最初の方に微グロがあります。
と言っても、作者の力量が余りにも低いのであまり問題はないかと思われます。
問題無いと思ったら、下にスクロールをお願いします。
視界は闇ばかり。
しかし、目が慣れてきたのか徐々にクリアになっていく。
クリアになった私の目に映ったのは、私の敬愛するお嬢様の――――血塗れの――――顔だった。
「ーっ、お嬢様!!」
私の声に気づいたのか、お嬢様が私の方を向き力ない笑みをうかべた。
その顔は異常な程白く、周りの闇とあいまってあまりにも異様だった。
視線を顔から体に移すと、そこもまた異様だった。
お嬢様の体には―――穴が開いていた。
「お嬢様っ!!」
私の言葉が届いているのか、お嬢様は力ない笑みをうかべるばかり。
顔に付着しているのはお嬢様自身の血だろう。
ふと、お嬢様が前を向いた。
それにつられて私も前を見る。
そこには、異常な程の数の弾幕。あれを食らったら、お嬢様とてただではすまないだろう。
弾幕の隙間からちらりと誰かが見えた。
目を凝らす。
そこには銀の髪を紅く染めている――私自身が居た。
「…な、どう…なってるの…」
訳が分からなかった。
私がお嬢様を?
誰が何だって?ありえない。ありえるはずがない。
戸惑う私にお嬢様の視線が向く。
その口が…「さくや」と動いた気がした。
私は駆け寄ろうとして気づいた。
動かないのだ、足が。いや、体全体が。
視線を前に戻すと、弾幕にのみ込まれていくお嬢様の姿が。
そこで、私の視界は闇にのまれた。
再び、意識がクリアになっていく。
しかし、またも周りは闇ばかり。
その闇の中にうかんだできたのは、鮮やかな紅を纏う私の愛すべき姿。
「美り…」
私が彼女に近づこうとすると、彼女から私の方に振り向いた。
振り向いた彼女の顔は、いつもの笑顔でなく、完全なる――無の表情だった。
そこには一片の感情も込められてなく、ただ、顔に付着している血の紅だけがいやに鮮明に映った。
その不気味さに私は思わず足を止め、周りを見回した。
先程、闇に染まっていた場所には元は何かの形をしていたであろう――肉片が散らばっていた。
私はひとつ後ずさりした。
空いた距離を埋めるように、無表情のまま彼女が近づいてくる。
恐ろしいと、いままで彼女に対して思ったことのない感情が芽生えてくるのが分かった。
また一つ後ろに下がろうとして気づく。
また動けなくなっている。
顔を上げる。
目の前には、彼女が拳が振り上げている姿が映る。
あくまでも無表情に。
彼女の拳が私の顔めがけ振り下ろされる。
そこで、私の意識は途絶えた。
「はっ!」
目を開ける。
周りを見回してみる。そこは見慣れた、少しばかり殺風景過ぎる自分の部屋だった。
私は今、自室のソファーの上で横になっていたらしい。
休憩でもしていたのだろうか。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
それにしても嫌な夢を見た。未だに息が切れ、背中には嫌な汗を掻いているのが分かる。
とりあえず体を起こす。
「まったく馬鹿らしい。 そういえば、今何時かしら?」
懐から愛用の懐中時計を取り出す。
「午前10時49分…。 お嬢様はまだ寝てるわね」
ソファーから腰を上げて、姿見で自分の姿を確認する。
服装、髪型には乱れなし。多少顔色が悪いが、まぁ許容範囲だろう。
あと、シャワーを浴びたいがそんな時間は生憎と無い。
昼頃にかけては忙しいのだ。しかも、少しとはいえ寝ていたとなればなおさらだ。
私は雑念を追い払うように頭を振る。しかし、どこかあの夢が頭にこべり付いているようで気持ちが悪い。
「そんなこと気にしてる場合じゃないわね。ふぅ…」
少しもやもやした気持ちを抱えながら、私はドアノブに手をかけ引く。
廊下に出て、まず私を襲ったのは違和感だった。
「変に静かね…。 そういえば、妖精メイドを見かけないわ」
いつもなら騒がしいはずの廊下が物音一つしない。
その原因たる妖精メイド達の姿も無い。
「また何処かでサボっているのかしら。 …まったく。
居るとしたら……食堂かしら?」
もうすぐ昼だ。居てもおかしくない。むしろ一番可能性が高い気がする。
「おかしいわね」
食堂に向かっているというのに、音が無い。いつもなら食料を追い求め、うるさいを通り越して騒がしいはずだというのにだ。
しかも、ここまで一人もメイドを見かけなかった。
少し、いや、かなりおかしいが、まだ食堂の扉すら開けてないのだ。
結論を出すにはまだ早い。
そう思って、私は前方に迫った扉を開け放つ。
そこには――――誰も居なかった。机や椅子だけが不自然なほど整頓されてあるだけだった。
「え……」
思わず声が出ていた。
私は踵を返した。
お嬢様なら何か知っているはずだ、と期待にも似た思いを抱きながらお嬢様の自室に向かった。
「着いた……」
お嬢様の自室の扉の前に着いた。
予想通り、ここまでメイド達を見かけることは無かった。
私はドアノブに手をかけた。
だが――引けなかった。
食堂の扉のように簡単に開けることが出来ない。
寝ているお嬢様を起こして怒られるのが怖いわけじゃない。
いや、それも怖いがそれ以上に、もしこの扉を開けて、中にお嬢様が居なかったら――――。
そこまで考えて、私は頭を振った。
いけない。悪い方向に思考が傾いてしまっている。
「大丈夫……」
呟き、決心する。
私は思い切って扉を開けた。
静寂――。
それが部屋に満ちていた。
ベッドに近寄っていく。
ゆっくりと。
たどり着き、シーツを剥ぎ取る。
そこに――お嬢様は居ない。
ぬくもりも感じられない。
誰かが居たという痕跡が見当たらなかった。
「お、嬢様……?何処かに居るんですよね?私をおちょくっているだけですよね?
何処かで見ているんですよね?悪趣味ですわ、お嬢様。居るのでしょう?
だから、早く……出てきてください、よ……」
何を言っても、誰も私の前に姿を現してくれなかった。
よろけそうになる。だが、すんでのところで踏み止まった。
「まだ、まだよ。まだ私には確かめなければいけないことがある」
思い浮かぶのは愛しいあの人。そして笑顔。
私の目は自然と門へと向かっていた。
歩く。歩く。門へと向かって精一杯の速度で歩いていく。
走らない。いや、走れない。走ろうとすると足がすくんでしまう。
「情けない……」
一人ぼやく。
しかしその声も、すぐに静寂にのみこまれる。
響くのは、私の無機質な足音だけ。それさえもすぐに静寂の中に掻き消える。
響く。消える。響く。消える。また響く。また消える。
やがて、門の内側に着いた。
彼女は門の外側に居るはず。
寝ているかもしれない。しっかりと起きて仕事をしているかもしれない。
どっちでもいい。彼女が居るならば、それだけでいい。
「美鈴っ!」
すくむ足を抑え、すがる思いで外に出る。
「居ない……」
誰も門に―――立っていなかった。
愕然とする。
膝をついた。
誰も――居なかった。
そんなのは分かっていた。お嬢様が居ない時点で気づいていた。
だが、心がそれを受け止められなかった。信じられなかった。
ここには、私一人だけ。
私一人。その言葉が私の心を蝕んでいく。
昔、友達に。家族に。村に。人間に。世界に―――見捨てられた。
私一人だけ、孤立した。何もかも失った。
だけど、手に入れた。
大切な物を。大切な人を。
私の居場所を。
一人じゃないと胸を張って言えるようになった。
「なのに、なのにっ――!」
また、失った。
また、見捨てられた。
また―――、一人になった。
「う、うぁあ…うあぁあああぁぁあぁああぁああぁあああ!!!!」
地面に蹲り、哭いた。
頭を抱える。
途端に、何かが体に圧し掛かる。
何かは分からない。
ただ、重く。体が重くなっていく。
体の力が抜けていく。
目を瞑りたくなる。そうだ、瞑ってしまおう。
一人だけの、大切な人達が居ない、この世に意味などない。
楽になってしまおう。
「―――ん。―――さん」
誰かが何か言っている。
「―――やさん。――く夜さん。咲夜さん」
私の名前を呼んでいた。
もう誰にも呼ばれないと思っていた私の大切な名前を呼んでいる。
ああ、残っていた。まだ大切な物残っていた。
「咲夜さん!」
呼ぶ声が叫びに変わる。
その言葉に答えたい。だが、答えられない。
もうそんな力残っていない。
今にも目を瞑ってしまいそうになる。瞑りたくないのに。
まだこの世に居たいのに!
だけど、無残にも力は抜けていく。
ごめんね。さようなら。皆。
見えるものが闇だけになった。
「咲夜さんっ!!」
より強い叫び声と共に、引き上げられる感覚を私は感じた。
それと共に、力が戻ってきた。
目も開けられる。
「めい、りん…?」
目を開けた先には、私の大切な人の不安そうな顔。
思わず、その頬を撫でる。
「咲夜さん、起きたんですね」
「…美鈴?」
「はい、私です。美鈴です」
「本当に、美鈴なの?」
「本当に、美鈴です」
美鈴が頬を撫でる私の左手を握る。
握り返す。 微かな、だけど確かなぬくもりを感じた。
「美鈴っ!!」
「さ、咲夜さん!?」
美鈴に抱きつく。 もっとぬくもりを感じたくて。もっと近くに居たくて。
もう放したくなくて。
「咲夜さん…」
美鈴が私の体に腕を回してくる。
私の体を抱きしめていく。
「怖かったの……」
美鈴は何も言わない。ただ抱きしめる力を強くしてくれる。
「怖かったの……。怖い夢を見たの……」
何も言わない。ぬくもりだけが何かを伝えてくれる。
「お嬢様を私が……。 美鈴が美鈴じゃなくて……。 皆居なくて。わたし、ひとりで
「もういいです! もう、いいです」
全部言い終える前に美鈴が私を強く抱きしめ、言葉を遮る。
美鈴がくれるぬくもりが温かくて。安心できて。
「わ、わたし…こわかった……さびしかったよぉ」
つい甘えてしまって。
美鈴の服を濡らしてしまって。止まらなくて。
「大丈夫。大丈夫ですから」
ただ強く抱きしめてくれる。
少し痛い。でもそれさえも嬉しくて。
胸がいっぱいになっていく。
「これからは私が一緒です。どんなときも一緒です。 寂しくなんて、不安になんて、私がさせません」
その言葉が胸にしみていく。
美鈴の服に顔を押し付けてしまって。染みが広がってしまって。
だけど、そんなことよりも、美鈴が私の大切な人が傍に居る。
ただそれだけが嬉しくて。心を温かくしてくれて。
また甘えたくなって。
「めいりん……。ぅうう……」
涙が溢れて。止まらなくて。
でも、嬉しくて。胸がいっぱいで。心が温かくて。
抱きしめる力を強くする。もう手放したくなくて。
応じるように強く抱きしめてくれる。
そんな貴方が好き。大事な人。
貴方の隣が私の居場所。そんな錯覚にも似たことを考えた。
「大丈夫ですか?咲夜さん」
「まだ、このまま」
「わかりました」
その言葉が私を安心させてくれる。
安心したら眠気が襲ってきた。
でも、寝るのが怖くて、素直に眠気に身を任せられない。
「眠いんですか?」
「少し…」
「なら、寝たらどうです?」
「でも……」
「大丈夫ですよ。 さっきも言ったでしょう。私が傍に居ますよ」
「本当に?」
「はい。なんならこのままでもいいですよ」
「でもそれじゃあ、腰が痛くなりそう」
「そうですね。 じゃあ、ずっと手を握っててあげます」
「……それなら安心ね」
美鈴の体から離れる。ちょっと名残おしかったけど手は握ってたので我慢。
そのままベッドに横になる。
「ちゃんと手、握ってるのよ」
「分かってますよ」
ちょっと笑いながら美鈴が答える。
まったくもって失礼だ。
私は本当に怖いのに。
でも、握る手がぬくもりを伝えてくれる。
それが、私を安心させてくれて、悪い夢なんて見るはず無い。そう思えてくる。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
目を瞑る。思ったより素直に閉じた。
次第に意識がまどろみに沈んでいく。
「いい夢を」
誰かが髪を撫でてる気がする。
悪い気なんてしない。むしろ気持ちいいと感じる。
そのまま、私は眠りについた。
夢を見た。
その夢は
お嬢様がいて、美鈴がいて、妹様がいて、パチュリー様がいて、小悪魔がいて。
妖精メイド達もたくさんいる。
そして、その中に私がいる。
みんな笑顔で、幸せそう。
大切な物があって、大切な人がいて。
居場所があって、一人きりじゃない。
そんな夢だった。
もちろん、私も幸せそうに笑っていた。
ぬ~べ~が入院してて、広が結婚してる。そういう未来に行ったんだとか。
最初の表現は場面を想像して凍りつきました(美鈴の所)
この話の咲夜と美鈴はとても理想的。
そして2828SS、たまんねぇww
やっぱり夢オチと言うのは読んでてがっかりするものだ。
自分が書き手になった場合は一番簡単なまとめ方なんだが…
>>1様
是非そうしてください
>>Jupiter様
知ってましたか。
私も大分昔に見たもので懐かしいなと思います
>>13様
ありがとうございます。
次の作品を書く励みになります。
>>15様
確実にありますね…
>>19様
2828ありがとうございます
>>20様
確かに、と思いました。
改善していきます。
>>28様
がっかりさせてすいません
しかし、枕返しとなるとこうなってしまいました。
次はしっかりしたまとめをできるよう頑張りたいです
夢オチを重ねるのなら
悪夢→悪夢で続けるよりも
悪夢→幸夢→実は悪夢のように一回読み手を安心してから裏切ったほうが面白くなると思いました。
勝手な意見ですみません。