*この話は第10話に当たります。が、学園モノだと思えば単独でもあまり問題ありません。
*ちなみに1話~3話は作品集72に、4~7話は作品集73に、8、9話はこのすぐ下の方にあります。
*舞台はここではない現代日本です。弾幕はありません。
*秘封倶楽部の2人には出番が無いです。
*それでも構わない、尚且つ、時間を潰す覚悟と余裕のあるお方がいれば、読んでくださると幸いです。
A.m.06:00
Side:K
チャチャチャチャンチャンチャン、カチッ
「ふわぁ」
寝ぼけ眼を擦りながら、備え付けのシャワールームへ。パジャマと下着を脱ぎ捨て、熱いシャワーを浴びる。お湯が目覚まし代わりだ。髪の毛を乾かし、前日から用意しておいた下着をつける……最近少しきつくなった気がするな。そろそろ買い換えないとダメか?高いからイヤなんだよなぁ……
A.m.06:30
Side:K
シャワー室から出て、TVのニュースをつける。ズー○イン!うむ、これをやらないと一日が始まらないな。ブラウスに着替え、スカートを穿いて、髪の毛を整える。今日はサイドアップにしようかと思い、試しに手で髪を押さえてみるが、微妙だ。なんかバランスも取りづらいし、結局そのまま。まぁ、見せる相手がいるわけでもなし、当分このままストレートだろう。さて、相方を起こすとしようか。
A.m.06:45
Side:K
「朝だぞ~」
と声をかけるが、どうせすぐには起きない。彼女は中学時代からのルームメイト、藤原妹紅。事情があって元お嬢様、今庶民。少々柄が悪く、とっつきにくそうに見えるが、実際は素直で心優しい少女だ。運動神経はかなりの物で、勉強は……私が付いているから大丈夫。背丈や髪の長さは私と殆ど変わらない。
そんな妹紅がいつものように、安らかな寝顔でおへそを丸出しにしている。普段あんまり目つきが良くない分、寝てるときの柔和な顔は正に天使だ。声をかけても起きないことを確認してから、ほっぺをツンツン。
「はぁ~、至高の触り心地だ」
ツンツン、ぷにぷに、ツンツン、ぷにぷに、ツンツン、ぷにぷに、ツンツン、ぷにぷに、ツンツン…………
A.m.07:05
Side:K
「はっ!いかん、もう7時過ぎじゃないか!起きろ妹紅!7時だぞ!」
「うにゅぅ……」
「ほら、起きた起きた!」
「う~」
とりあえず、上半身だけは起き上がった。あと5分もあれば起動するだろうし、朝食の準備だ。オムライスでいいかな?
A.m.07:25
Side:K
「おはよっ、慧音!」
「あぁ、おはよう妹紅」
のそのそと起き上がってから洗顔などに15分。まだジャージ姿だが、どうやら完全に眼は覚めたようだ。元気の良い朝の挨拶をしてくれた。私も、朝食を盛り付けながら挨拶を返す。半分にスライスしたミニトマトと、パセリを添えて……出来た!今日のは自信作だ。早速披露するとしよう。
「どうだ妹紅?」
「……これは、何?」
「王蟲ライスだ♪」
パセリを先端部の足に、ミニトマトを目玉にそれぞれなぞらえた傑作・王蟲ライス。○ブリ大好きな妹紅のことだ。きっと喜んでくれるだろう。
「今回のは自信作なんだ。凄いだろう?」
「……確かに、凄いね」
「さ、遠慮せずに食べてくれ♪」
「あ、ありがとう慧音。いただきます」
「いただきます」
不器用な笑顔を浮かべながらも、美味しいといって食べてくれる。相変わらずなやつだ。満面の笑みを浮かべれば、誰にも負けない素敵な美少女だというのに。この照れ屋さんめ。
Side:M
寝ぼけながらも洗面所で顔を洗う。冷たい水がぼやけた頭を呼び覚ましてくれるのか、段々と意識がハッキリしてきた。
「ん~?太ったのかな?」
顔を洗っていて思ったのだが、また頬っぺたが柔らかくなった気がする。体重は変わってないし、3サイズも特に変動はないのに、頬肉が付いているような気がする。なんでだ?ま、いっか。慧音が朝食を用意して待ってるだろうし、早いとこ食べよう。
「おはよっ、慧音!」
「あぁ、おはよう妹紅」
いまだ寝巻き用のジャージ姿の私とは違い、慧音は既にスカートにブラウス。牛さん模様のエプロン姿が良く似合っている。気立ても面倒見もいいし、きっといい奥さんになるんだろうな……センスさえ問われなければ。今日の朝食は何を出されるんだろうか?そう思っていると、慧音がちゃぶ台に大きめのお皿を置いてくれた。
「どうだ妹紅?」
その皿の上には、なんだろう?オムレツ、いや、オムライスか?かなり特徴的なオムライスが皿に鎮座している。一言で言えば、芋虫かな?段違いになった卵に、太く作られている左側にだけ集中的に載せられたミニトマト。その先端部からは、パセリの茎の方だけが何本も飛び出ている。葉っぱの部分は、サイドにぴったりと添えられていて……何というか、解説が欲しい。分からないことがあるならけーねに聞けって、けーねが言ってた。
「……これは、何?」
「王蟲ライスだ♪」
って、けーねが言ってる。王蟲?王蟲って、ナ○シカに出てくるアレのこと?そう言われて見れば、確かにそうだ。よく再現されている。再現されてるけど、日本人、基本芋虫不食。そんな事を思い、固まっている私に、慧音が得意げな笑みを浮かべている。
「今回のは自信作なんだ。凄いだろう?」
「……確かに、凄いね」
そりゃ凄いさ。高校生が朝からこんな手の込んだオムライス作るんだから。いろんな意味で凄すぎるセンスだよ。
「さ、遠慮せずに食べてくれ♪」
慧音は何事にも真面目で、何でもこなせる。けど、時々何かが致命的にずれている。今まで、何度も指摘しようとしてきた。けど、こんな素敵な笑顔を浮かべられたら、何も言えない。ましてや、料理に関しては私はサッパリなのだから。
「あ、ありがとう慧音。いただきます」
「いただきます」
きっと味は、完璧なんだよな……ゴメン、ナウ○カ。あれだけ必死に守ろうとしてたのに、私、王蟲食べちゃう。心の中で謝りながら、尻尾にスプーンを突き立てる。ホントに、美味い。あぁ、そんな怒りに取り付かれた目をしないで欲しいな。
A.m.07:55
Side:K
朝食も食べ終わり、歯磨きもした。今は2人とも着替え中。今日で一旦春服は着収めだ。気温も大分高くなってきたし、GWが明けたら夏服になる。クリーニングに出さないとな。
「慧音~、行ける?」
妹紅も着替え終わったようだ。む?また、ボタンあけてネクタイしてないな。校則違反というわけでもないが、やっぱりだらしなく見える。同じお嬢様でも輝夜と偉い違いだ。まぁ、あっちはあっちで物凄くだらしない気はするが。ある意味似た物同士なのか?とりあえず、学校行かなきゃな。
「あぁ、行こうか」
Side:M
よっし、着替え完了。最近あったかいなぁ。襟元開けてないとやってらんないよ。本音を言えば夏服着て行きたい位だ。慧音も、もう着替え終わってるよね?
「慧音~、行ける?」
「あぁ、行こうか」
いつものようにぴちっと制服を着ている。中学の2年くらいから思ってたんだけど、きつくないのかな?ま、聞いてもしょうがないし、さっさと学校に行こう。
A.m.08:20
Side:K
「おはよう、慧音、妹紅」
「おはよ」
「おはよう咲夜」
教室に入ると、隣の席の女子から声をかけられた。彼女の名前は十六夜咲夜。古文の西行寺幽々子先生の、最初の犠牲者だ。初めの内は怜悧な印象を受けたが、話してみると意外と気さくなやつだった。運動神経、勉学、美貌を兼ね備え、調理実習ではパーフェクトな腕前を見せ付けてくれている。聞く所によると、メイドのバイトをしているらしい。クールな彼女がきゃぴきゃぴの笑顔で「お帰りなさいませ、ご主人様♪」と媚を売る姿はかなり想像しづらいが……コスプレは性格変えるって言うからな。どんな感じなんだろうか?ついぞ本人に聞いてはいない。他にも何人か挨拶をしてくれる。が、『委員長』はやめて欲しい。そのあだ名で呼ばれると、強制的に2学期も委員長をやらされる気がしてならん。って、寝るな妹紅。
side:M
「おはよう、慧音、妹紅」
「おはよ」
「おはよう咲夜」
教室に入り席に着こうとすると、慧音の隣の女子に声をかけられた。確か、十六夜咲夜だ。スレンダーな、美人。どことなく、慧音と同じ雰囲気が漂ってるような気がするのは気のせいだろうか?気のせいだよね、多分。とりあえず、先生が来るまで寝よう。顔を伏せた瞬間、チョップが飛んできた。
A.m.09:16
1時間目:数学
Side:K
「そうそう、無限といえば、ロシアのカントールなんだけど」
クラスの何処からか溜息が漏れた。1時間目の授業はこれで終わりだからだろう。壇上で『無限』について熱く語り始めた美女。彼女は私たち1-Aの独裁者、数学科の八雲紫先生。同性の私から見ても、言葉にする術がないくらいの美貌を誇る女性だ。妙に美人が多いこの学校でも、まず間違いなく一番に名が挙げられるだろう。ただ……性格的にはかなり微妙な先生だ。気さくで生徒を妹のように可愛がってくれるが、物凄く子供っぽいところのある我儘お姉ちゃんでもある。合コンで振られた~、と1時間も酒臭い息を振りまかないで貰いたい。彼女の幼馴染である霊夢の言によると、『胡散臭い、厄介村の厄介さん』だそうだ。判る気がする。それに、今日もそうだが、自分の世界に突入しやすい傾向があるようで、授業中に『そうそう』と言って脇道に逸れると、絶対に帰ってくることはない。チャイムが鳴るまでひたすら自分の世界の話をし続けるからだ。数学へ溢れる情熱を持っているのだろうが、残念ながらその話を理解している生徒は殆どいないだろう。先生自身もわかってはいるのだろうが、迸るパトスはそうそう抑えきれないものらしい。私も、趣味の話になると止まらないしな。わかるわかる、と自分自身に頷いていると、後ろに座る妹紅から背中をつつかれた。
「慧音、前、前!」
「ん?」
顔を上げると、先生が私の方を見て怪訝な顔をしている。いかんいかん、授業中だというのに。それにしても、なんだろう?ふと時計を見ると、チャイムが鳴るまであと少しといったところだった。あぁ、そういうことか。
「委員長?」
「失礼しました。起立!」
「「「「「「「「え?」」」」」」」」
私の声に反応して、皆が立ち上が、なんで妹紅も咲夜も立たないんだ?他にも数人立たない生徒がいる。先生に失礼じゃないか、全く。
「あ、あの、委員長?」
「妹紅も咲夜も何やってるんだ?先生が困ってるじゃないか」
「え、でも?」
「あの、慧音?」
「ほら、さっさと立った立った!」
私に促されて皆が立ち上がった。むぅ、もう少し真面目なクラスだと思っていたのだがな……
「え?え?」
「礼!」
「「「「「「「「ありがとうございました」」」」」」」」
「えぇ?」
アンアアンアンアアン
礼が終わったところで丁度チャイムが鳴り響いた。これで1時間目も終わりだ。ん?先生はなんでぽかんとした顔で立ち尽くしてるんだ?訝しげに思った私は、先生に声をかけた。
「先生、どうかなさったんですか?」
「……ぐしゅっ」
声をかけると、急に俯いてしまった。身体を震わせ、鼻を啜り上げたかと思うと、
「委員長まで虐める~!」
「え、私っ!?」
泣きながら教室から走り去って行ってしまった。虐めた?私が?いつ?あれ?今度は、私が呆然とする番だった。そんな私の肩がポンッと叩かれる。妹紅と咲夜だった。
「慧音、」
「ちょっとお話しましょうか?」
Side:M
「そうそう、無限といえば、ロシアのカントールなんだけど」
ま~た、始まった。1時間目の授業はこれで終わりだな。こうなると、絶対帰ってこないもんな紫ちゃん。私は何をするでもなく、ボーっと先生を眺めていた。そうするうちに、そろそろ休み時間だ。丁度そんなときだった。珍しく先生がこちらに話題を振ってきたのは。
「ね、凄いと思うでしょ?」
何が?見てただけで聞いていなかった私にはサッパリ分からない。が、流石に慧音はちゃんと聞いていたのだろう。賛同するように頷いていた。そんな慧音が目に入ったのか、先生が嬉しそうな顔で慧音に話かけてきた。
「流石委員長、先生の話を理解してくれるなんて、とても嬉しいわ♪」
「……」
「あら?あの、委員長?」
あれ?どうしたんだろう?慧音は、先生に呼びかけられても全く反応しないで、ただ頷いている。もしかして、全然聞いてないの?拙いって!この先生凄い気分屋なんだから!とにかく気付かせないと。
「慧音、前、前!」
「ん?」
慧音の背中を軽くつつくと、どうやら気付いたらしい。先生の方を見て……時計を見た?なんで?先生も不思議そうな顔で慧音にもう一度話しかけた。
「委員長?」
「失礼しました。起立!」
「「「「「「「「え?」」」」」」」」
ちょっ、なんで!?慧音の声に釣られて何人か立ち上がってるけど、いや、あいつら絶対普段話聞いてない連中だ。慧音の横に座る咲夜も目をぱちくりさせている。
「あ、あの、委員長?」
「妹紅も咲夜も何やってるんだ?先生が困ってるじゃないか」
「え、でも」
「あの、慧音?」
「ほら、さっさと立った立った!」
先生も驚いて慧音に声をかけたが、何を勘違いしたのか、私たちにさっさと立てと促してきた。咲夜も慧音に声をかけたが、毎日慧音の号令で動いているという生活習慣の所為というべきか、皆も思わず立ち上がってしまった。それを確認した慧音は、混乱している先生を尻目に、
「え?え?」
「礼!」
「「「「「「「「ありがとうございました」」」」」」」」
「えぇ?」
アンアアンアンアアン
号令をかけ終わってしまった。しかもそのタイミングで鳴り響くチャイム。あっけに取られたのか先生はぽかんとした顔で立ち尽くしている。そんな先生を逆に訝しげに思ったのか、慧音が先生に尋ねた。
「先生、どうかなさったんですか?」
「……ぐしゅっ」
あ~ぁ、もう知らないよ、私。慧音の一言に止めを刺されたのか、先生は身体を震わせて、
「委員長まで虐める~!」
「え、私っ!?」
泣きながら教室から走り去って行ってしまった。そりゃそうだよね。きっと、普段から誰も聞いてくれないような話を、ちゃんと聞いて理解してくれる人がいると思ったんだろう。感激するよね、自分の話を理解してくれる人がいると。だというのに、わけも分からないままその相手に、遠まわしに「歩いてお帰り」って言われたんだもんなぁ。悪意が無いってのは残酷だよね……
呆然と立ち尽くす慧音の左肩をポンと叩く。咲夜も、右肩に手をかけていた。
「慧音、」
「ちょっとお話しましょうか?」
A.m.11:07
3時間目:世界史(近代史)
Side:K
「え~、このように万を越える死傷者と大量の難民を生み出して、ハンガリー動乱はソ連によって鎮圧されたわけです。この事件は東西それぞれで全く別の観点で、う~、届かない~」
「先生、椅子をどうぞ」
「ありがとうございます。よいしょ」
生徒の一人が差し出した椅子に、靴を脱いで登り、板書を始める。そうしないと、上の方には字が書けないからだ。彼女は世界史教師でサッカー部顧問の稗田阿求先生。生徒間での通称はQちゃん。何せ、身長が150cmにも満たないのだ。荷物を抱えてよちよちふらふら歩く姿は、正直、小学生と言われても疑問に思わないだろう。ホントに20代なのかと。まぁ、鈴仙の姉もそんな感じだしな。と言う訳で、阿求先生はその愛くるしいビジュアルから裏で、というか、皆堂々とQちゃんと呼んでいる。そう言われて頬を膨らませる様子がまた可愛らしいのだ。
「この事件で、最大の悲劇は何か、という問題なのですが……わかる人?」
っと、いかん。さっきみたいなことはもうしたくないしな。職員室でまだグスグスと泣いていた紫先生だが、謝罪したら泣き止んでくれた。なんでも、最近妹さんが冷たく当たるらしく、心が折れそうだったそうだ。そのタイミングで信頼していた(ありがたいことだ)私にまで冷たくされたと思ってしまったそうで……。ただ、話を聞く限り冷たく当たるのは先生のせいだと思うが。次女の誕生日プレゼントに、三女のかなり如何わしい写真をプレゼントしたそうだ。センスがわかりませんよ、先生。
それはさておき、さきほどの阿求先生の質問に誰も答えようとしない。私も、答えようと思わない。歴史にはいささか自信があるのだが、阿求先生の要望に応える事が出来ないのは判りきっているからだ。普通に考えれば、多くの死傷者と難民を生み出したことが悲劇だと思うが、絶対に答えはそれじゃないだろう。
「誰もいないんですか~?」
そう言って教室を見渡す。頼むから、私を指さないで欲しい物だ。だが、こういうときに限って、願いとは叶わぬ物。眼がばっちり合ってしまった。
「じゃ、上白沢さん」
皆が同情の視線を寄越してくる。仕方ない、か。渋々と立ち上がり、無難な答えを言うことにする。
「やはり、多数の死傷者と難民を出したことかと」
「ん~、30点ですね」
「……でしょうね」
予想通りだ。
「何か?」
「いえ、何も。正解を教えていただけると幸いです」
「わっかりました!」
そう言うとバンッと教卓を叩き、熱弁を奮い始める。Qちゃん本気モードの始まりだ。
「ハンガリー動乱最大の悲劇とは何か?それは20万を越える難民の中に、『マッジク・マジャール』のメンバーが含まれていたことにあるのです!」
誰ですかそれ?バンドか何か?いや、何となくはわかるんだが。そんな私を先生がビシッと指差す。
「阿求の『きゅう』は?!」
「……サッカーボールの『球』」
「その通り!」
どの通りなんだろうか。私にしてみれば、ヒトラーとチャップリンが同一人物と言われる方が余程説得力がある。でも、誰も指摘はしない。教室の熱量は、Qちゃんに奪われるばかり。喋るためのカロリーすら残されてはいないのだ。
「スイスW杯決勝戦で敗れ去るまで4年間無敗を誇り、世界最強と唄われ、6年間で49勝7分け3敗の勝率を残したサッカー史に燦然と輝くチームが!下らないイデオロギー対決のために、プスカシュが、コチシュが!これに勝る歴史上の悲劇などあるものですか!!チクショウ!」
ついに歯軋りしながら涙を流し始めた。それにどう反応すればいいのだ。だから私は答えたくなかったんだ。別に私たちはな○しこJAPANの候補生ではない。っていうか、そうだとしても関係無いだろう。その後私は、ハンガリー代表の軌跡を、後ろで眠る妹紅の寝息と共にチャイムがなるまでの20分間、立ったまま聞く羽目になった。ハンガリーって、日本同様『苗字→名前』なんだよな。そんな事を考えながら、先生の話をやり過ごした。すっきりとした顔で先生が出て行った後、皆が慰めに来てくれる。ありがたいことだ。このクラスメイトたちはとても優しい。
今日は20分だから良かったが、以前、アリスをイギリス人だと知った先生が、彼女に英国四協会伝説の選手たちについて40分も解説していた時は拷問にしか思えなかった。途中から泣きそうな顔になった彼女に「分かりますか?!流石はサッカーの母国の方ですね!」と感動していたあたり、きっと打つ手などないのだろう。せめて、このクラスにサッカー通がいればいいのだろうが。あと、幸せそうな顔で眠り続ける妹紅には頭突きをしておいた。
Side:M
相変わらずだな、Qちゃん。椅子に登って字を書く姿は実に可愛らしい。出来ることなら、あんなふうに可愛く生まれ変わりたいもんだ。にしても、やっぱ歴史ってのは苦手だな……思想とか人物とか年表とか、さっぱりだ。慧音の趣味でもある日本史研究も聞いてて意味わかんないし。っと、何かキョロキョロし始めたな。
「この事件で、最大の悲劇は何か、という問題なのですが……わかる人?」
いないだろうな。基本的に板書しかしないQちゃんが質問する時は、ある共通の話題の時だけだ。そして、このクラスに彼女の情熱に答えられる生徒はいないだろうと思う。先生にもそれを理解して欲しいんだけど……無理だろうな。この手の人種は大抵そうなんだろうし。
「誰もいないんですか~?」
そう言って教室を見渡す。頼むから、私を指さないで頂戴よ~?立ちっぱなしはイヤだよ。って、こっち向いた!頼むっ、神様!
「じゃ、上白沢さん」
セ~フ!慧音には申し訳ないけど、自然と笑みがこぼれてきた。時計を見ると授業終了まで20分。寝るには充分♪
ん~、チャイムが聞こえたような気、
「がっ!?」
アッー!痛い、痛いぃぃ!頭を鈍器で殴られたような痛みに、涙目になりながら顔を上げると、額に青筋浮かべた慧音が立っていた。なんか、角が生えてるように見えるよ、慧音……
P.m.00:30
昼休み
Side:K
「今日こそはっ!」
授業終了の瞬間、礼もそこそこに魔理沙が教室の外へと飛び出していった。先生容認、恒例のパン食い競争の始まりだ。相変わらず物凄いスピードだな。そう言えば、一時期カルチョが始まったことがあった。すぐに沈静化してしまったけれど。理由は簡単、魔理沙の勝率が0.00だからだ。スタート地点のハンデの所為もあるのだろうが、差は段々広がっていくし、たまに先行しても抜かれている。窓から眺めていて、可哀相に思えてくるほどだ。
別に、魔理沙が遅いわけじゃない。先生に聞いたところ、学年で2番目の好タイムだそうだ。ただ、競争相手が、大学の陸上部まで含めても最速の風神少女なのが運のつき、というヤツだろう。中学の時同じクラスになったことがあるが、あれは尋常じゃなかった。陸上に打ち込めば、日本に短距離でメダルを持って来れるんじゃないだろうかと思う。
「どしたの、慧音?早く食べに行こうよ」
「あぁ、すまんすまん。それじゃ行こうか」
考え事をしていたら妹紅が昼食を催促して来た。早く行かないと混むしな。席を立ち、妹紅と共に学食へと向かうことにした。
「今日は黒いな」
「みたいだね」
妹紅はいつも通りパンを齧っている。私もいつものように醤油ラーメンを頼んだ。今日は墨汁のように黒い。その前頼んだ時は薄茶色だったし、その前は紅茶のような色をしていた。頼むたびに色と味が変わる不思議ラーメン。この学食、その日によって、美味しい物とそうでないものの差が激しい。外れを引くのが嫌な生徒は、妹紅のように購買のパンを食べる場合が多い。なぜか常に至高の豚骨ラーメンと違い、この醤油ラーメンは『値段はまずまず、味はマズマズ』との誉れ高い。これはこれで、味があると思うのだがな?うん、まぁまぁだ。
Side:M
「今日こそはっ!」
そう言って、魔理沙が今日も飛び出していく。相変わらず速いなぁ。長距離走なら勝てる自信があるが、短距離では勝負になんないよ。あれで勝てないんだから、あの新聞記者は化け物だな。球技とかはイマイチみたいだったけど。にしても、慧音は何を考え込んでるんだろ?早く行かないと席なくなっちゃうのに。
「どしたの、慧音?早く食べに行こうよ」
「あぁ、すまんすまん。それじゃ行こうか」
ようやく慧音が立ち上がった。さ、お昼お昼。
「今日は黒いな」
「みたいだね」
私はいつも通りパンを齧っている。今日はバナナパンだ。そして慧音はいつものように醤油ラーメンを頼んでいた。今日のは墨汁のように黒い。毎度毎度、出てくるたびに違う物をよく頼めるなぁ。っていうか、次は体育だよ?ラーメン食べるかな普通。そう思ったけど、慧音の後ろに見えた黒髪のクラスメイトを見て、考えることはやめた。なんで丼が3つも重なってんのよ……考えるの、やめた。次は得意の体育だ。頑張ろう。
慧音と妹紅がルームメイトというのはとても良いのですが、
作ったオムライスが王蟲ライス……ですか…。
これで玉子まで緑の野菜などで染まってたらと思うと……ねぇ?
そして20分間、妹紅の頬をツンツンぷにぷにしていた…と。
至高と呼ばれるぐらいだから触ってみたいものですね。
紫先生の授業では一人考えに没頭しててドジした慧音が良いですね。
端々に妹紅に頭突きしたり妹紅視点に切り替わったりするのも面白かったです。
そして次が体育なのに相変わらずの食欲を発揮する霊夢が素敵です。
次の午後の部を楽しみに待っていますね。
誤字の報告
>試しに手で紙を押さえてみるが
ここだけ『髪』ではなく『紙』になってますよ。
あと学食のとんこつラーメンが”至高”って 学食のくせにー
こう登場人物が増えてくるとメインで見えてない場面の動きが想像しやすくなっていっそう楽しくなってきます。
それと作者名変わったのも助かります。前はR付く作家が全部引っかかったんで。
Side:Kの06:45~07:05のあいだだけ「…」が「・・・」になってます。おそらく変換ミスじゃないかと。
それでも話の流れや雰囲気は相変わらず流石と言うべき物でした。
王蟲ライスはツボに入りましたよ・・・・・・今度作ってみますか。
あと、私はかぐもこ派ですが何か?
ただ切り替えがちょっと早すぎるような、と自分も感じました。
その分テンポは良くなっているので一長一短なわけですけど。
地味に気になる伏線(れーせんのちっさいお姉さんとかw)もあったりして
次回以降を早く読みたくてたまらんのです。
でも赤目の王蟲は駄目だろ慧音。
あとリクってわけでもありませんが
オリジナル話ならエクストラ組(フラン&八雲一家)にも早く会いたいかな、と思ったり。
Ren氏、それはSTGを元に書こうとしているからだよ。
逆に考えるんだ、「書籍媒体でもいいや」と考えるんだ。
オリジナルも見てみたいけどね!
あと、作品内容自体は、番外編らしい何気ない日常を面白おかしく描写されていて面白かったです。
これからも、期待してます。そして私はかぐもこ派。
こういうのを自分も書きたいのですが、設定作りで足踏みしてしまって。
鈴仙の姉って誰なんでしょう、気になります。
交互にお話しが進むのはとてもテンポが良くて面白かったです。
残ってるの主要は守矢組くらいですが、これも絡みづらそうですね。助言にならず申し訳無い。
でもオリジナルも見てみたいと思う自分もいます。
頑張って下さい!
報告ありがとうございます。修正しておきましたm(_ _)m
実は頬っぺた触るの趣味(ヲイ)なんですよ。赤ちゃんとか特にそうですけど、寝てる人(同性除く)見ると突っつきたくなりません?なりませんね…orz
>2さん
店主を呼べぃ!
あっきゅん、ちょっとぶっ飛んだキャラにしすぎましたね。
>5さん
修正しました。なんでそこの範囲だけ変換ミスったのか……執筆再開のタイミングと休憩のタイミングがもろに出てますね。
自分で検索するまで全く気付きませんでしたよ……名前、ちゃんと考えてつけないとダメですね。
>GUNモドキさん
むむむ、やっぱり違うことすると、感じが伝わってしまいますか……王蟲ライスは画像がネットにあると思います。本家はもっと複雑ですので、よかったらチャレンジをw
なら慧音は作者が嫁に貰って(ry
>15さん
その伏線を改修する目処が立っていないというorz
だが少し待って欲しい。青い目玉を食べたいと思うのかと。
橙は出す予定があるのですが、妹様が……姉妹で何か書きたいんですけどね。
>20さん
書籍媒体……実は手元には三月精と儚月しかないという。文と求は知人に借りたのを3度ずつ読んだだけでして……また借りてきますかね。
とりあえず、次回はオリジナルです。
>喉飴さん
もっと面白く書いてくれる作者さんを常に求めて、いえ、自分自身努力しますとも。
たまには、こういうのも書きたいな、と。
なら、私が慧音を貰っていっても文句は(ry
>フクロウさん
ありがとうございますm(_ _)m
是非書いてみてください。大丈夫、私も日々行き当たりばったりで書いてますので。実際、Qちゃんのネタなんて、その場面まで書いてからノリでやっちゃいましたし。そもそも、最初に書いたときは妹紅サイドなんかなかったのです。
守矢さんちはねぇ……ケロちゃんどうするべ?きっと出しますけれど。(多分)早苗好きだし。
続きも頑張ります。