Coolier - 新生・東方創想話

優しい氷

2009/03/26 18:02:01
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冬がまた終ってしまう。

冷たくて、寒い。
心が冷たくて、寒い。

冬は暖かいのに、春も夏も秋も、冬より暖かいはずなのに、心は寒い。

「また次の冬に会いましょう?チルノ」

そう言ってたった一人の友人は、またどこかに消えてしまう。
そうすると自分は一人ぼっちになる。

冷気を操る自分には友人がいない。
皆、寒いからと言って一緒にはいてくれない。

一緒にいてくれるのは、冬を司る妖怪のレティくらいだった。

そんなレティも春が来たせいで、またいなくなってしまった。

「寒いなぁ……」

ポツリと呟く。

これから、また暫く一人ぼっちになる。
そう思うと心が沈んで寒くなる。
冷気を、氷を操る自分が寒いと思うのは何だかおかしな感じがする。

でも、本当に寒い。

春のポカポカした陽気がこの身を包んでも
夏の溶ける様な強い日差しがこの身を炙っても
秋の過しやすい風がこの身を通り過ぎて行っても

変わらず心は寒い。

冬の間だけ、レティと一緒にいる時だけは
凍える様な寒さの中でも、心は温かい。

その時だけが自分が妖精らしくいられる様に感じる。
無邪気で騒がしい、普通の妖精と同じになれる。
彼女と一緒の時だけは自分は妖精になる事が出来る。

でも、他の季節の自分は抜け殻の様になっていると感じる。

周囲には楽しそうに遊ぶ妖精達
自分がその輪に加わろうとすると皆の表情が沈む。
無邪気さゆえの見えない暴力。
自然を司り、遊び、騒ぐ事が仕事の妖精にとって
自分の冷気はただの毒にしかならない。

寒さは身を萎縮させ、動きは緩慢になる。
遊ぶ事も騒ぐ事も出来なくなる。
万物を凍えさせる冷気は暖気を好む妖精にとって毒でしかない。

だから皆嫌な顔をする。

その表情を見る度にチルノは『自分はいない方がいい』と感じる。

やがて、彼女から皆の遊ぶ輪に加わる事はなくなった。

氷の少女が手に入れたモノは
『冬までの孤独』と『自分は最強だからしょうがない』という歪んだプライド。
相手を見下す事でもしなければ少女にはこの仕打ちは堪える事が出来なかった。

「いっそ、一年中冬ならいいのにな……」

そうすればレティとずっと一緒にいられるのにとチルノは思う。

でも、そんな願いは叶う事はない。

――

「春ですよ~」

春を告げる春告精が頭上を通り過ぎていった。
チルノはソレをボーっと見送る。

やる事がなかった。

いつもなら蛙でも凍らせて遊ぶが、
冬眠から覚めていないのか蛙が一匹も見つからなかった。

「暇だなぁ」

妖精達の輪に入る事も出来ない。
蛙を使って遊ぶ事もできない。

やる事がない。
眠る程度しかやる事がないのに、眠れもしない。

心は相変わらず寒いままだ。

本当に、

「ずっと冬が続けばいいのに……」

「それじゃあ、寒すぎだよ?」

「?」

ふと、声付きで影が射した。
そのまま、視線を声の方に持っていくと一匹の妖精がいた。
緑色の髪の温和そうな妖精だった。

「アンタ誰?」

チルノは半分睨む様に相手を見つめて言う。
冷気を操る自分に近づく妖精など初めてだった。
だから、チルノは少し警戒していた。

しかし、睨まれた妖精はまったく動じなかった。

「私?私は大妖精、皆からは大ちゃんって呼ばれてるんだ」

ニコニコしながら大妖精は言った。
レティ以外にそんな表情を向けられたのは初めてだった。

嬉しさを感じた。
だがそれと同じくらいの疑惑も感じた。
どう見ても目の前の妖精はアイツらと同じタイプの妖精で自分の様な氷精ではない。

だから友達のいない自分をからかってるんじゃないかと思った。

こうやって友達面で近づいてきて後で裏切って、自分の悔しがる姿を見て楽しむ
つもりではないかと疑った。

「何よアタイに何か用でもあるの?ないならどっか行ってよ
アタイはアンタ達と違って忙しいんだから」

だから、意識して棘のある言葉を使った。

「え、と、チルノちゃん、だよね?」

しかし、大妖精に気にした様子はなく、不安そうに質問をしてきた。

確認を求める様な質問に

「……、だったら何よ?」

チルノが肯定すると、大妖精は笑顔になる。
そして、少し言い難そうに、モジモジしてから

「あ、あのね、私と一緒に遊ばない?」

ハッキリと言った。

「は?」

チルノはその言葉に困惑する。
今までそんな事を言って来た者は誰もいなかった。
自分から輪に加わろうとしても駄目で、向こうから誘ってくる事なんてなかった。

それなのに、目の前の妖精は『遊ぼう』と言って来た。

チルノは起き上がり改めて『遊ぼう』と誘ってきた大妖精を見る。

「駄目、かな?」

目が合うと彼女は伏し目がちに聞いてくる。

頭の中が混乱していた。
不安そうにする彼女はとても演技をしている様には見えない。
本気で自分と遊びたいと思っている様だった。

またあの顔を見るのが怖かった。
だから聞いた。

「アタイで本当にいいの?だって寒いでしょ?」

「大丈夫だよ、それに私は、チルノちゃんと遊びたいの」

大妖精のその言葉は
ずっと凍えていたチルノの心を少しだけ暖めてくれた。

――

それが親友との始めての出会いだった。

それから、二人で過す時間が多くなった。
一緒に沢山遊んだ。

木登りをしたり、探検をしたり、かくれんぼをしたり、人間に悪戯をしたり
いつも二人で一緒に遊んだ。

その間大妖精はずっとチルノの隣にいた。
だから不安になったチルノが

『寒くないの?』

と聞くと大妖精は

『涼しくて気持ちいいよ』

とにこやかに返してきた。

チルノは嬉しかった。
レティ以外でそんな事を言ってくれる者がいる事が嬉しかった。

たまに大妖精が他の子と遊んでいる時もあったが、その時はチルノは一人で遊んだ。
蛙を凍らせて溶かして、また凍らせて、それを繰り返すだけの遊び
つまらなかったが、それ以外一人で出来る遊びはなかった。

大妖精が自分の所に来てくれるのを静かに待った。
その間はずっと凍える様に寒かった。

――

暑い夏が訪れた。

「はぁ~、冷たくて気持ちいい……」

間の抜けた大妖精の声が響く。
彼女はチルノに抱きついていた。

「アタイは暑いんだけど」

文句を言うチルノの声。
夏の暑さと、氷精の彼女とは明らかに違う体温の二つで暖められているのだから
チルノとしてたまったもんじゃない。

「でも私は冷たくて気持ちいい~」

しかし大妖精はチルノの文句など知ったこっちゃないと言う感じで
また間の抜けた発音でさっきと同じ事を言う。

「離れてよ」

再びチルノが文句を言う。

「もうちょっとだけだから~」

言葉とは裏腹に先程よりも強い力で大妖精は抱きついてきた。

ただ、文句を言いつつチルノは暴れたりはしなかった。
その気になれば大妖精よりずっと力の強いチルノは彼女を振り解く事など
簡単だった。
それでも、彼女はソレをしなかった。

氷精であるチルノに暑さは不快な物でしかないが
大妖精から感じる彼女の体温は不思議と不快ではなかった。

「……あと、少しだけだからね」

「ありがと~、チルノちゃん大好き~」

「は!?」

「えへへ~」

不意打ちで言われた言葉にチルノは驚き、大妖精は照れ臭そうに笑った。

平和だった。

チルノは嬉しかった。
初めて出来た妖精の友達が嬉しくて堪らなかった。

二人で過す夏は暑苦しかったが心は暖かかった。
もう、随分と凍える事はなくなっていた。

――

秋が来ても変わらず二人で遊んだ。
木の実を拾ったり、落ち葉を集めて落ち葉のプールを作ったりした。

もうすぐ、冬が来る。
レティに早く彼女の事を紹介したかった。
そうすれば、今度の冬は三人で遊ぶ事が出来る。
かくれんぼも鬼ごっこも雪合戦も、二人で遊ぶよりもきっと楽しいはずだ。

この時間がずっと続くのだろう。
チルノは疑わなかった。

そうあるのだと信じていた。

だが、楽しさだけを見ていた彼女は気が付かなかった。
大妖精が気が付かせない様にしていたのもある。

暖気を好む自然の化身の身体は氷精の冷気に当てられ続けていた。
ここまで長くもったのは彼女が他の妖精よりも力が強かったからだろう。

大妖精の身体はもう、限界に達していた。

――

それはいつもと同じ様に二人で鬼ごっこをしていた時だった。

チルノが鬼で必死に大妖精を追いかけていた。
もともと、妖精の中で群を抜く力を持つチルノだ。
大妖精は直ぐに捕まった。

「はい、タッチ、大妖精が鬼だよ!」

「うん、じゃあ行く、よ?」

大妖精の驚いた様な声に何があったのかとチルノはそちらを見た。

大妖精が倒れた。
その光景はまるでスローモーションの映像を見ているかのようだった。
ゆっくりと膝から崩れる様に、大妖精はその場に倒れた。

「大妖精!?」

チルノは慌てて倒れた彼女を抱きかかえる。
そして、ゾッとした。

――冷たい。

抱きかかえた彼女からはまるで体温を感じなかった。
氷精である自分と同じくらい冷たい身体、夏場抱きつかれた時は
あんなにも暑く感じたはずなのに、今抱きかかえる彼女の身体は
自分の作り出す氷の様に冷たかった。

理由は解っている。

「大妖精……?」

「あはは、ごめんねチルノちゃん、ちょっとボーっとしてた
もう大丈夫だからさ、続きをしよ?
今度は私が鬼なんだからチルノちゃんは早く逃げないと駄目だよ」

まるで、何とも無いように言う彼女の言葉がチルノには堪えられなかった。

「もういいよ……」

「ほら、タッチ、もうチルノちゃんが逃げないからまたチルノちゃんが
鬼になっちゃったよ?」

ニコニコしながら言う彼女
今まで気付かなかったけど、顔にはまったく血の気がない。
まるで、人形みたいに真っ白になっている。

どうしてもっと早く気付かなかったのだろう?

「もういいからさ……」

「ほらチルノちゃん、もう大丈夫だから離して、早く遊ぼうよ?」

まるで、チルノの言葉など聞こえない様に話続ける彼女の姿に涙が出そうになる。

「もう止めてよ、アタイはもう十分だから!!」

その言葉だけには、今まで聞こえない様にしていた彼女が反応する。
彼女の顔から一切の表情が消える。

「……何がもう十分なの?」

「だって、大妖精ずっと我慢してるんでしょ!?こんなに身体も冷たくなって
馬鹿じゃないの!?何でもっと早く言わなかったのよ!!」

「だって……」

言いにくそうに一度言葉を切る。

「チルノちゃんがこの事知ったら一緒に遊んでくれなかったでしょ?」

どうして?

「ねぇ、何でアタイなんかを構ってくれるの?こんなに冷たくなってまで
どうして?他の子達みたいにしてればこんな事にはならなかったのに何で?」

「寒そうだったから」

「え?」

「チルノちゃんがいつも寒そうだったから、春も夏も秋も、普通なら私達が一番元気な時に
チルノちゃんはいつも寒そうに俯いてジッと身を抱いてるばっかりだったから
私は寒いのは嫌だから、ちょっとでも変えられたらと思ったんだ」

「そんな、事だけで?たった、それだけの事なのにどうしてそんなに頑張れるの?」

寒いのがいやなら自分の事なんかほって置けばよかったのに
我慢して、頑張れば頑張るだけ辛いだけなのに……

「ははは、何でだろう?不思議だよね?私も解らないんだ
でもね、チルノちゃんとずっと友達になりたいって思ってたんだよ私は」

大妖精はチルノの頬に手を伸ばす。
頬に触れるその手からはやはり体温は感じられなかった。

「迷惑だったかな?」

と大妖精は言う。

「そんな……」

『そんな事ない』と言おうとして、チルノは言葉を紡ぐ。
もしそんな事を言えばきっと大妖精はこれからも自分の傍を離れないだろう。
だから

「ああ、迷惑だったね、最強のアタイにはアンタみたいな鈍臭い奴は
足手まといにしかならないもん、いない方が、よかったよ…」

意識していなかったのに声はどんどん震えていった。
嘘とはいえ、友達を悪く言う事は耐え難い苦痛だった。

無表情な彼女の顔からはどんな感情を抱いたのか悟る事は出来ない。
怒っただろうか?
悲しんだだろうか?

望んだ事だが、それだけが気懸かりだった。

「そっか」

大妖精は短く言う。

「だからさ……」

これで自分に失望でもしてくれれば、自分から離れてくれれば
これ以上彼女が寒さに凍える事はない。

「よかった」

「?」

大妖精の安堵した様な言葉にチルノは驚く。

「迷惑じゃなかったんだね?」

「……人の話聞いてんの?アタイは迷惑だったって…」

言葉は最後まで続かなかった。
いつの間にか笑顔になっていた大妖精と目が合ってしまい言えなかった。

「チルノちゃんは嘘が下手だね、
気付いてないみたいだから教えてあげるね?
チルノちゃんは嘘を付く時は必ず目をそらす癖があるんだよ?」

「…!?」

「チルノちゃんは本当に嘘が下手だね?」

「五月蠅いな…」

悲しいと同時に嬉しかった。
彼女とはまだ短い時間しか共にしていない。
それなのに、彼女は自分の事を解ってくれている。

彼女のためにどんな嘘を言っても、それは必ず嘘だとバレる。
それが悲しいと同時に嬉しかった。

その時頬に当てられていた大妖精の手が力なく下がった。

「あ、れ?」

「大妖精?」

「ごめんね、チルノちゃん、一緒に遊ぼうって言ったのに、無理かもしれない」

「え?」

自嘲気味の笑顔のままで彼女は言う。
嫌な予感しかしない。

「身体、動かなくなっちゃった」

「ッ!?」

まるで何でもない様に言った少女の言葉
その言葉を聞いた瞬間チルノはその場から離れようとする。
自分が彼女の傍にいるから彼女はどんどん弱っていく。
ならば、自分は直ぐにでもこの場を離れるべきだ。

急いで大妖精の近くから離れようとするチルノを大妖精は逃がさない。

「待って、行かないでチルノちゃん、私を一人にしないで」

「でも大妖精が!」

「いいから一人にしないで、ずっと一緒にいて」

「でも」

「一人は怖いの、お願い」

その言葉にチルノは何も言えなくなる。

もしも、二人がもっと精神的に大人であったのならこんな事にはならなかっただろう。

大妖精はチルノを困らせる様な事を言わなかっただろうし
チルノはそんな事を言われても直ぐにここから離れて大妖精が回復するのを
待っただろう。

しかし、二人はまだ幼かった。

大妖精は一人取り残されてチルノが自分の前から姿を消しそうで怖かった。

チルノは初めての妖精の友人のお願いを聞いてあげたい気持ちと
その友人を失いたくない気持ちが混ざり合い動けなくなった。

もしも、この場を離れなければ彼女はこのまま弱っていく
もしも、この場を離れたらきっと彼女は傷付く

チルノには選ぶ事が出来なかった。
中身は違えど、どちらも大妖精を傷付ける事になる。

幼い彼女にはどちらの選択も選ぶ事は出来なかった。

そうしてこの場から動かないチルノに大妖精は笑みを向ける。

「ふふ、チルノちゃんは、本当に、優しい、…ね」

消え入りそうな言葉と共に大妖精の瞼がゆっくりと閉じられた。

「大妖精?」

「……」

チルノは大妖精に声をかけるが彼女は眠っている様に目を閉じたままで動かない。

「ちょっと、冗談は止めてよ」

「……」

「面白くないよ、だから早く目を開けてよ」

「……」

「早く目を開けてよ!悪い冗談は止めてよ!!」

「……」

「嫌だよ!!アタイには一人にしないでって言ったのに」

「……」

「大妖精!!」

どんなに声をかけても目覚めない大妖精に思わず叫んだ。
音が聞こえたのはその時だった。

――ピキ、パキ

それはまるで空気が割れる様な音だった。
その音をチルノは知っている。

「!!」

音はいつも蛙を氷付けにしている時に聞いている音だった。
大妖精は足先からゆっくりと氷に包まれていた。

「やだ、止まってよ、大妖精が凍っちゃうよ!!」

慌てて大妖精を包む氷を手で払おうとする。
しかし、硬い氷は払おうとする手を傷付けるだけでまったく取れなかった。

血で手が染まってもチルノは懸命に氷を払おうとする。
だが、頑張れば頑張る程、焦れば焦る程
チルノの感情が高ぶる程に氷が大妖精を覆うスピードは増していく。

チルノはパニックになっていた。
もしも、落ち着いていたのならチルノはこの場を直ぐに離れる事が出来ただろう。
そうすれば氷がこれ以上大妖精を包む事もない。

しかし、目の前で友達が凍り付く姿はチルノの冷静さを奪うには十分だった。

早く氷を払わないと、と焦るチルノに対し氷は徐々にそのスピードを
上げて大妖精を包む。

「嫌だ、嫌だよ」

氷は止まる事はない。

「大妖精ともっと遊びたいんだよ、レティにだって紹介したいんだよ」

もっともっと、一緒に遊びたい。
レティに胸を張ってこの友人を紹介したい。
それなのに、氷は止まる事無くその友人の身を包んでいく。

「止まってよ、止まれよ!!」

叫んだ所で意味は無く、むしろそのせいでまた感情が高ぶり凍るスピードが
早くなってしまう。

「なんで、アタイは氷精なんかに生まれちゃったのよ……」

もしも、普通の妖精だったのならこんな事なかったのに

「大妖精が凍っちゃうよ……」

チルノは静かに泣く
氷はとうとう大妖精の全身を包んでしまった。

凍り付く彼女の姿は、自分がよく凍らせている蛙の様だった。

「もう嫌だよ、何でアタイは冷気なんか操れるのよ……」

もしも、冷気なんか操れない普通の妖精だったのなら、とそこまで思い
自分の言葉にチルノは一つ気付く。

「……冷気を操る?」

もしも、本当に自分が冷気を操る事が出来るのであれば……
力の方向を変える事が出来るのであれば、彼女を傷付ける事はない。

チルノは流れる涙を拭い、氷に包まれた大妖精を見据える。

「……アタイの友達を、大妖精を、大ちゃんを返して!!」

その時初めて、大妖精を愛称で呼んだ。
無意識だった。
いつも大妖精にそう呼んでと頼まれても恥かしくて言えなかった。
でも、そんな事は今は気にならなかった。

自分の力のせいで凍ってしまった友達を
氷に囚われた彼女を助けたい一心で出た言葉だった。

チルノは純粋に望む。

自分の力の在り方を
こんな自分の近くにいてくれる優しい友達を
もう傷付ける事のない力を

――

こうして、一つの力が生まれた。
近づく者を決して傷付ける事のない優しい氷の力。
その力は多くの者に馬鹿にされ、笑われる事になるのだが、
それでもチルノは、その言葉を気にする事はなく、むしろ誇らしげにその力を振るい続ける。

――

冬がやって来た。

シンシンと静かに雪の降る中、一人の女性が湖畔を訪れた。

「レティ!!」

元気のいい少女の声が辺りに響く

「チルノ久しぶりね?」

「うん、レティあのね聞いて?」

「慌ててどうしたのよ?私は逃げないわよ」

「アタイにね」

本当に嬉しそうに語る彼女の姿に彼女が何を言うのかレティは気付いていた。
むしろ、彼女の後ろの木に隠れている妖精の羽が見えている。
なんとも微笑ましく感じる。
でも言葉にも表情にも出さない。

「友達ができたんだ!!」

ああ、いい笑顔だな

レティは思った。
まぁ、つまり安全地帯ですね。

⑨度目の投稿です。
数字にあやかってチルノの話を書きたくなったので書いてみました。

彼女が馬鹿と言われるようになったきっかけの技がこんな理由で出来たのなら
と思い書き始めました。

いかがだったでしょうか?

初めて紅でこの弾幕を見て彼女を馬鹿にしたのはいい思い出です。
馬鹿にしてごめんなさい。

感想や誤字脱字等がありましたら教えてやってください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
H2O
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コメント



0.1600簡易評価
6.90名前が無い程度の能力削除
イイハナシダナー(´;∀;`)
10.100名前が無い程度の能力削除
大ちゃんだいすきだ。。

機会があればレティと大妖精の絡みもみたいですw
11.100薬漬削除
>初めて紅でこの弾幕を見て彼女を馬鹿にしたのはいい思い出です。
・・・あの弾幕で必ず一機落とされる私って・・・
15.50名前が無い程度の能力削除
うん、語り口とかは凄く良いと思う
惜しむならば、ネタが散々既出なんだよなあ…
16.100名前が無い程度の能力削除
心温まる話をありがとう。
見てるこっちまで暖かい気分になってきました。
19.90名前が無い程度の能力削除
良い話だなー。
チルノも大妖精もええ子や…。
20.90名前が無い程度の能力削除
アレにこんな理由が・・・
23.70名前が無い程度の能力削除
既出だな。こことか、某動画サイトでも出てるからなぁ。
東方文花帖のアンソロの「チルノは嫌われてる」ネタが
イメージソースになってて、被りやすいのもあるんだろうけど。
語り口は上等だったと思う。
24.60名前が無い程度の能力削除
良い。すっごく良いんだけどネタが既出もいいとこ。それがとっても残念。
25.100名前が無い程度の能力削除
チルノよかったね~
29.無評価H2O削除
6様
ありがとうございます。そう言ってもらえてうれしいです。
10様
『俺も大好きだー!!』と某お父さんの様に叫びたい。
その組み合わせは考えた事なかったです……新しい。
でも、なんだかこの話とは毛色の違うコメディになりそうですよ?自分がやると……
薬漬様
いえ、自分もイージーの安地がないとボムか残機確実になくなります。
実際、所見でも一機落とされた後で、『アレ?あそこ当たんなくないかな?』って感じでした。
15様
ありがとうございます。
ネタはそうみたいですね、自分の友人にも突っ込まれました。
16様
ありがとうございます。そう言ってもらえると本当にうれしいです。
19様
あの二人はきっといい子なんです。すごく、もう本当にいい子なんです。
自分はそう信じて疑いません。
20様
あったらいいなー、的な感じです。
理由もなくただ、馬鹿って言われるのはあんまりです。
これなら馬鹿にされない、はず……
23様
ありがとうございます。まだまだ未熟ですがこれからも見ていただけるとうれしいです。
ネタは本当にイロイロな所で出てましたね……
友人に23様の言う動画も紹介されました(多分あれであってると思います)。
二番煎じなんてもんじゃないですねこれは……
24様
ありがとうございます。
出来る限りネタは被らない様にと注意していたつもりなのですが……
やっぱり何人かは考えるネタなんですね。無念。
これから注意してオリジナルをどんどん出せるようにしたいです。
25様
見てくれてありがとうございます。
一人は寂しいですからね。
よかったねチルノ、だいちゃんありがとう。
35.90名前が無い程度の能力削除
良いネタはいろいろな人に使われるもの。
良いお話でした。
37.100名前が無い程度の能力削除
こういう話はいくつあっても多すぎるなんてことは無いと思っちゃうなぁ
(むしろ題材が似ている作品を読み比べれば作家さんの個性が再認識できて楽しそう、とか)
38.100名前が無い程度の能力削除
素敵だ……。
お話の内容もさることながら、描写や表現技法が個人的に素晴らしい。
後半のシーンなんか特に、チルノの焦りと絶望がひしひしと伝わってきて身震いしました。
それにしても本当に良かった。この友情はきっと永久に不滅でしょうな。

既出だろうが何だろうが構うもんか!貴方に最高のGJを贈りたい。
40.無評価H2O削除
35様
そう言ってもらえるとホッとします。また良い話と言ってもらえる様に頑張ろうと思います。
37様
読み比べや見比べは確かにいいですね。
今回動画を見たりしてイロイロ勉強もできました。
38様
そう言ってもらえるとは恐縮です。今だに自分の書き方が安定せず修行中ですが、
これからも頑張るのでまた見てやって下さい。
大チルは最高のコンビだと思っています。
または、こあ大(ぉ