Coolier - 新生・東方創想話

わかめスープと蕎麦の中間

2009/04/30 22:42:46
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 わかめスープである。

 霖之助はわかめスープに口を付けていた。目の前ではルーミアが、外の世界で作られた保存食を食べている。
 このわかめスープは元々、ルーミアが食べているものについていたもので、保存食を湯で食せる状態にし、その湯を捨てる際に一部を器に移して、わかめスープの粉末を溶かして飲むものであった。
 保存食の名はカップ焼きそば。乾燥した麺を茹で、ソースという液体をかける食べ物である。茹でるのに焼くとは何と面妖なことか。
「おいしいかい?」
「んー、んむ、むぎゅむむ」
「ほら、話すなら飲み込んでから」
 霖之助は顔に――――母性、否、父性ではなく、異性に対する愛情の――――笑みを浮かべ、ハンケチフでルーミアの口をゆっくりと拭った。横に目を逸らせば、幾つもの空の容器が転がっていることだろう。
「んー、おいし」
 ルーミアは満面の笑みを浮かべ、箸に焼きそばを絡めた。ゆっくりと箸は上がり、霖之助の口の前へ。
「はい、あーん」
「いや、僕より君が食べ」
「ダメ。ほら、あーん」
「……あーん」
 無様である。相手は妖怪であるが、見た目は童子。その前で口をあんぐりと開ける男は無様としか言い様がない。
 だが、笑う者はいないだろう。彼は男であり、彼女は見た目幼くも女である。恋愛とは他を顧みず、ただ二人にとっての多を見つめることなのだから。
「りんのすけは、いいこいいこ」
 なのだから、この様な子供扱いも、笑う必要はないのである。当然、霖之助は気にせず、口の中の蕎麦を噛み締め、飲み込み、ふと間接キスという言葉を思い出し顔を赤くした。
 恋愛を匂わせぬ者程初なのである。性別に関係なく。
「おいしいねー」
「ああ、たしかに美味い」
「でも、これはあれ、あれ?えっとあれあれ、あー」
「ゆっくりとでいいから、頭の中でまとめて」
 馴れだろう。ルーミアの考えずに話し出す癖を理解し、慌てなくていいと促す様は長年連れ添った夫婦の様である。実際、数度季節を越えているのだから分からなくもない。
「そう、きっとりんのすけと一緒だからおいしいんだよ」
「そ、そーなのかー」
「そーなのかーはわたしの口癖!」
 軽口を叩き合い、同じ箸で食事をする。彼等は、これからも仲良く暮らしていくことだろう。


 ところで、少々長くこの夫婦について話したが、本題ではなかったりする。


「ごっはん、ごっはん」
 幻想郷の巫女でも赤い方が、カップ焼きそばの前で笑みを浮かべていた。ルーミアの食していたものと違い、まだ完成前である。
「あと一分。そしたら開いて食べれる……」
 涎を拭う。このカップ焼きそばは香霖堂から持ってきたものだった。
 ツケではない。昨夜作った筍の煮付けをお裾分けに持って行ったところ、礼として頂いたのだ。
「と、三分か」
 ぺりぺりと蓋を外す。両手を合わせていただきます。
「前に紫に貰ったかっぷらあめんは美味しかったわね。これは……器の形が違うけど、具も多いし美味しいといいけど」
 いや、霖之助さんだし、美味しくないものは渡さないわよね。そう一人呟く。
 さて、彼女は幾つか勘違いしているのだが、それに気付かず口を付けた。勘違いとは、これを以前食べたカップラーメンと食し方が同じだと思ったこと、そして容器内に入っていた小袋をすべていれてしまったことである。
「……薄いわね。あ、でもこのお肉美味しい。わかめと、たしかこれはキャベツだったかしら。うん、こう考えると美味しいかも」
 そう。わかめスープの小袋の中身もカップ焼きそばの中にいれてしまったのである。
 それはまさにスープ焼きそば。否、ソース蕎麦である。幸運だったことは一つ。この焼きそばが辛子マヨネーズ付ではなかったことだろう。
「なに食ってんだ霊夢」
 頭から声が聞えたと振り向けば魔理沙である。箒に脚をかけ、鉄棒にぶら下がる様に地面へと頭を向けている。下着が丸見えであった。
「お昼ご飯よ。あんたも食べる?少しならあげるけど」
「ん、寄越してみろ。この味の評論家に任せるんだ」
「まずは地面に足をついてからね」
 おとなしく足をつく。魔理沙は帽子の中からマイ箸を取り出し、器を掴んだ。
「その帽子の中はどうなってるのやら」
「安心しろ。被ってる本人もわかってない」
 そう言いながら蕎麦を啜る。ズルッ、ズ、ズズという音をさせるが、下品に聞こえないのは彼女の育ちの良さ故だろう。
「なんというか、微妙だな」
「そう」
「だが……」
 また一口。口にいれ、噛み、飲み込み、また口に箸を動かすところで止められる。
「いや、これは癖になる。味の薄さが問題だが、すいとんなんかならこれより薄いものもあるしな」
「すいとんより水炊きが食べたいわ。鶏肉たっぷりの」
 霊夢はスープを啜りながら、鶏肉の味を思い浮かべる。最近も鶏肉は食べてはいる。食べてはいるが、丸々一羽ではなく、よくて半分、悪くて脚を一本少々。
 実際のところ一羽を丸々食せるのは、紅魔や冥界、外から食材を仕入れやすい八雲ぐらいなのだが、そんなことは関係がない。
「なあ、霊夢。ひとつ思ったんだが」
「なによ」
 ズズズッ。
「参拝者が少ないのは、この階段を登る見返りが少ないからじゃないのか?」
「見返りねぇ。お疲れでしょうし肩でも叩きましょうとでも言えばいいの?」
 むぐ、ズズッ、ジュル。
「いや、違う。こんな長い階段を登れば小腹も減る。休む場所もそんなにない。ならそれを作ればいい」
「博麗名物幻想郷饅頭」
「なんだそれ。いや、だからな。今食べてるそれだ」
「これ?」
 ゴクッ、ゴクッ、んぐ。
「そう、それだ。それを売り出せばいい。参拝者に格安で」
「嫌よ面倒くさい」
「生活する分の金に困ってないのは知ってるが、茶葉や煎餅、その他諸々にかなり金をかけてるだろ」
 痛いところを突かれたのだろう。確かに、茶の消費に関しては一般家庭よりも多い。客人の多さもある。
「でもこれ、貰い物だから同じのは作れないわよ?」
「蕎麦なのか素麺なのか知らないが、それを茹でて味を付けるだけなら同じものじゃなくてもいいだろ。あとは具材と、味付けだが」
 ブツブツと一人呟く様はあまりに不気味。
「はぁ。魔法使いとかはこれだから」
 急須からお茶を注ぐ。渋かった。

 その後、霧雨魔理沙の鬼神の如き働きにより、博麗印のソース蕎麦は日の目を見ることになる。人気は上々。
 微妙ではあるが癖になる味に、人妖問わず神社に溢れ、その人々が生み出す金銭と活気に霊夢と魔理沙の笑顔は絶えなかったという。
 賽銭は入らなかったが。
 一方、紅魔館近くの湖。氷精と大妖精もソース蕎麦を作っていた。

「ち、チルノちゃん……?」
「なにさ」
 熱されたフライパンを振りながら、そして自身は溶けながらチルノが返答する。腐りかける前の枝などを燃やし、熱したフライパンの上では蕎麦が踊っていた。
「わ、私がやるよ?」
「大丈夫!あたいに任せなさいっ!」
 そう言いながら、ソースをフライパンに垂らしていく。博麗神社からの要請により、紅魔館が製造したソース蕎麦ソースである。日本語がおかしい。
「あ、ほら、もっとお水いれなきゃ」
「いいよ。めんどくさいし、いい匂いだよ」
 チルノの言葉の通り、フライパンの上からソースの焼ける良い匂いがしてきている。
「でも、それじゃあソース蕎麦じゃないよね……?」
「んー……、じゃあ、焼いてるから焼きそばとか」
 この様にして間違いは正されたのである。ただ、この焼きそばを食せる場所はまだ少ない。御求めは夜雀の屋台でどうぞ。


 長々と語ってはいるが、これも本題ではなかったりする。


「ねぇ、メリー。ここに置いといた焼きそば知らない?」
「食べたんじゃないの?」
 少し変わった目を持つ学生、宇佐見蓮子は首を傾げた。先日買ってきたカップ焼きそばがないのである。
「食べた記憶はないんだけど」
「焼きそばの神隠しなんて三面紙にすら載らないわよ?」
 一方、蓮子よりも不思議な目を持つ学生のマエリベリー・ハーンは、グツグツと手鍋の中で何かを煮ていた。
「……それ、なに?」
「わかめスープ雑炊。焼きそばのスープだけ取っといてるでしょ、蓮子」
「苦手なのよ、あれ」
「食べず嫌いじゃなくて?」
「正しくは飲まず嫌い」
 グツグツと、グツグツと、大量のわかめがご飯と共に煮立っていく。
「ほら、ちょっと食べてみなさい。おいしいから」
「あー」
 おたまにご飯を一掬い。それはもはやわかめスープではないと気付くのはいつの日か。
「あーん」
「無理だって、おたまじゃ。口にはいらない」
「あーん」
「いや押し付けな熱ッ!だ、やめなさいメリー!」
 平和である。
 平和な日々はこの様に過ぎていく。


 ところで本題が何かを忘れてしまったが、まあ気にする程のことではなかろう
わかめスープはおいしいが、気付いたら飲まずに終わっている
そして、気付いたら消えている
これはスキマの罠だ

http://coolier.sytes.net:8080/th_up3/file/th3_9352.txt
やっぱり秘封倶楽部はいいものです
◆ilkT4kpmRM
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コメント



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1.70クロスケ削除
えー、なんだこれ。えー。
はい。わかめスープはおいしいですよね。あれはいいものです。カップ焼きそばも。
本題は………うん。なんかもうどうでもいいや。
あ、一箇所気になった部分が。
>熱されたフライパンを振りながら、~鎖かける前の枝などを燃やし、
→『腐りかけ』の誤変換かと。

あー、だめだ。きっとあまり美味しくないだろうに、お湯捨てないでカップ焼きそば食べたくなってしまった。
買い置きのヤツまだあったかな………
3.80煉獄削除
ああ…とても平和だ…。
霖之助とルーミアの生活や彼女の可愛らしさがとても微笑ましいです。
霊夢と魔理沙の商売行動とか、メリーが熱々の雑炊を盛った状態のお玉を
蓮子に押し付けるというのも賑やかというか、とある日常という感じで良いですね。
面白かったですよ。

誤字の報告です。
>鎖かける前の枝などを燃やし
『腐りかける』ではないでしょうか?
6.90名前が無い程度の能力削除
和む…
山も落ちも無いけど和む…
7.100名前が無い程度の能力削除
なんだこれと言いたくなったけど面白かった
でも何がいいたいかはわからなかったw

いつのまに結婚したんだよルーミアと霖之助ww
8.80名前が無い程度の能力削除
すげぇ和んだww
あと7000おめでとうございます!
15.80名前が無い程度の能力削除
正に身を削ってまでという感じで料理してるチルノに惚れた
というか、カップルばっかだな!畜生!!

カップ焼きそばも好きだけど、冬場は熱さ的にヌードル(ラーメン)かな
18.100名前が無い程度の能力削除
理想のSSがここにあったようだ。
すんげえ好きだ。
24.90やきそば。削除
わかめスープは必ず飲むのがジャスティスです。
でも、あれは確かに人によって扱いが違いますね。
自分は湯切りのお湯じゃなくて、普通にやかんのお湯を使います。
流石にスープ焼きそばにした事はありませんが。

しかし、おのれ霖之助め……。ギリギリギリ。
26.80名前が無い程度の能力削除
BGOO○OONってマイナー焼そばなんだよね・・・
28.80名前が無い程度の能力削除
北海道じゃわかめスープじゃなくて中華スープなんだよな……。