Coolier - 新生・東方創想話

少女ゆかり

2009/03/06 13:34:25
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 ある日の夕方。神社の縁側で霊夢と紫が飲茶をしているときのことである。
「あのさぁ、ちょっと気になったんだけど」
「何かしら」
「あんた、何で生きてるの?」
 普通なら意味を問いたくなるくらい酷い質問だが、紫に『普通』などほとんどない。ハンケチを目尻に当てて泣き真似を始める。
「ううう、酷いわ。霊夢は私に死んで欲しいのね。あんなに熱い密月を過ごしたというのに、私はもう用済みなのね……よよよよよ」
「いつ私とあんたが寝たのよ」
「赤ちゃんの時?」
 「『寝た』の意味が違う」と切り返そうとした霊夢だったが、話の筋を変えられそうになったことに気付く。溜息混じりに「まったく」と呆れを漏らした後、再び訊ねた。
「生きる目的ってあるでしょ? あんたが何の目的で生きてるのか気になったのよ」
「結界と博麗の監視?」
「何で疑問形なのよ。しかもそれ、結界は藍まかせ、うちにはたまに晩酌しに来るだけじゃない」
 他人の詮索は好きなくせに、自分が詮索されるとはぐらかして『なあなあ』で終わらせようとする。しまいには寝たフリ――そのまま本眠する――か、式神に何かしらの理由をつけて――「藍を風呂に入れる」など――帰る。それでも霊夢は、普段なら大人しく引き下がる。
 しかし今日の霊夢は本気らしく、紫が逃げようものなら夢想封印の一発でも撃ちそうだ。
「私は『妖怪』としてじゃなく、『八雲紫』としてのあんたのことを訊きたいの」
「へぇ~。それ、遠回しな告白?」
 『2Hit 890Damage SmashAttack』
「2度もぶった~。閻魔様にもぶたれたことないのに~」
「次変なこと言ったらスペルもやるわよ」
 紫は扇を開いて口元を隠すと、沈みかけの夕日に視線を向けながら話した。
「幻想郷がこの形になってすぐの頃よ。『妖怪なら誰でも容赦しない!』なんて真面目な妖怪退治屋さんがいてね。私にたて突いてきたのよ」
「男?」
「さぁ、それはどうかしら」
 霊夢はその退治屋が男だと確信した。紫の性格上、仮に退治屋が女だった場合、霊夢の質問に「そうよ、いいでしょう」と自慢げに肯定するだろう。
「とにかくしつこくてね、決まって迷い家の境界にある桜の木の下で待ち構えているのよ。で、力比べみたいなことをやらされるの。いつも私が勝ったんだけど」
「そんなにしつこいなら避ければよかったでしょ? わざわざ相手にするなんて――」
「折角の来客を無下にするわけにはいかないわ」
 どうせ暇潰しの相手くらいにしか考えていなかっただろうに。男が可哀相だ、と霊夢は思った。
「毎日同じ時間にいたのに、ある日を境にピタリと来なくなってね。日課だったことが突然途絶えたから、ちょっと心配したわ。だから何日か後に退治屋さんの家に訪ねてみたの」
「あんたに『心配』なんて似合わないわ」
「私、心配症だから誰かが少しでも心配になると夜も眠れないのよ~、よよよのよ」
 一日12時間も眠っておいて『夜も眠れない』なんてシラジラしい、と霊夢は思った。
「家には病魔に伏した退治屋さんがいたわ。来なくなった日の前日、妖怪退治に向かった時に憑かれたらしいの。もう手のつけられない状態だったわ」
 隙を突かれたのだろう。霊夢も様々な妖怪を相手にしてきたが、毒や病を操る者に出会った回数は少なくない。博麗の祖先も似たような原因で亡くなった者がいたと聞く。
「死の境を行く最後の眠りの最中だったのに、私の気配を感じたら飛び上がるように起きて『お前に心配される云われはない』って強がり。健気なものね」
「それで?」
「結局すぐ倒れちゃったけど、それまで一度も弱音を言わなかった退治屋さんが、こう言ったわ。『お前に一回も勝てなかったことが心残りだ』。だから言ってやったの。『悔しいなら転生してでも勝ちに来なさい』ってね。そうしたら『いいだろう、いつか必ず負かしてやる』、そう言って息を引き取ったわ」
 話を終え、扇子を閉じた紫は冷め始めた茶を啜った。
「つまり、あんたはその退治屋が帰ってくるのを待つために生きてるの?」
「そうよ。強さって罪よね~。霊夢も私の強さにひれ伏し――」
 『15Hit 89006Damage SmashAttack RiftAttack ChainArts ChainSpell』
「れいむがほんきでこ~げきしてきた~、ゆかりんいたいよ~。うわぁ~ん」
「いい年こいて平仮名で喋るな! 気色悪い!」
 最後におちゃらけた紫を見て、話の内容が果たして本当かどうかを疑う霊夢だった。

 迷い家の境。西行妖には遠く及ばないが、大きな桜の木が立っている。その周りには草木1本生えておらず、その桜が特別な存在であることを示していた。
 昼より少し早い時間、眠っているはずのすきま妖怪の姿がそこにあった。
 じっと桜の下に立ち、誰かを待っている。
 ――霊夢に話さなかった、『最期の言葉』の続き。
『いつか俺が勝ったなら、願いを叶えてくれ』
『あら、それはいいけど叶えられる日が来るのかしら? まぁ折角だし、その願いを聞かせて頂戴』
『俺の女になってくれ』
 不意打ちだった。まさか人間が、自分にそんな言葉を投げかけるとは思わなかった。百戦錬磨の紫が、唯一負けたと思った瞬間だった。
 だから待っている。願いを叶えるために。
 今日も来ない。それでもあの時と同じ時間、同じ場所で彼女は待つ。永劫の刻を。
 止まった刻が流れ出す日が来ることを信じて。
「――夢の中では、会いに来てくれるのに」
 そこに立っているのは一人の少女、八雲紫だった。
2回目の投稿になります。
元々別の目的で書いたものですが、使用されることなく終わったのでこちらで出すことにしました。
『C.Y.』同様ぎこちなくてすみません……。

テーマは『恋する女性は何歳でも少女なのぜ!』です。
何番煎じかわかりませんが、ようするに少女ゆかりんネタです。
桜の木の下なのは、某同人音楽サークルさんの曲の影響です。
霊夢がツンデレというか凶暴なのは私の癖だと思います。自分で言うのもなんですが、何でウチの霊夢はこんなに凶暴なんだろう。

八雲家ネタが連続ですが、八雲家好きというわけではありません。守矢家の方が好きです。
早苗さん自機昇格おめでとう!
魔星佐藤
[email protected]
http://www.geocities.jp/masterkalsto/
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コメント



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27.90名前が無い程度の能力削除
少女だ!!
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本編よりもコメに吹いた
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良かったw
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いいゆかりんだ
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思い出した!
ちょっと迎えに行ってくる
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そうか昨日の夢の女性は紫だったのか!!!
マヨヒガまでいってくらぁ!!
37.90名前が無い程度の能力削除
しょう・・・じょ・・・?
40.50削除
37< 無茶しやがって・・・
43.90名前が無い程度の能力削除
少女w
49.100名前が無い程度の能力削除
ゆかりんはまだまだ若い・・・