(作品集71「あやぱん」の続編に当たります。併せて読んでいただければ幸いです)
湯気立つ鍋の底に沈むのは、黒褐色の布。
その上でふるふると揺れるのは、白い直方体。
それを挟んで向かい合うのは、男と女。
「これは昆布じゃないか。珍しい物を使っているね」
「紫さんから頂きまして。これで湯豆腐を作ると美味しいですから」
「彼女からか……名前を見る限り、確かに食材の昆布に見えるかな」
「紫さんの話題になるといつもそんな感じですね。表面だけ当たり障り無くつきあう程度には、いい方ですよ」
「それのどこがいい方なのかと思うが」
「まあまあ。ちょうど豆腐も煮えてきたことですし……あ、そうだそうだ」
鍋から掬った豆腐を差しだし、女は告げる。
「妻の前で他の女性のことばかり考えないでくださいな」
『解決編』
人里に住む者で、霧雨道具店の名を知らない者は居ない。人里の大通りにそびえ立つ巨大な店舗は、幻想郷の商業を象徴する場所とも言える。
その店内で談笑する二人の男女が居た。一人はヤツデの模様があしらわれた着物を纏う、黒髪の少女。
もう一人は、大柄な体躯を持つ初老の男性だった。
「いやいやいや、噂は聞いていたが、あの霖之助にこんなきれいな嫁さんができるとは!!」
豪快に笑う男性は、霧雨道具店の店主。霖之助の言う霧雨の大旦那だ。
商人としての霖之助の師匠というとその腕前を疑われるかもしれない。しかし、その明晰な頭脳と決断力からなる商才は、人間どころか一部の妖怪にも知れ渡っている。
娘である霧雨魔理沙の存在を知る者は『幻想郷の名物親子』などと言うこともあるが、本人達の前では言わない方が良いというのも有名な話だ。
「それにしても嫁さんの紹介なら、あいつも顔出せばいいだろうに。今日はなにしてるかわかるかい?」
「仕入れにいくと言ってましたが」
そう答えるのはつい先日、天狗の掟というのもに従って霖之助に嫁入りした、射命丸文。
「ああ、またあの物騒なとこに行ってんのか」
やれやれ、と呆れたような呟きを返し、言葉を続ける。
「あいつは扱いにくい奴だけどな、どうかよろしく頼むよ。俺にとっちゃ息子みたいなもんだからな」
実年齢で言えばあなたより遙かに上ですよ、などと思ったまま答えることも無く、文は笑顔で返事を見せた。
「それでですね、今日はお使いで炭を買いに来たんですが」
「炭!? そんなもんいくらでも持ってってくれよ!!」
そう言って取り出すのは、木というより鉱物のような煌めきを見せる、最高級の炭。霖之助が隣にいればその勘定で青くなる様なものだ。
「御祝儀代わりだ、金はいらんよ。そうだ、いい米も入ってたな!!」
楽しそうに笑いながら、文の前に炭の入った木箱や米俵、さらに菓子や酒を積み上げていく。
「ちょっとお父さん。そんな沢山持てるわけがないでしょうが」
見かねた様子で口を挟むのは、店主の伴侶らしき妙齢の女性。その金髪の鮮やかさは、娘と同じだ。
「ごめんなさいね。あの人ったら舞い上がっちゃって…後でこちらから運ばせてもらうから」
「いえいえ、その必要はありません」
え、と聞き返す女性の前で、文が身を屈めた。
ん、と小さく声を上げると同時に、片方の肩で木箱と米俵をかつぎあげる。空いた手で、酒瓶と菓子を脇に抱えた。
「今日は本当にありがとうございました。あの人にも伝えておきますので」
ぽかんと口を開けている夫妻へペコリと頭を下げ、店の出口へと向かう。少し歩き辛そうにはしているものの、重さを苦にした様子は全く感じられなかった。
店の外へ出ると同時に、その背から烏の翼が飛び出す。霖之助に内緒で天狗用に改造したこの着物は、着衣のまま翼の出し入れを自由に行えるようになっていた。
翼の動きに合わせ、霧雨道具店の前に一陣の風が吹く。
砂埃が納まる頃には、文と彼女が担いでいた荷物は消え失せていた。
その様子をただ見ているしかなかった夫妻は、呆然とした表情のまま、呟く。
「さすがうちの嫁だ……って言うところか?」
「どうかしらね……」
自分の体ほどありそうな御祝儀を担いだまま、空を舞う文。さすがに自慢のスピードは出せないが、その動きは道路上の荷車よりも滑らかだ。幻想郷最速の栄光は単なるスピードだけではなく、それを操る技術の賜でもあるということか。
程なくして香霖堂にたどり着くが、無縁塚に行った霖之助はまだ戻っていなかった。
「よっぽどいい物でも見つかったのかしらね」
受け取った炭や米俵を台所に置きながら、彼の探索風景を思い返す。何度か取材と暇潰しを兼ねて同行させてもらったことがあるが、文から見ればゴミやガラクタに過ぎない物達を前に、喜嬉とした表情を浮かべていたのを覚えている。
思い出したその表情に苦笑しながら、文は傍にかけてあった割烹着を手に取る。
とりあえず、彼が帰る前に仕事を終わらせておこう。そう思いながら、文は妻としての自分に課した仕事を始めた。
霖之助に嫁入りしてから三日経つが、初日に霖之助がショックで倒れた以外は概ね上手くやっていた。何度か来店した魔理沙が随分不機嫌だったが、また店が吹き飛ぶような事態には陥っていない。
最初は腫れ物を扱うような態度だった霖之助とも、食事時に談笑くらいはするようになっていた。
掃除や洗濯は霧雨道具店にお使いに行く前に済ませていたので、やることと言えば夕食の準備程度か。霖之助の帰宅にはまだ早いと思われるので、簡単な用意だけに留めておく。
妻としての仕事が一通り終わったことを確認すると、軽く溜息をついてから呟いた。
「じゃ、本業始めようかしら」
言いながら向かうのは、以前の香霖堂には無かった一つの部屋。再建の際に文が増築するように頼んだ、彼女の為の書斎だ。
書斎の机の前に腰を下ろし、懐から黒革の手帳を取り出した。それは勿論、彼女御用達の文花帳。
それを机において開くと、ページ上を万年筆でつついていく。
「朝ご飯は山菜のお浸しと茶粥。昼は高野豆腐と南瓜の煮物、と」
ぶつぶつと呟きながら文花帳に書き込んでいく。だがその表情にはいつものような楽しげな表情は無い。彼女には珍しい、無表情な仏頂面だ。
『炭を頂いた』と書き込んだ瞬間、その手から万年筆が離れた。
「……ダメだダメ。全然ダメだ」
頭をガシガシとかきむしりながら、疲れたように後ろに倒れ込む。背中で畳の感触を感じながら天井を見つめ、ポツリと呟く。
「こんなもんだったのかなあ。むしろ謎が深まるけど」
その呟きに合わせるように、店先から物音が聞こえた。霖之助が帰ってきたのか、客か泥棒でも来たのだろうか。
そう思い体を起こすと、店頭へと向かう。不埒物なら少しこのイライラにつき合ってもらおうかと思いながら。
「あ、こんちわー。元気してた?」
出迎えてくれたのは、見慣れた友人の顔。作業着を連想させる色合いのスカートを纏うのは、谷カッパのにとりだ。
その手に抱えているのは、二、三匹の魚が載った竹笊。
「土産に魚持ってきたよ」
「ありがと。そこの箱の物なら持って行っていいって言ってたわよ」
そう言いながら指さすのは、片隅に置かれた木箱。その中に積まれているのは、外の機械だ。同じ物がいくつもあるか、霖之助が散々いじり倒して飽きた物が詰め込まれている。技術屋の河童には宝の山だ。
「お茶飲んでいく?」
「ちょーだい」
お茶を入れて店頭に戻ってくると、箱の中のガラクタとにらめっこしたにとりが居た。集中しすぎて文が戻ってきたことにも気がついて居ないらしい。
苦笑しつつ彼女の側に湯呑みを置くと、近くの椅子に腰掛ける。ガラクタと会話するようにぶつぶつ唸るにとりの姿を鑑賞しつつ、自分の為に入れた茶に口をつけた。
しばらくしてその存在に気がついたにとりが、湯呑みを拾って茶をすする。一口飲んでほぅ、と溜息をつくと、文の方を向いて口を開いた。
「で、どーよ。首尾は」
にとりの質問に、ヒラヒラと手を振って答える。
「それなりに楽しく過ごしてるけど、それだけね。ちょっと目論見が外れたわ」
「ふーん。実際はそんなもんかね」
スカートのポケットから工具を取り出すと、ガラクタにそれを差し込んでいく。継ぎ目など無いように見えた物体がどんどん分解されていく様は、端から見れば魔法のようにも見えた。
「それにしても、上手いことやったよね。天狗の掟とか言って」
「人聞きの悪いこと言わないでくれる。嘘ついた覚えは無いわよ」
「鬼に言わせれば、微妙なラインだと思うよ」
確かに、地上と地下の鬼には聞かれたくないな、とは思う。
「まあ、もうちょっとあの人にもつき合ってもらうわよ。今のままじゃ話にならないわ」
「ま、私も興味はあるから。期待してるよ」
そう言いながら、にとりの目は分解されたガラクタ達に釘付けだった。それ以外に興味を持ってくれることなんてあるのかしら、と文は思う。
にとりの作業を見守りながらお茶を飲んでいたが、気がつけばガラクタの隣には、中から取り出された部品の山ができていた。あんな物の中に、よくもまあこれだけの部品が詰まっていたものだ。
その新たなガラクタの山からいくつかの部品を手に取り、背負っていたリュックに詰め込んでいく。どれだけ物を詰め込んでも、外からは少し膨らんだ程度にしか見えないのは河童の七不思議の一つだ。
「じゃーねー。店主にもよろしく」
「はいはい」
背のリュックを赤子のように愛おしく背負いながら、店の外へと消えていった。文には理解できないが、けっこうな収穫だったらしい。
再び一人になったが、今は自分の仕事とやらをする気にはなれなかった。無理矢理机に向かったところで、夕食の献立くらいしか書くことが無さそうだから。
そう言えばそろそろ霖之助が帰ってくるかもしれない。とりあえず、妻の仕事である夕食の準備でも始めることにした。
今日の夕食は、どじょう鍋。ご飯も炊きあがっているし、具材の用意もできている。あとは鍋を温めて煮込むだけだ。
霖之助が戻ってきてから始めるとするか。そう思った直後、タイミング良く玄関の扉が開く音がした。そのまま慣れた様子で店内に踏み込んでくる足音でわかる。ようやく主人のご帰還らしい。
「おかえりなさい。良いタイミングですね……っと?」
帰ってきたのは、憔悴した様子で椅子に座っている霖之助だった。その額には青痣ができており、擦り切れたような傷跡までついている。
さらに気になったのは、彼の纏う匂い。天狗の大好きな酒の匂いだ。
酔って喧嘩でもしてきたというのだろうか。外で深酒するタイプには見えないし、喧嘩などもっとするようには見えないが。
何があったのか聞こうとした瞬間、それを征するように掌を向けられた。
「ちょっといいかな。聞いてほしいことがあってね」
「はあ」
「実は、無縁塚から帰る途中で君の友人らしい天狗達に捕まってね。散々飲まされたよ」
「あー。ご愁傷さまです」
ゴシップ好きの烏天狗にとって、文の嫁入りなどは格好のネタだ。その片割れである霖之助など、いい酒の肴になることだろう。
そして、肴だけが素面であることを許すような連中でも無い。きっとその体に散々注ぎ込まれたのだろうな、と思う。
「その時、ちょっとした事件があってね」
「事件?」
「酔って地面に倒れたんだが、上を向いたらちょうどあったんだよ」
何が、と訪ねる前に霖之助は言ってくれた。
「スカートの中身が」
「あ」
反射的に文の口から出たのは、自分が見られた時と同じ声。
「一気に酔いも醒めた僕は、地面を抉るかの勢いで土下座したさ。頭を擦り潰すつもりで土に擦りつけて懇願したよ。これは事故だ、命だけは助けてください、とね」
額の痣と擦り傷はその為か。笑ってやりたいところだが、今の文にはその余裕は無い。彼がなにを言いたいのか、段々とわかってきたからだ。
「そしたら、返ってきたのは大爆笑の嵐だった」
その時の友人達の馬鹿面が容易に想像できる。そして、彼がどんな間抜け面でその哄笑を聞いていたのか、も。
「『ぱんつを見られたら、見た者を抹殺しなければならない。もしくは見た相手に一生を捧げ無ければいけない』。こういった掟があることは事実のようだ」
だが、と続けて霖之助は言った。
「そんなのを本気で守ってるのは誰もいない、とのことじゃないか」
「あちゃー……」
その通りだった。文が言った掟は確かに実在しており、嘘をついた覚えは無い。だが、それが厳密に守られているかと言えば話は別だ。
例えば、白狼天狗の犬走椛などは、反応が面白いという理由で挨拶代わりにめくられていたりする。人間で言えば「嘘ついたら針千本飲ます」のような物でしか無いのだ。
アハハ、と誤魔化すように笑って見せてから、恐る恐る尋ねる文。
「怒ってます?」
文の問いに、短く溜息をついて霖之助は答える。
「いや……むしろ納得できたかな。君が掟などに従って嫁入りするよりは」
そこまでバレていたか。半端な体にそれなりの頭脳という噂は伊達はないらしい。
そんな感想を抱く文へと、霖之助は告げた。
「予想するに、取材のつもりじゃないのか」
「なんだと思います?」
「『結婚』というものがどういうものなのか」
「御明察」
観念したように、文は両手をあげてみせる。
「だって〆切近いのに、紙面が埋まらなかったんですよ」
妖怪とは基本的に人間を見下しているものだ。だが、人間の産み出す文化には一定の敬意を払うことも多い。酒などはその最たる例だろう。
その憧れには、形を持たない概念的な物も含まれる。その一つが『家庭』だ。
そもそも人間が家庭を持つのは、その方が効率的だからだ。未熟な幼少時、または体の衰えた老後、さらに妊娠や出産時など、他者の保護が必要とされる状況が数多い。体の最盛期が数年程度しかない人間にとって、家族という集団はあった方が好ましいとされている。
だが妖怪は別だ。生まれた瞬間から自分を守る程度の力は備わっているし、寿命はあっても年齢で極端に弱体化することもない。そして滅多なことでは死なない妖怪は、子供を産む必要も極めて少ない。
ゆえに、妖怪には家庭という概念は無い。妖怪は個体主義であるし、天狗のように組織を作る妖怪であっても、そこには力による秩序が存在する。人間の家族のように、力で縛られることもなく形成される家庭の存在は妖怪にとって理解しがたい物だ。
だからこそ、一部の妖怪はそれに憧れる。人間の文献でも、様々な騒動や事件を巻き起こす舞台として活躍する、家庭という物に。
特にその家庭を構成する、『結婚』という物には尚更だ。人里の人間達が祭のように大騒ぎするその様子を見て、どれほど面白い物なのかと想像しているのである。
あの時、霖之助に剣を突きつけられた瞬間のことだ。霖之助の言うように翼を抑えられたら負け、などというルールがあったとしたら、自分はどうするべきか考えてみた。
仮に、意地でも掟を守るとした場合。始末するのには失敗したのだから、もう一つの方法を選ぶ必要がある。即ち『一生を捧げなければいけない』と。
この言葉は、本来は従者や奴隷になれ、という意味に過ぎない。だが、文はふと思いついた。人間の男女の間では、同じ言葉でも違う意味で使われることもあると。
そして同時に、新聞記者としての自分の仕事も思い出した。ちょうど、誌面を埋めるネタに不足していたことも。
だからこそ霖之助の持ち出したルールに、渡りに船とばかりに乗っかってしまったのである。掟とやらを曲解し、実際に霖之助に嫁入りしてみることで、結婚や家庭の面白さに一端でも触れることができないか、と思って。
そして今日まで、人間の本で学んだ理想的な妻としての姿を演じてきたわけであった、が。
「で、なにかわかったかな?」
「それがさっぱりですよ。家事は嫌いじゃないですけどね」
結局、文には特に何も理解できなかった。単に同じ屋根の下に住んでいた、程度の感想しかない。
文の答えを聞くと、霖之助は当たり前のような顔をして言った。
「無理もないさ。君と僕にはその覚悟が無い」
「覚悟?」
「僕も半分は人間ではないから、完全に理解できているわけではない。これから言うことは、人里に住んで居たとき、周りの人間を観察してきた経験から学んだことだ」
そう前置きしてから語りだした。
「こういう言葉がある。結婚は人生の墓場だとね」
自分の知る結婚のイメージとは違う言葉に、キョトンとした表情を見せる文。
「人間の寿命は短い。体や頭脳、容姿もあっという間に衰えていくものだ。結婚とは、互いにその様子をむざむざと見せつけられ、また見せなければならないということを意味している」
「それは……酷なことですかね」
「そして結婚によって家庭を構成すれば、義務と責任に縛られることになる。家族全員の食い扶持を稼がなければいけないし、育てていかなければならない。家族の誰かが問題を起こしたとしたら、その責任も負うことになる」
一昔前までの日本では、罪を犯した当人だけでなく、親兄弟までもが罪を問われることもあった。今では外でも幻想郷でもそんなことはないが、『罪人の家族』と見なされるなど、社会的な制裁はついてまわることになる。
「なんだか聞いてるだけで疲れそうですね。じゃあなんで人間はあんなに結婚をありがたがるんですか」
自分の知る結婚というのは、祭のように大騒ぎする物だ。妖怪が紛れ込んでタダ酒を頂いていても、誰も気にしないような乱痴気騒ぎだというのに。
「これから多くの禍が待ちかまえているんだ。その始まりくらいは楽しんでおきたいということだろう。個としては最後の楽しみになるだろうからね」
結婚して夫婦となり、家庭を形成してしまえば、個としての自分を捨てなければならない。もちろん個人としての自由が完全に無くなるわけではないが、大きく制限されることになる。
「つまり結婚とは男女の双方に、それだけの物を背負い、縛られる覚悟が必要とされるんだ。その覚悟が無ければ家庭を形成していくことなどはできない」
「覚悟ねえ……ただでさえ短い命だというのに、そんなものが必要だとは」
うんざりとした表情を浮かべている文を見て、霖之助は念を押すような口調で付け加えた。
「散々なことを言ってきたと思うが、僕はその覚悟さえあれば、幸せな家庭を築ける物だと考えてる。少なくとも、僕のよく知る夫婦は幸せそうに生きている」
そう言われて思い出すのは、霧雨道具店の夫婦だ。あんな風に普通に楽しく暮らすだけで、霖之助が言うほどの義務や責任、そして覚悟を背負っているのかと思うと、ゾッとする。
「さて…天狗の力に脅えるだけの僕と、取材の為でしかない君にその覚悟は無かったわけだが、そもそも妖怪がそれを持つのは不可能だろう。義務も責任も必要とされない以上、覚悟など生じるわけがないのだから」
気の合った物同士で一緒に暮らす程度はあるだろうが、それはただ住んでいるだけだ。これまでの霖之助と文のように。そこには、それ以外の事実は何も無い。
「なるほど……どだい私達には無理な話だったということですか。人間の文化を理解するなんて」
「理解はできるさ。ただ、共感はできないだろうね」
「あー……まあ、それがわかっただけでも収穫ありかなあ」
疲れたふうな溜息を残し、文は店の奥へと消えていった。霖之助もその意図がわかっているのか、特に問うことも追うことも無い。
数分ほど椅子に座って待っていれば、現れるのはいつもの服を纏った天狗の姿だった。三日ぶりに見た程度の姿なのだが、やけに懐かしく感じてしまう。
「取材の意味が無い以上、ここにいても仕方ないですね。ああ、御主人の御高説はありがたく参考にさせてもらいますよ」
ページの埋め程度にはなるでしょうし、と続けながら、香霖堂の出口へと。霖之助は『またのお越しを』とだけ言って見送ろうとした。
だが、『あ』という呟きと同時にその足が止まる。
「忘れてた忘れてた」
くるりと振り向いて、つかつかと霖之助の正面まで歩み寄る。それから霖之助の顔と自分の掌をチラチラと見比べて、
「えい」
霖之助の頬に衝撃が走った。それは顔どころかその下についた首、体までをも浮き上がらせる。
椅子に座った状態から宙を舞い、壁にまで叩きつけられることになった。床に落ちてようやく、平手打ちを受けたのだと理解する。
「うわすいません、加減間違えました」
突然の凶行に目を白黒させる霖之助へ、苦笑混じりで答える文。わざとらしくコホンと一息ついてから、口を開いた。
「実家に帰らせていただきます……と。これでいいんですよね」
どこで覚えたか知らないが、そんな決まりは無い。そんな台詞を告げる余裕も無く、霖之助はただ呆然と文を見上げることしかできなかった。
「それでは、これからも文々。新聞をよろしくお願いします」
そう言い残し、今度こそ店の外へと消える。ビュンと風の音が聞こえ、そして消えた。
風と共に文の気配がさっぱり消え失せたことで、ようやく霖之助は余裕を取り戻す。ひっぱたかれた際に飛んだ眼鏡が壊れていないことを確認して、安堵の溜息をついた。
彼女も随分と手加減をしてくれたのだろうが、それでもこの有様だ。一時はあんな存在の前に立ち向かったことを考えると、改めて寒気がしてくる。
少々痛む体を引きずって店の奥へ上がる。居間へ入れば、卓袱台には二人分の食器が並べられていた。台所には出汁の入った土鍋と具材が置かれている。
「そういえばどじょう鍋と言っていたか」
あとは暖めるだけで食べられるそれを、ありがたく頂くことにした。
文が霧雨道具店からもらってきたであろう炭を使い、火を起こす。自分で使うよりは売り物にしたい類の物だったが、今は仕方がない。
それにしてもこんな高級品をくれるとは、霧雨の大旦那の浮かれようが手に取るようにわかる。自分が嫁に逃げられたことはそのうち伝わるだろうし、その時の言い訳を考えると気が重い。
「……ん?」
ふと、気がついた。
文が自分に嫁入りしてきた理由はわかったが、そのおかげで新たな疑問が生じたことを。
だが、今から彼女を追いかけて問いただしたいも思わない。むしろこの三日ほどのことは無かったことにしてしまいたいくらいだ。
そう思い新たな疑問を考えることをやめ、土鍋に目を向けることにするのだった。
夜空を舞いながら、晴れて独り身となった射名丸文は考える。あのことを聞かれなくてよかったな、と。
霖之助に嫁入りした理由は、彼が予想したとおり取材のためだ。そしてつい先ほど離婚したのは、その取材が失敗したことがわかった以上、彼と暮らす理由も無くなったから。誰も本気にしていない天狗の掟などに、これ以上従う理由も無いからだ。
そう、掟は実在するが、本気にしている烏天狗など居はしない。もちろんそれは自分も同じことだ。
ではなぜあの時、文は霖之助の命を狙ったのか。
文はこれを霖之助に尋ねられたくは無いなと思っていた。それはやましい答えがあるわけではなく、単に自分でもよくわかっていなかったからだ。
どんな動きをしてもスカートの下が見えることが無いように注意しており、その技はほぼ完璧だという自信はある。それでもこんな格好をしている以上、絶対に無いとは言い切れない。実際、うっかり異性に見られてしまったことも無いわけではないのだ。
そんな時には冗談混じりに天狗の掟を持ち出してから、軽く吹っ飛ばす。その程度の笑い話で終わっていたはずだった。
だが、霖之助に見られた時はそうはならなかった。
彼に見られた、と思った瞬間、いつものように笑って流すことができなくなった。なぜかどうしようもなく苛立った。その激情に動かされるまま、目の前に見える全てを吹き飛ばしてやったというわけだ。
香霖堂を粉砕した直後、なんで自分がここまで激怒しているのか、ふと疑問に思った。その時は自分に『天狗の掟に触れたから』と言い聞かせ、それに従って霖之助を始末しようとした。
ただ、彼を相手しているうちに当初の激情も冷めていったように思う。霖之助が自分の翼に剣を突きつけたときには、もう随分と頭が冷えていた。新聞のネタを探していたことを思い出す程度には。
後は霖之助が読んだ通り、取材の為に嫁入りした。あれほど躍起になって守ろうとしていたはずの掟を利用することによって。そして目論見が崩れ去ると今、掟のことなどあっさり忘れて彼の元から飛び去った。
そうすると、結局自分は何に対して怒っていたのか、さっぱりわからない。
射命丸文は考える。
これまで異性に見られたことはあっても、ここまで憤ることにはならなかった。だが霖之助に見られたと思った瞬間、どうしようもなく頭に血が昇った。
他の男なら良く、霖之助なら駄目。
それが示す意味は、つまり―――――
「ふむ、どうやら私は随分とあの人のことを」
導かれた結論が、文の口から飛び出した。
「嫌っていたようね」
本来なら笑って許せることが、霖之助だと許せなかった。それは霖之助の存在をそこまで下に見ているからに違いあるまい。
導き出されたその答えに、腕を組んでうーんと考え込む文。
「それなりに仲良くやってきたと思ってたんだけど……?」
心の底では人間混じりの彼の存在をそこまで蔑んでいたということだろうか。ぱんつを見られたことで、彼にに対して溜込んでいた負の感情が爆発したのかもしれない。
いやはや、自分の心とはわからないものだ。
そう結論づけ、これ以上考えることは放棄した。これが正しかろうと間違っていようと、自分にとっては些細な問題だからだ。
さて、失敗した取材のレポートと、霖之助の講義を元に、どれほどの記事を披露できるものだろうか。同じ頭を使うならまずそこからだな、と文は頭を抱えた。
目の前にあるのは、文が用意していったどじょう鍋。それを箸でつつきながら、霖之助は考えていた。
殆ど口に運ぼうともせず、文字通りどじょうをつつくだけにしながら。
人間の適応力は案外高い。
耳障りな騒音もずっと耳元で鳴り響いていればそのうちに慣れ、音の存在など忘れて眠ることもできるだろう。
だが、この騒音が当たり前となった状態で、不意にその音が消え失せたらどうなるか。眠りを遮るはずの音が無くなったにも関わらず、眠りから覚めることもあるのではないだろうか。
このように、『刺激が無くなる』ということが新たな刺激になりうるのである。
つまり何が言いたいか、というと。
文が残していった料理に、なぜか箸が進まないのは。
自分一人の香霖堂が、静かすぎるほどに感じられてしまうのは。
彼女に殴られた頬の痛みが、やけにジンジンと後を引くのは。
この三日間で文の存在に慣れ切っていたため、突然居なくなったという事実にまだ感覚が適応しきれていない、ということに過ぎないのである。
「……うん。その通りだ」
自身の理路整然とした思考から導かれた結論に、霖之助はうんうんと頷いた。
そして、心の中で付け加える。
これは決して、『寂しい』とかそういった感情ではないのだと。
改めてそう結論づけると、霖之助は箸を置いた。残りは明日頂くことにして鍋を片づけ、早々と床につく。
目が覚めた頃には、文のことなど忘れていつもの自分に戻っていることを願いながら。
翌日、小姑役としてやってきた魔理沙が見たのは、真っ赤なお目々の霖之助だった。
外で夜風が響く度に、何度も目を覚ましていては無理も無いと思われる。
湯気立つ鍋の底に沈むのは、黒褐色の布。
その上でふるふると揺れるのは、白い直方体。
それを挟んで向かい合うのは、男と女。
「これは昆布じゃないか。珍しい物を使っているね」
「紫さんから頂きまして。これで湯豆腐を作ると美味しいですから」
「彼女からか……名前を見る限り、確かに食材の昆布に見えるかな」
「紫さんの話題になるといつもそんな感じですね。表面だけ当たり障り無くつきあう程度には、いい方ですよ」
「それのどこがいい方なのかと思うが」
「まあまあ。ちょうど豆腐も煮えてきたことですし……あ、そうだそうだ」
鍋から掬った豆腐を差しだし、女は告げる。
「妻の前で他の女性のことばかり考えないでくださいな」
『解決編』
人里に住む者で、霧雨道具店の名を知らない者は居ない。人里の大通りにそびえ立つ巨大な店舗は、幻想郷の商業を象徴する場所とも言える。
その店内で談笑する二人の男女が居た。一人はヤツデの模様があしらわれた着物を纏う、黒髪の少女。
もう一人は、大柄な体躯を持つ初老の男性だった。
「いやいやいや、噂は聞いていたが、あの霖之助にこんなきれいな嫁さんができるとは!!」
豪快に笑う男性は、霧雨道具店の店主。霖之助の言う霧雨の大旦那だ。
商人としての霖之助の師匠というとその腕前を疑われるかもしれない。しかし、その明晰な頭脳と決断力からなる商才は、人間どころか一部の妖怪にも知れ渡っている。
娘である霧雨魔理沙の存在を知る者は『幻想郷の名物親子』などと言うこともあるが、本人達の前では言わない方が良いというのも有名な話だ。
「それにしても嫁さんの紹介なら、あいつも顔出せばいいだろうに。今日はなにしてるかわかるかい?」
「仕入れにいくと言ってましたが」
そう答えるのはつい先日、天狗の掟というのもに従って霖之助に嫁入りした、射命丸文。
「ああ、またあの物騒なとこに行ってんのか」
やれやれ、と呆れたような呟きを返し、言葉を続ける。
「あいつは扱いにくい奴だけどな、どうかよろしく頼むよ。俺にとっちゃ息子みたいなもんだからな」
実年齢で言えばあなたより遙かに上ですよ、などと思ったまま答えることも無く、文は笑顔で返事を見せた。
「それでですね、今日はお使いで炭を買いに来たんですが」
「炭!? そんなもんいくらでも持ってってくれよ!!」
そう言って取り出すのは、木というより鉱物のような煌めきを見せる、最高級の炭。霖之助が隣にいればその勘定で青くなる様なものだ。
「御祝儀代わりだ、金はいらんよ。そうだ、いい米も入ってたな!!」
楽しそうに笑いながら、文の前に炭の入った木箱や米俵、さらに菓子や酒を積み上げていく。
「ちょっとお父さん。そんな沢山持てるわけがないでしょうが」
見かねた様子で口を挟むのは、店主の伴侶らしき妙齢の女性。その金髪の鮮やかさは、娘と同じだ。
「ごめんなさいね。あの人ったら舞い上がっちゃって…後でこちらから運ばせてもらうから」
「いえいえ、その必要はありません」
え、と聞き返す女性の前で、文が身を屈めた。
ん、と小さく声を上げると同時に、片方の肩で木箱と米俵をかつぎあげる。空いた手で、酒瓶と菓子を脇に抱えた。
「今日は本当にありがとうございました。あの人にも伝えておきますので」
ぽかんと口を開けている夫妻へペコリと頭を下げ、店の出口へと向かう。少し歩き辛そうにはしているものの、重さを苦にした様子は全く感じられなかった。
店の外へ出ると同時に、その背から烏の翼が飛び出す。霖之助に内緒で天狗用に改造したこの着物は、着衣のまま翼の出し入れを自由に行えるようになっていた。
翼の動きに合わせ、霧雨道具店の前に一陣の風が吹く。
砂埃が納まる頃には、文と彼女が担いでいた荷物は消え失せていた。
その様子をただ見ているしかなかった夫妻は、呆然とした表情のまま、呟く。
「さすがうちの嫁だ……って言うところか?」
「どうかしらね……」
自分の体ほどありそうな御祝儀を担いだまま、空を舞う文。さすがに自慢のスピードは出せないが、その動きは道路上の荷車よりも滑らかだ。幻想郷最速の栄光は単なるスピードだけではなく、それを操る技術の賜でもあるということか。
程なくして香霖堂にたどり着くが、無縁塚に行った霖之助はまだ戻っていなかった。
「よっぽどいい物でも見つかったのかしらね」
受け取った炭や米俵を台所に置きながら、彼の探索風景を思い返す。何度か取材と暇潰しを兼ねて同行させてもらったことがあるが、文から見ればゴミやガラクタに過ぎない物達を前に、喜嬉とした表情を浮かべていたのを覚えている。
思い出したその表情に苦笑しながら、文は傍にかけてあった割烹着を手に取る。
とりあえず、彼が帰る前に仕事を終わらせておこう。そう思いながら、文は妻としての自分に課した仕事を始めた。
霖之助に嫁入りしてから三日経つが、初日に霖之助がショックで倒れた以外は概ね上手くやっていた。何度か来店した魔理沙が随分不機嫌だったが、また店が吹き飛ぶような事態には陥っていない。
最初は腫れ物を扱うような態度だった霖之助とも、食事時に談笑くらいはするようになっていた。
掃除や洗濯は霧雨道具店にお使いに行く前に済ませていたので、やることと言えば夕食の準備程度か。霖之助の帰宅にはまだ早いと思われるので、簡単な用意だけに留めておく。
妻としての仕事が一通り終わったことを確認すると、軽く溜息をついてから呟いた。
「じゃ、本業始めようかしら」
言いながら向かうのは、以前の香霖堂には無かった一つの部屋。再建の際に文が増築するように頼んだ、彼女の為の書斎だ。
書斎の机の前に腰を下ろし、懐から黒革の手帳を取り出した。それは勿論、彼女御用達の文花帳。
それを机において開くと、ページ上を万年筆でつついていく。
「朝ご飯は山菜のお浸しと茶粥。昼は高野豆腐と南瓜の煮物、と」
ぶつぶつと呟きながら文花帳に書き込んでいく。だがその表情にはいつものような楽しげな表情は無い。彼女には珍しい、無表情な仏頂面だ。
『炭を頂いた』と書き込んだ瞬間、その手から万年筆が離れた。
「……ダメだダメ。全然ダメだ」
頭をガシガシとかきむしりながら、疲れたように後ろに倒れ込む。背中で畳の感触を感じながら天井を見つめ、ポツリと呟く。
「こんなもんだったのかなあ。むしろ謎が深まるけど」
その呟きに合わせるように、店先から物音が聞こえた。霖之助が帰ってきたのか、客か泥棒でも来たのだろうか。
そう思い体を起こすと、店頭へと向かう。不埒物なら少しこのイライラにつき合ってもらおうかと思いながら。
「あ、こんちわー。元気してた?」
出迎えてくれたのは、見慣れた友人の顔。作業着を連想させる色合いのスカートを纏うのは、谷カッパのにとりだ。
その手に抱えているのは、二、三匹の魚が載った竹笊。
「土産に魚持ってきたよ」
「ありがと。そこの箱の物なら持って行っていいって言ってたわよ」
そう言いながら指さすのは、片隅に置かれた木箱。その中に積まれているのは、外の機械だ。同じ物がいくつもあるか、霖之助が散々いじり倒して飽きた物が詰め込まれている。技術屋の河童には宝の山だ。
「お茶飲んでいく?」
「ちょーだい」
お茶を入れて店頭に戻ってくると、箱の中のガラクタとにらめっこしたにとりが居た。集中しすぎて文が戻ってきたことにも気がついて居ないらしい。
苦笑しつつ彼女の側に湯呑みを置くと、近くの椅子に腰掛ける。ガラクタと会話するようにぶつぶつ唸るにとりの姿を鑑賞しつつ、自分の為に入れた茶に口をつけた。
しばらくしてその存在に気がついたにとりが、湯呑みを拾って茶をすする。一口飲んでほぅ、と溜息をつくと、文の方を向いて口を開いた。
「で、どーよ。首尾は」
にとりの質問に、ヒラヒラと手を振って答える。
「それなりに楽しく過ごしてるけど、それだけね。ちょっと目論見が外れたわ」
「ふーん。実際はそんなもんかね」
スカートのポケットから工具を取り出すと、ガラクタにそれを差し込んでいく。継ぎ目など無いように見えた物体がどんどん分解されていく様は、端から見れば魔法のようにも見えた。
「それにしても、上手いことやったよね。天狗の掟とか言って」
「人聞きの悪いこと言わないでくれる。嘘ついた覚えは無いわよ」
「鬼に言わせれば、微妙なラインだと思うよ」
確かに、地上と地下の鬼には聞かれたくないな、とは思う。
「まあ、もうちょっとあの人にもつき合ってもらうわよ。今のままじゃ話にならないわ」
「ま、私も興味はあるから。期待してるよ」
そう言いながら、にとりの目は分解されたガラクタ達に釘付けだった。それ以外に興味を持ってくれることなんてあるのかしら、と文は思う。
にとりの作業を見守りながらお茶を飲んでいたが、気がつけばガラクタの隣には、中から取り出された部品の山ができていた。あんな物の中に、よくもまあこれだけの部品が詰まっていたものだ。
その新たなガラクタの山からいくつかの部品を手に取り、背負っていたリュックに詰め込んでいく。どれだけ物を詰め込んでも、外からは少し膨らんだ程度にしか見えないのは河童の七不思議の一つだ。
「じゃーねー。店主にもよろしく」
「はいはい」
背のリュックを赤子のように愛おしく背負いながら、店の外へと消えていった。文には理解できないが、けっこうな収穫だったらしい。
再び一人になったが、今は自分の仕事とやらをする気にはなれなかった。無理矢理机に向かったところで、夕食の献立くらいしか書くことが無さそうだから。
そう言えばそろそろ霖之助が帰ってくるかもしれない。とりあえず、妻の仕事である夕食の準備でも始めることにした。
今日の夕食は、どじょう鍋。ご飯も炊きあがっているし、具材の用意もできている。あとは鍋を温めて煮込むだけだ。
霖之助が戻ってきてから始めるとするか。そう思った直後、タイミング良く玄関の扉が開く音がした。そのまま慣れた様子で店内に踏み込んでくる足音でわかる。ようやく主人のご帰還らしい。
「おかえりなさい。良いタイミングですね……っと?」
帰ってきたのは、憔悴した様子で椅子に座っている霖之助だった。その額には青痣ができており、擦り切れたような傷跡までついている。
さらに気になったのは、彼の纏う匂い。天狗の大好きな酒の匂いだ。
酔って喧嘩でもしてきたというのだろうか。外で深酒するタイプには見えないし、喧嘩などもっとするようには見えないが。
何があったのか聞こうとした瞬間、それを征するように掌を向けられた。
「ちょっといいかな。聞いてほしいことがあってね」
「はあ」
「実は、無縁塚から帰る途中で君の友人らしい天狗達に捕まってね。散々飲まされたよ」
「あー。ご愁傷さまです」
ゴシップ好きの烏天狗にとって、文の嫁入りなどは格好のネタだ。その片割れである霖之助など、いい酒の肴になることだろう。
そして、肴だけが素面であることを許すような連中でも無い。きっとその体に散々注ぎ込まれたのだろうな、と思う。
「その時、ちょっとした事件があってね」
「事件?」
「酔って地面に倒れたんだが、上を向いたらちょうどあったんだよ」
何が、と訪ねる前に霖之助は言ってくれた。
「スカートの中身が」
「あ」
反射的に文の口から出たのは、自分が見られた時と同じ声。
「一気に酔いも醒めた僕は、地面を抉るかの勢いで土下座したさ。頭を擦り潰すつもりで土に擦りつけて懇願したよ。これは事故だ、命だけは助けてください、とね」
額の痣と擦り傷はその為か。笑ってやりたいところだが、今の文にはその余裕は無い。彼がなにを言いたいのか、段々とわかってきたからだ。
「そしたら、返ってきたのは大爆笑の嵐だった」
その時の友人達の馬鹿面が容易に想像できる。そして、彼がどんな間抜け面でその哄笑を聞いていたのか、も。
「『ぱんつを見られたら、見た者を抹殺しなければならない。もしくは見た相手に一生を捧げ無ければいけない』。こういった掟があることは事実のようだ」
だが、と続けて霖之助は言った。
「そんなのを本気で守ってるのは誰もいない、とのことじゃないか」
「あちゃー……」
その通りだった。文が言った掟は確かに実在しており、嘘をついた覚えは無い。だが、それが厳密に守られているかと言えば話は別だ。
例えば、白狼天狗の犬走椛などは、反応が面白いという理由で挨拶代わりにめくられていたりする。人間で言えば「嘘ついたら針千本飲ます」のような物でしか無いのだ。
アハハ、と誤魔化すように笑って見せてから、恐る恐る尋ねる文。
「怒ってます?」
文の問いに、短く溜息をついて霖之助は答える。
「いや……むしろ納得できたかな。君が掟などに従って嫁入りするよりは」
そこまでバレていたか。半端な体にそれなりの頭脳という噂は伊達はないらしい。
そんな感想を抱く文へと、霖之助は告げた。
「予想するに、取材のつもりじゃないのか」
「なんだと思います?」
「『結婚』というものがどういうものなのか」
「御明察」
観念したように、文は両手をあげてみせる。
「だって〆切近いのに、紙面が埋まらなかったんですよ」
妖怪とは基本的に人間を見下しているものだ。だが、人間の産み出す文化には一定の敬意を払うことも多い。酒などはその最たる例だろう。
その憧れには、形を持たない概念的な物も含まれる。その一つが『家庭』だ。
そもそも人間が家庭を持つのは、その方が効率的だからだ。未熟な幼少時、または体の衰えた老後、さらに妊娠や出産時など、他者の保護が必要とされる状況が数多い。体の最盛期が数年程度しかない人間にとって、家族という集団はあった方が好ましいとされている。
だが妖怪は別だ。生まれた瞬間から自分を守る程度の力は備わっているし、寿命はあっても年齢で極端に弱体化することもない。そして滅多なことでは死なない妖怪は、子供を産む必要も極めて少ない。
ゆえに、妖怪には家庭という概念は無い。妖怪は個体主義であるし、天狗のように組織を作る妖怪であっても、そこには力による秩序が存在する。人間の家族のように、力で縛られることもなく形成される家庭の存在は妖怪にとって理解しがたい物だ。
だからこそ、一部の妖怪はそれに憧れる。人間の文献でも、様々な騒動や事件を巻き起こす舞台として活躍する、家庭という物に。
特にその家庭を構成する、『結婚』という物には尚更だ。人里の人間達が祭のように大騒ぎするその様子を見て、どれほど面白い物なのかと想像しているのである。
あの時、霖之助に剣を突きつけられた瞬間のことだ。霖之助の言うように翼を抑えられたら負け、などというルールがあったとしたら、自分はどうするべきか考えてみた。
仮に、意地でも掟を守るとした場合。始末するのには失敗したのだから、もう一つの方法を選ぶ必要がある。即ち『一生を捧げなければいけない』と。
この言葉は、本来は従者や奴隷になれ、という意味に過ぎない。だが、文はふと思いついた。人間の男女の間では、同じ言葉でも違う意味で使われることもあると。
そして同時に、新聞記者としての自分の仕事も思い出した。ちょうど、誌面を埋めるネタに不足していたことも。
だからこそ霖之助の持ち出したルールに、渡りに船とばかりに乗っかってしまったのである。掟とやらを曲解し、実際に霖之助に嫁入りしてみることで、結婚や家庭の面白さに一端でも触れることができないか、と思って。
そして今日まで、人間の本で学んだ理想的な妻としての姿を演じてきたわけであった、が。
「で、なにかわかったかな?」
「それがさっぱりですよ。家事は嫌いじゃないですけどね」
結局、文には特に何も理解できなかった。単に同じ屋根の下に住んでいた、程度の感想しかない。
文の答えを聞くと、霖之助は当たり前のような顔をして言った。
「無理もないさ。君と僕にはその覚悟が無い」
「覚悟?」
「僕も半分は人間ではないから、完全に理解できているわけではない。これから言うことは、人里に住んで居たとき、周りの人間を観察してきた経験から学んだことだ」
そう前置きしてから語りだした。
「こういう言葉がある。結婚は人生の墓場だとね」
自分の知る結婚のイメージとは違う言葉に、キョトンとした表情を見せる文。
「人間の寿命は短い。体や頭脳、容姿もあっという間に衰えていくものだ。結婚とは、互いにその様子をむざむざと見せつけられ、また見せなければならないということを意味している」
「それは……酷なことですかね」
「そして結婚によって家庭を構成すれば、義務と責任に縛られることになる。家族全員の食い扶持を稼がなければいけないし、育てていかなければならない。家族の誰かが問題を起こしたとしたら、その責任も負うことになる」
一昔前までの日本では、罪を犯した当人だけでなく、親兄弟までもが罪を問われることもあった。今では外でも幻想郷でもそんなことはないが、『罪人の家族』と見なされるなど、社会的な制裁はついてまわることになる。
「なんだか聞いてるだけで疲れそうですね。じゃあなんで人間はあんなに結婚をありがたがるんですか」
自分の知る結婚というのは、祭のように大騒ぎする物だ。妖怪が紛れ込んでタダ酒を頂いていても、誰も気にしないような乱痴気騒ぎだというのに。
「これから多くの禍が待ちかまえているんだ。その始まりくらいは楽しんでおきたいということだろう。個としては最後の楽しみになるだろうからね」
結婚して夫婦となり、家庭を形成してしまえば、個としての自分を捨てなければならない。もちろん個人としての自由が完全に無くなるわけではないが、大きく制限されることになる。
「つまり結婚とは男女の双方に、それだけの物を背負い、縛られる覚悟が必要とされるんだ。その覚悟が無ければ家庭を形成していくことなどはできない」
「覚悟ねえ……ただでさえ短い命だというのに、そんなものが必要だとは」
うんざりとした表情を浮かべている文を見て、霖之助は念を押すような口調で付け加えた。
「散々なことを言ってきたと思うが、僕はその覚悟さえあれば、幸せな家庭を築ける物だと考えてる。少なくとも、僕のよく知る夫婦は幸せそうに生きている」
そう言われて思い出すのは、霧雨道具店の夫婦だ。あんな風に普通に楽しく暮らすだけで、霖之助が言うほどの義務や責任、そして覚悟を背負っているのかと思うと、ゾッとする。
「さて…天狗の力に脅えるだけの僕と、取材の為でしかない君にその覚悟は無かったわけだが、そもそも妖怪がそれを持つのは不可能だろう。義務も責任も必要とされない以上、覚悟など生じるわけがないのだから」
気の合った物同士で一緒に暮らす程度はあるだろうが、それはただ住んでいるだけだ。これまでの霖之助と文のように。そこには、それ以外の事実は何も無い。
「なるほど……どだい私達には無理な話だったということですか。人間の文化を理解するなんて」
「理解はできるさ。ただ、共感はできないだろうね」
「あー……まあ、それがわかっただけでも収穫ありかなあ」
疲れたふうな溜息を残し、文は店の奥へと消えていった。霖之助もその意図がわかっているのか、特に問うことも追うことも無い。
数分ほど椅子に座って待っていれば、現れるのはいつもの服を纏った天狗の姿だった。三日ぶりに見た程度の姿なのだが、やけに懐かしく感じてしまう。
「取材の意味が無い以上、ここにいても仕方ないですね。ああ、御主人の御高説はありがたく参考にさせてもらいますよ」
ページの埋め程度にはなるでしょうし、と続けながら、香霖堂の出口へと。霖之助は『またのお越しを』とだけ言って見送ろうとした。
だが、『あ』という呟きと同時にその足が止まる。
「忘れてた忘れてた」
くるりと振り向いて、つかつかと霖之助の正面まで歩み寄る。それから霖之助の顔と自分の掌をチラチラと見比べて、
「えい」
霖之助の頬に衝撃が走った。それは顔どころかその下についた首、体までをも浮き上がらせる。
椅子に座った状態から宙を舞い、壁にまで叩きつけられることになった。床に落ちてようやく、平手打ちを受けたのだと理解する。
「うわすいません、加減間違えました」
突然の凶行に目を白黒させる霖之助へ、苦笑混じりで答える文。わざとらしくコホンと一息ついてから、口を開いた。
「実家に帰らせていただきます……と。これでいいんですよね」
どこで覚えたか知らないが、そんな決まりは無い。そんな台詞を告げる余裕も無く、霖之助はただ呆然と文を見上げることしかできなかった。
「それでは、これからも文々。新聞をよろしくお願いします」
そう言い残し、今度こそ店の外へと消える。ビュンと風の音が聞こえ、そして消えた。
風と共に文の気配がさっぱり消え失せたことで、ようやく霖之助は余裕を取り戻す。ひっぱたかれた際に飛んだ眼鏡が壊れていないことを確認して、安堵の溜息をついた。
彼女も随分と手加減をしてくれたのだろうが、それでもこの有様だ。一時はあんな存在の前に立ち向かったことを考えると、改めて寒気がしてくる。
少々痛む体を引きずって店の奥へ上がる。居間へ入れば、卓袱台には二人分の食器が並べられていた。台所には出汁の入った土鍋と具材が置かれている。
「そういえばどじょう鍋と言っていたか」
あとは暖めるだけで食べられるそれを、ありがたく頂くことにした。
文が霧雨道具店からもらってきたであろう炭を使い、火を起こす。自分で使うよりは売り物にしたい類の物だったが、今は仕方がない。
それにしてもこんな高級品をくれるとは、霧雨の大旦那の浮かれようが手に取るようにわかる。自分が嫁に逃げられたことはそのうち伝わるだろうし、その時の言い訳を考えると気が重い。
「……ん?」
ふと、気がついた。
文が自分に嫁入りしてきた理由はわかったが、そのおかげで新たな疑問が生じたことを。
だが、今から彼女を追いかけて問いただしたいも思わない。むしろこの三日ほどのことは無かったことにしてしまいたいくらいだ。
そう思い新たな疑問を考えることをやめ、土鍋に目を向けることにするのだった。
夜空を舞いながら、晴れて独り身となった射名丸文は考える。あのことを聞かれなくてよかったな、と。
霖之助に嫁入りした理由は、彼が予想したとおり取材のためだ。そしてつい先ほど離婚したのは、その取材が失敗したことがわかった以上、彼と暮らす理由も無くなったから。誰も本気にしていない天狗の掟などに、これ以上従う理由も無いからだ。
そう、掟は実在するが、本気にしている烏天狗など居はしない。もちろんそれは自分も同じことだ。
ではなぜあの時、文は霖之助の命を狙ったのか。
文はこれを霖之助に尋ねられたくは無いなと思っていた。それはやましい答えがあるわけではなく、単に自分でもよくわかっていなかったからだ。
どんな動きをしてもスカートの下が見えることが無いように注意しており、その技はほぼ完璧だという自信はある。それでもこんな格好をしている以上、絶対に無いとは言い切れない。実際、うっかり異性に見られてしまったことも無いわけではないのだ。
そんな時には冗談混じりに天狗の掟を持ち出してから、軽く吹っ飛ばす。その程度の笑い話で終わっていたはずだった。
だが、霖之助に見られた時はそうはならなかった。
彼に見られた、と思った瞬間、いつものように笑って流すことができなくなった。なぜかどうしようもなく苛立った。その激情に動かされるまま、目の前に見える全てを吹き飛ばしてやったというわけだ。
香霖堂を粉砕した直後、なんで自分がここまで激怒しているのか、ふと疑問に思った。その時は自分に『天狗の掟に触れたから』と言い聞かせ、それに従って霖之助を始末しようとした。
ただ、彼を相手しているうちに当初の激情も冷めていったように思う。霖之助が自分の翼に剣を突きつけたときには、もう随分と頭が冷えていた。新聞のネタを探していたことを思い出す程度には。
後は霖之助が読んだ通り、取材の為に嫁入りした。あれほど躍起になって守ろうとしていたはずの掟を利用することによって。そして目論見が崩れ去ると今、掟のことなどあっさり忘れて彼の元から飛び去った。
そうすると、結局自分は何に対して怒っていたのか、さっぱりわからない。
射命丸文は考える。
これまで異性に見られたことはあっても、ここまで憤ることにはならなかった。だが霖之助に見られたと思った瞬間、どうしようもなく頭に血が昇った。
他の男なら良く、霖之助なら駄目。
それが示す意味は、つまり―――――
「ふむ、どうやら私は随分とあの人のことを」
導かれた結論が、文の口から飛び出した。
「嫌っていたようね」
本来なら笑って許せることが、霖之助だと許せなかった。それは霖之助の存在をそこまで下に見ているからに違いあるまい。
導き出されたその答えに、腕を組んでうーんと考え込む文。
「それなりに仲良くやってきたと思ってたんだけど……?」
心の底では人間混じりの彼の存在をそこまで蔑んでいたということだろうか。ぱんつを見られたことで、彼にに対して溜込んでいた負の感情が爆発したのかもしれない。
いやはや、自分の心とはわからないものだ。
そう結論づけ、これ以上考えることは放棄した。これが正しかろうと間違っていようと、自分にとっては些細な問題だからだ。
さて、失敗した取材のレポートと、霖之助の講義を元に、どれほどの記事を披露できるものだろうか。同じ頭を使うならまずそこからだな、と文は頭を抱えた。
目の前にあるのは、文が用意していったどじょう鍋。それを箸でつつきながら、霖之助は考えていた。
殆ど口に運ぼうともせず、文字通りどじょうをつつくだけにしながら。
人間の適応力は案外高い。
耳障りな騒音もずっと耳元で鳴り響いていればそのうちに慣れ、音の存在など忘れて眠ることもできるだろう。
だが、この騒音が当たり前となった状態で、不意にその音が消え失せたらどうなるか。眠りを遮るはずの音が無くなったにも関わらず、眠りから覚めることもあるのではないだろうか。
このように、『刺激が無くなる』ということが新たな刺激になりうるのである。
つまり何が言いたいか、というと。
文が残していった料理に、なぜか箸が進まないのは。
自分一人の香霖堂が、静かすぎるほどに感じられてしまうのは。
彼女に殴られた頬の痛みが、やけにジンジンと後を引くのは。
この三日間で文の存在に慣れ切っていたため、突然居なくなったという事実にまだ感覚が適応しきれていない、ということに過ぎないのである。
「……うん。その通りだ」
自身の理路整然とした思考から導かれた結論に、霖之助はうんうんと頷いた。
そして、心の中で付け加える。
これは決して、『寂しい』とかそういった感情ではないのだと。
改めてそう結論づけると、霖之助は箸を置いた。残りは明日頂くことにして鍋を片づけ、早々と床につく。
目が覚めた頃には、文のことなど忘れていつもの自分に戻っていることを願いながら。
翌日、小姑役としてやってきた魔理沙が見たのは、真っ赤なお目々の霖之助だった。
外で夜風が響く度に、何度も目を覚ましていては無理も無いと思われる。
結婚相手にこんな詐欺喰わされて挙句一方的に出て行かれたら殺しますよ?敵わないけど。
仮初めながらでも奥さんの行動をしている姿をもう少し見たかったです
取材のために掟を悪用して、店を吹き飛ばして、弾幕に慣れてないはずの香霖と弾幕戦かまして、
香霖の今後の評判もろくに考えず結婚から一方的に出て行くコンボを決めました、と。
更にろくに謝罪も悪びれもせず、と。
いや、素晴らしい。
前作で香霖超強化だったのでてっきり熱心な香霖ファンだと思い込んでいましたが、いやはや相当お嫌いなようで。
となるとここまで魔改造された文もやっぱりお嫌いなんでしょうね。
自己投影した最強香霖で大好きな文と結婚する、そっち方向の作品かと思っていましたが、両者を貶めるアンチ系だったとは予想外でした。
点を付けるのも避けたい所ですが、読んでしまった以上付けない訳にもいきませんので、10点で。
ただ、二人の心の触れ合いみたいなのは、あったはずだけど、それが台詞による説明だけ&ラストで思い返すだけに留まっていたのが、物足りない感ある。
キャラ同士は互いにそれなりの好意を意識はしてるんだけど、読者が感覚としてキャラについていけないというか。
結果としてとって付けたようなまとめ方になってしまってる感覚を受けてしまった、という印象は拭えなかった。
もうちょっと結婚生活でのエピソードで、ラストの解説シーンで説明した分を丁寧にやってくれれば、もっと満足できたかも。
リメイクしたものを読んでみたいなあ。
文が霖之助を嫌っていると結論付けてしまう心境吐露の部分が面白かった。
霖之助も試し半分な所はあったんでしょうね。
だから別れたときは割とすっきりしていたけど後になって尾を引いた。
次回にも期待。
次回もお願いします。
次回作にもまた、文を出してください。
この作品を読むことでスッと腑に落ちました。
なるほどなるほど実に"妖怪らしい"二人の様子を見事に描いて
その上さらなる続編を期待できそうな〆方で…これは期待する他ないです。
あっさりオチがついてしまって、少々肩透かしというか
続編を楽しみにしています
このままじゃ霖之助、やられっぱなしじゃないですか。個人的にはそれが嫌。
枯れてるから激昂しないのかも知れませんが、ここまで勝手な理由で引っ掻き回されて、
腹の一つも立たないんじゃ、案山子と変わらんでしょう?
>>10
何も言わずに、作者の処女作「天狗が下駄を脱いだなら」(作品集53)を読め。
この人が、文霖好きだって解るから。
文可愛い過ぎるだろ…
霖之助が最後まで憤然としないのは違和感ありました。
続きに期待しています。
ただ文と霖之助の別れ方はあっさりしすぎてて、ちょっと寂しかったです。まあ、そのあとの赤いお目目の霖之助とかはぐっときましたが。
連作で続きなどを期待したい作品でした。
まだ勘違いしたままの2人ですし、物語全体で言えば起承がようやく済んだトコかと考えれば
逐一詳細を表現してしまってはこの先の風情や盛り上がりに欠けてしまう気がするので
このアッサリした流れと引きは先の展開を期待させるに充分かと。
東方の雰囲気ってどれほどのドタバタがあっても最後はほんの僅かな変化でユルく落ち着いてしまうのが魅力の1つですし
この2人と周囲がどういうユルさに終わるのか楽しみに待たせていただきます。
う~ん、なるほどそう来ましたか。
妖怪の結婚に対する考え方とかがかなり新鮮でしたね。
このまま終わってしまったらかなり寂しいけれど、この二人だったらその可能性も十分ありそうだ…
個人的にはこの後さらに一波乱あって欲しいですね。
次回作にも期待させて頂きます。
むしろかなりそれっぽくて好みです。
ただもうちょっと読みたいな、と思いました。また思いついたらお願いします
でも、これでお終い。では何かしっくりこないものがあります。
ですので是非続編を書いていただきたいです。
個人的には、霖之助と文が夫婦生活を続ける内に徐々に相手のことを好きになっていくような展開になるのかと思ってました。
続くんであれば期待します。
それよりもあれだけやられて何故霖之助が怒らないのか多少の説明が欲しいと思いました。
文章的にはとても面白いですし、続きがあれば是非読みたいです
内容は独特ながら面白いと思います
この二人に限らず東方系二次創作の妖怪たちは"人間らしい"行動であることが多いので
妖怪らしい行動を取らせている点が違和感を生んでる気がします。
後味悪すぎやしませんか?続きが欲しいっ!
ただ流石に最後がちょっと…と感じたのでこの点数で
次回きたいして起きます。
10>>霖好きの奴をすぐ自己投影扱いするお前痛すぎwww
単に文がネタの為だけにやりたい放題してるだけなのが残念でした。
……しかしトップの注意書き読めない人多いなあ、どっちが痛いんだか。
ただ、二つに分けてあること&「あやぱん」の批判米で迎合しているような空気になってしまっていること
それが少々残念。
こういった雰囲気の作品は好きなので期待。続いても続かなくてもイイ読了感
文と霖之助のカプを楽しみたい人にはそうでもないのでしょうけど、
自分のようにカプの進展よりも、文というキャラクターがどう描かれているかの方に重点を置く人間からすれば、前後共に辛い内容でした。ご都合主義に動かされているというか、果たして作者さんは文を本当に魅力的に書こうとしたのか、そこに疑問を感じたからです。
文章そのものは卒がなくて読みやすく、大変地力がある作家さんだと思うので、次回に期待させていただきたいと思います。ただ、そのときは文以外のキャラで書いて欲しいと、この作品の文を見て、正直そう思ってしまいました。
そこに慣れていない人からすると違和感を覚える人もいるかもしれませんが
それにしてもこの先が気になって仕方ない、続きを切に希望します
2人とも淡々としていてこんな感じだろうなぁと思いながら読ませてもらいました。
ただ単純に文と霖之助の絡みとしてみるともう少し…
必要以上に怒った理由を問いただされる文が見たいw
お願いです。そうだと言って下さいよ、梅凪さん。ここでお預けはちょっとあんまりですよぅ。ここから凄く面白い事になりそうなのに………
とても楽しませて頂いたのに申し訳無いですが、この状態では点をつける事が出来ません。
あと、前作を読み返していて気付いたのですが、妹紅に送ってもらっているシーンの
>博麗の札、ミニ八卦炉、~。くたびれ損の骨折り儲けもいいところだが、
という文章。正しくは『骨折り損のくたびれ儲け』ではないでしょうか?
わがままな少女のはびこる幻想郷だからこそ許されるんでしょうね
続きが気になります!
しかし実際こんな事されたら首吊るっきゃない!
願わくばいつか自分の本当の気持ちに気付いてほしいものですな
溜めの時点で終わってる様なモンな気がする
まぁ、最初からこういう筋書きだったのであれば仕様が無いけど。
人間とは違う感性・規律で行動する妖怪と半妖を楽しめたのでこの点数。
続きがあれば読みたいね。
「天狗が下駄を脱いだなら」
を見た後にこれを見ると残念な気分になりますね。
文×霖が好きな人は過去作を後に見たほうがいい気分で終われそうです。
この作品の結末が予定調和ならしょうがないですが、前作のコメの批判コメに影響されて・・・ならやはり残念でした。
評価POINTのみを見ますが、「天狗が下駄を脱いだなら」を見れば
決して文×霖が受けないと言うことではないんですけどね。
文がむしろ活き活きしてて、とても天狗らしい、妖怪らしいと思いましたよ。
そのあたりは個人個人で感覚違うと思うので、いち意見として。
「天狗が下駄を~」から通して、文も香霖も好きなんだなというのがわかりました。
この妖怪たち軽いぜw
霖之助が文に振り回された…いや霧雨一家が振り回されただけなのか
まぁ批評も評だと思って、これからも精進し続けてくれると、読者としては丸儲けです。
批判コメあるとやりずらいでしょうが,私は梅凪さんなら素敵な作品を書いてくれると思います.
とっても楽しみにしています.頑張ってください.
作者名というものが検索材料の一つである以上は。
読み手としては必ずしも文章作品としての良作だけを求めてる訳じゃないんだよね。
私も前々作を読んでから作者名検索で見つけた今作を読んで酷くがっかりした口ですw
少なくとも文はそこら辺は弁えてると思うし、だからこそ違和感があった