何一つ変わらない日常。
博麗霊夢はいつものように、境内を掃除中であった。
今日は箒のノリも良く、葉っぱや枝が軽やかに掃かれていく。
掃除が好きなわけではないが、順調に進むと気分が良い。
久しぶりの鼻歌なんぞを披露しつつ、霊夢は小刻みに箒を揺らした。
「よぉ」
気さくな声に振り向くと、気さくな笑顔の魔理沙が見えた。
呆れた溜息をつきながら、霊夢は注意する。
「よぉじゃないわよ。あまり乱暴に歩かないでね、集めたゴミが飛び散るから」
何度も言って聞かせたことだが、魔理沙が守った試しはない。
いつだって分かった分かったと言いながら、鮮やかに無視してゴミを吹き飛ばしている。
今日だって、きっと。
そう思っていたのだけれど、魔理沙の反応はいつもと違った。
「あ、ああ、わかった。気を付けるぜ」
「?」
いやに素直な魔理沙の態度に首を傾げる。
受け入れてくれるのは有りがたいけど、これはこれで不気味だ。何か企んでいるのではないかと、邪推したくなる。
霊夢の視線が厳しくなったせいか、魔理沙は辺りを見渡したかと思うと、いきなり箒に跨った。
「それじゃ」
素っ気ない言葉を残して、弾丸のように飛んでいく。
何だったのだろう。
妙に素直だったり、かと思えば霊夢の方をちらちらと見たり。実に挙動不審だった。
何か悪戯をしようとしていた風にも見えなかったし。
霊夢は少しだけ考えたものの、すぐに分からないと結論づけて掃除に戻った。
また今度、来た時に訊けばいいだけの話だ。
魔理沙が帰って十分後。
今度は萃香がやってきた。
「霊夢ー! 酒飲もうー!」
空には輝くお天道様。
一般人が酒を愉しむには、少しばかり日が高い。
もっとも鬼である萃香に、一般人の常識など当てはまるわけもないのだが。
いつものこととはいえ呆れて言葉もない霊夢。
掃き掃除の手を止めて、溜息をついた。
何と言ったものか。
考えているうちに、何故か萃香は霊夢の横を素通りしていく。
はて。自分を誘いに来たのではなかったのか。
先程も霊夢と呼んでいたし、気のせいとは考えづらい。
「萃香」
「ん?」
振り向く萃香。怪訝そうな顔でこちらを見ている。
「私はまだ飲むつもりなんてないわよ」
きっぱりと言い放つ。萃香は不思議そうに首を傾げ、
「あっ、そう」
と言って歩き出した。
そのまま境内の周りや自宅の方も見て、つまらなそうな顔をして帰っていった。
魔理沙といい、萃香といい。
今日は素っ気ない態度が流行っているのだろうか。
いや、そもそも霊夢を呼びに来たのに霊夢に素っ気ないというのは違和感がある。
牛丼を食べに牛丼屋へ行って、牛丼が出てきたら顔をしかめるようなものだ。
何をしに来たのかと、思わず問いつめたくなる。
あるいは、これが異変の前兆なのかもしれない。
だとしたら巫女としては異変が起こる前に叩きつぶすべきなのだが、まだまだ掃除は終わっていない。
そして根本的に、霊夢のスタイルは事が起こってから動く、だ。
そもそも、この程度の事で動いていたらきりがない。
いま霊夢に出来ることは掃除と、何かが起こるのを待つだけだ。
主の行動に物珍しさを覚えている式、八雲藍。当年とって何歳か数えるのも面倒なので、とりあえず二十歳。
炊事洗濯家事親父と、あらゆる仕事をこなしながら主である紫の為に仕えている。
藍の主、八雲紫。当年とって何歳か数えるのも億劫なので、とりあえず二十万歳。
睡眠や食事を意欲的にこなす、幻想郷でも上位に入る大妖怪だ。
最近は専ら、博麗神社へ行くのがお気に入り。お目当ては、そこにいる巫女の霊夢なのだろうと藍は思っていた。
だからてっきり、今日も行くのだとばかり思っていたのだが。
紫は布団から出てこようとしない。
「んー、むにゃむにゃ、もう食べられないよー」
「おおう」
幻想郷でも幻想入りしそうな寝言。思わず録音してしまったのも頷ける。
「いや、ごめん。もう本当に食べられないから。遠慮とか、そういうんじゃなくて。本当に無理」
寝言が軽く進化した。さすがは大妖怪。
しかし誰に食べさせられているのか、気になると言えば気になる。
ちょっと悪戯心が芽生えた藍は、掃除機の先っちょで布団ごと紫を叩いてみた。
「ほらほら、紫様。掃除の邪魔ですから、早く起きてください」
紫は苦々しい顔をしながら、布団の中に籠もる。
「あー」
「あーじゃありません」
「うー」
「神様じゃないんですから」
「アウト!」
「チェンジ」
いつものやり取りを経て、ようやく紫は目を覚ます。
「おはよう、藍」
「おはようございます、紫様」
目覚めの挨拶は大事だが、せめて藍に向かってやって欲しいところ。
床の間の掛け軸は挨拶を返したりしない。
「何の夢を見ていたんですか?」
「霊夢がね、私に無理矢理お饅頭を食べさせる夢」
それはまぁ、なんとも不可解な夢だ。
だが夢など結局は理不尽で不可解なもの。
考えるだけ時間の無駄だ。
「そういえば、今日は博麗神社へ行かれないのですか?」
大欠伸をしつつ、紫は答えた。
「今日はいいわ。霊夢もいないみたいだし」
珍しい話である。巫女なのに神社に居ないとは。
何か異変でも起こって、それを解決しに行ったのか。そうでなくては、あの巫女が神社を留守にするはずもなかった。
「だからって、いつまでもゴロゴロされていたら掃除になりませんよ。ほら、寝るならどこか他の場所で寝てください」
「あいあい、分かったわよ」
面倒くさそうに言いながら、熊のように起きあがる。まるで抗議をするようにゆったりとした動きだが、どいてくれるなら文句はない。
そう思っていた藍が庭で寝ている紫を発見するのは、それから十分後のことであった。
日も暮れ、夜となる。
掃除も終えて、三時のお茶も終えた霊夢は自宅に戻ってきていた。しかし、その心中は穏やかではない。
なにせ、今日は一日中無視されたり素っ気なくされたのだ。
魔理沙や萃香だけじゃない。神社へ訪れた人は軒並み、似たような反応をして去っていった。
「なんなのよ、もう!」
霊夢に落ち度があったとは思えない。なにせ、何もしていないのだ。
あるいは良からぬ悪評が立ったのかとも思いはしたが、それならそもそも神社へ来ない。来るということは霊夢に用があるわけで、それなのに素っ気ないとは理解に苦しむ。
そういう悪戯だったのか。それとも本当に異変なのか。
明日も続くようならば、ちょっと調査してみた方が良いかもしれない。
自分に影響していることなのだ。暢気に寝ながら果報を待つわけにもいかない。
「とりあえず、今日はもうお風呂でも入って気分転換しよっと」
そう言って、霊夢は巫女服を脱いだ。
そして、はたと気付く。
「あ、腋出すの忘れてた」
僕は腋よりリボンのほうが…
霊夢の魅力は腋だけじゃないはず!
あとがきよかったwwww
ゆかりん……
あとがきに負けたwwwwwww
つーか後書きのオチが上手すぎるww
綺麗に決まりましたね
こうしてまた、新たなる犠牲者が…
なんというか和訳した文章みたいなw
本編が後書きの壮絶な前振りにしか見えんw
本編の前振りが長いだけに余計に。
>とりあえず二十万歳。
じゃあ橙は・・・二歳。
蘭&紫「え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛????」
橙「いや、その、猫としての年齢ですよ2歳って?」
と言うオチが脳内再生されたですよ
あ、ついでに・・・
>とりあえず二十万歳。
ゆかりんがそんな若い訳n(スキマ送り
何だろう、噴いた次に今度は目から水が……
あと後書きwww