだなあ。と想像した。

「針が口の中に刺さったら痛いよね?」隣に座ってる衣玖に訊いてみた。

「痛いでしょうね」

「衣玖は食べるんでしょ魚?」

「はい。食べます」

「じゃあ、私が釣ったら食べさせてあげる」
 やっぱ贈り物も大切だと思う。魚をあげれば衣玖はきっと喜ぶ。
 喜んで魚にかぶりつく衣玖を見てみたいと思った。なんとなく。

 衣玖はまたまたまたまた意外そうな顔をした。
 今日は衣玖が意外そうな顔ばかりする日みたい。
「それは、どうもありがとうございます。あ、総領娘様。引いてますよ」

「え?」
 
 言われてみて竿が重くなってるのに気づいた。
 糸が水面の下からギュンギュン引っ張られてる。魚は左右へ頻繁に動いて逃げようとしてるみたい。

「どうすればいいんだっけこれ?」
 訊いてみた。

「大きそうですね。鯉かも知れません。力任せに釣り上げると糸が切れます。岸に寄せてください。私が網ですくいますので」

「わかった」
 竿を垂直に持ったまま岸から離れるだけで良かった。そうすれば当然、糸の長さは限られてるから、獲物は岸に近づいてくる。水面近くでバシャバシャ暴れ、大きく跳ねた。衣玖の言うとおり鯉だった。
 でもそこはもう衣玖が網で待ち構えてる場所。もう一度水の中へ落ちる前に、網の中へと入った。

「お見事です」
 衣玖が針を外してから振り向いて言った。
 顔を笑わせてる。

「やった!」
 駆け寄った。
 鯉は網の中でびちびち暴れてる。 
両手で掴んでみた。ぬるぬるして持ちにくいけど、がんばって掴んだ。
「食べて衣玖!」
 両手の中でびちびちしてる鯉を衣玖に差し出した。

「はい。食べます。ありがとうございます」

「早く食べて」

「はい。この鯉は夕飯にしようと思います」

「今、食べて」
 衣玖の顔に押しつけてみた。
 びちびちして尻ヒレが衣玖のほっぺをパンパン叩いた。
 喜んでかぶりつくかなと思ったけど、衣玖は一歩後ずさった。
 私は一歩踏み込んだ。
 
 パンパンパンパンパン。

 衣玖がまた一歩後ずさった。
 私は衣玖を追いかけて一歩前に出た。

 パンパンパンパンパン。

「あの……ちょっと止めてください。今は食べないですよ」

「いいから、早く食べて!」
 衣玖の口に鯉の頭をねじ込もうとしたら、鯉が大きく口を開けてディープキスみたいになった。
 ドリルが視界の右側から見えて、私のほっぺに当たって、ぐりぐりって抉られるように殴られて、私は吹っ飛んだ。 なんで衣玖のために鯉を釣ってあげたのに殴られるんだろうなと思いながら、三回くらい地面をもんどり打って、仰向けに大の字で空と桃の枝が見えて止まった。

「すみません総領娘様。つい切れちゃいました」

 背を起こしてみたら、衣玖が申し訳なさそうにして私の前に立ってた。

「ほっぺたひりひりする」

「すみません」

「なんで殴ったの?」

「ついです」

「やっぱそんなに私の事嫌い?」

 衣玖は草の上でびちびちやってる鯉に目を落とした。
 それからもう一度、私を見て、また鯉に目を戻した。
 何を言おうか考えてるみたいだった。

 私は座ったまま衣玖の顔を見上げてた。ずっと。
 衣玖のためにがんばったつもりだったけど、仕方ない。
 私は嫌われ者だし、つい殴られる事だってあるんだと思う。
 なんなら殴り返してもいい。理不尽に殴られたんだし。私は怒ってもいい。
 でも殴り返して、喧嘩して、そのあと家に帰ったら、やっぱりまた蟻の死体を眺めたりするんだと思う。
 蟻の死体を眺めて桃食べて夜になってまた桃食べて寝る。たぶんそうだ。
 だからここに戻って来たんじゃなかったっけ。人生が暇だからここに来た。
  
「嫌いではなくなりました」
 衣玖は私の目をまっすぐに見て言った。
 意外だと思った。
 あんなに強く殴ったくせに。嫌いじゃないんだ。

「そうなんだ。良かった」
 ほっぺをさすりながら言ってみた。
 たぶん私は今、意外そうな顔してると思う。

「痛いですか?」

「うん。ひりひりする。それよりさ。これ、衣玖のために釣ったんだから、ちゃんと食べてね?」
 びちびちしてる鯉を指さして言った。

 そしたら。
「はい」
 衣玖は小さい声で笑いだした。

「どうして笑うの?」
 衣玖が笑ってても嫌な感じはしない。私を馬鹿にしてたりとかじゃないのはわかる

「ついです」

「そうなんだ」

「はい」

「ねえ衣玖。もっと一緒に釣りしてもいい?」

「どうぞ」

「明日の朝ご飯の分も、昼ご飯の分も釣ってあげる」

「ありがとうございます」
 衣玖が私に向かって手を差し出した。立ち上がるのを手伝ってくれるみたいに。
 みたいにじゃなくて、そうなんだと思う。
 衣玖の手を握った。さっき鯉を掴んだせいで生臭かった。私の手も生臭かった。
 衣玖が私と繋いだ手を引っ張った。私は立ち上がった。
 
「生臭いね」と言ってみた。
「生臭いですね」と衣玖も言って笑った。
 どうして衣玖が笑うのかわからなかったけど、私も笑ってみようと思った。
 で、衣玖の両目をまっすぐ見て笑ってみた。
 そしたら。なんとなくいい気分になった。
 なんとなく。どうして笑うのか、ちょっとだけわかった気がした。





 夜。桃食べてお風呂入って寝た。
 いつもだったら、人生が暇だなと思いながら桃食べてお風呂に入ってたけど、今日は思わなかった。
 昼間に釣りをしたことを思い出しながら寝た。
 結局、釣れたのは私の一匹だけで、衣玖は一匹も釣れなかった。 
 そしたら夢みた。
 衣玖が魚をいっぱい釣れて喜んでる夢だった。
 目が覚めた。真夜中だった。
 そういえば私は衣玖に言ったなと思い出して目が覚めた。
 朝ご飯の分も、昼ご飯の分も釣ってあげる。とか私は言ってた。
 じゃあ、そうしてあげないとな、と思った。
 釣り竿を持って池に飛んだ。
 
 夜の池はなんとなく怖い。夜の真っ暗な水面はなんとなく昔から苦手だった。
 どうしてかはわからないけど怖い。なんとなく。
 さあ釣るか、と思ったけど、何か忘れてる気がした。
 餌だ。蛆虫が無い。
 蛆虫ってどこで集めるんだろ。
 肥だめとか?
 無理。さすがにそれは無理だと思う。 
 仕方ない。
「えいや」と気合いを入れて池の底を隆起させてみた。岸より高く。剣が無くてもこれくらいは出来る。
 池の水が辺り一面に流れ出して、全部の魚がびっちびっち跳ね出した。
 何百もの魚の鱗に月の光が反射して、星が落ちてきたみたいに綺麗に見えた。
 星みたいに見えてた魚たちは、すぐにほとんど全部が動かない死体になった。死体になってもキラキラしてた。
 家から大きな樽を持ってきて、魚の死体をあらかた詰め込んでから、隆起を直した。
 池の水が無くなったけど、仕方ない。たぶんまたそのうち貯まる。知らないけど。


 樽を担いで衣玖の家に行ってみた。
 戸を叩いても呼んでも返事が無かった。夜中だから寝てるんだと思う。
 鍵は閉まってた。仕方ないから開けた。ちょっと大きな音がした。
 衣玖を呼びながら廊下を歩いて部屋を一つ一つ探してると、一番奥の部屋からいびきが聞こえてきた。
 そこが寝室だった。衣玖が蚊帳の中で布団をはだけてパンツいっちょで寝てた。
 夏だからかもしれないけどパジャマは着ない派らしい。
 口をあんぐり開けて、いびきをグアーグアーと響かせてた。
 蚊取り線香とベビーパウダーの匂いがした。

「ねえ衣玖ほら見てこれ、いっぱい釣ってきてあげたよ」
 蚊帳の中に入って揺すってみても起きない。熟睡してる。 
 鼻を摘んでみた。いびきが苦しそうな音になった。ムアームアーみたいな。
 強引に指で瞼を開けてみた。白目になってて怖かった。
 ほっぺたを叩いてみた。衣玖が寝言を言い出した。龍神様のアメリカンジョークはおもしろくなりませんいい加減にして下さいストレス溜まるんですが。とぶっきらぼうな口調で言った。
 普段の仕事でもけっこうストレスが溜まってるっぽいみたい。だから切れやすいのかも知れない。
「起きてよ衣玖、せっかく私が魚いっぱい持ってきてあげたんだから」
 もっと激しく叩いてみた。下品なオヤジギャグもやめてください殴りますよ。と衣玖はにやにやした。
 どうしたら起きてくれるだろ。
試しに樽から鯉を一匹出して、衣玖のお腹の上に乗せてみた。
 鯉は死んでるからもう動かない。けど、冷たいから衣玖がびっくりして起きるかと思ったけど、起きない。
 もう一匹、今度は胸に乗せてみた。肌でつるんと滑って、おっきな胸と胸の間へ綺麗に挟まった。
 がっちり固定された。
 すごいなと思った。
衣玖の胸はまるで魚を挟むために存在しているように見えて、鯉はまるで挟まれるために存在しているよう思えた。
 何匹くらい挟まるかなと思ってやってみた。
 二匹までぎりぎりいけた。
 三匹目は腋のあたりに滑り落ちて、それを衣玖が掴んだ。むにゃむにゃ言いながら死んだ鯉に頬ずりしてる。
 そんなに魚が好きなのかなと思って、布団の上で樽を逆さまにして、ざばーっとぶちまけてみた。
 衣玖が魚の山に埋もれた。息が苦しくないよう、顔だけは出るように魚をどけてあげた。
 これできっと目が覚めたら大喜びに違いない。と思った。
 早く目を覚まして欲しい。と思った。
 でも目を覚まさないから仕方ない。
 食べさせてあげようと思った。良い夢を見れるに違いない。ストレスのある夢を見なくて済むかも知れない。
 いびきで大きく開いた衣玖の口に、一番大きい肺魚を突っ込んでみようとした。
 そしたらまだ肺魚は生きてたらしく、口をぱっくり開けた。
 ディープキスするみたいになった。
 衣玖がぱっちり目を開けた。
 起きた。がばっと。
 衣玖は眠そうな顔で肺魚と口と口で繋がったまま布団の周りをぐるりと見て、それから私を見た。 
「おはよう衣玖。いっぱい食べてね!」
 視界の左に裏拳が見えた瞬間、私は吹っ飛ばされてて、蚊帳を突き破って、寝室の襖も突き破って、夜の空をきりもみしてた。
 左頬がじんじん痛くて、ああ殴られたんだな。と思った。
 満点の星空にお月様が西へと沈もうとしてて、東の空が真っ黒から紫色に変わろうとしてた。
 でもなんで殴られたんだろう。
 せっかく衣玖のためにがんばったのに。
 さすがにむかつく気がした。
 ていうかむかついた。
 家に帰って桃食べて、もう一回寝た。

起きたら昼近くだった。
 起きてからも、むかついてた。
 むかつくし、しかも暇だったから、人生ゲームを持って衣玖の家に行く事にした。



「いーくー!」
 玄関は開いてたけど、一応大声で呼んでから、中に入ってみた。
 おいしそうな匂いが廊下に漂ってきてた。揚げ物だと思う。お昼ご飯を作ってるのかも知れない。
 衣玖がお廊下に出てきた。ちょっとだけ眠そうな顔だった。
 髪をちょんまげみたいくアップっぽく結わえてタンクトップとデニムのホットパンツにエプロンしてた。
 衣玖は自宅ではラフな恰好をする派みたいだった。
衣玖はお腹をぼりぼり掻いて、私が左腕で抱えてた人生ゲームを見てた。
 

「こんにちは総領娘様」
 って衣玖が言った。

「なんで殴ったのよ!」
 って私は言った 

「今丁度お昼作ってたのですが、よろしければ食べていきませんか? 一人じゃ食べ切れないもので」
 って衣玖が言った。

「うん。食べる」
 って私は言ってた。


 衣玖が土間で料理する後ろ姿を、私は居間の畳の上に座って見てた。
 ウナギの蒲焼きと、ナマズのさしみと、肺魚の竜田揚げと、フナの天ぷらと、鯉の香草焼きらしい。
 縁側で風鈴が鳴ってる。揚げ物がジュージューいってる。蝉がみんみん鳴いてる。天井からつるされた蝿取り紙に、べったり蝿がくっついてる。窓のすだれを透かして真っ青な空が見えた。入道雲があった。
 台所から包丁の音がトントン聞こえてきてた。
 衣玖がまな板でナマズをさばきながら、右足で左脛を掻いてた。蚊にさされて痒いみたい。
 蚊取り線香は焚いてあるけど、勝手戸も窓も襖も障子も全部開けてあるから、あんまり意味がない。

 食卓の麦茶はもう冷たくない。湯飲みは私の右手に握られて温くなってた。
 なんとなく麦茶を飲まずに、じーっと衣玖の後ろ姿を見てた。
 飲み干してから、そういえば衣玖にもっと文句を言わなきゃいけなかったはずだな、と思った。
 麦茶は香ばしくて丁度良い濃さでおいしかった。
「ねー衣玖、麦茶もう一杯」

「はい」と衣玖は振り向いて言った。
 別に不機嫌そうでもなく、面倒くさそうでもなかった。
 普通の顔だった。普通の顔でよかった。と思った。なんとなく。
 夜中私を殴ったくせに、別に嫌いになったわけじゃないみたいだ。たぶん。
 もし嫌いになったら、私が麦茶ーとか言ったら、もっと嫌な感じの顔をすると思う。たぶん。
 夜中ので私の事嫌いになった? って訊こうと思ったけど。やめた。なんとなく。
 なんとなく。

 衣玖が居間の食卓まで歩いてきて、ポットから私の湯飲みに注いでくれてる間、ずっと私は衣玖の顔を見てた。
 どう思われてるか良く観察しようと思った。
「どうかしましたか?」
 衣玖は不思議そうに訊いてきた。

「ううん」

「総領娘様が何か言いたそうでしたので」
 
「ううん」

「そうですか」

「うん」

「そうですか」

「うん。それよりさ。衣玖の胸には鯉が二匹までギリギリ挟まるよ」

「そうですか。知りませんでした」

「うん」

 衣玖は土間に戻ってった。
 また包丁の音が響きだした。
 トントントントン。
 四回だけトントン鳴って止まった。
 衣玖がこっちを見た。何か言いたそうな顔してた。
 何か文句を言ってきたら、私も文句を言ってやろうかとも思った。
 でも文句を言ってくるとは限らない。他の事を言おうとしてるのかも知れない。
 衣玖は何を言おうとしてるのかな、とか考えながら衣玖と目と目を合わせて、じーっと見合ってた。
 畳の上と土間の上から、じーっと見合ってた。
 風鈴がちりんちりんと鳴って、湿った風が吹いてきて、すだれが揺れて、その影が私の体と、畳の上に置いた人生ゲームを縞々模様にしてた。

 衣玖は何も言わずに、まな板に向き直った。
 またトントン、と土間で鳴り出した。

 人生ゲームやんない? って、いつ言おうかな、とか私は考えてた。
 
 手の甲で微かに、もぞもぞした感触がした。
 見てみたら、湯飲みを掴んだ右手に蟻がよじ登ってた。
 餌を探しに来たんだと思う。
 息を吹きかけた。
 蟻は食卓に落ちて畳にまで吹き飛んで、逃げてった。









   
人生ゲーム片手に麦茶を握りしめる天子が書きたくなった。
という勢いで。
結果的に誰かと人生ゲームをやりたい天子が五割で、桃が三割で、蟻が二割、そういう話になった気がする。


*誤字随時修正中・ご指摘ありがとうございます*
胡椒中豆茶
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コメント



0.7370簡易評価
5.100名前が無い程度の能力削除
衣玖さんの私生活ぶりに六割、天子かわいいよ天子に三割、残りの一割は蟻萃香のその後に。
6.100名前が無い程度の能力削除
なんかいいなこういうの

とりあえず鯉が可哀想だから代わりますね
10.100謳魚削除
人間味溢れまくる衣玖さんにキュンと来ます。
てっちん良い娘ですてっちん。
萃香さんは多分蟻酸プrげふげふいえ何でも無いです。
じゃあ私はディープな肺魚たんと入れ替わって来ますn(殴符『怒髪天龍魚螺旋拳』
11.100名前が無い程度の能力削除
あれ?気づいたら読み終わっていた。続きが気になるというより、二人をずっとみていたいと感じました。お見事
15.100名前が無い程度の能力削除
いくさんの下着…タンクトップにロマンを感じた…

萃香は放置かw
18.80煉獄削除
なんだろうなぁ……淡々と進んでましたが面白かったです。
天子の行動がちょっと可愛らしい部分もあったりして良いですね。
衣玖さんの下着姿…そしてタンクトップ姿など、すごく良いです。

誤字の報告です。
>角へ丁寧にぐりぐりをねじ込むようにしていったら
『ぐりぐりと』ではないでしょうか。
23.90名前が無い程度の能力削除
なんか言葉にしにくいけど好きな雰囲気でした。
25.100名前が無い程度の能力削除
なんともシュールストレミングな世界だな(魚臭い的な意味で)
36.100ルル削除
何というか、趣深い作品でした。
あれこれ失敗もしながら天子が少しずつ友達を増やしていけるといいなぁ。
41.100名前が無い程度の能力削除
何このホワホワした天界。
すごく温度の低い文章なのに、何故かじわじわと心が熱くなりました。
42.100名前が無い程度の能力削除
いいもの読んだわ。
45.100名前が無い程度の能力削除
読んでよかった
47.100名前が無い程度の能力削除
俺なんかじゃ、この作品にしっくり来るコメントなんて書けないよ
50.100奇声を発する程度の能力削除
凄くスッキリしたお話でした!
51.100名前が無い程度の能力削除
私の天子のイメージはこんな感じでした。
あなたの作風で彼岸組を読んでみたい。
53.100名前が無い程度の能力削除
今99%になりました
キャーイクサーン!
こえーイクサンこえー
読みやすくて面白いな、天子がいい子だ
55.100名前が無い程度の能力削除
しゅ、しゅーるあんどぶらっく
58.100名前が無い程度の能力削除
まんま幼稚園児の頭だなww

衣玖さんが切れても可笑しくない、これは。
60.100名前が無い程度の能力削除
自分含めてこの雰囲気好きな人多そう
俺も彼岸組で読んでみたいな
61.100名前が無い程度の能力削除
二人の会話のテンポがとてもよかった。
例文を淡々と読み上げるような受け答えをしているにも関わらず、どこか暖かさを感じさせてくれる二人の雰囲気が好きです。
友人関係に慣れてからの二人の日常も見てみたいと思いました。
62.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです。次回作も期待しております。
64.100名前が無い程度の能力削除
こういうの好きです。
よくわからないけど読み終わったら嬉しい気分になった。天子がちょっと好きになった。
72.100名前が無い程度の能力削除
これはなんとちゅっちゅしたい天子
73.80名前が無い程度の能力削除
シュールすぎw
81.100ねじ巻き式ウーパールーパー削除
なんて空気の読めないてんこちゃんw でもそれがいい!
雰囲気にすっかり引き込まれて、最後はどこかほんのりとした気持ちに。
大好きな作品になりそうです。ありがとうございました。
82.100名前が無い程度の能力削除
好きよ。
83.100名前が無い程度の能力削除
東方projectの世界観って元々こんな感じだと思う。
素敵です。
85.90図書屋he-suke削除
やる気のない文体が最高w
86.100名前が無い程度の能力削除
そこはかとないシュールさが溜まりません。天子ちゃん素直すぎます。素敵です、とても。
87.100名前が無い程度の能力削除
SSでここまで笑えるのかと感心しました!動画になったらBGMは終始無音ってイメージですw
89.90名前が無い程度の能力削除
悪気は無いにしてもあの年でこの考えだと天子は矯正しようがないw
それを承知で付き合ってるとすれば衣玖は菩薩のような人柄だな。
たまに殴るけど。とりあえず俺ならどんなに可愛くても絶対無理だ。
91.100名前が無い程度の能力削除
っぱねぇ
95.100名前が無い程度の能力削除
冒頭付近では、むせ返るような桃臭がしてたのに、
終わりに向かうにしたがって、生臭くなっていく…w
でも結末は、おいしそうな匂いが漂いまくっているんでしょうね。
96.90名前が無い程度の能力削除
なんか、いいです。
98.80名前が無い程度の能力削除
素直なんだけど馬鹿過ぎる天子がかわいかったですw
102.100名前が無い程度の能力削除
淡々と流れる二人の日常が素晴らしかった。
107.90名前が無い程度の能力削除
感想を書こうと思ったら先達と同じことを言ってしまいそうだな……
淡々と、色のない風景と、天子といくさんの色のある風景。そんな印象を受けました。
ごちそうさまでした。
113.100名前が無い程度の能力削除
うん、なんかいい。
115.100名前が無い程度の能力削除
なんか…いい…
123.100名前が無い程度の能力削除
違和感無くスラスラとよめてすごかったです
この何とも言えない雰囲気がよかったです
125.100名前が無い程度の能力削除
電車の中なのに笑いが堪えきれなくて顰蹙かったじゃないか!
128.90名前が無い程度の能力削除
良いなぁ。
天子純粋だ。
139.無評価名前が無い程度の能力削除
謎に面白い
140.100名前が無い程度の能力削除
この何ともいえない感じ…こんな雰囲気大好きです。お見事!
143.100名前が無い程度の能力削除
ドタバタしてる筈なのに、静かだ。
でも重くない感じ。
144.100名前が無い程度の能力削除
早く夏にならないかなぁ
147.100名前が無い程度の能力削除
すぶゎらすぃです!
若手監督がつくる日本映画風味でした。
「もう頬杖はつかない天子」という副題をつけたいくらい、終盤までの天子の空虚な心理描写が怖かったです。
151.100名前が無い程度の能力削除
この天子、いいですね。
158.100名前が無い程度の能力削除
空気が読めないってこういうことか
不便だなあ
160.100名前が無い程度の能力削除
淡々と、それでも一歩ずつ天子は前に進めてると思う。
衣玖さん、そんな天子をもうちょっと見守っててあげて。
167.100名前が無い程度の能力削除
いいなぁ
168.70床間たろひ削除
哀しいほど愚かで、切ないほど必死で。
楽しげな会話や言い回しの裏に隠された天子の孤独に、ツンと鼻の奥が痛くなりました。

知らないこと、知りたいこと、誰も教えてくれなかったこと。
ドリルストレートのインパクトと共に、少しずつ学んでいけるといいよね。
169.100削除
無表情で切れるイクさんに興奮した

そして人は一人でも生きられるけど誰かと一緒にいればいろいろあるけどきっと楽しいですよね
174.90名前が無い程度の能力削除
天子の孤独感を表す一人称が巧すぎて、すごい勢いで感情移入してしまった。
切ない。
177.70Admiral削除
前半から中盤にかけての天子の幼さ・愚かさ(としか語彙の乏しい私には表現できない)と孤独感、
そして環境(天人とかパパとか)に、鬱々とした気分にさせられましたが、
後半の衣玖さんとの関係のわずかな(?)前進に救われました。
特に「空気を読む」とされる衣玖さんとの対比のためか、余りにも「空気を読めていない」天子を、
慰めてあげたいです。

2人の関係はここから始まるのだと思いたいです。
この2人の今後のお話、もっと読んでみたいですね。

※冒頭に微グロ注意の表記くらいあった方がいいような…>虫とか
179.100名前が無い程度の能力削除
久しぶりに読み返したけど、やっぱり不思議なお話だなあ。
やってることは無茶苦茶なのになぜか漂う寂寥感。
この独特の空気感を生み出す言葉のチョイスがすごいと思いました。
195.100名前が無い程度の能力削除
てんこちゃん絶対コミュニケーション能力において何かが致命的に欠けてるよ……
スマーティテストで鉛筆って言っちゃう子だよこの子……
最後てんこちゃんが刺されちゃうのかと思ったらそうでもなくてとても安心しました