吾輩は猫である。名前は阿猫(あびょう)と言う。主が十代の頃からここにいる、稗田家の由緒正しい猫であり「阿」の名を冠している。
主はこれを呼び難いと言って嫌い、単にビョウと呼ぶが、吾輩としては正しく呼んでいただきたいものだ。
さて、吾輩と言えば、人里からも絶大な人気を誇る黒猫様であるが、どうも屋敷での扱いはぞんざいでならない。主も女中もまるで跨いで避けるのである。このように酷い話があっても良いのだろうか。吾輩は勝手気ままに、ただ縁側の真中で背伸びして、日差しを味わっているだけではないか。
ほら主、見よ、この無防備な姿を。吾輩のお腹はぷにぷにであるぞ? 触りたければ触るが良い、そして崇め奉るが良い。ああお猫様のお腹はかくもやわらかくふさふさで御座いまする、もにもにもみもみはぐはぐと、さあ。
「ビョウ、そんなところに居ると踏まれますよ」
「ナォー」
大人びた主が、吾輩を上から覗き込み、一、二撫でして去っていく。食えぬやつだ。今はこのぐらいにしておいてやろう。しかし、夜に覚えているが良い。必ずや、主の布団の中に潜り込み、股の間を占領してくれよう。吾輩の可愛らしさ故邪険に扱えず、寝苦しい夜を味わうが良いさ。
さて、稗田家の連中を冷やかすのも飽きた。吾輩はこう見えても多忙だから、このような人間どもに目もくれず日々の日課をこなさなければならない。一つ背伸びし、一つ欠伸し、主をチラリと見やってから、吾輩は縁側を下りて軒下へと潜り込んだ。
薄暗くて静かな場所であるから、稗田家の喧噪をかわすにうってつけのマイフェイバリットスペースなのだ。暗い中目を光らせて辺りを見回す。
ふとそこに何やら、ふわふわと浮くものがあるではないか。良く見れば、そこは主の寝室の下である。ははぁコヤツめ、身体の弱い主にとり憑いて、何か悪さをしようというのだな。
「アォー……フーッ!!」
吾輩の猛々しい鳴き声が響く。少し大き過ぎたか、自分でも耳が痛い。だがこれも務め故いたしかたなし。吾輩の声に驚いた、おそらくは霊であるものは、霧散して消え失せた。
何かの兆候でなければ良いのだがと一種の危惧を抱きながら、しかし猫故漂ってくる夕餉の香りに意識が行ってしまい、それどころではなかった。いつも思うのだが、ねこまんまと言っても、あの熱い汁をそのままぶっかけて寄こすのもどうかと思うのだ。主はその辺りの配慮が足らぬ。猫舌を克服しろとでも言うのか。猫なのに。
※
軒下を潜り、裏手の野原を抜けて行く。道中に礼儀知らずで恥知らずの若造猫が居たので、一応懲らしめておいた。吾輩の領土に無断で乗り込むような輩は、一度痛い目に合わせておかねばなるまい。若造はにゃあにゃあと弱音を吐いて頭を垂れた。まったく最近の若い奴ときたら。猫じゃあるまいに猫なで声か。いや猫か。
野原を超えて林を抜ける。ここまで来ると人様の領域であるから、あまり大っぴらな行動はとらない。もちろん、吾輩であると皆知れば、媚びへつらって川魚など咥えて現れるのだろうが、吾輩は熱くともあの味噌汁が好きなので他の物は口にしたくない。主の体調も気遣ってか、塩が控えめで猫にも優しいのだ。
さて、そんな訳で目的地にたどり着く。吾輩が妖怪をも蕩かす甘いヴォイスで鳴いてやると、小屋から一人の小娘が現れる。名を橙と言ったか。幻想郷賢者の飼い猫であるが、吾輩と違って人の姿を取っている。橙は吾輩に近づき、しゃがみ込んで礼をする。いやまったく良く出来た猫である。
「阿猫さま、どうされましたか」
「にゃあにゃあ、にゃあん」
「いえその、ですからお断りします……」
「にゃあん」
「ええ、これ、幻想郷でも最上級品のマタタビじゃないですか……いえいえ、受け取れません」
「なぉー……」
「はい、はい、今度いらっしゃる時はお客様でお願いします……」
……。
まただよ。また振られた。あの小娘、吾輩の妾になれと言うのに、一向に頷かない。教育がガチガチで近代的なのだろうか。吾輩の妾となれば、町内、いや幻想郷(の猫界隈)においても一目おかれる存在になるというのに、欲のない女だ。吾輩の何処が悪いのだろうか。こんなにも高ルックス(文々。新聞社発行抱きあげたい猫ランク五年連続一位)高収入(稗田家のマタタビもらい放題)高猫歴(由緒正しいハイスペック猫)であるのに。
いやはや、世の中はまだまだ解らない事があるものだ。
マヨヒガを抜け、吾輩は別の場所へと向かう。決して、振られたから落ち込んでいる訳ではなく、感傷に浸りたい訳でもない事は予め断っておくが、とにかく一人になりたかったので、人間も妖怪もそうそう寄り付かないであろう場所まで隠れる事にした。夕餉は後で良い。
下級妖精に睨みをきかせながら、吾輩はとある河原まで行きつく。ここは霊こそ多いが、凶悪な(抱き上げたり触ったり撫でまわしたり餌をくれたりする)奴等もいないので宜しい。
川縁に座り込み、じっと遠くを見つめる。この先には彼岸がある。
確か、大変な器量良しの閻魔が居た筈だ。そんな記憶がある。ああいう俗物に興味がなさそうで、ツッケンドンとした輩が、吾輩のぽんぽんを目にして触ろうと襲いかかる様は実に見ていて気分が良い。きっとこうだ。
「猫が一体なんの用事ですか」
「なあぉー(ごろん)」
「はうっ! 猫のお腹が私を誘惑する!!」
「にゃあー(触ってもいいんだぜ?)」
「きゃーッ、もちもちぷにぷにはむはむぅー!!」
「にゃにゃあ(おいおい、そうがっつくなよ)」
という具合だろう。はは、閻魔など容易いものだ。
「何が容易いんだい?」
「にゃあお」
こぎれいな顔の閻魔を猫萌地獄に突き落とす妄想をしている所に、無礼にも声がかかる。見上げれば、デスサイズを構えたでっかい女が吾輩を見降ろしていた。まったく、この幻想郷に逃げ場はないという事だろう。美猫(びにゃん)は女に好かれて困る。
「ああ、稗田のところのお猫様じゃないか」
「……」
「彼岸でも見学に行くのかい。まだ早いだろう」
「みゃ」
「何、お前さんと一緒で、ちょっとばっかし黄昏てただけさ」
「にゃあお」
「なんだ、もう行くのかい。話ぐらい付き合ってくれてもいいじゃないか」
「(ぷいっ)」
「高潔なやつだ。でも閻魔様は犬派だよ」
吾輩はこの失礼な女に背を向けて立ち去る。閻魔が犬派なのは残念だが、まあどうとでもなる。猫の素晴らしさに気がついたら最後、その者は死ぬまで猫を触りたい衝動に駆られ、触れないと発狂死するのだ。ああおそろしや吾輩の存在。罪つくりで地獄行きだろう。
「まだこっちに来るのは早いが、少し気をつけた方が良い。お前さんじゃなくて、主だけどね」
「にゃ」
そんな事解っている。一介の死神が、猫様に助言とは、大きく出たものである。
※
何事もない日々が数日ほど過ぎて行く。そも、何があろうと猫は猫なので、世相などどうでも良いのだが。
主も大分大人になり、女として実に魅力的になってきた。10代の頃は吾輩を多少疎ましがって居たようだったが、今となっては落ち着きはらっているし、吾輩への扱いも丁寧だ。
いや、若い頃は少し元気な方が良い。無法になるのは咎められようが、無茶になるのまで遮ってしまったら、大人になって碌な事をしない。むちゃをして、何が悪いか何が良いかと判断出来るようになり、大人になっていくものだ。猫もまた然り。
「にゃあおぉん」
「んま……なんて魅力的なお猫様……」
「みゃみゃみゃあ」
「め、妾にならないかって……? で、でもさとり様が許してくれるかどうか……ご、ごめんなさい」
「……にゃん」
悪いことではないと思う。いいじゃないか、妾が何人いようと。ふむ、どうやら人間型をとっている奴等は、どうしても社会性や体面があるらしく、思いっきりが弱いと見える。吾輩ももう歳ではあるが、こればっかりは止められないので仕方がない。
決してふてくされた訳ではないが、今日は誰とも会いたくないので、軒下に潜む事とした。静かで暗くて、何もないここは、若い頃からとても気に入っている。
「ビョウ、ビョウはどこですか?」
主の声が聞こえる。だが高潔な猫である吾輩はそのような呼びかけには応じない。
「今日は猫もいないわね。それで、阿求、何がどうだって?」
「はい。どうも最近家のモノ鳴りが酷くて、五月蠅くてかなわないのです」
「霊障ねえ。まあ珍しいものではないか。上がっていい?」
「はい、お願いします。お礼はしますから」
「夕飯で良いわ」
何やら稗田家が騒々しい。先ほどの声と匂いは、博麗の巫女であろう。この芳しさは違いない。しかし、大きな事でなければそうそう動かないような奴が、人の家の霊障如きで出動するとは、なんとも意外である。吾輩はそれが多少気になり、軒下から出て家の中へと上がり込む。
「ビョウ、何処へ行っていたのですか」
「にゃあ」
「あら、猫いるじゃない。ええと、それでだけど」
「はい」
「気配はないわね。ただ、今だけ居ない可能性もある。自縛霊じゃなく、浮遊している奴でしょう。時に」
「なんでしょうか」
「最近、体調が良くないと聞くわ。……やっぱりそろそろなのかしら」
「はい。身体も弱ってきましたから、それに付け入る形で、悪さをしようとする霊がいるのかもしれませんね」
「……なるほど。一応、お札を渡しておくわ。寝る前に布団の四方に張りなさい」
「霊夢さんも、丸くなりましたね」
「お互い様でしょう」
そういって、博麗はお札を渡して去って行った。結界師なら結界の一つでも張って行けと言うのだ。まったく、妖怪を直接退治する術しか学ばず、この歳まで生きながらえて来たのだから、博麗のスペックの高さには恐れ入る。吾輩は一言文句を言ってやろうと思い、立ち去る博麗の後を追う。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……何よ、化け猫」
「にゃあん」
博麗は吾輩に気が付くと、振り返ってこちらを見た。若き日の面影を残しながらも、女性らしい魅力的な容姿は吾輩好みだ。
「どうせ、結界の一つでも張れと言いに来たのでしょう」
「にゃ」
聡い奴。そこまで解っていて、何故やらぬか。
「阿求はもう長くないわ。彼女の寿命を決めているのは私じゃないもの。見て、覚えて、全て許容するのが稗田の役目。死期が近いなら、自然とそれは訪れる。彼女というシステムは、自戒と自重と運命の集合体でしかないのよ。だから、死ぬ時は死ぬ。これに助力しても、無意味」
「……」
「だから、あのお札にも何の効果もないわ」
「にゃあ、にゃあ、にゃあ」
解っている事だ。しかし、それでもわざわざ稗田家に顔を出したのだから、一応は心配しているのだろう。
「それにね、ああいったものを取り除くのは、お前の役目でしょう。人の仕事とっても、いい気しないわ」
「にゃふ」
「何よその顔。笑ったつもり? なんでお前ほどの化け物が、人間の形を取らないのか不思議だわ」
じゃあね、と言って博麗が去る。吾輩としても、もう言う事はない。そう言う事なのだ。
ただ、吾輩は少しでも主に長生きして貰いたい。主がいなくなったら淋しいではないか。マタタビの費用を誰が捻出するのか。あの塩加減の薄い味噌汁は、主がいてこそ薄いのだ。塩っ辛い味噌汁なんて、高血圧で吾輩が倒れてしまう。
主よ。吾輩はここにいるぞ。もう少し、吾輩に頼られよ。
※
博麗が来てから、また数日が過ぎた。主の体調は悪化する一方で、吾輩としても大変もどかしい。医者と称して竹林から美人の女が現れたが、これは危ない類なので玄関で御帰り願った。何を企んでいるか解ったものでもない。それに、異常な妖気を湛えていたから、きっとアレが主の元へ赴けば、全てが変わってしまうだろう。
天才という奴は、ロクデナシばかりだ。頭でモノを考え、先を読み、自分の思ったとおりに状況を動かそうとする。吾輩の猫の額では、そのような輩の考えになど及ばないが、何が大切で何が危ないかぐらいは解る。一応動物であるから、危機管理能力はあるのだ。
さて、吾輩といえば、今日は日課を曲げて稗田家に駐屯していた。一猫で軍である。異論は認めない。主の部屋で、何をするでもなく、くるくる歩き回り、蓄音器の横で場所を得、そこで丸くなっている。凡用な人間が見れば、吾輩はただ寝ているだけに見えるだろう。だが甘い、吾輩は部屋の端々まで気を使って警戒しているのだ。
「毎度そう」だが、主はこのくらいの歳になると、体を壊す。脳の使いすぎが問題なのか、はたまた稗田阿礼の魂劣化が問題なのか、稗田家も良く把握していないが、三十迄は生きられぬ身。
いやはや、薄倖の美人である。猫の身故、この女に子を宿してやる事も出来ぬのが悔やまれる。正妻なのに。少なくとも、吾輩的には。誰も認めてくれないけど。
それは良い。良いが、とにかく体が悪くなる。人間、いや生物は、体調が衰えると外界から影響を受けやすい。幻想郷では殊更、精神的な病が突如発症する例もある。これは、往々にして妖怪や霊の仕業だ。獏大な妖力を蓄えた妖怪は、それそのものが最早毒である。人は瘴気に中てられるし、碌な事にならない。霊は霊でまだ現世に恨みがあるのかないのか、魂が抜けそうな身体を乗っ取ろうと現れる。もちろん、ごく一部だが、そのごく一部が、最高の素体である稗田に依りついてくる。美味いものは皆欲しがるだろう、そう言う事だ。
だが、そういった問題は、吾輩がいる限りは無問題である。
どうせ、主は死ぬが、外的要因などで殺されてたまるものか。
主には、寿命を全うしてもらう。
「ビョウ、ビョウ」
「にゃお」
「ふふ……おいでおいで……」
「みゃ」
布団からでれなくなってしまった主が吾輩を呼び付ける。高潔な吾輩であるが、正妻の頼みなら仕方あるまい。近寄り、腹を見せ、撫でさせてやるのだ。撫でる事で胃腸虚弱、ひきつけ、不整脈、四十肩に大変利くともっぱらの噂である。きっと滋養強壮にも良いだろう。
どうだ主、吾輩はすごいだろう。大変霊験あらたかな猫であろう?
「阿猫は可愛いね……」
「なあぁ」
「そうですか、そうですか……少しは、負担を減らそうと、博麗を呼んだのですが……そうですか」
「……」
余計な事を。吾輩は常に主とあるというのに。
……。
……。
……。
まだ来るか。
まだ来るのか。
ええい、ええい、やかましい。お前らにくれてやる主の身体はない。
白い影が、二十、三十と増える。
「にゃぉおおおぉぉ……フーッ!!」
主に群がる霊を、ひっかく、噛みつく、蹴とばす。お前らにだけはやらない。これは主、強いて言えば吾輩の身体なのだ。主を好きに弄って良いのは、吾輩だけなのである。
だからお前たちなんかにやるものか。やるものか。こうして、こうして何度も何度も何度も、吾輩は吾輩として在り続けてきたのだ。その、たった一度でもお前たちに持って行かれた事などないのだ。だから、今回だって絶対にありえない。
吾輩こそが稗田の守護なのだ。稗田が生を全うする為に、吾輩がいるのだ。
「……みゃお」
「……阿猫……ありがとうね……」
主よ。
主よ。
もう逝かれるのか。
この度の幻想郷は、楽しかったか? 吾輩も、楽しかった。娯楽も増えたな。友達も出来たな。来世でも、きっとその友人たちは生きている事だろう。何も悲しむ事などない。吾輩は、阿猫は、直ぐにそちらへと向かおう。
「みゃあ……にゃあお」
「……」
呼吸が止まる。
上げていた手が、ぱたりと落ちる。
そうか主。そうか主。良く頑張った。良く全うした。
吾輩もこの霊障は最早防げぬ。とり殺されるだろう。だが、良い。主は全うした。
誰の手にも、何ものにも、病にも、霊にも、妖怪にも殺されず、天寿を全うした。
それでこそ吾輩の妻。それでこそ高潔な稗田。それでこそ、わが主だ。
遠退く意識に、吾輩は逆らったりはせぬ。吾輩は吾輩が受け入れた現実のみを受け入れる。
どうだ、すごいだろう、主。かっこいいだろう、主の猫は。
では、次の頃にまた、楽しい現実の夢を見ようではないか。次こそ、人型の妾を二、三人作ろうではないか。
なあ、主。
妬くなよ?
※
「これで良いのかしら」
「そう。それで良い。稗田とはかくあるべきよ。そして、結界守の私も、貴女も。それぞれ、与えられた本分を全うしてこそ、生なのよ。この猫のように、この人のように」
その猫は、稗田阿求の上で丸くなり、息を引き取っていた。何かしてやれれば良かったなどと、偽善の気持ちがわき上がる。しかし、この猫にとり、これこそが最上で、最良の選択肢だったのだ。
私は思う。この猫(ヒト)は、なんて一途なんだろう、と。
※
目をあけると、そこには板が見えた。正確には、船の上なので、舟板だろう。
大きな女が吾輩を見る。そうして、ふかぶかと頭を下げた。良く出来た小娘だ。
「お勤め、ご苦労様」
「にゃあ」
「じゃ、いつも通り、是非曲直庁で、ペットしてもらう事になるけど」
「みゃ」
「そうかい。今度こそ、閻魔様を猫派にする、か。ほんと、すごい猫だよ」
さて、何度目の三途だろうか。
吾輩が稗田家に迎えられたのは、阿未の頃であったか。また変わらぬあの世での生活が始まるのだろう。
ふふ、今度こそ、彼岸の奴等をことごとく猫派にしてやる。そうして、妾を沢山作って、猫の王国を築くのだ。もう稗田に事務官などさせてやるものか。稗田阿礼の魂は、彼岸にて君臨するのだ。
死など何も悲しむ事はないのだ、主。
「ほら、お迎さんだ」
「ビョウ……」
「みゃあ」
「またよろしくお願いしますね、お猫様」
「なぁ~お(まかされよ)」
何も悲しむ事はないのだ。主。
吾輩達は、殊更幸せに出来ているのだ。こんなにも幸せな事があってなるものか。
何度でも生きよう、何度でも死のう。吾輩はこの楽園が、たまらなく好きだぞ、主。
当然、主の二番目にだが。なあ、主。
end
主はこれを呼び難いと言って嫌い、単にビョウと呼ぶが、吾輩としては正しく呼んでいただきたいものだ。
さて、吾輩と言えば、人里からも絶大な人気を誇る黒猫様であるが、どうも屋敷での扱いはぞんざいでならない。主も女中もまるで跨いで避けるのである。このように酷い話があっても良いのだろうか。吾輩は勝手気ままに、ただ縁側の真中で背伸びして、日差しを味わっているだけではないか。
ほら主、見よ、この無防備な姿を。吾輩のお腹はぷにぷにであるぞ? 触りたければ触るが良い、そして崇め奉るが良い。ああお猫様のお腹はかくもやわらかくふさふさで御座いまする、もにもにもみもみはぐはぐと、さあ。
「ビョウ、そんなところに居ると踏まれますよ」
「ナォー」
大人びた主が、吾輩を上から覗き込み、一、二撫でして去っていく。食えぬやつだ。今はこのぐらいにしておいてやろう。しかし、夜に覚えているが良い。必ずや、主の布団の中に潜り込み、股の間を占領してくれよう。吾輩の可愛らしさ故邪険に扱えず、寝苦しい夜を味わうが良いさ。
さて、稗田家の連中を冷やかすのも飽きた。吾輩はこう見えても多忙だから、このような人間どもに目もくれず日々の日課をこなさなければならない。一つ背伸びし、一つ欠伸し、主をチラリと見やってから、吾輩は縁側を下りて軒下へと潜り込んだ。
薄暗くて静かな場所であるから、稗田家の喧噪をかわすにうってつけのマイフェイバリットスペースなのだ。暗い中目を光らせて辺りを見回す。
ふとそこに何やら、ふわふわと浮くものがあるではないか。良く見れば、そこは主の寝室の下である。ははぁコヤツめ、身体の弱い主にとり憑いて、何か悪さをしようというのだな。
「アォー……フーッ!!」
吾輩の猛々しい鳴き声が響く。少し大き過ぎたか、自分でも耳が痛い。だがこれも務め故いたしかたなし。吾輩の声に驚いた、おそらくは霊であるものは、霧散して消え失せた。
何かの兆候でなければ良いのだがと一種の危惧を抱きながら、しかし猫故漂ってくる夕餉の香りに意識が行ってしまい、それどころではなかった。いつも思うのだが、ねこまんまと言っても、あの熱い汁をそのままぶっかけて寄こすのもどうかと思うのだ。主はその辺りの配慮が足らぬ。猫舌を克服しろとでも言うのか。猫なのに。
※
軒下を潜り、裏手の野原を抜けて行く。道中に礼儀知らずで恥知らずの若造猫が居たので、一応懲らしめておいた。吾輩の領土に無断で乗り込むような輩は、一度痛い目に合わせておかねばなるまい。若造はにゃあにゃあと弱音を吐いて頭を垂れた。まったく最近の若い奴ときたら。猫じゃあるまいに猫なで声か。いや猫か。
野原を超えて林を抜ける。ここまで来ると人様の領域であるから、あまり大っぴらな行動はとらない。もちろん、吾輩であると皆知れば、媚びへつらって川魚など咥えて現れるのだろうが、吾輩は熱くともあの味噌汁が好きなので他の物は口にしたくない。主の体調も気遣ってか、塩が控えめで猫にも優しいのだ。
さて、そんな訳で目的地にたどり着く。吾輩が妖怪をも蕩かす甘いヴォイスで鳴いてやると、小屋から一人の小娘が現れる。名を橙と言ったか。幻想郷賢者の飼い猫であるが、吾輩と違って人の姿を取っている。橙は吾輩に近づき、しゃがみ込んで礼をする。いやまったく良く出来た猫である。
「阿猫さま、どうされましたか」
「にゃあにゃあ、にゃあん」
「いえその、ですからお断りします……」
「にゃあん」
「ええ、これ、幻想郷でも最上級品のマタタビじゃないですか……いえいえ、受け取れません」
「なぉー……」
「はい、はい、今度いらっしゃる時はお客様でお願いします……」
……。
まただよ。また振られた。あの小娘、吾輩の妾になれと言うのに、一向に頷かない。教育がガチガチで近代的なのだろうか。吾輩の妾となれば、町内、いや幻想郷(の猫界隈)においても一目おかれる存在になるというのに、欲のない女だ。吾輩の何処が悪いのだろうか。こんなにも高ルックス(文々。新聞社発行抱きあげたい猫ランク五年連続一位)高収入(稗田家のマタタビもらい放題)高猫歴(由緒正しいハイスペック猫)であるのに。
いやはや、世の中はまだまだ解らない事があるものだ。
マヨヒガを抜け、吾輩は別の場所へと向かう。決して、振られたから落ち込んでいる訳ではなく、感傷に浸りたい訳でもない事は予め断っておくが、とにかく一人になりたかったので、人間も妖怪もそうそう寄り付かないであろう場所まで隠れる事にした。夕餉は後で良い。
下級妖精に睨みをきかせながら、吾輩はとある河原まで行きつく。ここは霊こそ多いが、凶悪な(抱き上げたり触ったり撫でまわしたり餌をくれたりする)奴等もいないので宜しい。
川縁に座り込み、じっと遠くを見つめる。この先には彼岸がある。
確か、大変な器量良しの閻魔が居た筈だ。そんな記憶がある。ああいう俗物に興味がなさそうで、ツッケンドンとした輩が、吾輩のぽんぽんを目にして触ろうと襲いかかる様は実に見ていて気分が良い。きっとこうだ。
「猫が一体なんの用事ですか」
「なあぉー(ごろん)」
「はうっ! 猫のお腹が私を誘惑する!!」
「にゃあー(触ってもいいんだぜ?)」
「きゃーッ、もちもちぷにぷにはむはむぅー!!」
「にゃにゃあ(おいおい、そうがっつくなよ)」
という具合だろう。はは、閻魔など容易いものだ。
「何が容易いんだい?」
「にゃあお」
こぎれいな顔の閻魔を猫萌地獄に突き落とす妄想をしている所に、無礼にも声がかかる。見上げれば、デスサイズを構えたでっかい女が吾輩を見降ろしていた。まったく、この幻想郷に逃げ場はないという事だろう。美猫(びにゃん)は女に好かれて困る。
「ああ、稗田のところのお猫様じゃないか」
「……」
「彼岸でも見学に行くのかい。まだ早いだろう」
「みゃ」
「何、お前さんと一緒で、ちょっとばっかし黄昏てただけさ」
「にゃあお」
「なんだ、もう行くのかい。話ぐらい付き合ってくれてもいいじゃないか」
「(ぷいっ)」
「高潔なやつだ。でも閻魔様は犬派だよ」
吾輩はこの失礼な女に背を向けて立ち去る。閻魔が犬派なのは残念だが、まあどうとでもなる。猫の素晴らしさに気がついたら最後、その者は死ぬまで猫を触りたい衝動に駆られ、触れないと発狂死するのだ。ああおそろしや吾輩の存在。罪つくりで地獄行きだろう。
「まだこっちに来るのは早いが、少し気をつけた方が良い。お前さんじゃなくて、主だけどね」
「にゃ」
そんな事解っている。一介の死神が、猫様に助言とは、大きく出たものである。
※
何事もない日々が数日ほど過ぎて行く。そも、何があろうと猫は猫なので、世相などどうでも良いのだが。
主も大分大人になり、女として実に魅力的になってきた。10代の頃は吾輩を多少疎ましがって居たようだったが、今となっては落ち着きはらっているし、吾輩への扱いも丁寧だ。
いや、若い頃は少し元気な方が良い。無法になるのは咎められようが、無茶になるのまで遮ってしまったら、大人になって碌な事をしない。むちゃをして、何が悪いか何が良いかと判断出来るようになり、大人になっていくものだ。猫もまた然り。
「にゃあおぉん」
「んま……なんて魅力的なお猫様……」
「みゃみゃみゃあ」
「め、妾にならないかって……? で、でもさとり様が許してくれるかどうか……ご、ごめんなさい」
「……にゃん」
悪いことではないと思う。いいじゃないか、妾が何人いようと。ふむ、どうやら人間型をとっている奴等は、どうしても社会性や体面があるらしく、思いっきりが弱いと見える。吾輩ももう歳ではあるが、こればっかりは止められないので仕方がない。
決してふてくされた訳ではないが、今日は誰とも会いたくないので、軒下に潜む事とした。静かで暗くて、何もないここは、若い頃からとても気に入っている。
「ビョウ、ビョウはどこですか?」
主の声が聞こえる。だが高潔な猫である吾輩はそのような呼びかけには応じない。
「今日は猫もいないわね。それで、阿求、何がどうだって?」
「はい。どうも最近家のモノ鳴りが酷くて、五月蠅くてかなわないのです」
「霊障ねえ。まあ珍しいものではないか。上がっていい?」
「はい、お願いします。お礼はしますから」
「夕飯で良いわ」
何やら稗田家が騒々しい。先ほどの声と匂いは、博麗の巫女であろう。この芳しさは違いない。しかし、大きな事でなければそうそう動かないような奴が、人の家の霊障如きで出動するとは、なんとも意外である。吾輩はそれが多少気になり、軒下から出て家の中へと上がり込む。
「ビョウ、何処へ行っていたのですか」
「にゃあ」
「あら、猫いるじゃない。ええと、それでだけど」
「はい」
「気配はないわね。ただ、今だけ居ない可能性もある。自縛霊じゃなく、浮遊している奴でしょう。時に」
「なんでしょうか」
「最近、体調が良くないと聞くわ。……やっぱりそろそろなのかしら」
「はい。身体も弱ってきましたから、それに付け入る形で、悪さをしようとする霊がいるのかもしれませんね」
「……なるほど。一応、お札を渡しておくわ。寝る前に布団の四方に張りなさい」
「霊夢さんも、丸くなりましたね」
「お互い様でしょう」
そういって、博麗はお札を渡して去って行った。結界師なら結界の一つでも張って行けと言うのだ。まったく、妖怪を直接退治する術しか学ばず、この歳まで生きながらえて来たのだから、博麗のスペックの高さには恐れ入る。吾輩は一言文句を言ってやろうと思い、立ち去る博麗の後を追う。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……何よ、化け猫」
「にゃあん」
博麗は吾輩に気が付くと、振り返ってこちらを見た。若き日の面影を残しながらも、女性らしい魅力的な容姿は吾輩好みだ。
「どうせ、結界の一つでも張れと言いに来たのでしょう」
「にゃ」
聡い奴。そこまで解っていて、何故やらぬか。
「阿求はもう長くないわ。彼女の寿命を決めているのは私じゃないもの。見て、覚えて、全て許容するのが稗田の役目。死期が近いなら、自然とそれは訪れる。彼女というシステムは、自戒と自重と運命の集合体でしかないのよ。だから、死ぬ時は死ぬ。これに助力しても、無意味」
「……」
「だから、あのお札にも何の効果もないわ」
「にゃあ、にゃあ、にゃあ」
解っている事だ。しかし、それでもわざわざ稗田家に顔を出したのだから、一応は心配しているのだろう。
「それにね、ああいったものを取り除くのは、お前の役目でしょう。人の仕事とっても、いい気しないわ」
「にゃふ」
「何よその顔。笑ったつもり? なんでお前ほどの化け物が、人間の形を取らないのか不思議だわ」
じゃあね、と言って博麗が去る。吾輩としても、もう言う事はない。そう言う事なのだ。
ただ、吾輩は少しでも主に長生きして貰いたい。主がいなくなったら淋しいではないか。マタタビの費用を誰が捻出するのか。あの塩加減の薄い味噌汁は、主がいてこそ薄いのだ。塩っ辛い味噌汁なんて、高血圧で吾輩が倒れてしまう。
主よ。吾輩はここにいるぞ。もう少し、吾輩に頼られよ。
※
博麗が来てから、また数日が過ぎた。主の体調は悪化する一方で、吾輩としても大変もどかしい。医者と称して竹林から美人の女が現れたが、これは危ない類なので玄関で御帰り願った。何を企んでいるか解ったものでもない。それに、異常な妖気を湛えていたから、きっとアレが主の元へ赴けば、全てが変わってしまうだろう。
天才という奴は、ロクデナシばかりだ。頭でモノを考え、先を読み、自分の思ったとおりに状況を動かそうとする。吾輩の猫の額では、そのような輩の考えになど及ばないが、何が大切で何が危ないかぐらいは解る。一応動物であるから、危機管理能力はあるのだ。
さて、吾輩といえば、今日は日課を曲げて稗田家に駐屯していた。一猫で軍である。異論は認めない。主の部屋で、何をするでもなく、くるくる歩き回り、蓄音器の横で場所を得、そこで丸くなっている。凡用な人間が見れば、吾輩はただ寝ているだけに見えるだろう。だが甘い、吾輩は部屋の端々まで気を使って警戒しているのだ。
「毎度そう」だが、主はこのくらいの歳になると、体を壊す。脳の使いすぎが問題なのか、はたまた稗田阿礼の魂劣化が問題なのか、稗田家も良く把握していないが、三十迄は生きられぬ身。
いやはや、薄倖の美人である。猫の身故、この女に子を宿してやる事も出来ぬのが悔やまれる。正妻なのに。少なくとも、吾輩的には。誰も認めてくれないけど。
それは良い。良いが、とにかく体が悪くなる。人間、いや生物は、体調が衰えると外界から影響を受けやすい。幻想郷では殊更、精神的な病が突如発症する例もある。これは、往々にして妖怪や霊の仕業だ。獏大な妖力を蓄えた妖怪は、それそのものが最早毒である。人は瘴気に中てられるし、碌な事にならない。霊は霊でまだ現世に恨みがあるのかないのか、魂が抜けそうな身体を乗っ取ろうと現れる。もちろん、ごく一部だが、そのごく一部が、最高の素体である稗田に依りついてくる。美味いものは皆欲しがるだろう、そう言う事だ。
だが、そういった問題は、吾輩がいる限りは無問題である。
どうせ、主は死ぬが、外的要因などで殺されてたまるものか。
主には、寿命を全うしてもらう。
「ビョウ、ビョウ」
「にゃお」
「ふふ……おいでおいで……」
「みゃ」
布団からでれなくなってしまった主が吾輩を呼び付ける。高潔な吾輩であるが、正妻の頼みなら仕方あるまい。近寄り、腹を見せ、撫でさせてやるのだ。撫でる事で胃腸虚弱、ひきつけ、不整脈、四十肩に大変利くともっぱらの噂である。きっと滋養強壮にも良いだろう。
どうだ主、吾輩はすごいだろう。大変霊験あらたかな猫であろう?
「阿猫は可愛いね……」
「なあぁ」
「そうですか、そうですか……少しは、負担を減らそうと、博麗を呼んだのですが……そうですか」
「……」
余計な事を。吾輩は常に主とあるというのに。
……。
……。
……。
まだ来るか。
まだ来るのか。
ええい、ええい、やかましい。お前らにくれてやる主の身体はない。
白い影が、二十、三十と増える。
「にゃぉおおおぉぉ……フーッ!!」
主に群がる霊を、ひっかく、噛みつく、蹴とばす。お前らにだけはやらない。これは主、強いて言えば吾輩の身体なのだ。主を好きに弄って良いのは、吾輩だけなのである。
だからお前たちなんかにやるものか。やるものか。こうして、こうして何度も何度も何度も、吾輩は吾輩として在り続けてきたのだ。その、たった一度でもお前たちに持って行かれた事などないのだ。だから、今回だって絶対にありえない。
吾輩こそが稗田の守護なのだ。稗田が生を全うする為に、吾輩がいるのだ。
「……みゃお」
「……阿猫……ありがとうね……」
主よ。
主よ。
もう逝かれるのか。
この度の幻想郷は、楽しかったか? 吾輩も、楽しかった。娯楽も増えたな。友達も出来たな。来世でも、きっとその友人たちは生きている事だろう。何も悲しむ事などない。吾輩は、阿猫は、直ぐにそちらへと向かおう。
「みゃあ……にゃあお」
「……」
呼吸が止まる。
上げていた手が、ぱたりと落ちる。
そうか主。そうか主。良く頑張った。良く全うした。
吾輩もこの霊障は最早防げぬ。とり殺されるだろう。だが、良い。主は全うした。
誰の手にも、何ものにも、病にも、霊にも、妖怪にも殺されず、天寿を全うした。
それでこそ吾輩の妻。それでこそ高潔な稗田。それでこそ、わが主だ。
遠退く意識に、吾輩は逆らったりはせぬ。吾輩は吾輩が受け入れた現実のみを受け入れる。
どうだ、すごいだろう、主。かっこいいだろう、主の猫は。
では、次の頃にまた、楽しい現実の夢を見ようではないか。次こそ、人型の妾を二、三人作ろうではないか。
なあ、主。
妬くなよ?
※
「これで良いのかしら」
「そう。それで良い。稗田とはかくあるべきよ。そして、結界守の私も、貴女も。それぞれ、与えられた本分を全うしてこそ、生なのよ。この猫のように、この人のように」
その猫は、稗田阿求の上で丸くなり、息を引き取っていた。何かしてやれれば良かったなどと、偽善の気持ちがわき上がる。しかし、この猫にとり、これこそが最上で、最良の選択肢だったのだ。
私は思う。この猫(ヒト)は、なんて一途なんだろう、と。
※
目をあけると、そこには板が見えた。正確には、船の上なので、舟板だろう。
大きな女が吾輩を見る。そうして、ふかぶかと頭を下げた。良く出来た小娘だ。
「お勤め、ご苦労様」
「にゃあ」
「じゃ、いつも通り、是非曲直庁で、ペットしてもらう事になるけど」
「みゃ」
「そうかい。今度こそ、閻魔様を猫派にする、か。ほんと、すごい猫だよ」
さて、何度目の三途だろうか。
吾輩が稗田家に迎えられたのは、阿未の頃であったか。また変わらぬあの世での生活が始まるのだろう。
ふふ、今度こそ、彼岸の奴等をことごとく猫派にしてやる。そうして、妾を沢山作って、猫の王国を築くのだ。もう稗田に事務官などさせてやるものか。稗田阿礼の魂は、彼岸にて君臨するのだ。
死など何も悲しむ事はないのだ、主。
「ほら、お迎さんだ」
「ビョウ……」
「みゃあ」
「またよろしくお願いしますね、お猫様」
「なぁ~お(まかされよ)」
何も悲しむ事はないのだ。主。
吾輩達は、殊更幸せに出来ているのだ。こんなにも幸せな事があってなるものか。
何度でも生きよう、何度でも死のう。吾輩はこの楽園が、たまらなく好きだぞ、主。
当然、主の二番目にだが。なあ、主。
end
さらりと読み易い文章は然ることながら、阿求が逝くまで必死に足掻き続ける阿猫の描写といい、彼等の死後を見せられてなおスッキリとした余韻を残す終わり方といい、素晴らしい。
私の飼っていたペット達も、逝く間際にこう思ってくれていたのだろうかと、ふと思わされました。
『妬くなよ?』の一文で惚れそうになった。
すげえ読みやすくて面白かったです。いい話をありがとうございました。
百万回生きたねこを思い出しました。
……しかし橙は渡せない。
だがお燐は譲れん。
鳴き声だけで巫女や死神と会話ができるのも、とても自然に感じられます。
特に、最期の主人との会話が印象的でした。
小町や橙、お燐と会話をする彼も面白かったですし、
幾代にも渡って共に彼・彼女を護り共に転生する
阿猫の生がとても素敵でしたね……。
良いお話でした。
このお猫様は稗田の魂に懐いたのですかね。
ここまで一途で漢な猫は初めてだ。
にしても飼っていた猫を思い出すなぁ・・・向こうで元気してるといいけど。
シンプルな動物物にはどうも弱いぜ。
なんという燻し銀な猫様w
猫側からの視点の作品もいくつかあったとおもいますが,
こういう発想は初めてでした。
>医者と称して竹林から美人の女が現れたが
もし診察されたら,過去作の『蓬莱人~』にルート分岐ですか?w
アニキって呼びたいぜ
だが橙とお燐は渡せないなだって俺のよmピチューン
迷わず満点。
認めようじゃないか。
だが、お燐は渡さん!
蓬莱人稗田阿求ルートですねわかります。
咲夜考、web公開心待ちにしております
だがお燐をかどわかすのは許さん
まんざらでもなさそうなお燐に萌えた・・・
偉そうだけど、実際偉かった。
小気味良いジョークが効いてますね
危なく猫派になるところだったぜ
だが妾うんぬんの話は許さん。
だが橙は渡せない
橙、燐の主達や、もみじやナズーリンも出て欲しかった。
しかし里の中で慧音が出ないのも珍しい。
映姫様を渡してなるものか!
蓬莱人ルートを回避した阿猫に惚れそう
なんて、一途な、猫なんでしょう
いや、それよりかっこいい。
仕方ない。橙を嫁にや(スッパテンコー
素晴らしい読み物でした。
おもしろかったです
おかげで話がすっと入ってくるように読めました。
嗚呼、感動が止まりません。
格好良い猫に、陳腐ですが100点を。
なんと言うか、愛情を文体の隙間から感じた。
この愛すべき猫が発する想いなのか、氏の東方への愛情なのか、書くこと自体への愛なのか、それは判らないけど。
久し振りに創想話で小説を読んだ気持ちになった。素晴らしい。
来世は頑張り時だなw
にゃおあにゃ
100にゃんにゃお
なぁおにゃ
ビョウ様男前。惚れます。
でも橙とお燐は渡さん。
かっこいいなぁちくせう
稗田の子の運命に寄り添って生きる阿描が男前で惚れました。
かっこよすぎだろ阿猫
題材良し、内容良し、印象に残るセリフ有りの素晴らしい作品でした。
弦楽団の歴史VOL2のあの黒猫がこんなかっこいいヤツだったなんて……
素敵な話をありがとうございます。
だがな、どんなに男前でもお燐だけは渡さんぞ(ピチューン