『アイスキューカンバー味のあの飲みものには、同胞の血肉が入っていた!?』
『販売終了となった今では真偽を確かめるすべはないが、実際のところは……』
にとりさんは今日も日課のネットサーフィンをしておりました。
そして、そこでちょっとばっかり気になる記事を見つけてしまったんです。
え?ネット環境なんかありゃしない幻想郷でどうやって接続してるんだって?
大丈夫、にとりさんが接続しているのは、インターネットなんかじゃなくて、
河童達が使う電脳ネット「カッパーネット」なんです。
洗面器をディスプレイ代わりにして、LANケーブルに見立てたゴム紐に
新鮮なきゅうりにくっつけるだけでいいんですから、簡単でしょ?
にとりさんは記事とにらめっこをします。このブログの情報では、
河童さん御用達であるアイスキューカンバー味のあの飲み物が、河童の血肉を使って
作ったものだったと書いてあるのです。
ふつうに考えると吐き気を催すほど気持ちが悪い感じがしますけど、
にとりさんってばちょっとばっかり納得しておりました。
~同族喰いカニバリズムは深層心理の奥底に隠れているある種の快感を呼び起こすものである~
先日特別公開されたパチュリーさんの図書館でよんだ本に、そんな一文がのっていたのです。
ちょっと難しい言葉なのでわかりずらいかもしれませんけど、
ようは『ワタシ、オマエ、クウ。ウマイ、ウマイ、オカワリ、ヤマモリデ』っていうことなんです。
わかりました?
だから記事を読んでも「あーやっぱり、そうなのかー」っていう感情しかにとりさんには
沸きませんでした。驚きなんかこれっぽっちもありません。
さあて、今日のネットサーフィンはここいらでやめておきましょう。
ゴム紐をぱちんとはずして、きゅうりは食べてしまいます。無駄がないのが
カッパーネットのいいところなんです。
「ではでは、きゅうりと胡麻とヨーグルトの手作りドリンクでも作ろうかなー」
日課を終えて満足げなにとりさん。うーんと大きく背伸びをします。
しかし、にとりさんが途中で読むのをやめてしまったこの記事には、まだ続きがあったんです。
『本ブログでは事の真相を明らかにするために、血肉を提供してくださる同志を募集します。
特に妖力が高く、真相を究明するのに足りうるものについては、最高できゅうり300年分、
もしくは砂金20kgを差し上げます』
しかも、この記事、洗面器とゴム紐ときゅうりがあれば、河童でなくとも見ることができるのです。
欲に刈られた幻想郷各位の目につかなければいいんですがね……
*
「あー、もう!どうなっているわけ!」
あの記事が掲載された翌日の事です。
にとりさんはひたすら逃亡に次ぐ逃亡を繰り返しておりました!
と、いうのも、穣子さんやら、雛さんやら、文さんやら、早苗さん、
はては神奈子さんや諏訪子ちゃんまでもが問答無用でスペルカード攻撃を繰り出してきたのです。
にとりさんにとっては一体なにが起こっているのか皆目検討もつきません。
みんなうわ言の用に「砂金、砂金・・・!」といっているような気もしますけど、
実際のところはさっぱりです。
「スキありっ!」
頭上から、光の束がにとりさんめがけてふりそそぎます。
ああ、あれは魔女の魔理沙さんではありませんか!ねらわれた人は、
きゅうりの花ほどものこらないといわれるほどの、とても恐ろしい人です。
にとりさんは、一瞬パニックに陥りますけど、間一髪のところで、魔理沙さんの攻撃をよけます。
襲われる動機なんかありゃしませんけど、ともかく逃げるほかないんです。
ああ!おうちから逃げ出すときにスペルカードの準備をしてこなかったのが誤算でした。
ハイドロカモフラージュがあればこんな状態すぐに抜け出せたでしょうに!
「もらった!」
頭上から、魔理沙さんの膝がふってきます!これも間一髪でよけますが、
仰向けになった状態では二撃目はとてもよけられません、万事休すです。
「最後に言い残すことは?」
完全に優位を取った魔理沙さんは、優しく、しかし心のこもらない冷徹な口調でそういいます。
「なんでみんな、おそってくるの?襲われるような覚えがないんだけど」
その言葉に魔理沙さんはふふってにやけると、秘密のポケットから、
枝が突き刺さったキュウリをとりだし、天高く掲げます。
手は白くて丸じゃありませんよ、念のため。
にとりさんにはあれがなんだかすぐわかりました。
カッパーネットに出先でもアクセスできて、しかも河童同士午後9時以降は
通話は無料の便利アイテム「K-Phone ~ケーフォン~」です。
「ここに、"河童の血肉に砂金20kgの懸賞金"って書いてあるだろ?」
K-Phoneには昨日にとりさんが見ていた例の記事がフルブラウズで表示されておりました。
そこでにとりさんははじめてじぶんが襲われている原因を知ったのです。
そして、あのとき自分がこの記事を見過ごしていたことを後悔します。
血肉をあげることできゅうり300年分もらえるなら喜んで提供したのに・・・
「さあ、せいぜい河童の神様に祈るんだな……」
魔理沙さんの箒がにとりさんを襲います。ああ、いよいよ終わりの時のようです。
……リリリリ……リリリリ……
K-Phoneです。魔理沙さんがほうきをふりおろそうおした瞬間、
ブログの更新を受信したようなのです!
魔理沙さんは、腕を止め、K-Phoneの情報に目を向けます。
『先日お伝えしました、アイスキューカンバーのあの飲み物に河童の血肉が入っているという噂は、
事実無根でございました。ご迷惑をおかけしましたこと、関係各位には謹んでお詫び申し上げます』
どきりとする、魔理沙さん。あははははって笑うと、K-Phoneをにとりさんに手渡して
「ごめん、これお詫び」って言いました。
「よ、よかった……」
にとりさんは緊張で腰が抜けてしまいました。魔理沙さんを怒る気力なんかどっかに
飛んで言ってしまったほどです。
この逃亡生活から脱出することができるのなら、ほかに何もいりません。本当によかった……
にとりさんは、緊張をほぐす為にK-Phoneを分解しておいしいキュウリを食べることにしました。
「ねえ……」
にとりさんの呼びかけに振り返った魔理沙さんをのびーるアームが襲います!一体なにが!?
実は、先ほどキュウリを食べようとしたときに、K-Phoneの記事に
続きがあることににとりさんは気づいたんです。
『アイスキューカンバー味の味の飲み物には魔法使いの血が入っていることがわかりました!
今度は確かな情報筋からのリークです。
裏付けをとるために、魔法使いの血を募集します。魔力が高い方のものであれば
キュウリ500年分または、砂金50kgを・・・』
にとりさんはおいしそうなキュウリを見るような目で魔理沙さんをお見ておりました。
じゅるり、じゅるりとよだれをすすりながら。
(めでたし、めでたし)
×加奈子→○神奈子
キャラの名前違いはちょっと……。
アイスキューカンバーぺ○シwwww色々疑惑がありすぎるwww
ごめんなさい、ご指摘いただいた箇所を
なおしました。神奈子さんもチルノちゃんなみに好きです。
考えようによっては悲惨なストーリーになのに笑えました。