Coolier - 新生・東方創想話

雨の日の紅魔館 プラス 1

2009/04/26 21:12:17
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 3時のお茶の後、私は窓の近くへ寄って、外の景色を眺めた。
 苦手な太陽の光は今は弱いが、外に出るには厳しかった。雨が降っているからだ。
 空は低い鉛色の雲に満たされている。
 雨滴がしたたるガラス窓の向こうに、庭と壁、空と同じ色の湖、深緑の森が広がっていた。
 晴天と同じく、こんな雨の日も私たち吸血鬼は好きじゃない。
 太陽の光もだめ、流れる水もだめ。支配者を気取る割には、私たちは制約が多すぎる。
 でも雨がやんで明るくなっていくのを見るのは好きだ。
 日傘を指せば霊夢のところにも遊びに行けるし、里へ行ってお店を見て回ることもできる。
 「早くやまないかしら」
 そういって指をガラスにあててつぶやいた。



 雨は洗濯物が乾かない、それに外界にいたときの事を思い出させて少し憂鬱になる。
 冷たい雨の中を一人ぼっちで歩く私。
 油断している通行人をナイフで脅し、いくばくかの糧を得る。
 その暮らしには慣れているつもりだった。
 でも時折どこかの家から一枚の窓を通して漏れてくる、夕食の匂い、暖かな光、幸せそうな家族の談笑がどんな寒さや風雨よりも辛かったのだ。
 しかし、この館は、お嬢様は、みんなはそんな私に望むものを与えてくれた。
 それに雨の日も悪い事ばかりじゃない。
 風邪を引くといけないから差し入れよと、美鈴のところへ勤務中立ち寄る口実ができるのだ。
 妖精メイドに指示を与えてから、笹の葉にくるんだおにぎりを持って正門へ行く。
 


 お嬢様や妹様には悪いけれど、私は雨の日が好きだ。
 空気が澄み切って、埃もたたないし、雰囲気を落ち着いたものにしてくれる。
 それにちょっと寒いこういう日は、咲夜さんが差し入れを持ってきてくれるのだ。
 馬鹿は風邪引かないというけれど、余ったからこれでも食べろって。  
 私は気を操れるから、多少の雨風は大丈夫だし、咲夜さんもそれをわかっているのに、私がふざけて咳き込むふりをしただけで不安そうな顔になるのがちょっと可愛い。
 あっ咲夜さんだ。今日はどんなおやつかな。
 彼女もいつかは死ぬ人間だ、だから妖怪になってしまえばいいのにと思う。
 でも、それがかなわないのなら、せめてこの時を楽しもう。後悔のないように。 

 

 静かに本を読む、ふと何かが物足りないことに気づいた。
 魔理沙が来ないのだ。
 何かと騒がしい人だが、来なけりゃ来ないで寂しい。
 本ばかり読むのも少し飽きたから、彼女の興味を持ちそうな本を見繕ってあげよう。
 そしてそれとなく目のつく場所へ置いておくのだ。言葉には出さないけどね。
 ただ、彼女が興味を持ち、かつ持っていかれても損失の少なそうな本を見つけるのは難しい。
 『一生貸与』となっても痛くも痒くもない本に限って魔理沙は無視するのだ。
 そうだ、なら私も魔理沙の家に行って、本を取ってくれば良い。
 そう言うと小悪魔は微笑んだ。
 バカね、別に魔理沙と仲良くなりたいからじゃなくてね、借られる前に借り返せ、よ。



 咲夜さんが外に出て行ったので、妖精メイドさんたちが一息ついている。
 こらこら、メイド長さんがいないからって手を抜いちゃ駄目ですよ。
 私が注意すると、妖精メイドさんたちは急いで仕事に戻っていく。
 悪魔である私が堕落を戒めるのは変なのかな?
 パチュリー様が魔理沙さんの家に打って出るとおっしゃったけど、ずっと入り浸って帰ってこなくなったら嫌だな。
 もちろん私がついていけばいいんだけど、図書館を管理するひとがいなくなってしまう。
 あっそうだ、魔理沙さんの家と図書館をワープゾーンのようなもので繋ぐのは……というのもマズイか。
 窓を見ると、雨がやんでいた、雲間から射す太陽の光がすごく綺麗。



 ずっと地下室で暮らしている私にとっては、外が雨だろうと晴れだろうと関係ない。
 どちらにせよ、姉さまや咲夜の同伴なしには出られないのだ。
 でも実は、門番小屋に通じるトンネルが床下に隠されていて、そこからいつでも外に出られるのだ。
 でも雨が降っていれば動けないのは同じ。
 トンネルのことは内緒だよ。私はともかく、協力してくれた美鈴がかわいそうだからね。  
 姉さまが来た、何食わぬ顔で姉さまを迎える。今夜の宴会に行かないかと言う。
 姉さまは今日は特に嬉しそうだった。長かった雨がようやくやんだらしい。
 

 
 私は神社の境内で、天を仰ぎ、雨を全身に受けていた。
 滝行みたいなものかしら。
 雨が全身を打っていたが、濡れるに任せる。幻想郷の自然を一心に感じ取る。
 誰かが見たら気が触れたと思われるかも知れない。
 でも、どうしても確かめたい事があったのだ。
 しばらくして、社務所に戻り、体を拭き、服を着替えた。
 ため息をつく。












 「やっぱり雨じゃ腹の足しにならなかったか」
 特に何か事件が起きるわけではありませんが、たまにはこういうものもいいかも。
とらねこ
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コメント



0.1470簡易評価
3.100煉獄削除
最後の霊夢の場面でニヤリとしてしまいましたねぇ。
その前までの静かで良い彼女たちの語りと雰囲気を
吹き飛ばすようなものが来るとは思いませんでした。
霊夢の言葉もそうですが、彼女たちそれぞれの
雨への考えなど、とても面白かったですよ。
5.90名前が無い程度の能力削除
なんというグッドほのぼの……
 
だが霊夢ww
8.90名前が無い程度の能力削除
れいむー。
ほかの天気も見たくなりました。
10.80名前が無い程度の能力削除
霊夢さん、それは逆に身体が冷えて疲れるだけでしょうwww。
13.100名前が無い程度の能力削除
ほのぼのしている中に甘酸っぱい恋愛模様が・・・
プラス 1でシリーズものかとおもたwww
16.90名前が無い程度の能力削除
宴会でお腹いっぱい食べるといいよ霊夢
18.100名前が無い程度の能力削除
霊夢、雨水飲むならちゃんと煮沸しないとダメだよ
23.90薬漬削除
さり気なく入ってるめーさくが良いね。
霊夢・・・
24.70コメントする程度の能力(ぇ削除
最後…
雨に対する感情が面白いです
27.100奇声を発する程度の能力削除
ほのぼの
すごく・・・ほのぼの。
良かったです!!!
29.100名前が無い程度の能力削除
紅魔館は平和です。

スッ・・・つミ500円
34.100名前が無い程度の能力削除
なんというはらぺこれいむww
35.100名前が無い程度の能力削除
ポエムのようだったが最後の1行で現実に引き戻されたwww

雪を食うならわかるが....
霊夢....自然を感じるとかどうかよりも雨をそのまま飲むのは止めなさいw
腹壊しても知らんぞ

それにしてもインパクト的には、+1が本体だったなwww
37.100名前が無い程度の能力削除
霊夢、うちに来れば麦茶の一杯くらい出すぞw
38.90名前が無い程度の能力削除
+1ってそういうことか……。
叙情的でとても綺麗だと思います。