博麗神社。
人と妖怪が交流できる安全で平和な場所。
・・・ではなく、単にここに居る巫女に逆らえない・・・もとい、友好的な妖怪がよく来るという話である。
ちなみに巫女の生活は掃除して茶を飲んで飯食って寝る。
最初意外はニートもいい所である。
たまには妖怪退治に出たりもするが・・・
「掃除終わりっ。さて、お茶でも飲みましょ。」
「あら、お掃除お疲れ様、霊夢。」
その友好的(?)な妖怪。
名を、八雲紫。
幻想郷で一番タチの悪い妖怪である。
「なに勝手に上がってんのよ。神社の裏方に勝手に上がっていいと思ってるのかしら?」
「いいじゃない。私と霊夢の仲でしょ?」
「わかった、その仲をわきまえて貴方を退治するわ。」
「酷いわ!今までの事は遊びだったのね!」
「いつの時代のボケよ。」
「紫の時代のボケじゃないのか?」
彼女は霧雨魔理沙。
ここによく来る数少ない人間である。
でも欝陶しいから帰ってほしい。
「いつからいたのよ・・・」
「魔理沙、余り私をババァ呼ばわりしないほうがいい。」
「私は事実を言う主義なんだ。」
「言いながら人のお茶を飲むなっ!!」
「いいじゃないか減るもんじゃあるまいし。」
「減るわよ!!うちは年がら貧乏よ!!」
「まったく、入場料払ってもらおうかしら。千円。」
「何でそんなに高いんだよ。見世物の一つもありゃしないのに。」
「(じゃあなんで来んのよ・・・)お茶代含めてよ。入場料は二百円。」
「お茶代高っ!?それに比べて入場料安っ!!」
「入場料は一回払ったらもう貰えないでしょ?」
「汚なっ!!汚いわよ霊夢!!私はもう四杯目よ!!」
「冗談抜きでも飲み過ぎよ馬鹿!!金払え!!本気で!!」
「えー。じゃあ代わりに霊夢の言うこと一つ聞いてあげる。」
「本当?ん~…」
―以下、ヒソヒソ話―
「おいおい、いいのかよ。今の霊夢じゃあ何言い出すかわかんねぇぜ?」
「いいのよ。霊夢にだって一応の常識ぐらいあるわ。」
「でもな…体で払え~!とか言ったらやばいだろ?」
「私としては本望な位だけど。」
「いや、私が許さない。」
「・・・・・・。まぁ、今すぐ里を襲えとか言われるよりマシじゃない?」
「それこそ霊夢の常識を疑うぜ・・・」
―終了―
「決めた。今すぐ里を襲って来て。私が退治してその報奨金という形でお金を貰うわ」
「…魔理沙…霊夢を押さえなさい。」
「了解。」
「ちょっ!?離しなさい!!しかも紫はなんで脱いでんのよ!!」
「うふふふふふふふ…れぇいむぅ…貴方の望み通り、体でしっっっかりと支払ってあげ」
「誰がそんな事頼んだ!!」
霊苻「夢想封印」
「まったく…冗談を冗談と分かりなさいよね。」
「笑えない冗談だぜ…」
「まぁお茶代をぼったくるつもりはないわ。賽銭はいれていってね。」
「もう、強がっちゃって。キスしてくれればおこづかいぐらいあげるわよ。」
「断るわ。」
「もう…ところで霊夢。」
「何よ。」
「子孫の事、考えてる?」
盛大に吹いた。
「突拍子もないわね。」
「貴方、今いくつだっけ?」
「二十二・・・かしら。」
「合ってるぜ。私が今年でハタチだからな。」
「教えてあげるわ。前代の博霊は二十八で子供を産んだわよ?そろそろ考えて置くべきではないかしら。」
「まだ六年あるわよ」
「六年なんてあっという間よ」
「そりゃあン百年生きてる婆からしたら、寝て起きるまでぐらいの時間差があるでしょうね。」
「霊夢、言っていいことと悪いことがあるわよ。」
「そうだったわね。」
「とにかく、そろそろ考えとくべきじゃないかしら。それとも幻想郷の守護者として続けてきた博麗の代をあなたで切るつもり?」
「分かってるわよ・・・でもそんないきなり言われてもね・・・」
「霊夢は大変だな。誰か仲のいい奴とかいないのか?」
「居る訳無いじゃない。」
「霖之助さんが居るじゃない。」
「嫌よ。仲がいいのは認めるけど、恋人とかとは無縁よ。」
「ヘタレねぇ。じゃあ好みのタイプとかは?」
「分かんないわ。」
「…呆れた。こりゃ参ったわね。」
「そういうあんたはどうなのよ。」
「霊夢。」
「私も霊夢だぜ。」
聞いたこっちが馬鹿だった。
「私にその気はないわよ。」
「連れないわね。」
「んじゃ、あんたらの恋愛経験とか。参考までに話してよ。」
「もうお茶は飲めないから帰るぜ。」
「帰んな!!せめて賽銭入れてけ!!」
「じゃあな。」
「あっ、くそっ・・・私じゃ追いつけないし。もういいわ、紫は?」
「私は若い頃モテモテだったわよ。初めての相手は」
「ありがとう、私他の人にも聞いてくる。」
「すっごく可愛くて・・・て、ちょっと!?霊夢ー!!」
「さて、誰に聞きに行こうかしらね…。」
妖精とか餓鬼んちょ妖怪にはまず無駄だろう。
紅魔館にも・・・赤ん坊吸血鬼と人間辞めた奴と生物辞めた全自動本読みモヤシしかいないし。
白玉楼には「恋愛?なにそれ食い物?」って本当に言いそうな奴と剣と結婚した奴しか居ない。
宇宙人に言っても埒は開かないだろうし、
地霊殿も・・・ただの動物園だし・・・。
・・・・・・・・・・・・。
こ れ は ひ ど い
徹底的なまでに周囲に頼れる奴がいないとは・・・
里には行きたくない。
何処でカラスが聞いてるか分かったもんじゃない。
・・・それはある意味、今此処でも変わらないわけだが。
同じような理由で妖怪の山も断る。
「あら、霊夢さん。悩み事ですか?」
「あんたは山の神社の・・・守谷早苗だっけ。」
「勝手に洩矢様と結婚させないでください・・・。私は東風谷早苗です。」
「まあ、下は合ってるんだからいいじゃない。」
「よくありませんよ。」
「貴方確か外の世界から来たのよね。」
「まぁそうですけど?」
よかった、まともな奴が一人見つかった。
「恋愛経験についてなんだけど・・・。」
私は周囲を確認しつつ、これまでのいきさつを話した。
「そうだったんですか・・・。生憎私は現人神として生きるために、他人と余り強い接点を持たないようにしていたんです。力になれなくてすいません」
なんと・・・あっさり破られてしまった・・・
余り気は進まないが、もはや里を頼らざるを得なくなったか・・・?
「寺子屋の慧音さんに聞いてみればいいのでは?」
「それも考えたんけどね、天狗に見つかりたくないのよ。」
「ああ、確かに困りますよね。」
「近所でしょ?退治しなさいよ。」
「無茶言わないでくださいよ。妖怪退治なんて専門外だし、天狗なんて…無理です」
「度胸のない・・・」
まったく情けない。それでも巫女か。
紫が外の世界でゆとり教育がどうたら言ってたけど、こういうことなのか?
次の異変の時にでも無理矢理連れ出してやる。
「里で慧音さんと話している間、外で見張ってましょうか?」
でもこの子・・・いい子だなぁ・・・
いかん、涙が
「恋愛か・・・いや、う~む・・・」
「珍しいわね、貴方がそんなに考え込むなんて。」
「恋の質問自体はよく来る。誰かが好きだとかな。だが、博麗の場合は少し勝手が違う。どうすれば恋愛が出来るか・・・うむむ。」
「そういう質問は来たことないの?」
「無い訳じゃない。が、まだ幼い子供達には、無理してしなくても良いと返すのが正しい。」
「正しいって・・・」
「教師にも返し方のセオリーというものがある。あとはアドリブだ」
いかん。
ここで答えが出なかったら手詰まりだぞ。
たのむ、上白沢慧音。
「すまない、博麗。」
\(^O^)/
「アリス~いないの~?」
こうなったら藁でも掴むしかない。
とりあえず種類こそアレなものの、中身は比較的まともな奴に会ってみた。
「ア~リ~ス~」
ドアが開いたと思えばいきなり睨まれた。
「うるさいわね、ちょっぐらい待ちなさいよ。」
「随分不機嫌ね。なんかあったの?」
「神経使う仕事中にガンガンドア叩かれたら、そりゃあイライラもするわよ。」
「悪いわね。」
「悪いと思ってるなら償って頂戴。っていうか早い話、帰れ。」
「聞きたいことがあるだけよ。」
「何よ。」
「アリスって恋愛経験ある?」
「それだけ?」
「それだけ。」
「帰れ。」
博麗神社。
人と妖怪が交流できる安全で平和な場所。
・・・ではなく単にここに来る人間に逆らえない・・・もとい、友好的(?)な妖怪がよく来るという話である。
ちなみに今、巫女はお茶片手にぼーっと空を眺めているだけである。
最初以外は植物人間もいい所である。
「何故に空を眺めているのです?天女が降りて来るのでも待っているのでしょうか?」
「待ってないのに降りて来たじゃない。」
「私は天女ではありませんがね、それに私はただ散歩しているだけです。」
その友好的(?)な妖怪・・・ではないな。
名を・・・なんだっけ。
幻想郷で一番よく分からない妖怪である。
「お久しぶりですわ。私は永江衣玖です。」
「聞いてないわよ?」
「思い出そうとしてるような気がしましたから。」
「心でも読めるの?」
「まさかそんな。私は悟り妖怪ではございませんから。」
相変わらずよく分からない妖怪だ。
が、まだ話せるかもしれない。
そう、藁にもすがる気持ちだ。
「あなた、恋愛経験とかある?」
「ありますけど?」
「そう・・・んうぇ!?」
「そちらから聞いておいて何ですかその反応は。」
「べ、別に何でもないわ・・・。とりあえず・・・」
少女説明中...
「…というわけだから、恋愛の話とか聞かせてくれないかしら。」
「成る程。私の恋愛経験は幻想郷が出来て間もない頃です。ある一人の人間に言い寄られたのですよ。」
「もの好きな奴ね。」
「あまり彼を悪く言わないで下さい。私は今も彼を愛しています故。」
「・・・・・・。」
待て、何だこの空気。
空気よ!空気を読むの私・・・!
「え、えと、何で承諾したの?その人の何処に惹かれて?」
「どこかに惹かれた・・・という訳なのでしょうか。単純に彼といるのが楽しかったんですよ。彼の私を愛す気持ちも・・・きっと本物でしょう。
もっとも、彼のいない現在では確かめようもないことですが・・・」
・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
あ、終わり?
「子供とか居るの?」
「いませんよ。人間と妖怪がまだなじめていない頃ですからね。半人半妖など悲劇の元です。」
ふと、道具屋の主人を思い出した。
彼もそんな経験があるのだろうか。
「ようするに、恋だ愛だと抽象的なものばかりで考えるから、分からなくなるのです。単純に一緒に居て楽しい人、自分の心を開ける人を選べばいいんです。そして貴方の魅力は、文句を言いながらもあらゆる人、妖怪を受け入れられる所ですよ。」
博麗神社。
人と妖怪が交流できる安全で平和な場所。
そして、人も妖怪も受け入れることができる巫女がいる。
「ねぇ、紫。」
「何かしら?」
「私の言うことを何でも一つ聞くって約束、したじゃない?」
「…覚えていたのね。里は襲わないわよ。」
「この手紙を…霖之助さんに届けて欲しいのよ。」
内容はとても面白かったです
しかし22歳か……まあ時間軸が歪んでない限りその位になってるだろうが。
そうしてみると東方って息長いなぁ。