森の広場に響く声。
「やっ」
チルノの放った小さな氷の粒がルーミアの頭を打った。
ルーミアは「あ」と言ったきり、ぼけっと立ちつくしている。
「ルーミア弱いなあ、あたい3連勝」
「ああ、疲れた」
チルノと共に空中を飛び回っていたミスティアは切り株にもたれかかった。
切り株には帽子が置かれている。
「ルーミア、動かないんだもん」
「次はチルノと私がチーム?」
「そう」
「ルーミア、足引っ張んないでよ」
ルーミアは頭をさすりながら頷いた。
「分かってるよ」
「ちょっと、休まない?」
「やだよ、このまま続行」
「えー」
ミスティアは渋い顔をした。
そして、再び弾幕ごっこが始まる。
チルノ達はこの、森の中の開けた広場で遊ぶのが日課になっていた。
遊びは決まって弾幕ごっこ。
一度遊び始めると、朝から夕方までこの調子である。
また、彼らは知らないことだが茂みの中から覗く二つの目があった……。
「それじゃ、またね」
「うん」
チルノはミスティアに手を振ると、湖に向けて飛び始めた。
そろそろ、本格的に暗くなってくる。
森の上空をコウモリが飛び始めており、何となく薄気味悪い光景であった。
チルノはひたすら家路へと急ぐ。
頭の中にあるのは今日の晩ご飯のことだ。
大妖精がきっと、何か作っていることだろう。
彼女はいつも食事を作ってくれる。
「ねえ」
ふと、チルノの背後から声がかかる。
チルノは半ば悲鳴を上げたいのをこらえて、振り返った。
「え?」
すると、そこにはマントを羽織って緑の髪をした、見慣れない顔の少女が空中に立っていた。
妖怪に違いない。
とは言っても、薄暗闇のため顔がよく見えないのだが。
「あんた、誰?」
「あ、私、リグル」
「ふうん、何か用?」
リグルと名乗った少女は答えなかった。
ただ、目を合わせようとせず、口元をせわしなく動かしていた。
チルノは何だか、気味が悪くなってくる。
「あ、あの、私」
「何もないなら、あたい帰るよ」
「あ、待って」
リグルは言った。
チルノは振り返る。
「だから、何よ?」
チルノが声を荒げると、リグルは首を振った。
「ううん。何でもない、もういい。ごめん」
チルノが首を傾げていると、リグルは背を向けて一目散に飛んでいってしまった。
「何だ、あいつ。変なの」
しかし、帰宅して大妖精の手料理を食べたチルノはすっかり、そのことを忘れてしまった。
そして、いつもより早めに眠ってしまった。
正直リグルとかいう少女のことなど、どうでもよかったのである。
次の日までは。
「やあ、ミスティア」
正午過ぎ。
チルノはいつもの通り森の広場へと向かう途中、ミスティアと出会った。
しかし、ミスティアは酷く慌てた様子で声を上げた。
「チルノ、大変」
「は?」
ミスティアは広場の方から飛んできた。
「いつも、私達のいる所に変な人が来て、お前らは出て行けって」
「ええっ?」
チルノは事態を飲み込めずにいたが、ミスティアはいっそう大きな声で叫んだ。
「とにかく、大変なんだよ。早く来て」
「ルーミアは?」
「まだ来てない」
それもそうだ。
ルーミアは日が陰りだしてからでないと、来ない。
チルノは広場へと急いだ。
「早く」
チルノが広場へ降りると、誰かが切り株に腰掛けているのが見えた。
「あれ」
白いブラウスに黒いマント、緑の髪、色白の肌。
チルノの記憶の中の少女と一致するのに、時間はかからなかった。
「あの人?」
「そう、あの人」
「リグル」
チルノは呼びかけた。
リグルは目を閉じたまま、切り株に腰掛け涼を貪っていた。
「どういうこと?」
「私の名前、覚えててくれたんだ」
「ねえ」
「知り合いなの?」
ミスティアの困惑を無視するように、リグルは言った。
「悪いけど、ここから出て行ってもらうよ」
「え?」
「私はこの森に住んでるんだけどさ、ここは気に入ったよ。丁度良く広いしね。私が住むのに、あなた達は邪魔なの」
「そんな」
ミスティアの顔が歪んだ。
チルノは眉を顰める。
「森の中はみんなの場所じゃん。そこを、自分一人で使うなんて。それに、ここはずっと、あたい達が使ってるんだよ」
「みんなの場所?」
リグルは嘲るように、吐き捨てた。
「違うね。ここは私の場所。あなた達は遊んでいるだけじゃない? だけど、私は住もうとしてるのよ。どっちが重要だと思っているの?」
ミスティアはチルノの不機嫌になっていく様子が分かったらしく、不安げに目配せした。
「チルノ。ああ言ってるし、他の所に行こうよ」
チルノはミスティアの手を振り払った。
「絶対にやだ」
リグルは眉一つ動かさずに聞いている。
それを見たチルノはますますヒートアップする。
「遊ぶとか、住むとかの問題じゃない! 頼み方ってもんがあるんじゃないの? あたいは絶対に動かない」
ミスティアは気圧される。
「へえ」
リグルはゆっくりと、立ち上がった。
「どうしても出て行ってくれないなら、考えがあるね」
「え?」
少女の手の中で火の玉が踊って、弾けた。
「力ずくでも追い出す」
「待って、話し合えば……」
ミスティアの前にチルノが進み出た。
リグルの真似をして右手の中に氷柱を作り出し、弾けさせる。
「いいよ」
「そう言うと思った」
リグルは切り株の上を軽く蹴り、空中へと飛び出す。
チルノも氷の羽を動かせて、軽やかに飛び上がった。
「止めて、チルノ」
「弾幕ごっこするだけだよ。大丈夫だから、そこで見てて」
そう言う間も無くチルノの足下にピンポン玉大の光弾がめり込み、小さな爆発を起こした。
チルノは慌てて飛び退き、構える。
「やるの? やらないの? どっち?」
「やる」
チルノが言うと、リグルは微笑んだ。
「ああ、もうっ」
チルノが早かった。
右手を振ると6本の巨大な氷柱が現れ、回転、交差しながらリグルへと向かった。
氷柱が交差する瞬間リグルは造作も無く前方へと滑り込むと、次弾を準備するチルノの横腹を狙って針状の弾を撃つ。
弾は途中で、十数本に分かれ、丁度アイアンメイデンのようにチルノの各所へと進む。
「あ」とミスティアの声。
チルノは「ふ」と呼吸すると、周囲の空気を払った。
途端に針が空中に静止する。
「どう?」
凍った針が音もなく砕け散り空中に溶けるのを見て、リグルは口笛を吹いた。
「やるね」
「降参?」
チルノはリグルを睨んだ。
リグルは首を横に振ってマントを翻す。
「付いてきなよ」
リグルは木の隙間を縫うようにして、森深くへと入っていく。
必然、チルノも猛進していく。
「待って」とミスティアの声を無視するように。
チルノはリグルを追っていく。
慣れない森の中のため、時折、葉や枝が体に当たるが、気にする暇はない。
そして、数十秒も追いかけた時、チルノは気付いた。
自分の方が早い。
森に慣れているはずの相手の背中が近くなっているのだから、間違いない。
ぐんぐん迫る背中。
あと少しで指が迫るという瞬間、リグルは風切り音とともに姿を消した。
「あ、あれ?」
チルノの頬を嫌な汗が伝う。
状況を上手くは説明出来ないが、とにかく嫌な予感。
今にも体が穴だらけにされるような感覚。
上方できらり、と何かが光り、チルノは予感の正体を理解した。
先程の針だ。それが降ってくる。
最早、アイアンメイデンという様相などではない。雨である。
数百本だろうか。
「あああああ」
チルノは無様に声を上げた。
空気を凍らせるのが、間に合わない。
チルノは鋭く急降下し、横へと飛んだ。
間一髪、針の振ってくる空間からは逃れる。
地面に突き刺さる音が不気味に聞こえた。
そのまま反転し、樹上に突き抜けるとリグルがいた。
チルノの腕から冷たい血が流れる。
正確には、かわし損ねた針もある。
それを見たリグルは笑う。
「よく、避けたね?」
「何とかね。あんた結構、本気なんだね」
「そりゃねえ。でも、ここからはどう?」
不気味なセリフ。
リグルは懐から、ワルサーを抜いた。
チルノはベレッタを抜く。
「ひゅう」
どばばん。
弾が撃たれる音。
ワルサーから放たれた弾が高速回転しながら、チルノの頬をかすめた。
鮮血が飛ぶ。
チルノの弾を、リグルはいとも簡単にかわす。
連射するチルノは舌打ちした。
「おっと」
弾切れだ。
リグルは背中からショットガンを取りだした。
装填音。
引き金が引かれ、チルノの背後の太い幹がはじけ飛んだ。
反動も何のその、リグルは平然とショットガンを撃ちまくる。
チルノの撃ったベレッタの弾がショットガンの弾とかち合い、撃ち落とされた。
「く」
「もう終わり?」
リグルは喉を鳴らして、笑った。
「知ってるわよ? 弾切れでしょう?」
「どうかな?」
チルノはベレッタを惜しげもなく、森の中へ放り投げた。
リグルが青ざめる。
「本当は、好きじゃないんだ。ベレッタ」
チルノはハードボーラーを左右に二丁、懐から取り出し、ぶっ放した。
リグルは、慌てて縦横無尽に飛び回る。
先程までの様子が嘘のように、防戦一方だ。
「おおおおおお」
づだだだだだだ。
「おおおおおお」
づだだだだだだ。
「おおおおおお」
づだだだだだだ。
リグルのマントを弾が何度もかすめた。
チルノは決して手を休めず、撃ち続ける。
すると、リグルが再び、背を向けて森の中へ突っ込んでいく。
「く」
「あ。また逃げる気か」
チルノが追いかけようと森の中へ飛び込むと、背後から轟音が聞こえてきた。
「チルノ!」
「ミスティア?」
「これに乗って」
ミスティアの運転する赤いスポーツカーがチルノの目の前に駐まる。
チルノはすかさず助手席に乗り込んだ。
「大丈夫?」
「大丈夫」
車が急発進し、チルノは思い切りシートに叩きつけられた。
「はい」
ミスティアはコーラを差し出した。
チルノはありがたく、乾いた喉に流し込む。
前方には、バイクに乗って走るリグルの姿が見える。
「あの人」
「え?」
「何だか、戦いたくないみたい」
「それってどういう事?」
ミスティアはギアを6速へと入れる。
「すごく、悲しい目をしていたわ」
急カーブに差し掛かり、ミスティアは素早くハンドルを切った。
バイクは湖畔に続く道へと入っていく。
「危ない、伏せろ」
リグルの撃った弾丸がフロントガラスを割った。
ミスティアは悲鳴を上げる。
「大丈夫、落ち着いて」
ミスティアは落ち着いていた。
すかさず、サイドシートを跳ね上げると、銃が現れた。
チルノはバイクの前輪を射貫いた。
バイクはきりきり舞いし、太い木に突っ込み、爆発炎上した。
リグルは宙返りし、バイクから飛び降りて空中に舞い上がる。
「ああっ」
チルノは車から飛び降りた。
ミスティアも飛び降りる。
「私も行く」
「駄目だ。危ない、付いてくるな」
「足手まといにならないからっ」
二人は湖畔へと降り、空中のリグルへと走っていく。
リグルはハンドガンを立て続けに撃った。
「危ない」
ミスティアを庇うように、チルノは横へ逃げる。
すると、背後から声が聞こえた。
「あなた達、こんな所で何をしているんですか?」
ヤマザナドゥであった。
チルノの顔色が変わる。
ミスティアも怯える。
「一般人は隠れていろ!」
「え、え?」
「いいから、早く! そこの小屋へ!」
チルノは自らの背後のあばら小屋を指さした。
おそらくは、農具置き場だったのであろう。
事態を飲み込めていない、映姫は「は、はい」と小屋の中へ入っていった。
「全く。これだから、一般人は……」
「チルノ、あれを見て」
「お、おお」
リグルはロケットランチャーを担いでいた。
リグルは引き金を引き、巨大な弾が飛び出す。
「おおおおおお」
チルノはミスティアを抱きかかえ、空中へと逃げる。
チルノにかわされた弾は背後の小屋に直撃し、爆発した。
「ミスティア」
風圧を受けたミスティアは、「う、うう」と言ったきり、気を失ってしまった。
「ミスティア!」
小屋が火柱を上げる。
頬を火の粉が打った。
チルノは火柱をバックに、空中のリグルへと歩み寄った。
「いつまで、そんなものを持っているんだ?」
チルノはリグルのロケットランチャーを指さした。
リグルは「やれやれ」と言った様子で、ロケットランチャーを放り投げた。
「終点だ、決着を付けよう」
湖は、夕日に照らされて輝いていた。
チルノはゆっくりと、ミスティアを湖畔の柔らかい草の上に寝かせた。
二人は一歩一歩宙を歩き、湖の上に進んでいく。
「抜けよ」
チルノは背中のクレイモアに手を遣った。
リグルは腰の日本刀に手を遣る。
間合いは十分、お互いに、いつでも首を刎ねられる。
二人はにらみ合ったまま、時間が過ぎていく。
チルノから漏れた冷気が湖を凍らせていった……。
びしり、ばしり、と氷結音。
先に抜いたのはチルノだった。
かけ声と共に、抜剣。
真上から、リグルの頭蓋骨を狙った兜割が走る。
しかし、頭は割れない。
それこそ流れるように優雅に、リグルは体を捻りながら静かに右へと避けた。
刀剣の類さえ無ければ、ワルツを踊っているのかと勘違いしてしまったであろう。
チルノは瞬間、見とれた。
チルノは何事も無かったかのようにクレイモアを背負い直し、リグルは二歩進んで元の位置へと戻る。
振り出しだ。
またもや、二人は向き合う。
びしり、ばしりと氷結音。
静かだった。
今度はリグルが抜いた。
向かって、右からの一閃。
首を落とす一本の線は、チルノのショートソードに防がれた。
本来はクレイモアを抜きたいところだが、それでは間に合わず、首を落とすところであった。
そこから、打ち合いが始まった。
そのまま下へと切り返す日本刀を避けて、右から切り返すショートソードがリグルのマントを切る。
リグルはマントを投げつけ、同時にチルノの腹を蹴飛ばす。
追撃をショートソードと両手で受けながら回転し、上空へと飛ぶ。
二人は巨大な戦闘機になって、空を駆けた。
リグルはマシンガンを撃つ。
チルノはアクロバティック飛行を繰り返しながら華麗にかわした。
チルノがミサイルを発射すると、リグルは何食わぬ顔で避けた。
リグルは力任せに舵を切り、チルノに機体をぶつける。
二人の機体は著しく損傷し、湖へと墜落していった。
ミサイルは紅魔館に着弾した。
リグルは振り返りざまに、小刀を放り投げた。
クレイモアを取り出そうとしていたチルノは不意を突かれる。
腕に小刀が突き刺さった。
抜く間もなく、再び、右から日本刀の居合い。
受け太刀はしない。飛び退きざまに、小刀を力任せに引き抜いて投げ返す。
鮮血と共に飛んだ小刀をリグルは柄で叩き落とした。
と同時に、凍った湖面を蹴り上げる。
飛び散った氷の粒がチルノを襲った。
チルノはそれを右へ避けた。
しかし、それがリグルの計略だった。
受け太刀を嫌い、あえて避けを選ぶチルノの無意識の選択。
リグルは本能的に見抜いていたのである。
チルノの盟友であるはずの氷は皮肉にも、彼女を殺すために利用された。
そこへ振りかぶった日本刀。
ショートソードを咄嗟に構えたチルノ。
二人は鍔迫り合いの形になった。
しかし、ショートソードでは圧倒的不利である。
次第にチルノの顔面へと鋭利な日本刀の刃が迫ってくる。
リグルは笑っていた。
あと、数秒で顔に刃が入らんとしたその時、一本のナイフがリグルの二の腕に刺さった。
「何?」
カトーマスク(注1)を付け、黒いドレスを着けた女が金髪をたなびかせながら、湖面に降り立った。
二人の視線が集中する。
「お、お前は?」
「助っ人」
「あなたは誰?」
リグルに続いて、チルノが聞く。
「そんなことはどうでもいい、助けに来た」
「荷担するなら、容赦しないぞ」
リグルが吠えた。
金髪にカトーマスクの女は、首を傾げる。
「そうなのか?」
「いいだろう。二人とも葬ってやる」
途端に空が曇り、雨が降り、雷が起こり始めた。
「行くぞ」
金髪はとりあえず味方のようだ、とチルノは思う。
次の瞬間、リグルの持った日本刀から真空波が飛び出した。
二人は左右へと分かれながら、空中へ避ける。
すると、金髪の女がレイピアを抜いた。
「食らえ」
突然、湖面の氷が割れ、巨大な水柱がリグルを突き上げる。
しかし、リグルはものともせず、刀を放り投げた。
途端に刀は数十、数百本に分裂し、二人の上へと降り注ぐ。
チルノは背中の、2メートル近くあるクレイモアをいよいよ抜いた。
それを一薙ぎすると、針の山がはじけ飛ぶ。
リグルの顔色が曇る。
雷はいっそう激しく鳴り響き、風は逆巻き、天が二つに割れていく。
「さあ、武器はないぞ。降参しろ」
金髪の女が言った。
二人は用心深く、リグルへと近づいていく。
リグルはにやついた。
「本当に無いと思ったか?」
金髪が叫んだ。
「チルノ、早く片付けろ!」
しかし、吹き荒れる風が行く手を遮る。
チルノは目を覆った。
いよいよ、辺り一面の木が吹き飛び、大地が削られていく。
リグルは一枚の符を取り出した。
「ははははははは」
「まずい、魔法だ。黒魔法が来るぞ」
「な、なにい」
「来たれ、天上のゴモラ、地上のソドム、身を翻して来たれ、時空の扉を開きて来たれ」
途端に鳴り響く轟音。
空がますます暗くなる。
「滅ぼせ」
「隕石だ」
空から、一筋の光とともに、乗用車大の巨大な隕石が降ってきた。
「うおおおおお」
チルノはもがいた。
しかし、動けない。
「逃げろ」
「駄目だ、風で動けない」
ますます、赤黒く焼けた隕石が迫ってくる。
もし当たれば、死ぬ。
死んだ。
チルノがそう覚悟した時、目の前を黒い何かが横切った。
「何!」
隕石が湖面に落ち、大きな水柱を上げ、湖は海のように荒れ狂う。
背中に強い衝撃を感じたチルノが目を開けると、ボロ切れのようになった黒いドレスを着けた金髪女が湖畔の樹上に引っかかっていた。
「あああああっ」
チルノは悲鳴を上げた。
女のもとへ、向かおうとした。
しかし、思い直す。
彼女が自分を助けたのはなぜか。
自分が今、しなければならないことは何か。
「あああああ」
チルノは飛び上がった。
強い風が吹き付ける。
「リグル!!」
リグルは力任せにパンチを繰り出した。
チルノは顔面で受ける。
痛かった。しかし、倒れない。
リグルの表情が怯えの色を見せる。
チルノはそのまま、リグルの顔面に蹴りを入れた。
リグルの体が揺らいだ。
チルノはリグルの腹に右のパンチを入れる。
勝負は決まった。
暗転した意識が次第に明るんでくる。
数十秒の短い気絶の後、リグルは目を開けた。
そこは、チルノの腕の中だった。
「やあ」
風が収まってきた湖上の空を、二人は漂っていた。
「負けちゃったね……」
リグルは悲しそうに呟いた。
チルノは疲れ果てた表情で頷く。
「楽しかったよ」
リグルは言った。
「あなた達が遊んでるのを見て、私もいつか仲間に入れてもらいたいと思ったけど、駄目だった。私、馬鹿だから……」
リグルはぽつり、ぽつり、と言葉を継いでいく。
「私は友達が欲しかったけど、仕方なかったから、いつもあなた達のことを森の中から見てた。本当に楽しそうだなあと思って、それでも我慢してたんだけど、でも」
言葉は止まらない。
「この間、話しかけたのも仲間に入れて欲しかったから。でも、やっぱり駄目で……、でもああすれば、相手にしてくれると思って」
「リグル……」
「悪役にしかなれなかったけど、短い時間でも本当に楽しかった。本当に仲間になった気分だった」
リグルの声がふと止まり、代わりに瞳から涙が溢れてきた。
「ごめんね、でも、私を見つけた時、「リグル」って呼んでもらえて嬉しかったよ。覚えててくれたのが分かったからね」
リグルは静かに、チルノの腕の中から抜け出す。
そして、顔を隠すように背を向けて、森の方へ歩き出した。
「本当にごめんね。別にあの場所が欲しい訳じゃないから、もう邪魔しない。今日はありがとう。さようなら」
「待って、リグル!」
チルノが叫ぶと、リグルは振り返った。
「待って」
「え?」
「友達になろうよ」
チルノはリグルの手を握った。
リグルは目を丸くした。
「私も楽しかったよ、リグル。これからも遊んでよ」
「え?」
「だから、友達になろうって」
「本当に? 本当にいいの?」
「うん」
チルノは頷いた。
リグルは驚いていたが少しの後、泣き顔を更にぐしゃぐしゃにして泣き始めた。
雲が晴れ、暖かな日が差し始めた湖畔。
「やあ、ミスティア。起きた?」
チルノの明るい声が響いた。
ミスティアはチルノの汚れた服装を見て、驚く。
そして、何よりもその隣にいる緑の髪の少女がミスティアを驚かせた。
「チルノちゃん。勝ったんだね?」
チルノは頷く。
リグルは赤く腫れた目もさることながら、顔を真っ赤にして俯いていた。
「新しい友達のリグル」
チルノは言った。
リグルはチルノに後押しされて、前に進み出た。
「今日はごめんなさい。あの、友達になって、くれま、せんか?」
チルノはミスティアに頷きかける。
ミスティアは全て察した様子で頷いた。
「ううん。いいよ、よろしくね、リグル」
リグルの顔がますます赤くなる。
チルノは思い出したように、手を叩いた。
「そうだ、もう一人、紹介したい人が」
チルノは木を見上げた。
しかし、彼女の姿はない。
金髪も黒いドレスも、マスクも跡形なく消えてしまった。
「あ、あれ?」
あるいは、水に落ちてしまったか、と不安に駆られるが、その様子もない。
澄んだ湖の中には何も見えなかった。
と、その時、ふざけた足音ととぼけた声が聞こえてきた。
「おーい」
「あ」
三人の視線がそちらに集中する。
ルーミアが猛烈な勢いで走ってきた。
「ここに、いたのかあ」
「ああ、うん」
「うん」
かくして、湖畔に4人が揃った。
ルーミアはリグルを見て、首を傾げる。
リグルは小さく頭を下げた。
「これ、誰え?」
「紹介するね。新しい友達のリグル」
チルノより早く、ミスティアが紹介した。
「へええ、よろしく」
ルーミアはリグルの手を取って握手した。
リグルもルーミアの手を握り返した。
「チルノちゃん? もう一人って?」
「ああ、ううん。何でもない」
チルノは首を振った。
ミスティアはルーミアの頭を指さす。
「どうしたの。ルーミア、頭に葉っぱが付いてるよ」
「ああー、さっき、木に突っ込んじゃったあ」
ルーミアは頭に手を遣った。
「ミスティア、取ってよお」
「全く、ルーミアはドジだなあ」
チルノが笑った。
すると、ミスティアが笑い出し、ルーミアも笑い出した。
最後にはリグルも笑い始め、湖畔には賑やかな声が響いた。
「よおし、これから何をして遊ぼっかあ?」
「ええ、これから? 疲れてないの? ルーミアは疲れてないの?」
「疲れてないよお。リグルは」
「疲れてないよ」
「よし、じゃあ、遊ぼう」
そして、4人はそれぞれのペースで駆けだした。
もそっとぐちゃぐちゃになるともっと笑えたかなぁ、と。
でもカトーマスクで吹いたんでこの点数。
ここから謎の時空に迷い込んだw
ちょっと吊ってくる
色々とおかしいぞwwww
もう少しコンパクトにまとめたほうが良かったと思う
でも笑ったのでこの点数
何をどう突っ込んでいいのかわからないww
東方でやる意味もないんじゃないかなと
が、吹いた俺の負けだw
チルノはベレッタ系よりも、旧ソ連系の拳銃のが個人的にはイメージに合う。
氏の作品は「妖忌の大冒険」などは上手いなぁと感心しながら
読ませてもらったのだけど、これはもう世界観からして滅茶苦茶。
不条理とかそういうレベルじゃないしね。
とりあえず美しい友情に乾杯って感じですね
それだけで100点満点だわwwwww