「あー……お茶が美味しいわ」
本日の天気は晴天なり、お昼休みに霊夢はいつものように縁側にすわり、
日光を浴びながらお茶をすする、すると、一つの影が境内を回りこんで霊夢の前に止まった。
「またきたか」
ふいと上を見上げれば、箒に跨った黒白としか言いようの無い物体、
霊夢は落ちるように着地するそれを見届け、お茶を一口。
「ヘイレーム! 今日もグッドな天気だゼ!!」
「ぶふっ」
そして吹いた。
「オー! どーしタ? むせたのカ?」
「ごほっ、ごほっ……突然何なのよその変な口調は!」
「変? いつもドーリのスタンダートな口調だゼ」
「あんたが日本以外の生まれだったら普通かもしれないけどさ」
「レームこソどーしたんダ? 随分とキレーにトークするじゃないカ」
「随分って、いつもどおりにしか喋ってないわよ」
「ワット?」
「あんたは日本語を喋りなさい日本語を」
霊夢の言葉に、魔理沙は頭を捻る。
「マイ日本語、どこかオカシイでーすカ?」
「全部おかしいわよ!」
「いつもドーリなんだけどネー」
「ああもう、冗談もその辺に……」
「うっす! 二人ども朝がら元気だなぁ」
「何事!?」
やや怒りのボルテージがあがってきた時、新たな言語系が霊夢の横っ面を殴り飛ばす、
突然の事にその方を向くと、声の主は軽く微笑みながら二人を見つめかえした。
「……幽香じゃない、あなたも魔理沙とグルなの?」
「グル? 何の話だ?」
「いや……それよ、その口調?」
「口調? そげな事言われっでも昔からこうだべ?」
「ぶっ!」
想定外の口調と、それが以外にも幽香に似合っている状況に、
さすがの霊夢も腹筋との戦いは免れなかった。
「ヘイユーカ! そのカントリーな口調はどーしたんダ?」
「それはわだすの方が聞きでぇ」
「いや、一番聞きたいのは私だから」
口調はそれぞれ違いながらも、日本語である為に意思の疎通には困らない、
三人は頭を捻りながらも、どことなく答えのようなものを見つけ出す。
「つまり、魔理沙や幽香からすれば、私もあんた達と同じ喋り方をしてたわけね?」
「イエス!」
「んだんだ」
霊夢からすれば二人がいきなり口調を変えたように見えるが、
二人からすれば逆に霊夢がいきなり標準語を喋り始めたように見えていたというわけだ。
「まあ会話にはそれほど困らないからいいんだけど……」
「ほなら会話が通じん相手なら?」
「どわっ! 関西人!?」
「どーもー」
「……ああ、咲夜か」
今度は唐突に現れた紅魔館のメイド長、
当然ながらお辞儀のポーズと挨拶の言葉が非常に合っていない。
「あんた関西人だったの?」
「そーゆーわけやないんやけど、日本語喋ろうとしたらこうなるんや」
「……一体どこで日本語勉強したのよ」
「よしも「ギョゲゲゲギギュギギャギャヤ!!」
「今度は何!?」
「ああ、お嬢様や」
会話を遮るように奇妙な唸り声と共に降りてくるレミリア、
どうやら怒っているようにも見える。
「ギョギョー!」
「……悪魔語か何か?」
「話が通じひんから機嫌が悪ーて困っとるんや」
「ギョー!? ギャギャー!」
レミリアは霊夢を見つけると態度を一変させ、
藁にも縋り付くような顔で縋り付く。
「ギョギギギュギェギュギャ!」
「だからわかんないって」
「ギョギョーン」
ギョギョーンである、にょろーんではない。
「グッド! ディスは私に任せーナサーイ!」
「悪魔語喋れるの?」
「オールライッ、マジック使いのミーには言語の解析なんカモーマンタイね!」
「今、別の国の言葉混ざってなかった?」
「ギョ?」
「ンー……さっきのトークを解析シマースと……」
魔理沙はぶつぶつと呟きながら、レミリアの言葉を解析して通話を試みる。
「こうデスかネー……ギョギョギェ」
「ギョッ!?」
「ギュギュイギュゲギュギィギ」
「ギッ!?」
「ギュギョギョギャギャギョギギャギャギャ!」
「ギ……ギョギィ……」
会話が進むたびに、レミリアはどんどんと顔を赤らめて身体をくねらせる、
しまいには魔理沙から顔をそむけ、完全な乙女状態になってしまった。
「魔理沙、あんた何ていったのよ?」
「テキトー」
「アホかっ!」
「テンセコンズで分かり合えたら苦労しませン」
「こいつは……!」
口調のせいで魔理沙のうざさは五割増である。
「ギュ」
「ん? ドゥしたプリティーガール」
「ギー……」
「なんか、好かれたみたいね」
「……予想外デス」
魔理沙にぴったりと寄り添い、胸元に頬を擦り付けるレミリア、
その様子はさながら新妻のようで。
「ってこんな事やってる場合やあらへんがな! これは異変とちゃうんか!」
「標準語で構わないわ」
「ですからこんなことしてる場合ではないでしょう」
「喋れるんかい!」
「あー! いたいたー!」
「また新しいのが来た」
本日五人目の訪問者は二本の尾を持つ黒猫、
何故か看板を背負って走ってきた彼女は、霊夢の前にそれをつきたてた。
「はいっ、藍様から伝達だってさ」
「伝達ぅ?」
「にゃんか結界が故障したとかいってた」
「ふーん、どれどれ……」
『緊急メンテナンスのお知らせ
本日十ニ時頃より発生した自動翻訳結界の障害の為、通常の会話が難しい状況になっています
緊急メンテナンスの終了予定時刻は三時を予定しております、幻想郷をご利用の皆様には
ご迷惑をおかけいたしますが、なにとぞご協力をよろしくお願いいたします』
「ここはどこかの交流場か!?」
それを見てお払い棒を地面に叩きつける霊夢
もはやフラストレーションは極限に近い。
「何よ翻訳結界って! こんにゃくで覆えばいいじゃない!」
「クールダウンだ霊夢、色んなモンスターが集まるディスでは必要なんだと思うゼ!」
「あんたは日英混ぜるのをいい加減にしろ!」
「落ち着いてよー、藍様も必死にゃんですから」
「これで落ち着けるかってのよ! しかもなんでここに看板持ってくるの!」
「ここににゃら皆集まるって藍様が言ってました」
「予定調和か!」
「バッド、霊夢がカットしちまうゼ!」
「しょーがないのー」
このまま霊夢が爆発するかと思われたその時、
咲夜の奇策によって神社は救われる事になる。
「橙ちゃーん」
「にゃんです?」
「奈良の七つ子七時七分斜めに並んでわなないた、って言ってみ」
「にゃらのにゃにゃつごにゃにゃじにゃにゃふんにゃにゃめににゃらんでわにゃにゃいにゃ!」
『かーわーいーいー!』
かわいいは正義。
「にゃ、私はこれで!」
「あーん、肉球触らせてよー」
「イーのカ? 霊夢がリバースベクトルにボムしちまったゼ」
「かまへんやろ」
肉球も正義。
「うー、肉球ー」
「じゃあ私のを触るウサ」
「わーい、ってまた増えた!」
てゐを筆頭に、鈴仙、永琳、輝夜と永遠亭の四人を合わせて本日計十人目の訪問者、
そして四人の中から永琳が一歩前に出ると、水平に構えた手を喉に当てて喋り始めた。
「まったく、あんた達も話せなくなったの?」
「ワ、レ、ワ、レ、ハ、エ、イ、エ、ン、テ、イ、ノ、モ、ノ、ダ」
「首トントンする必要がねぇぇぇぇ!!」
「落ち着くっぺ霊夢! ぎっど何が理由があるんだ!」
食って掛かろうとする霊夢を必死になだめる幽香、普段とは立場が逆である。
「理由なんかあるわけないでしょ! 普通に喋りなさいよ!」
「ポペピピパプポパププペポピパ」
「すいませんでしたーっ!!」
「ちゅーか何で喉叩くだけで言葉通じるんや?」
当然ながら咲夜の疑問に答えれるものは一人もいなかった。
「おほほほ、いとおかし」
「日本語以外はもういいのよっ!!」
「げぶっ!!」
「待つウサ! 今のは一応日本語ウサ!」
「あ、そうなの?」
伝統の日本語を喋ったにもかかわらず初めての退場者となった輝夜、報われない。
「ったくもう、これじゃ宴会が開ける勢いじゃない」
「あ、もう美鈴に酒とか持ってくるよういっといたで」
「手際良すぎない!?」
「ほら来た」
咲夜が指差す先には、自らの数倍はある荷物をしょって飛んでくる美鈴の姿。
「アンニョハセヨー!」
『(中国語ですらない!)』
「パンニハムハサムニダ!!」
「あ、あぁ……うん、ありがとう」
「(グレート、レームがバックしたゼ)」
この瞬間から美鈴のあだ名は韓国に変わったに違いない。
「……フンダラシンダ?」
「もう分かったから、それじゃとっとと宴会を……ハッ!」
その時、霊夢の頭に電流が走る。
「宴会……自然に萃まった妖怪達……ここから導き出される答えは一つ!」
シリアスな顔をして霊夢が神社の方へ振り向いた時、
賽銭箱の真後ろのふすまが勢いよく開かれた。
「やっぱりあんたね! 萃香ぁぁぁ!!」
ふすまの向こうから現れた鬼は、その通りだといわんばかりに親指を突き立てて答えた。
「これは久々にとっちめてやる必要があるわね」
「ーっ!」
霊夢がお札を取り出すと、慌てて身振り手振りでそれを拒否する萃香。
「なんか喋りなさいよ」
「ーーーっ!」
「……もしかして、喋れないとか?」
「っ!」
萃香はその言葉に全身で反応し、その小さな身体を精一杯動かして答える。
「肉体言語を翻訳できる結界って一体……ま、いっか」
あれこれ考えようとした霊夢だが、あっさりと諦めて酒を手にとる。
「よし、んじゃ……飲むわよ!!」
霊夢の言葉で一斉に騒ぎ始める人と妖、
たとえ言葉が通じなくても酒と宴は通じるようだ。
「にゃー、新しい看板持って来ましたー!」
やがて二時をすぎたころ、黒猫が再び神社を訪れる。
「まだ三時には早いわよー?」
「延長だってさ」
「延長!?」
霊夢は橙から看板を奪い取って文を確かめる。
「えーと、紫様の起床までメンテナンスを延長します……今すぐ起こしなさいよ!!」
もっともである。
「紫様は四時まで絶対起きないよ」
「そこを起こすのよ! こうなったら私が無理矢理にでも起こしてやるわ!」
「ピポパポポッペペ! パパピプーン!!」
「わからーん!!」
「橙ちゃん、七かける一は?」
「にゃにゃいちがにゃにゃ!」
『かぁわぁいぃいぃ!』
かわいいは正義、もう一度いうとかわいいは正義。
「文と聞いて飛んできましたー!」
「歩いて帰れ」
「酷い!」
「もう普通の日本語を喋る輩は要らないのよ!」
「なんですカーその理不尽な理由!」
「あ、普通じゃない」
「え? 普通ですよ?」
そして宴会の誘引力なのか、どんどんと新たな妖怪達が神社へと集う。
「山田ぁぁぁぁ!!」
「張遼ぉぉぉぉ!」
閻魔が鉤鎌刀片手に乗り込んできたり
「イクゥゥゥ! イックゥゥゥ!!」
「勝手にいっとけ!!」
衣玖さんが叫び声をあげたり。
「幽々子様のお席はあるかい?」
「無いわよ」
「みょろーん」
幽冥組は参加を断られたり。
「お燐、七七なんだかな、って言ってみて」
「七七なんだかな? それがどうかしたの?」
「……ケッ」
「え? え? 私何か悪いことした?」
かわいくないお燐が悪に認定されたりと。
「はー……紫はまだ目が覚めないのかしら」
やがて四時がすぎるころ、喧騒を眺めながら霊夢はポツリと呟く。
「うー、橙ににゃーにゃー言わせたいよう」
目的が摩り替わっているが、かわいいが正義である以上は仕方がない。
「看板もってきたよー!」
「ちぇーん!! 七回なめこなめたらななちゃん泣いたって言ってみて!」
「にゃっ!? にゃ、にゃにゃかいにゃめこにゃめたらにゃにゃちゃんにゃいにゃ!」
『ディスイズジャスティス!!』
その時宴会に参加していた全ての人と妖の心は一つになった。
「あ、じゃあ看板さすね!」
そしてこの異変の終了に皆が期待してその看板を覗き込む。
『長らく提供し続けておりました、幻想郷自動翻訳結界ですが、
復旧の見込みが立たないため一時的にサービスを停止します、
再開の時期は後日博麗神社にて――』
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
言葉にできない。
.
お燐は悪ですかそうですか、よし、あなたは敵だ
あれ?もこたんは?
もっとやれとしか言えないではないか
でもその前に、ちぇんかわいいよちぇん
まさかこのタグをいれるためだけに、この話を書いたってことは…ないいですよね?
さすがに ^^;
あと細かいですが、最初の橙の登場シーンで「日本の尾を持つ黒猫」になってます
なんでこれで萌えたんだよ俺。疲れてんのかな。
にゃんにゃんとかより普通に笑ったぜ。
ここは幻想郷だ。日本語でしゃべってくれ!
そしてタグおまwwwwwwwwwwwwwwwww
でも橙子とレミリアお嬢様と姫さまにキュンと来たから私の負けなんだぜ…………ごめんねお燐ちゃん…………orz
ちぇんかわいいよちぇんww
しばらく翻訳機能が復旧しないためのセオリーを切望する。
取り合えず日本語でおkで
最後に一言
橙をジャスティス……アレ?
ブラック羽川は幻想入りしていたのか・・!!
にやけすぎて表情筋が筋肉痛になった
サロンパススプレーが使えない
かわいいは正義~♪
面白いのも正義~♪
駄目だこいつら・・・早く、なんとかしないと・・・!(俺も含む)
ちぇんかわいいよかわいいよちぇん
あんた最高だ
不意打ち過ぎたwww